説明

湯水混合器

【課題】湯と水とに旋回流を生じさせて混合することにより、混合時の均一化を短時間で行わせるに際し、湯と水のそれぞれの弁から湯と水の混合までの距離と時間を短くできる湯水混合器を提供する。
【解決手段】内部に湯と水とを混合する混合室6を有するボデー1を備える。ボデー1内に、水の流量を調整する水用弁3と、湯の流量を調整する湯用弁4とが吐出口を対向させて配置されている。水用弁3の吸入側に設けられた水の流入口部13と、湯用弁4の吸入側に設けられた湯の流入口部14とを備える。ボデー1の混合室6に連通して設けられた流出口部を備える。水の流入口部13と水用弁3との間に設けられ、水用弁3に流入する水に旋回流を生じさせる水の旋回部16と、湯の流入口14と湯用弁4との間に設けられ、湯用弁4に流入する湯に旋回流を生じさせる湯の旋回部17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と、加熱された湯とを混合することにより設定された温度の温水を供給する際に、湯と水とを混合するための湯水混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からある湯水混合器は、湯の供給量と水の供給量とを調整する混合用制御弁の下流側に温度センサを配置し、この温度センサで検知される温度に基いて温度制御を行なっていた。
【0003】
従来の湯水混合器の混合用制御弁の部分では、湯と水とが同時に供給されて設定温度の温水となるが、実際に湯と水とが合流した直後の流路では、湯と水との一部しか混ざり合わず、設定温度より温度が高い湯の層の流れと、設定温度より温度が低い水の層の流れとが存在し、温度センサで正確な温度を測定することができない。
【0004】
上述の湯の層と、水の層とは最終的に混ざり合いほぼ均一の温度の温水となるが、略均一の温度になるまで、混合用制御弁から比較的長い距離を流れることになる。この場合に、湯と水とが混合された温水の正確な温度を温度センサで図るためには、混合用制御弁の近傍で、湯と水とが混合された直後になる流路の上流より、湯と水とが混合された位置より下流側で、湯と水とが略均一に混ざり合う混合用制御弁より離れた位置に温度センサを配置する必要がある。なお、湯と水との混合直後になる位置で温度センサにより温度を計測しても、流路の断面の位置によって温度が異なる可能性があり、温度センサの位置により異なる温度が測定されることになる。また、流量の変化等により湯と水とが混合された温水の流れ方が変化した場合にも測定温度が乱れる。この場合に、実際に湯と水とがほぼ均一に混ざりあった際の温度を測定できない。
【0005】
以上のように、混合用制御弁で湯の供給量と、水の供給量との割合を調整して混合される位置から離れた位置に温度センサがあることから、例えば、湯と水との割合を変更したことに基いて温度が変化した場合でも、温度センサが離れていることから、混合用制御弁における湯と水との混合比の変更から、実際の温度の変化がわかるまでに、長い時間差が生じることになる。
この場合に、温度制御において、温度測定の遅れを補正するための複雑な制御が必要になる。したがって、湯水混合器の開発時の制御プログラムの作成に手間がかかり、開発期間の長期化と、開発コストの増大を招く虞がある。
【0006】
ここで、湯水混合器において、円筒状の混合室に対して、既に制御弁を通過して流量や圧がそれぞれ調整された湯と水とを流入させる際に、それぞれの流入方向が混合室の円筒状の内周面に沿うようにして混合室内で旋回流が生じるようにしている。この際の旋回流の旋回方向は、湯と水とで同じになるようになっている。また、混合室の内周面に混合突起を設け、流入した際に旋回流となった湯と水とを混合突起に当てることにより、さらに渦流を発生させている。これにより湯と水とを均一に混合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−53655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述の特許文献1の湯水混合器では、調圧されるとともに混合比が調整された湯と水を円筒状の混合室の左右からそれぞれ混合室で旋回流を生じるように流入させる構造が複雑である。このように構造が複雑なため、湯水混合器の大型化を招く虞がある。
また、水側の弁および湯側の弁から混合室までの流路部分が長くなる虞があり、それぞれの弁で流量が調整されてから、実際に湯と水とが混合されるまでに時間がかる可能性がある。従って、湯と水とが略均一に混合される位置に温度センサを設ける場合に、混合制御弁での流量の調整から温度の測定が可能になるまで、上述の時間差が生じる虞がある。
言い換えれば、特許文献1の湯水混合器では、それぞれの弁から吐出された湯と水とを直ぐに混合させるのではなく、それぞれの弁から出た湯と水とを旋回させるための構造を経た後に混合させているので、弁から混合位置までの距離が長くなってしまい、必ずしも湯と水との混合を充分に効率化して短時間でこれらを略均一に混合することができていない。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、湯と水とに旋回流を生じさせて混合することにより、混合される水と湯との均一化を短時間で行わせるに際し、旋回流を生じさせる構造を湯の流量を決める弁と、水の流量を決める弁との上流側にそれぞれ設け、二つの弁から吐出される湯と水とを直ぐに混合させることにより、湯と水のそれぞれの弁から湯と水を混合させる混合室までの距離と時間を短くできる湯水混合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の湯水混合器は、内部に湯と水とを混合する混合室を有するボデーと、
前記ボデー内に設けられ、吐出側を前記混合室に向けるとともに水の流量を調整する水用弁と、
前記ボデー内に設けられ、吐出側を前記混合室に向けるとともに湯の流量を調整する湯用弁と
前記ボデーの前記水用弁の吸入側に設けられた水の流入口と、
前記ボデーの前記湯用弁の吸入側に設けられた湯の流入口と、
前記ボデーの混合室に連通して設けられた流出口と、
前記水の流入口と前記水用弁との間に設けられ、当該水用弁に流入する水に旋回流を生じさせる水の旋回部と、
前記湯の流入口と前記湯用弁との間に設けられ、当該湯用弁に流入する湯に旋回流を生じさせる湯の旋回部とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明においては、水の旋回部により水用弁に流入して混合室に流出する水に旋回流が生じており、旋回流が生じた水が混合室に至る。また、湯の旋回部により湯用弁に流入して混合室に流出する湯に旋回流が生じさせられており、旋回流が生じた湯が混合室にいたる。混合室では、旋回する水と湯とが出会うことで、流出口に流出する際に、湯と水とがほぼ均一になるように混合される。
【0012】
この場合に、湯用弁と混合室との間に旋回流を生じさせる構造がなく、水用弁と混合室との間にも旋回流を生じさせる構造がないので、湯用弁および水用弁は、混合室に隣接した状態となる。すなわち、湯用弁から吐出された湯と、水用弁から吐出された水が直ぐに混合されるとともに、その際にそれぞれの旋回流により直ぐに均一な状態に混合される。
【0013】
したがって、水用弁および湯用弁に近接して湯と水とが混合された温水の温度を計測する温度センサを配置できる。これにより温水温度を水用弁と湯用弁との開度を調整して温度制御する際に、水用弁と湯用弁の開度を変更して直ぐに、その開度の変更による温度の変化を計測して出力できることになる。これにより、温度制御が煩雑になるのを防止することができる。
【0014】
請求項2に記載の湯水混合器は、請求項1に記載の発明において、
前記ボデーが略円筒状に形成され、
前記水用弁および前記湯用弁が、前記混合室を間に挟んで対向配置され、
前記水用弁の中心と前記湯用弁の中心と結ぶ線分と、前記ボデーの軸方向に沿う中心線とが略重なるように配置され、
前記水および前記湯の流入口の中心線が、前記ボデーの前記中心性に対して略直交するとともに、前記水および前記湯の流入口の中心線と、前記ボデーの中心線が交差しないようにオフセットされることにより前記水および湯の旋回部が構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明においては、円筒状のボデーと、流入口とが直交し、かつ、それらの中心線がオフセットされることにより、流入口からボデーに流入する湯と水とが旋回流となる。したがって、ボデーに対して流入口を直交させるとともに中心線を互いにオフセットするだけの簡単な構成で旋回流を発生させることができる。また、発生した旋回流は、その中心が略同じとなる水用弁、湯用弁の開口部を通過するので、旋回したままの状態で水用弁、湯用弁から吐出される。このような簡単な構造で、湯と水とを短時間で混合できので、湯水混合器の大型化を抑制し、かつ、湯水混合器を低コストで製造可能にすることができる。
【0016】
請求項3に記載の湯水混合器は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記水の旋回部における前記水の旋回方向と、前記湯の旋回部における前記湯の旋回方向が同じ方向になっていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明においては、水と湯の旋回方向を同じにして混合することにより、より確実かつ迅速に水と湯とを略均一に混合することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、湯水混合器において、水の流量を調整する水用弁から吐出された水と、湯の流量を調整する湯用弁から吐出された湯とをこれら水用弁および湯用弁の近傍で略均一に混ぜることができる。従って、水用弁および湯用弁で水および湯の流量を変更させたことによる温水の温度変化を直ぐに計測することが可能になり、湯と水とを混合して設定温度の温水を得る制御をより容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の湯水混合器を示す底面図である。
【図2】前記湯水混合器を示す側面図である。
【図3】図2のW−W 矢視断面図である。
【図4】図1のX−X矢視断面図である。
【図5】図1のY−Y矢視断面図である。
【図6】図2のZ−Z 矢視断面図である。
【図7】湯と水の混合比に基づく温水温度の計算値と温度センサの実測値とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1〜図6に示すように、この実施形態の湯水混合器は、本体部11が略円筒状のボデー1と、前記ボデー1の一方の端部に取り付けられるモータユニット2と、ボデー1内に配置された水用弁3および湯用弁4と、水用弁3および湯用弁4との間に設けられた混合室6とを備える。
ボデー1は、円筒状の本体部11と、本体部11の中央部に接続される円筒状の流出口部12と、本体部11の一方の端部に接続される円筒状の水の流入口部13と、本体部11の他方の端部に接続される円筒状の湯の流入口部14とを備える。
【0021】
また、ボデー1の内部には、本体部11の中央より少し一方の端部側に設けられ、水用弁3の水が流れる開口部31を備える弁座32と、本体部11の中央より少し一方の端部側に設けられ、湯用弁4の湯が流れる開口部41を備える弁座42と、水用弁3の弁座32と湯用弁4の弁座42との間に設けられるとともに、流出口部12に連通する前記混合室6と、水用弁3より一方の端部側で前記水の流入口部31が連通する水の旋回室16と、湯用弁4より他方の端部側で前記湯の流入口部32が連通する湯の旋回部17とを備える。
【0022】
前記円筒状の流出口部12の中心線bは、略円筒状の本体部11の中心線a(本体部11の内部空間の中心線)に直交する(交わる)配置となっている。
それに対して、本体部11の中心線aと、円筒状の水の流入口部13の中心線cおよび円筒状の湯の流入口部14の中心線dとは、交わらない配置となっている。また、本体部11の中心線bと、水の流入口部13の中心線cおよび湯の流入口部14の中心線dとは、互いの方向が90度異なるものとなっている。
【0023】
また、水および湯の流入口部13,14の中心線c,dは、本体部11の中心線aより下側にオフセットされるとともに、水および湯の流入口部13,14の中心線C,dの位置が本体部11の水および湯の旋回部16,17(ボデー1内の空間)の略底部の位置となっている。この構成により、水の流入口部13から水の旋回部16に流入した水が旋回部16の内周面に沿って旋回するとともに、湯の流入口部14から湯の旋回部17に流入した湯が旋回部17の内周面に沿って旋回するようになっている。
【0024】
なお、水の旋回部16および湯の旋回部17は、それぞれ本体部1の中央側(混合室6側)が細くなる円錐台状の空間となっており、二つの旋回部16,17は、円錐台(状の空間)の底面に対する上面を互いに間隔をあけて対向させた状態となっている。また、円錐台状の空間である旋回部16,17は、同軸上に配置されている。
【0025】
また、前記水用弁3の弁座32(開口部31)が水の旋回部16の円錐台の上面に対応する部分に設けられ、湯用弁4の弁座42(開口部41)が湯の旋回部17の円錐台の上面に対応する部分に設けられている。また、旋回部16,17と、開口部31,41および弁座32,42が全て同軸上に配置されている。また、旋回部16,17同士が略同じ形状とされ、開口部31,41同士が略同じ形状とされ、弁座32,42同士が同じ形状とされている。
【0026】
また、対向する水用弁3の開口部31と、湯用弁4の開口部41との間は、開口部31,41とより少し小さな径の円筒状の空間により連通されている。この円筒状の空間の軸方向に直交するとともに、流出口部12の中心線aに沿うように、直方体形状の空間である混合室6が設けられている。なお、混合室6は、開口部31,41同士を連通させる円筒状の空間を貫通した状態となっており、一方の端部側が上述の円筒状の空間から突出している。また、混合室6を構成する空間の他方の端部側は、円筒状の流出口部12の内部空間に連通しており、混合室6で混ぜられた湯水が略均一な温水として、流出口部12から流出可能になっている。
また、円筒状の本体部11の一方の端部側の開口は、モータユニット2により閉塞され、他方の端部の開口は、後述の連結軸支持部材5により閉塞されている。
【0027】
モータユニット2は、例えば、ステッピングモータのユニットである。また、モータユニット2は、直線状の雌ねじと雄ねじとが噛み合った状態のねじ機構等を備え、モータユニット2におけるモータの回転を直線運動に変換し、伝達軸24を、その軸方向(後述の弁軸としての中心線aの方向と同じ)に沿って移動可能としている。
この伝達軸24の移動により、後述のように一体に形成された水用弁3の弁体33と、湯用弁4の弁体43とを二つの弁座32,42の中心をつないだ線分である弁軸(中心線aに略一致する)方向に移動させることが可能になっている。この移動により水用弁3および湯用弁4は開閉されるようになっている。
【0028】
水用弁3および湯用弁4は、上述のような弁座32,42を備えるとともに、各弁座32,42の開口部31,41の開閉を行う弁体33,43を備える。
【0029】
また、二つの弁座32,42と同様に二つの弁体33,43は、同軸上に対向配置されている。
また、二つの弁体33,43は、それらの中心上に配置される連結軸36により一体に連結されている。なお、連結軸36の一方の端部(モータユニット)側は、弁体33を貫通した形状にされて、上述の伝達軸24に連結されている。また、連結軸36の他方の端部は、連結軸支持部材5により、連結軸36の軸方向に移動自在に支持されている。
連結軸支持部材5は、ボデー1の他方の端部を閉塞する蓋となる湾曲した凹状の曲面からなる蓋部51と、連結軸36の外径と略同様の内径を有し、連結軸36の他方の端部が挿入される筒部52とを備える。
【0030】
連結軸36に固定されている二つの弁体33,43の間隔は、上述の二つの弁座32,42の間隔より広くなっている。したがって、二つの弁体33,43同士の間の中心を、二つの弁座32,42の間の中心に合わせた場合に、弁体33と弁座32からなる水用弁3と、弁体43と弁座42からなる湯用弁4との両方が開放した状態となる。
【0031】
また、連結軸36に一体に設けられた二つの弁体33,43を図3および図6に示すように、モータユニット2(連結軸の一方の端部)側に最大限移動すると、弁座42に弁体43が当接して湯用弁4が全閉になり、この際に水用弁3が前開になる。逆に、二つの弁体33,43を連結軸支持部材5(他方の端部)側に最大限移動すると、弁座32に弁体33が当接して、水用弁3が全閉になり、湯用弁4が全開になる。
【0032】
また、水用弁3と湯用弁4は、上述のようにボデー1の中央部を間に配置される弁座32,42に対して、弁体33,43が弁座32,42に対して中央部側ではなく、外側に配置され、かつ、水および湯の流入口部13,14も弁座32,42の外側に配置され、さらに、流出口12が二つの弁座32,42の中央部側に配置されることから、水用弁3および湯用弁4は、互いに対向する側に水または湯を吐出するようになっている。
【0033】
また、ボデー1の水の流入口部13には、流入する水の温度を計測する水用温度センサ7が外部から内部に貫通して設けられ、湯の流入口部13には流入する湯の温度を計測する湯用温度センサ8が外部から内部に貫通して設けられている。また、湯と水とが混合された温水の流出口部12には、湯と水が混合された温水の温度を計測する温水用温度センサ9が外部から内部に貫通して設けられている。
【0034】
このような湯水混合器においては、モータユニット2のステッピングモータが図示しない制御装置により制御されている。制御装置には、上述の水用温度センサ7、湯用温度センサ8、温水用温度センサ9から入力される計測された温度に基いて、ステッピングモータを回転制御することにより、水用弁3および湯用弁4の開度を制御して、水と湯の混合比を調整する。これにより、流出口部12から流出される温水の温度が設定された温度にされるとともにその状態が維持される。
【0035】
このような湯水混合器にあっては、上述のようにボデー1内部の空間の中心線(基本的にボデー1の中心線と一致)に水用弁3の弁座32の開口部31の中心および湯用弁4の弁座42の開口部41の中心が配置されている。それに対して、水および湯の流入口部13,14の中心線は、ボデーの中心線に対して直角となる角度で配置されるとともに、ボデー1の中心線に対して水および湯の流入口部13,14の中心線が交差しないようにオフセットされている。
【0036】
これにより上述のようにボデ−1に流入した水及び湯には旋回流が生じ、かつ、旋回している水および湯がそれぞれ水用弁3または湯用弁4からこれらの中央部の混合室6に流入する。この際に、それぞれ同方向に旋回している水と湯とが比較的短時間で混合される。言い換えれば、水用弁3から吐出された水と湯用弁4から吐出された湯とが出会って混合開始されてから少しの距離を流れるうちに略均一な状態に混合される。
【0037】
この際に、水および湯に旋回流を生じさせる構造は、水用弁3および湯用弁4の吐出側ではなく、吸入側にあるので、水用弁3および湯用弁4の吐出側から混合室の間に、水および湯を旋回させる構造がなく、水用弁3および湯用弁4から吐出される水及び湯は既に旋回している状態であり、水用弁3および湯用弁4から流出する水と湯とを直ぐに混合室に流入させる構造にできる。
【0038】
混合室に旋回した状態で流入した湯と水とは、短時間で均一となるので、上述の水用弁3および湯用弁4から近い位置に湯と水とが混合した温水の温度を計測する温度センサ9を配置しても、正確な温度を計測することができる。すなわち、従来のように水用弁3、湯用弁4から出会った湯と水とが均一にならずに、一部の水と一部の湯が層状に別れて流れる場合と異なり、この実施形態では、出会った水と湯とが直ぐに均一に混ざるので、温度センサ9を湯用弁4と水用弁3との近くに配置しても正確な温度の測定が可能になる。
【0039】
なお、温度センサ9は、水用弁3と、湯用弁4とから略等距離となるように配置する必要がある。また、従来、水の弁および湯の弁と混合室との間に水及び湯を旋回させる機構を設けたものでは、弁を通ってから湯と水とが出会うまでに、水と湯とがそれぞれ旋回させられる構造を通る必要がある。これにより、水と湯とが混合して温度測定可能になる位置が水および湯の弁から離れてしまい、この実施形態のように水用弁3および湯用弁4から吐出された水と湯とを直ぐに混合して温度測定可能にすることができない。
【0040】
温度制御のために水と湯との混合比を決める水用弁3と湯用弁4の近くに水と湯とを混合させた温水の温度センサ9がある場合に、水用弁3および湯用弁4の開度を変更した際に、短時間で温度センサ9によって、水用弁3および湯用弁4の開度を変更したことにより変化した温水の温度を図ることができる。すなわち、温度センサ9から入力される計測温度は、例えば水用弁3および湯用弁4の開度を変更して直ぐの温度となり、応答性能が高いものとなっている。
【0041】
これにより、例えば、温度変化のシミュレーション結果や予測式等に基づく複雑な制御をしなくとも、設定温度に対して温水の温度が高い場合に、水の混合比を順次増加させ、設定温度に対して温水の温度が低い場合に、湯の混合比を順次増加させるような単純な制御でも比較的精度の高い温度制御が可能になる。したがって、湯水混合器を制御するための制御プログラムを簡略化することができる。それにより、制御プログラムの開発に係るコストの低減を図ることができる。
【0042】
また、上述のように水用弁3および湯用弁4と、混合室6との間に水、湯を旋回させる構造がないことと、水、湯を旋回させる構造は、ボデーの中心(水用弁3および湯用弁4の中心)に対して、水、湯それぞれの流入口の中心をずらした構造となっているので、水および湯を旋回させるものとしても構造的に複雑な部分がないことと、水および湯を旋回させない構造の湯水混合器との構造的な差が少ないこととから、湯、水を旋回させるための製造コストの増加を抑制することができる。また、湯、水を旋回させる構造を加えることによる湯水混合器の大型化を抑制することができる。
【0043】
図6は、上述のようなこの実施形態の湯水混合器において、水と湯との混合比を水が多い状態から湯が多い状態に徐々に変動させ、この場合の上述の水と湯とが混合した際の温度を計測する温度センサ9における計測温度として実測値(グラフ上の丸)と、水の温度、湯の温度と、これら水と湯の混合比から求められる温水の温度を算出した計算値(グラフ上の三角)とを比較したグラフである。
図6に示すように示すように、温度の計算値と温度の実測値は、極めて近似しており、温度センサ9により正確に温度が測定されていることが示されている。これは、温度センサ9の位置で、混合された水と湯とが略均一な状態となっていることを示している。
【符号の説明】
【0044】
1 ボデー
2 モータユニット
3 水用弁
4 湯用弁
12 流出口部(流出口)
13 水の流入口部(流入口)
14 湯の流入口部(流入口)
15 混合室
16 水の旋回部
17 湯の旋回部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に湯と水とを混合する混合室を有するボデーと、
前記ボデー内に設けられ、吐出側を前記混合室に向けるとともに水の流量を調整する水用弁と、
前記ボデー内に設けられ、吐出側を前記混合室に向けるとともに湯の流量を調整する湯用弁と
前記ボデーの前記水用弁の吸入側に設けられた水の流入口と、
前記ボデーの前記湯用弁の吸入側に設けられた湯の流入口と、
前記ボデーの混合室に連通して設けられた流出口と、
前記水の流入口と前記水用弁との間に設けられ、当該水用弁に流入する水に旋回流を生じさせる水の旋回部と、
前記湯の流入口と前記湯用弁との間に設けられ、当該湯用弁に流入する湯に旋回流を生じさせる湯の旋回部とを備えることを特徴とする湯水混合器。
【請求項2】
前記ボデーが略円筒状に形成され、
前記水用弁および前記湯用弁が、前記混合室を間に挟んで対向配置され、
前記水用弁の中心と前記湯用弁の中心と結ぶ線分と、前記ボデーの軸方向に沿う中心線とが略重なるように配置され、
前記水および前記湯の流入口の中心線が、前記ボデーの前記中心性に対して略直交するとともに、前記水および前記湯の流入口の中心線と、前記ボデーの中心線が交差しないようにオフセットされることにより前記水および湯の旋回部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の湯水混合器。
【請求項3】
前記水の旋回部における前記水の旋回方向と、前記湯の旋回部における前記湯の旋回方向が同じ方向になっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の湯水混合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104441(P2013−104441A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246416(P2011−246416)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】