説明

湧水処理パネルとそれを用いた湧水処理構造

【課題】 二重スラブ構造の構築後に、土間コンクリートを流れる湧水の排水を阻害することのない湧水処理パネル10を得る。
【解決手段】 天板部11と、天板部から下方に向かって形成された複数の凹部12を有する合成樹脂または繊維強化プラスチックからなる湧水処理パネル10において、凹部12の底面には排水溝24が形成されている。また、側辺領域13〜16に高さの違いを設け、多数枚の湧水処理パネル10を互いに接合したときの天井部の高さを一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の地下室等のように竣工後に地中に位置することとなる建築物の内部に生じる湧水を排水するのに好適な湧水処理パネルと、それを用いた湧水処理構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の地下室等のように竣工後に地中に位置することとなる建築物の内部には、打設した土間コンクリートを通してあるいは側壁のコンクリートを通して地下水などが湧き出るのを阻止することはできず、湧き出た水を排水するために、床構造を二重スラブ構造とすることが行われる。
【0003】
特許文献1には、土間コンクリートの上に、天板部と、天板部から下方に向かって形成された複数の凹部を有する合成樹脂製の湧水処理パネルを載置して、その上から床用コンクリートを打設するようにした地下構造物の排水構造が記載されている。土間コンクリートと天板部との間に下方に向かって形成した複数の凹部が存在することにより、排水空間が形成され、湧水はその空間を通して排水される。湧水処理パネルは前記凹部よりも大きな底面積を有する第2の凹部を有しており、施工時に作業者がこの第2の凹部内に足を置くようにすることにより、施工時に湧水処理パネルの凹凸形状が変形するのを防止することもできる旨の記載もある(特許文献1の第4欄第27〜34行)。
【0004】
特許文献2にも、同様な湧水処理パネルが記載されており、そこでは、天板部から下方に向かって形成された凹部の天板部側を天板に向けて拡開するとともに、天板部に補強用リブを設けている。特許文献3にも、同様な湧水処理パネルが記載されており、そこでは、天板部を部分的に陥没させて非開口型に複数の凹部を下方に向けて形成し、天板部と凹部の周側壁に連続する形で補強用リブを形成するようにしている。
【0005】
また、特許文献2および特許文献3に記載の湧水処理パネルは、その側辺部に、隣接したパネル同士が安定して接合できるよう、係合凹溝と係合凸条とが形成されており、敷き詰めた湧水処理パネル同士を安定的に接合すると共に、係合部から打設したコンクリートのノロが下方へ漏れ出るのを防止している。
【0006】
上記したいずれの特許文献に記載の湧水処理パネルでも、打設したコンクリートは凹部内に入り込んで硬化して、該凹部は支持脚として機能すると共に、コンクリートスラブ面と湧水処理パネルとの間に形成される前記凹部周囲の空間が湧水の流路として機能する。
【特許文献1】特許第2821619号公報
【特許文献2】特公平7−96789号公報
【特許文献3】特許第2743964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような湧水処理パネルを、土間コンクリートの上に、側辺部に形成した凹溝と凸条を係合しながら敷き詰め、その上から床用コンクリートを打設していく工法において、打設したコンクリートが入り込んで二重スラブ構造の脚部を構成することとなる天板部から下方に向かって形成された凹部は、湧水の流れを妨害して排水の妨げとなるのを避けられない。特に、特許文献1に記載の湧水処理パネルのように底面積の大きい第2の凹部を有する場合には、施工時の作業は容易となる一方において、第2の凹部は排水に対する大きな抵抗材となる。
【0008】
また、特許文献1および2に記載の湧水処理パネルでは、凹部の円筒面である周側壁は平坦面であり、コンクリート打設時の荷重で破損する恐れがある。さらに、特許文献2および3に記載の湧水処理パネルでは、施工時に作業者の足を置くための底面積の大きな凹部を有しないために、施工者が湧水処理パネルの上を移動するときに、パネルの凹凸形状を変形させてしまう恐れがある。
【0009】
さらに、隣接する湧水処理パネル同士の接合は、側辺部に形成した凹溝と凸条との係合で行っており、その部分からノロが漏洩するのはかなりの程度で阻止することができるが、構造上、隅部の係合部分には隙間が生じやすく、そこからノロが下方に漏洩しやすい。
【0010】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、二重床スラブ構造において、脚部となる凹部が湧水の排水を妨害するのを大きく低減できるようにした湧水処理用パネルを提供することを目的とする。本発明の他の目的は、床用コンクリートを打設した場合でも、パネルに破損が生じることなく湧水処理構造を構築することのできる湧水処理パネルを提供することを目的とする。また、本発明のさらに他の目的は、多数枚を接合して敷き詰めたときに接合部からのコンクリートノロの漏洩を一層確実に阻止することのできる湧水処理パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による湧水処理パネルは、天板部と、天板部から下方に向かって形成された複数の凹部を有する合成樹脂または繊維強化プラスチックからなる湧水処理パネルであって、前記凹部の底面には排水溝が形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記の湧水処理パネルは、二重床構造の脚部を構成することとなる凹部の底辺は平坦面でなく、排水溝が形成されているので、土間コンクリートに凹部の底面が接していても、凹部周囲の湧水は、底面に形成した排水溝を通過して流れることができるので、排水性能は格段に向上する。
【0013】
好ましくは、凹部の底面に形成する排水溝は十文字状に形成されており、各排水溝の両端部は、その中間部よりも広い断面積を持つようにされる。それにより、湧水処理パネルの敷設方向に左右されずに、良好な排水性能を確保することができる。
【0014】
好ましくは、前記凹部の周側壁には補強用リブが形成される。また好ましくは、凹部の底面の排水溝と周壁部の補強用リブは連続するようにして形成される。これにより、凹部の周側壁の強度を大きくすることができ、床用コンクリートを打設したときに凹部に破損が生じるのも回避することができる。さらに、天板部の一部にも補強用リブを形成してもよく、それにより、天板部の強度も大きくすることができる。天板部に形成する補強リブと凹部の周側壁に形成する補強リブは不連続であってもよく、連続していてもよい。このような補強リブを形成することにより、本発明による湧水処理パネルを用いて湧水処理構造を構築するときの施工を、安定してかつ支障なく遂行することが可能となる。
【0015】
上記構成の湧水処理パネルは合成樹脂または繊維強化プラスチックのシートを通常の成形手法(例えば真空成形法等)により容易に製造することができる。より具体的には、湧水処理パネルの材料としては、ポリプロピレンシート、硬質塩化ビニルシート、ポリスチレンシートなどが好ましい。限定されるものではないが、厚さは0.5mm〜3mm程度であり、形成される凹部の直径は、好ましくは、1cm〜15cm程度である。
【0016】
施工に当たって、建物の土間コンクリートの上に湧水処理パネルを必要な枚数だけ敷き詰め、その上にコンクリート床を構成する床用コンクリートを打設する。打設したコンクリートは前記凹部内に入り込み、そこに充満して硬化する。硬化したコンクリートは上からの荷重に対する支柱(脚)として有効に機能する。また、土間コンクリート表面と湧水処理パネルとの間には凹部を除いた領域に空間が形成されており、その空間は湧水の排水路として効果的に機能する。本発明の湧水処理パネルでは、さらに、凹部の底面に前記のように排水溝が形成されているので、支柱(脚)として機能する凹部により、湧水の排水が阻害されることもない。
【0017】
打設した床用コンクリートが流入、硬化して、支柱(脚)として機能することとなる凹部の数をいくつにするかは、予想される偏荷重あるいは集中荷重などを考慮して、適宜設定する。凹部はすべて同じ形状あるいは同じ容積のものでもよいが、一部の凹部を他の凹部よりも容積の大きなもの(すなわち底面積をより大きなもの)とすることもできる。この場合、容積の大きな凹部には他の凹部よりも多くのコンクリートが入り込み耐荷重性能が大きくなるので、そのコンクリート柱部分に構造物としての主荷重を負担させることが可能となる。容積の大きな凹部の直径は、限定されるものではないが、数十cm好ましくは10cm〜30cm程度が好ましい。凹部の直径が大きくなっても、その底面には排水溝が形成されており、排水が阻害されることはない。
【0018】
床面積によっては、一枚の湧水処理パネルで土間コンクリート上面を覆うことができる場合もある。しかし、通常の場合、建物の土間コンクリートの上面は複数枚の湧水処理パネルによって覆われる。その際に、湧水処理パネル同士の接合部から、打設した床用コンクリートのノロが下方、すなわち排水路内に流れ込むのを確実に阻止することが必要となる。そのために、本発明による湧水処理パネルの好ましい態様では、全体が矩形状であり、同じ湧水処理パネルを隣接させたとき、対向する側辺領域にそれぞれ形成された複数の凹部は、互いに嵌合した状態で、かつ当該側辺領域の天板部を重ね合わせた状態で、相互に接続できるように、側辺に沿って凹部が形成されている。このような構成とすることにより、打設した床用コンクリートのノロが接合部を通過して排水路内に流れ込むのを確実に阻止することができる。
【0019】
上記構成の湧水処理パネルの場合、互いに隣接して接合している湧水処理パネルの側辺領域は、2枚のシートが重なった状態となり、隅部では最大4枚のシートが重なった状態となる。湧水処理パネルのシート厚は通常0.5mm〜3mm程度であり、重畳した部分の高さが天板部の中央部の高さと異なるようになっても大きな支障は生じない。しかし、多数枚敷き詰めた湧水処理パネルの上面、すなわち天面部の上面を均一な平面とすることは、敷き詰めた湧水処理パネルに部分的な浮き上がり等を生じさせないためにも望ましい。
【0020】
それに対処するために、本発明による湧水処理パネルの好ましい態様では、隣接する湧水処理パネルを、対向する側辺領域にそれぞれ形成した複数の凹部を互いに嵌合させた状態で接続し、接続した側辺領域の天板部を重ね合わせたとき、重ね合わせた後の側辺領域の天板部の高さが、天板部の中央部分の高さとほぼ等しい高さとなり得るように、側辺領域の天板部は一部が天板部の中央部分よりも低く設定されている。この態様とすることにより、不要な浮き上がりを生じさせることなく多数枚の湧水処理パネルを土間コンクリートの上に敷き詰めることが可能となり、一層安定した湧水処理構造を施工することができる。
【0021】
本発明は、また、上記した湧水処理パネルを建造物の地下室等の土間コンクリートの上に配置し、その上に床用コンクリートを打設して形成される地下室等の湧水処理構造をも開示する。
【0022】
なお、上記の説明では、湧水処理パネルの上に床用コンクリートを直接打設するものについて説明したが、敷き詰めた湧水処理パネルの上に断熱材としての発泡樹脂板を配置し、その上に床用コンクリートを打設するようにしてもよい。その際に、湧水処理パネルに形成した一部の凹部に、打設した床用コンクリートが流入するように、発泡樹脂板の対応する箇所に貫通孔を形成することが望ましい。また、湧水処理パネルとして、一部に容積の大きな凹部を持つ形態のものを用いる場合には、その容積の大きな凹部に床用コンクリートが流入するように、発泡樹脂板の対応する箇所に貫通孔を形成することが望ましい。この構造の湧水処理構造では、コンクリートが流入した凹部が構造支柱(脚)として機能することになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、二重スラブ構造の構築後に、土間コンクリート上を流れる湧水の排水を阻害することのない湧水処理パネルを得ることができる。また、施工時に作業者がパネル上を歩行した場合や、コンクリートを打設した場合でも、変形や破損が生じることのない湧水処理パネルを得ることができる。さらに、多数枚を接合して敷き詰めたときに接合部からコンクリートのノロが漏洩するのを確実に阻止することのできる湧水処理パネルを得ることができる。そのことから、本発明による湧水処理構造は、その施工が容易であるばかりでなく、施工後も、長期にわたり土間コンクリート上の排水路に詰まり等の不都合が生じることなく安定したものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照しつつ、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1は本発明による湧水処理パネルの一例を示す斜視図であり、図2は図1に示す湧水処理パネルの平面図である。また、図3はその一部を裏面側から見て拡大して示している。図4と図5は複数枚の湧水処理パネルを接続して敷き詰めるときの状態を説明しており、図4は接合前の状態を、図5は接合後の状態を示している。図6は湧水処理パネルの天板部中央部と側辺領域との高さの違いを説明するための図。図7は図5でのa−a線による断面図(図7a)と、b−b線による断面図(図7b)である。図8は本発明による湧水処理パネルを用いて構築した湧水処理構造の一例を断面図で示している。図9aは湧水処理パネルの他の例を示す斜視図であり、図9bはその平面図である。
【0025】
湧水処理パネル10は、この例では非発泡合成樹脂シートを真空成形したものであり、全体として1m×1mの4角形をなしている。湧水処理パネル10は、天板部11と、天板部11の表面側から底面側に向かって逆円錐状をなす多数の凹部12が一体成形されており、その中で中央部に形成された凹部12aは他の凹部12よりも底面積が大きくされている。なお、凹部12は逆円錐状でなくてもよく、円筒状、角柱状等であってもよい。
【0026】
天板部11の4つの側辺領域13〜16には、等しい数(図のものでは6個)の凹部12bが等しい間隔で形成されており、側辺領域の一部でもある各隅部17〜20にも、凹部12bと同様な凹部12cが形成されている。さらに、各凹部12、12bの間には、深さの浅い第2の凹部21が形成されている。なお、この第2の凹部21は湧水処理パネル10の曲げ強度を増強する目的のものであり、第2の凹部21は省略することができる。後記するように、前記側辺領域13〜16の幾つかと隅部17〜20の幾つかは、天板部11の中央部分の高さよりも所定距離だけ低い位置とされている。
【0027】
天板部11には、側辺領域13と14の内側を区画するようにして90度に交差する補強用リブ22が形成されている。また、各第2の凹部21を連結するようにして、前記補強用リブ22とは45度の角度で傾斜するようにして、補強用リブ23が互いに直交するように形成されている。この補強リブ22,23は、湧水処理パネル10、特に天板部11の曲げ強度を増強するものであり、省略することもできる。
【0028】
各凹部12,12a,12b,12cには、図3の裏面から見た拡大部によく示すように、底面部に、内側に凸である排水用の溝24が十文字に交差するようにして形成されている。また、各凹部の周側壁にはやはり内側に凸である4本の補強リブ25が形成されている。必須のものではないが、図示のものでは、排水溝24と補強用リブ25とは連通しており、凹部の強度を大きくしている。
【0029】
天板部11の中央部に形成されている底面積の大きい(容積の大きい)凹部12aにおいては、排水溝24は45度に傾斜した方向で互いに交差するようにして計4本形成されており、その端部に連続するようにして補強用リブ25が8本形成されている。これは凹部12aの底面での排水を一層良好にするとともに、容積の大きな凹部12aの強度を上げるためである。
【0030】
図3によく示すように、各凹部12,12a,12b,12cの底面に形成される排水溝24は、その両端部の断面積が中間部の断面積よりも広い形状、すなわち、外側に向けてラッパ状に拡開する形状となっており、それにより、排水溝24へ湧水の入り込む入り口面積が大きくなっている。
【0031】
上記したように、本発明による湧水処理パネル10では、各凹部12,12a,12b,12cは底面に排水溝24を有しており、その排水溝24内を湧水が流れることができるので、施工後の湧水処理構造において、該凹部12の底部において排水機能が阻害されることはない。さらに、天井面に補強用リブ22、23を形成することにより、天板部11の曲げに対する強度を大きくしており、また、凹部12,12a,12b,12cの周側壁に補強リブ25を形成することにより、打設された床用コンクリートがその中に充満して硬化するときに、凹部12が側圧等により破壊することも回避している。さらに、中央部に容積の大きな凹部12aを形成したことにより、作業者が施工の途中で、敷き詰められた湧水処理パネル10の上を移動するときに、その凹部12aを利用することができ、大きな変形が湧水処理パネル10に生じるのも阻止することができる。
【0032】
図8に示すように、上記の湧水処理パネル10を土間コンクリート30の上に必要枚数だけ互いに接合するようにして敷き詰め、その上に必要な配筋31をした後、床用コンクリート32を打設し硬化させる。それにより、二重スラブ構造が形成される。各凹部12、12a、12b、12c内に入り込んで硬化したコンクリート32aは支柱として機能し、支柱と支柱の間の空間33は湧水の流路として機能する。さらに、前記したように、各凹部12,12a,12b,12cの底面に形成した排水溝24も湧水の流路として効果的に機能する。それにより、土間コンクリート30から湧き出る湧水や側壁のコンクリート部から湧き出る湧水は効果的に排水される。
【0033】
図4、図5は、所要枚数の湧水パネル10をX方向およびY方向に敷き詰める場合の一例を示している(なお、図では天板部11の中央部分に形成される凹部12、12aと補強用リブ22、23,25のすべては省略している)。図4に示すように、所要枚数の湧水処理パネル10が土間コンクリートの上に配置され、各隣接する湧水処理パネル10の側辺領域13〜16と隅部17〜20とが重なるようにして、かつ、そこに形成した凹部12b,12cが互いに嵌合するようにして、互いに接合され一体化されて、図5に示す状態となる。
【0034】
接合した状態を4枚の湧水処理パネル10a〜10dを例に取り説明する。最初に左上の湧水処理パネル10aを置き、次に右上の湧水処理パネル10bを置き、次に左下の湧水処理パネル10cを置き、最後に右下の湧水処理パネル10dを置くとする。図5の拡大図に示すように、湧水処理パネル10aの右上隅部17の上には、右側の湧水処理パネル10bの左上隅部20が重なり、湧水処理パネル10aの右側辺領域14の上には、湧水処理パネル10bの左側辺領域16が重なる。また、湧水処理パネル10aの右下隅部18の上には、湧水処理パネル10bの左下隅部19が重なる。これらの領域は2層構成となる。
【0035】
その状態で3枚目の湧水処理パネル10cを左下に置く。湧水処理パネル10aの左下隅部19の上には、湧水処理パネル10cの左上隅部20が重なり、湧水処理パネル10aの下側辺領域15の上には、湧水処理パネル10cの上側辺領域13が重なる。これらの領域は2層構成となる。また、湧水処理パネル10aの右下隅部18の上に重なっている湧水処理パネル10bの左下隅部19の上には、さらに、湧水処理パネル10cの右上隅部17が重なり、この部分は3層構成となる。
【0036】
次に、4枚目の湧水処理パネル10dを右下に置く。既に3層構成となっている湧水処理パネル10cの右上隅部17の上には、湧水処理パネル10dの左上隅部20が重なり、その部分は4層構成となる。右側の湧水処理パネル10cの右側辺領域14の上には、湧水処理パネル10dの左側辺領域16が重なり、また、上側の湧水処理パネル10bの下側辺領域15の上には、湧水処理パネル10dの上側辺領域13が重なる。これらの領域は2層構成となる。以下、X方向とY方向に湧水処理パネル10を順次接合していくときに、同じ重なり態様が繰り返される。
【0037】
本発明の湧水処理パネル10では、接合部において、各側辺領域に形成した凹部12bと隅部に形成した12cとが互いに嵌合した状態となり、かつ、側辺領域と隅部は複数枚が重畳した状態となるので、床用コンクリートを打設したときに、そのノロが接合部から下方に漏洩するのをほぼ完全に抑制することができる。
【0038】
その際に、重畳部分では2層構成あるいは4層構成となるので、敷き詰めた湧水処理パネルの上面すなわち天板部11側に段差が生じ、湧水処理パネルの厚さが厚いような場合に、安定性を欠く場合が起こり得る。そのために、本発明による湧水処理パネル10の好ましい態様では、側辺領域の天板部は一部が天板部の中央部分よりも低く設定され、それにより、隣接する湧水処理パネルを側辺領域の天板部を重ね合わせて接合したときに、重ね合わせた後の側辺領域の天板部の高さと、天板部の中央部分の高さとがほぼ等しい高さとなるようにしている。
【0039】
具体的には、図6に示すように、側辺領域13(上辺側)と側辺領域16(左辺側)および隅部20(左上隅部)は、天板部11の中央部分と同じ高さとし、隅部17(右上隅部)および側辺領域14(右辺側)と側辺領域15(下辺側)は、天板部11の中央部分よりもパネルの厚さ1枚分だけ下に下がった位置とし、隅部19(左下隅部)は、天板部11の中央部分よりもパネルの厚さ2枚分だけ下に下がった位置とし、隅部18(右下隅部)は、天板部11の中央部分よりもパネルの厚さ3枚分だけ下に下がった位置としている。
【0040】
図7aは、図6でのa−a線に沿う断面、すなわち、2層構成となっている部分の断面であり、湧水処理パネル10aの天板部11の中央部分の高さと、その側辺領域14において重畳された湧水処理パネル10bの側辺領域16の高さとが同じ高さとなっている。また、図7bは、図6でのb−b線に沿う断面、すなわち、4層構成となっている部分の断面であり、ここでも、最も上位に位置する湧水処理パネル10dの隅部20の高さが、他の湧水処理パネル10の天板部11の中央部分の高さと同じとなることがわかる。
【0041】
なお、段差を付けた側辺領域および隅部に形成される凹部12b、12cの深さは、天板部11の中央部に形成される凹部11の深さよりもその段差分だけ浅くして、一枚の湧水処理パネルに形成されるすべての凹部の底面のレベルを一致させることは必要である。
【0042】
図9a,図9bは、本発明による湧水処理パネルの他の例を示している。この湧水処理パネル101では、天板部11に形成した補強リブ22,23と各凹部12,12a,12b,12cの周壁面に形成した補強リブ25、さらにはその底面に形成した排水溝24が、相互に連続した形状となっていること、および天板部11の4つの側辺領域13〜16にも、補強リブ26が形成されていること、の2点で、図1,2に示した湧水処理パネル10と形状を異にしている。このような補強リブ構成とすることにより、湧水処理パネル10の曲げに対する強度をさらに高くすることができる。なお、図9において、図1,図2に示す湧水処理パネル10における部材と同じ機能を奏する部材には同じ符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による湧水処理パネルの一例を示す斜視図。
【図2】図1に示す湧水処理パネルの平面図。
【図3】図1に示す湧水処理パネルの一部を拡大して示す図。
【図4】複数枚の湧水処理パネルを接続して敷き詰めるときの状態を説明する図であり、図4は接合前の状態を示す。
【図5】図4に続く図であり、接合後の状態を示す。
【図6】湧水処理パネルの天板部の中央部と側辺領域との高さの違いを説明するための図。
【図7】図6でのa−a線による断面図(図7a)と、b−b線による断面図(図7b)。
【図8】本発明による湧水処理パネルを用いて構築した湧水処理構造の一例を示す断面図。
【図9】図9aは本発明による湧水処理パネルの他の例を示す斜視図、図9bはその平面図。
【符号の説明】
【0044】
10、101…湧水処理パネル、11…天板部、12、12a,12b,12c…凹部、13〜16…4つの側辺領域、17〜20…4つの隅部、22、23、25…補強用リブ、24…凹部の底面に形成した排水溝、30…土間コンクリート、31…配筋、32…床用コンクリート、33…排水路としての空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と、天板部から下方に向かって形成された複数の凹部を有する合成樹脂または繊維強化プラスチックからなる湧水処理パネルであって、前記凹部の底面には排水溝が形成されていることを特徴とする湧水処理パネル。
【請求項2】
前記排水溝は十文字状に形成されており、各排水溝の両端部は中間部よりも広い断面積を有することを特徴とする請求項1に記載の湧水処理パネル。
【請求項3】
前記凹部の周側壁には補強用リブが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の湧水処理パネル。
【請求項4】
前記凹部の底面の排水溝と周壁部の補強用リブは連続していることを特徴とする請求項3に記載の湧水処理パネル。
【請求項5】
天板部の一部にも補強用リブが形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の湧水処理パネル。
【請求項6】
天板部から下方に向かって形成された複数の凹部のうち、一部の凹部は他の凹部よりも容積の大きなものとされていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の湧水処理パネル。
【請求項7】
湧水処理パネルは矩形状であり、同じ湧水処理パネルを隣接させたとき、対向する側辺領域にそれぞれ形成した複数の凹部を互いに嵌合した状態で、かつ当該側辺領域の天板部を重ね合わせた状態で相互に接続できるように、側辺に沿った凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の湧水処理パネル。
【請求項8】
隣接する湧水処理パネルを、対向する側辺領域にそれぞれ形成された複数の凹部を互いに嵌合させた状態で接続して側辺領域の天板部を重ね合わせたとき、重ね合わせた後の側辺領域の天板部の高さが、天板部の中央部分の高さとほぼ等しい高さとなり得るように、側辺領域の天板部は一部が天板部の中央部分よりも低く設定されていることを特徴とする請求項7に記載の湧水処理パネル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の湧水処理パネルを建造物の地下室等の土間コンクリートの上に配置し、その上に床用コンクリートを打設して形成されてなることを特徴とする地下室等の湧水処理構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−46054(P2006−46054A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88849(P2005−88849)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】