説明

湯水混合装置

【課題】モータ等の駆動源によって電気的に制御されるサーモバルブを備え、吐水温度についてのフィードバック制御を行う構成において、吐水温度の補正にかかる時間の短縮化を図ることができ、吐水温度のハンチングの発生を抑制することができる湯水混合装置を提供する。
【解決手段】湯水混合装置1は、湯および水の混合水の温度変化にともなって付勢力を作用させることで弁部材を駆動させる感温部材を有する混合弁装置30と、設定温度を設定するための操作部6と、混合水の温度を検出するための湯水用サーミスタ22と、混合弁装置30を制御するコントローラ50とを備え、コントローラ50は、設定温度および湯水用サーミスタ22による検出温度の間の差が減少するように制御信号に対する補正量を算出する温度補正部51と、補正量の算出毎に、補正量に、補正量の算出回数に応じた所定の係数を乗算することで補正量を調整する補正量調整部52とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の経路を介して供給される湯および水を混合することで、調整された温度の湯水を得るための湯水混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば洗面台等においては、調整された温度の湯水を得るための湯水混合装置が備えられる。かかる湯水混合装置によれば、所定の経路を介して供給される湯および水が混合させられ、調整された温度の湯水が、洗面台等に備えられる水栓本体に供給される。すなわち、水栓本体の吐水口から吐出される湯水については、温度および流量の調整、ならびに吐止水(湯水の流出・停止)の切換えが、湯水混合装置によって行われる。ここで、水栓本体の吐水口から吐出される湯水の温度および流量の調整、ならびに吐止水の切換えは、湯水混合装置に備えられ水栓本体の近傍等に配置される操作部の操作によって行われる。
【0003】
このような湯水混合装置としては、従来、湯水の温度の制御のため、湯水の温度によって変化する付勢力を作用させることで湯および水それぞれの流入口の開度を調整するための弁体を駆動させる感温部を有する機械式のサーモユニットとして構成されるサーモバルブを備えるものがある(例えば、特許文献1参照。)。このサーモバルブは、湯水の温度変化にともない弁体に付勢力を作用させることで、弁体を駆動させ、湯水の温度調整に関与する。また、サーモバルブに備えられる弁体は、モータ等の電気的な駆動源によって動作させられる。つまり、サーモバルブによる湯水の温度調整には、モータ等の駆動源による弁体の動作による調整と、湯水の温度によって変化する付勢力を作用させることで弁体を駆動させる感温部による調整とが含まれる。
【0004】
このようにサーモバルブを備える湯水混合装置においては、吐水温度(サーモバルブによって混合された湯水の温度)についてフィードバック制御が行われる。具体的には、特許文献1にも開示されているように、吐水温度についてのフィードバック制御においては、吐水温度が、サーミスタ等の温度センサによって検出される。そして、検出された吐水温度が、狙いの温度(操作部によって設定された温度)と比較され、その差に基づいて、サーモバルブが制御される。つまり、サーモバルブにおいては、検出された吐水温度と狙いの温度との差の大きさに応じてモータ等の駆動源が制御されることで、検出される吐水温度と狙いの温度とのギャップが埋まるように、弁体が移動させられる。これにより、吐水温度が、狙いの温度を目標として随時補正される。
【0005】
以上のように、モータ等の駆動源によって電気的に制御されるサーモバルブを備え、吐水温度についてのフィードバック制御を行う湯水混合装置においては、次のような問題がある。すなわち、サーモバルブは、感温部の構造等に起因して、供給される湯および水の温度条件や圧力条件等に応じた特性である温調特性(温度特性)を有する。また、吐水温度についてのフィードバック制御において制御対象となるサーモバルブについては、その応答性が、補正後の吐水温度が安定するまでの時間に影響する。
【0006】
そこで、吐水温度についてのフィードバック制御において、サーモバルブの温調特性および応答性が十分に考慮されて、例えば次のような制御が行われると、吐水温度の補正が完了するまでの時間が非常に長くなる場合がある。すなわち、検出される吐水温度と狙いの温度とのギャップが埋まるように、吐水温度が狙いの温度に近付く方向に、サーモバルブの弁体を少し移動させ、吐水温度と狙いの温度とを再度比較し、さらに吐水温度と狙いの温度とのギャップがある場合は、再度、同じ間隔(移動量)だけ弁体を移動させるという制御、つまり吐水温度と狙いの温度との比較に基づいて、吐水温度と狙いの温度とが一致するまで弁体を少しずつ移動させていくような制御である。一方で、吐水温度についてのフィードバック制御において、サーモバルブの温調特性および応答性が考慮されずに制御が行われると、供給される湯および水の温度条件や圧力条件等によっては、吐水温度のハンチング(吐水温度が安定せずに上がったり下がったりする現象)が発生する場合がある。このように、吐水温度の補正にかかる時間が長くなったりハンチングが発生したりすることは、洗面台等の使用者に不快感を与える原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−18508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、モータ等の駆動源によって電気的に制御されるサーモバルブを備え、吐水温度についてのフィードバック制御を行う構成において、吐水温度の補正にかかる時間の短縮化を図ることができ、吐水温度のハンチングの発生を抑制することができる湯水混合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、移動可能に設けられその移動方向における位置によって所定の経路を介して供給される湯および水それぞれの流入口の開度を調整するための弁部材、ならびに前記流入口から流入した前記湯および水が混合することで得られる湯水である混合水の温度変化にともなって変化する付勢力を前記弁部材に作用させることで前記弁部材を駆動させる感温部材を有し、前記混合水を流出させる混合弁と、前記混合水の温度についての目標値である設定温度を設定するための温度設定操作部と、前記混合弁から流出した前記混合水の温度を検出するための温度センサと、前記混合弁に対して前記弁部材を移動させるための制御信号を出力することで、前記混合水として前記設定温度の湯水が得られるように前記混合弁を制御するコントローラと、を備える湯水混合装置において、前記コントローラは、前記設定温度に対応する前記温度設定操作部からの操作信号および前記温度センサからの検出信号に基づき、前記設定温度および前記温度センサにより検出された温度の間の差が減少するように、前記差の大きさに応じて、前記設定温度に対応する前記制御信号に対する補正量を算出する温度補正部と、前記温度補正部による前記補正量の算出毎に、前記補正量に、該補正量の算出回数に応じた所定の係数を乗算することで前記補正量を調整する補正量調整部と、を有するものである。
【0011】
請求項2においては、請求項1に記載の湯水混合装置において、前記補正量調整部は、前記所定の係数が乗算された前記補正量に、前記設定温度の値に応じた所定の係数をさらに乗算するものである。
【0012】
請求項3においては、請求項1に記載の湯水混合装置において、前記補正量調整部は、前記所定の係数が乗算された前記補正量に、前記温度センサにより検出された温度に応じた所定の係数をさらに乗算するものである。
【0013】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれか一項に記載の湯水混合装置において、前記コントローラは、前記設定温度と前記温度センサにより検出された温度とが一致した際の前記弁部材の前記所定の方向における位置に対応する前記制御信号を記憶する記憶部をさらに有し、前記設定温度が変更された場合、前記記憶部に記憶された前記制御信号に基づいて、前記混合弁を制御するものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1においては、モータ等の駆動源によって電気的に制御されるサーモバルブを備え、吐水温度についてのフィードバック制御を行う構成において、吐水温度の補正にかかる時間の短縮化を図ることができ、吐水温度のハンチングの発生を抑制することができる。
【0015】
請求項2においては、設定操作部における設定温度に応じて補正量の調整が行われる。これにより、混合水の温度制御において、設定温度に応じて最適な制御を行うことが可能となり、それぞれの設定温度について、混合水の温度を速やかに設定温度にすることができる。結果として、混合水の温度のハンチングが発生しづらくなり、洗面台等の使用者に対してより快適な使用感を提供することができる。
【0016】
請求項3においては、温度センサによる検出温度に応じて補正量の調整が行われる。これにより、混合水の温度制御において、検出温度に応じて最適な制御を行うことが可能となり、それぞれの検出温度について、混合水の温度を速やかに設定温度にすることができる。結果として、混合水の温度のハンチングが発生しづらくなり、洗面台等の使用者に対してより快適な使用感を提供することができる。
【0017】
請求項4においては、混合水の温度制御において、設定温度と混合水の温度とが一度一致すれば、次回以降、具体的には止水状態からの設定温度の変更をともなう再吐水時、あるいは吐水中における設定温度の変更時には、混合水の温度が設定温度により近い状態から制御を開始することができる。これにより、実際の混合水の温度を設定温度とするまでの時間の短縮化を図ることができるとともに混合水の温度のハンチングをより効果的に抑制することができ、洗面台等の使用者に対してより快適な使用感を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置を備える洗面台の構成を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の一実施形態に係る混合弁装置の構成を示す一部断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置の制御構成の一例を示すブロック図。
【図5】スピンドル角度と温度との関係についての説明図。
【図6】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置による湯水温度制御の一例を示すフロー図。
【図7】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置の制御構成の一例を示すブロック図。
【図8】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置による湯水温度制御の一例を示すフロー図。
【図9】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置の制御構成の一例を示すブロック図。
【図10】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置による湯水温度制御の一例を示すフロー図。
【図11】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置の制御構成の一例を示すブロック図。
【図12】本発明の一実施形態に係る湯水混合装置による吐水制御の一例を示すフロー図。
【図13】本発明の実施例および比較例に係る吐水温度の時間変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、湯水混合装置における吐水温度の調整について、サーモバルブの温調特性に合わせて、モータ等の駆動源の駆動をフィードフォーワード制御し、その後、吐水温度について設定された温度と検出された温度との温度偏差に基づくフィードバック制御を所定の制限を加えて行うことで、温度制御の応答性を向上させるとともにハンチングを低減しようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の湯水混合装置は、洗面ボール3を有する洗面台2において備えられる。洗面台2において、洗面ボール3は、洗面カウンタ4上に設けられる。洗面台2においては、洗面ボール3に対して湯水を吐出するためのスパウトを構成する水栓本体5が備えられる。水栓本体5は、湯水の吐水口5aを有し、この吐水口5aからの湯水が洗面ボール3内に吐出されるように設けられる。
【0021】
また、洗面台2においては、水栓本体5の吐水口5aから吐出される湯水についての操作を行うための操作部6が備えられる。本実施形態では、操作部6は、洗面ボール3の鍔部(外周縁部)に配置された状態で設けられる。操作部6の操作により、水栓本体5の吐水口5aから吐出される湯水についての温度および流量の調整、ならびに吐止水(湯水の流出・停止)の切換えが行われる。
【0022】
具体的には、操作部6は、押し操作(図1矢印A1参照)および回転操作(同図矢印A2参照)が可能な取っ手状の部分として構成される。そして、操作部6の押し操作により、吐止水の切換えおよび湯水の流量の調整が行われ、操作部6の回転操作により、湯水の温度の調整が行われる。また、洗面台2においては、洗面カウンタ4の下側に、本実施形態の湯水混合装置を構成する機能部10が備えられる。機能部10は、洗面カウンタ4の下側において所定のケース内に収容された状態で設けられる。
【0023】
このように、本実施形態の湯水混合装置は、洗面台2を構成する水栓本体5と、操作部6と、機能部10とを含む。そして、本実施形態の湯水混合装置によれば、操作部6による操作のもと、機能部10で得られた湯水が、所定の経路を介して水栓本体5に供給され、吐水口5aから吐出される。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の湯水混合装置1は、所定の経路を介して供給される湯および水を混合することで、調整された温度の湯水を得るためのものである。したがって、図2に示すように、湯水混合装置1は、機能部10において、所定の経路を介して供給される湯の供給管である給湯管11と、所定の経路を介して供給される水の供給管である給水管12とを有する。給湯管11に対しては、図示せぬ給湯器等により得られた湯が所定の経路を介して供給される(矢印H参照)。給水管12に対しては、上水等から導かれる水が所定の経路を介して供給される(矢印C参照)。
【0025】
機能部10においては、湯または水、あるいはこれらが混合することで得られる湯水の流れにおける上流側(図2において下側、以下単に「上流側」という。)から下流側(同図において上側、以下単に「下流側」という。)にかけて、湯水の温度の調整を行う部分である温調機能部13と、吐止水の切換えおよび湯水の流量の調整を行う部分である流調機能部14とが構成される。すなわち、給湯管11および給水管12から供給される湯および水は、温調機能部13にて混合されて調整された温度の湯水となった後、流調機能部14を介して水栓本体5に供給される。
【0026】
温調機能部13は、混合弁装置30により構成される。したがって、給湯管11および給水管12は、それぞれ混合弁装置30に接続される。そして、給湯管11により供給される湯、および給水管12により供給される水は、混合弁装置30にて混合された後、流調機能部14に導かれる。混合弁装置30は、サーモバルブ31と、このサーモバルブ31の駆動源として機能するモータ32とを有する。サーモバルブ31は、湯水の温度によって変化する付勢力を作用させることでサーモバルブ31が有する弁部材を駆動させる感温部を有する機械式のサーモユニットとして構成される。
【0027】
また、給湯管11および給水管12には、それぞれ、上流側から順に、止水栓15、フィルタ16、および逆止弁17が設けられる。止水栓15は、機能部10についての部品の交換やメンテナンス等の際に用いられる。フィルタ16は、給湯管11または給水管12内を流れる湯または水の内部に存在する不純物を取り除く。逆止弁17は、給湯管11または給水管12内を流れる湯または水について、下流側から上流側への流れを規制する。
【0028】
流調機能部14は、混合弁装置30と水栓本体5との間における湯水の通路となる吐水管18を構成する。吐水管18は、互いに分岐する第一分岐管18aおよび第二分岐管18bを有する。すなわち、吐水管18は、その上流側の端部が混合弁装置30に接続される一方、下流側の端部が水栓本体5に接続されるとともに、中間部分において、下流側にて合流する第一分岐管18aおよび第二分岐管18bを有する。
【0029】
第一分岐管18aおよび第二分岐管18bには、それぞれ、上流側から順に、電磁弁19および定流量弁20が設けられている。電磁弁19は、開閉弁として機能する。つまり、第一分岐管18aおよび第二分岐管18bにおいては、電磁弁19の開閉動作によって連通状態および非連通状態が切り換わる。定流量弁20は、第一分岐管18aおよび第二分岐管18bのそれぞれにおける湯水の流量を一定の量に制限する。
【0030】
このような構成を備える流調機能部14においては、次のようにして吐止水の切換えおよび湯水の流量の調整が行われる。本実施形態では、流調機能部14による湯水の流量は、二段階に調整される。具体的には、第一分岐管18aおよび第二分岐管18bは、管径の大きさや定流量弁20により制限される流量等の違いによって、流通させる湯水の流量が異なるように構成される。本実施形態では、第一分岐管18aの方が第二分岐管18bよりも多い流量の湯水を流通させる。
【0031】
そして、流調機能部14による湯水の流量の調整においては、第一分岐管18aおよび第二分岐管18bのいずれもが連通した(電磁弁19が開いた)状態と、第二分岐管18bは連通しておらず(電磁弁19が閉じており)第一分岐管18aのみが連通した状態との二つの状態が用いられる。つまり、流調機能部14によれば、混合弁装置30から水栓本体5に供給される湯水の流量が、第一分岐管18aによる流量および第二分岐管18bによる流量の合計の流量(多流量)と、第一分岐管18aによる流量のみの流量(小流量)との二段階に切り換えられる。
【0032】
したがって、流調機能部14における吐止水の切換えは、多流量の状態については、第一分岐管18aおよび第二分岐管18bの両方の電磁弁19の開閉により行われる。また、小流量の状態においては、第二分岐管18b側の電磁弁19は閉じた状態となるため、吐止水の切換えは、第一分岐管18aの電磁弁19の開閉により行われる。
【0033】
以上のような流調機能部14による吐止水の切換えおよび湯水の流量の調整が、操作部6の押し操作によって行われる。なお、流調機能部14の構成は、本実施形態に限定されるものではない。つまり、流調機能部14における湯水の経路の構成(例えば分岐する管路の数等)や段階的に調整される流量の段階の数等は、湯水混合装置1の用途等により適宜設定される。
【0034】
また、機能部10においては、給湯管11によって供給される湯の温度を検出するための給湯用サーミスタ21と、混合弁装置30から水栓本体5に供給される湯水の温度を検出するための湯水用サーミスタ22とが備えられる。給湯用サーミスタ21は、給湯管11における任意の位置に設けられる。本実施形態では、給湯用サーミスタ21は、給湯管11における止水栓15の上流側の位置に設けられている。また、湯水用サーミスタ22は、吐水管18における任意の位置に設けられる。本実施形態では、湯水用サーミスタ22は、吐水管18における上流側の端部の位置に設けられている。
【0035】
機能部10においては、湯水混合装置1における各部を制御するためのコントローラ50が備えられる。コントローラ50は、操作部6における操作や湯水用サーミスタ22等により検出される温度に基づいて、第一分岐管18aおよび第二分岐管18bのそれぞれに設けられる電磁弁19の動作(開閉動作)、ならびに混合弁装置30の動作を制御する。すなわち、コントローラ50に対しては、操作部6からの操作信号、給湯用サーミスタ21からの検出信号、および湯水用サーミスタ22からの検出信号が入力される。また、コントローラ50からは、各電磁弁19に対する制御信号、および混合弁装置30(のモータ32)に対する制御信号が出力される。
【0036】
コントローラ50は、操作部6、給湯用サーミスタ21、および湯水用サーミスタ22からの入力信号を受けるための入力インターフェイス、ならびに各電磁弁19および混合弁装置30に対する制御信号を出力するための出力インターフェイスを有する。また、コントローラ50は、制御プログラムや操作部6によって設定された湯水の流量・温度等を記憶する部分や、制御プログラム等に従って所定の演算を行う部分等を含む。なお、コントローラ50は、図示せぬACアダプタを介して電力の供給を受ける。
【0037】
また、本実施形態の機能部10においては、手動での操作が可能な開閉弁23を有するバイパス管24が設けられる。バイパス管24は、給水管12に供給される水を、混合弁装置30および電磁弁19を迂回して、水栓本体5に供給する。したがって、本実施形態では、バイパス管24は、給水管12における逆止弁17の下流側の部分から分岐し、下流側の端部が吐水管18(第一分岐管18a)における定流量弁20の下流側に接続される。バイパス管24は、開閉弁23の手動操作のもと、停電時等の非常時において水栓本体5に対する水の供給に用いられる。
【0038】
続いて、図3を用いて、混合弁装置30の構成について説明する。混合弁装置30は、前記のとおりサーモバルブ31とモータ32とを有する。図3に示すように、サーモバルブ31は、略筒状のケーシング33の内部に、円筒状の部材である弁体34を有する。弁体34は、ケーシング33の内部空間を形成するケーシング33の内周面に沿う外形(外径寸法)を有し、ケーシング33の内部においてケーシング33の筒軸方向(長手方向、図3における左右方向)に往復摺動可能に設けられる。以下では、ケーシング33の内部における弁体34の往復摺動方向(矢印B参照)を「弁移動方向」という。
【0039】
ケーシング33の内部には、給湯管11により供給される湯、および給水管12により供給される水が流入し、混合する。このため、図3に示すように、ケーシング33は、混合弁装置30における湯の流入口である湯供給口33aと、同じく水の流入口である水供給口33bとを有する。湯供給口33aおよび水供給口33bは、ケーシング33の内部空間を外部に連通させる。したがって、前記のとおり混合弁装置30に接続される給湯管11および給水管12については、給湯管11がケーシング33の湯供給口33aに接続され、給水管12がケーシング33の水供給口33bに接続される。
【0040】
弁体34は、その外周面によって湯供給口33aおよび水供給口33bのケーシング33内部に対する開口部の少なくとも一部を塞ぐことにより、湯供給口33aおよび水供給口33bからケーシング33の内部に流入する湯および水の流量を制限する。すなわち、弁体34は、ケーシング33の内部において弁移動方向に所定の範囲で移動可能に設けられ、その弁移動方向における位置によって、湯供給口33aおよび水供給口33bを塞ぐ面積を変化させる。したがって、湯供給口33aおよび水供給口33bは、ケーシング33の内部空間に対して、弁体34の弁移動方向の動きによって開度(湯供給口33aと水供給口33bとの開放比率)が調整されるように設けられる。
【0041】
サーモバルブ31において、弁体34の弁移動方向の動きによって湯供給口33aおよび水供給口33bの開度が変化することは、ケーシング33の内部において混合する(ケーシング33の内部に供給される)湯と水との割合が変化することに対応する。つまり、サーモバルブ31において弁体34の弁移動方向における位置が調整されることにより、湯供給口33aおよび水供給口33bから流入した湯および水が混合することで得られる湯水である混合水(以下単に「混合水」という。)の温度が調整される。
【0042】
このような構成において、湯供給口33aから流入する湯(矢印C1参照)、および水供給口33bから流入する水(矢印C2参照)は、弁体34を介してケーシング33の内部において混合水となり、ケーシング33において所定の部分に設けられる流出口33cから流れ出る(矢印C3参照)。本実施形態では、流出口33cは、ケーシング33の長手方向の一側(図3において右側)端部に形成される壁部33dに設けられる。また、円筒状の部材である弁体34においては、筒軸方向の両側が開口しており、弁体34はその内周面34aによって形成される空間に湯を通過させる。
【0043】
このように、本実施形態の湯水混合装置1においては、混合弁装置30に設けられる弁体34が、弁移動方向に移動可能に設けられその移動方向(弁移動方向)における位置によって湯供給口33aおよび水供給口33bの開度を調整するための弁部材として機能する。
【0044】
弁体34は、ケーシング33内において弁移動方向の両側から付勢された状態で支持される。弁移動方向における一側(流出口33cが設けられる側)については、弁体34は感温バネ35により付勢され、弁移動方向における他側(流出口33cが設けられる側と反対側)については、弁体34はバイアスバネ36により付勢される。これらのバネは、ケーシング33内において弁体34に付勢力を作用させて弁体34を駆動させる方向が弁移動方向に沿う姿勢で設けられ、弁体34を押圧付勢する。つまり、感温バネ35およびバイアスバネ36によって弁体34に作用する付勢力(押圧力)は、互いに対向し、感温バネ35の付勢力とバイアスバネ36の付勢力とが釣り合う位置に、弁体34が移動する。以下では、弁移動方向(ケーシング33の長手方向)について、弁体34に対して感温バネ35が位置する側(図3において右側)を「流出側」とし、その反対側(バイアスバネ36が位置する側、図3において左側)を「反流出側」とする。
【0045】
感温バネ35は、形状記憶合金(SMA;Shape Memory Alloy)により構成されるコイルバネであり、温度の変化によって弁体34に作用させる付勢力を変化させ、弁体34を駆動させる。つまり、感温バネ35は、サーモバルブ31において、湯水の温度によって変化する付勢力を作用させることでサーモバルブ31が有する弁部材を駆動させる感温部を構成する。本実施形態では、感温バネ35による弁体34に対する付勢力は、温度が高くなることによって増加し、温度が低くなることによって減少する。感温バネ35は、ケーシング33において流出口33cが設けられる壁部33dと弁体34との間に挟まれた状態で設けられる。
【0046】
バイアスバネ36は、ケーシング33内に設けられるバネ押さえ37によって押さえられるとともに、バネ押さえ37と弁体34との間に挟まれた状態で設けられる。バネ押さえ37は、略円筒状の部材であり、弁移動方向に移動可能に設けられる。
【0047】
バイアスバネ36は、ケーシング33内に設けられるスピンドル38によってその移動方向について位置決めされる。具体的には、バネ押さえ37の内周面には、雌ネジ部37aが形成されている。バネ押さえ37の雌ネジ部37aには、スピンドル38の雄ネジ部38aが螺合する。スピンドル38は、ケーシング33内において、弁移動方向について所定の位置にて回転可能に支持された状態で設けられる。
【0048】
したがって、スピンドル38が正逆方向に回転することにより、バネ押さえ37が弁移動方向の両側に移動する。つまり、バイアスバネ36から弁体34に作用する付勢力については、スピンドル38の回転にともなって、バネ押さえ37が流出側に移動する(弁体34側に近付く)ことによって増加し、バネ押さえ37が反流出側に移動する(弁体34から遠ざかる)ことによって減少する。
【0049】
スピンドル38は、混合弁装置30に備えられるモータ32を駆動源として回転する。つまり、スピンドル38は、モータ32の出力軸32aに連結され、モータ32の回転にともなって回転する。モータ32の出力軸32aとスピンドル38の連結部分は、ケーシング33の反流出側の壁部33eを貫通する。したがって、モータ32は、ケーシング33に対して反流出側に配置され、ケーシング33の反流出側から、スピンドル38に対して回転を伝達する。そして、モータ32の回転方向および回転量(回転角度)により、バネ押さえ37の位置、つまりバイアスバネ36からの弁体34に対する付勢力の大きさが調整される。
【0050】
このような構成において、ケーシング33内の混合水の温度が上昇することにより、感温バネ35の付勢力がバイアスバネ36の付勢力を上回ることで、弁体34がバイアスバネ36の付勢力に抗して反流出側に移動して、感温バネ35の付勢力とバイアスバネ36の付勢力とが釣り合う位置にくる。弁体34の反流出側への移動は、湯供給口33aを閉じる(開口部分を狭める)とともに水供給口33bを開く(開口部分を広げる)方向への移動に対応する。かかる弁体34の移動により、ケーシング33内に供給される湯の量は減少して水の量が増加することから、混合水の温度が低下する。
【0051】
一方、ケーシング33内の混合水の温度が低下することにより、感温バネ35の付勢力がバイアスバネ36の付勢力を下回ることで、弁体34が感温バネ35の付勢力に抗して流出側に移動して、感温バネ35の付勢力とバイアスバネ36の付勢力とが釣り合う位置にくる。弁体34の流出側への移動は、湯供給口33aを開くとともに水供給口33bを閉じる方向への移動に対応する。かかる弁体34の移動により、ケーシング33内に供給される湯の量は増加して水の量が減少することから、混合水の温度が上昇する。
【0052】
また、混合水の温度は、モータ32の駆動による弁体34の動作によっても調整される。すなわち、前述したようにモータ32の回転によってスピンドル38およびバネ押さえ37を介して調整されるバイアスバネ36の弁体34に対する付勢力が感温バネ35の付勢力を上回ることで、弁体34が感温バネ35の付勢力に抗して流出側に移動する。一方、モータ32の回転によってスピンドル38およびバネ押さえ37を介してバイアスバネ36の弁体34に対する付勢力が感温バネ35の付勢力を下回ることで、弁体34がバイアスバネ36の付勢力に抗して反流出側に移動する。
【0053】
このように、混合弁装置30においては、感温バネ35の温度変化にともなう付勢力の変化による弁体34の動作、およびモータ32の駆動による弁体34の動作により、湯供給口33aおよび水供給口33bの開度が変化し、混合水の温度が調整される。そして、温調機能部13を構成する混合弁装置30による混合水の温度の調整が、操作部6の回転操作によって行われる。
【0054】
以上のように、本実施形態の湯水混合装置1においては、混合弁装置30に設けられる感温バネ35が、混合水の温度変化にともなって変化する付勢力を弁体34に作用させることで弁体34を駆動(弁移動方向に往復移動)させる感温部材として機能する。つまり、本実施形態の湯水混合装置1においては、混合弁装置30が、弁体34および感温バネ35を有し、混合水を流出させる混合弁として機能する。
【0055】
また、本実施形態の湯水混合装置1においては、操作部6(図2参照)が、混合水の温度についての目標値である設定温度(以下単に「設定温度」という。)を設定するための温度設定操作部として機能し、湯水用サーミスタ22が、混合弁装置30から流出した混合水の温度を検出するための温度センサとして機能する。
【0056】
そして、本実施形態の湯水混合装置1においては、コントローラ50が、混合弁装置30に対して弁体34を移動させるための制御信号を出力することで、混合水として設定温度の湯水が得られるように混合弁装置30を制御する。ここで、コントローラ50から混合弁装置30に対して出力される、弁体34を移動させるための制御信号は、モータ32に対する制御信号である。
【0057】
以上のような構成を備える湯水混合装置1においては、吐水温度(混合水の温度)についてのフィードバック制御(以下「吐水温度制御」という。)が行われる。吐水温度制御は、コントローラ50によって、操作部6からの操作信号および湯水用サーミスタ22からの検出信号に基づいて、混合弁装置30(のモータ32)が制御されることにより行われる。以下では、コントローラ50から混合弁装置30(のモータ32)に対して出力される制御信号を「弁制御信号」という。
【0058】
すなわち、吐水温度制御においては、湯水用サーミスタ22によって検出された吐水温度(以下「検出温度」という。)が、狙いの温度(操作部6によって設定された設定温度)と比較され、その差に基づいて、サーモバルブ31が制御される。つまり、サーモバルブ31においては、検出温度と設定温度との差の大きさに応じてモータ32が制御されることで、検出温度と設定温度とのギャップが埋まるように、スピンドル38およびバネ押さえ37を介して弁体34が移動させられる。これにより、吐水温度が、設定温度を目標として随時補正される。以下、吐水温度制御について、湯水混合装置1が備える構成とともに説明する。
【0059】
まず、図4を用いて、湯水混合装置1における制御構成について説明する。図4に示すように、コントローラ50は、吐水温度制御を行うため、温度補正部51を有する。温度補正部51は、設定温度に対応する操作部6からの操作信号および湯水用サーミスタ22からの検出信号に基づき、設定温度および検出温度の間の差(以下「温度偏差」という。)が減少するように、温度偏差の大きさに応じて、設定温度に対応する弁制御信号に対する補正量を算出する。
【0060】
したがって、図4に示すように、コントローラ50が有する温度補正部51に対しては、操作部6からの操作信号として、温度設定値(設定温度の値)が入力される。また、温度補正部51に対しては、湯水用サーミスタ22からの検出信号として、検出温度に対応する信号が入力される。
【0061】
温度補正部51による弁制御信号に対する補正量の算出は、具体的には次のようにして行われる。すなわち、弁制御信号は、回転することで弁体34を弁移動方向に移動させるスピンドル38を回転させるための信号である(図3参照)。したがって、弁制御信号は、スピンドル38の回転角度(以下「スピンドル角度」という。)および回転方向についての信号である。そこで、コントローラ50においては、温度補正部51等において、設定温度とスピンドル角度との関係があらかじめ設定され記憶される。
【0062】
図5に示すように、本実施形態では、設定温度とスピンドル角度との関係として、直線状のグラフ(符号G1参照)で表わされる関係が用いられる。つまり、図5において符号G1で示されるグラフが、コントローラ50においてあらかじめ設定され記憶される温度曲線(以下「設定温度曲線G1」とする。)である。設定温度曲線G1は、供給される湯および水の温度条件や圧力条件等に応じたサーモバルブ31の温調特性が考慮されて作成される。なお、図5に示すグラフにおいては、横軸がスピンドル角度(°)であり、縦軸が温度(℃)である。
【0063】
図5に示すように、吐水温度制御において、例えば、設定温度として34℃が設定された場合、温度補正部51は、まず、設定温度曲線G1に基づき、34℃に対応するスピンドル角度の演算結果として、角度θaを算出する。しかし、スピンドル角度と実際の吐水温度は、洗面台2(図1参照)が備え付けられる現場における湯と水の圧力比や温度比等によって変化し、必ずしも設定温度曲線G1に一致しない。
【0064】
ここでは、図5に示すように、現場における湯と水の圧力比等に応じた、吐水温度とスピンドル角度との関係が、例えば折れ線状のグラフ(符号G2参照)で表わされる。つまり、図5において符号G2で示されるグラフが、洗面台2の設置現場における湯と水の圧力比等に応じた温度曲線(以下「現場温度曲線G2」とする。)である。
【0065】
現場温度曲線G2によれば、スピンドル角度が角度θaである場合、吐水温度は、設定温度の34℃よりも高い温度Taとなる。つまり、湯水用サーミスタ22によって温度Taが検出される。この場合、温度補正部51は、設定温度の34℃に対応する操作部6からの操作信号および湯水用サーミスタ22からの温度Taに対応する検出信号に基づき、温度偏差ΔT1が減少するように、34℃に対応する弁制御信号に対する補正量を算出する。
【0066】
ここで、温度補正部51による補正量の算出は、温度偏差の大きさに応じて行われる。具体的には、温度補正部51による補正量は、設定温度曲線G1に基づき、この設定温度曲線G1の傾き(ΔT/Δθ)に準じて算出される。したがって、この場合においては、温度補正部51は、温度偏差ΔT1に応じて、吐水温度が低くなるように(弁体34(図3参照)が反流出側に移動するように)、設定温度曲線G1に基づき、弁制御信号に対する補正量を算出する。かかる補正量によれば、スピンドル角度は、角度θaから角度θbに変化する(矢印D1参照)。つまり、ΔT1/(θa−θb)の値が、設定温度曲線G1の傾き(ΔT/Δθ)に対応する。このようにして温度補正部51によって算出される弁制御信号に対する補正量を、以下では単に「補正量」という。
【0067】
そして、吐水温度制御においては、温度補正部51によって算出された補正量が、補正量の算出毎に、徐々に減少させられる。つまり、温度補正部51によって補正量が算出されるたびに、温度補正部51による温度補正の割合が徐々に減少するように調整される。このため、コントローラ50は、補正量調整部52を有する。補正量調整部52は、温度補正部51による補正量の算出毎に、補正量に、補正量の算出回数に応じた所定の係数を乗算することで補正量を調整する。
【0068】
したがって、図4に示すように、コントローラ50においては、温度補正部51による補正量についての演算結果が、補正量調整部52に送られる。これにより、補正量調整部52は、温度補正部51による演算結果に基づき、補正量を調整する。具体的には、補正量調整部52は、補正量に対して所定の係数(以下「第一の調整係数」という。)を乗算することにより、温度補正部51による補正量の算出毎に、補正量を減少させる。つまり、補正量調整部52は、補正量に対して、第一の調整係数として、温度補正部51による補正量の算出毎に、同値の場合を含み徐々に減少する1以下の数値を乗算する。
【0069】
そして、図4に示すように、補正量調整部52による調整後の補正量(第一の調整係数が乗算された補正量)が、弁制御信号として混合弁装置30に出力される。つまり、コントローラ50は、温度補正部51によって算出した補正量を、補正量調整部52において第一の調整係数を乗算することで調整し、その調整後の補正量に基づいて、混合弁装置30を制御する。このように、コントローラ50が有する補正量調整部52において算出された調整後の補正量が、コントローラ50によって制御される吐水温度に反映される。
【0070】
第一の調整係数としては、例えば、補正(温度補正部51によって算出される補正量に基づく混合弁装置30の制御)が四回行われる場合、温度補正部51による補正量の算出毎に減少する数値として、1(100%)、0.7(70%)、0.5(50%)、0.3(30%)という数値が用いられる。すなわち、この場合、一回目の補正においては、温度補正部51によって算出された補正量の100%の値が、実際の(弁制御信号として出力される)補正量として用いられる。そして、二回目の補正においては、温度補正部51によって算出された補正量の70%の値が、実際の補正量として用いられる。同様に、三回目の補正においては、算出された補正量の50%の値が、四回目の補正においては、算出された補正量の30%の値が、それぞれ実際の補正量として用いられる。なお、吐水温度制御においては、あらかじめ設定された所定の時間間隔(例えば5秒)で行われる。
【0071】
このように第一の調整係数として1(100%)、0.7(70%)、0.5(50%)、0.3(30%)という数値が用いられる場合について、図5を用いて説明する。なお、ここでは、前述したように設定温度として34℃が設定された場合について説明する。この場合、温度補正部51は、図5に示すように、スピンドル角度が設定温度曲線G1に基づいて角度θaになることによる吐水の温度Ta(現場温度曲線G2参照)と、設定温度の34℃との温度偏差ΔT1に対応する補正量を算出する。かかる補正量は、一回目の補正により算出された補正量であるため、補正量調整部52において、第一の調整係数として1が乗算される。つまりこの場合、一回目の補正では、温度補正部51により算出された補正量がその値のまま混合弁装置30に対して出力される。
【0072】
温度偏差ΔT1に対応する補正量によれば、スピンドル角度は、前記のとおり設定温度曲線G1の傾きに準じて角度θaから角度θbに変化する(矢印D1参照)。スピンドル角度が角度θbである場合、現場温度曲線G2によれば、吐水温度(検出温度)は、設定温度の34℃よりも低い温度Tbとなる。このように設定温度曲線G1の傾き(ΔT/Δθ)に準じて算出される補正量によって変化するスピンドル角度が、設定温度の34℃に対応するスピンドル角度(目標となるスピンドル角度)である角度θtをオーバーすることは、現場温度曲線G2の傾きが設定温度曲線G1の傾きよりも大きい場合に生じる。
【0073】
したがって、温度補正部51は、二回目の補正として、設定温度の34℃と吐水の温度Tbとの温度偏差ΔT2に対応する補正量を算出する。かかる補正量は、二回目の補正により算出された補正量であるため、補正量調整部52において、第一の調整係数として0.7が乗算される。第一の調整係数として0.7が乗算された補正量によれば、スピンドル角度は、角度θbから角度θcに変化する(矢印D2参照)。なお、二回目の補正における補正量の算出は、一回目の補正の場合と同様にして、温度偏差ΔT2に応じて、吐水温度が高くなるように(弁体34(図3参照)が流出側に移動するように)、設定温度曲線G1の傾きに準じて算出される。
【0074】
スピンドル角度が角度θcである場合、現場温度曲線G2によれば、吐水温度は、設定温度の34℃よりも高い温度Tcとなる。ここで、仮に、二回目の補正において、補正量調整部52による補正量の調整(第一の調整係数0.7の乗算)が行われない場合、つまり温度補正部51によって算出された補正量がそのまま用いられる場合、図5に示すように、スピンドル角度は、例えば角度θbから角度θca(温度Tcaに対応)に変化する(破線矢印D2a参照)。
【0075】
二回目の補正において補正量調整部52による補正量の調整が行われない場合のスピンドル角度である角度θcaは、補正量の調整が行われる場合のスピンドル角度である角度θcとの比較において、設定温度の34℃に対応するスピンドル角度である角度θtとの間の差が大きい。言い換えると、二回目の補正において補正量調整部52による補正量の調整が行われない場合の温度Tcaは、補正量の調整が行われる場合の温度Tcとの比較において、設定温度の34℃との間の差が大きい。つまり、二回目の補正において、補正量の調整が行われない場合、スピンドル角度が角度θbから角度θcaまで変化するところが、補正量調整部52による補正量の調整が行われることにより、スピンドル角度の角度θbからの変化が、目標となる角度θtに近い角度θcまでの変化にとどまる。
【0076】
そして、補正量調整部52は、三回目の補正によって算出される補正量(温度Tcと設定温度の34℃との温度偏差に対応する補正量)に対して、第一の調整係数として、0.5を乗算する。第一の調整係数として0.5が乗算された補正量によれば、スピンドル角度は、目標となる角度θtよりも吐水温度が低い側に変化するとともに、二回目の補正による角度θcよりも目標となる角度θtに近い角度に変化する(矢印D3参照)。同様にして、補正量調整部52は、四回目の補正によって算出される補正量に対して、第一の調整係数として、0.3を乗算する。第一の調整係数として0.3が乗算された補正量によれば、スピンドル角度は、目標となる角度θtよりも吐水温度が高い側に変化するとともに、三回目の補正によるスピンドル角度よりも目標となる角度θtに近い角度に変化する(矢印D4参照)。
【0077】
このように、補正量調整部52により、補正のたびに、徐々に減少する第一の調整係数が補正量に対して乗算されることにより、スピンドル角度が、設定温度の34℃に対応する目標のスピンドル角度(角度θt)に収束する。なお、補正量調整部52による補正量の調整に用いられる第一の調整係数は、補正の回数に対応する数値として、コントローラ50において補正量調整部52等にあらかじめ設定され記憶される。また、補正の回数についても、所定の回数としてあらかじめ設定される。つまり、上記の例において補正が五回以上行われる場合は、五回目以降の補正で用いられる第一の調整係数として、0.3以下の数値が適宜採用される。
【0078】
以上のような吐水温度制御について、図6に示すフロー図を用いて説明する。なお、以下の説明においては、補正がn回(n=1、2、3、・・・)行われるとし、各回の補正で用いられる第一の調整係数をαn(n=1、2、3、・・・)とする。また、図6に示すフロー図は、ある任意の回における補正についてのものである。
【0079】
図6に示すように、吐水温度制御においては、まず、温度設定値の検出処理が行われる(ステップ(以下「S」と略す。)110)。つまり、コントローラ50は、温度補正部51において、操作部6から入力される操作信号に基づいて、設定温度を検出する。次に、吐水温度の検出処理が行われる(S120)。つまり、コントローラ50は、温度補正部51において、湯水用サーミスタ22から入力される検出信号に基づいて、検出温度を認識する。
【0080】
続いて、温度設定値と吐水温度とが等しいか否かが判断される(S130)。つまり、コントローラ50は、温度補正部51において、検出温度が設定温度と等しいか否かを判断する。ここで、検出温度が設定温度と等しいと判断された場合、吐水温度制御による処理は終了する。つまりこの場合、混合弁装置30における弁体34の位置が狙いの温度に対応する位置にあることから、弁体34の位置は保持される(補正量は0となる)。
【0081】
一方、上記S130において、検出温度が設定温度と等しいと判断されなかった場合、弁制御信号に対する補正量の算出処理が行われる(S200)。つまり、コントローラ50は、温度補正部51において、補正量の算出を行う。そして、上記S200にて算出された補正量に対して、補正量調整部52による補正量の調整が行われる。
【0082】
すなわち、補正の回数が一回目である場合は、上記S200にて算出された補正量に対して、第一の調整係数としてα1が乗算される(S210、S220)。そして、第一の調整係数としてα1が乗算された補正量が、弁制御信号として混合弁装置30に出力される(S500)。
【0083】
同様にして、補正の回数が二回目である場合は、上記S200にて算出された補正量に対して、第一の調整係数としてα2が乗算され(S230、S240)、そのα2が乗算された補正量が、弁制御信号として混合弁装置30に出力される(S500)。こうした混合弁装置30に弁制御信号として出力される補正量についての各回の補正毎の調整が、あらかじめ設定された補正の回数(n回)に応じて行われる(S250、S260、S270)。
【0084】
以上のような本実施形態の湯水混合装置1によれば、モータ32によって電気的に制御されるサーモバルブ31を備え、吐水温度についてのフィードバック制御(吐出温度制御)を行う構成において、吐水温度の補正にかかる時間の短縮化を図ることができ、吐水温度のハンチングの発生を抑制することができる。
【0085】
すなわち、上述した吐出温度制御において、補正量についてあらかじめ設定されている設定温度曲線G1に基づいて常に100%の値が用いられた場合(補正量の調整が行われない場合)、供給される湯および水の温度条件や圧力条件等によっては、吐水温度のハンチングが発生するときがある。こうしたハンチング現象は、洗面台2が設置される現場の温度曲線(図5、現場温度曲線G2参照)と、湯水混合装置1における基準の温度曲線(同図、設定温度曲線G1参照)との温度勾配の乖離に起因する。そして、吐水温度のハンチングは、吐水温度が安定するまでの時間の長期化を招く原因となる。
【0086】
そこで、本実施形態の吐出温度制御のように、補正量の調整を行うことで、補正の回数が増えるにつれて補正する割合(温度補正部51により算出される補正量の割合)を減少させることにより、洗面台2が設置される現場における温度条件や圧力条件等にかかわらず、温度制御の応答性の向上(吐水温度が安定するまでの時間の短縮)、および吐水温度のハンチングの抑制を図ることができる。これにより、洗面台2の使用者に不快感を与えない温度制御を実現することができる。
【0087】
なお、補正量の調整に用いられる第一の調整係数の値は、特に限定されるものではなく、洗面台2が設置される現場における温度条件や圧力条件等に応じて適宜設定される。また、第一の調整係数の値としては、異なる回の補正において同じ値が連続してあるいは不連続的に複数回用いられてもよい。
【0088】
以下では、吐水温度制御における好ましい態様について説明する。吐水温度制御においては、補正量調整部52による補正量の調整について、第一の調整係数が乗算された補正量に対して、設定温度の値に応じた所定の係数が乗算されることが好ましい。つまり本態様では、補正量調整部52は、第一の調整係数が乗算された補正量に、設定温度の値に応じた所定の係数(以下「第二の調整係数」という。)をさらに乗算する。
【0089】
図7に示すように、本態様においては、コントローラ50が有する補正量調整部52に対して、温度補正部51による補正量についての演算結果に加え、操作部6からの操作信号として、温度設定値(設定温度の値)が入力される。これにより、補正量調整部52は、補正量の調整において、温度補正部51によって算出された補正量に対して、補正の回数に対応する第一の調整係数に加え、操作部6にて設定される設定温度に対応する第二の調整係数を乗算する。
【0090】
第二の調整係数としては、例えば、操作部6において設定可能な温度が四段階である場合、操作部6による設定温度が段階的に上昇するにつれて減少する数値として、1(100%)、0.7(70%)、0.5(50%)、0.3(30%)という数値が用いられる。すなわち、この場合、設定温度が一段階目の温度である場合は、第一の調整係数が乗算された補正量の100%の値が、実際の(弁制御信号として出力される)補正量として用いられる。そして、設定温度が二段階目の温度である場合は、第一の調整係数が乗算された補正量の70%の値が、実際の補正量として用いられる。同様に、設定温度が三段階目の温度である場合は、第一の調整係数が乗算された補正量の50%の値が、設定温度が四段階目の温度である場合は、第一の調整係数が乗算された補正量の30%の値が、それぞれ実際の補正量として用いられる。
【0091】
本態様における吐水温度制御について、図8に示すフロー図を用いて説明する。なお、図6に示すフロー図を用いて説明した内容と重複する部分については、同一の符号を用いる等して適宜説明を省略する。
【0092】
図8に示すように、本態様の吐水温度制御においては、弁制御信号に対する補正量の算出処理(S200)の後において、補正回数の確認処理が行われる(S300)。これにより、補正の回数に対応して設定される第一の調整係数が定まる。ここでは、補正の回数がn回目である場合(第一の調整係数がαnの場合)として説明する。
【0093】
そして、補正量の調整において、設定温度に対応する第二の調整係数の乗算が行われる。つまり、第一の調整係数としてαnが乗算された補正量に対して、操作部6における設定温度に対応する第二の調整係数が乗算される。ここでは、操作部6における温度設定がs段階(s=1、2、3、・・・)に段階的に行われる場合として説明する。また、各段階の温度設定で用いられる第二の調整係数をβs(s=1、2、3、・・・)とする。
【0094】
すなわち、図8に示すように、操作部6における温度設定の段階が「1」である場合は、上記S200にて算出された補正量に対して、第一の調整係数αnおよび第二の調整係数β1が乗算される(S310、S320)。そして、第一の調整係数αnに加えて第二の調整係数としてβ1が乗算された補正量が、弁制御信号として混合弁装置30に出力される(S500)。
【0095】
同様にして、操作部6における温度設定の段階が「2」である場合は、上記S200にて算出された補正量に対して第一の調整係数αnおよび第二の調整係数β2が乗算され(S330、S340)、そのαnおよびβ2が乗算された補正量が、弁制御信号として混合弁装置30に出力される(S500)。こうした混合弁装置30に弁制御信号として出力される補正量についての各設定温度の段階に対応する調整が、あらかじめ設定された設定温度の段階数(s段階)に応じて行われる(S350、S360、S370)。
【0096】
本態様の吐水温度制御が採用されることにより、操作部6における設定温度に応じて補正量の調整が行われる。これにより、吐水温度制御において、設定温度に応じて最適な制御を行うことが可能となり、それぞれの設定温度について、吐水温度を速やかに設定温度にすることができる。結果として、吐水温度のハンチングが発生しづらくなり、洗面台2の使用者に対してより快適な使用感を提供することができる。
【0097】
なお、補正量の調整に用いられる第二の調整係数の値は、第一の調整係数が乗算された補正量を保持または減少させるもの(1以下の数値)に限らず、第一の調整係数が乗算された補正量を増加させるもの(1より大きい数値)であってもよい。つまり、第二の調整係数の値は特に限定されるものではなく、洗面台2が設置される現場における温度条件や圧力条件等に応じて適宜設定される。
【0098】
次に、吐水温度制御における他の好ましい態様について説明する。吐水温度制御においては、補正量調整部52による補正量の調整について、第一の調整係数が乗算された補正量に対して、吐水温度に応じた所定の係数が乗算されることが好ましい。つまり本態様では、補正量調整部52は、第一の調整係数が乗算された補正量に、湯水用サーミスタ22により検出された温度(検出温度)に応じた所定の係数(以下「第三の調整係数」という。)をさらに乗算する。
【0099】
図9に示すように、本態様においては、コントローラ50が有する補正量調整部52に対して、湯水用サーミスタ22からの検出信号として、吐水温度が入力される。これにより、補正量調整部52は、補正量の調整において、温度補正部51によって算出された補正量に対して、補正の回数に対応する第一の調整係数に加え、湯水用サーミスタ22にて検出される検出温度に対応する第三の調整係数を乗算する。
【0100】
第三の調整係数としては、例えば、検出温度が四個の温度範囲に区切られて認識される場合、検出温度が段階的に上昇するにつれて減少する数値として、1(100%)、0.7(70%)、0.5(50%)、0.3(30%)という数値が用いられる。すなわち、この場合、検出温度が一個目の温度範囲である場合は、第一の調整係数が乗算された補正量の100%の値が、実際の(弁制御信号として出力される)補正量として用いられる。そして、検出温度が二個目の温度範囲である場合は、第一の調整係数が乗算された補正量の70%の値が、実際の補正量として用いられる。同様に、検出温度が三個目の温度範囲である場合は、第一の調整係数が乗算された補正量の50%の値が、検出温度が四個目の温度範囲である場合は、第一の調整係数が乗算された補正量の30%の値が、それぞれ実際の補正量として用いられる。
【0101】
本態様における吐水温度制御について、図10に示すフロー図を用いて説明する。なお、図6に示すフロー図を用いて説明した内容と重複する部分については、同一の符号を用いる等して適宜説明を省略する。
【0102】
図10に示すように、本態様の吐水温度制御においては、弁制御信号に対する補正量の算出処理(S200)の後において、補正回数の確認処理が行われる(S400)。これにより、補正の回数に対応して設定される第一の調整係数が定まる。ここでは、補正の回数がn回目である場合(第一の調整係数がαnの場合)として説明する。
【0103】
そして、補正量の調整において、検出温度に対応する第三の調整係数の乗算が行われる。つまり、第一の調整係数としてαnが乗算された補正量に対して、湯水用サーミスタ22による検出された吐水温度に対応する第三の調整係数が乗算される。ここでは、検出温度が上限の温度をTet(t=1、2、3、・・・)とする複数の温度範囲に区切られて認識される場合として説明する。また、各温度範囲で用いられる第三の調整係数をγt(t=1、2、3、・・・)とする。
【0104】
すなわち、図10に示すように、湯水用サーミスタ22により検出される吐水温度がTe1を上限とする温度範囲である場合は、上記S200にて算出された補正量に対して、第一の調整係数αnおよび第三の調整係数γ1が乗算される(S410、S420)。そして、第一の調整係数αnに加えて第三の調整係数としてγ1が乗算された補正量が、弁制御信号として混合弁装置30に出力される(S500)。
【0105】
同様にして、湯水用サーミスタ22により検出される吐水温度がTe2を上限とする温度範囲である場合は、上記S200にて算出された補正量に対して第一の調整係数αnおよび第三の調整係数γ2が乗算され(S430、S440)、そのαnおよびγ2が乗算された補正量が、弁制御信号として混合弁装置30に出力される(S500)。こうした混合弁装置30に弁制御信号として出力される補正量についての各温度範囲に対応する調整が、あらかじめ設定された温度範囲の数(t)に応じて行われる(S450、S460、S470)。
【0106】
本態様の吐水温度制御が採用されることにより、湯水用サーミスタ22による検出温度に応じて補正量の調整が行われる。これにより、吐水温度制御において、検出温度(温度範囲)に応じて最適な制御を行うことが可能となり、それぞれの検出温度(温度範囲)について、吐水温度を速やかに設定温度にすることができる。結果として、吐水温度のハンチングが発生しづらくなり、洗面台2の使用者に対してより快適な使用感を提供することができる。
【0107】
なお、補正量の調整に用いられる第三の調整係数の値は、第二の調整係数と同様に、特に限定されるものではなく、洗面台2が設置される現場における温度条件や圧力条件等に応じて適宜設定される。
【0108】
また、本実施形態の湯水混合装置1においては、好ましくは、前述したような吐水温度制御によって混合弁装置30の弁体34の位置が設定温度に対応して補正された状態におけるスピンドル角度(弁制御信号)がその都度記憶され、次回以降の操作による制御に反映される構成が採用される。つまり、湯水混合装置1においては、洗面台2が設置される現場の状況に応じた、設定温度に対応するスピンドル角度(弁制御信号)についての学習機能(以下「弁位置学習機能」という。)が備えられることが好ましい。
【0109】
図11に示すように、弁位置学習機能が備えられる構成においては、コントローラ50は、設定温度と検出温度とが一致した際の弁体34の弁移動方向における位置に対応する弁制御信号を記憶する記憶部53をさらに有する。そして、コントローラ50は、設定温度が変更された場合、記憶部53に記憶された弁制御信号に基づいて、混合弁装置30を制御する。
【0110】
すなわち、コントローラ50においては、記憶部53によって吐水温度が設定温度に一致した際の弁体34の位置、つまりスピンドル角度(弁制御信号)が、設定温度との関係において記憶される。これにより、洗面台2が設置される現場の状況に応じた設定温度とスピンドル角度との関係を表すテーブルが作成される。この設定温度とスピンドル角度との関係を表すテーブルは、随時更新される。
【0111】
そして、コントローラ50は、設定温度が変更されることで、設定温度が、弁制御信号が記憶されている設定温度となった場合、その設定温度について記憶されている弁制御信号に基づいて、混合弁装置30を制御する。つまり、コントローラ50は、設定温度が変更された場合、記憶部53に記憶された弁制御信号に基づいて、混合弁装置30を制御する。設定温度が変更された場合としては、止水状態からの設定温度の変更をともなう再吐水時、あるいは吐水中における設定温度の変更時が挙げられる。
【0112】
弁位置学習機能が備えられる構成における吐水温度制御について、図12に示すフロー図を用いて説明する。図12に示すように、本構成における吐水温度制御においては、まず、吐水中であるか否かの判断が行われる(S610)。かかる判断は、コントローラ50により、電磁弁19(図2参照)に対して出力される制御信号に基づいて行われる。そして、吐水中の状態において、まず、温度設定値の検出処理が行われる(S620)。つまり、コントローラ50は、温度補正部51において、操作部6から入力される操作信号に基づいて、設定温度を検出する。
【0113】
次に、上記S620にて検出される温度設定値が、前回の温度設定値と等しいか否かが判断される(S630)。つまり、コントローラ50により、今回の温度設定値(上記S620にて検出される温度設定値)が、上記S610にて吐水中と判断された吐水が開始される前、あるいは吐水が開始されてから設定温度が変更された場合における今回の設定温度に設定される設定前の温度設定値と等しいか否かが判断される。
【0114】
上記S630において、温度設定値が前回の温度設定値と等しくないと判断された場合、混合調整位置の設定処理が行われる(S640)。ここでは、今回の温度設定値とは異なる前回の温度設定値に対応するスピンドル角度による弁体34の位置が、今回の温度設定値に対応するスピンドル角度による位置となるための弁制御信号が生成される。具体的には、コントローラ50においてあらかじめ設定され記憶されている設定温度曲線G1(図5参照)に基づき、今回の温度設定値に対応する弁制御信号が生成される。
【0115】
そして、上記S640にて生成された弁制御信号が、混合弁装置30に出力される(S700)。これにより、スピンドル角度が今回の温度設定値に対応する値となる。このように、混合調整位置の設定処理(S640)が行われ、スピンドル角度が今回の温度設定値に対応する値となることで、温度設定値が変更されない限り、次回の温度設定値検出処理(S620)の後の判断(S630)において、今回の温度設定値が前回の温度設定値と等しいと判断されることとなる。
【0116】
上記S630において、温度設定値が前回の温度設定値と等しいと判断された場合、吐水温度の検出処理が行われる(S650)。つまり、コントローラ50は、温度補正部51において、湯水用サーミスタ22から入力される検出信号に基づいて、吐水温度を認識する。
【0117】
続いて、温度設定値と吐水温度とが等しいか否かが判断される(S660)。つまり、コントローラ50は、温度補正部51において、検出温度が設定温度と等しいか否かを判断する。ここで、検出温度が設定温度と等しくないと判断された場合、前述したような弁制御信号に対する補正量の算出処理(S670)、および補正量の調整処理(S680)が行われた後、混合弁装置30に対して弁制御信号が出力される(S700)。
【0118】
一方、上記S660において、検出温度が設定温度と等しいと判断された場合、混合調整位置テーブルの更新処理が行われる(S690)。つまり、検出温度が設定温度に一致した状態におけるスピンドル角度が、その現場の状況に対応した設定温度に対応するスピンドル角度として採用され、設定温度との関係を表すテーブルが更新される。このような設定温度とスピンドル角度との関係を表すテーブルの更新内容は、記憶部53において随時記憶される。
【0119】
上記S690において更新されるテーブルの内容、つまり記憶部53に記憶された弁制御信号は、上記S640における混合調整位置の設定処理に用いられる。すなわち、上記S640における弁制御信号の生成に際し、今回の温度設定値に対応するスピンドル角度が上記S690による更新処理によって存在する場合、そのスピンドル角度に対応する弁制御信号が、コントローラ50においてあらかじめ設定され記憶されている設定温度曲線G1(図5参照)に基づく弁制御信号に対して優先的に採用される。つまり、洗面台2が設置される現場の状況に応じて吐水温度が設定温度となる最新のスピンドル角度に対応する弁制御信号に基づき、混合弁装置30が制御される。したがって、前述したように記憶部53に記憶された弁制御信号が用いられる、設定温度が変更された場合が、上記S630において温度設定値が前回の温度設定値と等しくないと判断された場合に該当する。以上のような一連の処理が、吐水中に継続して行われる(S710)。
【0120】
このように、本実施形態の湯水混合装置1において弁位置学習機能が備えられることにより、吐水温度制御において、設定温度と吐水温度とが一度一致すれば、次回以降、具体的には止水状態からの設定温度の変更をともなう再吐水時、あるいは吐水中における設定温度の変更時には、吐水温度が設定温度により近い状態から制御を開始することができる。これにより、実際の吐水温度を設定温度とするまでの時間の短縮化を図ることができるとともに吐水温度のハンチングをより効果的に抑制することができ、洗面台2の使用者に対してより快適な使用感を提供することができる。
【0121】
なお、弁位置学習機能が備えられる構成の説明においては、湯水混合装置1が備える制御構成として、図11に示すように、補正量の調整において補正量に対して第一の調整係数のみが乗算される構成(図4参照)を例に用いたが、これに限定されない。つまり、弁位置学習機能が備えられる構成は、補正量の調整において補正量に対して第一の調整係数に加え第二の調整係数が乗算される構成(図7参照)、または第一の調整係数に加え第三の調整係数が乗算される構成(図9参照)においても同様に適用可能である。
【0122】
以下では、本発明の実施例について説明する。本実施例は、吐水温度の制御が開始されてからの吐水温度の時間変化についてのものである。また、本実施例は、設定温度としてTx℃が設定された場合についてのものである。また、本実施例では、約5秒の時間間隔で補正が行われる。
【0123】
図13(a)は、本実施例に係る吐水温度の時間変化を示す。つまり、図13(a)に示すグラフは、吐水温度制御において第一の調整係数が用いられる補正量の調整が行われた場合の吐水温度の時間変化を表すものである。また、図13(b)は、本実施例の比較対象としての比較例に係る吐水温度の時間変化を示す。本比較例は、本実施例と同様の条件下において、補正量の調整が行われない場合、つまり補正量についてあらかじめ設定されている所定の温度曲線(図5、設定温度曲線G1参照)に基づいて常に100%の値が用いられた場合の吐水温度の時間変化を表すものである。
【0124】
図13(b)に示すように、比較例においては、設定温度のTx℃を介して吐水温度が規則的に上下に変動して安定しない状態、つまり吐水温度のハンチングが発生している。具体的には、補正量に基づく補正のたびに、スピンドル角度が設定温度のTx℃に対応する角度を介して略均一な振れ幅で正逆方向に変動している。こうした吐水温度のハンチングは、洗面台等の使用者に不快感を与える原因となる。
【0125】
これに対し、本実施例においては、図13(a)に示すように、同図に示す時間範囲における初期(グラフの左側の部分参照)には、吐水温度が設定温度のTx℃を介して上下に変動しているものの、比較的短時間で吐水温度が設定温度のTx℃近傍の値に収束している。つまり、本実施例においては、比較例のような吐水温度のハンチングが発生することなく、吐水温度が速やかに狙いの温度(設定温度)に補正されて安定する。
【0126】
以上のような本発明の実施例からわかるように、本発明に係る湯水混合装置によれば、サーモバルブが用いられて吐水温度についてのフィードバック制御が行われる構成において、吐水温度のハンチングの発生が抑制され、洗面台等の使用者に対して快適な使用感を提供することができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0127】
1 湯水混合装置
6 操作部(温度設定操作部)
11 給湯管
12 給水管
22 湯水用サーミスタ
30 混合弁装置(混合弁)
31 サーモバルブ
32 モータ
33a 湯供給口(流入口)
33b 水供給口(流入口)
34 弁体(弁部材)
35 感温バネ(感温部材)
50 コントローラ
51 温度補正部
52 補正量調整部
53 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に設けられその移動方向における位置によって所定の経路を介して供給される湯および水それぞれの流入口の開度を調整するための弁部材、ならびに前記流入口から流入した前記湯および水が混合することで得られる湯水である混合水の温度変化にともなって変化する付勢力を前記弁部材に作用させることで前記弁部材を駆動させる感温部材を有し、前記混合水を流出させる混合弁と、
前記混合水の温度についての目標値である設定温度を設定するための温度設定操作部と、
前記混合弁から流出した前記混合水の温度を検出するための温度センサと、
前記混合弁に対して前記弁部材を移動させるための制御信号を出力することで、前記混合水として前記設定温度の湯水が得られるように前記混合弁を制御するコントローラと、を備える湯水混合装置において、
前記コントローラは、
前記設定温度に対応する前記温度設定操作部からの操作信号および前記温度センサからの検出信号に基づき、前記設定温度および前記温度センサにより検出された温度の間の差が減少するように、前記差の大きさに応じて、前記設定温度に対応する前記制御信号に対する補正量を算出する温度補正部と、
前記温度補正部による前記補正量の算出毎に、前記補正量に、該補正量の算出回数に応じた所定の係数を乗算することで前記補正量を調整する補正量調整部と、を有する、
ことを特徴とする湯水混合装置。
【請求項2】
前記補正量調整部は、
前記所定の係数が乗算された前記補正量に、前記設定温度の値に応じた所定の係数をさらに乗算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の湯水混合装置。
【請求項3】
前記補正量調整部は、
前記所定の係数が乗算された前記補正量に、前記温度センサにより検出された温度に応じた所定の係数をさらに乗算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の湯水混合装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記設定温度と前記温度センサにより検出された温度とが一致した際の前記弁部材の前記所定の方向における位置に対応する前記制御信号を記憶する記憶部をさらに有し、前記設定温度が変更された場合、前記記憶部に記憶された前記制御信号に基づいて、前記混合弁を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の湯水混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−21635(P2011−21635A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165146(P2009−165146)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】