説明

湯水混合水栓

【課題】専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、容易に温調ハンドルの回転方向の位置が適正な位置となるように調整することのできる湯水混合水栓を提供する。
【解決手段】水栓本体部10に設けられ、回転により混合弁体を移動させる温調軸42と、回転式の温調ハンドル12とを、温調軸42の側の雄セレーション部62と、温調ハンドル12に設けた雌セレーション部84との噛合いにより一体回転状態に連結して成る湯水混合水栓において、温調ハンドル12には、周方向の3個所に雌セレーション部84を備えた噛合部材80を温調ハンドル12と一体回転状態且つ径方向に移動可能に設けるとともに、噛合部材80を径方向内方に付勢して雄セレーション部62に噛合わせる板ばね86と、軸方向の押込みにより噛合部材80を径方向外方に後退させ、雄セレーション部62との噛合いを解除させる解除部材88とを設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は湯水混合水栓に関し、詳しくは温調ハンドル周りの構造に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水と湯とを混合し且つその混合比率を変化させて吐水の温度調節を行う湯水混合水栓が広く用いられている。
一般にこの種の湯水混合水栓では、温調ハンドル(温度調節ハンドル)が回転式のハンドルとされ、温調ハンドルの回転操作によって吐水の温度が調節される。
【0003】
湯水混合水栓では、温調ハンドルが現在どのような操作位置にあるか、具体的には温調ハンドルの操作による現在の吐水の設定温度を表すために、通常は温調ハンドル側に温度表示部が、また水栓本体部の側に温度表示部の特定の部位を指し示す指示部が設けられる。
この場合、指示部が指し示した部位の温度が現在の設定温度を表す。
【0004】
図6はその具体例を示している。
図6において200は水栓本体部,202は回転式の温調ハンドル、204は温調ハンドル202に設けられた温度表示部,206は水栓本体部200の側に設けられた指示部である。
ここでは指示部206が指し示している表示40・の温度が現在の設定温度(ここでは適温の40℃)であることを表している。
【0005】
208は温調軸(温度調節軸)210の回転方向に沿って全周に亘り設けられた、温調軸210の側のセレーション部(軸側噛合歯)で、このセレーション部208に対して、温調ハンドル202にほぼ全周に亘り設けられたセレーション部(ハンドル側噛合歯)212が噛み合され、以て温調軸210と温調ハンドル202とが一体回転状態に連結されている。
尚セレーション部208は、温調軸210に組み付けられたセレーション部材214の外周面に形成されている。
ここで温調ハンドル202は、水栓本体部200に対して軸方向に抜止状態に組み付けられている。
【0006】
図6に示すものにおいては、温調ハンドル202を回転操作すると温調軸210が回転し、これにより水栓本体部200の内部の混合弁体が位置移動して水と湯との混合比率を変化させる。即ち吐水温度を変化させる。
【0007】
ところで湯水混合水栓を工場で生産し出荷するときには、温調ハンドル202側の温度表示部204と水栓本体部200側の指示部206とにより表される設定温度が実際の吐水温度と合致するように、温調ハンドル202の回転方向の組付位置が調節されているが、実際に湯水混合水栓を様々な設置現場で設置施工したとき、設置現場の給水圧その他の条件の相異によって、温度表示部204と指示部206とで表される設定温度よりも実際の吐水温度が高かったり或いは低かったりする等、温調ハンドル202による設定温度と実際の吐水温度との間にズレが生じるといったことが起り得る。
【0008】
この場合、水栓の使用者が温度表示部204と指示部206とに基づいて温調ハンドル202を回転操作し、吐水の温度設定を行っても、求める温度で吐水させることができず、水栓の使い勝手が悪化する。
【0009】
このような設定温度と実際の吐水温度とのズレを解消するため、従来にあっては、温調ハンドル202を一旦水栓本体部200から取外して、即ち温調ハンドル202の取付構造を一旦ばらした上で、温調ハンドル202の回転方向の位置を調整して再組付けするといったことを設置現場毎に行うが、この作業は面倒な作業となる。
特に専門的な知識を有しない水栓の使用者が、こうした調整を行うといったことは実際上困難である。
【0010】
尚、本発明に関連する先行技術として下記特許文献1には、温調ハンドルに設けた解除ボタンを軸方向に押し込むことで温調ハンドルの固定を解除して、これを軸方向に移動させ、これによりハンドル側噛合歯と軸側噛合歯との噛合いを解除した上で温調ハンドルを空回転可能とし、その状態で温調ハンドルの回転位置を調節するようになした点が開示されている。
【0011】
この特許文献1に開示のものは、温調ハンドルにより設定された温度と実際の吐水温度とのズレを解消することを目的としている点で本願発明と共通しているが、この特許文献1に開示のものは解決手段において本発明と異なった別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−138734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上のような事情を背景とし、専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、容易に温調ハンドルの回転方向の位置が適正な位置となるように調整することのできる湯水混合水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
而して請求項1のものは、水栓本体部に設けられ、回転により混合弁体を移動させる温調軸と、回転式の温調ハンドルとを、該温調軸の回転方向に沿って設けた該温調軸の側の軸側噛合歯と、該温調ハンドルに設けたハンドル側噛合歯との噛合いにより一体回転状態に連結して成る湯水混合水栓において、前記温調ハンドルには、周方向の1個所又は複数個所に、前記ハンドル側噛合歯を備えた噛合部材を該温調ハンドルと一体回転状態且つ径方向に移動可能に設けるとともに、該噛合部材を径方向内方に付勢し、その付勢力にて該噛合部材を前記軸側噛合歯に噛合わせる付勢部材と、軸方向の押込みにより該噛合部材を前記付勢部材の付勢力に抗して径方向外方に後退させ、前記軸側噛合歯との噛合いを解除させる解除部材と、を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項2のものは、請求項1において、前記解除部材の押圧部を前記噛合部材の被押圧部に押圧することで該噛合部材を前記径方向外方に後退させるようになしてあり、該押圧部と被押圧部との少なくとも一方には、該解除部材の軸方向の押圧にて該噛合部材を該径方向外方に移動させるカム面が設けてあることを特徴とする。
【0016】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記温調ハンドルには、前記噛合部材を径方向に移動案内するガイド部が設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0017】
以上のように本発明は、回転式の温調ハンドルの周方向の1個所又は複数個所に、ハンドル側噛合歯を備えた噛合部材を温調ハンドルと一体回転状態且つ径方向に移動可能に設けるとともに、噛合部材を径方向内方に付勢し、その付勢力にて噛合部材を軸側噛合歯に噛み合せる付勢部材と、軸方向の押込みにより噛合部材を付勢部材の付勢力に抗して径方向外方に後退させ、軸側噛合歯との噛合いを解除させる解除部材とを設けたものである。
【0018】
本発明では、通常時にはハンドル側噛合歯と軸側噛合歯とを噛合状態として、温調ハンドルの回転により温調軸を回転させて混合弁体を位置移動させ、混合水の温度設定の操作を行うことができる。
【0019】
一方温調ハンドルの操作により設定した温度と実際の吐水温度との間にズレが生じている場合、解除部材の押込みによりハンドル側噛合歯と軸側噛合歯との噛合いを解除し、これにより温調ハンドルを空回転状態として、その空回転状態の下で温調ハンドルの回転方向の位置を調整することができる。
そして調整後において解除ボタンを元に戻すことで、再びハンドル側噛合歯と軸側噛合歯とを噛合状態とし、温調ハンドルの回転により混合弁体を位置移動させること、即ち通常通り温度の設定操作を行うことができる。
【0020】
かかる本発明では、単に解除部材を押し込むだけで、そのまま温調ハンドルの回転方向の位置を調節することができ、従って専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、簡単に温調ハンドルの位置調節を行うことができ、温調ハンドルの操作により設定した温度と実際の吐水温度とを合せることができる。
【0021】
尚、上記解除部材は押込み後においてこれを元に戻すとき、噛合部材を付勢する付勢部材の付勢力に基づいて元に戻すようになすことができる。但しこれとは別に、解除部材を戻すための専用の復帰ばね等の付勢部材を設けておくこともできる。
【0022】
本発明では、解除部材の押圧部を噛合部材の被押圧部に押圧することで、噛合部材を径方向外方に後退させるようになし、そしてその押圧部と被押圧部との少なくとも一方に、解除部材の軸方向の押圧にて噛合部材を径方向外方に移動させるカム面を設けておくことができる(請求項2)。
このようにすることで、解除部材の押込みにより軽やかに噛合部材を径方向外方に後退移動させることができる。
ここで上記のカム面は傾斜面となしておくことができる。
【0023】
本発明ではまた、温調ハンドルに、上記の噛合部材を径方向に移動案内するガイド部を設けておくことができる(請求項3)。
このようにすることで噛合部材を円滑に径方向外方に後退移動させ、或いはまた径方向内方に移動させて軸側噛合歯と噛み合せることができる。
【0024】
尚本発明は、混合室に混合水温度に感応して混合弁体の位置調節を自動的に行う感温ばねを備えて成る自動温度調節機能付きの湯水混合水栓に適用して特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態である湯水混合水栓の要部の断面図である。
【図2】同実施形態における温調ユニットを示す図である。
【図3】同実施形態の作用説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態の要部の図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態の要部の図である。
【図6】従来の湯水混合水栓の要部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の湯水混合水栓における水栓本体部で、12は回転式の温調ハンドル(温度調節ハンドル)である。
この実施形態の湯水混合水栓は自動温度調節機能付き(サーモスタット式)の湯水混合水栓で、円筒形状のハウジング14の内部に温調ユニット16が組み込まれている。
【0027】
図2にその温調ユニット16の具体的構成が示してある。
図2において18は弁ケース、20は軸ケースで、それらが互いにねじ結合されている。
弁ケース18には、軸方向に離隔した位置に水流入口22と、湯流入口24とが設けられており、それら水流入口22と湯流入口24とから水と湯とが内部に流入するようになっている。
【0028】
流入した水と湯とは図中右方向に流れて混合室26に至り、そこで水と湯とが混合されて、混合水が流出口28から吐水部に向けて図中右方向に流出する。
【0029】
30は水と湯とを混合する混合弁体で、軸方向に離隔した水側弁部32と湯側弁部34、及びそれらを軸方向に連繋する連繋部36を有している。
一方弁ケース18には、水側弁部32と湯側弁部34との間において、それら水側弁部32,湯側弁部34に各対応した水側弁座38,湯側弁座40が設けられている。
【0030】
42は温調軸で、軸ケース20の内部においてその内面に回転可能に嵌合する大径の円筒部44を有している。
この円筒部44の内周面には雌ねじ部46が設けられており、そこに円筒形状をなす進退部材48の外周面の雄ねじ部50が螺合されている。
進退部材48は、これら雌ねじ部46と雄ねじ部50との螺合により温調軸42の回転にてねじ送りで図中左右方向に進退移動する。
【0031】
この進退部材48の図中左端側にはストッパリング52が掛止されている。
そしてこのストッパリング52に対して、コイルばねから成る第1バイアスばね54の一端(図中左端)が当接せしめられている。
【0032】
56は同じくコイルばねから成る第2バイアスばねで、これら第1バイアスばね54と第2バイアスばね56との付勢力が混合弁体30に対して右向き、即ち水側弁部32を閉弁させ、湯側弁部34を開弁させる方向に及ぼされている。
【0033】
一方混合室26の内部には、形状記憶合金製のコイル形状の感温ばね58が収容されており、その感温ばね58による付勢力が混合弁体30に対し第1バイアスばね54,第2バイアスばね56による付勢方向とは逆方向、即ち湯側弁部34を閉弁させ、水側弁部32を開弁させる方向に及ぼされている。
尚60は混合弁体30から図中左向きに延び出した弁軸である。
この弁軸60は、湯側弁部34を強制的に完全閉弁させる際に引張棒として用いられる。
【0034】
この温調ユニット16では、第1バイアスばね54及び第2バイアスばね56による図中右向きの付勢力と、感温ばね58による図中左向きの付勢力とが釣り合う位置に混合弁体30が保持され、水流入口22から流入する水と湯流入口24流入する湯との比率を一定比率とする。
【0035】
そして混合水温度が変化したとき、例えば混合水温度が高温側に変化したときには、感温ばね58が付勢力を高めて、第1バイアスばね54,第2バイアスばね56による付勢力との釣り合い位置を図中左側にシフトさせ、混合弁体30を図中左側に微小移動させる。これにより湯側弁部34の開度を小,水側弁部32の開度を大として湯流入量を少なく、水流入量を多くして混合水温度を低くし、混合水温度を設定温度に維持するように働く。
【0036】
逆に混合水温度が設定温度よりも低くなったときには、感温ばね58が付勢力を弱くして混合弁体30を図中右向きに微小移動させ、これにより混合水温度を高くして設定温度に維持するように働く。
【0037】
上記温調軸42は、温調ハンドル12による温度設定の操作に基づいて回転により進退部材48を図中左右方向に進退移動させ、これにより第1バイアスばね54,第2バイアスばね56による付勢力を増減させて、混合弁体30を図中左右方向に進退移動させる。
【0038】
図1に示しているように、温調軸42には回転方向に沿って全周に亘り雄セレーション部(軸側噛合歯)62が設けられている。
この雄セレーション部62は、温調軸42にリング状をなすセレーション部材(ダブルセレーション部材)64を組み付けることによって設けられている。
このセレーション部材64は、内周面に雌セレーション部66を有し、この雌セレーション部66を温調軸42の雄セレーション部68に噛み合せることで、温調軸42に一体回転状態に組み付けられている。
【0039】
70は温調ハンドル12に設けられた固定部で、この固定部70が、固定ねじ72によって温調軸42に軸方向に抜止状態に固定されている。
尚、74は固定部70と温調軸42及びセレーション部材64との間に介挿されたスリップリングで、温調ハンドル12はこのスリップリング74により、固定ねじ72による締結状態の下で(且つ後述の噛合部材80を噛合解除位置である後退位置に位置させた状態で)、温調軸42及びセレーション部材64に対して回転可能である。
【0040】
温調ハンドル12は、断面円形の周壁部76と、その軸方向の一端の頂部78とを有しており、その周壁部76の内側に複数(ここでは3個)の噛合部材80が、径方向に移動可能に設けられている。
ここで3つの噛合部材80は、周方向に120°ごと異なった位置に配置されている。
これら3つの噛合部材80のそれぞれは、図1(B)に示しているように周壁部76の内面に設けられた各一対の板状のガイド部82にて周方向に挟まれており、温調ハンドル12と一体回転するとともに、径方向への移動時にそれらガイド部82にて移動案内されるようになっている。
【0041】
これら3つの噛合部材80には、それぞれ径方向の内面に雌セレーション部(ハンドル側噛合歯)84が設けられており、径方向の外面において温調ハンドル12に装着された板ばね(付勢部材)86により径方向内方に付勢されている。
従って各噛合部材80は、板ばね86の付勢力により通常は内面の雄セレーション部84がセレーション部材64の雄セレーション部62、即ち温調軸42の側の雄セレーション部62に噛み合った状態にある。
この状態で温調ハンドル12を回転させると、その回転の操作力が3つの噛合部材80を介して温調軸42に伝えられ、温調軸42が温調ハンドル12と一体に回転せしめられる。
【0042】
温調ハンドル12には、温調軸42側の雄セレーション部62に対する噛合部材80の噛合いを解除するための解除部材88が、一定ストローク図1(A)中右方向に押込可能に設けられている。
【0043】
この解除部材88は、温調ハンドル12の外面に露出した押込みの操作部90と、これから図1(A)中右方向に突き出した脚部92とを有しており、そしてその操作部90の内面に対して、押し込んだ解除部材88を元の位置に復帰させるためのコイルばねから成る復帰ばね(付勢部材)94の付勢力が及ぼされている。
【0044】
尚解除部材88は、段付部96が復帰ばね94のばね受けを兼ねたストッパ98に当ることによって押込端が規定される。
また段付部96が温調ハンドル12に設けられた抜止部材100に当ることによって戻り端が規定され、且つ温調ハンドル12から抜止めされる。
【0045】
この解除部材88は、脚部92の先端部の押圧部102において噛合部材80の被押圧部104を押圧し、温調軸42側の雄セレーション部62に噛合状態にある噛合部材80を径方向外方に後退移動させ、雄セレーション部62に対する噛合部材80の噛合いを解除する。
而してこの実施形態では、その被押圧部104と押圧部102とのそれぞれにカム面としての傾斜面106と108とがそれぞれ設けられている。
【0046】
この実施形態では、通常時は3つの噛合部材80が温調軸42側の雄セレーション部62に噛み合って、温調ハンドル12と温調軸42とを一体回転状態に連結した状態にあり、従ってこの状態で温調ハンドル12を回転させると、温調軸42が共に回転して上記の混合弁体30を移動させ、混合水の設定温度を変更する。
【0047】
一方解除部材88を図1(A)中右方向に押し込むと、解除部材88の押圧部102にて3つの噛合部材80が図中右方向に押圧され、その際噛合部材80の傾斜面106と押圧部102の傾斜面108とのカム作用で、図3に示しているように各噛合部材80が径方向内方の噛合位置から径方向外方に後退せしめられ、ここにおいて各噛合部材80の雌セレーション部84と温調軸42側の雄セレーション部62との噛合いが解除される。
【0048】
このとき温調ハンドル12は空回転状態となり、従って設定した温度と実際の吐水温度との間にズレがあるときには、その空回転状態で温調ハンドル12を回転させ、温調ハンドル12の回転位置を調節することができる。
具体的には、実際の吐水温度と温調ハンドル12の回転の位置に応じて表される表示の設定温度とが合う位置まで、温調ハンドル12の回転位置を調節することができる。
【0049】
而して温調ハンドル12の回転位置を調節したところで、解除部材88に加えていた力を除くと、解除部材88が復帰ばね94の付勢力によって押込前の元の位置へと戻り、これと同時に3つの噛合部材80が板ばね86による付勢力で一斉に径方向内方に移動して、再び温調軸42側の雄セレーション部62に噛み合うに到り、ここにおいて温調ハンドル12と温調軸42とが一体回転状態に連結された状態となり、以後は温調ハンドル12を設定温度まで回転させると、正しくこれに対応した温度の吐水が吐出される。
【0050】
以上のように本実施形態によれば、温調ハンドル12の操作により設定した温度と実際の吐水温度との間にズレが生じている場合、単に解除部材88を押し込むだけで、そのまま温調ハンドル12の回転方向の位置を調節することができ、従って専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、簡単に温調ハンドル12の位置調節を行うことができ、温調ハンドル12の操作により設定した温度と実際の吐水温度とを合せることができる。
【0051】
また本実施形態では、解除部材88の押圧部102と噛合部材80の被押圧部104とのそれぞれに、カム面としての傾斜面108,106が設けてあるため、解除部材88の押込みにより軽やかに噛合部材80を径方向外方に後退移動させることができる。
【0052】
本実施形態ではまた、温調ハンドル12に、上記の噛合部材80を径方向に移動案内するガイド部82が設けてあることから、噛合部材80を円滑に径方向外方に後退移動させ、或いはまた径方向内方に移動させて雄セレーション部62と噛み合せることができる。
【0053】
尚、上記実施形態では噛合部材80を径方向内方に付勢する付勢部材として板ばね86を用いているが、かかる付勢部材として図4に示しているようにコイルばね110を用いることも可能であるし、また図5に示しているように弾性を有するCリング112を用いること、或いは更に他の別の付勢部材を用いることも可能である。
【0054】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態では3つの噛合部材を温調ハンドルに設けているが、場合によって1個だけ噛合部材を設けること、或いは2つ若しくは4個以上噛合部材を設けることも可能である。
更に上記実施形態では噛合部材80を径方向に移動案内するガイド部82を設けているが、場合によってはガイド部材82を設けなくても良い。
また上記実施形態では噛合部材80と解除部材90とのそれぞれにカム面としての傾斜面を設けているが、場合によって何れか一方にだけ傾斜面を設けることも可能であるし、またカム面として傾斜面以外の形状のカム面を設けるといったことも可能である。
更に軸側噛合歯,ハンドル側噛合歯を上記のセレーション部以外の凹凸形状の噛合歯とすることも可能であり、また本発明は自動温度調節機能を有しないミキシングバルブ式の湯水混合水栓に適用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 水栓本体部
12 温調ハンドル
26 混合室
30 混合弁体
42 温調軸
58 感温ばね
62 雄セレーション部(軸側噛合歯)
80 噛合部材
82 ガイド部
84 雌セレーション部(ハンドル側噛合歯)
86 板ばね(付勢部材)
88 解除部材
102 押圧部
104 被押圧部
106,108 傾斜面(カム面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体部に設けられ、回転により混合弁体を移動させる温調軸と、回転式の温調ハンドルとを、該温調軸の回転方向に沿って設けた該温調軸の側の軸側噛合歯と、該温調ハンドルに設けたハンドル側噛合歯との噛合いにより一体回転状態に連結して成る湯水混合水栓において、
前記温調ハンドルには、周方向の1個所又は複数個所に、前記ハンドル側噛合歯を備えた噛合部材を該温調ハンドルと一体回転状態且つ径方向に移動可能に設けるとともに、
該噛合部材を径方向内方に付勢し、その付勢力にて該噛合部材を前記軸側噛合歯に噛合わせる付勢部材と、
軸方向の押込みにより該噛合部材を前記付勢部材の付勢力に抗して径方向外方に後退させ、前記軸側噛合歯との噛合いを解除させる解除部材と、
を設けたことを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記解除部材の押圧部を前記噛合部材の被押圧部に押圧することで該噛合部材を前記径方向外方に後退させるようになしてあり、
該押圧部と被押圧部との少なくとも一方には、該解除部材の軸方向の押圧にて該噛合部材を該径方向外方に移動させるカム面が設けてあることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記温調ハンドルには、前記噛合部材を径方向に移動案内するガイド部が設けてあることを特徴とする湯水混合水栓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−241404(P2012−241404A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111879(P2011−111879)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】