説明

湿し水及び湿し水濃縮液

【課題】優れた印刷再現性、例えば画像の印刷媒体への正確な転写を可能にする湿し水を提供する。
【解決手段】水とt−アミルアルコール(2−メチル−2−ブタノール)とを含む、オフセット印刷用の湿し水によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷で使用するための湿し水及び湿し水濃縮液並びにその製造方法に関する。本発明は、また、t−アミルアルコールを、オフセット印刷用の湿し水もしくは湿し水濃縮液において用いる使用に関する。さらに、本発明は、本発明による湿し水を画版に適用することで、該画版の非画像領域を減感させるオフセット印刷方法並びにこの方法で得られる印刷された媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、通常用いられる印刷技術であって、インキの画像は刷版からゴムブランケットへと転写(もしくは"オフセット")され、次いで印刷面へと転写される。
【0003】
オフセット印刷において、刷版は、ポジ型画像領域が親水性表面を有する一方で、ネガ型画像領域が疎水性表面を有するように設計される。刷版は、一般に、いわゆる湿し水で処理される。湿し水は、通常は、親水性の水系組成物であって、刷版の親水性の非画像領域に付着するものである。刷版の湿し水による処理は、後続の処理段階で適用される疎水性のインキ溶液が該刷版の疎水性の画像領域にのみ付着することを保証する。従って、湿し水の役割は、非画像領域を減感させ、その領域にインキ反発性を付与することである。
【0004】
通常知られる湿し水は、水、二クロム酸のアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、亜リン酸もしくは亜リン酸の塩及びコロイド状物質、例えばアラビアゴムもしくはカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。これらの物質のみを基礎とする湿し水は、それらが印刷版の非画像領域を十分に濡らさないという欠点を有する。
【0005】
適用される湿し水が少なすぎる場合、非印刷領域は、十分な水気を受け取らず、幾らかのインキを受け取ることになり、それは引き続き紙へと転写される。他方で、刷版に適用される湿し水が多すぎる場合に、それはインキを希釈し、印刷された画像が色あせた様相を呈することになる。湿し水が不均一に適用され、こうして刷版の幾つかの適用部で湿し水が少なすぎ、刷版の他の適用部で多すぎる場合に、最終的な印刷画像は、幾らかの不所望なインキ領域と、画像が色あせた他の領域を有することとなる。
【0006】
従って、かかる湿し水を印刷版に供給する速度を調節するにあたって、かなりの熟練と経験量が要求される。この問題点を克服するために、湿し水には、通常、湿潤剤が添加される。湿潤剤は、湿し水の表面張力を減らし、そうすることで、非画像領域上に、薄く均一な湿し水の薄膜を迅速に形成することを可能とする。
【0007】
ダールグレン(Dahlgren)(US3,705,451号)は、イソプロピルアルコールの湿潤剤としての使用を提案しており、"ダールグレン・システム"として知られる湿し水は、当該産業において標準となっている。
【0008】
湿し水におけるイソプロピルアルコールの使用は、表面張力を減らすこと以外にも、多くの利点を有する。それはまた、湿し水の粘度を高め、そうすることで、ローラ及び/又は刷版へと、より厚い薄膜を適用することが可能となる。イソプロピルアルコールの高い揮発性は、それがブランケットへの転写前により迅速に揮発することで、色あせ効果とインキ滲みが最小限となることを意味する。イソプロピルアルコールが、インキを他の液体よりも僅かな程度で乳化するという傾向は、素抜け(べた及び印刷字における小さく白い印刷されていない斑点)を減らす。さらに、イソプロピルアルコールは、起動してすぐでも、より高い印刷品質を可能にする傾向にあり、それは経済的な利点である。
【0009】
しかしながら、環境保護局(EPA)及び労働安全衛生庁(OSHA)の規則(例えば揮発性有機化合物の削減を命ずる規則)は、湿し水におけるイソプロピルアルコールの使用を制限している。5質量%もしくはそれより高い濃度が使用される場合に、換気装置の設置、作業環境の測定並びに作業者の健康診断などといった措置を採らねばならない。
【0010】
イソプロピルアルコールの欠点の幾つか(例えばその費用、毒性、可燃性及びその使用エリアでの適切な換気装置の必要性)は、代用品をより頻繁に利用すべきことをもたらす。
【0011】
これらの代用品には、多価アルコール、グリコール、グリコールエーテル及びその誘導体が含まれ、それらはしばしばエチレングリコールと組み合わせられる(例えばUS3,877,372号又はUS5,695,550号)。これらの代用品は、完全にイソプロパノールと置き換えることもでき、又は補充物として添加して、全イソプロパノール濃度を低下させてもよい。
【0012】
US2009/0081592号は、6〜8個の炭素原子を全体で有する少なくとも1種の非環式の炭化水素ジオール化合物であって、2個のヒドロキシル基を1位と2位とにそれぞれ有する化合物を含む湿し水組成物を挙げている。
【0013】
US4,278,467号は、n−ヘキソキシエチレングリコール、n−ヘキソキシジエチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、n−ブトキシエチレングリコールアセテート、n−ブトキシジエチレングリコールアセテート及び3−ブトキシ−2−プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種のものを含有する湿し水を開示している。
【0014】
2−エチル−1,3−ヘキサンジオールと、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロパングリコール及び1,5−ペンタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種のものとを含む湿し水は、US4,560,410号に挙げられている。
【0015】
これらの湿し水は、イソプロピルアルコールを含有しないので、それらは、安全性と衛生の観点で好ましい。しかしながら、印刷作業の間の印刷版の非画像領域に関する湿潤性は、十分ではなく、かつ時として、その非画像領域が、特に高速の印刷作業の間に汚れるということが観察される。これは、ハーフドット画像部の、いわゆるインキ拡散、すなわちハーフドット画像の形状が異常に変形する現象を引き起こすことがある。さらに、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールは、水に十分に可溶性ではないため、その使用は、湿し水濃縮液又は高濃度を有する湿し水用の添加剤を得るためには好ましくない。
【0016】
US5,106,414号は、脂肪族アルコールもしくは5〜11個の炭素原子を有するジオールであって、1〜10単位のエチレンオキシドが付加されたアルコールからなる湿し水を開示している。同様の湿し水は、US5,308,388号に挙げられており、そこでは、5〜15個の炭素原子を有するアルカノール、アルケノール又はアルカンジオールもしくはアルケンジオールは、3〜12個のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの単位をもって転化されている。かかる代用品は、湿し水へと、その湿し水の粘度に殆ど影響がない少量で添加される。従って、かかる湿し水を使用する場合には、連続流動式の湿しシステムにおいて、より高速のローラ速度が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】US3,705,451号
【特許文献2】US3,877,372号
【特許文献3】US5,695,550号
【特許文献4】US2009/0081592号
【特許文献5】US4,278,467号
【特許文献6】US4,560,410号
【特許文献7】US5,106,414号
【特許文献8】US5,308,388号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、優れた印刷再現性、例えば画像の印刷媒体への正確な転写を可能にする湿し水を提供することであった。従って、本発明の対象は、滲みを最小限にする湿し水を提供することであった。また、本発明の対象は、オフセット印刷における潤滑な作業を可能にする湿し水を提供すること、例えばブランケット上でのインキ堆積を最小限にすることであった。本発明のもう一つの目的は、インキの適切な乳化を可能にする湿し水を提供すること、例えば不鮮明な画像もしくはボイドを有する画像をもたらすことがある過剰乳化を防ぐこと、又は乏しいインキの転写とブランケットでのインキ堆積をもたらすことがある不十分な水の吸収(乏しい乳化)を防ぐことであった。また、印刷作業の間により高い処理量を可能にすることが意図された。従って、減感特性を高めるために低い動的表面張力を有し、かつ画版上での湿し水の均一な分布を可能にする十分に高い動的粘度を有する湿し水を提供することが目的であった。さらに、色あせ効果とインキ滲みを最小限とするために適度の蒸発傾向を示す湿潤剤を有する湿し水を提供することが意図された。本発明の更なる他の目的は、現在の衛生及び環境の規制を受けない湿し水もしくは湿し水濃縮液を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の課題は、水とt−アミルアルコール(2−メチル−2−ブタノール)とを含む、オフセット印刷用の湿し水によって解決される。
【0020】
また、本発明は、水で希釈することで、本発明による、すぐ使用できる湿し水を提供できる、オフセット印刷用の湿し水濃縮液にも関する。湿し水濃縮液の提供の利点は、濃縮液の製造元から、印刷機の作業員へと、水を輸送する必要がないことである。
【0021】
本発明の湿し水濃縮液は、t−アミルアルコール(2−メチル−2−ブタノール)を含む。
【0022】
湿し水濃縮液は、10〜100質量%の、好ましくは20〜95質量%の、より好ましくは5〜75質量%の、さらにより好ましくは7.5〜60質量%の、最も好ましくは10〜50質量%のt−アミルアルコールを含む。
【0023】
t−アミルアルコールの他に、該湿し水濃縮液は、また、補助的な湿潤剤を含んでもよい。
【0024】
好ましくは、補助的な湿潤剤は、t−アミルアルコールと混和性の界面活性剤もしくは補助的な湿潤性溶剤である。界面活性剤は、好ましくは、ノニオン系の、アニオン系の界面活性剤、N−アルキルピロリドン及びアセチレンアルコール並びにそれらの誘導体である。
【0025】
好ましいアニオン系の界面活性剤は、脂肪酸塩、アビエチン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、直鎖状のアルキルベンゼンスルホン酸塩、分枝鎖状のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルフェニルエーテル塩、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩、硫酸化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーの部分鹸化生成物、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーの部分鹸化生成物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などである。
【0026】
好ましいノニオン系の界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセロール脂肪酸部分エステル、ソルビタン脂肪酸部分エステル、ペンタエリトリトール脂肪酸部分エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン化されたひまし油、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸部分エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどである。さらに、フッ素化学系の界面活性剤及びケイ素系の界面活性剤を使用してもよい。好ましいN−アルキルピロリドンは、N−エチルピロリドン、N−ブチルピロリドン、N−ペンチルピロリドン、N−ヘキシルピロリドン、N−オクチルピロリドン及びN−ラウリルピロリドンである。好ましいアセチレンアルコール及びそれらの誘導体は、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの前記アセチレンアルコールへの付加化合物、例えばエトキシ化された2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(Surfynol(登録商標)440として入手可能)などである。これらの中でも、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール並びに4〜10個のエチレンオキシドの2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールへの付加化合物が好ましい。
【0027】
さらに、2種以上の界面活性剤の組み合わせを使用することができる。湿し水濃縮液の全質量に対する、界面活性剤の量は、一般に、0〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜8質量%である。
【0028】
補助的な湿潤性溶剤は、t−アミルアルコールと完全に混和性な、もしくは少なくとも部分的に混和性な溶剤である。
【0029】
好ましくは、t−アミルアルコールと混和性な補助的な湿潤性溶剤は、アルコール、多価アルコールのエーテル、例えば多価アルコールとエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドとの付加物である。
【0030】
より好ましくは、t−アミルアルコールとの混和性を有する補助的な湿潤性溶剤は、n−プロピルアルコール、n−ペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2,2−ジメチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールイソブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチレングリコール、グリセリン、3−メトキシ−3−メチルブタンからなる群から選択される。
【0031】
湿し水濃縮液に対する、t−アミルアルコールとの混和性を有する補助的な湿潤性溶剤の量は、一般に、0〜60質量%、好ましくは5〜55質量%、より好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは15〜50質量%である。
【0032】
好ましい一実施態様においては、湿し水濃縮液は、10質量%未満の、好ましくは5質量%未満の、最も好ましくは1質量%未満のイソプロピルアルコールを含む。最も好ましくは、本発明による湿し水及び湿し水濃縮液は、イソプロピルアルコールを含まない。
【0033】
本発明の更なる好ましい一実施態様においては、本発明による湿し水濃縮液は、また水を含む。
【0034】
湿し水濃縮液の全質量に対する、水の量は、一般に、0〜75質量%、好ましくは5〜75質量%、より好ましくは7.5〜60質量%、最も好ましくは15〜55質量%である。本発明による湿し水は、場合によりまた、減感剤、pH調整剤、キレート化剤及び他の添加剤、例えば矯臭剤、保存剤、防食剤、抑泡剤などを含んでもよい。追加の成分の量と選択は、適用分野及び印刷設定に依存し、それらは当業者に公知である。
【0035】
湿し水濃縮液は、場合により、非画像領域に、水受理性とインキ反発性を付与する減感剤を含んでよい。水性の減感剤の例には、水溶性の天然ポリマー、例えばアラビアゴム、デキストリン及びカルボキシメチルセルロースの水溶液並びに水溶性の合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクリル酸の水溶液が含まれる。
【0036】
湿し水濃縮液中の減感剤の量は、湿し水濃縮液の質量に対して、好ましくは、0〜15質量%の、より好ましくは1〜10質量%の、最も好ましくは3〜8質量%の範囲にある。
【0037】
湿し水濃縮液は、付加的に、pH調整剤を含んでよい。pH調整剤は、湿し水中の特定のpH範囲を調整するため、又は湿し水を緩衝するために使用してよい。
【0038】
湿し水は、アラビアゴムなどの減感剤が使用される場合には、好ましくは僅かに酸性ないし中程度に酸性、例えば3〜7のpH範囲にある。それというのも、アラビアゴムは、pHが5より高く上がるとその効力を失うことがあるからである。この場合に、刷版への付着能力を失って、インキは、刷版に非画像領域で付着し始めることがある。その問題は、地汚れとして知られる。しかし、過剰な酸性は、また地汚れ(酸は、版の保護塗膜を侵食し去るので)並びにプレート・ブラインディング(plate blinding)(そこでは、酸は、版の画像領域を侵食し去り、インキ受理性の欠如をもたらす)を引き起こすことがある高められた酸性は、また、ローラストリッピング又はインキローラのインキ受理性の欠如を引き起こすこともある。湿し水は、中性紙もしくは炭酸カルシウムを充填剤あるいは被覆として含有する紙を印刷法で使用する場合に、好ましくは僅かにアルカリ性、例えば7〜11のpH範囲にある。炭酸カルシウムは、アルカリ性物質であり、その粒子が酸性の湿し水と接触すると、有毒な作用が生じうる。僅かにアルカリ性の湿し水が望まれるのであれば、さらに、減感剤としてゴムを使用しないことが好ましい。pH調整剤は、通常は、水溶性の有機酸及び/又は無機酸及び/又はそれらの塩である。
【0039】
好ましい有機酸には、例えばクエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、マロン酸、レブリン酸、スルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが含まれる。
【0040】
好ましい無機酸には、リン酸、硝酸、硫酸、ポリリン酸などが含まれる。
【0041】
さらに、これらの有機酸及び/又は無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩もしくは有機アミン塩、特にアルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩もしくはアルカリ土類金属ケイ酸塩、特に炭酸ナトリウムもしくはケイ酸ナトリウムを使用することが好ましく、かかる有機酸及び無機酸並びにそれらの塩は、単独でもしくは1種以上の組み合わせにおいて使用することができる。
【0042】
湿し水濃縮液の全質量に対する、pH調整剤の量は、一般に、0〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、最も好ましくは3〜8質量%である。
【0043】
湿し水濃縮液は、場合によりキレート化剤を含有してもよい。キレート化剤は、一般に、印刷法に悪影響を与えることがあるカルシウムイオンを結合するために硬水軟化剤として使用される。
【0044】
好ましいキレート化剤の例には、エチレンジアミノ四酢酸並びにそのカリウム塩及びナトリウム塩;ジエチレントリアミン五酢酸並びにそのカリウム塩及びナトリウム塩;トリエチレンテトラミン六酢酸並びにそのカリウム塩及びナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸並びにカリウム塩及びナトリウム塩;ニトリロ三酢酸及びそのナトリウム塩;有機ホスホン酸、例えば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸並びにカリウム塩及びナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)及びそのカリウム塩及びナトリウム塩並びにホスホノアルカントリカルボン酸が含まれる。有機アミン塩は、またキレート化剤としても使用できる。湿し水濃縮液の全質量に対する、キレート化剤の量は、一般に、0〜5質量%、好ましくは0.1〜2.5質量%、最も好ましくは0.3〜1質量%のキレート化剤である。
【0045】
さらに、湿し水濃縮液は、また、他の添加剤、例えば矯臭剤、保存剤、防食剤、抑泡剤、界面活性剤などを含んでもよい。
【0046】
矯臭剤には、フレーバーとして使用するのに通常知られるエステルが含まれる。使用できる矯臭剤の特定の例には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチル吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、4−メチルペンタン酸(イソヘキサン酸)、2−ヘキセン酸、4−ペンテン酸、ヘプタノン酸、2−メチルヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、2−デセン酸、ラウリン酸もしくはミリスチン酸が含まれる。さらに、矯臭剤には、また、アセト酢酸エステル、例えばベンジルフェニルアセテート、エチルアセトアセテート及び2−ヘキシルアセトアセテートが含まれる。それらの中でも、n−ペンチルアセテート、イソペンチルアセテート、n−ブチルブチレート、n−ペンチルブチレート及びイソペンチルブチレートが好ましく、特にn−ブチルブチレート、n−ペンチルブチレート及びイソペンチルブチレートが好ましい。
【0047】
本発明の湿し水のために使用できる保存剤には、フェノールもしくはその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、アミジンもしくはグアニジンの誘導体、第四級アンモニウム塩、ピリジン、キノリンもしくはグアニジンの誘導体、ジアジンもしくはトリアゾールの誘導体、オキサゾールもしくはオキサジンの誘導体、ブロモニトロアルコール、例えばブロモニトロプロパノール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン2,4−ジオールなどが含まれる。保存剤の添加に好ましい量は、細菌、菌類、酵母などにその作用を安定的に示す量であり、細菌、菌類及び酵母の種類によって変化する。
【0048】
本発明のために使用できる防食剤には、ベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、チオサリチル酸、ベンゾイミダゾール並びにそれらの誘導体などが含まれる。
【0049】
湿し水濃縮物の全質量に対する、他の添加剤の量は、一般に、0〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%、最も好ましくは3〜8質量%である。
【0050】
好ましい一実施態様においては、本発明による湿し水濃縮液は:
湿し水濃縮液の質量に対して、
t−アミルアルコール:15〜75質量%、及び/又は
水:0〜75質量%、及び/又は
補助的な湿潤性溶剤:0〜60質量%、及び/又は
減感剤:0〜15質量%、及び/又は
pH調整剤:0〜15質量%、及び/又は
キレート化剤:0〜5質量%、及び/又は
界面活性剤:0〜15質量%、及び/又は
矯臭剤、保存剤、防食剤、抑泡剤を含む他の添加剤:0〜15質量%
を含む。
【0051】
もう一つの好ましい実施態様においては、本発明による湿し水濃縮液は、より好ましくは付加的に:
湿し水濃縮液の質量に対して、
t−アミルアルコール:7.5〜60質量%、及び/又は
水:5〜75質量%、及び/又は
補助的な湿潤性溶剤:5〜55質量%、及び/又は
減感剤:1〜10質量%、及び/又は
pH調整剤:1〜10質量%、及び/又は
キレート化剤:0.1〜2.5質量%、及び/又は
界面活性剤:1〜10質量%、及び/又は
矯臭剤、保存剤、防食剤、抑泡剤を含む他の添加剤:1〜10質量%
を含む。
【0052】
より好ましい一実施態様においては、本発明による湿し水濃縮液は、より好ましくは付加的に:
湿し水濃縮液の質量に対して、
t−アミルアルコール:10〜50質量%、及び/又は
水:7.5〜60質量%、及び/又は
補助的な湿潤性溶剤:10〜50質量%、及び/又は
減感剤:3〜8質量%、及び/又は
pH調整剤:3〜8質量%、及び/又は
キレート化剤:0.3〜1質量%、及び/又は
界面活性剤:3〜8質量%、及び/又は
矯臭剤、保存剤、防食剤、抑泡剤を含む他の添加剤:3〜8質量%
を含む。
【0053】
本発明による湿し水濃縮液は、t−アミルアルコールと水及び場合により他の成分、例えば減感剤、pH調整剤、キレート化剤もしくは他の添加剤、例えば矯臭剤、保存剤、防食剤、抑泡剤などとを混合することによって得ることができる。
【0054】
本発明による湿し水は、水を本発明による湿し水濃縮液に添加することによって得られる。得られる湿し水中のt−アミルアルコールと水との質量比は、好ましくは1:200〜20:100の範囲、より好ましくは1:100〜10:100の範囲、最も好ましくは3:100〜5:100の範囲にある。
【0055】
好ましい一実施態様においては、本発明による湿し水は:
湿し水濃縮液の質量に対して、
t−アミルアルコール:0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜10質量%、より好ましくは0.5〜3質量%、及び/又は
水:50〜99.9質量%、好ましくは70〜99.5質量%、より好ましくは95〜99質量%、及び/又は
補助的な湿潤性溶剤:0〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、及び/又は
減感剤:0〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、及び/又は
pH調整剤:0〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、及び/又は
キレート化剤:0〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.25質量%、及び/又は
界面活性剤:0〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、及び/又は
矯臭剤、保存剤、防食剤、抑泡剤を含む他の添加剤:0〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%
を含む。
【0056】
湿し水中でt−アミルアルコールを使用することによって、優れた適用特性を有する湿し水が得られる。
【0057】
本発明による湿し水は、当業者に公知の標準的な装置を用いて、画版の非画像領域を減感させるために、画版へと容易に適用できる。
【0058】
本発明による湿し水は、優れた印刷再現性、例えば印刷された媒体への画像の正確な転写を可能にする。滲みは、大きく低減される。本発明による湿し水は、また、オフセット印刷での潤滑な作業を可能にし、例えばブランケット上でのインキ堆積を最小限し、かつインキの適切な乳化を可能にし、不鮮明な画像もしくはボイドを有する画像をもたらすことがある過剰乳化を防ぐこと、又は乏しいインキの転写とブランケットでのインキ堆積をもたらすことがある少なすぎる水の吸収(乏しい乳化)を防ぐことを可能にする。本発明による湿し水は、印刷作業の間に高い処理速度を可能にする。本発明による湿し水は、減感特性を高めるために低い動的表面張力を有し、かつ画版上での湿し水の均一な分布を可能にするために十分に高い動的粘度を有する。さらに、本発明による湿し水は、色あせ効果とインキ滲みを最小限にする。本発明による湿し水は、最近の衛生と環境の規則に準拠している。
【0059】
本発明による印刷方法に従って得られた印刷された媒体は、高い処理速度であっても高い品質を有する。
【0060】
本発明を、以下の実施例によって例示する:
【実施例】
【0061】
以下の湿し水を、それぞれの量のアルコールと水との混合によって調製した:
a)1質量%のt−アミルアルコール;99質量%の水
b)3質量%のt−アミルアルコール;97質量%の水
c)5質量%のt−アミルアルコール;95質量%の水
d)1質量%のt−ブチルアルコール;99質量%の水(比較例)
e)3質量%のt−ブチルアルコール;97質量%の水(比較例)
f)5質量%のt−ブチルアルコール;95質量%の水(比較例)
g)1質量%のイソプロピルアルコール;99質量%の水(比較例)
h)3質量%のイソプロピルアルコール;97質量%の水(比較例)
i)5質量%のイソプロピルアルコール;95質量%の水(比較例)
それらの混合物の動的粘度は、20℃で測定した。結果を表に列記する。
【0062】
それらの混合物の静的表面張力は、泡圧法に従って、協和界面科学株式会社による自動型動的表面張力計BP−Dを用いて測定した。それらの結果も第1表に列記する。
【0063】
第1表:
【表1】

【0064】
t−アミルアルコールと水を基礎とする湿し水は、他のアルコールを基礎とする湿し水と比較してより低い表面張力を有することが明らかである。しかしながら、湿し水中でのt−アミルアルコールの使用は、湿し水の粘度の不所望な低減をもたらすものではない。従って、本発明による湿し水は、粘度を犠牲にすることなく、低い表面張力を併せ持つことができる。
【0065】
また、FSEは、本発明の湿し水については、他のアルコールを基礎とする同じ濃度の湿し水と比較してより高い。FSEは、オフセット印刷法の間に湿し水を一方のローラから他方のローラへと供給できる効率についての尺度である。
【0066】
適用試験:
以下の湿し水濃縮液を、t−アミルアルコールの量と、以下の:
水:19質量%;
補助的な湿潤性溶剤:60質量%;
減感剤:5質量%;
pH調整剤:5質量%;
キレート化剤:1質量%;
界面活性剤:5質量%;
他の添加剤:5質量%
を含む湿し水基礎混合物のそれぞれの量(湿し水基礎混合物の全質量に対する)とを混合することによって調製した。
【0067】
それぞれの湿し水は、それぞれの量の湿し水濃縮液と、それぞれの量の水との混合によって得られた。
【0068】
湿し水濃縮液I:
a)t−アミルアルコール:33.33質量%;
b)湿し水基礎混合物:66.67質量%
湿し水I:
a)湿し水濃縮液I:3質量%;
b)水:97質量%
湿し水濃縮液II:
a)t−アミルアルコール:20質量%;
b)湿し水基礎混合物:80質量%
湿し水II:
a)湿し水濃縮液II:2.5質量%;
b)水:97.5質量%
湿し水濃縮液III:
a)t−アミルアルコール:32.3質量%;
b)湿し水基礎混合物:64.5質量%;
c)N−オクチルピロリドン:3.2質量%
湿し水III:
a)湿し水濃縮液III:3.1質量%;
b)水:96.9質量%
湿し水濃縮液IV:
a)t−アミルアルコール:50質量%;
b)湿し水基礎混合物:50質量%
湿し水IV:
a)湿し水濃縮液IV:2質量%;
b)水:98質量%
湿し水濃縮液V:
a)t−アミルアルコール:47.6質量%;
b)湿し水基礎混合物:47.6質量%;
c)N−オクチルピロリドン:4.8質量%
湿し水V:
a)湿し水濃縮液V:2.1質量%;
b)水:97.9質量%
湿し水濃縮液VI:
a)t−アミルアルコール:47.6質量%;
b)湿し水基礎混合物:47.6質量%;
c)Surfynol(登録商標)440(Air Products):4.8質量%
湿し水VI:
a)湿し水濃縮液VI:2.1質量%;
b)水:97.9質量%
湿し水濃縮液VII(比較例):
a)湿し水基礎混合物:2質量%
湿し水VII(比較例):
a)湿し水濃縮液VII:2質量%;
b)水:98質量%
湿し水濃縮液VIII(比較例):
a)湿し水基礎混合物:40質量%;
b)イソプロピルアルコール:60質量%
湿し水VIII(比較例):
a)湿し水濃縮液VIII:2.1質量%;
b)水:97.9質量%
印刷試験は、商業用印刷機(三菱のLithopia Max BT−2 800)で実施した。印刷速度は、800rpmであった。
【0069】
使用した紙は以下の等級のものであった:日本製紙株式会社によって製造されたオーロラ(登録商標)紙。
【0070】
印刷は、20〜25℃の周囲温度で、かつ40〜50%の相対湿度で実施した。
【0071】
以下のインキを使用した:東洋インキ製造株式会社製のWD LEO−X。
【0072】
種々の湿し水を用いた印刷特性を評価した。その結果を、第2表にまとめる。
【0073】
第2表:
【表2】

【0074】
1) 最低の水源ダイヤル番号は、印刷機の湿し水供給速度制御の設定を指している。実験のために使用された三菱の印刷機は、0〜100のダイヤル範囲を有している。小さい値の水源ダイヤル番号は、より低い湿し水の供給速度に相当する。できるだけ低い値を得るためには、紙に染みが発生せず、かつ印刷作業が安定する設定が可能である。本発明の湿し水が使用される場合に、より良い印刷特性を得るために、同等のもしくはより低い湿し水の供給速度を適用できることは明らかである。
【0075】
2) インキの乳化可能性は、最低の水ダイヤル番号で10000枚の紙を印刷した後に照らし合わされた。乳化可能性は、視覚的にかつ以下の段階による評点として評価した:A:良好;B:多少悪い;C:非常に悪い。インキと湿し水との間での乳化もしくは混合は、転写工程の間の剪断力により生ずる。インキがあまり多すぎる水を取り込んで、過剰乳化となると、基材上にボイドと不鮮明な画像を残す。インキが水と混和せずに安定なエマルジョンが形成されないと、インキはまだらになり、画版へのインキ転写はより粗悪になるため、インキが画版上に留まり、基材上に転写されないことで、インキ堆積が生じることがある。
【0076】
3) インキ及び湿し水の滲み特性を、視覚的にかつ以下の段階による評点として評価した:A:良好;B:多少悪い;C:非常に悪い。滲みは、インキの着色顔料が湿し水によって溶出されるときに起こる。この効果は、湿し水の変色と、印刷版の非画像領域におけるインキの蓄積をもたらす。
【0077】
4) 印刷再現性は、印刷版上の画像を紙に再現する品質の程度についての尺度である。印刷再現性は、印刷された紙上のハーフトーンドットのサイズと比較した、印刷版上のハーフトーンドットのサイズの比較によって評価される。印刷再現性は、以下の段階により評点を付けた:A:良好(ハーフトーンドットのサイズの大きな増加はない);B:多少悪い(ハーフトーンドットのサイズの中程度の増加);C:非常に悪い(ハーフトーンドットのサイズに大きな増加)。
【0078】
5) ブランケットの耐堆積性は、画版から紙へと画像を転送するのに使用されるブランケットの表面上に蓄積されるインキ量のための尺度である。ブランケットの耐堆積性は、ブランケット上でインキが殆ど蓄積しないか全く蓄積しない場合に良好とし、かつブランケット上に視覚的に多量のインキが蓄積された場合に悪いとする。ブランケットの耐堆積性は、以下の段階によって評点を付けた:A:良好;B:多少悪い;C:非常に悪い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
t−アミルアルコールを含む、オフセット印刷用の湿し水濃縮液。
【請求項2】
20〜95質量%のt−アミルアルコールを含む、請求項1に記載の湿し水濃縮液。
【請求項3】
水を含み、t−アミルアルコールと水との質量比が、95:5〜70:30の範囲にある、請求項1又は2に記載の湿し水濃縮液。
【請求項4】
湿し水濃縮液の質量に対して、
t−アミルアルコール:7.5〜60質量%、及び/又は
水:5〜75質量%、及び/又は
補助的な湿潤性溶剤:5〜55質量%、及び/又は
減感剤:1〜10質量%、及び/又は
pH調整剤:1〜10質量%、及び/又は
キレート化剤:0.1〜2.5質量%、及び/又は
界面活性剤:1〜10質量%、及び/又は
矯臭剤、保存剤、防食剤、抑泡剤を含む他の添加剤:1〜10質量%
を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の湿し水濃縮液。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の湿し水濃縮液に水を添加することにより得られる、オフセット印刷用の湿し水。
【請求項6】
t−アミルアルコールと水との質量比が、1:200〜20:100の範囲にある、請求項5に記載の湿し水。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のオフセット印刷用の湿し水の製造方法であって、請求項1から4までのいずれか1項に記載の湿し水濃縮液と水とを混合することによって行う製造方法。
【請求項8】
湿し水濃縮液の質量に対して、
t−アミルアルコール:0.3〜10質量%、及び/又は
水:70〜99.5質量%、及び/又は
補助的な湿潤性溶剤:0.05〜3質量%、及び/又は
減感剤:0.05〜3質量%、及び/又は
pH調整剤:0.05〜3質量%、及び/又は
キレート化剤:0.01〜0.5質量%、及び/又は
界面活性剤:0.05〜3質量%、及び/又は
矯臭剤、保存剤、防食剤、抑泡剤を含む、他の添加剤:0.05〜3質量%
を含む、オフセット印刷用の湿し水。
【請求項9】
t−アミルアルコールを、オフセット印刷用の湿し水中の一成分として用いる使用。
【請求項10】
t−アミルアルコールを含む湿し水を、オフセット印刷のために用いる使用。
【請求項11】
オフセット印刷法であって、請求項6から8までのいずれか1項に記載の湿し水を、画版の非画像領域を減感させるために画版へと適用する、オフセット印刷法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法により得られる印刷された媒体。

【公開番号】特開2012−91461(P2012−91461A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−242557(P2010−242557)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(596030210)株式会社ニチナン化学 (1)
【Fターム(参考)】