説明

湿分硬化性シーリング材の塗装方法

【課題】架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含有するシーリング材の硬化物表面の塗装方法であって、シーリング材と塗料の密着性に優れる塗装方法を提供すること。
【解決手段】(A)珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、湿分によりシロキサン結合を形成することによって架橋し得る架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対し(B)アルキルフェノール樹脂1〜50重量部を含有する湿分硬化性シーリング材の硬化物表面の塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿分硬化性シーリング材の硬化物表面を塗装する方法であって、シーリング材と塗料の密着性に優れる塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、湿分によりシロキサン結合を形成することによって架橋し得る架橋性珪素基(以下、単に架橋性珪素基という)を有するポリオキシアルキレン系重合体は特許文献1に開示されている。また、この重合体は株式会社カネカからMSポリマー等の商品名で製造販売もされている。架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の代表的な例はポリオキシプロピレン重合体鎖の末端に架橋性珪素基としてメチルジメトキシシリル基を有する次のような重合体である。

CH(CHO)Si〜〜〜(ポリオキシプロピレン鎖)〜〜〜Si(OCHCH

【0003】
この重合体は通常液状であるので、基材に塗布することができ、また、隙間や型に充填することができる。塗布や充填の後、放置しておけば空気中の湿分により加水分解反応及びシラノール縮合反応を経て、重合体同士がシロキサン結合により架橋し、通常ゴム状の硬化物を生成する。このような特性を有するため、架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は変成シリコーン系シーリング材と呼ばれるシーリング材に利用されており、JIS A5758に規定の建築用シーリング材として特に有用である。
【0004】
シーリング材表面は塗装される場合がある。特に、シーリング材がサイディングボード等の壁材の目地に使用され、壁材表面が塗装される場合、目地のシーリング材も同時に塗装されることが多い。変成シリコーン系シーリング材はシリコーン系シーリング材に比較し、シーリング材表面への塗料の密着性に優れているが、塗料の密着性をさらに改善することが望まれる。
【0005】
特許文献1には変成シリコーン系シーリング材組成物に(メタ)アクリル酸の(ポリ)アルキレンオキシドエステルを添加することにより、塗料の密着性を改善できることが開示されている。特許文献2〜6には変成シリコーン系シーリング材組成物にアミノ基やアミノ基を生成し得る基を有する珪素化合物等を添加することにより、塗料の密着性を改善できることが開示されている。特許文献7には変成シリコーン系シーリング材組成物にアルキルアリールスルホンアミドを添加することにより、塗料の密着性を改善できることが開示されている。
【0006】
特許文献8には変成シリコーン系シーリング材組成物にアミノシラン化合物とイソシアネート化合物との反応物を添加することにより、塗料の密着性を改善できることが開示されている。特許文献9には架橋性珪素基を特定量にしたポリオキシアルキレン系重合体を変成シリコーン系シーリング材に使用することにより、塗料の密着性を改善できることが開示されている。特許文献10にはメタロセン化合物を重合触媒とした(メタ)アクリル酸エステル重合体を添加することにより、塗料の密着性を改善できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−220315号公報
【特許文献2】特開平09−299874号公報
【特許文献3】特開平09−302213号公報
【特許文献4】特開平09−310015号公報
【特許文献5】特開平10−168299号公報
【特許文献6】特開2007−314727号公報
【特許文献7】特開2002−146216号公報
【特許文献8】特開2004−075836号公報
【特許文献9】特開2005−082681号公報
【特許文献10】特開2008−019300号公報
【特許文献11】国際公開2007−046472号公報
【特許文献12】特開2009−040827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含有するシーリング材の硬化物表面を塗装する方法であって、シーリング材と塗料の密着性に優れる塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体及び粘着付与剤を含有するシーリング材の硬化物の表面を塗装すると、シーリング材と塗料の密着性に優れることを見出した。さらに、粘着付与剤のなかでも、アルキルフェノール樹脂が特に優れたシーリング材と塗料の密着性を有することを見出した。すなわち、本発明は次のシーリング材の硬化物表面の塗装方法である。
【0010】
請求項1:
(A)珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、湿分によりシロキサン結合を形成することによって架橋し得る架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対し(B)アルキルフェノール樹脂1〜50重量部を含有する湿分硬化性シーリング材の硬化物表面の塗装方法。
【0011】
請求項2:
珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、湿分によりシロキサン結合を形成することによって架橋し得る架橋性珪素基が式(1)で表される架橋性珪素基であることを特徴とする請求項1に記載の塗装方法。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基またはRSiO−(Rは前記と同じ)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、Rが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2を、それぞれ示す。またn個の式(2):
【0014】
【化2】

におけるbは同一である必要はない。nは0〜19の整数を示す。但し、a+(bの和)≧1を満足するものとする。)
【0015】
請求項3:
式(1)で表される架橋性珪素基が式(3)で表される架橋性珪素基であることを特徴とする請求項2に記載の塗装方法。
【0016】
【化3】

(式中、R,X,aは前記と同じ)
【0017】
請求項4:
架橋性珪素基において加水分解性基がアルコキシ基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装方法。
【0018】
請求項5:
加水分解性基がメトキシ基であることを特徴とする請求項4記載の塗装方法。
【0019】
請求項6:
ポリオキシアルキレン系重合体がポリオキシプロピレン系重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗装方法。
【0020】
請求項7:
シーリング材がさらに(C)珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、湿分によりシロキサン結合を形成することによって架橋し得る架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体10〜100重量部を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装方法。
【0021】
請求項8:
(B)アルキルフェノール樹脂のアルキル基が炭素数2〜13のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗装方法。
【0022】
請求項9:
アルキル基がt−ブチル基であることを特徴とする請求項7に記載の塗装方法。
【0023】
請求項10:
シーリング材がさらに(D)硬化触媒0.1〜10重量部、を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗装方法。
【0024】
請求項11:
シーリング材が建築用シーリング材であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗装方法。
【0025】
請求項12:
シーリング材が建築用サイディングボードの目地に使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗装方法。
【0026】
なお、特許文献11や特許文献12にはアスファルトと架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含有する硬化性組成物が開示され、この組成物にはアルキルフェノールで変性された粘着付与樹脂を添加してもよいこと、この組成物はシーリング材にも使用することができることが開示されている。しかし、特許文献11には硬化物表面を塗装することについての記載はなく、また、アルキルフェノール樹脂を添加した場合、塗布された塗料の密着性に優れることについての開示もない。
【発明の効果】
【0027】
本発明の架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含有するシーリング材の硬化物表面の塗装方法を使用すると、シーリング材と塗料の密着性に優れ、長期間にわたり塗料が剥離することがない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明における、珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、湿分によりシロキサン結合を形成することによって架橋し得る架橋性珪素基は公知であり、代表例としては、式(1)で表わされる基があげられる。
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基またはRSiO−(Rは前記と同じ)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、Rが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2を、それぞれ示す。またn個の式(2):
【0031】
【化5】

におけるbは同一である必要はない。nは0〜19の整数を示す。但し、a+(bの和)≧1を満足するものとする。)
【0032】
該加水分解性基や水酸基は1個の珪素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、a+(bの和)は1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性珪素基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
架橋性珪素基を形成する珪素原子は1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合等により連結された珪素原子の場合には、20個程度あってもよい。
なお、式(3):
【0034】
【化6】

(式中、R,X,aは前記と同じ)で表わされる架橋性珪素基が、入手が容易である点から好ましい。
【0035】
上記Rの具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、RSiO−で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中ではメチル基が好ましい。
【0036】
上記Xで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、たとえば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等があげられる。これらの中では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基がさらに好ましい。加水分解性が穏やかで取扱やすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ないものが高い反応性有し、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほど反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが通常メトキシ基やエトキシ基が使用される。
【0037】
式(3)で示される架橋性珪素基の場合、硬化性を考慮するとaは2以上が好ましい。通常、aが3の場合、aが2の場合に比較し、硬化速度が大きくなる。
【0038】
架橋性珪素基の具体的な例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基(−Si(OR))、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基(−SiR(OR))、があげられる。ここでRはアルキル基であり、炭素数10以下のアルキル基が好ましく、メチル基やエチル基がさらに好ましい。これらの中で、メチルジメトキシシリル基は穏やかな反応性を有し、工業的に製造されているポリオキシアルキレンの架橋性珪素基としても使用されている。また、最近、大きい反応性を有するトリメトキシシリル基が結合したポリオキシアルキレン系重合体が知られるようになっている。本発明においてもトリメトキシシリル基が結合したポリオキシアルキレン系重合体を使用することができる。
【0039】
架橋性珪素基は1種で使用しても良く、2種以上併用してもかまわない。架橋性珪素基は、主鎖または側鎖あるいはいずれにも存在しうる。硬化物の引張特性等の硬化物物性が優れる点で架橋性珪素基が分子鎖末端に存在するのが好ましい。
【0040】
架橋性珪素基は重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在するのがよい。分子中に含まれる架橋性珪素基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、また多すぎると網目構造があまりに密となるため良好な機械特性を示さなくなる。
【0041】
本発明で使用するポリオキシアルキレン系重合体は本質的に式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0042】
【化7】

(式中、Rは2価の有機基)
【0043】
式(4)におけるRは、炭素数1〜14の、さらには2〜4の、直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好ましい。式(4)で示される繰り返し単位の具体例としては、例えば、次のような繰り返し単位をあげることができる。
【0044】
【化8】

【0045】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特にオキシプロピレンを主成分とする重合体から成るのが好ましい。
【0046】
ポリオキシアルキレン系重合体は、直鎖状でもよくまたは分岐を有してもよい。ポリオキシアルキレン系重合体は数平均分子量で500〜50,000程度が好ましく、5,000〜40,000がさらに好ましい。
【0047】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、たとえばKOHのようなアルカリ触媒による重合法、たとえば特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号、同61−215623号に示されるような有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる、有機アルミ−ポルフィリン錯体触媒による重合法、たとえば特公昭46−27250号および特公昭59−15336号などに示される複金属シアン化物錯体触媒による重合法等があげられるが、特に限定されるものではない。有機アルミ−ポルフィリン錯体触媒による重合法や複金属シアン化物錯体触媒による重合法によれば数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0048】
上記ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格中にはウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。ウレタン結合成分としては、たとえばトルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートと水酸基を有するポリオキシアルキレン類との反応から得られるものをあげることができる。
【0049】
オキシアルキレン系重合体への架橋性珪素基の導入は、分子中に不飽和基、水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させることにより行うことができる(以下、この反応方法を高分子反応法という)。
【0050】
高分子反応法の具体例として、不飽和基含有オキシアルキレン系重合体に架橋性珪素基を有するヒドロシランや架橋性珪素基を有するメルカプト化合物を作用させてヒドロシリル化やメルカプト化し、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を得る方法をあげることができる。不飽和基含有オキシアルキレン系重合体は水酸基等の官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有するポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0051】
また、高分子反応法の他の具体例として、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体とイソシアネート基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させる方法や末端にイソシアネート基を有するオキシアルキレン系重合体と水酸基やアミノ基等の活性水素基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させる方法をあげることができる。イソシアネート化合物を使用すると、容易に架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を得ることができる。高分子反応法はオキシアルキレン系重合体以外の他の重合体にも適用することが可能である。
【0052】
架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体は、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同57−164123号、特公平3−2450号、米国特許3,632,557号、同4,345,053号、同4,960,844号、特開2005−213446号、同2005−306891号、国際公開特許WO2007−040143号等の各公報に記載されている。
【0053】
本発明においては架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体に、さらに架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を併用して用いることができる((メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を示す)。このような重合体を併用すると、硬化したシーリング材は基材に対する接着性や耐候性に優れたものになる。架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は本質的に式(5)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0054】
【化9】

(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rはアルキル基を示す)
【0055】
式(5)におけるRはアルキル基であり、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。Rは直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、ハロゲン原子、フェニル基、エポキシ基、アミノ基等を有する置換アルキル基でもよい。Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等をあげることができる。
【0056】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の分子鎖は本質的に式(5)の単量体単位からなるが、ここでいう本質的にとは該重合体中に存在する式(5)の単量体単位の合計が50重量%をこえることを意味する。式(5)の単量体単位の合計は好ましくは70重量%以上である。
【0057】
式(5)以外の単量体単位の例としては、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位があげられる。
【0058】
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、オキシアルキレン系重合体と混合して使用される。この場合、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体との相溶性が大きい点で、架橋性珪素基を有し分子鎖が、式(6)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、式(7)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体が好ましい。
【0059】
【化10】

(式中、Rは前記に同じ、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、下記式(7):
【0060】
【化11】

(式中、Rは前記に同じ、Rは炭素数6以上のアルキル基を示す)
【0061】
式(6)のRとしては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜5、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2のアルキル基があげられる。なお、Rは一種でもよく、2種以上混合していてもよい。
【0062】
式(7)のRとしては、たとえば2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の炭素数6以上、通常は7〜30、好ましくは8〜20の長鎖のアルキル基があげられる。なお、Rは一種でもよく、2種以上混合したものであってもよい。また、式(6)の単量体単位と式(7)の単量体単位の存在比は、重量比で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40がさらに好ましい。
【0063】
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は、直鎖状でもよくまたは分岐を有してもよく、数平均分子量で500〜50,000程度が好ましく、1,000〜30,000がさらに好ましい。
【0064】
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをラジカル共重合して得ることができる。また、架橋性珪素基を有する開始剤や架橋性珪素基を有する連鎖移動剤を使用すると分子鎖末端に架橋性珪素基を導入することができる。
【0065】
特開2001−040037号公報、特開2003−048923号公報および特開2003−048924号公報には架橋性珪素基を有するメルカプタンおよびメタロセン化合物を使用して得られる架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。また、特開2005−082681号公報合成例には高温連続重合による架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。
【0066】
特開2000−086999号公報等にあるように、架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体であって架橋性珪素基が分子鎖末端に高い割合で導入された重合体も知られている。このような重合体はリビングラジカル重合によって製造されているため、高い割合で架橋性珪素基を分子鎖末端に導入することができる。本発明では以上に述べたような(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を使用することができる。
【0067】
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の混合物の具体例は、特開昭59−122541号、同63−112642号、特開平6−172631号、特開平10−251552号等の各公報に記載されている。また、特開昭59−78223号、特開昭59−168014号、特開昭60−228516号、特開昭60−228517号等の各公報には、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行い、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体と架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の混合物を得る方法が記載されている。
【0068】
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して10〜200重量部、さらには20〜100重量部使用することが好ましい。
【0069】
本発明で用いるシーリング材には架橋性珪素基を有する他の有機重合体を併用してもよい。このような重合体として、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、これらのポリオレフィン系重合体を水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸、テレフタル酸、琥珀酸等の多塩基酸とビスフェノールA、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールとの縮合重合体やラクトン類の開環重合体等のポリエステル系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;ポリサルファイド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。
【0070】
架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体や架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体以外の重合体を併用する場合、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体あるいは架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体と架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の合計量が架橋性珪素基を有する有機重合体全量の50重量%以上、さらには70重量%以上、特には80重量%以上が好ましい。
【0071】
本発明では(B)成分として、アルキルフェノール樹脂を用いる。アルキルフェノール樹脂の例としては、各種アルキルフェノールとホルムアルデヒドやアセトアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるレゾール型初期縮合物及びその変性物が挙げられる。アルキルフェノールのアルキル基としては、非置換のアルキル基でもよく、置換基で置換されたアルキル基でもよい。また、アルキル基中の総炭素原子数として、2〜13が好ましく、2〜10がさらに好ましい。
【0072】
アルキルフェノールとしては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、iso−プロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、p−n−ブチルフェノール、p−iso−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−n−オクチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、ノニルフェノールなどを例示できる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでは、p−t−ブチルフェノールやp−t−オクチルフェノールが好ましく、p−t−ブチルフェノールが特に好ましい。アルキルフェノールにはフェノール等アルキルフェノール以外のフェノール化合物が併用されてもよい。また、キシレン等のアルキルベンゼンが併用されてもよい。
【0073】
本発明で使用するアルキルフェノール樹脂を製造する際に用いるアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド(水溶液であるホルマリンを含む)、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどが挙げられる。中でも反応速度の観点から、特にホルムアルデヒドが好適に用いられる。
【0074】
ホルムアルデヒド類の使用量は、特に制限されないが、通常、前記アルキル基フェノール類に対するモル比が0.5〜3.0であり、好ましくは、0.7〜2.0で、より好ましくは、1.0〜1.5である。(A)アルキル基を有するフェノール類に対するモル比が、0.5より小さい場合は、収率が低下する傾向があり、一方、3.0より多い場合はゲル化する場合がある。このように、アルキルフェノール樹脂としてはアルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂が好ましく、特に分子中にメチロール基を2個以上有するものが好適に使用できる。
【0075】
アルキルフェノール樹脂として、市販されているものの例としては、住友ベークライト(株)製のスミライトレジンPR−22193、スミライトレジンPR−50994、スミライトレジンPR−175、スミライトレジンPR−50530、スミライトレジンPR−51466、スミライトレジンPR−28633、田岡化学工業(株)製のタッキロール201、タッキロール250−I、タッキロール250−II、タッキロール250−III、群栄化学工業(株)製のPR−4507、荒川化学工業(株)製のタマノル521、昭和電工(株)製のCKM904、日立化成工業(株)製のヒタノールなどを挙げることができる。アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂の製造時に添加配合されて増粘剤、溶剤、可塑剤などの各種助剤が含まれたものも含まれる。
【0076】
本発明では(B)成分として、上記のアルキルフェノール樹脂と、金属酸化物及び/又は金属水酸化物からなるキレート化合物を用いることもできる。キレート化合物を用いるとキレート化されていないアルキルフェノール樹脂を用いる場合に比較し、本発明で得られる塗装物の塗料密着性がすぐれたものになる。
【0077】
キレート化合物の製造に使用する金属酸化物および/又は金属水酸化物の例としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化鉛(PbO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))などが挙げられる。アルキルフェノール樹脂と、金属酸化物および/又は金属水酸化物から得られるキレート化合物のなかでも、t−ブチルフェノール樹脂と酸化マグネシウムからなるキレート化合物が好ましい。
【0078】
キレート化合物(B)の合成方法としては、公知の方法を用いればよい。一例を示すと、アルキルフェノール樹脂を適当な溶剤に溶解させた後、金属酸化物及び/又は金属水酸化物を樹脂100重量部に対し3〜20重量部の割合で加え、数時間攪拌することによりキレート化合物(B)が得られる。
【0079】
(B)成分のアルキルフェノール樹脂やこのキレート化合物の配合量は、オキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対し、1〜50重量部が好ましい。配合量が50重量部を超えるとシーリング材が硬くなり、伸びが低下する。配合量は、2〜40重量部がより好ましく、3〜30重量部が特に好ましい。配合量が50重量部を超えるとシーリング材が硬くなり、伸びが低下する。配合量が1重量部未満の場合、得られる硬化物に充分な塗料密着性改良効果が得られない傾向がある。
【0080】
本発明で使用するシーリング材には必要に応じて硬化触媒(シラノール縮合触媒)、充填剤、可塑剤、接着性付与剤、希釈剤、他の粘着付与剤等の各種添加剤を併用することができる。
【0081】
硬化触媒としてはテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、チタンテトラアセチルアセトナート等のチタン酸エステル類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカネート(ジオクチル錫ジバーサテート)、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価錫化合物、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、ジネオデカン酸錫(バーサチック酸錫)等の2価錫化合物等の有機錫化合物類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ビスマス−トリス(2−エチルヘキソエート)、ビスマス−トリス(ネオデカノエート)等のビスマス塩と有機カルボン酸または有機アミンとの反応物等;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクチル酸鉛等の有機鉛化合物;ナフテン酸鉄等の有機鉄化合物;有機バナジウム化合物;ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物あるいはそれらのカルボン酸等との塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;酸性リン酸エステル化合物等が例示される。
【0082】
これらの硬化触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。これらの硬化触媒のうち、有機金属化合物類、または有機金属化合物類とアミン系化合物の併用系が硬化性の点から好ましい。さらには、硬化速度が速い点からジブチル錫マレエート、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジオクチル錫ジネオデカネートが好ましい。また、環境問題の点からジオクチル錫化合物が好ましい。硬化触媒は架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して0.5〜10重量部用いるのが好ましい。
【0083】
充填剤としては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラックの如き補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、カオリン、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、ガラスバルーン、シラスバルーン、有機バルーン、有機繊維および無機繊維等の如き充填剤等が使用できる。
【0084】
これら充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華等から選ばれる充填剤を架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対し、1〜200重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーン等から選ばれる充填剤を同重合体100重量部に対し5〜500重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。これら充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
【0085】
可塑剤としては、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソウンデシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等の如きフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル等の如き脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等の如きグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチルの如き脂肪族エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ベンジル等の如きエポキシ可塑剤類;2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類等のポリエステル系可塑剤;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル可塑剤;ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリイソブテン、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、パラフィン−ナフテン系混合炭化水素、塩素化パラフィン類等の可塑剤が単独または2種類以上の混合物の形で使用できる。
【0086】
とくに、耐候性の点から重合体主鎖内に不飽和結合を含有しないポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル系可塑剤、ポリ(メタ)アクリル酸エステル可塑剤、ポリイソブテン、パラフィン等が好ましい。特に、高分子可塑剤である、ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル系可塑剤やポリ(メタ)アクリル酸エステル可塑剤が好ましい。可塑剤を使用する場合、架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して1〜200重量部、さらには5〜150重量部添加することが好ましい。
【0087】
接着性付与剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1,3−ジアミノイソプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等の塩素原子含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート含有シラン類;メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルジエトキシシラン等のハイドロシラン類等が具体的に例示されうるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
接着性付与剤は、あまりに多く添加すると、硬化物のモジュラスが高くなり、少なすぎると接着性が低下することから、架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して0.1〜15重量部添加することが好ましく、さらには0.5〜10重量部添加することが好ましい。
【0089】
作業性の改善、粘度の低下等のために溶剤や希釈剤を配合してもよい。溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等があげられる。希釈剤の例としてはノルマルパラフィン、イソパラフィン等があげられる。
【0090】
被着体へのぬれ性の改善や、はく離強度を高めるため(B)成分以外の粘着付与剤を添加してもよい。石油樹脂系、ロジン・ロジンエステル系、アクリル樹脂系、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂やそのフェノール樹脂共重合体、フェノール樹脂系等の粘着付与樹脂が例示されうる。
【0091】
その他の添加剤としては、例えば、水添ヒマシ油、有機ベントナイト、ステアリン酸カルシウム等のタレ防止剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。さらに、必要に応じてエポキシ樹脂等の他の樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等の硬化剤、物性調整剤、保存安定性改良剤(脱水剤)、滑剤、発泡剤等の添加剤も適宜添加することが可能である。
【0092】
本発明に使用するシーリング材は全成分を混合物とする一液型シーリング材としても、架橋性珪素基を有する樹脂成分と硬化触媒成分とを別の成分とする二液型シーリング材としても使用することができるが、一液型シーリング材として使用するのが望ましい。
【0093】
本発明に使用するシーリング材の表面に塗装することができる塗料の例としては、熱可塑性(メタ)アクリル系塗料、熱硬化性(メタ)アクリル系塗料、ポリウレタン系塗料、アクリルウレタン系塗料、シリコン変性ウレタン系塗料、メラミン系塗料、エポキシ系塗料、アクリル変成アルキッド系塗料、アミンアルキッド系塗料、アルキッドメラミン系塗料、ポリエーテルメラミン系塗料、ポリエステルメラミン系塗料などが挙げられる。塗料は水性塗料であっても、溶剤系塗料であってもよい。
【0094】
塗料の塗布方法としては、スプレーによる吹き付け塗布、はけ塗り、ローラーによる塗布等があるが、いずれの方法をも採用することができる。
【実施例】
【0095】
(合成例1)アルキルフェノール樹脂の金属キレート化合物の合成
アルキルフェノール樹脂としてタマノル521(荒川化学工業(株)製)100重量部をトルエン100重量部に溶解したのち、金属酸化物として酸化マグネシウム(MgO)を10重量部添加し、30℃で10時間攪拌することによりアルキルフェノール樹脂と酸化マグネシウムのキレート化合物(B1)を得た。
【0096】
(合成例2)
アルキルフェノール樹脂としてCKM904(昭和電工(株)製)100重量部を使用した以外は合成例1と同様にしてアルキルフェノール樹脂と酸化マグネシウムのキレート化合物(B2)を得た。
【0097】
実施例におけるシーリング材の塗料密着性及び耐水接着性の評価方法は次のとおりである。
【0098】
(塗料密着性)
シーリング材を3mmの厚さに塗布し、23℃50%相対湿度(RH)の条件下において7日間養生条件で硬化させた後、その硬化物の表面に塗料を刷毛で塗布し、23℃50%RHの条件下で7日間、養生し、試験体とした。用いた塗料は表1に示したとおりである。この試験体に対し、ニチバン(株)製のセロハンテープを用いて2mm間隔の碁盤目試験(25個)を行った。塗料密着性の判定は全碁盤目数に対する硬化物表面に残存する碁盤目数の百分率(%)によって行った。塗料密着性の判定基準は次の通りとした。
◎:80%以上 ○:40%以上80%未満 ×:40%未満。
【0099】
(耐水接着性)
JISA1439:1997「建築用シーリング材の試験方法」の「4.21引張接着性試験」に準拠して行った(試験温度23℃)。なお、試験体は、被着体として窯業系サイディング材にシーリング材を打設した試験体を23℃50%相対湿度で14日間養生して作製した。破壊状況を次のように評価し、初期接着性として示した。また、23℃50%相対湿度にて14日間養生して作製した試験体を50℃水中に7日間又は14日間浸漬した後、引張り試験を行い、破壊状態を評価した。接着性の判定基準は次の通りとした。
◎:凝集破壊 ○:薄層凝集破壊が確認される場合 ×:界面破壊が確認される場合
【0100】
(シーリング材物性)
JISA1439:1997「建築用シーリング材の試験方法」の「4.21引張接着性試験」に準拠して行った(試験温度23℃)。なお、試験体は、被着体としてサイディング材にシーリング材を打設した試験体を23℃50%相対湿度で14日間養生して作製した。引張り試験を行い、破壊時の伸び率を評価し、シーリング材物性として示した。シーリング材物性の判定基準は次の通りとした。
◎:400%以上 ○:100%以上400%未満 ×:100%未満
【0101】
(実施例1)
表1に示すように、(A)架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体として、カネカMSポリマーS203H((株)カネカ製)、(B)アルキルフェノール樹脂として合成例1で得られたアルキルフェノール樹脂のマグネシウムキレート化合物、紫外線吸収剤、可塑剤、脱水処理剤、及び充填材をそれぞれ所定量ずつ仕込み、加熱減圧混合撹拌を行い、配合物質の脱水を行った。なお、表1における(B)成分の量は溶剤を含まない固形分の重量である。さらに、接着付与剤及び硬化触媒を所定量ずつ添加し、撹拌配合して湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材の硬化物表面に塗料を塗布し、塗料密着性の評価を行った。結果を表1に示す。表1にはシーリング材の耐水接着性及び物性を合わせて示した。
【0102】
【表1】

【0103】
*1:架橋性珪素基含有ポリオキシアルキレン重合体(商品名;S203H、(株)カネカ製)
*2:架橋性珪素基含有アクリル変性ポリオキシアルキレン重合体(商品名;S943、(株)カネカ製)
*3:合成例1で得られたアルキルフェノール樹脂のマグネシウムキレート化合物
*4:合成例2で得られたアルキルフェノール樹脂のマグネシウムキレート化合物
*5:合成例1で原料として用いたアルキルフェノール樹脂(商品名;タマノル521、荒川化学工業(株)製)
*6:合成例2で原料として用いたアルキルフェノール樹脂(商品名;CKM904、昭和電工(株)製)
*7:テルペンフェノール樹脂(商品名;YSポリスターT100、ヤスハラケミカル(株)製)
*8:スチレン樹脂(商品名;FTR7100、三井化学(株)製(株)製)
*9:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名;アデカスタブLA36、旭電化(株)製)
*10:ポリプロピレングリコール(商品名;PML3012、旭硝子(株)製)
*11:ビニルトリメトキシシラン(商品名;KBM1003、信越化学工業(株)製)
*12:重質炭酸カルシウム(商品名;ホワイトンSB、白石工業(株)製)
*13:表面処理炭酸カルシウム(商品名:カルファイン500、丸尾カルシウム(株)製)
*14:シランカップリング材(商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)
*15:4価錫化合物(商品名:U−220、日東化成(株)製)
*16:水系塗料1(商品名:ジョリパットJP100、アイカ工業(株)製)
*17:水系塗料2(商品名:スーパーE、菊水化学工業(株)製)
*18:溶剤系塗料1(商品名:EXシーラー、エスケー化研(株)製
*19:弱溶剤系塗料(商品名:クリーンマイルドウレタン、エスケー化研(株)製)
【0104】
(実施例2)
(B)成分のキレート化合物を10重量部使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材の硬化物表面に塗料を塗布し、塗料密着性の評価を行った。結果を表1に示す。表にはシーリング材の耐水接着性及び物性の評価結果を示した。
【0105】
(実施例3)
(B)成分のキレート化合物を30重量部使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材について、塗料密着性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(実施例4)
(A)架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体として、カネカMSポリマーS203Hにかえて、架橋性珪素基含有アクリル変性ポリオキシアルキレン重合体であるカネカMSポリマーS943((株)カネカ製)を使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材について、塗料密着性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(実施例5)
(B)成分のキレート化合物として合成例2で得られたアルキルフェノール樹脂のマグネシウムキレート化合物を使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材について、塗料密着性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(実施例6)
(B)成分のキレート化合物にかえて合成例1で原料として用いたアルキルフェノール樹脂(タマノル521、荒川化学工業(株)製)を使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材について、塗料密着性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(実施例7)
(B)成分のキレート化合物にかえて合成例2で原料として用いたアルキルフェノール樹脂(CKM904、昭和電工(株)製)を使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材について、塗料密着性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
(比較例1)
(B)成分のキレート化合物にかえてテルペンフェノール樹脂(YSポリスターT100、ヤスハラケミカル(株)製)を使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材について、塗料密着性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
(比較例2)
(B)成分のキレート化合物にかえてスチレン樹脂(FTR7100、三井化学(株)製)を使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材について、塗料密着性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0112】
(比較例3)
(B)成分のキレート化合物を0.5重量部使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材について、塗料密着性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
(比較例4)
(B)成分のキレート化合物を60重量部使用した他は実施例1と同様に湿分硬化性シーリング材を調製した。この湿分硬化性シーリング材について、塗料密着性等の評価を行った。結果を表1に示す。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、湿分によりシロキサン結合を形成することによって架橋し得る架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対し(B)アルキルフェノール樹脂1〜50重量部を含有する湿分硬化性シーリング材の硬化物の塗装方法。
【請求項2】
珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、湿分によりシロキサン結合を形成することによって架橋し得る架橋性珪素基が式(1)で表される架橋性珪素基であることを特徴とする請求項1に記載の塗装方法。
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基またはRSiO−(Rは前記と同じ)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、Rが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2を、それぞれ示す。またn個の式(2):
【化2】

におけるbは同一である必要はない。nは0〜19の整数を示す。但し、a+(bの和)≧1を満足するものとする。)
【請求項3】
式(1)で表される架橋性珪素基が式(3)で表される架橋性珪素基であることを特徴とする請求項2に記載の塗装方法。
【化3】

(式中、R,X,aは前記と同じ)
【請求項4】
架橋性珪素基において加水分解性基がアルコキシ基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項5】
加水分解性基がメトキシ基であることを特徴とする請求項4記載の塗装方法。
【請求項6】
ポリオキシアルキレン系重合体がポリオキシプロピレン系重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項7】
シーリング材がさらに(C)珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、湿分によりシロキサン結合を形成することによって架橋し得る架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体10〜100重量部を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項8】
(B)アルキルフェノール樹脂のアルキル基が炭素数2〜13のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項9】
アルキル基がt−ブチル基であることを特徴とする請求項7に記載の塗装方法。
【請求項10】
シーリング材がさらに(D)硬化触媒0.1〜10重量部、を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項11】
シーリング材が建築用シーリング材であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項12】
シーリング材が建築用サイディングボードの目地に使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗装方法。


【公開番号】特開2012−40490(P2012−40490A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183135(P2010−183135)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】