説明

湯わかし器

【目的】 湯わかし器の容器内に取付けた浄化装置の浄化剤と液体との接触の機会を多くすることにより液体の浄化効果を高めることである。
【構成】 浄化装置12の内部に浄化剤15を収納すると共に、フロート16を収納し、該浄化装置12を容器2の内面に回転自在に取付けて、液面近傍に浮遊せしめ、沸騰状態又は沸騰近くの状態における液体5と浄化装置12との相対的な上下運動により、浄化装置12内の液体5を外部の液体5と置換させ、浄化剤15との接触の機会を増し、浄化効果を高めるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電気ポット等の湯わかし器に関し、特にその浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電気ポットの容器内部に浄化装置を設置する場合、ヒーターの直上にこれを設置して、ヒーターの発熱による液体の対流を利用してその液体を浄化装置内に通過させ、その通過の際に浄化剤と接触させて浄化することが知られている。
【0003】また、容器底面の排出口の直上に浄化装置を設置して、排出口から流出する液体の流れを利用して、その液体が浄化装置を通過する際に浄化剤と接触させて浄化することも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のごとき浄化装置を用いて浄化効果を高めるには、液体を浄化剤に十分に接触させる必要がある。しかるに、前述の対流を利用する方法は、浄化剤や浄化剤を包む部材の隙間が小さいため液体の通過抵抗が大きい。このため、液体のほとんどが浄化装置の外部を通過し、浄化剤との接触が不十分となり、浄化効果が低い問題がある。
【0005】また、排出口から流出する液体の流れを利用する方法は、液体は通過しやすいが、浄化剤との接触は一過性であり、この場合も浄化効果は左程上がらない。
【0006】そこで、この発明は液体と浄化剤との接触の機会を多くすることにより浄化効果を高めた湯わかし器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、この発明は浄化装置を容器内部に設けた湯わかし器において、上記浄化装置をケースとその内部に収納された浄化剤とにより構成し、上記ケースに液通過孔を設け、上記浄化装置の比重をそれ自身が液面近傍に浮遊する大きさに設定し、該ケースの一端部をヒンジピン及び取付け部材を介して容器又は蓋の一部に回動自在に取付けた構成としたものである。
【0008】上記ヒンジピンを浄化装置に設け、そのヒンジピンが上下方向に移動しうる案内溝を上記取付け部材の案内壁に設けた構成とすることができる。
【0009】また、上記取付け部材を容器の一部に上下方向に回動自在に取付けた取付けアームにより構成し、上記ヒンジピンを取付けアームの先端に設け、そのヒンジピンを浄化装置に回転自在に挿入した構成とすることもできる。
【0010】更に、上記取付け部材を蓋の一部に上下方向に回動自在に取付けた取付けアームにより構成し、上記ヒンジピンを該取付けアームの先端に設け、そのヒンジピンを浄化装置に回動自在に挿入した構成とすることもできる。
【0011】
【作用】上記構成の湯わかし器においては、浄化装置が液面近傍で浮遊状態にあるため、液体を沸かす際の液面の上下方向の動きに追従して上下動する。この場合、浄化装置の動きは、それ自体の慣性により液面の動きに対して遅れが生じるため、浄化装置と液体との上下運動に相対的な差異が生じる。その相対的な差異により浄化装置内部の液体と外部の液体とが置換され、その置換の際に液体が浄化剤と接触して浄化される。液体の置換は液面の上下動に応じて頻繁に生じるため、浄化効果が上がる。
【0012】
【実施例】図1乃至図3に示した第1実施例の電気ポットは、本体1の内部に収納した容器2及びその容器2を開閉する蓋3を有し、容器2の底面に装着したヒーター4により内部の液体5を加熱する。また、その液体5をポンプ6の作用により吐出口7から吐出するようになっている。
【0013】その他、本体1の底部にはマイコン等を搭載した制御基板8が取付けられ、これによりヒーター4の加熱等の制御を行う。また、本体1の底面に該本体1の転倒報知のための傾き検出スイッチ11が設けられる。
【0014】上記の容器2の内面に浄化装置12が取付け部材13により着脱自在に取付けられる。浄化装置12は、図2及び図3に示すようにケース14とその内部に収納された浄化剤15及び発泡プラスチックからなるフロート16により構成される。ケース14はケース下部材17と、これに嵌合されたケース上部材18とから成る。ケース下部材17は中心円筒部19とこれを囲んだ外壁21との間に浄化材15を収納している。ケース上部材18は、上記中心円筒部19と、前記外壁21の外面に嵌合され、その外壁21に形成された係合爪24に係合される。
【0015】ケース下部材17及びケース上部材18には、それぞれ窓孔25、26が設けられ、その窓孔25、26にメッシュ27が張られる。
【0016】また、ケース下部材17の下面及びケース上部材18の上面に、それぞれ下カバー28及び上カバー29が被せられ、また、両カバー28、29の外周縁相互間に外枠31が嵌合され、前記中心円筒部19にその下方から挿入したナット部材32により下カバー28を押さえ、またケース上部材18の中心部分からナット部材32に挿入螺合したビス33により上カバー29を押さえている。これら両カバー28、29にはそれぞれ液通過孔34、35が設けられる。
【0017】上記の外枠31と、ケース上部材18との間に前記のフロート16が収納される。
【0018】浄化装置12全体の比重はほぼ液体5と同等になるよう設定され、液体5内で浮遊状態にあるとき、ケース上部材18の上面が液面とほぼ同じか、それより若干低い位置にある(図1参照)。
【0019】浄化装置12の外枠31の両側面には、浄化装置12の一端に片寄った位置にヒンジピン37が突設される。
【0020】なお、上述した浄化装置の各カバー28、29及び外枠31に変えて、前記のケース下部材17、ケース上部材18及びフロート16を金属又はプラスチックでなるメッシュ製のケースに収納するようにしてもよい。
【0021】取付け部材13は、図3に示すように、取付け板38とその両側辺を前方に屈曲して形成した案内壁39、39を有する。その案内壁39、39の対向内面には上下方向の案内溝41が形成され、この案内溝41に浄化装置12のヒンジピン37が回転及び上下動自在に挿入される。
【0022】上記案内溝41の下端は閉塞され、また上端近くに内向きの打出しによりストッパー42を設け、ヒンジピン37の抜け出しを防止している。また、前記取付け板38の下端に前方に突き出した支持部43が設けられ、液体5が全て排出されてヒンジピン37が案内溝41の最下端に移動した際、その支持部43により浄化装置12の背面を支え(図1及び図2の二点鎖線参照)、容器2の底面の発熱部に接触しないようにしている。
【0023】上記取付け部材13の取付け板38の背面にはマグネット44が取付けられ、これにより容器2の内面に着脱自在に取付けられる。
【0024】第1実施例の電気ポットは以上のごときものであり、図1に示すように、容器2の内面の適宜な高さに浄化装置12を取付け、液体5を容器2に入れると、浄化装置12の内部に液体5が流入し、該浄化装置12がその上カバー29の上面がほぼ液面と一致する状態に浮遊する。
【0025】この状態でヒーター4に通電して液体5を加熱し、沸騰近くになると液体5の液面が上下に動き、その動きに合わせて浄化装置12もヒンジピン37が案内溝41に沿って摺動するので、同様に上下動する。
【0026】この場合、浄化装置12は一定の質量を有するので、上下運動の際に慣性を生じ、液体5の上下動に対して遅れを生じる。このため、浄化装置12と液体5との上下運動に相対的な差が生じる。その結果浄化装置12内の液体5と外部の液体5とが置換し、その置換の際に浄化剤15と接触して液体5が浄化される。
【0027】上記のごとき浄化装置12と液体5との相対的な上下運動は、液体5が沸騰するか又は沸騰近くの温度に達すると、激しくかつ頻繁になるので、浄化効果が一層促進される。
【0028】上記第1実施例の電気ポットは、図6(a)に示すごとき制御装置を備えている。即ち、本体1が一定角度以上傾斜すると、傾き検出スイッチ11の作用により、傾き検出信号が制御基板8上のマイコン55に送られ、そのマイコン55の制御により、ヒーター駆動回路56を経てヒーター4への通電を遮断すると共に報知手段57を経て報知信号を送出する。この場合、電気ポットを一時的に持ち上げた際などに報知信号が出ないようにするため、本体1の傾きを検出してから所定の遅延時間をおいてから、ヒーター4の遮断、報知信号の送出を行うようにすることが望ましい。この場合のマイコン55のフローチャートを図6(b)に示す。
【0029】次に、図4に示した第2実施例は、電気ポット及び浄化装置12は前述の第1実施例と同じである。取付け部材45は、取付け板46とその両側に上下方向に回動自在に取付けた2本の取付けアーム47により構成され、その取付けアーム47の先端を内向きに屈曲してヒンジ部48を形成し、そのヒンジ部48を浄化装置12の外枠31の一端に片寄った位置に回動自在に挿入する。
【0030】上記の取付け板46の背面にもマグネット44が取付けられ、これにより容器2の内面に吸着される。
【0031】容器2内に液体5が入れられると、浄化装置12は浮遊し、前述の場合と同様に液体5の加熱により液体5と浄化装置12との相対的な上下運動が生じ、液体5の置換により浄化剤15との接触が生じ浄化が行われる。
【0032】図5に示した第3実施例は取付け部材49が2本の取付けアーム51のみにより構成される。その取付けアーム51の一端に設けた屈曲部52を電気ポットの蓋3の下板53に回動自在に取付け、その取付けアーム51の他端に設けたヒンジ部54を前記第2実施例の場合と同様に浄化装置12の外枠31に挿入している。
【0033】浄化装置12による浄化作用は前述の場合と同様に行われるが、この場合は蓋3を開けると、図5(a)の二点鎖線で示すように、蓋3と共に浄化装置12が引き上げられる。また蓋3を閉めると元の状態に戻る。従って、蓋3の開閉に伴って液体の置換が生じるので、液体の浄化が促進される。
【0034】
【発明の効果】以上のように、この発明は浮遊状態に取付けた浄化装置と液体との相対的な上下運動により、浄化装置内部の液体と外部の液体とを置換させるようにしたので、浄化剤と液体との接触の機会が多くなり、浄化効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の断面図
【図2】同上の浄化装置の断面図
【図3】同上の浄化装置の分解斜視図
【図4】(a)第2実施例の一部省略断面図
(b)同上の浄化装置の斜視図
【図5】(a)第3実施例の一部省略断面図
(b)同上の浄化装置の斜視図
【図6】(a)第1実施例の制御部分のブロック図
(b)同上のマイコンのフローチャート
【符号の説明】
1 本体
2 容器
3 蓋
4 ヒーター
5 液体
6 ポンプ
7 吐出口
8 制御基板
11 傾き検出スイッチ
12 浄化装置
13 取付け部材
14 ケース
15 浄化剤
16 フロート
17 ケース下部材
18 ケース上部材
19 中心円筒部
21 外壁
24 係合爪
25、26 窓孔
27 メッシュ
28 下カバー
29 上カバー
31 外枠
32 ナット部材
33 ビス
34、35 液通過孔
37 ヒンジピン
38 取付け板
39 案内壁
41 案内溝
42 ストッパー
43 支持部
44 マグネット
45 取付け部材
46 取付け板
47 取付けアーム
48 ヒンジ部
49 取付け部材
51 取付けアーム
52 屈曲部
53 下板
54 ヒンジ部
55 マイコン
56 ヒーター駆動回路
57 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 浄化装置を容器内部に設けた湯わかし器において、上記浄化装置をケースとその内部に収納された浄化剤とにより構成し、上記ケースに液通過孔を設け、上記浄化装置の比重をそれ自身が液面近傍に浮遊する大きさに設定し、該ケースの一端部をヒンジピン及び取付け部材を介して容器又は蓋の一部に回動自在に取付けたことを特徴とする湯わかし器。
【請求項2】 上記ヒンジピンを浄化装置に設け、そのヒンジピンが上下方向に移動しうる案内溝を上記取付け部材の案内壁に設けたことを特徴とする請求項1に記載の湯わかし器。
【請求項3】 上記取付け部材を容器の一部に上下方向に回動自在に取付けた取付けアームにより構成し、上記ヒンジピンを取付けアームの先端に設け、そのヒンジピンを浄化装置に回転自在に挿入したことを特徴とする請求項1に記載の湯わかし器。
【請求項4】 上記取付け部材を蓋の一部に上下方向に回動自在に取付けた取付けアームにより構成し、上記ヒンジピンを該取付けアームの先端に設け、そのヒンジピンを浄化装置に回動自在に挿入したことを特徴とする請求項1に記載の湯わかし器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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