説明

湯種製パン方法とそのための生地加熱攪拌機並びに生地搗き機

【課題】モチモチ感やしっとり感、その他の食感も総合品質として、確実に増大させ得る湯種製パン方法を提供する。
【解決手段】先ず小麦粉100重量部のうちの20〜30重量部と、イースト以外の副原料とを生地加熱攪拌機(A)のボール鍋(5)へ、その小麦粉20〜30重量部の2.0倍〜2.5倍に相当する水と一緒に投入した上、攪拌機の加熱源により加熱し乍ら混捏して、その捏ね上げ温度が75℃〜95℃の湯種生地を作成し、次いで上記湯種生地と小麦粉の残部並びにショートニングやバター以外の副原料とを生地搗き機(B)の臼(111)へ、水と一緒に投入した上、その回転する臼と固定抵抗羽根(139)により一旦水和状態になるまで混練した後、その臼の回転中に引き続き杵(86)で搗くことにより混捏して、その捏ね上げ温度が25℃〜30℃のパン生地に仕上げることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湯種生地に基く独特のモチモチ感としっとり感のみならず、ソフト感や口溶けの良好さ、甘味、香り、その他の食感をも総合品質として、確実に増大させ得る湯種製パン方法と、そのための最もふさわしい生地加熱攪拌機並びに生地搗き機に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉の一部に熱湯を加えて混捏し、その小麦粉中の澱粉がα化された生地を湯種として使う湯種製パン方法は、下記特許文献1〜12に広く開示されている。
【特許文献1】特公昭46−5019号公報
【特許文献2】特開昭62−175134号公報
【特許文献3】特公平4−24017号公報
【特許文献4】特公平6−9457号公報
【特許文献5】特許第3080368号公報
【特許文献6】特許第3167692号公報
【特許文献7】特開2002−34436号公報
【特許文献8】特開2003−23955号公報
【特許文献9】特開2003−23956号公報
【特許文献10】特開2003−265093号公報
【特許文献11】特開2004−29号公報
【特許文献12】特開2006−42809号公報
【0003】
又、本出願人の関連会社がパン生地の製造装置(パン生地搗き機)として、先に下記特許文献13、14を提案した。
【特許文献13】特許第2631430号公報
【特許文献14】特許第2950498号公報
【0004】
一般に湯種製パン方法では、澱粉のα化に必要な温度との関係上、湯種生地の捏ね上げ温度が約60℃〜65℃として、又湯種生地作成時の小麦粉に対する熱湯の混合比率が約1.0倍〜1.2倍として、各々設定されている通例であるところ、熱湯の混合比率(加水比率)と上記捏ね上げ温度とは互いに密接不可分の有機的な相関々係にある。
【0005】
その場合、湯種製パン方法に係る上記特許文献1〜12のうち、特許第3080368号公報(特許文献5)と特開2002−34436号公報(特許文献7)には、湯種生地(中麺)を作成するための条件として、第1に使用される小麦粉100重量部に対する50〜400重量部(約0.5倍〜4.0倍)の熱湯又は水を混合すること、第2に捏ね上げ温度を55℃〜80℃や55℃〜98℃に設定すること、第3に熱湯の代りに常温の水を使用し、これを小麦粉と一緒に加熱しつつ混捏することが記載されている点で、その総合的に本発明と最も近似する公知技術であると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許第3080368号発明と特開2002−34436号発明には、その第1、2条件の数値範囲について、上限理由と下限理由が全然記載されておらず、本出願人の追試によれば、未だ下記の諸問題がある。
【0007】
即ち、特開2002−34436号発明はその捏ね上げ温度の上限数値(98℃)を除くほかの全体として、特許第3080368号発明と実質的に同一であるため、その特許第3080368号発明を引用して説明すると、これの明細書段落〔0016〕に「熱湯あるいは水の量は、中麺の練り上げに使用される小麦粉100重量部に対して、50〜400重量部程度である」と記載されている数値限定範囲のうち、その小さな2倍未満の混合比率のもとで、「55℃〜80℃」の捏ね上げ温度まで加熱した場合には、その約65℃を越えた当りから澱粉のα化が速く進み過ぎて、湯種生地が急激に硬くなり、生地中の自由水が減少するため、その独自に固まるダマを多く発生するのである。そのダマを爾後工程の本捏作用時間中において、完全に解消することもできず、製パン後も残るため、食感が悪くなる。
【0008】
他方、上記数値限定範囲のうち、逆に大きな2.5倍を越える程の混合比率では、言わばシャブシャブの性状にあるため、その捏ね上げ温度(55℃〜80℃)の高低如何に拘らず、又如何に長時間混捏するも、粘弾的に変形せず、湯種生地としてまとまり団塊化することはない。仮りに、2.5倍〜3.0倍程度の混合比率として、長時間の混捏により団塊化し得たとしても、風味の著しい低下やケービング現象の発生を招く結果となる。
【0009】
更に、上記特許第3080368号発明の特許請求の範囲・請求項3には、「常温の水を使用して加熱しつつ混捏する」とあるが、その加熱するための具体的な手段や、加熱作用と混捏作用とを同時進行する内容は、発明の詳細な説明に全然開示されていない。
【0010】
その加熱手段に限っては、明細書段落〔0018〕に「常温の水を使用する場合には、小麦粉とイーストを除く各種副材料とともに、電子レンジによって加熱した後に混捏されて、中麺に練り上げられる。」と記載されているが、この記載から確認できるように、中麺(湯種生地)の加熱作用と混捏作用とは同時進行されていない。
【0011】
茲に、電子レンジは電磁波の照射による誘電加熱方式であるため、水だけの加熱が速く進み、加熱の進まない小麦粉がその水膜により封じ込められて、ダマとなりやすく、やはり有効な湯種生地を作成することができないのである。
【0012】
又、湯種生地作成上の加熱方法として、ミキサーから一旦取りはずしたミキサーボールに、水を入れて加熱し、その沸騰後に小麦粉を加え、加熱を止めて、上記ミキサーボールをミキサーに再度セットし、混練する方法(上記特許文献3)の場合、その混練作用中には加熱されていないため、湯種生地が徐々に冷めてゆく結果となり、その捏ね上げ温度を約65℃以上に高めることは至難の業である。
【0013】
同じく湯種生地作成上の加熱方法として、ミキサーに小麦粉と熱湯を一緒に入れ、その混捏時にはミキサーの下部を熱湯が入ったボールに漬ける方法(特許文献8、9)もあるが、これはあくまでも間接的な湯煎として、やはり湯種生地の捏ね上げ温度は高くとも約65℃にとどまる。
【0014】
このような湯種生地の捏ね上げ温度を約65℃以上に高めることができないことは、ミキサーボールの底面に臨む加熱源を具備していないミキサーでの言わば宿命である。
【0015】
それにもまして、従来の湯種製パン方法では特許文献3、4や特許文献8、9の実施例に記載されているとおり、湯種生地作成工程とその後の本捏作用工程との何れにおいても、図37に示すようなフックやビーター、ダブルアーム、バー、その他の回転攪拌子(1)が取り付けられた竪型ミキサー(a)を、終始一貫して使っているのである。
【0016】
つまり、竪型ミキサー(a)の回転運動する上記攪拌子(1)によって、湯種生地や本捏生地(m)を強制的に掻き廻し、その攪拌子(1)とミキサーボール(2)の内壁面との相互間において、生地(m)に圧縮、引き伸ばし、叩き、その他の塑性変形作用を反復的に付与しており、このことは横型ミキサーでも同様である。このような竪型や横型のミキサー(a)も、そのミキサーボール(2)の底面に臨む加熱源を具備していない。
【0017】
そのため、湯種生地作成工程と本捏作用工程との何れにあっても、その小麦粉を水和する初期段階では、上記攪拌子(1)の混練作用が生地(m)に効果的に働かず、いたづらに長時間を要することとなる。又、生地(m)が水和状態から或る程度粘結固形化した後には、その混捏中に攪拌子(1)のフックやビーターなどが生地(m)中へ喰い込み、これを強制的に引っ掻き廻す関係上、グルテンの網状組織を切断してしまいやすく、生地(m)に多大のダメージを与える。
【0018】
更に、竪型ミキサー(a)には生地反転用の固定抵抗羽根が無く、生地(m)が攪拌子(1)と一緒に連れ廻るだけであるため、その全体をすばやく且つ均一に混捏作用させ難く、それだからと言って攪拌子(1)を高速回転させると、その回転遠心力により水が生地(m)中へますます浸透しなくなるほか、グルテンの網状組織も破壊されてしまうのである。
【0019】
特に、湯種生地の捏ね上げ温度が上記特許第3080368号発明のような約80℃として高く設定されると、その生地(m)は高速にα化して、硬く団塊化するため、爾後の本捏作用工程において、上記ミキサー(a)の回転攪拌子(1)に過大な負荷・抵抗を与え、生地(m)を円滑にほぐし混捏することができなくなる。
【0020】
その意味から、湯種製パン方法に用いる装置はただ単なる量産効果の達成のみならず、生地との本質的な作用関係上極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明はこのような諸問題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では湯種製パン方法として、ボール鍋を加熱する電気又はガスの加熱源と、そのボール鍋の内部へ差し込み使用される生地焦げ付き防止用の回転攪拌羽根並びに生地反転用の固定抵抗羽根とを備えた生地加熱攪拌機を用いて、
【0022】
先ず、パン生地の形成に必要な小麦粉100重量部のうちの20〜30重量部と、イースト以外の各種副原料とを上記加熱攪拌機のボール鍋へ、その小麦粉20〜30重量部の2.0倍〜2.5倍に相当する水と一緒に投入した上、上記加熱源により加熱し乍ら上記回転攪拌羽根と固定抵抗羽根により混捏して、その捏ね上げ温度が75℃〜95℃の湯種生地を作成する工程と、
【0023】
臼の内部に臨む生地反転用の抵抗羽根と、その臼の底面に向かって直進的に往復運動し、且つ臼との相互間に挟み付けられた生地と一緒に連れ廻り得る杵とを備えた生地搗き機を用いて、
【0024】
次に、上記湯種生地と上記小麦粉の残部並びにショートニングやバター以外の各種副原料とを上記生地搗き機の臼へ、水と一緒に投入した上、その臼と抵抗羽根との何れか一方を回転させ、他方を固定状態に保つことにより、一旦水和状態になるまで混練した後、その回転中に引き続き上記杵で搗くことにより混捏して、その捏ね上げ温度が25℃〜30℃のパン生地に仕上げる本捏作用工程とを含むことを特徴とする。
【0025】
又、請求項2では湯種製パン用の生地加熱攪拌機として、据付け機筐の上面に受け止め支持されたボール鍋と、そのボール鍋を下方から加熱する電気又はガスの加熱源と、上記ボール鍋の内部へ上方から差し込み使用される擬似錨型の生地焦げ付き防止用回転攪拌羽根と、同じくボール鍋の内部へ上方から差し込み使用されるヘラ型の生地反転用固定抵抗羽根とを備え、
【0026】
上記ボール鍋内の製パン用湯種生地に差し込み使用される接触式温度センサー付きの送信機を、上記回転攪拌羽根の回転軸線上へ着脱自在に、且つその攪拌羽根の周囲を一体的に公転運動し得るように取り付ける一方、
【0027】
その送信機と対応する受信機を上記据付け機筐に取り付けて、
【0028】
上記攪拌羽根と抵抗羽根とが混捏中にある湯種生地の加熱温度を、上記温度センサーにより測定すると共に、その測定した加熱温度データを上記送信機から受信機へ、無線信号として送信し、
【0029】
やがて湯種生地の加熱温度が目標とする75℃〜95℃の捏ね上げ温度に達した時、その受信機から出力する制御信号により、上記加熱源の加熱作用を自づと停止又は弱めるように定めたことを特徴とする。
【0030】
更に、請求項3では同じく湯種製パン用の生地搗き機として、据付け機筐に内蔵の臼駆動モーターによって回転される臼と、その臼の内部へ上方から差し込み使用される生地反転用の固定抵抗羽根と、同じく据付け機筐に内蔵の別個な杵駆動モーターにより、上記臼の底面に向かって一定ストロークだけクランク運動される杵昇降軸とを備え、
【0031】
上記臼に投入されたパン生地の搗き用杵をその杵昇降軸の下端部へ、ベアリングを介して遊転自在に套嵌させることにより、上記杵が下降した時臼との上下相互間に広くとも約10mmの一定間隙を保ち、且つその間隙に挟み付けられた生地と一緒に連れ廻るように定めると共に、
【0032】
上記固定抵抗羽根を据付け機筐から臼の内壁面とほぼ平行に弯曲しつつ、且つその臼の回転進行方向に順応する前下がり傾斜姿勢として差し込むことにより、上記パン生地を臼の回転に連れて自づと絡らみ付け前進させ乍ら、その前下端部から臼の回転中心部へ誘導し得るように定めたことを特徴とする。
【0033】
請求項4では上記請求項3に従属する構成として、臼内のパン生地に差し込み使用される接触式温度センサー付きの送信機を、上記臼における底面の偏心部へ着脱自在に、且つその臼との一体的に公転運動し得るように取り付ける一方、
【0034】
その送信機と対応する受信機を据付け機筐に取り付けて、
【0035】
上記臼内での混捏中にあるパン生地の温度を、上記温度センサーにより測定すると共に、その測定した温度データを上記送信機から受信機へ、無線信号として送信し、
【0036】
やがてパン生地の温度が目標とする25℃〜30℃の捏ね上げ温度に達した時、その受信機から出力する制御信号により、臼の回転運動と杵の昇降運動を自づと停止させるように定めたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
請求項1の湯種製パン方法によれば、パン生地の形成上必要な小麦粉100重量部のうちの20〜30重量部に対して、その2.0倍〜2.5倍の水を多く加えることにより、湯種生地の捏ね上げ温度が75℃〜95℃として、その澱粉のα化が高速に進行しても、結合状態がソフトで解けやすいため、本捏作用工程でのパン生地中へ滑らかに分散されることとなり、独自に固まるダマとして残ることがない。
【0038】
又、湯種生地の捏ね上げ温度を75℃〜95℃として高く設定するも、これを混捏するために使われる生地加熱攪拌機は、冒頭に述べた従来の竪型ミキサーや横型ミキサーと異なり、電気又はガスによる加熱源と生地焦げ付き防止用の回転攪拌羽根並びに生地反転用の固定抵抗羽根を具備しているため、短時間での効率良く湯種生地を作成できるばかりでなく、その混捏作用と加熱作用との同時進行により、上記湯種生地が経時的に冷めたり、焦げ付いたりするおそれがなく、目標とする高い捏ね上げ温度を確実に得られるのである。
【0039】
更に、本捏作用工程では上記湯種生地作成用の加熱攪拌機と別個な生地搗き機が使われ、これは臼の底面に向かって往復運動する杵により、パン生地を搗く(加圧する)ようになっているため、その小麦粉の水和状態として表面に付着した水を、パン生地の内部へ繰り返し効果的に押し込め浸透させることができ、その意味からも上記湯種生地の高い加水率とも相俟って、粘弾性と膨潤度(保水性)に富むモチモチ感としっとり感、ソフト感、口溶け、その他の食感に優れた美味しい製品を得られるのである。
【0040】
特に、実施例1の食パンでは湯種生地から本捏作用を受けたパン生地の全体として、90%の高い吸水率を達成することができており、この点図37に示した従来の竪型ミキサーや横型ミキサーを使う湯種製パン方法では、そのフックやビーターなどの攪拌子が回転運動するため、90%の高い吸水率を得ることは到底不可能であり、その高くとも約70%程度にとどまる。
【0041】
このような回転運動する攪拌子を備えた竪型ミキサーや横型ミキサーと異なり、上記生地搗き機の杵は直線的に往復運動し、しかも臼との相互間に挟み付けられたパン生地と一緒に連れ廻るため、その生地にダメージを与えるおそれもなく、内相・皮質ともに柔らかく、外観上優れた製品を得られるのである。
【0042】
請求項2の構成によれば、ボール鍋の底面に加熱源を備えた生地加熱攪拌機であっても、その加熱源による制約を受けることなく、回転攪拌羽根の回転軸線上へ取り付け使用した無線送信機の接触式温度センサーにより、湯種生地の加熱温度を直かに測定・検知することができ、その捏ね上げ温度を75℃〜95℃として正確に得られる効果がある。
【0043】
又、請求項3の構成によれば、回転される臼と一緒に連れ廻るパン生地を、その内部へ臨む特殊な生地反転用の固定抵抗羽根が、自づと臼の回転方向へ絡らみ付け前進させ乍ら、臼の回転中心部へ寄せ集め誘導し、ここへ下降する杵により繰り返し加圧するため、短時間での効率良くパン生地を全体的な均一に混捏できる効果がある。
【0044】
その場合、請求項4の構成を採用するならば、パン生地の捏ね上げ温度も25℃〜30℃として、自づと正確に達成することができ、イーストの活発に働く温度に保てる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面に基いて本発明の詳細を説明すると、先ず図1〜3は本発明の湯種製パン方法に用いる生地加熱攪拌機(A)を示しており、(1)は作業床への据付け機筐であって、その水平な上面がテーブル(天板)(2)として、ここには円形の鍋逃がし入れ口(3)とその開口周縁部から一体的に起立する鍋受けフランジ(4)とが設けられている。
【0046】
(5)は上記鍋逃し入れ口(9)へ上方から抜き差し自在に差し込まれ、その鍋受けフランジ(4)によって受け止め支持されるボール鍋(原料収容タンク)であり、その内部に後述する湯種生地作成工程での湯種原料(m1)が投入されることとなる。
【0047】
(6)はボール鍋(5)の底面に臨む加熱源の電磁誘導加熱コイルであって、1本の銅線(リッツ線)から渦巻き状態に周回されており、これには上記据付け機筐(1)に内蔵の励磁用高周波電源(インバーター)(7)から、高周波電流が供給されるようになっている。高周波電源(7)の出力は3KWであるが、後述の湯種生地作成時には約2.4KWとして使用される。
【0048】
(8)はその高周波電源(7)の上面に搭載されたアルミ製のフラットな円形コイル支持板、(9)は上記加熱コイル(6)とそのコイル支持板(8)との上下相互間に介挿されたスペーサーであり、セラミックファイバーなどの耐熱材から成る。(10)は上記据付け機筐(1)に設置された加熱用操作パネルを示している。
【0049】
又、(11)は据付け機筐(1)のテーブル(2)上へ水平な支点軸(12)とその軸受ステー(13)を介して、起伏的な回動自在に枢着された中空の屈曲支柱であり、その背後が希望の傾斜角度を固定維持する転倒防止用ガスダンパー(14)によって、言わば突っ張り状態に支持されている。
【0050】
他方、屈曲支柱(11)が上記ボール鍋(5)の真上位置まで到達する上部先端には、回転攪拌羽根用駆動モーター(15)と回転センター軸(16)とを伝動連結するためのカップリング(17)が設置されている。但し、図例ではそのカップリングケースを示すにとどめている。
【0051】
(18)は上記据付け機筐(1)に内蔵されたモーターコントローラー(制御基板)であり、約100r.p.m の最高回転速度を有する回転攪拌羽根用駆動モーター(15)を、後述の湯種生地作成時には低速の約45r.p.m として制御する。(19)はその攪拌用操作パネルである。
【0052】
そして、上記回転センター軸(16)がボール鍋(5)の中心部を指向する下端部には、生地焦げ付き防止用回転攪拌羽根(20)のハンガー軸(21)が連結スリーブ(22)を介して着脱自在に、且つ一体回転し得るように連結一本化されている。
【0053】
茲に、生地焦げ付き防止用の回転攪拌羽根(20)は上記ボール鍋(5)の内底面にフイットする両羽根板片(20a)を備えた擬似錨型として、好ましくはフッソ樹脂(テフロン(登録商標))などの硬質な合成樹脂材から一体成形されており、その両羽根板片(20a)の中央部が上記ハンガー軸(21)の下端部へ水平な枢支軸(23)を介して、揺動自由に組み付けられたものである。
【0054】
(24a)(24b)は互いに干渉しない位置関係での複数として、上記ボール鍋(5)の内部へ差し込み使用される固定抵抗羽根であり、これらも好ましくは上記回転攪拌羽根(20)と同じ合成樹脂材から、ヘラ板型に造形されている。しかも、回転攪拌羽根(20)と干渉しない配置・方向性のもとで、上記据付け機筐(1)のテーブル(2)上へ各々ハンガーアーム(25a)(25b)と支持スタンド(26a)(26b)を介して取り付けられている。
【0055】
そのため、上記ボール鍋(5)の内部へ差し込み使用された回転攪拌羽根(20)を、その駆動モーター(15)によって回転させれば、これと固定抵抗羽根(24a)(24b)との協働作用により、後述の湯種原料(m1)をその湯種生地作成工程での水和から、引き続く混捏に至るまで効率良く遂行することができる。
【0056】
更に、(T)は後述する湯種生地の加熱温度測定用感温部(温度センサー)を備えた無線送信機であり、図4に抽出して示すような金属製の筐胴(27)と、その開口両端部へ各々防水用のOリング(28)(29)を介して、開閉可能に螺合締結された金属製の口金(30)並びに合成樹脂製のキャップ(31)と、その円錐状口金(30)の中心部から一体的に突出する細長い金属製のノーズ管(32)とから、全体的なほぼ注射器型又は手廻しドライバー型に組み立てられていると共に、その湯種生地の中へ差し込み使用されることとなるノーズ管(32)の先端部に、サーミスターや測温抵抗箔、熱電対箔などの接触式温度センサー(33)が取り付けられている。
【0057】
図例の物理的な構造では、上記筐胴(27)にマイクロコンピューターが実装された基板(34)とその駆動源の電池(35)を、上記キャップ(31)にワイヤー状の送信アンテナ(36)を各々内蔵しているが、上記筐胴(27)もキャップ(31)と同様な合成樹脂製として、その基板(34)の板面へループ状や平面状の送信アンテナ(36)を埋設することにより、送信機(T)の全体的な小型・軽量化を図っても良い。(37)は上記温度センサー(33)と基板(34)とを接続する伝送線である。
【0058】
このような送信機(T)は図7、8に示す如く、その筐胴(27)に予じめ嵌め付け固定された抜け止めリング(38)と、眼鏡型の取付用具(39)を使って、上記生地焦げ付き防止用回転攪拌羽根(20)のハンガー軸(21)へ着脱自在に、且つその攪拌羽根(20)の回転軸線と一定の間隔距離(d)を保つほぼ平行な下向き姿勢状態に取り付けられ、上記回転攪拌羽根(20)の周囲をこれとの一体的に公転運動し乍ら、その湯種生地の中へ差し込まれた下端部の接触式温度センサー(33)によって、湯種生地の加熱温度を直かに測定・検知する。その温度センサー(33)は約300℃まで使用できるものである。
【0059】
(40)は上記筐胴(27)に対する抜け止めリング(38)の押し付け固定ビス、(41)は送信機(T)の取付用具(39)を上記回転攪拌羽根(20)のハンガー軸(21)へ押し付ける固定ビスであり、その取付用具(39)へ上方から抜け止めリング(38)が係止して、送信機(T)を脱落不能に保持することになるが、その送信機(T)は取付用具(39)の受け入れ口(42)に対して、上方から抜き差し自在に差し込むことができる。
【0060】
上記回転攪拌羽根(20)に対する送信機(T)の取付部には、就中送信機(T)の筐胴(27)や抜け止めリング(38)と上記取付用具(39)との接触部には、その送信機(T)の取付姿勢状態を検知するスイッチ(43)(図9の入力部参照)が設置されており、その取付姿勢状態の正確である時に出力するスイッチ・オン信号(デジタル信号)がマイクロコンピューターのCPU(44)へ入力されて、通常では休止状態にあるCPU(44)がプログラム動作し始めるようになっている。そのスイッチ(43)としてはリミットスイッチやマイクロスイッチなどを採用することができる。
【0061】
他方、(R)は上記送信機(T)と対応する受信機であって、図5、6に抽出して示すような合成樹脂製のボックス(45)に、マイクロコンピューターが実装された基板とその駆動用の電源ユニット(図示省略)を内蔵しているほか、そのボックス(45)の正面に並ぶ測定温度表示部(LED又は液晶パネル)(46)と目標温度設定ボタン(47)や、同じくボックス(45)の背面から突出する受信アンテナ(48)と配線用コネクター(49)も具備している。
【0062】
このような受信機(R)は図7に示す如く、上記生地加熱攪拌機の据付け機筐(1)から一体的に立設された支持スタンド(50)の上面へ、その正面の測定温度表示部(46)を見やすく、同じく目標温度設定ボタン(47)を操作しやすい姿勢状態に取り付け固定される。但し、上記加熱用操作パネル(10)に組み込み一体化して、高周波電源(インバーター)(7)と電気的に接続配線しても良く、その際には目標温度設定ボタン(47)を操作パネル(10)に設置する。
【0063】
図9は上記送信機(T)と受信機(R)の機能を示すブロック図であって、送信機(T)は加熱源を制御するためのコードを生成する上記CPU(44)のほかに、そのCPU(44)へ湯種生地の温度測定信号を送信する上記温度センサー(33)と、CPU(44)により生成されたコードを有するデジタル信号を変調・増幅し、高周波として送信する送信部(高周波送信モジュール)(51)並びに送信アンテナ(36)も具備しており、上記CPU(44)のROMには送信機(T)毎に予じめ割り付けられた固有のIDコードが記憶されている。
【0064】
そして、通常では休止状態にあるマイクロコンピューターのCPU(44)が、上記スイッチ(入力部)(43)からの検知出力信号(デジタル信号)を受けてプログラム動作し始め、その内蔵する電池(電源電圧)(35)の消耗度や基板(34)自身の昇温状態、その他の異常を判別するのみならず、上記湯種生地の温度センサー(33)から測定出力される信号(固定小数点式のアナログ信号)をサンプリングして、その湯種生地の温度データを取得すると共に、上記固有のIDコードも含む必要なコードを生成し、そのデジタル信号を送信部(51)での高周波として、上記湯種生地の温度が測定・検知されている間に、送信アンテナ(36)から一定時間毎の間歇的に送信する。(52)はその送信アンテナ(36)から送信される無線(微弱の電波)信号を示唆している。
【0065】
茲に、無線送信の間歇周期となる一定時間は、1000分の1秒程度であることが好ましい。これよりも長く確保し過ぎると、上記CPU(44)の駆動源である電池(35)が早期に消耗してしまうほか、作業場内に複数の生地加熱攪拌機(A)が並列設置されているような場合、その加熱攪拌機(A)毎の送信機(T)から送信される無線信号(52)同志の干渉を招来しやすくなるからである。
【0066】
更に言えば、上記送信機(T)と受信機(R)との相互間において、信号の授受(双方向通信)を行なわせることにより、何れか一方からの指令信号を受けるまで、他方を休止状態に保って、上記電池(35)の消耗を予防したり、又上記CPU(44)の動作プログラムに、ランダム関数(乱数)での処理も加えて、その無線信号(52)の送信タイミングを自づと変化させることにより、上記干渉を予防したりすることが望ましい。
【0067】
このような送信機(T)と対応する受信機(R)は上記無線信号(52)の受信アンテナ(48)と、その受信した無線信号(52)を復調・増幅して、これから上記温度データとIDコードが含まれた加熱源の制御に必要な生成コードを取り出す受信部(高周波受信モジュール)(53)と、その生成コードを解析して、どの送信機(T)からの送信であるかを判別するCPU(54)と、そのCPU(54)が記憶しているIDコードとの対応合致した比較結果に基き、上記加熱源の制御信号を出力する出力部(55)とを有している。
【0068】
そして、その送信機(T)と受信機(R)との相互間における無線信号(52)の間歇的な送・受信中、送信機(T)の温度センサー(33)により測定・検知される湯種生地の加熱温度が、受信機(R)又は操作パネル(10)の目標温度設定ボタン(47)により予じめ設定されている目標温度に到達すると、その受信機(R)の出力部(55)から出力される制御信号により、上記ボール鍋(5)の加熱源である電磁誘導加熱コイル(6)の高周波電源(インバーター)(7)が図10のようにオフ制御されて、その電磁誘導加熱コイル(6)に対する高周波電流の供給が自づと停止されるのであり、そのため湯種生地の過熱を確実に予防することができる。その湯種生地の加熱温度が目標温度に到達するまでの間、上記高周波電源(インバーター)(7)はオン状態を保ち、湯種生地の加熱作用を持続することは勿論である。
【0069】
図1〜10の基本実施形態では、ボール鍋(5)の加熱源として電磁誘導加熱コイル(6)を使用し、その電磁誘導加熱コイル(6)へ高周波電源(インバーター)(7)から高周波電流を供給するようになっているが、その誘導加熱方式に代る赤外線加熱方式やその他の電気加熱方式をボール鍋(5)の加熱源として採用することも可能である。
【0070】
又、図10と対応する図11の変形実施形態に示す如く、上記ボール鍋(5)の加熱源をガスの直火として、その底面に臨むガスバーナー(56)へ、図外のガス供給源(元栓)からガスを供給するように構成することもできる。
【0071】
そして、この場合にはガス供給管路(57)の途中にガス遮断弁(58)と比例弁(59)とを、並列回路として介挿設置すると共に、そのうちの比例弁(59)だけをやはり上記受信機(R)からの制御信号によって、予じめ設定されている最小火力(温度)まで、そのガスの直火を弱めるように制御するのである。そうすれば、ガスバーナー(56)の炎が消失せず、そのガスバーナー(56)の再点火を必要としない利点があり、安全性の向上にも役立つ。
【0072】
尚、図11の符号(VR1)(VR2)はガスバーナー(56)の通常火力と最小火力を各々予じめ設定するための手動ボリューム、図10、11に共通する符号(X1)は上記受信機(R)に接続配線されたリレーであり、目標温度に到達するまではオン作用を保ち、目標温度に到達した時オフ作用するようになっている。
【0073】
次に、図12〜28は本発明の湯種製パン方法に用いる生地搗き機(B)を示しており、(60)は作業床への据付け機筐、(61)はその据付け機筐(60)の下段位置に内蔵された横型の杵駆動モーターであって、その出力軸(62)には駆動プーリー(63)が嵌め付け一体化されている。その杵駆動モーター(61)の最高回転速度は約91r.p.m(50Hz)又は約83r.p.m(60Hz)である。
【0074】
(64)(65)は杵駆動モーター(61)の出力軸(62)と平行な水平状態のもとで、上記据付け機筐(60)内の上段位置と中段位置へ各々回転自在に支架された従動軸と中間軸であり、その中間軸(65)上へ各々一体回転し得るように並列設置された径大な第1中間プーリー(66)と径小な第2中間プーリー(67)とのうち、その第1中間プーリー(66)が径小な上記駆動プーリー(63)と第1伝動ベルト(68)を介して連繋されている。
【0075】
他方、上記従動軸(64)上には径大な従動プーリー(69)がやはり一体回転し得るように嵌め付けられており、これと中間軸(65)上の径小な第2中間プーリー(67)とは、第2伝動ベルト(70)を介して連繋されている。(71)は上記中間軸(65)を進退操作するネジ杆から成るベルトテンショナーである。
【0076】
又、(72)は上記従動軸(64)の一端部へ一体回転し得るように嵌め付けられたフライホイールであり、その従動プーリー(69)よりも径大な周縁部にはウエイト(73)が付属固定されている。(74)は同じくフライホイール(72)の周縁部において、そのウエイト(73)と約180度に向かい合う位置へ、水平な支点軸(75)により枢着されたクランクアームであり、上記フライホイール(72)の回転運動に連れて一定ストローク(S)だけ昇降作用する。(76)はそのクランクアーム(74)の下端部に固着されたベアリングケースであり、上記支点軸(75)のラジアルベアリング(77)を内蔵している。
【0077】
(78)は同じくクランクアーム(74)の上端部に固着されたベアリングケースであり、その内部にはこれを貫通する水平な支点軸(79)のラジアルベアリング(80)が設置されている。しかも、その支点軸(79)の一端部には杵昇降軸(81)の上端部を連結するための割り型締付メタル(82)(83)が設置されており、これを緩めて、杵昇降軸(81)の取付高さを調整した上、再度締め付け固定することができるようになっている。
【0078】
つまり、その割り型締付メタル(82)(83)の一方は受けメタル(82)として、上記支点軸(79)の一端部に固着されており、残る他方は別個独立の押えメタル(83)として、その両者の向かい合う相互間に受け入れ挟持した杵昇降軸(81)の上端部を、並列する複数の固定ボルト(84)によって締め付け固定するようになっているのである。
【0079】
(85)は上記押えメタル(83)の中央部から杵昇降軸(81)に向かって螺入された位置決めボルトであり、これによって杵昇降軸(81)を仮止め状態に位置決めした上、上記固定ボルト(84)を締め付け固定することにより、その杵昇降軸(81)の取付高さを安楽に能率良く昇降調整作業できるようになっている。
【0080】
上記杵昇降軸(81)は据付け機筐(60)の軒先状上筐部(60a)を貫通する垂立状態にあり、その下端部に付属一体化された生地搗き(加圧)用の杵(86)が、据付け機筐(60)の外部に露出する。又、杵昇降軸(81)の中途高さ位置は上筐部(60a)に内蔵する上下一対づつ合計4個の合成樹脂製遊転ガイドローラー(87)(88)によって、正しく昇降運動し得るように挟持されている。(89)(90)は各遊転ガイドローラー(87)(88)のローラー支軸であり、その受けブラケット(91)(92)を介して上筐部(60a)内のベースプレート(93)(94)に取り付け固定されている。
【0081】
そして、上記杵(86)は杵昇降軸(81)との一体的に一定ストローク(S)だけ直進的に昇降運動するばかりでなく、その杵昇降軸(81)の下端部へ遊転することもできるように取り付けられているのである。
【0082】
即ち、その杵(86)の取付状態を抽出して示した図22において、(95)(96)は上記杵昇降軸(81)の下端部に加工された上下一対のストッパー段面であり、これによってその杵昇降軸(81)の下端部が径小軸部(81a)と、その下方に連続する最径小軸部(81b)とから成る段付き形態を呈していると共に、その最径小軸部(81b)には雄ネジ(97)が刻設されてもいる。
【0083】
(98)はこのような杵昇降軸(81)の下端部へ下方から差し込み套嵌されたベアリングケースであり、その胴筒(98a)の上端部からは支持フランジ(98b)が外向きに、又同じく胴筒(98a)の中途高さ位置からは仕切りフランジ(98c)が内向きに、各々張り出されている。
【0084】
(99)はその仕切りフランジ(98c)よりも上側にあって、杵昇降軸(81)の径小軸部(81a)とベアリングケース(98)との相互間に介挿された第1スラストベアリングであり、その上面が杵昇降軸(81)の上側ストッパー段面(95)によって受け止められている。(100)はその第1スラストベアリング(99)の上面を密封する如く、ベアリングケース(98)と杵昇降軸(81)との相互間に介挿されたオイルシールである。
【0085】
又、(101)は同じく仕切りフランジ(98c)よりも下側にあって、やはり杵昇降軸(81)の径小軸部(81a)とベアリングケース(98)との相互間に介挿された第2スラストベアリングであり、その下面がディスタンスカラー(102)の水平なフラット面によって受け止められている。
【0086】
(103)(104)はそのディスタンスカラー(102)よりも下方位置にあって、同じく杵昇降軸(81)の径小軸部(81a)とベアリングケース(98)との相互間へ、積み重ね状態に介挿された第1、2ラジアルベアリングであり、その上側の第1ラジアルベアリング(103)が上記ディスタンスカラー(102)の円錐面によって規制されている。
【0087】
(105)は上記杵昇降軸(81)の最径小軸部(81b)へ下方から差し込まれたベアリング受けキャップ、(106)は更に下方から差し込まれたバネ座金、(107)は上記最径小軸部(81b)の雄ネジ(97)へ下方から螺合締結された固定ナットである。
【0088】
更に、(86a)は上記杵(86)の胴筒であって、その杵昇降軸(81)の下端部と上記ベアリングケース(98)の胴筒(98a)を包囲する断面ほぼU字型に造形されており、その杵(86)における胴筒(86a)の上端部から内向きに張り出す取付フランジ(86b)が、上記ベアリングケース(98)の支持フランジ(98b)へ下方から接合され、且つ上方から螺入される貫通ボルト(108)の複数によって、そのベアリングケース(98)と固定一体化されている。(109)はその接合面を封止するためのOリングである。
【0089】
つまり、杵(86)はその胴筒(86a)とベアリングケース(98)との組立体から成り、上記第1、2ラジアルベアリング(103)(104)を介して、杵昇降軸(81)の下端部へ垂直軸線廻りの遊転自在に、且つその下端部を被覆する状態に套嵌されているわけである。
【0090】
しかも、上記杵(86)における胴筒(86a)の表面全体には、生地離形用となる一定厚みのフッソ樹脂コーティング皮膜(110)が被着一体化されており、これも含む胴筒(86a)の外径が、上記ベアリングケース(98)における支持フランジ(98b)の外径と同一に寸法化されていることは、言うまでもない。
【0091】
他方、(111)は上記杵(86)の真下位置に正しく臨む臼であって、約45リットルの容量を有するほぼ受け椀型に鋳造されており、その底面の中心部が下向きに張り出す取付座盤(112)として厚肉化されている。(113)は臼(111)における内底面の周辺部から、図27のような平面視の放射対称分布型として隆起された複数の生地滑り止め用弯曲凸条であり、一定の長さと高さ(例えば約10mm)を有し、後述する本捏作用工程でのパン生地が臼(111)との相対的に空転することを防ぎ、臼(111)と連れ廻るように定める。尚、臼(111)の就中内底面にはフッソ樹脂コーティング皮膜(図示省略)を被着一体化することが好ましい。
【0092】
このような臼(111)は上記据付け機筐(60)に内蔵された竪型の臼駆動モーター(114)により、その垂直軸線廻りに回転駆動されるようになっている。その臼駆動モーター(114)の最高回転速度は約72r.p.m(60Hz)又は約66r.p.m(50Hz)である。
【0093】
即ち、その臼(111)の回転駆動系統が明らかな図23、24において、(115)は上記杵昇降軸(81)との同一垂直軸線上に位置しつつ、据付け機筐(60)の下筐部(60b)内に立設された臼回転軸であり、その上端の径小軸部(115a)には上記臼(111)の取付座盤(112)と対応する回転受け盤(116)が、カラー(117)と固定ボルト(118)を介して嵌め付け一体化されている。
【0094】
そして、その臼(111)の取付座盤(112)と臼回転軸(115)上の回転受け盤(116)とが、複数の固定ボルト(119)によって一体回転し得るように連結されている。(120)は上記下筐部(60b)の水平な上面に取り付け固定された台板であり、上記回転受け盤(116)とその台板(120)との上下相互間に介在する固定シールケース(121)が、臼回転軸(115)に差し込み套嵌されている。(122)はその内部に封入された複数のオイルシールである。
【0095】
又、(123)は上記台板(120)へ下方から複数の固定ボルト(124)を介して取り付けられたベアリングケースであり、その内部に設置された複数のラジアルベアリング(125)によって、臼回転軸(115)を安定良く回転できるように支持している。その臼回転軸(115)の下端部は、これに加工された上下一対のストッパー段面(126)(127)によって、径小軸部(115a)とその下方に連続する最径小軸部(115b)とから成る段付き形態を呈している。
【0096】
そして、その臼回転軸(115)の径小軸部(115a)へ一体回転し得るように嵌め付けられた径大な従動プーリー(128)が、図23、24のように上記臼駆動モーター(114)から垂下する出力軸(129)の下端部に設置された駆動プーリー(130)と、同一高さ位置に対応しており、その駆動プーリー(130)と従動プーリー(128)との相互間に伝動ベルト(131)が巻き掛けられているのである。
【0097】
(132)は臼回転軸(115)の上側ストッパー段面(126)と相俟って、上記従動プーリー(128)を受け止めるように、その臼回転軸(115)の径小軸部(115a)に套嵌されたフランジユニットであり、その内部のラジアルベアリング(133)によって、臼回転軸(115)をやはり回転自在に支持している。
【0098】
(134)は同じく臼回転軸(115)の最径小軸部(115b)へディスタンスカラー(135)を介して套嵌されたスラストベアリングであり、そのベアリングケース(136)がベースプレート(137)によって、上記据付け機筐(60)の下筐部(60b)に取り付け固定されている。(138)は上記フランジユニット(132)とベアリングケース(136)との固定ボルトを示している。
【0099】
更に、(139)は上記臼(111)の内部へ差し込み使用される生地反転用の固定抵抗羽根であり、図25、26に抽出して示すような鋳鉄製品として、基端部の取付座(140)と、その中央部から臼(111)の内壁面とほぼ平行して滑らかに弯曲する羽根板片(139a)と、その羽根板片(139a)の先端部から内向き連続的に張り出す丸棒片(139b)とを有する全体的なフック型に造形されている。しかも、その表面全体にはフッソ樹脂コーティング皮膜(図示省略)が施されてもいる。
【0100】
(141)は上記取付座(140)に切り欠かれた横向き開口する位置決め用キー溝、(142)は同じく取付座(140)に切り欠かれた下向き開口する軸受け溝であり、そのキー溝(141)から上記据付け機筐(60)の対応的なネジ孔(図示省略)へ位置決めボルト(143)を植え付けた後、上記軸受け溝(142)から据付け機筐(60)の対応する別なネジ孔(図示省略)へ、回動ロックハンドル(144)のネジ軸部(144a)を締め付けることにより、上記固定抵抗羽根(139)を臼(111)への正しい差し込み使用状態として、上記据付け機筐(60)の前上がり傾斜壁面部(60c)へ着脱自在に取り付けることができるようになっている。
【0101】
そして、このような使用状態では図27、28に示す如く、固定抵抗羽根(139)の羽根板片(139a)が据付け機筐(60)から、臼(111)の回転進行方向(F)と順応する前下がり傾斜姿勢に差し込まれて、その先端部(前下端部)の丸棒片(139b)が内向き円弧状に張り出すこととなる。
【0102】
(W)はその固定抵抗羽根(139)の羽根板片(139a)と、臼(111)の内壁面との相互間隔距離であり、狭くとも約10mmに確保されている。又、(H)は上記丸棒片(139b)の先端部(前下端部)と、臼(111)の内底面との上下相互間隔距離、(D)は同じく丸棒片(139b)の先端部(前下端部)と、下降時における杵(86)の円周面との左右相互間隔距離であり、その上下相互間隔距離(H)が例えば約20mm、左右相互間隔距離(D)が例えば約20mmとして、上記固定抵抗羽根(139)が臼(111)や杵(86)と干渉しないようになっている。
【0103】
その結果、後述する湯種製パン用の本捏原料(m2)を臼(111)に投入した上、その臼(111)を本捏作用工程において図27の矢印方向(F)へ回転駆動すれば、その回転進行に連れて、パン生地が自づと上記固定抵抗羽根(139)の羽根板片(139a)に当って切り返されたり、やがてはその羽根板片(139a)に巻き付き反転されたりし乍ら、徐々に前下方へ押し進められると共に、その前下端部(先端部)の丸棒片(139b)によって臼(111)の回転中心部へ寄せ集め誘導され、杵(86)の反復的な加圧作用を洩れなく受けて、全体の均一に効率良く混捏されるのである。
【0104】
その場合、上記ノーズ管(32)の先端部に接触式温度センサー(33)が付属する無線送信機(T)と、その対応的な上記受信機(R)とを生地搗き機(B)にも適用して、図29の変形実施形態に示す如く、上記送信機(T)を臼(111)の厚肉な取付座盤(112)又は回転受け盤(116)へ着脱自在に、且つその臼(111)と一体的に公転運動し得るように取り付け、上記送信機(T)のノーズ管(32)を臼(111)における内底面の偏心部、就中その生地滑り止め用弯曲凸条(113)の周辺部へ下方から差し込んで、本捏作用工程におけるパン生地の捏ね上げ温度を直かに測定・検知することが好ましい。
【0105】
そして、その捏ね上げ温度が予じめ設定された後述の目標温度に達した時、受信機(R)から出力する制御信号により、上記杵駆動モーター(61)の回転と臼駆動モーター(114)の回転を自づと停止させるのである。図30はその制御回路を示しているが、更に図31の別な制御回路から明白なように、臼駆動モーター(114)の回転作用時間と杵駆動モーター(61)の回転作用時間を各々タイマー(T1)(T2)により予じめ設定できるようにするならば、後述の本捏作用工程における臼(111)だけの回転運動から、引き続く杵(86)の昇降運動も始まるように自動一連化し得る利点がある。図30、31の符号(Mg1)(Mg2)はマグネットスイッチ、(X1)はリレーである。
【0106】
尚、この場合の受信機(R)は生地搗き機(B)の後述する操作パネル(149)に組み込み一体化して、上記杵駆動モーター(61)並びに臼駆動モーター(114)の制御基板(モーターコントローラー)(図示省略)と電気的に接続配線するか、又はその生地搗き機(B)の据付け機筐(60)へ適当な取付金具を用いて固定設置すれば良い。
【0107】
上記のように生地搗き機(B)の運転を自動停止させること以外の構成や作用は、既述の生地加熱攪拌機(A)に適用した送信機(T)と受信機(R)のそれと異ならないため、その図29〜31に図4、10、11との対応する同じ符号を記入するにとどめて、その送信機(T)と受信機(R)の詳細な説明を省略する。
【0108】
図29の符号(145)は上記ノーズ管(32)の中途部から一体的に張り出す係止フランジ、(146)は同じくノーズ管(32)を臼(111)の底面へ取り付ける口金であり、その先端部の温度センサー(33)を上記生地滑り止め用弯曲凸条(113)よりも背低い高さに固定維持している。(147)は上記口金(146)に螺合締結されたキャップナット、(148)は水密用Oリング、(149)は生地搗き機(B)の据付け機筐(60)に設置された操作パネル、(150)は臼(111)の真上位置において、杵(86)を包囲する安全カバーであり、その臼(111)の内部を透視できる金属線材から開閉自在に組み立てられている。
【0109】
上記臼(111)の回転駆動中に、その回転中心部を生地搗き用の杵(86)が昇降運動して、本捏作用工程でのパン生地に加圧力を付与することになるが、その杵(86)による下降時の下面と、臼(111)の内底面との相互間には、広くとも約10mmの一定間隙(C)が確保されている。その一定間隙(C)が約10mmよりも広大であると、杵(86)による搗き(加圧)回数や時間を増したとしても、その加圧力がパン生地の混捏作用として効果的に働かないからである。
【0110】
この点、上記杵(86)はその杵昇降軸(81)の下端部へ、ラジアルベアリング(103)(104)を介して遊転自在に套嵌されているため、その下降時には臼(111)との上下相互間に挟み付けられるパン生地を介して、杵(86)が臼(111)と一緒に連れ廻る如く遊転することとなり、その生地を過大に加圧して摺り切る如く、グルテンの網状組織を破壊するおそれがなく、又生地を高熱に発熱させる如く、その強力に摩擦するおそれもない結果、上記一定間隙(C)を約10mm以下として極力狭小に設定することにより、上記生地反転用固定抵抗羽根(139)とも相俟って、短時間での効率良く混捏作用できるようになっているのである。
【0111】
その広くとも約10mmにとどまる限りでは、上記杵昇降軸(81)の上端部を水平な支点軸(79)に対して昇降させ、割り型締付メタル(82)(83)で固定し直すことにより、その一定間隙(C)を本捏原料(m2)の収容単位量に応じて広狭調整することができる。茲に、一定間隙(C)が零として皆無であると、言うまでもなく杵(86)が下降時に臼(111)と衝当し、その臼(111)の回転運動に抵抗を与え、停止させるおそれがあるため、その僅小でも間隙(C)を確保する必要がある。
【0112】
但し、本発明の生地搗き機(B)としては、その本捏作用工程でのパン生地を杵(86)により加圧し得る限り、上記回転駆動される臼(111)に代る固定状態の臼(111a)を採用しても良い。
【0113】
図32、33はその生地搗き機(B)の別な変形実施形態を示しており、この場合上記杵(86)と臼(111a)との一定間隙(C)を確保する必要性はないが、その臼(111a)は据付け機筐(60)に固定設置されているため、上記生地反転用の固定抵抗羽根(139)に代る回転羽根(151)の向かい合う一対を採用して、その両回転羽根(151)と杵(86)との協働作用により、パン生地を混捏するのである。
【0114】
しかも、上記生地反転用回転羽根(151)の各個を図34〜36に抽出して示すような擬似Z字型として、そのボス(152)から両羽根板片(151a)を相反する内向きに折り曲げると共に、その折り曲げ先端部に丸味を与えて、グルテンの網状組織を破壊しないように造形する。
【0115】
そして、このような生地反転用回転羽根(151)を臼(111a)の内部に張り出す向かい合う一対として、その臼(111a)と据付け機筐(60)へ各々水平な支軸(153)により、回転自在に設置すると共に、その両回転羽根(151)を対応的な一対の羽根駆動モーター(154)により、相反する方向(f)へ回転させれば、上記臼(111a)の中心部を昇降運動する杵(86)の加圧作用とも相俟って、パン生地の全体をやはり効率良く均一に混捏することができる。
【0116】
尚、この変形実施形態の臼(111a)は固定されているため、上記無線送信機(T)と受信機(R)は不要であり、そのパン生地の接触式温度センサー(33)だけを独立して、臼(111a)の底面へ下方から差し込み設置すれば良い。(155)は上記支軸(153)を回動中心として、臼(111a)を図33の鎖線に示す如く転倒させるための手動操作ハンドルであり、上記パン生地の取り出しに役立つ。その他の構成と作用は図12〜28の生地搗き機(B)と実質的に同一であるため、その図32、33に図12〜28との対応符号を記入するにとどめて、その変形実施形態の詳細な説明を割愛する。
【0117】
本発明の湯種製パン方法では図37に示す従来の竪型ミキサー(a)と異なり、上記ボール鍋(15)の底面に臨む電気又はガスの加熱源が装備された生地加熱攪拌機(A)と、上記臼(111)の底面に向かって直進的に往復運動する杵(86)が装備された生地搗き機(B)とを用いて、次の工程順序により製パン作業するのである。
【0118】
〈湯種生地作成工程〉
即ち、先ず湯種生地作成工程では本発明に係る製パン生地に必要な小麦粉100重量部のうち、その20〜30重量部の小麦粉を使用して、これとイースト以外の各種副原料(糖類や調味料など)とを湯種原料(m1)として、上記生地加熱攪拌機(A)のボール鍋(15)へ、その小麦粉20〜30重量部の2.0倍〜2.5倍に相当する水(常温)と一緒に投入した上、生地加熱攪拌機(A)の電磁誘導加熱コイル(6)又はガスバーナー(56)により加熱し乍ら、その加熱攪拌機(A)の生地焦げ付き防止用回転攪拌羽根(20)と生地反転用固定抵抗羽根(24a)(24b)との協働作用により混捏して、その捏ね上げ温度が75℃〜95℃、好ましくは80℃〜85℃の湯種生地を作成する。この作成工程では、回転攪拌羽根用駆動モーター(15)の回転速度を約45r.p.m の低速として、ゆっくり回転させることが好ましい。
【0119】
その場合、湯種生地を作成するために使う小麦粉が20重量部未満であると、澱粉のα化する絶対量も少なくなるため、折角の湯種製パン方法による独特のモチモチした食感を得ることができず、その自動機械的な混捏作用を効果的に働かせることもできない。そして、逆に30重量部を越えると、グルテンタンパク質の熱変性が過多となり、ガス保持力が低下して、ボリューム感に富む製品を得られない。
【0120】
又、このような小麦粉20〜30重量部に対する水の混合比率(加水率)が2.0倍未満であると、本発明における湯種生地の捏ね上げ温度が75℃〜95℃(好ましくは80℃〜85℃)として高いこととの相関々係上、澱粉のα化が高速に進み過ぎるため、湯種生地が早く硬化し、その発生したダマを後続の本捏作用時間中において、完全に解消することもできなくなる。
【0121】
上記混合比率(加水率)が逆に2.5倍を越える場合には、湯種生地としてまとまり団塊化し難く、その小麦粉の水和・混捏作用に長時間を要するほか、風味の低下やケービング現象を招来しやすくなる。
【0122】
これを換言すれば、75℃〜95℃(好ましくは80℃〜85℃)に設定された湯種生地の高い捏ね上げ温度は、その独特のモチモチした食感を得ることに役立つが、その湯種生地の作成上使用される小麦粉20〜30重量部に対する水の混合比率(加水率)も、2.0倍〜2.5倍として多いため、澱粉のα化が高速に進んでも、急激に硬くならず、その湯種生地の高い吸水率によって、ソフトな解けやすい結合状態に捏ね上がり、これが後続する本捏作用工程でのパン生地中へ円滑に分散され、ダマとして残るおそれがないのである。
【0123】
この点、本発明ではボール鍋(15)の底面に臨む電磁誘導加熱コイル(6)又はガスバーナー(56)の加熱源と、そのボール鍋(15)の内底面にフイットする生地焦げ付き防止用の回転攪拌羽根(20)と、これと協働する生地反転用の固定抵抗羽根(24a)(24b)とが具備された生地加熱攪拌機(A)とを用いて、上記湯種生地を作成するようになっているため、その加熱作用と混捏作用との同時進行により、決して冷めることなく、上記湯種生地作成に要する時間と労力を著しく節減できることとなる。
【0124】
先には、20〜30重量部の小麦粉と、イースト以外の各種副原料と、2.0倍〜2.5倍の水とを一緒に、生地加熱攪拌機(A)のボール鍋(15)へ投入する旨として説明したが、そのボール鍋(15)に水だけを投入して加熱し、一定温度(例えば約80℃)まで昇温した後に、小麦粉と副原料とを加入して、その加熱を続行し乍ら、回転攪拌羽根(20)と固定抵抗羽根(24a)(24b)により、最後まで混捏作用しても勿論良い。
【0125】
尚、上記生地加熱攪拌機(A)における回転攪拌羽根(20)の回転軸線上へ、湯種生地の接触式温度センサー(33)付き無線送信機(T)を取り付け使用し、これと対応する受信機(R)又は加熱用操作パネル(10)の目標温度設定ボタン(47)により、上記湯種生地の目標とする捏ね上げ温度を予じめ設定しておき、その目標の捏ね上げ温度に達した時上記ボール鍋(15)の底面に臨む加熱源の加熱作用を自動停止させるように制御するならば、その湯種生地の焦げ付くおそれも確実に予防することができ、ますます有益である。
【0126】
そして、何れにしても上記捏ね上げ温度の湯種生地を得られたならば、粗熱を取った後、透明のビニールフィルムなどにより包装して、約−3℃〜10℃の冷蔵庫へ保管し、約16時間熟成させるのである。そうすれば、湯種生地を良好な保水状態に維持することができ、爾後の本捏作用工程において加入される本捏原料(m2)と混然一体化した膨潤性に富むパン生地を得られることになる。
【0127】
〈本捏作用工程〉
次に、本捏作用工程では上記保管・熟成後の湯種生地と、小麦粉の残部(80〜70重量部)並びにショートニングやバター以外の各種副原料(イーストやイーストフード、乳化剤、油脂類、糖類、ビタミン、乳製品など)とを本捏原料(m2)として、上記生地加熱攪拌機(A)と別個な生地搗き機(B)の臼(111)へ、適当量の水と一緒に投入した上、その臼(111)を回転させることにより、一旦本捏原料(m2)の就中小麦粉が水和状態になるまで混練する。その際、臼駆動モーター(114)の回転速度は約66〜72r.p.m として、定速回転させることが好ましい。生地搗き用の杵(86)は未だ上死点での停止中にある。
【0128】
そうすれば、臼(111)の回転運動とその内部へ差し込まれている固定抵抗羽根(139)の生地反転作用により、上記本捏原料(m2)における主要な小麦粉の水和・混練作用が効率良く促進され、その小麦粉粒子の表面には水が万遍なく付着すると共に、同じく粒子の内部には水が徐々に浸透し、やがて上記湯種生地と混然一体に親和・粘結した1個の団塊となる。
【0129】
そこで、このような水和・混練状態に達したならば、上記臼(111)の回転作用を続行し乍ら、生地搗き用の杵(86)を昇降運動させて、上記本捏原料(m2)の団塊を上方から繰り返し搗く(加圧する)ことにより混捏し、その捏ね上げ温度が25℃〜30℃、好ましくは26℃〜28℃のパン生地に仕上げるのである。
【0130】
その場合、杵駆動モーター(61)の回転速度は上記臼駆動モーター(114)のそれよりも速く、約83〜91r.p.m として定速回転させることが望ましい。又、上記水和・混練状態の到達時点(杵の運動を開始するまでの時間)は、その臼(111)に対する本捏原料(m2)の収容量を考慮した作業者の経験により、操作パネル(149)の上記タイマー(T1)(T2)により予じめ設定しておけば良い。
【0131】
上記本捏原料(m2)の混捏作用中、その団塊は臼(111)と一緒に連れ廻り乍ら、固定抵抗羽根(139)の生地反転作用を受けると共に、その抵抗羽根(139)により臼(111)の中心部へ自づと寄せ集め誘導されて、杵(86)により上方から万遍なく加圧されることになるため、爾前での表面に付着した水が内部へ押し込め浸透され、その水を完全に吸収した最終的には、小麦粉の持つ強い粘弾性が効率良く引き出される結果となり、膨潤度や保水性に富むソフトな捏ね上げ状態のパン生地を得られるのである。
【0132】
又、下降時における杵(86)の下面と、臼(111)の内底面との相互間隙(C)は、広くとも約10mmとして狭小に設定されているため、杵(86)の強大な加圧力をパン生地へ効果的に付与することができ、それにも拘らず杵(86)は臼(111)との上下相互間で挟み付けた生地と一緒に連れ廻る如く、遊転し得るようになっているため、そのパン生地に対する摺り切り力や摩擦力が自づと逃がされることとなり、その結果混捏作用中にあるグルテンの網状組織を破壊したり、或いはイーストの熱失活を招く程の高温に発熱させたりするおそれもない。
【0133】
つまり、パン生地における25℃〜30℃(好ましくは26℃〜28℃)の捏ね上げ温度は、主にイーストを活発に働かせるための数値として設定されたものである。尚、上記生地搗き機(B)における臼(111)の偏心部へパン生地の接触式温度センサー(33)付き無線送信機(T)を取り付け使用し、これと対応する受信機(R)又は操作パネル(149)の目標温度設定ボタン(47)により、上記パン生地の目標とする捏ね上げ温度を予じめ設定しておき、その捏ね上げ温度に達した時生地搗き機(B)の運転を自動停止させるように制御することが好ましい。
【0134】
上記本捏作用工程での混捏作用により、最終的な捏ね上げ温度のパン生地を得られたならば、その後には常法の工程である醗酵(フロア、ベンチ、ホイロ)や分割、丸め成型などを経て、加熱(焼成、フライ、蒸し上げ)する。そうすれば、モチモチ感としっとり感のみならず、ソフト感や口溶けの良好さ、甘味、その他の食感をも含む総合品質として、優れた食パンや菓子パン、調理パンなどの各種製品を得ることができる。
【0135】
その場合、本発明の湯種製パン方法は湯種生地作成工程での加水率が非常に高いため、食パンに限ってはクラストが薄くなり、ケービング現象を起しやすい。その対策として、加水率を低下させると、湯種生地の独特な食感が失なわれるため、従来の食パンよりも分割数量(玉数)を多くすることにより、クラストの強化を図るのである。その分割数量(玉数)が多きに過ぎると、そのための手数も増加するため、分割比容積4.1程度の重量に設定することが好ましい。
【0136】
〔実施例〕
以下、本発明の実施例1〜4を挙げて、一層具体的に詳述する。
【0137】
〈実施例1〉
実施例1は本発明の使用による「食パン」の製造例であり、その湯種生地作成工程から焼成工程までを次のとおり実行した。
〔湯種原料配合〕
小麦粉(グルテン11.8%の強力粉) 1000g(パン生地形成に必要な小麦粉100重量部のうちの20重量部)
食塩 100g
上白糖 100g
水(常温の水) 2000g
〔湯種生地作成工程〕
電磁誘導加熱コイル(6)(高周波電源の出力:3KW)を加熱源とする生地加熱攪拌機(A)のボール鍋(15)に、先ず水だけを入れて沸騰させ、その加熱を一旦止めて、小麦粉と食塩並びに上白糖を一挙に加入し、引き続き加熱(上記高周波電源の出力:2.4KW)し乍ら、生地加熱攪拌機(A)の回転攪拌羽根(20)(回転速度45r.p.m)と固定抵抗羽根(24a)(24b)により、3分間混捏して、捏ね上げ温度が約83℃の湯種生地を得た。
〔保管・熟成工程〕
そして、その湯種生地の粗熱を取り、透明のビニールフィルムに包んで、−3〜10℃の冷蔵庫に保管し、16時間熟成させた。
〔本捏原料配合〕
小麦粉(上記強力粉) 4000g(残りの80重量部)
上白糖 200g
脱脂粉乳 150g
生イースト 150g
ショートニング 300g
FMP(生地改良剤) 15g
水(常温の水) 2500g
湯種生地 3200g
〔本捏作用工程〕
次に、生地搗き機(B)の臼(111)へ水と、ショートニング以外の上記本捏原料を全部入れて、その臼(111)を2分間回転(回転速度72r.p.m)させることにより、固定抵抗羽根(139)と相俟って水和・混練した。
その水和状態が得られた後、引き続き臼(111)を回転させ乍ら、杵(86)の昇降運動(杵駆動モーターの回転速度83r.p.m)により本捏原料を繰り返し加圧し、4分間混捏した。
その経過後にショートニングも加えて、臼(111)を10秒間回転させ乍ら、杵(86)を12分間昇降運動させることにより、捏ね上げ温度が約27℃のパン生地に仕上げた。
〔醗酵・焼成工程〕
次に、上記パン生地を回復させるため、フロアータイムを25〜28℃の室温にて60分間とり、食パンのケービング現象を予防するために、従来よりも玉数の多い分割比容積4.1として、2斤型では5玉、3斤型では8玉に分割して、丸めを行なった。
その後、ベンチタイムを20分間とり、モルダーで成型した。その成型物をパン型へ85%(充填比)として入れ、温度38℃、湿度80%のもとに、60分間ホイロ(醗酵)を行なった。
その最終醗酵後、上火200℃、下火240℃のオーブンに入れて、40分間焼成した。
【0138】
〈比較例〉
〔湯種原料配合〕
上記実施例1における湯種原料配合のうち、その水(常温の水)だけを熱湯(85℃〜90℃)1200gに代えて、その他は同じ原料を採用した。
〈湯種生地作成工程〉
図37に示すような回転攪拌子(フック)を備えた竪型ミキサー(関東ミキサー)のミキサーボールへ、小麦粉と食塩並びに上白糖を入れ、その上から熱湯を加えて、低速(90r.p.m)3分間、中速(180r.p.m)3分間混捏することにより、捏ね上げ温度が60℃の湯種生地を作成した。
〔保管・熟成工程〕
上記実施例1と同じ
〔本捏原料配合〕
上記実施例1における本捏原料配合のうち、湯種生地は2300gとなるが、水(常温の水)だけを3500gとし、その他は同じ原料を採用した。
〔本捏作用工程〕
湯種生地作成工程と同じ回転攪拌子(フック)を備えた竪型ミキサー(関東ミキサー)のミキサーボールへ水と、ショートニング以外の本捏原料を全部入れて、やはり低速3分間、中速3分間混捏後、ショートニングも加えて、低速3分間、中速5分間混捏することにより、捏ね上げ温度が約26℃のパン生地を得た。
〔醗酵・焼成工程〕
上記実施例1と同じ
【0139】
〈官能対比評価〉
上記焼成後バンジュウへ移し入れ、18℃〜20℃の室温にて24時間保管した「食パン」をサンプルとして、20人のパネラーによる上記実施例1と比較例との官能対比評価を受けた。その結果は、表1に示すとおりであり、良好であると判断した人数を記入している。
【0140】
【表1】

【0141】
上記官能対比評価の結果では、本発明の実施例1による食パンの場合、特に生のままで食すると、そのモチモチ感としっとり感が顕著に増大しており、このことには湯種生地から本捏作用工程を経て仕上がったパン生地の全体として保有する90%(湯種生地の40%+本捏生地の50%)の高い吸水率が、貢献しているものと考えられる。
又、総合評価としては生のままで食する場合よりも、トーストして食べる場合の方が本発明の実施例1と比較例との大きな良否差を発揮することも判明した。
【0142】
〈実施例2〉
実施例2は本発明の使用による「カレードーナツ」の製造例であり、その湯種生地作成工程から焼成工程までを次のとおり実行した。但し、上記実施例1と同じ内容については、その説明を省略する。
〔湯種原料配合〕
小麦粉(グルテン11.8%の強力粉) 1000g(全量の20重量部)
食塩 85g
上白糖 100g
水(常温の水) 2250g
〔本捏原料配合〕
小麦粉(上記強力粉) 4000g(残りの80重量部)
上白糖 300g
脱脂粉乳 150g
生イースト 150g
ショートニング 300g
FMP 15g
水(常温の水) 1750g
湯種生地 3435g
〔本捏作用工程〕
生地搗き機(B)の臼(111)へ水と、ショートニング以外の上記湯種生地も含む本捏原料を全部入れて、その臼(111)を2分間回転させ、固定抵抗羽根(139)との協働作用により水和・混練した。
その水和状態が得られた後、引き続き臼(111)を回転させ乍ら、杵(86)の昇降運動により本捏原料を繰り返し加圧し、3分間混捏した。その経過後にショートニングも加入して、臼(111)を10秒間回転させ乍ら、杵(86)を10分間昇降運動させて、捏ね上げ温度が約26℃のパン生地を作成した。
〔醗酵・焼成工程〕
次に、上記パン生地を回復させるため、フロアータイムを25〜28℃の室温にて60分間とり、55gの重量に分割した。その後、ベンチタイムを20分間とり、カレーフィリング40gを包み、パン粉を付与して、38℃のもとに50分間ホイロ(醗酵)を行なった。
更に、その後フライ温度を180℃として、表面と裏面とを2分間づつ合計4分間フライした。
このようにして製造された「カレードーナツ」も、そのパン生地の殊更モチモチ感と口溶けの良好さなどが著しく増大した。
【0143】
〈実施例3〉
実施例3は同じく本発明による「バターロール」の製造例であり、その湯種生地作成工程から焼成工程までを次のとおり実行した。但し、上記実施例1と同じ内容については、その説明を省略する。
〔湯種原料配合〕
小麦粉(グルテン11.8%の強力粉) 1250g(全量の25重量部)
食塩 85g
上白糖 100g
水(常温の水) 2500g
〔本捏原料配合〕
小麦粉(上記強力粉) 3750g(残りの75重量部)
上白糖 650g
脱脂粉乳 150g
生イースト 150g
バター 500g
FMP 15g
卵 500g
水(常温の水) 1500g
湯種生地 3935g
〔本捏作用工程〕
生地搗き機(B)の臼(111)へ水と、バター以外の上記湯種生地も含む本捏原料を全部入れて、その臼(111)を2分間回転させることにより、固定抵抗羽根(139)とも相俟って水和・混練した。
その水和状態が得られた後、引き続き臼(111)を回転させ乍ら、杵(86)の昇降運動により本捏原料を繰り返し加圧し、4分間混捏した。その終了後にショートニングとバターも加入して、やはり臼(111)を10秒間回転させ乍ら、杵(86)を10分間昇降運動させて、捏ね上げ温度が約25℃のパン生地に仕上げた。
〔醗酵・焼成工程〕
次に、上記パン生地を回復させるため、フロアータイムを25〜28℃の室温にて60分間とり、50gの重量に分割した。その後、ベンチタイムを20分間とり、一端部が太く、他端部が細いロール状に成型して、一旦10分間休ませた後、その太い一端部から巻いた。それから天板に載せ、温度38℃、湿度80%のもとに60分間ホイロ(醗酵)を行なった。
その最終醗酵後、卵を塗って、上火200℃、下火190℃のオーブンに入れ、10分間焼成した。
このように製造された「バターロール」は、焼成直後よりも24時間経過後に、そのモチモチ感やしっとり感、口溶けの良好さなどが理解されやすく、やはり湯種製パン方法としての顕著な効果を得られた。
【0144】
〈実施例4〉
実施例4は本発明による「メロンパン」(菓子パン)の製造例であり、その湯種生地作成工程から焼成工程までを次のとおり実行した。但し、上記実施例1と同じ内容については、その説明をやはり省略する。
〔湯種原料配合〕
小麦粉(グルテン11.8%の強力粉) 1000g(全量の20重量部)
食塩 70g
上白糖 100g
水(常温の水) 2000g
〔本捏原料配合〕
小麦粉(上記強力粉) 4000g(残りの80重量部)
上白糖 1150g
脱脂粉乳 150g
生イースト 150g
バター 500g
FMP 15g
卵黄 500g
水(常温の水) 1300g
湯種生地 3185g
〔本捏作用工程〕
上記実施例3と同様に、生地搗き機(B)の臼(111)へ水と、バター以外の上記本捏原料を全部入れて、その臼(111)を2分間回転させ、固定抵抗羽根(139)との協働作用により水和・混練した。
その水和状態が得られた後、引き続き臼(111)を回転させ乍ら、杵(86)の昇降運動によって本捏原料を繰り返し加圧し、3分間混捏した。その終了後にバターも加えて、やはり臼(111)を10秒間回転させ乍ら、杵(86)を10分間昇降運動させて、最終的な捏ね上げ温度が約26℃のパン生地を得た。
〔醗酵・焼成工程〕
次に、上記パン生地を回復させるため、フロアータイムを25〜28℃の常温にて60分間とり、50gの重量に分割した。その後、ベンチタイムを20分間とり、成型してメロン皮をかぶせ、更にグラニュー糖も付与した。それから天板に載せ、温度38℃、湿度65%のもとに60分間ホイロ(醗酵)を行なった。
その最終醗酵後に、上火200℃、下火200℃のオーブンに入れて、10分間焼成した。
このようにして製造された「メロンパン」も、焼き上がり直後よりも翌日の方が、そのモチモチ感やしっとり感、口溶けの良好さなどの優れた効果を判定しやすかった。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の生地加熱攪拌機を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の部分拡大断面図である。
【図4】温度センサー付きの無線送信機を示す断面図である。
【図5】送信機に対応する受信機を示す正面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】送信機と受信機を生地加熱攪拌機に取り付けた使用状態の側断面図である。
【図8】図7の8−8線拡大断面図である。
【図9】送信機と受信機の機能を示すブロック図である。
【図10】電磁誘導加熱コイルを加熱源とする生地加熱攪拌機の制御回路図である。
【図11】ガスバーナーを加熱源とする生地加熱攪拌機の制御回路図である。
【図12】本発明の生地搗き機を示す斜面図である。
【図13】図12の側面図である。
【図14】図12の正面図である。
【図15】図14の背面図である。
【図16】図14の側断面図である。
【図17】図16の底面図である。
【図18】図12の部分拡大正面図である。
【図19】図18の側断面図である。
【図20】図19の20−20線拡大断面図である。
【図21】図19の21−21線拡大断面図である。
【図22】生地搗き機の杵を抽出して示す拡大断面図である。
【図23】生地搗き機の臼を抽出して示す拡大正面図である。
【図24】図23の24−24線拡大断面図である。
【図25】生地搗き機の固定抵抗羽根を抽出して示す斜面図である。
【図26】図25の分解斜面図である。
【図27】臼と固定抵抗羽根との位置関係を示す平面図である。
【図28】図27の側面図である。
【図29】温度センサー付きの無線送信機を臼に取り付けた使用状態の断面図である。
【図30】生地搗き機の制御回路図である。
【図31】生地搗き機の別な制御回路図である。
【図32】生地搗き機の変形実施形態を示す正面図である。
【図33】図32の側面図である。
【図34】図32の回転羽根を抽出して示す正面図である。
【図35】図34の側面図である。
【図36】図34の平面図である。
【図37】従来の竪型ミキサーを示す正面図である。
【符号の説明】
【0146】
(1)・据付け機筐
(5)・ボール鍋
(6)・電磁誘導加熱コイル
(7)・高周波電源(インバーター)
(11)・屈曲支柱
(15)・回転攪拌羽根用駆動モーター
(16)・センター軸
(20)・回転攪拌羽根
(21)・ハンガー軸
(22)・連結スリーブ
(23)・枢支軸
(24a)(24b)・固定抵抗羽根
(27)・筐胴
(32)・ノーズ管
(33)・接触式温度センサー
(56)・ガスバーナー
(60)・据付け機筐
(60a)・上筐部
(60b)・下筐部
(60c)・傾斜壁面部
(61)・杵駆動モーター
(63)・駆動プーリー
(64)・従動軸
(65)・中間軸
(66)・第1中間プーリー
(67)・第2中間プーリー
(68)・第1伝動ベルト
(69)・従動プーリー
(70)・第2伝動ベルト
(73)・ウエイト
(74)・クランクアーム
(75)・支点軸
(77)・ラジアルベアリング
(79)・支点軸
(80)・ラジアルベアリング
(81)・杵昇降軸
(82)(83)・締付メタル
(86)・杵
(87)(88)・遊転ガイドローラー
(89)(90)・ローラー支軸
(91)(92)・受けブラケット
(93)(94)・ベースプレート
(99)・第1スラストベアリング
(101)・第2スラストベアリング
(103)・第1ラジアルベアリング
(104)・第2ラジアルベアリング
(108)・貫通ボルト
(111)(111a)・臼
(112)・取付座盤
(113)・弯曲凸条
(114)・臼駆動モーター
(115)・臼回転軸
(116)・回転受け盤
(120)・台板
(121)・固定シールケース
(124)・固定ボルト
(125)・ラジアルベアリング
(128)・従動プーリー
(130)・駆動プーリー
(131)・伝動ベルト
(132)・フランジユニット
(133)・ラジアルベアリング
(134)・スラストベアリング
(137)・ベースプレート
(139)・固定抵抗羽根
(139a)・羽根板片
(139b)・丸棒片
(140)・取付座
(141)・キー溝
(142)・軸受け溝
(143)・位置決めボルト
(144)・回動ロックハンドル
(146)・口金
(147)・キャップナット
(150)・安全カバー
(151)・回転羽根
(153)・支軸
(154)・羽根駆動モーター
(155)・手動操作ハンドル
(A)・生地加熱攪拌機
(B)・生地搗き機
(C)・一定間隙
(F)・臼の回転進行方向
(R)・受信機
(T)・無線送信機
(D)(H)(W)・間隔距離
(m1)・湯種原料(湯種生地)
(m2)・本捏原料(パン生地)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール鍋を加熱する電気又はガスの加熱源と、そのボール鍋の内部へ差し込み使用される生地焦げ付き防止用の回転攪拌羽根並びに生地反転用の固定抵抗羽根とを備えた生地加熱攪拌機を用いて、
先ず、パン生地の形成に必要な小麦粉100重量部のうちの20〜30重量部と、イースト以外の副原料とを上記加熱攪拌機のボール鍋へ、その小麦粉20〜30重量部の2.0倍〜2.5倍に相当する水と一緒に投入した上、上記加熱源により加熱し乍ら上記回転攪拌羽根と固定抵抗羽根により混捏して、その捏ね上げ温度が75℃〜95℃の湯種生地を作成する工程と、
臼の内部に臨む生地反転用の抵抗羽根と、その臼の底面に向かって直進的に往復運動し、且つ臼との相互間に挟み付けられた生地と一緒に連れ廻り得る杵とを備えた生地搗き機を用いて、
次に、上記湯種生地と上記小麦粉の残部並びにショートニングやバター以外の副原料とを上記生地搗き機の臼へ、水と一緒に投入した上、その臼と抵抗羽根との何れか一方を回転させ、他方を固定状態に保つことにより、一旦水和状態になるまで混練した後、その回転中に引き続き上記杵で搗くことにより混捏して、その捏ね上げ温度が25℃〜30℃のパン生地に仕上げる本捏作用工程とを含むことを特徴とする湯種製パン方法。
【請求項2】
据付け機筐の上面に受け止め支持されたボール鍋と、そのボール鍋を下方から加熱する電気又はガスの加熱源と、上記ボール鍋の内部へ上方から差し込み使用される擬似錨型の生地焦げ付き防止用回転攪拌羽根と、同じくボール鍋の内部へ上方から差し込み使用されるヘラ型の生地反転用固定抵抗羽根とを備え、
上記ボール鍋内の製パン用湯種生地に差し込み使用される接触式温度センサー付きの送信機を、上記回転攪拌羽根の回転軸線上へ着脱自在に、且つその攪拌羽根の周囲を一体的に公転運動し得るように取り付ける一方、
その送信機と対応する受信機を上記据付け機筐に取り付けて、
上記攪拌羽根と抵抗羽根とが混捏中にある湯種生地の加熱温度を、上記温度センサーにより測定すると共に、その測定した加熱温度データを上記送信機から受信機へ、無線信号として送信し、
やがて湯種生地の加熱温度が目標とする75℃〜95℃の捏ね上げ温度に達した時、その受信機から出力する制御信号により、上記加熱源の加熱作用を自づと停止又は弱めるように定めたことを特徴とする湯種製パン用の生地加熱攪拌機。
【請求項3】
据付け機筐に内蔵の臼駆動モーターによって回転される臼と、その臼の内部へ上方から差し込み使用される生地反転用の固定抵抗羽根と、同じく据付け機筐に内蔵の別個な杵駆動モーターにより、上記臼の底面に向かって一定ストロークだけクランク運動される杵昇降軸とを備え、
上記臼に投入されたパン生地の搗き用杵をその杵昇降軸の下端部へ、ベアリングを介して遊転自在に套嵌させることにより、上記杵が下降した時臼との上下相互間に広くとも約10mmの一定間隙を保ち、且つその間隙に挟み付けられた生地と一緒に連れ廻るように定めると共に、
上記固定抵抗羽根を据付け機筐から臼の内壁面とほぼ平行に弯曲しつつ、且つその臼の回転進行方向に順応する前下がり傾斜姿勢として差し込むことにより、上記パン生地を臼の回転に連れて自づと絡らみ付け前進させ乍ら、その前下端部から臼の回転中心部へ誘導し得るように定めたことを特徴とする湯種製パン用の生地搗き機。
【請求項4】
臼内のパン生地に差し込み使用される接触式温度センサー付きの送信機を、上記臼における底面の偏心部へ着脱自在に、且つその臼との一体的に公転運動し得るように取り付ける一方、
その送信機と対応する受信機を据付け機筐に取り付けて、
上記臼内での混捏中にあるパン生地の発熱温度を、上記温度センサーにより測定すると共に、その測定した温度データを上記送信機から受信機へ、無線信号として送信し、
やがてパン生地の発熱温度が目標とする25℃〜30℃の捏ね上げ温度に達した時、その受信機から出力する制御信号により、臼の回転運動と杵の昇降運動を自づと停止させるように定めたことを特徴とする請求項3記載の湯種製パン用の生地搗き機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2008−289442(P2008−289442A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140128(P2007−140128)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 証明書
【出願人】(391026209)中井機械工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】