説明

湿分分離装置

【課題】 蒸気タービンのプラントに用いる湿分分離装置において、水位検出にかかる作動部品の摩耗や損傷、及びスイッチの誤動作を抑制すること。
【解決手段】 本発明は、蒸気タービンから排出される蒸気を第1の容器内に取り込んで、蒸気の湿分を分離する湿分分離装置において、第1の容器の底部に滞留する分離水の水位を検知するレベル検出器を設け、このレベル検出器は、第1の容器と検出管21を介して連通される第2の容器31内の水位の変化に応じて昇降するフロート35と、このフロート35の昇降に応じて案内筒41内を昇降自由に設けられたマグネット39と、案内筒41を挟んでマグネット39と対向する位置に衝撃吸収部材を介して取り付けられ、マグネット39の昇降に応じて変化する磁界を検知するリードスイッチ43と、を備えてなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿分分離装置に係り、特に、蒸気タービンシステムの高圧タービンと低圧タービンの間に設けられる湿分分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気タービンシステムは、高圧タービンと、この高圧タービンから排出される蒸気により駆動する低圧タービンとを備え、高圧タービンと低圧タービンとの間には、高圧タービンから排出された蒸気を取り込んで湿分を除去する湿分分離装置が設置されている。すなわち、高圧タービンで仕事をした蒸気は、湿り度が増加するため、湿分分離装置にて湿分が除去された後、低圧タービンに供給される。一方、湿分分離装置にて分離された湿分は、ドレンとなってドレンタンクへ導かれる。
【0003】
このように、湿分分離装置は蒸気から分離した湿分をドレンとして回収するが、何らかの要因で湿分分離装置内のドレンの排出がうまくゆかず、停留したドレンが蒸気に同伴されて低圧タービン側へ流出すると、蒸気タービンに損傷を与えるおそれがある。このため、湿分分離装置では、ドレンの水位を検出し、保護インターロックを働かせることにより、水位を所定の高さに保つようにしている。
【0004】
ドレンの水位を検出する装置としては、例えば、湿分分離装置の容器下部から検出管を導き、この検出管に接続された容器内に水位の変化に応じて昇降するフロートを収容したレベル検出装置が知られている。一般に、湿分分離装置のレベル検出装置には、フロートに取り付けられたマグネットが変位することで、容器の外側に対向して設置された別のマグネットが作動レバーを動かし、機械的な伝達機構によりマイクロスイッチを作動させる機構が多く使用されている。
【0005】
しかし、このようなマイクロスイッチを備えた機構によれば、スイッチを作動させる際に大きな駆動力が必要となる。このため、例えば、マイクロスイッチに替えて、リードスイッチを用いる方法が考えられる(例えば、特許文献1参照。)。これによれば、機械的な伝達機構を省略し、磁石のみでスイッチを駆動できる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−318151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、蒸気タービンのプラントに接続されたレベル検出装置の場合、蒸気の流量や流れの状態、検出管のサポート方法、レベルスイッチの固定方法等によっては、例えば、過渡運転時において、振動や衝撃が伝わり、マイクロスイッチの伝達機構の作動部品は支持部から摩耗が進行し、交換頻度が高くなる。このような振動による影響を抑制する方法として、検出管を長くし、レベル検出装置に伝播する振動を減衰させる方法が考えられるが、これによれば、水位の検出に遅れを生じるおそれがある。
【0008】
一方、特許文献1のようにリードスイッチを用いると、フロートの変位を磁気誘導のみで検知できるため、作動部品の摩耗による問題は解決できるが、リードスイッチは通常固定電極と可動電極が不活性ガスとともにガラス管内に密封された構造のため、振動や衝撃に対する耐久性が悪く、誤動作も生じ易い。
【0009】
本発明は、蒸気タービンのプラントに用いる湿分分離装置において、水位検出にかかる作動部品の摩耗や損傷、及びスイッチの誤動作を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、蒸気タービンから排出される蒸気を第1の容器内に取り込んで、蒸気の湿分を分離する湿分分離装置において、第1の容器の底部に滞留する分離水の水位を検知するレベル検出器を設け、このレベル検出器は、第1の容器と検出管を介して連通される第2の容器と、この第2の容器内の水位の変化に応じて昇降するフロートと、このフロートの昇降に応じて案内筒内を昇降自由に設けられたマグネットと、案内筒を挟んでマグネットと対向する位置に衝撃吸収部材を介して取り付けられ、マグネットの昇降に応じて変化する磁界を検知するリードスイッチとを備えてなることを特徴とする。
【0011】
このように、衝撃吸収部材を用いることにより蒸気タービンの運転に伴う振動や衝撃を吸収できるため、従来のマイクロスイッチに代えてリードスイッチを用いても、破損や誤動作を生じることなく、水位を検知できる。これにより、リードスイッチへの伝達機構は、マグネットによる磁気誘導のみとなり、作動部品は不要となるため、摩耗や損傷による耐久性の低下を回避できる。
【0012】
この場合において、リードスイッチは、案内筒の周囲の同一高さ位置に複数設置されていることが好ましい。これによれば、1台のリードスイッチが故障しても機能を確保できるため、レベル検出機能の信頼性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蒸気タービンのプラントに用いる湿分分離装置において、水位検出にかかる作動部品の摩耗や損傷、及びスイッチの誤動作を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の湿分分離装置の実施の形態について図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の湿分分離装置の一例を示す全体構成図である。図2は、図1の湿分分離装置に取り付けられたレベル検出装置を示す構成図である。図3は、図2のリードスイッチの取り付け状態を示す上面図であり、図4は、側面図である。
【0015】
本実施形態の湿分分離装置は蒸気タービンシステムにおいて、例えば、高圧タービンと低圧タービンとの間に設けられ、高圧タービンで仕事をした蒸気の湿り度を低下させるものである。この湿分分離装置は、蒸気から分離された湿分をドレンとして排出する際に、ドレンの水位を検出するレベル検出装置を備えている。
【0016】
本実施形態の湿分分離装置は、図1に示すように、縦型の容器1、湿分分離板3、分離室5、ドレンを排出する降水管7を備えて構成される。容器1の側面には、高圧タービンから排出された蒸気が流入する蒸気入口9と、容器1内で湿分が分離された蒸気を低圧タービンに向けて排出する蒸気出口11が設けられている。
【0017】
容器1内には、板状部材13で囲まれた分離室5が形成され、この分離室5内には、湿分分離板3が高さ方向に延在して設けられている。板状部材13の側面には、分離室5へ流入する蒸気の入口となる分離板蒸気入口15と、該蒸気の出口となる分離板蒸気出口17が形成されている。分離室5の底部には、蒸気から分離された湿分をドレンとして排出する排出管19が設けられている。
【0018】
分離室5を形成する板状部材13の下方には、高さ位置の異なる2本の検出管21が連結されており、この検出管21は、容器1の側壁を貫通して外部に導かれ、レベル検出装置23に連結されている。
【0019】
レベル検出装置23は、図2に示すように、ボディ31、スイッチケース33、フロート35、フロートステム37、マグネット39、筒部41、リードスイッチ43、端子台45を備えて構成される。ボディ31とスイッチケース33は、フランジ47によって連結されており、スイッチケース33の内部には、フランジ47の内周面を高さ方向に延在させた内周面を有する筒部41が設けられている。すなわち、ボディ31、フランジ47、筒部41は互いに連結された一つの空間を形成し、ボディ31の空間は、フランジ47から筒部41にかけて円柱状に絞られた空間と連結されている。
【0020】
ボディ31の側面には検出管21が連結されており、検出管21を介してドレンが流入し、ボディ31の内部空間に溜まるようになっている。ボディ31内には、ドレンに対して浮力を有するフロート35が配置され、このフロート35に連結された棒状のフロートステム37は、フランジ47を介して筒部41に延在している。フロートステム37の先端部には、マグネット39が接続されている。フロート35とフロートステム37とマグネット39は一体的に形成されるため、ドレンの水位の変化に応じて、フロート35に連結されたマグネット39が筒部41内を昇降するようになっている。
【0021】
筒部41の外周側の所定の高さ位置には、マグネット39と対向するようにリードスイッチ43が配置されている。このリードスイッチ43は、ガラスチューブに磁性体からなる可動電極の切片と、固定電極が対向して配置され、これらは不活性ガスとともに封入されている。各電極は端子台45とそれぞれ電気的に接続されている。
【0022】
次に、リードスイッチ43の取付部分の構成について説明する。リードスイッチ43は、図3,4に示すように、L字状の取付ブラケット49に取り付けられており、この取付ブラケット49は一端がフランジ47の上部にボルトを介して固定されている。
【0023】
ところで、リードスイッチ43は、構造上、振動や衝撃に対し、耐久性が低く、振動などによる誤動作が生じ易い。特に、本実施形態のレベル検出装置23は、蒸気タービンシステムの湿分分離装置に設けられるため、例えば、プラントの過渡運転時に発生する振動や衝撃からリードスイッチ43を保護する必要がある。
【0024】
そこで、本実施形態では、リードスイッチ43の取付部分に、衝撃緩和構造を設けている。すなわち、リードスイッチ43の外周面(ガラスチューブの外周面)を、弾力性を有する衝撃吸収部材53を介して取付具51によって固定するようにしている。衝撃吸収部材53としては、例えば、シリコン樹脂などが用いられるが、リードスイッチ43に伝播される振動や衝撃を吸収する性能、つまり、リードスイッチ43を破損や誤動作から保護する程度の衝撃吸収性能を有するものであれば、これに限定されず、例えば、樹脂製やゴム製の弾性部材を適宜選択して用いることができる。
【0025】
次に、本実施形態の動作を説明する。
【0026】
高圧タービンから排出された蒸気は、蒸気入口9から容器1内に流入する。そして、分離板蒸気入口15を通って分離室5内に導かれた蒸気は、湿分分離板3にて湿分が除去された後、分離板蒸気出口17を通じて分離室5内から流出し、その後、蒸気出口11を通って低圧タービンへ流出する。湿分分離板3で分離された湿分はドレンとなって分離室5の下部に一旦停留した後、排出管19、降水管7を通ってドレンタンクへ流出する。
【0027】
分離室5の下部に停留したドレンは分離されるドレン量の増加、配管閉塞等によりその水位が上昇するため、分離室5の下部から検出管21を導き、レベル検出装置23にてドレンが一定水位以上になったことを検知して、保護インターロックをかけるようにしている。
【0028】
レベル検出装置23において、ボディ31には、検出管21を通じて流入したドレンが停留し、ボディ31、フランジ47、筒部41には、一体となって所定の蒸気圧力がかけられている。ボディ31の水面にはフロート35が浮上している。ドレンの水位が上昇すると、フロート35が上昇し、フロート35に押し上げられてマグネット39が上昇する。マグネット39の上昇とともに、マグネット39の周りに形成される磁界の領域が上昇し、この磁界がリードスイッチ43の動作範囲48に入ると、リードスイッチ43は、磁気誘導により動作(電極同士が接触)するため、水位が管理上限に達したことを検知できる。
【0029】
本実施形態では、蒸気タービンの運転時において、レベル検出器23に振動や衝撃が伝播することから、衝撃吸収部材53をリードスイッチ43のガラスチューブに装着させ、この衝撃吸収部材53の外側から取付具51を用いて取付ブラケット49に固定するようにしている。これにより、取付ブラケット49を介して伝播する振動や衝撃を衝撃吸収部材53によって吸収、減衰することができ、リードスイッチ43の破損や誤動作を防止することができる。
【0030】
本実施形態のレベル検出装置23は、構成部品の作動支点を持たず、マグネット39はフロート35の浮上力のみによって動作するため、ドレンの水位の上昇はマグネット39とリードスイッチ43による磁気誘導のみで検知する。これにより、レベル検出装置23の構成部品、つまり機械的可動部の支点を中心とした摩耗、損傷による交換作業を低減することができ、プラント運転時の振動や衝撃に対して、誤動作をなくし、かつ高い耐久性を得ることができる。また、検出管21を延長する必要がないため、急な水位増加の検出遅れを生じることがない。
【0031】
また、本実施形態のレベル検出装置23は、筒部41の周りの同一高さ位置に、2台のリードスイッチ43を配置し、1つのマグネット39で2台のリードスイッチ43を駆動させるようにしている。これにより、1台のリードスイッチ43が故障しても機能を確保することができ、レベル検出機能の信頼性を一層向上させることができる。なお、本実施形態では、2台のリードスイッチ43を設ける例について説明したが、これに限定されず、筒部41の周りに取付可能であれば、さらに多くのリードスイッチ43を配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態の湿分分離装置の一例を示す全体構成図である。
【図2】図1の湿分分離装置に取り付けられたレベル検出器を示す構成図である。
【図3】図2のリードスイッチの取り付け状態を示す上面図である。
【図4】図2のリードスイッチの取り付け状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 容器
3 湿分分離板
5 分離室
7 降水管
9 蒸気入口
11 蒸気出口
13 板状部材
15 分離板蒸気入口
17 分離板蒸気出口
19 排出管
21 検出管
23 レベル検出装置
31 ボディ
33 スイッチケース
35 フロート
37 フロートステム
39 マグネット
41 筒部
43 リードスイッチ
47 フランジ
49 取付ブラケット
51 取付具
53 衝撃吸収部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンから排出される蒸気を第1の容器内に取り込んで、前記蒸気の湿分を分離する湿分分離装置において、
前記第1の容器の底部に滞留する分離水の水位を検知するレベル検出器を設け、該レベル検出器は、前記第1の容器と検出管を介して連通される第2の容器と、該第2の容器内の水位の変化に応じて昇降するフロートと、該フロートの昇降に応じて案内筒内を昇降自由に設けられたマグネットと、前記案内筒を挟んで前記マグネットと対向する位置に衝撃吸収部材を介して取り付けられ、前記マグネットの昇降に応じて変化する磁界を検知するリードスイッチとを備えてなることを特徴とする湿分分離装置。
【請求項2】
前記リードスイッチは、前記案内筒の周囲の同一高さ位置に複数設置されていることを特徴とする請求項1に記載の湿分分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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