説明

湯水混合栓

【課題】弁体の設計自由度が高く且つ使いやすい湯水混合栓の提供。
【解決手段】湯水混合栓は、湯用弁孔、水用弁孔及び混合水用弁孔を有する固定弁体と、上記固定弁体の上面に摺動可能に配置された可動弁体と、左右方向の旋回及び前後回動が可能なレバーと、上記前後回動が可能なようにレバーを支持するとともにレバーの旋回に連動して回転する回転体とを備える。レバーの旋回により、可動弁体が固定弁体に対して旋回し、この可動弁体の旋回により、湯水混合比率の調節が可能とされている。レバーの前後回動により、可動弁体が固定弁体に対して直線方向D1に移動し、この移動により、吐出量の調節が可能とされている。上側から見た平面視におけるレバーの前後回動方向D2は、上記直線方向D1に対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合栓に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドル操作により吐出量及び湯水の混合割合を調整できる水栓が知られている。シングルレバー式の湯水混合栓では、レバーハンドルの旋回操作により湯と水との切り替え及び混合比の調整が可能であり、レバーハンドルの前後操作(上下操作)により吐出量の調整が可能である。
【0003】
特開2010−185569号公報には、操作レバーが正面位置にある状態で水のみが吐出可能であり、湯の無駄遣いを防止することのできる湯水混合栓が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−185569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1の図6に示されるように、この特許文献1では、可動弁体の開口部の形状を変更することで、操作レバーが正面位置にあるときの水のみの吐出を実現している。即ち、特許文献1の図6が示すように、操作レバーが正面位置にある吐出状態において、可動弁体の開口部と固定弁体の湯流入弁孔とが重複しないように、可動弁体の開口部の形状が部分的に狭くされている。
【0006】
この特許文献1の技術では、孔の形状を変更することによって、操作レバーが正面位置にあるときの水のみの吐出を実現している。よって、可動弁体又は固定弁体の孔形状が制約され、これらの弁体の設計自由度が低下する。また、特許文献1の図6の構成では、可動弁体の開口部の前方において開口面積が狭い。よって、固定弁体の流入弁孔(湯流入弁孔及び水流入弁孔)と重複しうる可動弁体の開口部が狭い。この構成では、レバー旋回時において、湯水混合比率が急激に変化しやすい。この急激な変化は、使用者による温度調節を難しくする。
【0007】
本発明の目的は、弁体の設計自由度が高く且つ使いやすい湯水混合栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る湯水混合栓は、湯用弁孔、水用弁孔及び吐出弁孔を有する固定弁体と、上記固定弁体の上面に摺動可能に配置されており、流路形成凹部及びレバー係合孔を有する可動弁体と、左右方向の旋回及び前後回動が可能なレバーと、上記前後回動が可能なようにレバーを支持するとともに上記レバーの旋回に連動して回転する回転体とを備えている。上記レバーの下端部が上記レバー係合孔に係合しており、この係合により、上記レバーの下端部の動きが上記可動弁体に伝達される。上記レバーの旋回により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して旋回し、この可動弁体の旋回により、湯水混合比率の調節が可能とされている。上記レバーの前後回動により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して直線方向D1に移動し、この移動により、吐出量の調節が可能とされている。上側から見た平面視における上記レバーの前後回動方向D2が、上記直線方向D1に対して傾斜している。
【0009】
好ましくは、上記水用弁孔の壁面及び/又は上記湯用弁孔の壁面が、傾斜面を有している。
【0010】
好ましくは、上記固定弁体の上記水用弁孔は、その長手方向の一端に第1壁面部を有するとともに、その長手方向の他端に第2壁面部を有している。好ましくは、上記固定弁体の上記湯用弁孔は、その長手方向の一端に第3壁面部を有するとともに、その長手方向の他端に第4壁面部を有している。好ましくは、上記第1壁面部、上記第2壁面部、上記第3壁面部及び上記第4壁面部から選択される少なくとも1つが、傾斜面を有している。
【0011】
好ましくは、上記湯用弁孔の上面開口線及び上記水用弁孔の上面開口線が、左右非対称に形成されている。
【0012】
好ましくは、上記流路形成凹部の下面開口線がストレート状部分を有している。好ましくは、吐出量が最大である場合において、水のみが吐出される状態から湯が混合される状態へと移行するとき、この下面開口線のうちの上記ストレート状部分が、上記湯用弁孔の上記上面開口線に最初に重なる。好ましくは、上記ストレート状部分は、上記方向D2に略平行である。
【0013】
好ましくは、上記回転体が上記可動部材に係合しており、この係合が、上記直線方向D1に沿った上記可動部材の移動を許容し、且つ、上記直線方向D1を除く他の方向に沿った上記可動部材の移動を規制している。好ましくは、上記可動弁体が上記直線方向D1に沿って移動することが許容されるように、上記レバー係合孔と上記レバーの下端部との間に隙間が設けられている。
【発明の効果】
【0014】
レバーが正面位置にあるときにおける水のみの吐出を可能としつつ、弁体の設計自由度が高くされうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る湯水混合栓の斜視図である。
【図2】図2は、図1の湯水混合栓の一部が示された正面図である。
【図3】図3は、図1の湯水混合栓の一部が示された側面図である。
【図4】図4は、図2のF4−F4線に沿った断面図である。
【図5】図5は、レバー組立体の斜視図である。
【図6】図6は、レバー軸に垂直な平面によるレバー組立体の断面図である。
【図7】図7は、レバー組立体の断面図であり、レバー軸の中心線に沿った縦方向断面図である。
【図8】図8は、レバー組立体の分解斜視図である。
【図9】図9(a)から(h)は軸保持体を示す。図9(a)は平面図であり、図9(b)は内側正面図であり、図9(c)は側面図であり、図9(d)は外側正面図であり、図9(e)は底面図であり、図9(f)は図9(d)のf−f線に沿った断面図であり、図9(g)は図9(d)のg−g線に沿った断面図であり、図9(h)は斜視図である。
【図10】図10は、ハウジングの底面図である。
【図11】図11は、図10のF11−F11線に沿った断面図である。
【図12】図12は、前後クリック用球体を含む位置におけるレバー組立体の拡大断面図である。
【図13】図13(a)は上側部材の平面図であり、図13(b)は上側部材に前後クリック用弾性部材(板バネ)が載置された状態を示す平面図であり、図13(c)は上側部材に前後クリック用弾性部材及び前後クリック用球体が載置された状態を示す平面図であり、図13(d)は、図13(c)の状態の上に回動体が載置された状態を示す平面図である。
【図14】図14(a)は、回動体の平面図であり、図14(b)は、回動体の側面図であり、図14(c)は、回動体の底面図であり、図14(d)は、図14(a)のd−d線に沿った断面図である。
【図15】図15は、レバー組立体の断面図であり、レバー軸の中心線に沿った横方向断面図である。
【図16】図16は、図15と同じ断面図であり、旋回クリック用球体が凸部に係合した状態を示す。
【図17】図17は、図15及び図16と同じ断面図であり、旋回クリック用球体と凸部との係合が解除された状態を示す。
【図18】図18は、レバー組立体の変形例の断面図である。
【図19】図19は、ハンドルの旋回について説明するための図である。
【図20】図20(a)は、固定弁体の平面図であり、図20(b)は、固定弁体の底面図であり、図20(c)は、図20(a)のc−c線に沿った断面図であり、図20(d)は、図20(a)のd−d線に沿った断面図であり、図20(e)は、図20(a)のe−e線に沿った断面図であり、図20(f)は、図20(a)のf−f線に沿った断面図であり、図20(g)は、図20(a)のg−g線に沿った断面図である。
【図21】図21(a)は、下側部材88の平面図であり、図21(b)は、下側部材88の底面図であり、図21(c)は、図21(b)のc−c線に沿った断面図であり、図21(d)は、図21(b)のd−d線に沿った断面図である。
【図22】図22(a)から(f)は、固定弁体の上面開口線と可動弁体の下面開口線との重なり状態を示す図である。図22(a)では、レバー周位置が左限界位置にあり且つレバー前後位置が止水位置にある。図22(b)では、レバー周位置が左限界位置にあり且つレバー前後位置が最大吐出位置にある。図22(c)では、レバー周位置が中心周位置にあり且つレバー前後位置が止水位置にある。図22(d)では、レバー周位置が中心周位置にあり且つレバー前後位置が最大吐出位置にある。図22(e)では、レバー周位置が右限界位置にあり且つレバー前後位置が止水位置にある。図22(f)では、レバー周位置が右限界位置にあり且つレバー前後位置が最大吐出位置にある。
【図23】図23(a)から(f)は、図22(a)から(f)と同じ図である。
【図24】図24(a)から(d)は、可動弁体(下側部材)の下面開口線の変形例を示す平面図である。
【図25】図25(a)は、上側部材の上面に沿ったレバー組立体の断面図である。図25(a)では、レバー前後位置が最大吐出位置にある。図25(b)は、レバー軸に垂直な方向に沿ったレバー組立体の断面図である。図25(b)では、レバー前後位置が最大吐出位置にある。図25(c)は、上側部材の上面に沿ったレバー組立体の断面図である。図25(c)では、レバー前後位置が止水位置にある。図25(d)は、レバー軸に垂直な方向に沿ったレバー組立体の断面図である。図25(d)では、レバー前後位置が止水位置にある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。図2は、湯水混合栓10の上部の正面図である。図3は、湯水混合栓10の上部の側面図である。湯水混合栓10は、本体12、ハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。本体12の一部は、外カバー13で覆われている。吐出部16は、ヘッド24を有する。ヘッド24では、シャワー吐出と通常吐出との切り替えが可能である。湯水混合栓10は、例えば、キッチン、洗面台等で使用される。
【0018】
ハンドル14の上下動により、吐出量が調整される(図3の矢印M参照)。本実施形態では、ハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。逆に、ハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。また、ハンドル14の旋回により、湯と水との混合割合が変化する。ハンドル14の旋回により、吐水の温度調整が可能である。
【0019】
図4は、図2のF4−F4線に沿った断面図である。湯水混合栓10は、その内部に、レバー組立体40を有する。レバー組立体40は、外カバー13の内部に配置されている。ハンドル14は、ネジ30によって、レバー46に固定されている。
【0020】
図5は、レバー組立体40の斜視図である。図6は、レバー軸に対して垂直な断面に沿ったレバー組立体40の断面図である。図7は、レバー軸に沿ったレバー組立体40の断面図である。図8は、レバー組立体40の分解斜視図である。レバー組立体40は、単独で取り扱い可能である。湯水混合栓10において、レバー組立体40は交換可能である。
【0021】
図8等が示すように、レバー組立体40は、ハウジング42、回動体44、レバー46、レバー軸48、旋回クリック用弾性部材50、旋回クリック用球体52、軸保持体54、前後クリック用球体56、前後クリック用弾性部材58、可動弁体60、固定弁体62、パッキン64、パッキン65、Oリング66及びベース体68を有する。
【0022】
ベース体68は、湯導入口70、水導入口72及び吐出口74を有する。ベース体68の下部には、これら湯導入口70、水導入口72及び吐出口74のそれぞれに対応した開口が設けられており、これらの開口のそれぞれに、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。
【0023】
固定弁体62は、ベース体68の上側に固定される。ベース体68には、固定弁体62を固定するための係合凸部76と、ハウジング42を固定するための係合凸部77とが設けられている。固定弁体62には、係合凸部76と係合する係合凹部78が設けられている。
【0024】
固定弁体62は、湯用弁孔80、水用弁孔82及び混合水用弁孔84を有する。湯用弁孔80は、ベース体68の湯導入口70に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。水用弁孔82は、ベース体68の水導入口72に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。混合水用弁孔84は、ベース体68の吐出口74に接続されている。パッキン65により、この接続の水密状態が保持されている。
【0025】
可動弁体60は、上側部材86と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。この固定は、凸部90と凹部92との係合によって達成されている。本実施形態では、上側部材86と下側部材88とが互いに別部材である。別部材とすることで、上側部材86と下側部材88とのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。可動弁体60は全体として一体成形されていてもよい。
【0026】
図8では示されていないが、下側部材88の下面には、流路形成凹部94が設けられている(図6及び図7参照)。なお、下側部材88の上面には、レバー46の下端95との干渉を避けるための凹部96が設けられている(図8参照)。
【0027】
固定弁体62の上面には、平滑面PL1が設けられている(図8参照)。上記孔82、84及び86が存在していない部分が、平滑面PL1である。一方、下側部材88(可動弁体60)の下面には、平滑面PL2が設けられている。流路形成凹部94が形成されていない部分に、平滑面PL2が設けられている。平滑面PL1と平滑面PL2との面接触により、水密状態が確保されている。
【0028】
なお、図8が示すように、パッキン64はパイプ状であるが、図7においては、断面位置の関係で、パッキン64が中実であるかのように図示されている。また、図4及び図6では、レバー軸48及び弾性部材50の記載が省略されている。
【0029】
上側部材86の上面には、レバー46の下端95と係合するレバー係合凹部98が設けられている。レバー46の下端95は、このレバー係合凹部98に挿入されている。レバー46の動きに連動して、可動弁体60が固定弁体62の上を摺動する。
【0030】
なお、レバー46とレバー係合凹部98との係合は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。例えば、レバー46とレバー係合凹部98との間に他の部材が介在していてもよい。
【0031】
上側部材86の上面には、回動体44の裏面と係合しうる係合凸部99が設けられている。この係合凸部99の上面に、弾性部材配置部101が設けられている。この弾性部材配置部101は、前後クリック用弾性部材58と略同一形状の凹部である。この弾性部材配置部101に、弾性部材58(板バネ)が収容されている。
【0032】
レバー46は、軸孔100を有する。この軸孔100に、レバー軸48が挿通されている。レバー軸48はパイプ状であり、中空部を有する。このレバー軸48の内部に、旋回クリック用弾性部材50が挿通されている。弾性部材50はコイルバネである。レバー軸48の長手方向長さと、弾性部材50の長手方向長さL1とは、略同一である。レバー軸48の両端のそれぞれに、旋回クリック用球体52が配置されている。レバー軸48の中空部の開口部に、球体52が配置されている。同時に、弾性部材50の両端のそれぞれに、球体52が配置されている。なお、弾性部材50の長手方向長さL1は、レバー組立体が組み立てされた状態での弾性部材50の両端部間の長手方向長さであり、後述の弾性部材200の長手方向長さL2についても同様である。弾性部材50の自然長は、長さL1よりも長い。弾性部材200の自然長は、長さL2よりも長い。長さL1及び長さL2については、後述される。
【0033】
回動体44は、基部102と上部104とを有する。上部104は、レバー挿入孔106と、軸孔108とを有する。基部102は、球体用貫通孔110を有する。この貫通孔110は長孔である。基部102は、可動弁体60(の上側部材86)に、スライド可能に取り付けられている。
【0034】
上部104は、軸保持体54をスライド挿入するための挿入部112と、スライド溝113とを有する。挿入部112は、上部104の側面の、対向する2箇所の位置に設けられている。
【0035】
レバー46がレバー挿入孔106に挿入されると、このレバー46の軸孔100と、回動体44の軸孔108とが同軸で配置される。これら軸孔100及び軸孔108に、レバー軸48が挿入される。更にこのレバー軸の内部に、弾性部材50が挿入される。レバー軸48の挿入により、レバー46が、回動可能な状態で、回動体44に固定される。レバー挿入孔106の寸法は、レバー46の回動(前後回動)を許容しうるように設定されている。なお本願では、レバー軸48を回転軸とするレバー46の回動が、「前後回動」とも称される。
【0036】
ハウジング42は、小径円筒部120と、大径円筒部122と、連結部124とを有する。連結部124は、ハウジング42の半径方向に延在している。小径円筒部120は、上方開口126を有する。大径円筒部122は、下方開口128を有する。
【0037】
大径円筒部122は、係合孔130を有する。この係合孔130が、ベース体68の係合凸部77と係合している。この係合により、ハウジング42は、ベース体68に固定されている。
【0038】
回動体44の上部104の円周面部の外径は、小径円筒部120の内径に略等しい。回動体44の上部104は、小径円筒部120に回転可能な状態で保持されている。この回転では、上部104の外周面105と、小径円筒部120の内周面121とが摺動する。なお、軸保持体54が挿入部112に嵌められると、この軸保持体54の外面は、上部104の円周面部と略同一の円周面を形成する。よって軸保持体54は、回動体44の回転を阻害しない。
【0039】
大径円筒部122は、回動体44の基部102、可動弁体60及び固定弁体62を収容している。
【0040】
図9(a)から(h)は、軸保持体54を示す。図9(a)は、上面図である。図9(b)は、内側から見た平面図である。図9(c)は、側面図である。図9(d)は、外側から見た平面図である。図9(e)は、底面図である。図9(f)は、図9(d)のf−f線に沿った断面図である。図9(g)は、図9(d)のg−g線に沿った断面図である。図9(h)は斜視図である。
【0041】
軸保持体54は、レバー軸保持部134、球保持部136、レール138、球突出用開口140、及び切り欠き142を有する。レール138がスライド溝113に挿入されることで、軸保持体54が回動体44の挿入部112に取り付けられる。軸保持体54が挿入部112に取り付けられた状態が、取付状態とも称される。この取付状態において、レバー軸保持部134は、レバー軸48の端部を保持する。この取付状態において、球保持部136は、球体52を保持する。球体52は、凸部170(後述)との係合の有無に関わらず、弾性部材50によって常に付勢されている。球体52は、弾性部材50によって外側に押圧されている。球体52は、弾性部材50によって球保持部136に押しつけられている。図9(f)及び図9(g)が示すように、球体52の一部は、開口140から突出している。この突出が、旋回クリック機構の発現を可能とする。開口140の直径は、球体52よりも小さくされる。また、開口140の直径は、旋回クリック機構の発現が可能となるような球体52の突出量を考慮して、設定される。
【0042】
軸保持体54は用いられなくても良い。軸保持体54に相当する部分が、回動体44の一部であってもよい。また、軸保持体54が1つであってもよい。即ち、2つの軸保持体54のうちの一方に相当する部分が、回動体44の一部であってもよい。ただし、軸保持体54を設けることで、回動体44へのレバー46の組み付けが容易となる。この組み付けは、次の工程を含む。
(工程a):弾性部材50が挿入されたレバー軸48を軸孔100及び軸孔108に挿入する。又は、レバー軸48を軸孔100及び軸孔108に挿入し、このレバー軸48に弾性部材50を挿入する。
(工程b):上記工程aの後、レバー軸48(弾性部材50)の両端のそれぞれに球体52を配置する。
(工程c):上記工程bの後、2つの軸保持体54を挿入部112のそれぞれに挿入する。
【0043】
上記工程bにおいては、例えばグリースを用いて、2つの球体52を、弾性部材50の両端に仮止めする。その後は、上記工程cがなされればよい。この組み付けでは、上記工程bが示すように、弾性部材50の両端に直接球体52を配置することができる。 軸保持体54が用いられることで、組立の容易性が達成されている。
【0044】
前述したように、軸保持体54は切り欠き142を有する。この切り欠き142により、上記工程cにおける球体52の脱落が抑制される。即ち、工程bにおける球体52の配置が、工程cにおいて維持されやすい。よって、組立の容易性が更に向上する。
【0045】
図10は、ハウジング42を下から見た底面図である。よって、この図10には、連結部124の下面125が図示されている。連結部124の下面125は、クリック発現部146と、クリック無発現部148とを有する。更に、下面125は、第1ストッパー150と第2ストッパー152とを有する。
【0046】
回動体44の基部102は、連結部124の下面125に当接している。回動体44が回転すると、基部102が下面125を摺動する。第1ストッパー150及び第2ストッパー152は、回動体44の回転範囲を規制している。
【0047】
図11は、図10のF11−F11線に沿った断面図である。図11は、クリック機構発現部146の断面図である。なお図11は、通常の使用状態(図8)とは上下が逆である。即ち図11では、連結部124の下面125が上側とされている。
【0048】
クリック機構発現部146は、複数の溝154を有する。クリック機構発現部146は、複数の突条156を有する。これらの溝154及び突条156は、円周に沿って延在している。溝154は、凹部の一例である。突条156は、凸部の一例である。
【0049】
図12は、前後クリック用球体56が存在している位置におけるレバー組立体40の断面図である。 前後クリック用弾性部材58は、板バネである。この弾性部材58は、上側部材86の弾性部材配置部101に配置されている。その弾性部材58の中央部の上側に、前後クリック用球体56が載せられている。球体56は、突条156との係合により、下側に変位しうる。この変位が生じた場合、球体56は、弾性部材58によって上側に付勢される。弾性部材配置部101は、この弾性部材58の中央部が下方に弾性変形することを許容するスペース160を有する。
【0050】
図13(a)は、上側部材86の平面図である。図13(b)は、上側部材86に弾性部材58が載置された状態の平面図である。図13(c)は、上側部材86に弾性部材58及び前後クリック用球体56が載置された状態の平面図である。図13(d)は、図13(c)の構成に回動体44が載置された状態の平面図である。図13(a)が示すように、弾性部材配置部101は、前述したスペース160と、弾性部材載置面162と、球保持部164とを有する。弾性部材載置面162は、弾性部材58の両端部を下方から支持する。載置面162の周囲には段差があるので、弾性部材58の位置ズレは生じない。球体56は、弾性部材58に載せられつつ、球保持部164によって保持されている。この球保持部164により、球体56の位置ズレは生じない。図12及び図13(d)が示すように、回動体44が載せられた状態において、球体56は、回動体44の貫通孔110から、上方に突出している。即ち、球体56の一部は、回動体44の上面よりも突出した上方突出部である。この上方突出部が連結部124の下面125に当接する。この下面125は、この上方突出部と当接しうる当接面である。この上方に突出した球体56がクリック機構発現部146上を移動することでクリック機構が発現する。
【0051】
なお、図13(a)から(c)には、長孔状等の多数の凹部166が描かれている。これら凹部166は、図8において記載が省略されている。これら凹部166は、可動弁体60の軽量化に寄与する。
【0052】
図15は、レバー軸48の中心軸線に沿ったレバー組立体40の断面図である。小径円筒部120の内周面121には、球体摺動面168が設けられている。この球体摺動面168は、球体52と当接しうる当接面である。球体摺動面168が設けられている周方向範囲は、レバー46の旋回可能範囲に対応している。この球体摺動面168には、クリック発現用の凸部170が設けられている。旋回クリック用球体52は、弾性部材50によって、常に、球体摺動面168に押しつけられている。
【0053】
[レバーの前後回動に伴う各部の動き]
前述したように、吐出量の調整では、ハンドル14が上下に動かされる(図3の矢印M参照)。このハンドル14の動きにより、レバー46の前後回動が生じる。この前後回動に連動して、レバー46の下端95が回動する。この下端95とレバー係合凹部98との係合により、可動弁体60が動かされる。可動弁体60は、固定弁体62の上を直線に沿って摺動する。この摺動の間、平滑面PL1と平滑面PL2との面接触は維持される。同時に可動弁体60は、回動体44に対しても摺動する。
【0054】
可動弁体60の移動方向は、回動体44によって規制されている。この規制により、レバーの前後回動のみによっては湯水の混合割合が変化しない。本実施形態では、複数の移動方向規制機構が採用されている。移動方向規制機構は、回動体44と可動弁体60(上側部材86)との係合である。
【0055】
この移動方向規制機構には、回動体44が関与している。図14(a)は回動体44の平面図である。図14(b)は回動体44の側面図である。図14(c)は回動体44の底面図である。図14(d)は、図14(a)のd−d線に沿った断面図である。図14(c)が示すように、回動体44(の基部102)の裏面には、スライド溝Gvが設けられている。このスライド溝Gvは、底面Gv1と、2つの側面Gv2とを有している。底面Gv1の中央に、貫通孔110が設けられている。このスライド溝Gvに、係合凸部99が嵌められている。
【0056】
第1の移動方向規制機構は、上側部材86の係合凸部99と、回動体44のスライド溝Gvとの係合である。より詳細には、係合凸部99の側面174(図13(a)から(c)参照)が、スライド溝Gvの側面Gv2と摺動する。このスライドの方向は、係合凸部99の側面174に沿った直線方向D1である。係合凸部99は、弾性部材配置部101、弾性部材載置面162、球保持部164等を有しつつ、移動方向の規制にも寄与している。また、上方に突出した係合凸部99の上に弾性部材58及び球体56が載置されることで、弾性部材58及び球体56の位置が高くなる。よって、球体56を基部102の上面よりも上側に突出させるのが容易とされている。このように係合凸部99は、移動方向の規制及び前後クリック機構の発現に寄与している。
【0057】
なお、上述の通り、前述した貫通孔110は、上記スライド溝Gvの底面Gv1に設けられている。即ちスライド溝Gvの形成された部分は、そのスライド溝Gvの深さの分だけ薄くされており、この薄肉部分に貫通孔110が設けられている。よって、貫通孔110の上下方向長さが短くされており、上記上側突出部の形成が容易とされている。
【0058】
第2の移動方向規制機構は、上側部材86の側面180(図13(a)及び図8参照)と、回動体44の基部102に設けられた下方凸部182(図8参照)との係合である。この下方凸部182は、側面183を有している。この側面183が、上側部材86の側面180と摺動する。この係合による移動方向も、前述した直線方向D1である。側面180と、前述した側面174とは、平行である。
【0059】
このように、同一の移動方向D1に対して複数の移動方向規制機構が設けられることで、移動方向がより確実に制御されている。
【0060】
なお、前述したように貫通孔110は長孔であるが、この長孔の長手方向は、直線方向D1である(図13(d)参照)。貫通孔110の幅及び深さは一定である。この貫通孔110内において、球体56は方向D1(貫通孔110の長手方向)に沿って動く。この動きによって球体56の位置が変化しても、球体56の突出高さは変わらない。
【0061】
[レバーの旋回に伴う各部の動き]
前述したように、温度の調整では、ハンドル14が旋回される(後述の図19参照)。このハンドル14の旋回により、レバー46も旋回する。レバー46の下端95とレバー係合凹部98との係合により、可動弁体60が回転する。可動弁体60は、固定弁体62に対して回転する。この回転中において、平滑面PL1と平滑面PL2との面接触は維持される。この回転により、上記面積比R1が変化し、吐水の温度が調整される。
【0062】
レバー旋回の角度範囲は制約されている。前述したように、連結部124の下面125には、第1ストッパー150及び第2ストッパー152が設けられている(図10参照)。一方、回動体44の基部102は、半径方向外側に突出する外側延在部109を有する(図13(d)及び図8参照)。この外側延在部109には、前述した貫通孔110が設けられている。レバー旋回に伴い、この外側延在部109は、第1ストッパー150から第2ストッパー152までの範囲で円周方向に移動する。即ち、外側延在部109は、周位置Rx1からRy1までの範囲で円周方向に移動する(図10参照)。この移動において、この外側延在部109の周方向中心位置の移動範囲は、周位置Rx2からRy2までである。この周位置Rx2からRy2までの角度範囲Rfが、レバー46の旋回角度範囲である。角度範囲Rfは、前後クリック用球体56の移動範囲でもある。
【0063】
このように、外側延在部109とストッパー150、152との係合が、第1の旋回範囲規制機構である。更に、第2の旋回範囲規制機構が設けられている。図8及び図14(d)が示すように、回動体44の基部102には、第2外側延在部111が設けられている。この第2外側延在部111は、周位置Rx3からRy3までの範囲で円周方向に移動する(図10参照)。
【0064】
これら2つの旋回範囲規制機構は連動している。外側延在部109が第1ストッパー150に当接しているとき、第2外側延在部111は第2ストッパー152に当接している。外側延在部109が第2ストッパー152に当接しているとき、第2外側延在部111は第1ストッパー150に当接している。2つの旋回範囲規制機構により、レバー46を限界まで旋回したときの衝撃力が分散し、耐久性が向上する。
【0065】
以上のような構造のレバー組立体40は、旋回クリック機構と、前後クリック機構とを有する。旋回クリック機構とは、レバー46の旋回に伴うクリック感を発現する機構である。前後クリック機構とは、レバー46の前後回動に伴うクリック感を発現する機構である。
【0066】
[旋回操作でのクリック感A]
旋回操作でのクリック感は、旋回クリック機構によって生じる。本願では、このクリック感が、単にクリック感Aとも称される。図15から17が示すように、このクリック感Aは、旋回クリック用球体52と凸部170との係合又は係合解除によって生じる。図16は、図15と同様の断面図であり、球体52が凸部170と係合している状態を示す。図17は、図15と同様の断面図であり、球体52と凸部170との係合が解除された状態を示す。レバー46の旋回により、図15の状態から、図16の係合状態に移行し、更に図17の係合解除状態に移行する。図16に示される係合状態によって弾性部材50が圧縮されるとともに、旋回時の抵抗力が増加する。この抵抗力の増加に起因する感覚も、クリック感Aの一例である。また、係合解除の瞬間に、振動が発生する。この振動は、典型的なクリック感Aを生じさせる。また、この係合解除の瞬間に、音が発生する。この音に起因する感覚も、クリック感Aの一例である。
【0067】
[前後回動操作でのクリック感B]
前後回動操作でのクリック感は、前後クリック機構によって生じる。本願では、このクリック感が、単にクリック感Bとも称される。図12は、球体56と溝154とが係合した状態を示す。このクリックB感は、球体56と溝154との係合又は係合解除によって生じる。また、このクリック感Bは、球体56と突条156との係合又は係合解除によって生じる。レバー46の前後回動により、球体56はクリック機構発現部146上を半径方向に移動する。この移動により、球体56と第1の溝154との係合が解除され、更に移動すると、球体56と第2の溝154とが係合する。これらの係合により、振動が生じうる。この振動がクリック感Bを生じさせる。これらの係合により、レバー前後回動時の抵抗力が変化する。この抵抗力の変化に起因する感覚も、クリック感Bの一例である。また、この係合の瞬間に、音が発生する。この音に起因する感覚も、クリック感Bの一例である。また、球体56と突条156との係合により、レバー前後回動時の抵抗力が増加する。この抵抗力の増加に起因する感覚も、クリック感Bの一例である。
【0068】
図18は、図15から17に示される実施形態の変形例である。この実施形態では、弾性部材50に代えて、2つの弾性部材200が用いられている。これらの弾性部材200は、コイルバネである。コイルバネ200の長手方向長さは、コイルバネ50の長手方向長さよりも短い。更に、図18の実施形態は、中間部材202を有する。中間部材202は、円柱状の部材である。中間部材202の材質は、ステンレス鋼である。中間部材202は、スペーサーの役割を果たす。中間部材202により、2つのコイルバネ200の間隔が設定される。中間部材202により、コイルバネ200の圧縮度合いが調整されうる。
【0069】
中間部材202は、レバー軸48に固定されていない。中間部材202は、レバー軸48に固定されていてもよい。
【0070】
図19は、ハンドル14の旋回について説明するための平面図である。ハンドル14は、左限界MLから右限界MRまで旋回可能である。ハンドル14の旋回可能範囲RFは、前述した図10の角度範囲Rfに対応している。範囲RFの角度θfは、範囲Rfの角度θfに等しい。図19が示すように、この旋回可能範囲RFの中心周位置C1において、ハンドル14は正面を向く。この中心周位置C1は、図10の中心周位置c1に対応している。図19が示すように、ハンドル14の旋回範囲は、正面位置に対して左右対称である。
【0071】
図19が示すように、角度範囲RT1は、使用者から見て、中心周位置C1よりも右側である。この角度範囲RT1は、図10の角度範囲Rt1に対応している。範囲RT1の角度θ1は、範囲Rt1の角度θ1に等しい。よって角度範囲RT1は、クリック無発現部148の配置によって自在に設定される。ハンドル14の周位置が角度範囲RT1にあるとき、湯が混合されない。すなわち、ハンドル14の周位置が角度範囲RT1にあるとき、水の割合が100%である。本実施形態では、ハンドル14が正面よりも右側にあるとき、湯が混合されない。
【0072】
ハンドル14の周位置が中心周位置C1にあるときも、湯が混合されない。即ち、すなわち、ハンドル14の周位置が中心周位置C1(正面位置)にあるとき、水の割合が100%である。
【0073】
図19が示すように、角度範囲RT2は、使用者から見て、中心周位置C1よりも左側である。この角度範囲RT2は、図10の角度範囲Rt2に対応している。範囲RT2の角度θ2は、範囲Rt2の角度θ2に等しい。よって角度範囲RT2は、クリック機構発現部146の配置によって自在に設定される。ハンドル14の周位置が角度範囲RT2にあるとき、湯と水とが混合されるか、又は、水が無混合(湯が100%)である。即ち、ハンドル14の周位置が角度範囲RT2にあるとき、水の割合が0%以上100%未満である。
【0074】
この図19の実施形態では、ハンドル14の旋回可能範囲RFが正面位置に対して左右対称とされたが、左右非対称とされてもよい。例えば、角度範囲RT2の角度θ2が60度とされ、角度範囲RT1の角度θ1が40度とされてもよい。
【0075】
角度範囲RT2が小さすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が狭くなりすぎて、湯水混合比率の変化が急激になりすぎる。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、40度以上が好ましく、50度以上がより好ましく、55度以上が特に好ましい。角度範囲RT2が大きすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、100度以下が好ましく、90度以下がより好ましく、70度以下が特に好ましい。
【0076】
角度範囲RT1の角度θ1は0度とすることもできる。しかし、通常の湯水混合栓では、角度θ1が0度とはされていないため、θ1を0度とすると、使用者がハンドル14を中心周位置C1よりも右側に過度に操作してしまうことがある。この過度な操作の繰り返しは、湯水混合栓に過度な負担を与え、湯水混合栓の耐久性に悪影響を与える場合がある。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、10度以上が好ましく、20度以上がより好ましく、30度以上が特に好ましい。角度θ1が過大である場合、水の割合が100%である範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、70度以下が好ましく、60度以下がより好ましく、50度以下が特に好ましい。
【0077】
角度範囲RT1と角度範囲RT2との角度比(θ1/θ2)が小さすぎると、角度θ1が小さくなりすぎたり、角度θ2が大きくなりすぎたりして、前述の問題が生じやすくなる。この観点から、角度比(θ1/θ2)は、0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上が特に好ましい。また、角度比(θ1/θ2)が大きすぎると、角度θ1が大きくなりすぎたり、角度θ2が小さくなりすぎたりして、前述の問題が生じやすくなる。この観点から、角度比(θ1/θ2)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が特に好ましい。
【0078】
図19の実施形態では、角度範囲RT1が、使用者から見て中心周位置C1よりも右側とされており、中心周位置C1よりも右側で水の割合が100%とされている。更に、角度範囲RT2が、使用者から見て中心周位置C1よりも左側とされており、中心周位置C1よりも左側で水の割合が0%以上100%未満とされている。これらの構成が逆にされてもよい。即ち、角度範囲RT1が、使用者から見て中心周位置C1よりも左側とされており、中心周位置C1よりも左側で水の割合が100%とされ、且つ、角度範囲RT2が、使用者から見て中心周位置C1よりも右側とされており、中心周位置C1よりも右側で水の割合が0%以上100%未満とすることもできる。この場合でも、角度θ1、角度θ2及び/又は角度比(θ1/θ2)に関する前述の数値規定の全てが適用されうる。
【0079】
ハンドル14の周位置は、レバー46の周位置(レバー周位置)と同じである。角度範囲RT1は、湯が混合されないレバー周位置である。角度範囲RT2は、湯が混合されるレバー周位置である。「湯が混合される」とは、湯が100%である場合を含む。
【0080】
図10が示すように、角度範囲Rt2の全域に、クリック機構発現部146が設けられている。よって、レバー周位置が角度範囲RT2にあるとき、前後クリック機構が働く。一方、角度範囲Rt1の全域には、クリック機構発現部146が設けられていない。角度範囲Rt1の全域は、クリック無発現部148である。よって、レバー周位置が角度範囲RT1にあるとき、前後クリック機構は働かない。
【0081】
従って、本実施形態では、湯が混合されないレバー周位置では、前後回動操作においてクリック感Bが発現しない。また、湯が混合されるレバー周位置において、前後回動操作でクリック感Bが発現する。よって、前後回動操作を行えば、クリック感Bの有無によって、湯が混合されているか否かが判別される。
【0082】
湯が混合されているか否かの判別は、レバー旋回に伴うクリック感Aによっても達成されうる。レバー46の旋回動作において、水のみが吐出するレバー周位置と、湯が混合されるレバー周位置との境界において、クリック感Aが発現するのが好ましい。このクリック感Aにより、湯が混合されているか否かが判別される。例えば図19の実施形態において、角度範囲RT1と角度範囲RT2との境界において、クリック感Aが発現するのが好ましい。前述したクリック感Bと、このクリック感Aとにより、湯が混合されているか否かの判別がより一層確実になされうる。
【0083】
図20(a)は、固定弁体62の平面図である。図20(a)は、固定弁体62を上側からみた図である。図20(b)は、固定弁体62の底面図である。図20(b)は、固定弁体62を下側からみた図である。図20(c)は、図20(a)のc−c線に沿った断面図であり、図20(d)は、図20(a)のd−d線に沿った断面図であり、図20(e)は、図20(a)のe−e線に沿った断面図であり、図20(f)は、図20(a)のf−f線に沿った断面図であり、図20(g)は、図20(a)のg−g線に沿った断面図である。
【0084】
図20(a)が示すように、湯用弁孔80(上面開口線80L)は、曲がった長穴である。水用弁孔82(上面開口線82L)も、曲がった長穴である。
【0085】
図20(a)が示すように、湯用弁孔80は、上面開口線80Lを有している。上面開口線80Lは、平滑面PL1における湯用弁孔80の開口形状である。水用弁孔82は、上面開口線82Lを有している。上面開口線82Lは、平滑面PL1における水用弁孔82の開口形状である。混合水用弁孔84は、上面開口線84Lを有している。上面開口線84Lは、平滑面PL1における混合水用弁孔84の開口形状である。
【0086】
図20(b)が示すように、湯用弁孔80は、下面開口線80sを有している。水用弁孔82は、下面開口線82sを有している。混合水用弁孔84は、下面開口線84sを有している。
【0087】
図20(a)が示すように、水用弁孔82は、その長手方向の一端に第1壁面部W1を有する。水用弁孔82は、その長手方向の他端に第2壁面部W2を有する。湯用弁孔80は、その長手方向の一端に第3壁面部W3を有する。湯用弁孔80は、その長手方向の他端に第4壁面部W4を有する。
【0088】
本発明では、これらの壁面部W1からW4の少なくともいずれかが、傾斜面を有しているのが好ましい。以下の(構成a)が好ましく、(構成b)がより好ましく、(構成c)が更に好ましく、(構成d)が特に好ましい。
(構成a)第1壁面部W1、第2壁面部W2、第3壁面部W3及び第4壁面部W4から選択される少なくとも1つが、傾斜面を有している。
(構成b)第1壁面部W1、第2壁面部W2、第3壁面部W3及び第4壁面部W4から選択される少なくとも2つが、傾斜面を有している。
(構成c)第1壁面部W1、第2壁面部W2、第3壁面部W3及び第4壁面部W4から選択される少なくとも3つが、傾斜面を有している。
(構成d)第1壁面部W1、第2壁面部W2、第3壁面部W3及び第4壁面部W4の全てが、傾斜面を有している。
【0089】
本実施形態では、上記構成dが採用されている。図20(a)から(g)が示すように、第1壁面部W1は傾斜面SL1を有している。第2壁面部W2は傾斜面SL2を有している。第3壁面部W3は傾斜面SL3を有している。第4壁面部W4は傾斜面SL4を有している。
【0090】
これらの傾斜面SL1から4は、湯水混合栓10が使用状態にある場合における鉛直方向に対して傾斜している。これらの傾斜面SL1から4は、上方(平滑面PL1)側から見える(図20(a)参照)。
【0091】
このように、湯用弁孔80の壁面は傾斜面SL3、SL4を有している。また水用弁孔82の壁面は、傾斜面SL1、SL2を有している
【0092】
これらの傾斜面SL1から4は、ウォーターハンマーの抑制に寄与する。ウォーターハンマーとは、止水状態から吐水状態に切り替えられた際に、水圧の衝撃によって、混合栓の内部で音が発生する現象である。湯用弁孔80又は水用弁孔82に湯又は水が急激に流入することによって、ウォーターハンマーが生じる。
【0093】
傾斜面SL1から4は、この急激な流入を抑制する。よって、ウォーターハンマーが抑制される。湯又は水は、傾斜面に沿って斜めに流入することになるため、水圧の衝撃が緩和される。
【0094】
また、湯水が斜めに流入することになるため、可動弁体60等に作用する水圧衝撃が緩和される。この緩和により、湯水混合栓10の耐久性が向上しうる。
【0095】
なお、傾斜面SL1から4は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。また、傾斜面SL1から4は、滑らかであってもよいし、段階的(例えば階段状)であってもよい。
【0096】
図20(a)が示すように、湯用弁孔80の上面開口線80L及び水用弁孔82の上面開口線82Lは、左右非対称に形成されている。即ち、図20(a)の平面視において、ある直線を軸として図形を反転させると上面開口線80Lと上面開口線82Lとが重なるような対称軸は存在しない。例えば、レバー前後方向中心ラインLc(図20(a)及び(b)参照)に関して、上面開口線80Lと上面開口線82Lとは対称性を有さない。上方から見た平面視において、レバー前後方向中心ラインLcは、レバー46が中心周位置C1にあるときのレバー46の中心線に一致する(図19参照)。
【0097】
湯水の切り替え機能の自由度を高める手法の一つは、流路形成凹部94と、湯用弁孔80及び水用弁孔82との位置関係を多様に設計することである。上述した左右対称の構成に限定されないことで、湯用弁孔80及び水用弁孔82の設計自由度が向上する。よって、大きなコスト上昇を招くことなく、多様な湯水切り替え機能が実現されうる。
【0098】
従来、湯用弁孔80及び水用弁孔82は、左右対称に配置されていた。そして、湯用弁孔80及び水用弁孔82の側面には上記傾斜面SLを設けられておらず、湯用弁孔80の側面は平滑面PL1に対して垂直であった。その結果、湯用弁孔80において、上面開口線と下面開口線とは、同位置で且つ同形状であった。同様に、水用弁孔82において、上面開口線と下面開口線とは、同位置で且つ同形状であった。このような構成では、上面開口線を左右非対称等の特殊な形状とすると、下面開口線も特殊な形状となる。下面開口線が特殊な形状である場合、汎用されているベース体68が当該下面開口線に適合しない。即ち、汎用のベース体68を用いることができない事態が生じる。
【0099】
これに対して、上記実施形態では、上面開口線80Lと下面開口線80sとで、形状及び配置は相違している。また、上面開口線82Lと下面開口線82sとで、形状及び位置が相違している。前述した傾斜面SL1から4は、これらの相違を生じさせている。この構成では、上面開口線80L、82Lの設計自由度を高めつつ、下面開口線80s、82sの形状を、汎用のベース体68に適合させることができる。この観点から、下面開口線82s及び下面開口線80sは左右対称であるのが好ましい(図20(b)参照)。下面開口線82sと下面開口線80sとは対称(左右対称)であり、その対称軸は、レバー前後方向中心ラインLcである。
【0100】
図21(a)は、可動弁体60の下側部材88の平面図である。図21(a)は下側部材88を上方から見た図である。図21(b)は、下側部材88の底面図である。図21(b)は下側部材88を下方から見た図である。図21(c)は、図21(b)のc−c線に沿った断面図である。図21(d)は、図21(b)のd−d線に沿った断面図である。
【0101】
流路形成凹部94は、下面開口線94Lを有する。下面開口線94Lは、平滑面PL2における流路形成凹部94の開口形状である。
【0102】
図22(a)から(f)は、固定弁体62の上面と、可動弁体60(下側部材88)の下面との重なり状態を示す図である。この図22(a)から(f)では、上方視において固定弁体62によって隠される可動弁体60の線が破線で描かれており、可動弁体60(下側部材88)の下面線が実線で描かれている。図22(a)から(f)では、上面開口線80L及び上面開口線82Lと下面開口線94Lとの重なり状態が示されている。
【0103】
図22(a)から(f)では、上方からは見ることの出来ない可動弁体60の下面線が実線で示されている。この点は、通常の図面とは相違するので、留意されたい。
【0104】
図22(a)は、レバー周位置が左限界MLであり、且つ、レバー前後位置が上限界(吐出ストップ)の状態を示している。図22(b)は、レバー周位置が左限界MLであり、且つ、レバー前後位置が下限界(吐出最大)の状態を示している。図22(c)は、レバー周位置が中心周位置C1(正面位置)であり、且つ、レバー前後位置が上限界(吐出ストップ)の状態を示している。図22(d)は、レバー周位置が中心周位置C1(正面位置)であり、且つ、レバー前後位置が下限界(吐出最大)の状態を示している。図22(e)は、レバー周位置が右限界MRであり、且つ、レバー前後位置が上限界(吐出ストップ)の状態を示している。図22(f)は、レバー周位置が右限界MRであり、且つ、レバー前後位置が下限界(最大吐出位置)の状態を示している。
【0105】
上面開口線80Lで囲まれた領域Xが、図20(a)において破線ハッチングで示されている。この領域Xは、湯用弁孔80の上面開口領域である。上面開口線82Lで囲まれた領域Yが、図20(a)において破線ハッチングで示されている。この領域Yは、水用弁孔82の上面開口領域である。下面開口線94Lで囲まれた領域Zが、図21(b)において破線ハッチングで示されている。この領域Zは、可動弁体60(下側部材88)における流路形成凹部94の下面開口領域である。
【0106】
図20(a)において2点鎖線ハッチングで示される領域Eは、混合水用弁孔84の上面開口線84Lで囲まれた領域である。
【0107】
図22(b)における実線ハッチングは、上記領域Xと上記領域Zとの重なり領域XZを示す。図22(d)におけるハッチングは、上記領域Yと上記領域Zとの重なり領域YZを示す。図22(e)におけるハッチングは、上記領域Yと上記領域Zとの重なり領域YZを示す。
【0108】
可動領域の全てにおいて、混合水用弁孔84の領域Eは、流路形成凹部94の領域Zに重複している。
【0109】
[湯水の流れ]
湯は、湯導入部(湯導入管18及び湯導入口70)を経由して、湯用弁孔80に至る。水は、水導入部(水導入管20及び水導入口72)を経由して、水用弁孔82に至る。
【0110】
湯用弁孔80に到達した湯は、流路形成凹部94に流入する。この流入は、上記領域XZにより生ずる。可動弁体60の摺動により、領域XZの面積は変化する。領域XZが存在しない場合、湯は流路形成凹部94に流入しない。領域XZが存在しない場合とは、可動弁体60(下側部材88)の下面を構成する平滑面PL2によって湯用弁孔80が完全に塞がれていることを意味する。平滑面PL2によって湯用弁孔80が完全に塞がれている状態の例は、図22(d)及び図22(f)に示される。
【0111】
水用弁孔82に到達した水は、流路形成凹部94に流入する。この流入は、上記領域YZにより生ずる。可動弁体60の摺動により、領域YZの面積は変化する。領域YZが存在しない場合、水は流路形成凹部94に流入しない。領域YZが存在しない場合とは、可動弁体60(下側部材88)の下面を構成する平滑面PL2によって水用弁孔82が完全に塞がれていることを意味する。平滑面PL2によって水用弁孔82が完全に塞がれている状態の例は、図22(b)に示される。
【0112】
流路形成凹部94に到達した湯及び/又は水は、混合水用弁孔84、吐出口74及び吐出管22を経由して、吐出部16に至る。
【0113】
湯と水との混合割合は、上記領域XZと上記領域YZとの面積比R1に依存する。ハンドル14の旋回によって、レバー46を介して可動弁体60が回転する。この可動弁体60の回転によって、面積比R1が変化する。この変化によって、水温が調整される。
【0114】
吐出量は、上記領域XZと上記領域YZとの面積合計Saに依存する。ハンドル14の上下動によって、レバー46が前後回動し、可動弁体60が直線方向D1方向に移動する。この可動弁体60の移動によって、面積合計Saが変化する。この変化によって、吐出量が調整される。面積合計Saがゼロである場合、吐出がストップする。面積合計Saがゼロである場合とは、平滑面PL2によって湯用弁孔80及び水用弁孔82が完全に塞がれていることを意味する。平滑面PL2によって湯用弁孔80及び水用弁孔82が完全に塞がれている例は、図22(a)、(c)及び(e)に示される。
【0115】
図22(b)には、領域YZが存在しない。レバー周位置が左限界MLである場合、レバーの上下回動位置に関わらず、水は混合されない。即ちこの場合、湯が100%である。
【0116】
図21(d)には、領域XZが存在しない。レバー周位置が中心周位置C1である場合、レバーの上下回動位置に関わらず、湯は混合されない。即ちこの場合、水が100%である。よって、給湯器は作動せず、省エネルギーが達成される。一般に、湯水混合栓の使用者は、レバーを中心周位置C1に合わせて使用する傾向にある。湯水混合栓10では、使用される傾向が高い中心周位置C1において、省エネルギーが達成される。
【0117】
図21(f)には、領域XZが存在しない。レバー周位置が右限界MRである場合、レバーの上下回動位置に関わらず、湯は混合されない。即ちこの場合、水が100%である。
【0118】
図23は、図22と同じ図である。ただし、図面の理解を容易とする観点から、図23では、図22に記載された符号の一部が省略されている。
【0119】
図23の(a)、(c)及び(e)において両矢印D1で示されるのは、可動弁体60の移動の直線方向である。よって、図22(a)から(f)において、下面開口線94Lは、直線方向D1に沿って移動している。
【0120】
図23の(a)、(c)及び(e)において両矢印D2で示されるのは、レバー46の前後回動における前後方向である。前後方向D2は、上側から見た平面視におけるレバー46の前後回動方向である。前後方向D2は、レバー46の前後回動の中心軸線(レバー軸48の中心軸線)に対して垂直な方向である。レバー46の前後回動の中心軸線に対して垂直な平面と平滑面PL2との交線Lm(図示しない)を考えたとき、前後方向D2はこの交線Lmに平行である。
【0121】
従来の湯水混合栓では、この前後方向D2と直線方向D1とが平行である。これに対して、湯水混合栓10では、前後方向D2が直線方向D1に対して平行ではない。図23(a)、(c)及び(e)において両矢印θxで示されるのは、直線方向D1と前後方向D2との成す角度である。
【0122】
ここで、図23(c)及び(d)に着目する。即ち、レバー周位置が中心周位置C1である場合に着目する。仮に、従来のごとく、可動弁体60が前後方向D2に移動する場合、図23(d)の吐出状態において、領域XZが生じてしまう。即ち、この領域XZにより、湯が混合されてしまう。しかし、本実施形態では、直線方向D1が、前後方向D2に対して傾斜している。しかも、この傾斜の方向は、レバー周位置が中心周位置C1である状態において、湯用弁孔80との重複を避けるような方向である。よって、レバー周位置が中心周位置C1である場合において、レバー46を吐出方向に回動させても、可動弁体60が直線方向D1に沿って移動するため、領域YZのみが生じ、領域XZは生じない(図23(d)参照)。
【0123】
図24(a)は、下面開口線94Lの形状を示す平面図である。この下面開口線94Lは、ストレート状部分STを有する。このストレート状部分STは、直線方向D1に平行である(図23(a)、(c)及び(e)参照)。下面開口線94Lは、湯用弁孔80側に配置されている。吐出量が最大である状態において、水のみが吐出される状態から湯が混合される状態へと移行するとき、下面開口線94Lのうち、上面開口線80Lに最初に重なるのが、このストレート状部分STである。換言すれば、図22(d)の状態から図22(b)の状態へとレバー46を旋回させる過程において、最初に上面開口線80Lに重なるのが、ストレート状部分STである。このようなストレート状部分STの配置は、レバー周位置が中心周位置C1である場合において、湯の混合を防ぐのに寄与している(図23(d)参照)。
【0124】
なお、本発明では、ストレート状部分STは、直線方向D1に略平行であるのが好ましい。略平行とは、±5度の誤差角度を許容する主旨である。この誤差角度は、好ましくは±3度であり、更に好ましくは、上記実施形態の如く、ストレート状部分STと直線方向D1とは平行とされる。なお、ストレート状部分STが直線でない場合、ストレート状部分STの両端を結ぶ直線によって、上記誤差角度及び上記平行が判定される。
【0125】
直線方向D1に沿ったストレート状部分STが設けられることで、中心周位置C1における前後回動の全範囲において、湯の混合が効果的に防止される。よって、使用者の意図に反して湯が混合されることが抑制され、省エネルギーが達成されうる。また、特殊な弁孔形状によって湯の混合を避ける必要が無くなるので、弁孔の設計自由度が向上する。
【0126】
前述したように、特開2010−185569号公報の図6では、可動弁体の開口部の形状が特殊である。即ち、操作レバーが正面位置にある吐出状態において、可動弁体の開口部と固定弁体の湯流入弁孔とが重複しないように、可動弁体の開口部の形状が部分的に小さくされている。
【0127】
これに対して、本実施形態では、直線方向D1を前後方向D2と相違させることで、領域XZ(図23(a)参照)の発生を制御している。このため、弁孔形状の制約を少なくすることが出来る。よって、弁孔形状の設計自由度が向上する。この設計自由度の向上により、湯水混合比率とレバー旋回操作との関係の設定において、自由度が向上する。また、吐出量とレバー前後回動操作との関係の設定において、自由度が向上する。
【0128】
一般に、湯用弁孔80に供給される湯の供給圧は、水用弁孔82に供給される水の供給圧よりも低い。これは、湯が給湯装置を経由していることに起因する。湯用弁孔80側にストレート状部分STを設けることで、湯側への旋回(図19における左側への旋回)において、少ない旋回角度で領域XZ(図23(b))が増加しやすい。特に、水のみが吐出している状態から湯が混合される状態に切り替わる際に、湯の混合割合が増加しやすい。よって、湯が混合されるレバー周位置にあるにも関わらず吐水温度が上がりにくいという事態が抑制されうる。このため、温度調節が容易な湯水混合栓10が実現されうる。
【0129】
直線方向D1と平行な向きにおける下面開口線94Lの長さがLfとされる。本願において、ストレート状部分STとは、曲率半径が長さLfの2倍以上である線によって形成されている部分を意味する。ストレート状部分STにおいて、曲率半径が変化していてもよい。製造及び設計の容易性の観点から、ストレート状部分STは、曲率半径が長さLfの3倍以上である線によって形成されているのが好ましく、最も好ましいストレート状部分STの形状は、直線である。なお、ストレート状部分STの曲率半径は、20mm以上、更には25mm以上とすることもでき、例えば28mmとすることができる。
【0130】
図23(d)において両矢印Lで示されているのは、レバー周位置が中心周位置C1である場合における、下面開口線94Lと上面開口線80Lとの最短距離である。この距離Lは、ストレート状部分STに垂直な方向において測定される。ストレート状部分STが直線でない場合、この距離Lは、ストレート状部分STの両端を結ぶ直線に垂直な方向において測定される。レバーの前後回動の全範囲において距離Lを測定した場合において、その最大値がLmaxとされ、その最小値がLminとされる。ストレート状部分STによる湯混合抑制効果を高めつつ弁孔及び凹部94の設計自由度を高める観点から、差(Lmax−Lmin)は、1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.2mm以下が更に好ましく、0mmが最も好ましい。
【0131】
レバー周位置が中心周位置C1である場合において湯の混合を防ぎ、且つ各弁孔の設計自由度を高める観点から、上記角度θx(図23参照)は、5度以上が好ましく、10度以上がより好ましく、20度以上が特に好ましい。レバー46の前後回動操作を円滑とする観点から、角度θxは、45度以下が好ましく、40度以下がより好ましく、35度以下が特に好ましい。本実施形態では、角度θxは30度である。
【0132】
なお、下面開口線94Lには、凸状部m1が設けられている。この凸状部m1は、止水状態から吐出状態に移行する際に、湯又は水の流路形成凹部94への急激な流入を緩和しうる。よって、これらの凸状部m1は、ウォーターハンマーの抑制に寄与する。
【0133】
図24(b)、(c)及び(d)は、下面開口線94Lの変形例である。図24(c)のように、ストレート状部分STが設けられなくても良い。また、図24(d)のように、湯用弁孔80側及び水用弁孔82側の両方にストレート状部分STが設けられても良い。
【0134】
前後方向D2に対する直線方向D1の傾斜を実現させている構成が、前述した移動方向規制機構である。図25(a)及び(b)は、吐水状態におけるレバー組立体40の断面図である。図25(a)は上側部材86の上面に沿った断面図であり、図25(b)はレバー46の軸孔100の垂直方向に沿った断面図である。図25(c)及び(d)は、止水状態におけるレバー組立体40の断面図である。図25(c)は上側部材86の上面に沿った断面図であり、図25(d)はレバー46の軸孔100の垂直方向に沿った断面図である。図25(b)及び(d)において、軸孔100の内部の部材の記載は省略されている。
【0135】
図25(a)及び図25(c)が示すように、レバー46の下端部(ハッチング部分)とレバー係合凹部98との間には、隙間Gpが設けられている。前述したように、レバー46の前後回動によって、レバー46の下端部の移動方向は前後方向D2であるが、可動弁体60(上側部材86)の移動方向は直線方向D1である。隙間Gpは、可動弁体60が直線方向D1に沿って移動することを許容する。隙間Gpの存在により、直線方向D1と前後方向D2とが相違するにも関わらず、レバー46の下端部が可動弁体60の移動を阻害しない。
【0136】
図25(a)に示されるように、吐水量が最大の状態においては、隙間Gpは、湯水混合栓10の使用者側から見てレバー46の右側に位置し、この場合、レバー46の左側には、隙間Gpは実質的に存在しない。 一方、図25(c)に示されるように、止水状態においては、隙間Gpは、湯水混合栓10の使用者側から見てレバー46の左側に位置し、この場合、レバー46の右側には、隙間Gpは実質的に存在しない。これらの構成により、隙間Gpの寸法が最小限とされている。なお、図示しないが、最大吐水と止水との中間状態においては、隙間Gpは、湯水混合栓10の使用者側から見て、レバー46の右側と左側とに存在する。図25(a)において符号G1で示されるのは、レバー46の右側の隙間距離である。図25(c)において符号G2で示されるのは、レバー46の左側の隙間距離である。[G1+G2]は、レバー46の上下方向の位置に関わらず、一定である。
【0137】
レバー係合凹部98は、第一側面98aと第二側面98bとを有する(図13(a)、図25(b)及び図25(d)参照)。第一側面98aは、平面である。第二側面98bは、平面である。
【0138】
レバー46の下端部は、第一曲面Rs1と、第二曲面Rs2とを有する。第一曲面Rs1及び第二曲面Rs2は、凸曲面である。
【0139】
レバー46の前後回動において、第一曲面Rs1は第一側面98aに接触している。この接触(接触1とする)は、線接触である。レバー46が吐出側に回動されるとき、第一曲面Rs1が第一側面98aを押し、可動弁体60が移動する。レバーの前後回動の位置によって、線接触の位置は上下方向に移動するが、線接触は、レバーの前後回動位置に関わらず、維持される。
【0140】
レバー46の前後回動において、第二曲面Rs2は第二側面98bに接触している。この接触(接触2とする)は、線接触である。レバー46が止水側に回動されるとき、第二曲面Rs2が第二側面98bを押し、可動弁体60が移動する。レバーの前後回動の位置によって、線接触の位置は上下方向に移動するが、線接触は、レバーの前後回動位置に関わらず、維持される。
【0141】
前述したように、レバーの前後回動操作に伴い接触位置が移動するが、第一曲面Rs1及び第二曲面Rs2は、この接触位置の移動に伴う摩擦抵抗を低減させる。よって、円滑なレバー操作が実現される。
【0142】
レバー46の回転軸に対して垂直な平面による断面において、第一曲面Rs1の断面線は円弧(円弧1とする)であり、この円弧1の半径をr1とする。レバー46の回転軸に対して垂直な平面による断面において、第二曲面Rs2の断面線は円弧(円弧2とする)であり、この円弧2の半径をr2とする。半径r1は半径r2に等しい。円弧1の中心と円弧2の中心とは同一である。即ち、円弧1と円弧2とは同一円周上にある。
【0143】
図25(d)において両矢印d1で示されるのは、円弧1と円弧2とを含む円の直径である。図25(a)において両矢印d3で示されるのは、第一側面98aと第二側面98bとの間の距離である。レバーの前後回動操作における遊び及びガタツキを抑制する観点から、差(d3−d1)は、0.2mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましく、0.05mm以下が特に好ましい。寸法精度を緩和する観点から、差(d3−d1)は、0mm以上が好ましく、0.01mm以上がより好ましく、0.02mm以上が特に好ましい。
【0144】
第一曲面Rs1と第二曲面Rs2とは、いずれも、同一の円筒面(以下、仮想円筒面という)の一部である。この仮想円筒面の中心軸線Czは、前後方向D2に対して垂直である。この中心軸線Czは、レバー46の前後回動の中心軸線に平行である。可動弁体60が直線方向D1に沿って移動しても、第一側面98a及び第二側面98bは、常に、この仮想円筒面に接触している。即ち、直線方向D1と前後方向D2とが相違しているにも関わらず、第一側面98aと第一曲面Rs1との接触は維持されている。同様に、直線方向D1と前後方向D2とが相違しているにも関わらず、第二側面98bと第二曲面Rs2との接触は維持されている。しかも、これらの接触は、常に、線接触である。従って、直線方向D1と前後方向D2との相違が実現されつつ、レバー係合凹部98とレバー46の下端部との安定的な接触が、レバーの上下回動範囲の全体に亘って、維持されている。また、接触の形態が線接触であるから、摩擦抵抗が抑制されている。また、これらの線接触の線の方向は、側面98a、98bと曲面Rs1、Rs2との相対移動方向に沿っている。よって摩擦抵抗が抑制されている。これらの構成により、レバー46の前後回動操作は、円滑且つ安定的である。
【0145】
可動弁体60は、前後方向D2とは異なる直線方向D1に移動するため、第一曲面Rs1と第一側面98aとの間で、水平方向の摺動が生じる。第一曲面Rs1の形状は、この摺動に伴う摩擦抵抗を低減させ、円滑なレバー操作を実現する。同様に、第二曲面Rs2と第二側面98bとの間で、水平方向の摺動が生じる。第二曲面Rs2の形状は、この摺動に伴う摩擦抵抗を低減させ、円滑なレバー操作を実現する。
【0146】
なお、凹部96(図8及び図21(a)参照)の深さは、レバー46の前後回動の全範囲において、レバー46の下端と可動弁体60(上側部材86)とが接触しないように設定されている。これは、レバー46の前後回動操作を円滑としている。
【0147】
図25(d)において両矢印d2で示されているのは、レバー46の軸孔100の後方端(止水側の端)と、第二側面98bとの距離である。この距離d2は、第二側面98bに対して垂直な方向に沿って測定される。この距離d2は、上記直径d1と略等しい。(d1−d2)の差の絶対値は0.05mm以内に設定されている。即ち、d2=d1±0.05mmである。この寸法関係は、レバー46の下端部及び可動弁体60の小型化に寄与している。レバー46の前後回動の全範囲に関し、軸孔100の水平方向位置は、第一側面98aと第二側面98bとの間に収まっている。
【0148】
以上に記載したように、本発明は、直線方向D1と前後方向D2との相違という観点以外にも、複数の他の発明を含んでいる。これらの他の発明として、次の発明1から3が例示される。
【0149】
[他の発明1]
湯用弁孔、水用弁孔及び吐出弁孔を有する固定弁体と、
上記固定弁体の上面に摺動可能に配置されており、流路形成凹部及びレバー係合孔を有する可動弁体と、
左右方向の旋回及び前後回動が可能なレバーと、
上記前後回動が可能なようにレバーを支持するとともに上記レバーの旋回に連動して回転する回転体と、
を備えており、
上記レバーの下端部が上記レバー係合孔に係合しており、この係合により、上記レバーの下端部の動きが上記可動弁体に伝達され、
上記レバーの旋回により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して旋回し、この可動弁体の旋回により、湯水混合比率の調節が可能とされており、
上記レバーの前後回動により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して移動し、この移動により、吐出量の調節が可能とされており、
上記水用弁孔の壁面が傾斜面を有しており、
上記湯用弁孔の壁面が傾斜面を有している湯水混合栓。
【0150】
[他の発明2]
湯用弁孔、水用弁孔及び吐出弁孔を有する固定弁体と、
上記固定弁体の上面に摺動可能に配置されており、流路形成凹部及びレバー係合孔を有する可動弁体と、
左右方向の旋回及び前後回動が可能なレバーと、
上記前後回動が可能なようにレバーを支持するとともに上記レバーの旋回に連動して回転する回転体と、
を備えており、
上記レバーの下端部が上記レバー係合孔に係合しており、この係合により、上記レバーの下端部の動きが上記可動弁体に伝達され、
上記レバーの旋回により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して旋回し、この可動弁体の旋回により、湯水混合比率の調節が可能とされており、
上記レバーの前後回動により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して移動し、この移動により、吐出量の調節が可能とされており、
上記湯用弁孔の上面開口線及び上記水用弁孔の上面開口線が、左右非対称に形成されている湯水混合栓。
【0151】
[他の発明3]
湯用弁孔、水用弁孔及び吐出弁孔を有する固定弁体と、
上記固定弁体の上面に摺動可能に配置されており、流路形成凹部及びレバー係合孔を有する可動弁体と、
左右方向の旋回及び前後回動が可能なレバーと、
上記前後回動が可能なようにレバーを支持するとともに上記レバーの旋回に連動して回転する回転体と、
を備えており、
上記レバーの下端部が上記レバー係合孔に係合しており、この係合により、上記レバーの下端部の動きが上記可動弁体に伝達され、
上記レバーの旋回により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して旋回し、この可動弁体の旋回により、湯水混合比率の調節が可能とされており、
上記レバーの前後回動により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して移動し、この移動により、吐出量の調節が可能とされており、
上記流路形成凹部の下面開口線がストレート状部分を有しており、
吐出量が最大である場合において、水のみが吐出される状態から湯が混合される状態へと移行するとき、この下面開口線のうちの上記ストレート状部分が、上記湯用弁孔の上記上面開口線に最初に重なる湯水混合栓。
【0152】
[クリック機構の効果]
上記実施形態では、球体52及び球体56が用いられている。これらの球体52、56は、回転可能な状態で支持されている。これらの球体52、56が回転することで、摩耗及び傷が抑制される。よって、使用に伴う経時劣化が抑制され、クリック機構の耐久性が高まる。また、摩耗及び傷が抑制されるので、使用に伴うクリック感A、Bの変動が少ない。信頼性の高いクリック機構が実現される。
【0153】
旋回クリック機構では、弾性部材として、コイルバネ50、200が用いられている。繰り返しの変形によっても、コイルバネの弾性係数は変化しにくい。コイルバネの使用により、使用に伴う経時劣化が抑制される。よって、クリック機構の耐久性が高まる。また、使用に伴うクリック感Aの変動は少ない。信頼性の高いクリック機構が実現される。
【0154】
また、コイルバネ50、200は、円滑に変形されやすく、また、大きな変形量が確保されうる。このため、心地よく且つスムースなクリック感Aが実現される。
【0155】
旋回クリック機構では、球体52と、この球体52を支持するコイルバネ50、200とが用いられているので、部材の寸法誤差又は組立誤差によって生じるクリック感Aのバラツキが抑制される。
【0156】
前後回動クリック機構では、球体56と、この球体56を支持するバネ部材とが用いられている。よって、部材の寸法誤差又は組立誤差によって生じうるクリック感Bのバラツキは、抑制される。また、板バネ58に球体56を載せたシンプルな構成であるため、製造誤差及び使用中の不具合抑制され、クリック感Bのバラツキが抑制される。
【0157】
上述の通り、可動弁体60(下側部材88)の下面には平滑面PL2が形成され、固定弁体62の上面には平滑面PL1が形成されている。これら平滑な平面同士の面接触により、水漏れが防止されている。これら平滑な平面同士が面接触しているため、面圧が分散されやすく、摺動による「摩耗」は生じにくい。仮に、この摩耗が生じた場合、摩耗量の分だけ、可動弁体60の位置が下がる。即ち、この摩耗が生じた場合、可動弁体60(上側部材86)の上に配置されている板バネ58及び球体56が、ハウジング42に対して、相対的に下方へと移動する。この移動により、球体56とハウジング42との隙間距離が変化する。この隙間距離の変化により、クリック感Bは変化する。しかし実際には上記の通り、摩耗が生じにくいため、球体56の上下方向位置の変位は起こりにくい。よって、使用に伴うクリック感Bの変動は少ない(効果a)。
【0158】
上述の通り、可動弁体60と固定弁体62との間では、平滑な平面同士が面接触しているため、面圧が分散されやすい。よって、摺動による「偏摩耗」は生じにくい。仮に、この偏摩耗が生じた場合、可動弁体60が傾斜する。即ち、この偏摩耗が生じた場合、可動弁体60(上側部材86)の上に配置されている球体56の移動方向が傾斜する。そうすると、前後回動に伴う球体56の移動中に、球体56とハウジング42との隙間距離が変化する。この隙間距離の変化により、クリック感Bは変化する。しかし実際には上記の通り、偏摩耗が生じにくいため、球体56の移動方向の傾斜は起こりにくい。よって、使用に伴うクリック感Bの変動は少ない(効果b)。
【0159】
これらの効果a及び効果bが実現したのは、可動弁体60の上側に弾性部材58及び球体56を配置し、この球体56を、ハウジング42の下面に当接させたからである。本実施形態では、可動弁体60と固定弁体62とを水密状態で隙間無く面接触させるという構成を利用して、クリック感Bの変動を抑制することができる。
【0160】
上述した通り、上記実施形態では、レバー周位置の相違に起因して、前後回動操作における操作感が相違する。上記実施形態では、この操作感の相違が、クリック感Bの有無とされている。クリック感Bの有無は、判別しやすい。上記実施形態では、クリック感Bの有無によって、湯が混合されているか否かが容易に判別される。
【0161】
湯が混合されているか否かは、吐水の温度のみからは判別しにくいことがある。例えば、湯の混合割合が少ない場合、水が100%の場合と比較して、温度がそれほど高くならない。よってこの場合、吐水の温度のみからは湯の混合に気がつかないことがある。また、湯の混合割合が高い場合であっても、給湯器等からの加熱装置で加温された湯が蛇口に至るまでの間、吐水の温度が上がらない場合がある。この場合も、吐水の温度のみからは湯の混合に気がつかないことがある。また、ハンドル14の周位置によっても、湯が混合されているか否かが正確に判別できない場合がある。このような場合、使用者の意図に反して、湯が混合されることがある。即ち使用者は湯が混合されていない(水が100%の)吐水を使用しているつもりであるにも関わらず、実際には湯が混合されていることがある。この場合、エネルギーが無駄となる。上記実施形態では、クリック感Bの有無によって、湯が混合されているか否かが容易に判別される。よって、エネルギーの無駄が抑制される。
【0162】
このように、上記実施形態では、レバー周位置の相違に起因して、レバーの回動操作における操作感を相違させることができる(効果c)。この効果cが生じた理由は、前後回動クリック機構を、部材Xと固定部材Zとの係合によって実現したからである。
【0163】
ここで、部材X、Y及びZの分類が説明される。レバー組立体40を構成する部材は、次の3つに分類されうる。
(1)部材X:レバーの旋回操作に連動して回転し、且つ、レバーの前後回動操作に連動して移動する部材。
(2)部材Y:レバーの旋回操作に連動して旋回するが、レバーの前後回動操作によっては移動しない部材。
(3)固定部材Z:レバーのいかなる操作に対しても動かない部材。
【0164】
上記(1)の部材Xとして、可動弁体60(上側部材86及び下側部材88)が挙げられる。上記(2)の部材Yとして、回動体44が挙げられる。上記(3)の固定部材Zとして、ハウジング42、固定弁体62及びベース体68が挙げられる。
【0165】
レバー46の前後回動を可動弁体60の直線移動に変えるため、回動体44は、レバー46の前後回動の際に動いてはならない。一方、レバー46の旋回を可動弁体60に伝達するため、回動体44は、レバー46の旋回によって回転しなければならない。したがって、部材Yとしての回動体44は必須である。したがって、この回動体44(部材Y)が、部材X(可動弁体60)の上側に存在することになる。即ち、回動体44(部材Y)が、部材X(可動弁体60)と部材Z(ハウジング42)の下面との間に介在することになる。よって部材Xと部材Zとを係合させることは難しい。このため、従来技術では、前後回動クリック機構は、レバーと回動体(部材Y)との係合により達成されていた(前述の、特許第2779792号公報参照)。この場合、レバー46を旋回すると、回動体44も一緒に旋回する。レバー46と回動体44との相対関係は、旋回に関わらず、常に同じである。よって、前後回動に伴うクリック感は、レバー周位置に関わらず、一定である。従来技術では、レバー周位置によってクリック感を相違させることはできなかった。
【0166】
これに対して本実施形態では、部材Y(回動体44)の介在にも関わらず、部材X(可動弁体60)と部材Z(ハウジング42)との係合が達成された。この係合により、クリック感Bを発現するクリック機構が実現された。この構成によって、レバー周位置によってクリック感Bを相違させることが可能となり、上記効果cが達成されている。
【0167】
本実施形態では、ハウジング42の下面(連結部124の下面125)の仕様を変えることによって、クリック感が生じる角度範囲は自由に設計されうる。例えば、クリック機構発現部146の位置を変えることによって、前後回動操作でのクリック感が発現するレバー周位置を自在に変更することができる(図10参照)。また、クリック感の仕様も自在に設計されうる。例えば、溝154又は突条156の数、間隔、形状、高さ等を変えることで、様々なクリック感が得られうる。クリック感の創出にハウジング42の下面を用いたことで、クリック感の設計自由度は高められている。
【0168】
クリック感の有無は、使用者にとって、区別しやすい。この観点から、操作感の相違の好ましい態様は、クリック感の有無である。クリック感の有無の設定として、以下が例示される。以下の設定1は、前述した実施形態での設定である。以下では、湯と水との混合割合が百分率(%)で示される。
[設定1]:水の混合割合が100%であるレバー周位置では、クリック感Bが生じない。水の混合割合が100%未満であるレバー周位置では、クリック感Bが生じる。
[設定2]:水の混合割合が100%であるレバー周位置では、クリック感Bが生ずる。水の混合割合が100%未満であるレバー周位置では、クリック感Bが生じない。
【0169】
操作感の相違として、クリック感Bの有無ではなく、クリック感Bの相違が採用されてもよい。クリック感Bの相違の設定として、以下が例示される。
[設定3]:水の混合割合が100%であるレバー周位置と、水の混合割合が100%未満であるレバー周位置とで、クリック感Bが相違する。
【0170】
この設定3では、例えば、クリック感Bが2種類である。もちろん、クリック感Bが3種類以上であってもよく、その一例は次の設定4である。
[設定4]:水の混合割合が100%であるレバー周位置では第1のクリック感Bが生じ、水の混合割合がWa%以上100%未満であるレバー周位置では第2のクリック感Bが生じ、水の混合割合がWa%未満であるレバー周位置では第3のクリック感Bが生じる。
【0171】
上記混合割合Wa%は、例えば、人体が直接触れると危険な水温となるような割合に設定されてもよい。この場合、熱いお湯が吐出されるか否かがクリック感によって感知されうる。これは、熱いお湯による事故(やけど等)の防止に役立ちうる。
【0172】
クリック感の有無と、クリック感の相違とが組み合わされてもよく、その一例は次の設定5である。
[設定5]:水の混合割合が100%であるレバー周位置ではクリック感Bが生じず、水の混合割合がWa%以上100%未満であるレバー周位置では第1のクリック感Bが生じ、水の混合割合がWa%未満であるレバー周位置では第2のクリック感Bが生じる。
【0173】
クリック感Bをどのように相違させるかは、限定されない。相違させうるクリック感Bの仕様として、以下が例示される。
[仕様1]:吐出ストップ位置から最大吐出位置までレバーを回動させたときのクリック感Bの発生回数N
[仕様2]:クリック感Bの発生時におけるレバーの前後回動操作の抵抗感
[仕様3]:クリック感Bの発生時における音
【0174】
仕様1に関する一例では、あるレバー周位置では回数Nが3以下とされ、別のレバー周位置では回数Nが4以上とされる。仕様2に関する一例では、あるレバー周位置では上記抵抗感が比較的小さく、別のレバー周位置では上記抵抗感が比較的大きい。仕様3に関する一例は、あるレバー周位置では上記音の周波数が比較的高く、別のレバー周位置では上記音の周波数が比較的低い。
【0175】
なお、仕様2の抵抗感とは、レバーを前後回動させるために必要な回転モーメントと同義である。
【0176】
上記設定1から5及び上記仕様1から3は、連結部124の下面125の形状を変更するだけで容易に実現されうる。レバー組立体40では、クリック感の設計自由度が高い。
【0177】
レバー周位置に起因して、クリック感以外の操作感が相違していてもよい。この操作感の一例として、クリック感Bが発生していない局面におけるレバーの前後回動操作の抵抗感が挙げられる。
【0178】
繰り返しの使用により、クリック機構は繰り返し働く。クリック感が発生するときに生じうる振動は通常は微細であるが、繰り返しの使用では、この振動が、レバー組立体40に負荷を与えうる。特に、レバー軸48、軸孔100等の回動軸保持部分には負荷がかかりやすい。
【0179】
図7及び図8が示すように、本実施形態では、旋回クリック機構における弾性部材(コイルバネ)50がレバー軸48の内部に配置されている。弾性部材50の長手方向はレバー軸48の長手方向に等しい。弾性部材50の伸縮方向は、レバー軸48の長手方向に沿っている。弾性部材50の中心軸線が、レバー軸48の中心軸線に等しい。これらの構成は、旋回クリックにおける振動の影響を低下させうる。この構成では、旋回クリックにおける振動が、レバー軸48に略沿って生じる。弾性部材50及び球体52に作用する力は、レバー軸48の内部において作用し、且つ、レバー軸48に沿った方向である。以上より、レバー軸48に対して垂直方向に作用する負荷は生じにくく、回動軸保持部分への負荷が少ない(効果d)。よって、繰り返しの使用によるレバー46のガタ付きが抑制され、レバー組立体40の耐久性が向上しうる。
【0180】
球体52は、レバー軸48の両端部のうちの一方側のみに配置されてもよい。しかし、本実施形態では、図7及び図15が示すように、球体52は、レバー軸48(弾性部材50)の両端部に配置されている。よって、これら2つの球体52から発生する振動が互いに相殺しうる。よって、上記回動軸保持部分への負担が軽減されうる。図16が示すように、上記実施形態では、第1の球体52が凸部170と係合しているとき、第2の球体52も凸部170と係合している。この場合、弾性部材50に作用する応力が互いに相殺しうる。この構成により、上記効果dが高められている。
【0181】
上記実施形態では、旋回クリック感を奏するための球体52が複数設けられているため、上記クリック感Aの設計自由度が向上する。図16のように、2つの球体52を同時に凸部170に係合させることで、クリック感を増大させることができる。2つの球体52を同時に凸部170に係合させるか、又は、1つの球体52のみを凸部170に係合させるかが、選択されうる。この選択により、クリック感の強さを設計することができる。また、例えば2回のクリック感Aを生じさせる場合、第1の球体52に1回目のクリック感Aを分担させ、第2の球体52に2回目のクリック感Aを分担させることもできる。クリック感Aの発生を2つの球体52で分担することで、球体52の耐久性が向上しうる。
【0182】
弾性部材50又は弾性部材58に球体を保持させるという構成により、クリック感の設計自由度は高い。弾性部材50、58の弾性係数を変えるだけで、クリック感の調整が容易に達成されうる。
【0183】
球体52,56の直径を変化させると、当接面側への球体の突出量が変化しうる。クリック機構の発現に球体52、56を利用することで、球体の直径を変えるだけでも、クリック感の変更が達成されうる。よって、クリック感の調整は容易である。
【0184】
図18の実施形態では、クリック感Aの設計自由度が更に高められている。この実施形態では、コイルバネ200を変更しなくても、中間部材202の長さを変更するだけで、クリック感Aを設計することができる。したがって、クリック感Aを容易に設定することができる。中間部材202の採用により、コイルバネ200が短くされうる。この短さは、クリック感Aの設計を容易としうる。
【0185】
前述したように、中間部材202はレバー軸48に固定されていない。よって、第1のコイルバネ200に作用する応力と、第2のコイルバネ200に作用する応力とが均等となるように、中間部材202は移動しうる。この移動により、第1の球体52によって奏されるクリック感Aと、第2の球体52によって奏されるクリック感Aとが均等化される。よって、クリック感Aのバラツキが抑制される。
【0186】
なお、上記実施形態では、ハウジング42は全体として一体成形されている。ハウジング42は、別個に成形された部材が組み合わされていても良い。上記固定部材Zに属し、且つ、球体52又は球体56に当接しうる部材は、ハウジングに該当する。
【0187】
図15において両矢印L1で示されているのは、球体52が凸部170に係合していない状態における弾性部材50の長手方向長さである。上部104の直径が小さすぎると、湯水混合栓10に必要な機能が実現できないことがある。この観点から、長さL1は、15mm以上が好ましく、17mm以上がより好ましい。また、過度に大型化された湯水混合栓10では、商品価値が低下する。この観点から、長さL1は、30mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましい。図15の実施形態では、長さL1は19mmとされた。
【0188】
図18において両矢印L2で示されているのは、球体52が凸部170に係合していない状態における弾性部材200の長手方向長さである。スムースなクリック感Aを得る観点から、上記長さL1に対する長さL2の割合は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。クリック感Aの設計を容易とする観点から、上記長さL1に対する長さL2の割合は、45%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、35%以下が更に好ましい。図18の実施形態では、長さL2の割合は、図15の実施形態の長さL1に対して、30%とされた。
【0189】
明確なクリック感Aを得る観点から、凸部170(図15参照)の高さHaは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。高さHaが過大である場合、ハウジング42又は回動体44の厚みが薄くなりすぎて耐久性が低下しうる。この観点から、高さHaは、1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、凸部170の高さHaは0.3mmとされた。
【0190】
明確なクリック感Bを得る観点から、凸部156の高さHbは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。高さHbが過大である場合、ハウジング42又は回動体44の厚みが薄くなりすぎて耐久性が低下しうる。この観点から、高さHbは、1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、凸部156の高さHbは0.3mmとされた。
【0191】
組立容易性の観点、及び、明確なクリック感Aを得る観点から、球体52の直径Paは、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が更に好ましい。直径Paが過大である場合、レバー軸48の直径が過大となったり、レバー組立体40が過度に大型化することがある。また、この大型化を避けるために、ハウジング42等が過度に薄くされうる。これらの観点から、直径Paは5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、球体52の直径Paは3.0mmとされた。
【0192】
組立容易性の観点、及び、明確なクリック感Bを得る観点から、球体56の直径Pbは、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が更に好ましい。直径Pbが過大である場合、上側突出部の高さを確保するための貫通孔110の幅が過大となる。また、直径Pbが過大である場合、この球体56に係合しうる溝154の幅も大きくされるが、この場合、限られたスペースの下面125に、必要な数の溝154を設けることが難しくなることがある。これらの観点から、直径Pbは5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下が更に好ましい。上記実施形態において、球体56の直径Pbは3.0mmとされた。
【0193】
[材質]
【0194】
ハウジングの材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。クリック機構が発現する際に発生する音は、心地よく且つ聞き取りやすいのが好ましい。ハウジングの材質は、この音に影響する。良好な音を得る観点、耐久性、耐錆性、及び衛生面を考慮すると、ハウジングの材質として、ステンレス合金及び繊維強化樹脂が好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。PPS樹脂とはポリフェニレンスルフィド樹脂である。
【0195】
回転体の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。また摺動面の材質は摩擦力を変動させるため、レバーの操作性に影響する。操作性及び不快音回避の観点から、回転体の材質としては、樹脂が好ましく、強化繊維を含まない樹脂がより好ましい。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。POM樹脂とは、ポリアセタール樹脂である。
【0196】
上記軸保持体の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。また摺動面の材質は摩擦力を変動させるため、レバーの操作性に影響する。操作性及び不快音回避の観点から、軸保持体の材質としては、樹脂が好ましく、強化繊維を含まない樹脂がより好ましい。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
【0197】
上記球体の材質として、樹脂及び金属が例示される。クリック機構の音及び耐久性の観点から、金属が特に好ましい。上記実施形態ではステンレス合金が用いられた。
【0198】
旋回操作時のクリック機構に用いられる上記弾性体として、ゴム及びコイルバネが例示される。繰り返しの使用による劣化を抑制する観点、及び、クリック感の調整の自由度の観点から、コイルバネが好ましい。このコイルバネの材質としては、バネ鋼材が好ましい。上記実施形態では、バネ鋼材のコイルバネが用いられた。
【0199】
前後回動操作時のクリック機構に用いられる上記弾性体として、ゴム、板バネ及びコイルバネが例示される。上下方向のスペースを抑制する観点から、板バネが好ましい。上記実施形態では、バネ鋼材の板バネが用いられた。
【0200】
上記レバー軸の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。水による腐食を抑制する観点から、ステンレス合金及び樹脂が好ましい。上記実施形態では、ステンレス合金が用いられた。
【0201】
可動弁体の上側部材の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。レバー操作時に金属同士が摺動すると、不快な音が発生する場合がある。不快音回避の観点から、上側部材の材質としては、樹脂が好ましい。また、この上側部材を樹脂とすることで、可動弁体全体としての製造コストが抑制される。上記実施形態では、強化繊維を含まないPOM樹脂が用いられた。
【0202】
可動弁体の下側部材の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。固定弁体との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。可動弁体の下面がセラミックで構成されることで、上記効果a及び効果bは一層向上する。
【0203】
固定弁体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。可動弁体(下側部材)との摺動における耐摩耗性の観点から、セラミックが好ましい。このセラミックは、水に対する腐食性、強度及び耐久性の観点からも好ましい。上記実施形態では、セラミックが用いられた。固定弁体の上面がセラミックで構成されることで、上記効果a及び効果bは一層向上する。
【0204】
パッキン及びOリングの材質として、樹脂及びゴム材(加硫ゴム)が例示される。伸縮性により、組立性を向上し、製造誤差(寸法誤差等)が緩和されうる。これらの観点から、ゴム材が好ましい。上記実施形態では、ゴム材が用いられた。
【0205】
ベース体の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)及び金属が例示される。不快音回避及び強度の観点から、繊維強化樹脂が好ましく、ガラス繊維強化樹脂がより好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。
【0206】
上記の各部材の材質として樹脂が用いられる場合、POM樹脂及びPPS樹脂が好ましい。POM樹脂は、長時間の使用、及び広い温度範囲での使用において、機械的特性(引張強度等)の経時変化が少ない。また、POM樹脂は、繰り返しの応力負荷に対する耐疲労性に優れる。更にPOM樹脂では、吸水による寸法変化が小さい。PPS樹脂は、強度及び剛性に優れ、耐摩耗性にも優れる。更にPPS樹脂は、成形時の収縮率が小さく、高い寸法精度を達成しうる。これらの特性を更に高めるために、上記樹脂は、ガラス繊維等の短繊維で強化されるのも好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明は、あらゆる用途の湯水混合栓に適用されうる。
【符号の説明】
【0208】
10・・・湯水混合栓
12・・・混合栓本体
14・・・ハンドル
16・・・吐出部
18・・・湯導入管
20・・・水導入管
22・・・吐出管
40・・・レバー組立体
42・・・ハウジング
44・・・回動体
46・・・レバー
48・・・レバー軸
50・・・旋回クリック用弾性部材
52・・・旋回クリック用球体
54・・・軸保持体
56・・・前後クリック用球体
58・・・前後クリック用弾性部材
60・・・可動弁体
62・・・固定弁体
64、65・・・パッキン
68・・・ベース体
80・・・湯用弁孔
80L・・・湯用弁孔の上面開口線
82・・・水用弁孔
82L・・・水用弁孔の上面開口線
84・・・混合水用弁孔
84L・・・混合水用弁孔の上面開口線
86・・・可動弁体の上側部材
88・・・可動弁体の下側部材
94・・・流路形成凹部
98・・・レバー係合凹部
100・・・レバーの軸孔
106・・・レバー挿入孔
108・・・回動体の軸孔
110・・・球体用貫通孔
PL1・・・固定弁体の上面の平滑面
PL2・・・可動弁体の下面の平滑面
W1・・・第1壁面部
W2・・・第2壁面部
W3・・・第3壁面部
W4・・・第4壁面部
SL1・・・第1壁面部の傾斜面
SL2・・・第2壁面部の傾斜面
SL3・・・第3壁面部の傾斜面
SL4・・・第4壁面部の傾斜面
ST・・・ストレート状部分
X・・・湯用弁孔の上面開口線で囲まれた領域
Y・・・水用弁孔の上面開口線で囲まれた領域
Z・・・流路形成凹部の下面開口線で囲まれた領域
XZ・・・領域Xと領域Zとの重なり領域
YZ・・・領域Yと領域Zとの重なり領域
D1・・・可動弁体の移動の直線方向
D2・・・上側から見た平面視におけるレバーの前後回動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯用弁孔、水用弁孔及び吐出弁孔を有する固定弁体と、
上記固定弁体の上面に摺動可能に配置されており、流路形成凹部及びレバー係合孔を有する可動弁体と、
左右方向の旋回及び前後回動が可能なレバーと、
上記前後回動が可能なようにレバーを支持するとともに上記レバーの旋回に連動して回転する回転体と、
を備えており、
上記レバーの下端部が上記レバー係合孔に係合しており、この係合により、上記レバーの下端部の動きが上記可動弁体に伝達され、
上記レバーの旋回により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して旋回し、この可動弁体の旋回により、湯水混合比率の調節が可能とされており、
上記レバーの前後回動により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して直線方向D1に移動し、この移動により、吐出量の調節が可能とされており、
上側から見た平面視における上記レバーの前後回動方向D2が、上記直線方向D1に対して傾斜している湯水混合栓。
【請求項2】
上記水用弁孔の壁面及び/又は上記湯用弁孔の壁面が、傾斜面を有している請求項1に記載の湯水混合栓。
【請求項3】
上記固定弁体の上記水用弁孔が、その長手方向の一端に第1壁面部を有するとともに、その長手方向の他端に第2壁面部を有しており、
上記固定弁体の上記湯用弁孔が、その長手方向の一端に第3壁面部を有するとともに、その長手方向の他端に第4壁面部を有しており、
上記第1壁面部、上記第2壁面部、上記第3壁面部及び上記第4壁面部から選択される少なくとも1つが、傾斜面を有している請求項1又は2に記載の湯水混合栓
【請求項4】
上記湯用弁孔の上面開口線及び上記水用弁孔の上面開口線が、左右非対称に形成されている請求項1から3のいずれかに記載の湯水混合栓。
【請求項5】
上記流路形成凹部の下面開口線がストレート状部分を有しており、
吐出量が最大である場合において、水のみが吐出される状態から湯が混合される状態へと移行するとき、この下面開口線のうちの上記ストレート状部分が、上記湯用弁孔の上記上面開口線に最初に重なり、
上記ストレート状部分は、上記方向D2に略平行である請求項1から4のいずれかに記載の湯水混合栓。
【請求項6】
上記回転体が上記可動部材に係合しており、この係合が、上記直線方向D1に沿った上記可動部材の移動を許容し、且つ、上記直線方向D1を除く他の方向に沿った上記可動部材の移動を規制しており、
上記可動弁体が上記直線方向D1に沿って移動することが許容されるように、上記レバー係合孔と上記レバーの下端部との間に隙間が設けられている請求項1から5のいずれかに記載の湯水混合栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−72487(P2013−72487A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211850(P2011−211850)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(592243553)株式会社タカギ (31)
【Fターム(参考)】