説明

湯水混合栓

【課題】簡素な構造であって、水抜き操作も極めて容易な湯水混合栓を提供する。
【解決手段】湯水混合栓10は、外部から供給される水と湯とを混合する温度調整手段である水栓本体14と、水栓本体14から供給される湯水が流入する混合室13と、混合室13内の湯水を複数の給水経路15,16のいずれかに分配するために設けられた複数の開閉弁ユニット7,8と、複数の開閉弁ユニット7,8の下流側にそれぞれ設けられた給水室17,18とを備えている。そして、混合室13および複数の給水室17,18を互いに連通するための複数の連通口19,20と、給水室17に開設された排水口21と、連通口19,20および排水口21を共通して開閉するための水抜き栓22とを備えている。水抜き栓22はネジ機構によって排水口21に螺着されており、その上端にはシール材22aが付設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室などに設置される湯水混合栓に関する。
【背景技術】
【0002】
湯水混合栓は浴室や洗面化粧台などに設置して全国的に使用されているが、寒冷地に設置された湯水混合栓の場合、冬季の夜間などに湯水混合栓が凍結で破損するのを防止するために、湯水混合栓内に残留している水を抜き取る必要がある。このため、従来の湯水混合栓には、内部の残留水を排出するための水抜き手段が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されている湯水混合栓は、水栓本体の内部に隔壁で区画された湯室と水室とを有し、これらの湯室および水室の内部の水を外部へ排出するための水抜き装置が水栓本体から突出した状態に設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−270834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された湯水混合栓は、外部から供給される水および湯を任意に設定された割合で混合する機能や、水や湯をカランあるいはシャワーなどの異なる箇所へ選択的に供給する機能を備えているため、その内部は隔壁などによって複数の領域に区画されており、これらの領域間は全て連通している訳ではない。従って、湯水混合栓内の残留水を1つの水抜き装置によって排出することは不可能である。
【0006】
このため、特許文献1に記載の湯水混合栓においては、水栓本体の複数箇所に水抜き装置を設ける必要があり、手間がかかる。また、複数の水抜き装置に対してそれぞれ水抜き操作を行う必要があるため、水抜き操作が毎日必要となる冬場には、これらの水抜き操作に多くの時間と手間が費やされている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、簡素な構造であって、水抜き操作も極めて容易な湯水混合栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、外部から供給される水と湯とを混合する温度調整手段と、前記温度調整手段から供給される湯水が流入する混合室と、前記混合室内の湯水を複数の給水経路のいずれかに分配するために設けられた複数の開閉弁と、前記複数の開閉弁の下流側にそれぞれ設けられた給水室とを備え、
前記混合室および前記複数の給水室を互いに連通する複数の連通口と、
前記混合室と前記複数の給水室のいずれかに開設された排水口と、
前記複数の連通口および前記排水口を共通して開閉するための水抜き栓と、
を設けたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、一つの水抜き栓を開放することにより、複数の連通口および排水口を共通して開放することが可能となり、混合室内および複数の給水室内の残留湯水を同時に排出することができるため、簡素な構造であって、水抜き操作も極めて容易となる。なお、前述した「給水室」、「排水口」、「水抜き栓」という用語中では「水」という言葉を使っているが、供給したり、排出したり、抜いたりする対象を水に限定するものではなく、水から湯までを含む広い意味をもっている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記混合室および前記複数の給水室のうちのいずれかの室を最下部に配置し、最下部に配置された前記室の上部にその他の前記室を隣接して配置したことを特徴とする。このような構成とすれば、最下部に配置された室にその他の室の残留湯水を流入させ、最下部の室に開設された排水口から排出させることが可能となるため、残留湯水排出時の流れが円滑化されるだけでなく、構造の簡素化、水抜き操作の容易化を図ることができる。
【0011】
請求項3の発明は、前記水抜き栓を前記排水口を貫通移動して開閉する状態に設け、前記水抜き栓の移動領域内に前記複数の連通口を配置したことを特徴とする。このような構成とすれば、水抜き栓を排水口を貫通移動させることによって当該排水口の開閉だけでなく複数の連通口の開閉も行うことが可能となるため、簡素な構造で、操作も容易な水抜き機構を形成することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記複数の連通口のそれぞれの軸心と、前記排水口の軸心とが互いに平行をなすように前記複数の連通口および前記排水口を配設し、前記排水口を貫通移動して開閉するとともに前記複数の連通口を開閉可能な状態に前記水抜き栓を配設したことを特徴とする。
【0013】
このような構成とすれば、排水口を貫通する水抜き栓を当該排水口の軸心方向に移動させることによって排水口および複数の連通口を開閉することが可能となるため、簡素な構造で、操作も容易な水抜き機構を形成することができる。また、前記複数の連通口のそれぞれの軸心と、前記排水口の軸心とが互いに平行をなしているため、複数の連通口を通過して排出される残留湯水をスムーズに排水口へ誘導することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、簡素な構造であって、水抜き操作も極めて容易な湯水混合栓を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態である湯水混合栓について説明する。図1は本発明の実施の形態である湯水混合栓を内蔵する水栓装置を浴室に設置した状態を示す斜視図、図2は図1に示す水栓装置の斜視図、図3は図2に示す水栓装置に内蔵された湯水混合栓を示す分解斜視図、図4は図2に示す水栓装置に内蔵された湯水混合栓を示す正面図、図5は図4におけるA−A線断面図、図6は図5の部分拡大図である。
【0016】
本実施形態においては、一例として、図1に示すように、湯水混合栓10(図3参照)が内蔵された水栓装置1を浴室の壁面Wに設置している。水栓装置1の正面部分には2つの操作キー2,3が上下二段に配置され、これらの操作キー2,3の上方側面には温度調整用ダイヤル4が配置されている。操作キー2を押圧操作するとカラン5からの吐水、止水が交互に繰り返され、操作キー3を押圧操作するとシャワー6からの吐水、止水が交互に繰り返される。そして、温度調整用ダイヤル4を回転操作することにより、カラン5およびシャワー6から吐出する湯水の温度を設定することができる。
【0017】
図2,図3に示すように、水栓装置1は、湯水混合栓10とこれを覆うカバー9とで構成されている。湯水混合栓10は、給湯管11から供給される湯と、給水管12から供給される水とを、温度調整用ダイヤル4で設定した温度になるように混合する機能を有する水栓本体14と、カラン5への流路を開閉する開閉弁ユニット7と、シャワー6への流路を開閉する開閉弁ユニット8とを備えている。
【0018】
開閉弁ユニット7,8はパイロット式開閉弁装置と呼ばれるものであり、それぞれの上部には、開閉弁ユニット7,8に内蔵された開閉弁(図示せず)を作動させるための操作部7a,8aが設けられている。なお、本実施形態においては開閉弁ユニット7,8としてパイロット式開閉弁装置を用いているが、これに限定するものではないので、同様の機能を備えた他の方式の開閉弁ユニットを使用することも可能である。また、開閉弁ユニット7,8の構造、機能などについては後述する図7〜図10に基づいて詳しく説明する。
【0019】
図3に示すように、カバー9は、湯水混合栓10の正面部分を覆う正面カバー9aと、その左右部分を覆う側面カバー9b,9cとで構成されている。また、開閉弁ユニット7,8の操作部7a,8aを押圧して開閉操作を行うために、正面カバー9aに開設された2つの開口部9s,9tにそれぞれ操作キー2,3が起伏可能に軸支されており、正面カバー9aの表面上部がいわゆる操作パネルとなっている。
【0020】
図4,図5に示すように、湯水混合栓10の下方に垂直方向に配管された給湯管11および給水管12はそれぞれ止水栓23および逆止弁24を経由して水栓本体14に接続されている。水栓本体14の下方に位置する開閉弁ユニット8の下流側の給水室18にシャワー6への給水経路16が接続され、その下方に位置する開閉弁ユニット7の下流側の給水室17にカラン5への給水経路15が接続されている。
【0021】
逆止弁24はそれぞれ水が湯流路(給湯管11)に逆流したり、湯が水流路(給水管12)に逆流したりするのを防止するための部材であり、その内部には、湯または水に混入している異物を捕捉除去するためのフィルタ(図示せず)が収容されている。止水栓23は、逆止弁24内のフィルタを清掃したり、メンテナンスを行ったりする際に、湯流路(給湯管11)や水流路(給水管12)を閉止するための部材である。
【0022】
図5に示すように、湯水混合栓10は、外部から供給される水と湯とを混合する温度調整手段である水栓本体14と、水栓本体14から供給される湯水が流入する混合室13と、混合室13内の湯水を複数の給水経路15,16のいずれかに分配するために設けられた複数の開閉弁ユニット7,8と、複数の開閉弁ユニット7,8の下流側にそれぞれ設けられた複数の給水室17,18とを備えている。
【0023】
そして、混合室13および複数の給水室17,18を互いに連通するための複数の連通口19,20と、給水室17に開設された排水口21と、複数の連通口19,20および排水口21を共通して開閉するための水抜き栓22とを備えている。水抜き栓22はネジ機構によって排水口21に螺着されており、その上端にはシール材22aが付設されている。
【0024】
水抜き栓22をその軸心回りに正転、逆転させれば、その軸心方向に沿って上昇、下降し、水抜き栓22の縮径部22bが排水口21に位置すると排水口21が開放され、太径部22cが排水口21に位置すると排水口21が閉止される。これと同時に、シール材22aが連通口19,20から離れると連通口19,20が開放され、当接すると連通口19,20が閉止される。
【0025】
ここで、図1,図5を参照して、湯水混合栓10の基本的機能について説明する。前述したように、操作キー2を押圧すると開閉弁ユニット7の操作部7aが押圧されカラン5への流路が開閉され、操作キー3を押圧すると開閉弁ユニット8の操作部8aが押圧されシャワー6への流路が開閉されるようになっている。
【0026】
カラン5およびシャワー6が止水状態にあるときに操作キー2を押圧すると、操作部7aが押下されて開閉弁ユニット7内の主弁46(図7〜図9参照)が開き、水栓本体14から混合室13に流入した湯水が開閉弁ユニット7の下部に設けられた4つの開口部7bから開閉弁ユニット7内へ流れ込んだ後、給水室17へ放出され、給水経路15を経由してカラン5から吐水される。この後、操作キー2を再び押圧すると開閉弁ユニット7内の主弁46が閉じて、カラン5からの吐水が停止する。
【0027】
一方、カラン5およびシャワー6が止水状態にあるときに操作キー3を押圧すると、操作部8aが押下されて開閉弁ユニット8内の主弁46(図7〜図9参照)が開き、水栓本体14から混合室13に流入した湯水が開閉弁ユニット8の下部に設けられた4つの開口部8bから開閉弁ユニット8内へ流れ込んだ後、給水室18へ放出され、給水経路16を経由してシャワー6から吐水される。この後、操作キー3を再び押圧すると開閉弁ユニット8内の主弁46が閉じて、シャワー6からの吐水が停止する。
【0028】
ところで、カラン5およびシャワー6が止水状態にあるとき、混合室13および給水室17,18などの内部は湯水で満たされた状態にあるため、冬季の夜間などに湯水混合栓10が凍結で破損するのを防止するには、湯水混合栓10内に残留している湯水を抜き取る必要がある。そこで、本実施形態の湯水混合栓10においては、前述したように、連通口19,20と、排水口21と、水抜き栓22からなる水抜き機構を設けている。
【0029】
図5に示す状態にある水抜き栓22を逆転(緩む方向に回転)させてその軸心下方へ移動させると、図6に示すように、水抜き栓22の縮径部22bが排水口21に位置して排水口21が開放されると同時に、シール材22aが連通口19,20から離れて連通口19,20が開放される。このように、一つの水抜き栓22を開放することにより、2つの連通口19,20および排水口21を共通して開放することが可能であり、これによって混合室13内および給水室17,18内の残留水を同時に排出することができるため、簡素な構造であって、水抜き操作も極めて容易である。
【0030】
水抜きが完了したら、水抜き栓22を正転させてその軸心上方へ移動させると、図5に示すように、水抜き栓22の太径部22cが排水口21に位置して排水口21が閉止されると同時に、シール材22aが連通口19,20に当接して連通口19,20が閉止される。なお、逆止弁23(図4参照)より上流側にある水は、家屋に配置された水抜き栓(図示せず)を開くことによって排出することができる。
【0031】
本実施形態の湯水混合栓10においては、連通口19,20の軸心と、排水口21の軸心とが互いに平行をなすように連通口19,20および排水口21を配設するとともに、排水口21を貫通移動して開閉することによって連通口19,20を開閉可能な状態に水抜き栓22を配設している。
【0032】
従って、排水口21を貫通する水抜き栓22を当該排水口21の軸心方向に移動させることによって排水口21および連通口19,20を開閉することが可能であり、簡素な構造で、操作も容易である。また、連通口19,20の軸心と、排水口21の軸心とが互いに平行をなしているため、水抜き中、連通口19,20を通過して給水室17内へ流入する残留湯水をスムーズに排水口21へ誘導して外部へ排出することができる。
【0033】
また、湯水混合栓10においては、複数の室のうちの1つである給水室17を最下部に配置し、最下部に配置された給水室17の上部にその他の室である給水室18および混合室13を隣接して配置している。従って、給水室18および混合室13の残留湯水を、最下部に配置された給水室17に向かって流入させた後、給水室17に開設された排水口21から排出させることができる。このため、残留湯水排出時の流れが円滑化されるだけでなく、構造の簡素化、水抜き操作の容易化を図ることができる。
【0034】
次に、図7〜図10を参照して、前述した開閉弁ユニット7,8の構造、機能などについて詳しく説明する。なお、開閉弁ユニット7,8は同一構造であるため、ここでは、開閉弁ユニット7について説明する。図7は図3などで示した湯水混合栓を構成する開閉弁ユニットの基本構造を示す概略図、図8は止水状態(閉状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図、図9は吐水状態(開状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図、図10は開閉弁ユニットを構成するパイロット弁切替保持機構(ハートカム機構)を示す図である。
【0035】
図7に示すように、開閉弁ユニット7は、使用者がカラン5用の操作キー2を押すことにより下方に押下される操作部7aと、操作部7aにその基端が結合された押し棒38と、この押し棒38の先端に設けられたパイロット弁40とを備え、押し棒38の先端(下端)とパイロット弁40との間には緩衝手段であるコイルばね42が設けられている。
【0036】
開閉弁ユニット7は、パイロット弁40の下方に、パイロット弁口(圧力開放穴)44を備え、パイロット弁40がこのパイロット弁口44に当接および解離するダイヤフラム式の主弁46と、この主弁46の背面に形成され、押し棒38、パイロット弁40およびコイルばね42を収納する圧力室48を形成するためのハウジング50と、主弁46の表面が着座および離座する弁座52とを備えている。ハウジング50の押し棒38が挿通される部分には、シール部材54が設けられている。さらに、主弁46の外周側には、小穴(一次圧流入口)56が形成されている。
【0037】
次に、開閉弁ユニット7の基本動作について説明する。開閉弁ユニット7においては、圧力室48内に設けられたパイロット弁40を、主弁46のパイロット弁口44に当接および解離させることで、パイロット弁40を開閉し、止水状態と吐水状態とを切り替えるようになっている。
【0038】
吐水状態から止水状態に切り替えるときは、押し棒38によりパイロット弁40をパイロット弁口44に当接する方向に押さなければならない。このとき、押し棒38は、その断面積に相当する面積に作用する水圧により上向きの力を受け、さらに、シール部材54による摺動摩擦抵抗があり、これらに抗して操作部7aを押す必要があるが、この操作力は比較的小さな値である。
【0039】
次に、パイロット弁40が主弁46のパイロット弁口44に当接すると、一次側通水路の一次圧の水が小穴56を通って圧力室48内に流入し、これに伴い、主弁46が遅い速度で、弁座52に向かって移動する。これにより、主弁46が弁座52に着座し、止水状態に切り替わる(図8参照)。
【0040】
さらに、開閉弁ユニット7では、緩衝手段であるコイルばね42を、押し棒38とパイロット弁40との間、即ち、圧力室48内に設けたので、このコイルばね42には、パイロット弁40がパイロット弁口44に当接するまでは力は作用せず、さらに、詳細は後述するように、パイロット弁40がパイロット弁口44に当接した以降も小さな力を作用させればよい。
【0041】
一方、止水状態から吐水状態に切り替えるときは、操作部7aを押せば、後述するパイロット弁切替保持機構62および付勢用ばね68により、パイロット弁40が主弁46のパイロット弁口(圧力開放穴)44から解離し、それにより、圧力室48が開放され、主弁46が弁座52から解座し、吐水状態となる(図9参照)。
【0042】
なお、開閉弁ユニット7では、前述したように、主弁46の移動速度を意図的に小さくしているが、これは主弁46の閉止時のウォーターハンマーの発生を抑えるためである。即ち、主弁46に設けられた小穴56から圧力室48に一次側の水が流入することで圧力室48内が一次圧の水で満たされ、主弁46が弁座52の方向へ移動するが、小穴56を、通常、非常に小さな径としているので、圧力室48への水の流入速度が抑えられ、これにより、主弁46の移動速度(閉止速度)を抑え、主弁閉止時のウォーターハンマーの発生を抑えるようにしている。
【0043】
前述したように、図8は止水状態(閉状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図であり、図9は吐水状態(開状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図である。図8に示すように、開閉弁ユニット7は、操作部7a、押し棒38、パイロット弁40、緩衝手段であるコイルばね42、パイロット弁口(圧力開放穴)44を備えたダイヤフラム式の主弁46、圧力室48を形成するためのハウジング50(50a,50b)、弁座52、シール部材54、小穴56を備えている。
【0044】
前述した小穴(一次圧流入口)56には、クリーニング用のピン58が挿入されており、小穴56の一次圧流入口の通水面積を絞っている。これにより、前述したように、一次圧の圧力室48への流入速度を抑制することで主弁46の閉止速度を緩やかにし、閉止時に発生するウォーターハンマーを低減できるようにしている。
【0045】
圧力室48を形成するハウジング50は、主にパイロット弁40が配置された空間を取り囲む第1ハウジング50aと、主弁46の背面側の空間を取り囲む第2ハウジング50bとから構成されている。また、最外周側には、操作部7a、第1ハウジング50a、第2ハウジング50b、弁座52の4つの部品を組み付けることにより、開閉弁ユニット7を組み立てるための組付ナット60が配置されている。
【0046】
さらに、開閉弁ユニット7は、パイロット弁切替保持機構62を備えている。このパイロット弁切替保持機構62は、前述した、操作キー2に連動しており、操作キー2を押すたびに、即ち、操作キー2で操作部7aが押されるたびに、パイロット弁40の吐水状態位置と止水状態位置の切り替えを繰り返すとともに、パイロット弁40を吐水状態位置または止水状態位置に保持する機能を有する。
【0047】
このパイロット弁切替保持機構62は、一般にノック式ボールペンのノック機構などで使用されている機構でもよいが、本実施形態では、図8,図9に示すように、操作部7aと連動して移動するピン64と、第1ハウジング50aの外周面に形成されピン64の下方側が弾性変形しながら、これに沿って移動する逆ハート形状のカム溝66と、止水状態(閉状態)でピン64を保持する保持用突起68とによって形成されたハートカム機構を採用している。
【0048】
ここで、図10により、パイロット弁切替保持機構(ハートカム機構)62について詳しく説明する。図10は、開閉弁ユニット7に採用されているパイロット弁切替保持機構(ハートカム機構)を示す拡大図である。
【0049】
図10に示すように、使用者が操作キー2を押圧操作するたびに、ピン64の下端部64aは、a位置(止水状態)、b位置(押込み状態)、c位置(吐水位置)、d位置(押込み状態)の順序に従って移動する。a位置(止水状態)においては、ピン64の下端部64aが保持用突起68により保持されており、これによって止水状態が保たれている。次に、止水状態から吐水状態に吐水操作すると、ピン64の下端部64aは、カム溝66の形状に沿って移動し、b位置(押込み状態)まで下がり、その後、c位置(吐水状態)まで移動し、この位置で吐水状態が保たれる。次に、吐水状態から止水状態に止水操作すると、ピン64の下端部64aはc位置(吐水状態)からカム溝66の形状に沿って移動し、d位置(押込み状態)まで下がり、その後、a位置(吐水状態)まで移動し、この位置で、止水状態が保たれる。
【0050】
このように、パイロット弁切替保持機構62がハートカム機構であるため、圧力室48をシールするシール部材54に、押し棒38の往復運動(上下運動)のみが作用し、前述したノック機構のように、押し棒38の回転運度が作用しないため、シール部材54への負担が少なくなり、高い信頼性を得ることができる。
【0051】
また、図8,図9に示すように、付勢用ばね69により止水状態から吐水状態に切替操作する際、即ち、操作キー2が押圧された際、パイロット弁切替保持機構62による止水状態位置における保持が解除され、操作部7aが上方へ付勢され、パイロット弁40がパイロット弁口(圧力開放穴)44から解離し、容易に吐水状態に切り替えることができるようになっている。
【0052】
次に、押し棒38とパイロット弁40の結合部について説明する。図8,図9に示すように、押し棒38の先端(下端)であって圧力室48の内部には、前述したように、押し棒38のストローク方向の移動距離(変位量)を吸収する緩衝手段であるコイルばね42が設けられている。押し棒38の先端(下端)に大径部38aが形成され、さらに、パイロット弁40の先端には、パッキン40aが装着されている。パイロット弁40は、中空部40bを有し、この中空部40bにコイルばね42が内蔵されている。
【0053】
パイロット弁40の上側には、押し棒38が摺動可能に挿入される挿入穴40cが形成されている。パイロット弁40は、弾性変形可能な樹脂材料で形成されており、組立て時は、パイロット弁40を変形させながら、押し棒38を挿入穴40cに挿入し、中空部40b内に押し棒38の大径部38aを収納するようにしている。ここで、コイルばね42は押し棒38とパイロット弁40とを引き離す方向に付勢している。
【0054】
これにより、止水状態から吐水状態に切り替える吐水操作時には、コイルばね42の付勢力により押し棒38の先端の大径部38aとパイロット弁40の上側とが係合し、それによって、パイロット弁40は押し棒38の動きと連動し、主弁46に形成されたパイロット弁口44から離座する(図9参照)。
【0055】
一方、吐水状態から止水状態に切り替える止水操作時には、パイロット弁40が主弁46に形成されたパイロット弁口44に当接し、押し棒38の大径部38aはパイロット弁40の上側から離れて下降するが、押し棒38のストローク方向の移動距離(変位量)はコイルばね42によって吸収される(図8参照)。
【0056】
このように、止水操作時においてパイロット弁40がパイロット弁口44に当接するまでの過程と、パイロット弁40がパイロット弁口44に当接した以降の過程との両方において、操作力に格差(ムラ)がなくなり、好ましい操作感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態である湯水混合栓を内蔵した水栓装置を浴室に設置した状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す水栓装置の斜視図である。
【図3】図2に示す水栓装置に内蔵された湯水混合栓を示す分解斜視図である。
【図4】図2に示す水栓装置に内蔵された湯水混合栓を示す正面図である。
【図5】図4におけるA−A線断面図である。
【図6】図5の部分拡大図である。
【図7】図1に示す水栓装置を構成する開閉弁ユニットの基本構造を示す概略図である。
【図8】止水状態(閉状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図である。
【図9】吐水状態(開状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図である。
【図10】開閉弁ユニットを構成するパイロット弁切替保持機構(ハートカム機構)を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 水栓装置
2,3 操作キー
4 温度調整用ダイヤル
5 カラン
6 シャワー
7,8 開閉弁ユニット
7a,8a 操作部
7b,8b 開口部
9 カバー
9a 正面カバー
9b,9c 側面カバー
9s,9t 開口部
10 湯水混合栓
11 給湯管
12 給水管
13 混合室
14 水栓本体
15,16 給水経路
17,18 給水室
19,20 連通口
21 排水口
22 水抜き栓
22a シール材
22b 縮径部
22c 太径部
23 止水栓
24 逆止弁
38 押し棒
38a 大径部
40 パイロット弁
40a パッキン
40b 中空部
40c 挿入穴
42 コイルばね
44 パイロット弁口(圧力開放穴)
46 主弁
48 圧力室
50 ハウジング
50a 第1ハウジング
50b 第2ハウジング
52 弁座
54 シール部材
56 小穴(一次圧流入口)
58,64 ピン
60 組付ナット
62 パイロット弁切替保持機構
64a 下端部
66 カム溝
68 保持用突起
69 付勢用ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される水と湯とを混合する温度調整手段と、前記温度調整手段から供給される湯水が流入する混合室と、前記混合室内の湯水を複数の給水経路のいずれかに分配するために設けられた複数の開閉弁と、前記複数の開閉弁の下流側にそれぞれ設けられた給水室とを備え、
前記混合室および前記複数の給水室を互いに連通する複数の連通口と、
前記混合室と前記複数の給水室のいずれかに開設された排水口と、
前記複数の連通口および前記排水口を共通して開閉するための水抜き栓と、
を設けたことを特徴とする湯水混合栓。
【請求項2】
前記混合室および前記複数の給水室のうちのいずれかの室を最下部に配置し、最下部に配置された前記室の上部にその他の前記室を隣接して配置したことを特徴とする請求項1記載の湯水混合栓。
【請求項3】
前記水抜き栓を、前記排水口を貫通移動して開閉する状態に設け、前記水抜き栓の移動領域内に前記複数の連通口を配置したことを特徴とする請求項1または2記載の湯水混合栓。
【請求項4】
前記複数の連通口のそれぞれの軸心と、前記排水口の軸心とが互いに平行をなすように前記複数の連通口および前記排水口を配設し、前記排水口を貫通移動して開閉するとともに前記複数の連通口を開閉可能な状態に前記水抜き栓を配設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の湯水混合栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−16813(P2006−16813A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194198(P2004−194198)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】