説明

湾曲型テープ、及び、これを備えたカップ付き女性用衣類

【課題】ワイヤを用いることなく湾曲形状を維持することが可能な湾曲型テープ、および、この湾曲型テープを備えたカップ付き女性用衣類を提供すること。
【解決手段】複数の織物組織71,72を厚さ方向Zに重ね合わせた重ね織り組織を有し幅方向Xに湾曲する湾曲型テープ14であって、重ね織り組織70は、湾曲内側部分71i,72iが湾曲外側部分71o,72oより高い伸縮性を有する構成とする。これにより、湾曲内側部分71i,72iが湾曲外側部分71o,72oより高い伸縮性を有するため、湾曲した状態で成形され、その湾曲形状が維持される。そのため、従前のようにワイヤを挿通させて湾曲状態を維持させる必要がなく、カップ部の下縁に沿った好適な湾曲型テープ14を実現することができる。さらに、製造時において、ワイヤを挿通させる作業工程を削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲型テープ、及び、これを備えたカップ付き女性用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バストを覆うカップ部を有するブラジャーでは、ワイヤを挿通させる中空孔が形成されたワイヤループ用袋織りテープが、カップ部下縁の湾曲部に沿って縫着されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のワイヤループ用袋織テープでは、経糸中に高伸縮性を備えた巻糸が、ワイヤを挿通する中空孔の反縫着面側に高密度で配置されている。
【0003】
このワイヤループ用袋織りテープは、それ自体は直線状を成し、屈曲したワイヤが中空孔に挿通され、屈曲方向外側となる部分が伸長することにより、当該袋織りテープがワイヤの曲率に倣って変形するものである。
【特許文献1】特開平11−100704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来のブラジャーでは、ワイヤループ用袋織りテープに挿通されたワイヤが当該テープを突き破って外部に露出してしまうおそれがあった。また、ワイヤループ用袋織りテープ内のワイヤが直接肌に当たらない場合であっても、着用者が違和感を覚えることがあった。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、ワイヤを用いることなく湾曲形状を維持することが可能な湾曲型テープ、および、この湾曲型テープを備えたカップ付き女性用衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、複数の織物組織を厚さ方向に重ね合わせた重ね織り組織を有するテープにおいて、幅方向の一方側の伸縮性を、他方側の伸縮性より高くすることで、伸縮性の低い一方側を内側として、湾曲成形可能であることを見出した。
【0007】
そこで、本発明による湾曲型テープは、複数の織物組織を厚さ方向に重ね合わせた重ね織り組織を有し幅方向に湾曲する湾曲型テープであって、重ね織り組織は、湾曲内側部分が湾曲外側部分より高い伸縮性を有していることを特徴としている。
【0008】
このように構成された湾曲型テープによれば、湾曲内側部分が湾曲外側部分より高い伸縮性を有するため、湾曲した状態で成形され、その湾曲形状が維持される。これにより、従前のようにワイヤを挿通させて湾曲状態を維持させる必要がなく、カップ部の下縁に沿った好適な湾曲型テープを実現することができる。さらに、従来、必要であったワイヤを挿通させるための作業工程を削減することができる。
【0009】
ここで、織物組織の緯糸に、熱融着糸が使用され、織物組織の経糸における熱融着糸の使用割合は、湾曲内側部分より湾曲外側部分が多くされ、重ね織り組織は、加熱処理工程が施されていることが好適である。このように、経糸に熱融着糸が使用されているため、加熱処理工程を施すことによって熱融着糸同士を熱融合(融着)させることができ、フリーカットが可能であり、裁ち端のほつれを防止することができる。また、経糸および緯糸に熱融着糸が使用され、経糸における熱融着糸の使用割合が、湾曲内側部分より湾曲外側部分の方が多いため、加熱処理工程を施すことによって熱融着糸同士を熱融合させることができ、重ね織り組織は、湾曲内側部分が湾曲外側部分より高い伸縮性を有し、湾曲して成形される。すわなち、湾曲内側部分にセット性の低い経糸を使用し、湾曲外側部分にセット性の高い経糸を使用することで、湾曲内側部分を湾曲外側部分より伸縮させることができる。なお、加熱処理工程は、染色工程を含んでいてもよい。
【0010】
また、複数の織物織間に配置され、長手方向に延在する複数の芯材を有する構成が好ましい。これにより、芯材(芯糸)の位置、使用割合を調整することで、曲率や伸縮性を調整することができる。
【0011】
また、重ね織り組織より経糸が減少された側端部が、湾曲内側に形成されていることが好適である。これにより、湾曲内側に皺の逃げ部が形成されるため、湾曲内側部分に皺が形成されることを防止することができる。
【0012】
また、織物組織は、経糸及び緯糸が上下に互いに交錯された平織り組織が好ましい。また、織物組織は、例えば、綾織組織、朱子織組織等、その他の織物組織でもよく、二重織り組織、経二重織組織、緯二重織組織等でもよい。
【0013】
また、上記課題の解決のため、本発明に係るカップ付き女性用衣類は、上記の湾曲型テープと、バストを覆うように形成された左右一対のカップ部と、を有し、湾曲型テープがカップ部の下縁の湾曲形状に沿って取り付けられていることを特徴としている。
【0014】
このように構成されたカップ付き女性用衣類では、湾曲型テープは、湾曲内側部分が湾曲外側部分より高い伸縮性を有するため、湾曲した状態で成形され、その湾曲形状が維持される。これにより、従前のようにワイヤを挿通させて湾曲状態を維持させる必要がない。また、このように構成された湾曲型テープが、カップ部の下縁に沿って取り付けられているため、この湾曲型テープによって、カップ部の下縁の形状が好適に維持される。また、ワイヤを用いることなく、非金属材料のみを用いて好適に湾曲させることができるため、着用者がワイヤによる違和感を覚えることがない。
【0015】
また、湾曲型テープは、カップ部の下縁の湾曲形状の曲率半径より小さい曲率半径を有するものであり、カップ部の下縁の湾曲形状に沿うように拡げられて取り付けられていることが好適である。これにより、バストの下側の輪郭線、いわゆるバージスラインに沿った好適な湾曲形状を有するカップ部の下縁形状を作り出すことができる。なお、「カップ部」は、バストを覆う部分であり、他の部分と独立した材料部材を用いて形成されていてもよく、他の部分と連続する材料部材を用いて形成されていてもよい。例えば、Tシャツ等において、バストの正面側の部分も「カップ部」に含まれるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る湾曲型テープによれば、幅方向において、湾曲内側部分が湾曲外側部分より高い伸縮性を有し、幅方向に湾曲するため、ワイヤを用いることなく、非金属材料のみを用いて好適に湾曲させることができる。また、ワイヤを挿通させる必要がないため、従来必要であったワイヤを挿通させるための作業工程を削減することができる。
【0017】
また、本発明による女性用衣類は、ワイヤを用いることなく湾曲する湾曲型テープが、カップ部の下縁に沿って取り付けられているため、着用者が、ワイヤによる違和感を覚えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る湾曲型テープ、及び、これを備えたカップ付き女性用衣類の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、湾曲型テープであるカップ部下縁(下辺)用テープを備えたカップ付き女性用衣類であるブラジャーについて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るカップ部下縁用テープを備えたブラジャーの背面図である。図1に示すブラジャー1は、例えば、スポーツを行なう際に着用するスポーツ用として好適なものである。このブラジャー1は、左右一対のカップ部10と、脇側パネル部20と、バック部30と、肩ストラップ部40と、フロント連結部50とによって構成されている。
【0020】
カップ部10は、例えば不織布や発泡ポリウレタンといった一定の保形性及び弾力性を有する素材によって形成され、バストを前面側から覆うものであり、着用者のバストの形状に対応させた椀形状となっている。カップ部10の上縁部分11は、ブラジャー1の中央から外側上方へバスト形状に対応して湾曲する第1の部分11aと、バストの脇側から中央上方へ連続する第2の部分11bとを有し、これらの第1の部分11a及び第2の部分11bにより上方へ延びる頂部を形成している。また、カップ部10の下縁部分12は、バストのバージスラインに合わせるように下向き湾曲して形成されている。この下縁部分12には、カップ部下縁用テープ14が設けられている(詳しくは後述する)。
【0021】
脇側パネル部20は、カップ部10の下縁部分12の脇側から背側へ連続して形成されている。この脇側パネル部20は、例えばパワーネットのように可撓性及び保形性を有する非伸縮性又は難伸縮性の素材によって形成され、カップ部10における下縁部分12の脇側に縫着されている。この脇側パネル部20は、下縁部分12側から背側に向かうに従って、上下方向の幅が徐々に狭くなるような略三角形状をなしている。脇側パネル部20の下縁部分20aは、カップ部下縁用テープとの縫着部分から略水平に延びており、脇側パネル部20の上縁部分20bは、カップ部下縁用テープ14における脇側の端部14aから下方に向かって斜めに延びている。
【0022】
バック部30は、脇側パネル部20から連続して形成され、水平方向に着用者の脇側から背側に向かって帯状に形成されている。バック部30は、例えばパワーネットなどの伸縮性を有する素材によって形成されている。また、バック部30の背側の端部にはホック31が設けられており、左右のバック部30は、このホック31によって係脱自在に連結される。
【0023】
肩ストラップ部40は、カップ部10の上部(頂部)とバック部30とに各々接続され、カップ部10の上部とバック部30の背側とを結ぶように掛け渡されている。肩ストラップ部40には、長さ調整具41が介設されており、着用者の体型に合わせた長さ調整が可能となっている。
【0024】
フロント連結部50は、着用者の前側で左右のカップ部10,10を互いに連結する部分である。フロント連結部50は、例えばパワーネットのように可撓性及び保形性を有する非伸縮性又は難伸縮性の素材によって形成され、カップ部10における下縁部分12の中央側に縫着されている。
【0025】
次に、カップ部10の下縁部分12に設けられたカップ部下縁用テープ14について説明する。図2は、本発明の実施形態に係るカップ部下縁用テープの平面図、図3は、図2に示すカップ部下縁用テープの横断面図、図4は、図3中の平織り組織の概略平面図である。カップ部下縁用テープ14は、カップ部10の下縁部分12にならうように円弧状に湾曲し、下縁部分12の肌側に縫着されている。
【0026】
カップ部下縁用テープ14は、図3に示すように、複数の平織り組織(織物組織)71,72が厚さ方向(上下方向)Zに重ね合わされた二重織り組織(重ね織り組織)70を有している。カップ部下縁用テープ14は、図示上側に配置された上側平織り組織71と、図示下側に配置された下側平織り組織72とを有している。そして、上側平織り組織71がカップ部10の下縁部分12と当接する面を構成し、下側平織り組織72が着用者の肌に当接する面を構成する。以下の説明において、上側平織り組織71と下側平織り組織72とを区別する必要がないときは、平織り組織71,72と記す。
【0027】
平織り組織71,72は、図2に示すように、湾曲方向(幅方向X)の内側部分である湾曲内側部71i,72iが、湾曲方向の外側部分である湾曲外側部71o,72oより高い伸縮性を有する構成とされている。換言すれば、平織り組織71,72は、カップ部下縁用テープ14の幅方向Xの中央Xoより一方側と他方側とで、長手方向Yにおける伸縮性が異なる構成となっている。すなわち、カップ部下縁用テープ14を幅方向の中央で分割(切断)し、平織り組織71,72の伸度を比較すると、湾曲内側部71i,72iが湾曲外側部71o,72oより高い伸縮性を有することが確認される。
【0028】
カップ部下縁用テープ14では、内径Dが例えば10〜15cmとされ、幅Wが11〜13mmとされている。なお、内径Dは、例えば、8.2cmでもよく、その他の大きさでもよい。同様に、幅Wもその他の大きさでもよい。
【0029】
平織り組織71,72は、図4に示すように、湾曲内側部71i,72iでは、緯糸73と経糸74とが互いに上下方向に交錯し、湾曲外側部71o,72oでは、緯糸73と経糸75とが互いに上下方向に交錯して構成されている。なお、図4では、図の簡素化のため、後述する経糸77の図示を省略している。
【0030】
平織り組織71,72の緯糸73には、加熱されて融着する熱融着糸が使用されている。「熱融着糸」とは、所定の温度(例えば約110〜130℃、好ましくは115℃)で融着する熱融着性の高いものである。カップ部下縁用テープ14では、緯糸73の熱融着糸として、高セット性カバーリング巻糸が使用されている。なお、熱融着糸が融着する温度は、その他の温度でもよい。
【0031】
平織り組織71,72の湾曲内側部71i,72iにおける経糸74には、非熱融着糸が使用されている。「非熱融着糸」とは、所定の温度(例えば約110〜130℃)で融着しないもの、又は融着しにくいものであり、熱融着性の低いものである。カップ部下縁用テープ14では、湾曲内側部71i,72iの経糸74の非熱融着糸として、低セット性カバーリング巻糸が使用されている。本実施形態では、低セット性カバーリング巻糸として、例えば840デニール、伸度2.3倍(カバーリング設定伸度)のものを用いている。
【0032】
平織り組織71,72の湾曲外側部71o,72oにおける経糸75には、熱融着糸が使用されている。カップ部下縁用テープ14では、湾曲外側部71o,72oの経糸75の熱融着糸として、高セット性カバーリング巻糸が使用されている。本実施形態では、高セット性カバーリング巻糸として、例えば200デニール、伸度2.0倍(カバーリング設定伸度)のものを用いている。
【0033】
また、上側平織り組織71と下側平織り組織72との間には、カップ部下縁用テープ14の長手方向Yに延在する複数の芯糸(芯材)76が配置されている。この芯材76として、例えば、ウーリーナイロン糸を使用することができる。芯材76は、主に、湾曲外側に配置され、中央より湾曲内側にも芯材76の一部が配置されている。芯材76は、上側平織り組織71及び下側平織り組織72に挟まれて密着されて保持されている。
【0034】
図3に示すように、上側平織り組織71と下側平織り組織72とは、経糸77によって繋がれて、厚さ方向(図示上下方向)に重ね合わされた二重織り組織70を構成している。上側平織り組織71と下側平織り組織72とを繋ぐ経糸77は、複数本配置されている。この経糸77は、幅方向Xの両端部、幅方向の中央Xo付近、湾曲内側部71i,72i中央、湾曲外側部71o,72oの複数の芯糸76の間等に配置されている。
【0035】
また、カップ部下縁用テープ14の湾曲方向の内側の端部には、二重織り組織70より経糸74が減少された側端部78が形成されている。この側端部78は、下側平織り組織72から湾曲方向の内側へ連続して形成され、皺を吸収する部分として機能する。これにより、湾曲内側部分71i,71oに皺が形成されることを防止する。
【0036】
このようなカップ部下縁用テープ14は、織機によって製造されて、製織後に湾曲した形状となる。また、カップ部下縁用テープ14の製造の際に、糸の送り量を変化させることで、湾曲形状を調整することができる。カバーリング巻糸の設定伸度の組合せによって異なるが、湾曲方向の内側となる方を、湾曲方向の外側となる方より送り量を遅くすることで、テンションを張り縮み易くする。
【0037】
また、カップ部下縁用テープ14は、染色工程(加熱処理工程)によって加熱(例えば110〜130℃、好ましくは115℃)され、熱融着糸が用いられた緯糸73,経糸75を融着させる。このように湾曲外側部71o,72oの経糸75を融着させることで、幅方向の内外で伸縮性の差が大きくなる。そのため、カップ部下縁用テープ14が好適に湾曲する。また、緯糸73を融着させることで、裁ち端のほつれを防止して、フリーカットを可能とする。
【0038】
このように構成されたカップ部下縁用テープ14は、カップ部10の下縁部分12の湾曲形状の曲率半径より小さい曲率半径を有するものが使用されている。図5は、(A)通常状態のカップ部下縁用テープを示す平面図、(B)カップ部の下縁の湾曲形状に沿うように拡げられた状態のカップ部下縁用テープを示す平面図である。
【0039】
そして、カップ部下縁用テープ14は、カップ部10の下縁の湾曲形状に沿うように湾曲方向の外側へ拡げられて、カップ部10の下縁部分12に縫着されている。カップ部下縁用テープ14がカップ部10に縫着された状態において、カップ部下縁用テープ14は、湾曲方向内側へ縮もうとし、カップ部10の下縁部分12は、湾曲方向の外側へ伸びようとするため、互いに作用する力によって、バストに対応した好適な形状を保持することができる。また、カップ部下縁用テープ14の曲率を変化させることで、カップ部10の下縁部分12の形状を調整することができる。
【0040】
このようにカップ部下縁用テープ14では、幅方向Xの内側部分と外側部分とで異なる太さの経糸74,75が用いられている。湾曲内側部71i,72iには、湾曲外側部71o,72oより太い(デニールの大きい)経糸74が使用されているため、湾曲内側部71i,72iは、湾曲外側部71o,72oと比較して、復元性が大きく(パワーが強く)、縮み易く伸び易い構成とされ、カップ部下縁用テープ14が湾曲している。
【0041】
また、カップ部下縁用テープ14では、幅方向Xの内側部分と外側部分とで異なる設定伸度の経糸74,75が用いられている。湾曲内側部71i,72iには、湾曲外側部71o,72oより設定伸度大きい経糸74が使用されているため、湾曲内側部71i,72iは、湾曲外側部71o,72oと比較して、縮み易く伸び易い構成とされ、カップ部下縁用テープ14が湾曲している。
【0042】
また、カップ部下縁用テープ14では、加熱処理によって湾曲外側部71o,72oの経糸が融着し、湾曲内側部71i,72oの経糸が融着しないため、湾曲内側部71i,72iは、湾曲外側部71o,72oと比較して、縮み易く伸び易い構成となり、カップ部下縁用テープ14は湾曲する。
【0043】
このように構成されたカップ部下縁用テープ14は、湾曲内側部71i,72iが湾曲外側部71o,72oより高い伸縮性を有するため、湾曲した状態で成形され、その湾曲形状が維持される。これにより、従前のようにワイヤを挿通させて湾曲状態を維持させる必要がなく、カップ部10の下縁部分12に沿った好適な湾曲形状が実現される。このようなカップ部下縁用テープ14では、従来のワイヤが挿入された袋織テープと同等な乳房保持機能を備えることが可能とされている。さらに、製造時において、ワイヤを挿通させる作業工程を削減することができる。
【0044】
また、従来のワイヤ入り袋織テープの場合、残留する針を検出するための検針器を用いて、製品検査を実施した際に、検針器がワイヤに反応してしまうという問題があった。しかしながら、カップ部下縁用テープ14では、ワイヤが用いられていないため、検針器がワイヤに反応することが防止され、製品検査を円滑に実行することができる。
【0045】
また、カップ部下縁用テープ14は、非金属材料のみを用いて湾曲され、ワイヤ等の金属、その他の樹脂材料等が使用されてないため、環境負荷が低減された湾曲型テープを実現することができる。
【0046】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態において、織物組織を平織り組織71,72として説明しているが、上記織物組織は、例えば、綾織組織、朱子織組織等、その他の織物組織を有する湾曲型テープでもよい。また、上記織物組織は、二重織り組織、経二重織組織、緯二重織組織等でもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、湾曲外側部71o,72oの経糸75に、「熱融着糸(例えば、高セット性カバーリング巻糸)」を使用し、湾曲内側部71i,72iの経糸74に、「非熱融着糸(例えば、低セット性カバーリング巻糸)」を使用しているが、湾曲外側部71o,72oの経糸の一部に、「非熱融着糸」を使用してもよく、湾曲内側部71i,72iの経糸の一部に、「熱融着糸」を使用してもよい。要は、湾曲内側部分が、湾曲外側部分より高い伸縮性を有していればよい。湾曲型テープ14の重ね織り組織を、幅方向の中央で、長手方向に沿って分割した場合に、一方側が他方側より伸縮性を有している。すわなち、湾曲内側部分である方が、高い伸縮性を有している。
【0048】
また、上記実施形態では、加熱工程である染色工程が施された湾曲型テープ14としているが、染色工程とは、異なる加熱工程が施された湾曲型テープでもよい。また、加熱工程が施されていない湾曲型テープでもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、湾曲外側部71o,72oの経糸75に、熱融着糸を使用しているが、湾曲外側部の経糸に、熱融着糸が使用されていない湾曲型テープでもよい。要は、湾曲内側部分が、湾曲外側部分より高い伸縮性を有していればよい。例えば、湾曲方向の内外で、経糸の太さを変えること、経糸の設定伸度を変えること、その他の方法を用いて、伸縮性に差を設けてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、複数の織物組織間に芯材76が配置された湾曲型テープ14としているが、芯材76が配置されていない湾曲型テープでもよい。また、上記実施形態では、皺の逃げ部として、重ね織り組織70より経糸が減少された側端部78が形成された湾曲型テープ14としているが、皺の逃げ部が形成されていない湾曲型テープでもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、湾曲型テープ14をカップ部付き女性用衣類であるブラジャー1に適用しているが、カップ部付き女性用衣類は、ブラジャー1に限定されず、例えば、水着、ファンデーション、レオタード、シャツ、下着など、その他のカップ部付き女性用衣類のカップ部に適用してもよい。なお、カップ部とは、「乳房を正面側から覆う部分」を含むものである。着用者の体を覆うその他の部材と一体として構成されたカップ部でもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、ブラジャー1をスポーツ用として説明しているが、その他のブラジャーに湾曲型テープ14を適用してもよい。例えば、成長期の女性が着用するブラジャーに本発明の湾曲型テープを適用してもよい。本発明の湾曲型テープは、従前のようにワイヤが使用されていないため、ワイヤの硬さによって感じる着用者の違和感を防止することができる。そのため、スポーツ時に着用するカップ付き女性用衣類、使用経験の浅い成長期の女性が着用するカップ付き女性用衣類に適用した場合に、特に有効である。
【0053】
また、上記実施形態では、湾曲型テープ14をカップ部10の下縁12に沿うように縫い付けているが、その他の形状に沿うように湾曲型テープを縫い付けて使用してもよい。例えば、その他の衣類において、体型の湾曲形状に沿うように湾曲型テープを設けてもよい。また、衣類ではなく、その他の織物製品、布製品等に湾曲型テープを縫い付けて使用してもよい。
【0054】
また、湾曲型テープ14は、例えば、接着剤を用いた接着、圧力が負荷されて取り付けられる圧着など、その他の方法によって、他の物体(例えば、カップ付き女性用衣類)に
取り付けられていてもよい。また、いくつかの方法を組み合わせて、取り付けてもよい。
【実施例1】
【0055】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、上記実施形態のカップ部下縁用テープと同一の説明は省略する。
【0056】
図6は、本発明の実施例に係るカップ部下縁用テープの概略横断面図である。実施例1に係るカップ部下縁用テープ14では、緯糸73の熱融着糸として、高セット性カバーリング巻糸が使用されている。高セット性カバーリング巻糸は、例えば115℃で融着するポリウレタンから成る繊維のシングルカバー糸であり、周囲に、カバーリングとしてナイロン繊維が巻きつけられている。
【0057】
カップ部下縁用テープ14では、湾曲内側部71i,72iの経糸74の非熱融着糸として、低セット性カバーリング巻糸が使用されている。低セット性カバーリング巻糸は、例えば115℃で融着しないポリウレタンから成る繊維のシングルカバー糸であり、周囲に、カバーリングとしてナイロン繊維が巻きつけられている。実施例1では、低セット性カバーリング巻糸として、例えば840デニール、伸度2.3倍(カバーリング設定伸度)のものを用いている。なお、約125℃で融着しないポリウレタンから成る繊維として、例えばロイカ(旭化成せんい株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0058】
カップ部下縁用テープ14では、湾曲外側部71o,72oの経糸75の熱融着糸として、高セット性カバーリング巻糸が使用されている。高セット性カバーリング巻糸は、例えば125℃で融着するポリウレタンから成る繊維のシングルカバー糸であり、周囲に、カバーリングとしてナイロン繊維が巻きつけられている。本実施形態では、高セット性カバーリング巻糸として、例えば200デニール、伸度2.0倍(カバーリング設定伸度)のものを用いている。
【0059】
実施例1のカップ部下縁用テープ14では、経糸75,76間に、例えばウーリーナイロンにより構成された経糸80が配置されている。また、実施例1のカップ部下縁用テープ14では、低セット性カバーリング巻糸である経糸74が48本、高セット性カバーリング巻糸である経糸75が51本、経糸74,75間に配置されたウーリーナイロンである経糸が95本、上側平織り組織71及び下側平織り組織72を繋ぐウーリーナイロンである経糸77が7本、ウーリーナイロンである芯糸76が40本使用されている。また、上側平織り組織71及び下側平織り組織72の間で、芯糸76が配置されていない部分には、長手方向に延在する中空孔が形成されている。
【0060】
図7は、本発明の実施例に係るカップ部下縁用テープにおける経糸及び緯糸の関係を示す図である。図7(D)は、製造時における経糸、芯糸、及び、緯糸の位置関係を示す概略図である。図7では、経糸74,75,77,80が上下2本の緯糸73(上側平織り組織71の緯糸、下側平織り組織72の緯糸)より浮いている場合を「×」と図示し、経糸74,75,80、芯糸76が上下2本の緯糸73の中間に存在している場合を「△」と図示し、経糸74,75,77,80が上下2本の緯糸73より沈んでいる場合を「・」と図示している。
【0061】
図7(A)は、上側平織り組織の経糸及び緯糸の浮き沈みの運動を示す組織図、図7(B)は、上側平織り組織及び下側平織り組織をつなぐ経糸、芯糸、及び、緯糸の浮き沈みの運動を示す組織図、図7(C)は、下側平織り組織の経糸及び緯糸の浮き沈みの運動を示す組織図である。
【0062】
組織図は、湾曲型テープ14を真上から見た場合の糸の動きを示すものであり、組織図において、図示横方向は、緯糸73の延在する方向(幅方向X)であり、図示縦方向は、経糸の延在する方向(長手方向Y)である。組織図では、8本分の緯糸73に対応するように示しているが、実際の湾曲型テープ14では、これらが繰り返し配列されている。
【0063】
図7(A)では、左側の2列が、隣接する一組の経糸74(74a,74b),75(75a,75b)を示しており、湾曲内側部71iでは、経糸74a,74bが交互に配列され、湾曲外側部71oでは、経糸75a,75bが交互に配列されている。経糸74a,74b,75a,75bは、緯糸73の上下(「×」、「△」)を交互に通過する動きとなる。また、隣接する経糸74a,74b,75a,75bでは、上下が逆となっている。
【0064】
図7(A)では、右側の2列が、隣接する一組の経糸80a,80bを示しており、これらの経糸80a,80bが交互に配列されている。経糸80a,80bは、緯糸73の上側を3本分、通過した後、緯糸73の下側を1本分、通過し、これを繰り返す動きとなる。
【0065】
図7(B)では、左側の列が、上側平織り組織71及び下側平織り組織72を繋ぐ経糸77を示している。この経糸77は、上下方向Zに隣接する2本の緯糸73の上下(「×」、「・」)を交互に通過する動きとなる。また、図7(B)では、右側の列が、芯糸76を示している。芯糸76は、上下方向Zに隣接する2本の緯糸73の中間を通過する動きとなる。
【0066】
図7(C)では、左側の2列が、隣接する一組の経糸74(74a,74b),75(75a,75b)を示しており、湾曲内側部72iでは、経糸74a,74bが交互に配列され、湾曲外側部72oでは、経糸75a,75bが交互に配列されている。経糸74a,74b,75a,75bは、緯糸73の上下(「△」、「・」)を交互に通過する動きとなる。また、隣接する経糸74a,74b,75a,75bでは、上下が逆となっている。
【0067】
図7(C)では、右側の2列が、隣接する一組の経糸80a,80bを示しており、これらの経糸80a,80bが交互に配列されている。経糸80a,80bは、緯糸73の上側を3本分、通過した後、緯糸73の下側を1本分、通過し、これを繰り返す動きとなる。
【0068】
このように構成された実施例1のカップ部下縁用テープ14によれば、カップ部の下縁形状に沿った好適な湾曲形状を有する湾曲型テープを実現することができるため、従前のようにワイヤを使用せずに好適に湾曲させることができる。
【0069】
また、従来のワイヤを挿入して使用されるワイヤループ用袋織テープは、ポリウレタンの使用が経糸のみであり、その混用率が0〜15%前後であった。本実施形態のカップ部下縁用テープ14では、伸縮性を備え、熱融着性の高いポリウレタンを緯糸73として使用すること、及び、経糸74,75として従来の5〜10倍のポリウレタンを使用することにより、カップ部下縁用テープ14におけるポリウレタンの混用率が、例えば50%とされている。そのため、緯糸及び経糸のポリウレタン同士を熱融合させることにより、カップ部下縁用テープ14の幅方向Xに弾力性を有する構成とされている。
【0070】
また、湾曲内側部分の伸度は、湾曲外側部分の伸度の例えば1.1〜1.7倍が好ましく、例えば、1.15倍程度が好適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係るカップ部下縁用テープを備えたブラジャーの背面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカップ部下縁用テープの平面図である。
【図3】図2に示すカップ部下縁用テープの横断面図である。
【図4】図3中の平織り組織の概略平面図である。
【図5】(A)通常状態のカップ部下縁用テープを示す平面図、(B)カップ部の下縁の湾曲形状に沿うように拡げられた状態のカップ部下縁用テープを示す平面図である。
【図6】本発明の実施例に係るカップ部下縁用テープの横断面図である。
【図7】本発明の実施例に係るカップ部下縁用テープにおける経糸及び緯糸の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1…ブラジャー(カップ部付き女性用衣類)、10…カップ部、12…カップ部下縁部分、14…カップ部下縁用テープ(湾曲型テープ)、70…二重織り組織(重ね織り組織)、71…上側平織り組織(織物組織)、72…下側平織り組織(織物組織)、71i,72i…湾曲内側部、71o,72o…湾曲外側部、73…緯糸、74…湾曲内側部における経糸、75…湾曲外側部における経糸、76…芯糸(芯材)、78…側端部、X…幅方向、Y…長手方向、Z…厚さ方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の織物組織を厚さ方向に重ね合わせた重ね織り組織を有し幅方向に湾曲する湾曲型テープであって、
前記重ね織り組織は、湾曲内側部分が湾曲外側部分より高い伸縮性を有していることを特徴とする湾曲型テープ。
【請求項2】
前記織物組織の緯糸に、熱融着糸が使用され、
前記織物組織の経糸における熱融着糸の使用割合は、前記湾曲内側部分より前記湾曲外側部分が多くされ、
前記重ね織り組織は、加熱処理工程が施されていることを特徴とする請求項1記載の湾曲型テープ。
【請求項3】
前記加熱処理工程は、染色工程を含むことを特徴とする請求項2記載の湾曲型テープ。
【請求項4】
前記複数の織物組織間に配置され、長手方向に延在する複数の芯材を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の湾曲型テープ。
【請求項5】
前記重ね織り組織より経糸が減少された側端部が、前記湾曲内側に形成されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の湾曲型テープ。
【請求項6】
前記織物組織は、前記経糸及び前記緯糸が上下に互いに交錯された平織り組織であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の湾曲型テープ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の湾曲型テープと、
バストを覆うように形成された左右一対のカップ部と、を有し、
前記湾曲型テープが前記カップ部の下縁の湾曲形状に沿って取り付けられていることを特徴とするカップ付き女性用衣類。
【請求項8】
前記湾曲型テープは、前記カップ部の下縁の湾曲形状の曲率半径より小さい曲率半径を有するものであり、前記カップ部の下縁の湾曲形状に沿うように拡げられて取り付けられていることを特徴とする請求項7記載のカップ付き女性用衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−31415(P2010−31415A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193967(P2008−193967)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】