説明

湿度による障害を受けた尿試験片の検出のための装置及び方法

尿試料中の分析対象物、たとえば白血球の存在を検出するための感湿性試薬の反応のタイミングを使用して、試薬が過度な湿度による障害を受けているときを検出する。尿試料が試験片に塗布されたのち二つの所定の時間で試薬と分析対象物との反応の生成物及び赤外基準染料に特徴的な波長における光反射率の比を計測し、それを使用して試薬が過度な湿度による障害を受けているかどうかを決定する。試験片が湿度による障害を受けていることを立証するために、異常に暗色の試料の存在を470及び625nmの反射光から決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、感湿性試薬を用いる試験片、特に、尿試料中の分析対象物、たとえばアルブミン、タンパク、クレアチニン、硝酸、ウリスタチン、白血球エステラーゼ(白血球)、潜血(赤血球)、ケトン体、グルコース、ビリルビン、ウロビリノーゲン及び当業者にはよく知られる他の分析対象物の存在を決定するために使用される試験片の性能及び信頼性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼ及びプロテアーゼインヒビタ、たとえば白血球エステラーゼ(ヒトエステラーゼ)又は尿トリプシンインヒビタ(ビクニン、ウリスタチン)の計測は、それらが腎臓又は尿生殖器路の感染症を暗示することがあるため、特に重要である。
これらのプロテアーゼ及びプロテアーゼインヒビタ試験片は、検出可能なシグナルを生成するために、プロテアーゼによるタンパク分解基質の加水分解に基づく。生化学的反応は、酵素加水分解が起こるために水を要するため、感湿性であることが多く、バックグラウンド反応によって検出可能なシグナルに干渉するおそれがある。
【0003】
米国特許第5,663,044号が参照によって本明細書に組み込まれる。この特許は、白血球、エステラーゼ又はプロテアーゼを検出する分野における背景技術を記載し、ジアゾニウム塩、白血球、エステラーゼ又はプロテアーゼの存在において加水分解に付されるエステルの群の一つ及びアルカリ土類金属を含む組成物の使用を一般に教示している。この044号特許は、尿試料中の白血球の量を測定するために、約570nmの光の反射率を計測することを教示している。570nmにおける反射率は690nmにおける反射率の標準計測値と比較される。この特許は、アルカリ土類金属の存在がジアゾニウム塩の安定性を促進することを示す。また、アルカリ土類金属が、バックグラウンド色変化を生じさせるおそれのある湿分を吸収することを示唆している。経験は、この試薬系が感湿性であり、試験片が使用前に乾燥環境に維持されなければならないことを示している。性能低下を避けるためには、試験片の水分含量は2重量%未満に維持されるべきである。しかし、試験片中の水分の計測はあまり正確ではない。試験片が密閉乾燥容器中で何年間も安定であることを保証するために、水分含量を非常に正確に計測する他ならぬ必要性がある。
【0004】
感湿性試薬の使用のもう一つの例が、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,770,764号、第6,955,921号及び第7,001,737号に記載されている。記載された反応において、尿試料中の尿トリプシンインヒビタの存在は、既知の量のトリプシン、トリプシン基質、すなわちトリプシンによって加水分解されてアルコールを生成するアルギニンエステル及びジアゾニウム塩を含有する試験片に試料を加えることによって検出される。トリプシンインヒビタが存在する場合、それがトリプシンと基質との反応を阻害する。これが、トリプシン基質が既知の量のトリプシンと反応するとき生成されるフェノールとの反応からジアゾニウム塩によって生成される色を減らす。生成された色を計測することにより、トリプシンインヒビタの存在を決定することができる。
【0005】
米国特許第6,316,264号においては、試験片に塗布される試料中の分析対象物の存在を検出及び/又は計測するために使用される計器中で試験片が正しく整列していることを保証するために、赤外(IR)染料が試薬試験片上の所定の場所に加えられる。染料のIR範囲は概ね700〜2500nmであるが、825〜855nmの範囲に強い吸光度を有し、可視範囲(400〜700nm)の吸光度が20%未満である染料が好ましいとされていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に示したように、不安全な使用を防ぎ、湿分の影響を受けた結果を修正するために、湿分による障害を受けた尿試験片を改善された精度で識別することができるならば、それは有利である。タンパク分解基質の加水分解を伴う試薬は特に感湿性であるため、試薬そのものを使用して、望ましくない湿分の存在を示すことができるならば、有意な改善が得られるであろう。本発明はそのような方法を提供し、それを以下さらに詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、プロテアーゼ又はプロテアーゼインヒビタを検出するために使用されるタンパク分解基質の加水分解を計測するために使用される感湿性試験片に適用される。一例が、米国特許第5,663,044号に記載されているように、白血球、エステラーゼ又はプロテアーゼの検出に見られる。もう一つの例が、米国特許第6,770,764号、第6,955,921号及び第7,001,737号に記載された尿トリプシンインヒビタの検出に見られる。
【0008】
一般に、本発明は、感湿性試薬を用いる試験片中の過度な湿分を検出する方法である。試料を塗布した直後に感湿性試薬によって発現した色又は他の応答を計測し、結果を既知の赤外基準染料に比較することにより、湿分による障害を受けた試薬を識別し、結果を警告又は放棄することができる。
【0009】
発現した色が光反射率によって計測される場合、試料を塗布した直後の反射率比(すなわち、基準染料の反射率に対する試薬の反射率の比)の値を、しばらくしてから取得された反射率比の値と比較し、それを使用して過度な湿度の影響を決定し、試薬が湿度による障害を受けているならば、その試薬を拒絶する。試料が異常な色を有し、結果に影響しているかもしれないならば、第二の反射率比を計測して決定することもできる。
【0010】
一つの好ましい実施態様において、湿度による障害を受けた白血球試薬を検出する場合、試薬は、加水分解性エステル、たとえばPPTA(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ピロール−N−トシル−L−アラニンエステル)と反応するジアゾニウム塩、たとえばDNSA(1−ジアゾ−2−ナフトル−4−スルホン酸)を含む。白血球エステラーゼが尿試料中に存在する場合、存在する白血球の量に比例して色が発現する。この実施態様においては、520〜570nmの光波長における反射率が、基準染料に特徴的な約825nmにおける反射率と比較される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試料の白血球含量を測定する、又は結果を湿度による障害を受けたものとして拒絶する場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[好ましい実施態様の説明]
本発明は、試験片に塗布された尿試料中のタンパク分解基質の加水分解を計測する改良された方法を含む。一般に、プロテアーゼを検出するためには、タンパク分解基質に基づく試薬を使用することができる。試薬のアミノ酸配列は、検出されるプロテアーゼによって好まれるタイプに合わされ、アミノ酸配列は、加水分解とともにシグナルを形成するシグナル生成部分に取り付けられる。この原理の一例は、米国特許第5,663,044号に記載されているような、試料中の白血球の存在を検出するために使用される白血球エステラーゼの検出である。白血球の存在は、赤外基準染料に特徴的な波長の光の反射率に対する試薬に特徴的な波長の光の反射率と相関する。計測された反射率比較は、尿試料を試薬に塗布したのち約20秒〜3分のインキュベーション期間後、白血球の存在と相関する。このような試験片は、過度な湿度による障害を受けているおそれがあり、それが試薬活性を低下させ、尿試料中の白血球の存在を示す発色を偽って示すおそれがある。本発明の方法は、尿試料を試薬に塗布したのち最初の1分間に赤外基準染料に対する試薬からの反射率の比を計測することにより、試薬が過度な湿度による障害を受けているかどうかを決定する。
【0013】
タンパク分解基質に基づく試薬はまた、プロテアーゼインヒビタを検出するためにも使用することができる。この場合でも、アミノ酸配列は、プロテアーゼインヒビタによって好まれるタイプに合わされ、アミノ酸配列は、加水分解とともにシグナルを形成するシグナル生成部分に取り付けられる。プロテアーゼが試薬に加えられ、したがって、インヒビタが試料中に存在しない場合、シグナルを生成する。シグナルの不在を使用して、試料中のプロテアーゼインヒビタの存在を決定する。この原理の一例は、米国特許第6,770,764号、第6,955,921号及び第7,001,737号に記載されているような、尿トリプシンインヒビタの検出である。
【0014】
タンパク分解基質の加水分解は、ポイントオブケア(point-of-care)用途で使用される試験片に必要な数分に満たない短い時間フレーム中には反応終点に達しない。加水分解反応は、時間とともにシグナルを生成し続け、通常、オペレータによるタイミングに依存しない読みを可能にするために動態的に計測される。たとえば、尿中の白血球に関する反応によって発現する色は、20及び60秒で計測することができ、両時間におけるシグナルの比を、動的結果、すなわち色変化の速度を示す結果として使用することができる。これが、ユーザが結果を得るためにまるまる3分も待たなければならないことを回避させる。
【0015】
本発明は、試薬が感湿性である多くのフォーマットに適用可能である。すなわち、試薬は、湿分の存在において反応し、計測される試料中に実際には存在しない分析対象物の存在を偽って示すおそれがある。そのような感湿性試薬の例は、上述したものである。本発明者らにとって特に重要であることは、一つの好ましい実施態様を参照して以下に説明するような、白血球中のエステラーゼによって尿試料中の白血球を検出するために使用される試薬の感湿性である。しかし、本発明の方法が、白血球の存在を計測するために使用することができる他の試薬をはじめとする、他の感湿性試薬にも適用されるということは明らかである。試験片は、ディップスティック及びラテラルフローカートリッジをはじめとする多くのフォーマットを有することができることが理解されよう。
【0016】
[白血球試薬化学]
尿試料の白血球含量を計測する方法を提供することができる本発明に有用な白血球試薬が上述の米国特許第5,663,044号に記載されている。本発明の好ましい組成物がこの‘044号特許の表4に記載されている。アラニン化合物(PPTA、2−ヒドロキシ−5−フェニル−ピロール−N−トシル−L−アラニンエステル)が白血球エステラーゼの基質として働き、それがPPTAを加水分解させ、その後、加水分解産物がジアゾニウム指示薬(DNSA、1−ジアゾ−2−ナフトル−4−スルホン酸)と反応して色を生成する。色は、520〜570nm(044号特許においては570nm)の光波長で試験されたときの反射率の程度によって計測されている。520〜570nmにおける反射率は、690nmの標準波長と関連していた。この比較を使用して、60%超の反射率を有し、約690nm超の波長で無色に近づく白色ポリスチレン上の白色セルロースであった試験片基材の白色バックグラウンド色の差を補正した。白色バックグラウンド色は、特に感湿性であり、少量が反射率比の大きな変化を生じさせることもある。白色バックグラウンドはまた、尿の色にも敏感であり、少量が反射率比の大きな変化を生じさせることもある。その結果、そのような反射率比は、試験片を尿に浸漬したのち湿分を正確に計測するために使用することができない。
【0017】
本発明においては、520〜570nm範囲よりも少なくとも120nm高い波長の光に対して特徴的な応答を有する赤外基準染料が加えられる。IR染料の波長及び使用量が、バックグラウンド干渉を減らすことによって計測の精度に影響するということがわかった。白血球試薬へのIR染料の添加は、700nm以上及び2500nmで60%以下の反射率の低めのバックグラウンド色を提供する。この低めのバックグラウンドは、反射率比に対する尿の色の影響を減らすが、湿分の影響を減らすことはない。したがって、試料を尿に浸漬したのち、反射率比を使用して湿分を正確に計測することができる。
【0018】
しかし、この700nm以上及び2500nmで60%以下の反射率の低めのバックグラウンド色は、タンパク分解基質の加水分解を検出する試薬の能力を低下させることがある。この効果は以下の表に示され、表中、試薬基質バックグラウンド色の影響は、IR染料の量が増すとともに減少している。試薬が許容することができるIR染料の量は、バックグラウンドを計測するために使用される基準波長、基質のシグナル波長、基質の感湿性及びプロテアーゼ加水分解に対する基質の感度及び700nm未満のバックグラウンド染料シグナルの量に依存する。所与の加水分解基質の許容度は、試料中の色に対するバックグラウンド干渉の所望の減少が、基準染料に対して0.2mg/dL又は約0.5重量%よりも大きく起こる表1に示すように測定することができる。しかし、染料の量を20mg/dLの高さまで増すと、反射率比は1.6まで増大し、シグナルは、予想される約1.0シグナルから減少する。したがって、使用される染料の量は、バックグラウンド干渉を最小限にするために必要な量に制限されるべきである。
【0019】
【表1】

【0020】
(1)米国特許第6,316,264号の表2における染料3であり、化学名が3−(5−カルボキシペンチル)−2−[2−[3−[[3−(5−カルボキシフェニル)−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメンチル−2H−ベンズ[エ]インドル−2−イリデン]エチリデン)−2−(n−ヘキシルチオ)−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−1,1−ジメチル−1H−ベンズ[エ]インドリウム内分子塩であるDTO141。
(2)CLINITEK Status(登録商標)計器(Siemens Healthcare Diagnositics)を使用して計測した、中間比重尿中の白血球42個/uLに対する反応。
(3)濃い茶色の臨床尿と一般的な黄色の尿との差。両方の尿は白血球を含まず、CLINITEK Status(登録商標)計器を使用して計測した。
【0021】
上記実験において、白血球試薬は、ろ紙の二連続含浸から製造した。一回目の含浸は、ホウ酸、Bio-Terge AS40、PVPポリマー及びイオン強度を制御するためのNaClを含有する水性混合物による含浸であった。水酸化ナトリウム及び塩酸を使用して混合物pHを8.8〜9.3に調節した。二回目の含浸は、DNSA、PPTA、デカノール及びホウ酸を含有するアセトン/DMSO溶媒混合物であった。各成分の機能、好適濃度及び許容可能範囲を以下の表に記す。混合溶液を使用して、ろ紙、この場合は205CグレードAhlstromろ紙を含浸させ、ろ紙を、一回目の含浸後は121℃で9分間、二回目の含浸後は100℃で7分間、乾燥させた。得られた乾燥試薬を試薬試験片に加工し、CLINITEK Status(登録商標)計器を使用してその試薬試験片を試験した。
【0022】
【表2】

【0023】
参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,316,264号に記載され、約700〜約2500nmの赤外範囲で特徴的な吸光度を有するものを含め、様々な染料を使用することができる。例は、フタロシアニン及びナフタロシアニン化合物、金属錯体染料(たとえばジチオレン金属錯体染料)ならびにシアニン染料などのポリメチン染料を含む。他の染料としては、ジ及びトリフェニルメタン染料、キノン染料、アゾ染料ならびに電荷移動及び電荷共鳴染料がある。それらに共通の特徴は、ただ一つの波長の光の反射率が試薬波長を少なくとも120nm超える波長で計測されることである。上述した白血球試薬に関連して、染料は、少なくとも700nm、好ましくは700nm超かつ2500nm未満の特徴的反射率を有するべきである。
【0024】
基準染料を白血球試薬とともに含めることは好ましい実施態様であるが、試験片を整列させるために実施されたように(米国特許第6,316,264号)、基準染料を別の場所に配置することも可能である。染料が試料と接触したときに起こる湿分による変化は、染料が試薬内にあるときに起こる変化とは異なるかもしれない。しかし、そのような差は当業者によって調整されえる。
【0025】
白血球試験片における湿分汚染の検出
上述したように、湿分は、白血球試薬を劣化させ、不正確な色変化を生じさせる。白血球中の酵素は、タンパク分解基質、たとえばPPTAを加水分解させるのに必要ではない。試薬は、白血球試薬パッド上のわずか0.1%の湿分にも感度を示すことがわかっている。色変化の速度は、本質的に、存在する水の量に正比例する。>60相対湿度への10分間の暴露ののち試験が偽陽性結果を出すとき、湿度制御の重要性は明らかである。
【0026】
この湿分に対する感度が、本発明において、試薬パッドが湿分で汚染されているかどうかを決定するために使用される。色変化は、はじめ、尿試料が塗布されたのち約20秒で測定される。20秒後に色が検出されると、湿分汚染が疑われる。60秒後、すなわち試薬の活性が低下したのち、色が有意に増大していないならば、これは立証される。この方法は、試験片を、試薬に障害を生じさせることが知られる条件である、30℃、湿度80%で10分間暴露する実験で立証されている。820nmにおける反射率に対する520nmにおける反射率の比を使用した場合、24個の試験片のうち23個が障害を起こしていることがわかった。適用したDTO141染料の量は0.2mg/dLであり、それに対し、白血球試薬のPPTAは42mg/dLであった。520nmにおける反射率のみを計測した、すなわち染料が存在しない場合の平行実験は、試験片の42%において湿分汚染試験片を検出することができず、これは、520nm/870nmの反射率比を染料なしで使用した場合でもそのとおりであった。
【0027】
尿試料中の色の影響はまた、本発明の方法においても説明される。試料の色は、約460nm(可視範囲内)の光の吸光度によって計測される。白血球試薬によって発現する色の計測に影響するために、新たな比、すなわち約460nm(試料の色の場合)における反射率を約625nmにおける反射率で割った比が決定される。この比は、暗色の尿試料が湿度による障害を受けているとみなされることを防ぐ。比(×1000)が600を超えるならば、試料の色は淡く、反射率は高い。そうならば、20及び60秒の反射率比が、試験片が異常なやり方で応答していることを示したならば、試験される試験片は、湿度による障害を受けているものとして立証される。比が600未満であるならば、試料は、結果に影響したかもしれない暗色を有し、20及び60秒の結果が満足であったならば、試験片は拒絶されない。
【0028】
試料を塗布したのち20及び60秒で取得される、825nmにおける反射率に対する525nmにおける反射率の比の差が、試薬が湿分によって劣化しているかどうかを決定するために使用される。一般に、最初の読み(20秒)が約700(比×1000)未満の比を出すならば、525の反射率が、有意な色がすでに発現していることを示すため、過度な湿度が示唆される。二回目の読みが60秒で取得され、最初の読みと比較され、読みにおける差が約50(比×1000)未満であるならば、試薬はその正常な活性を失っているため、過度な湿度の存在が立証される。
【0029】
たとえば、試薬がPPTA及びDNSAを含み、基準染料がDTO141である場合、三つの数値が計測される。
【0030】
【表3】

【0031】
図1に示す手順にしたがってこれらの値を読みに適用すると、結果が湿度による障害を受けたものとして拒絶されるか、試料中で計測された白血球が報告される。一例として、白血球の存在に関して尿試料を分析するためには、CLINITEK Status(登録商標)計器が使用される。先に表2で記載されたような試薬溶液を含浸させた吸収性試験片(たとえばろ紙)が尿試料を塗布され、得られる色変化が、本発明の手順にしたがって、CLINITEK Status(登録商標)計器中、光反射率によって計測される。
【0032】
20−L60の計測値が50未満であるならば、過度な湿度が白血球試薬活性を低下させた可能性がある。50を超えるならば、L20−L60の値は、試料中の白血球濃度の計算に使用することができる。しかし、50未満であっても、525/845nmの比は、なおも白血球濃度を提供することができるかもしれない。525/845nmの比の初期値(L20)が考慮される。この値が700未満(比×1000)であるならば、525nmでの高い光吸収が示されて、試験パッド中に過度な湿度が存在していたかもしれないことが示唆される。L20−L60の結果と合わせると、白血球試薬が過度な湿度による障害を受けている可能性が高い。しかし、結果は異常に暗色の試料によって影響されているかもしれないため、比H、470/625nmを計測する。結果が600(比×1000)を超えるならば、高い反射率が示されて、試料が濃い色ではないことを意味する。そうならば、白血球試薬は、高い湿度による障害を受けているとみなされる。試料が暗色である、すなわち棄却限界比Hが600未満であるが、先に決定されたL20−L60及びL20の値が許容可能であったならば、試料は、障害を受けているとはみなされず、白血球含量が計算される。
【0033】
上記の具体的な光波長及び計測時間は、記載の試薬量によって尿試料中の白血球の存在を決定するために有用であることが理解されよう。しかし、この方法は、より一般的には、感湿性であるが、水を含む試料を検出するために使用される多くの他の試薬に適用される。適切な検出プロトコルは、当業者により、本発明者らによって開示された発明を考察したのち、容易に確立されるはずである。
【0034】
先に説明したように、本発明を方法を実施するにはCLINITEK Status(登録商標)計器が有用である。この計器の態様は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,239,445号、第5,877,863号、第5,477,326号及び第5,408,535号に記載されている。CLINITEK Status(登録商標)計器は、試料を担持する試験片を光源によって照らし、試験片から反射した光を検出し、それを使用して試料中の分析対象物の存在及び量を測定する反射分光器である。また、分光光度計の動作が上記米国特許第6,316,264号で説明されている。その中に記載されているように、マルチピクセル画像を創製するカメラ型計器を使用して本発明の方法を実施することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿度による障害を受けた感湿性試薬を検出するための方法であって、前記試薬を水を含む試料と接触させ、前記試料中の分析対象物の存在を前記感湿性試薬とのその反応によって検出し、前記方法が
(a)前記試薬を前記試料と接触させたのち二つの所定の時間で、前記感湿性試薬と前記分析対象物との前記反応の生成物の波長における反射率を計測すること、
(b)同じ二つの所定の時間で、(a)で計測された波長から少なくとも120nm離れた特徴的な波長を有する赤外基準染料の波長の光の反射率を計測すること、
(c)(a)及び(b)で計測した波長の比を計算し、前記二つの所定の時間の間の前記比の変化から、試薬が予測よりも低い活性を有すると結論づけること
を含む方法。
【請求項2】
前記二つの所定の時間の最初の時間に(a)及び(b)で計測された波長の比を使用して、潜在的に湿度による障害を受けた感湿性試薬を示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記二つの所定の時間の最初の時間で計測された波長の比と、第一及び第二の所定の時間の間の比の変化とを組み合わせて使用して、感湿性試薬が湿度による障害を受けているかどうかを決定する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
決定された結果に対する試料色干渉の可能性を示すために事前に決定された二つの波長における光の反射率を計測するステップをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記感湿性試薬が、プロテアーゼ酵素を検出するために使用されるタンパク分解基質に基づく、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記感湿性試薬が、プロテアーゼインヒビタを検出するために使用されるタンパク分解基質に基づく、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記試料が尿であり、前記分析対象物が白血球である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
試料が尿であり、前記分析対象物が尿トリプシンインヒビタである、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記感湿性試薬が、ジアゾニウム塩及び白血球の存在下において加水分解に付されるエステルを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記基準染料が前記感湿性試薬と合わされる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記基準染料が前記感湿性試薬から離れて位置する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
湿度による障害を受けた感湿性試薬を拒絶することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
試験片を用いて尿試料中の白血球を計測するための方法であって、前記試験片がジアゾニウム塩及び白血球の存在下において加水分解に付されるエステルを含む試薬を含有し、前記方法が前記ジアゾニウム塩と加水分解エステルとの反応生成物に特徴的な波長の光の反射の関数として、事前に選択された基準波長における光の反射に対して、尿試料中の白血球の量を計算する方法であり、前記反射光が、尿試料を前記試薬に塗布したのち約1〜3分後に計測されるものであり、
(a)前記反応生成物に特徴的な波長から少なくとも120nm離れた特徴的な反射率波長を有する赤外基準染料を前記試験片に加えること、
(b)前記尿試料を前記試薬に塗布したのち約20秒及び約60秒で前記反応生成物の波長及び基準染料に特徴的な波長における光の反射率を計測すること、
(c)前記20及び60秒時間それぞれに関して(b)で測定された前記基準染料の計測された波長に対する前記反応生成物の波長において計測された反射率の比を計算し、前記比をL20及びL60と指定すること、
(d)L20−L60が第一の所定の値未満であり、L20が第二の所定の値未満である場合、組成物含有基質が湿度による障害を受けていると結論づけること、
(e)約470及び約625nmの波長の光の反射率を計測し、比470/625nmを計算すること、
(f)比470/625nmが第三の所定の値を超えるならば、その尿試料が、ステップ(d)で到達した結論に影響するのに十分なほどの色を有しないと結論づけること、及び
(g)白血球濃度に関する計算値を拒絶すること
によって湿度による障害を受けた試薬を検出することを含む方法。
【請求項14】
前記反応生成物の光反射率が約520〜570nmである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記基準染料の光反射率が約825nmである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記加水分解性エステルに対する前記基準染料の比が約0.5%よりも大きく、それにより、前記試料及び前記試験片の色のバックグラウンド干渉を減らす、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記基準染料が、フタロシアニン及びナフタロシアニン化合物、金属錯体染料、ポリメチン染料、ジ及びトリフェニルメタン染料、キニン染料、アゾ染料、電荷移動染料並びに電荷共鳴染料からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記基準染料がDTO141である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記加水分解性エステルがPPTAであり、前記ジアゾニウム塩がDSNAである、請求項13記載の方法。
【請求項20】
前記第一の所定の値が反射率比520−570/825nm×1000=50である、請求項13記載の方法。
【請求項21】
前記第二の所定の比が反射率比520−570nm/825nm×1000=700である、請求項13記載の方法。
【請求項22】
前記第三の所定の比が反射率比470nm/625nm×1000=600である、請求項13記載の方法。
【請求項23】
(h)(g)の拒絶ステップを前記方法のユーザに報告することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項24】
前記基準染料が前記試薬と合わされる、請求項13記載の方法。
【請求項25】
前記基準染料が前記試薬から離れて位置する、請求項13記載の方法。
【請求項26】
請求項1の方法を実施するための反射分光器。
【請求項27】
請求項13の方法を実施するための反射分光器。

【図1】
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【公表番号】特表2012−515923(P2012−515923A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548028(P2011−548028)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/020998
【国際公開番号】WO2010/085413
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(507269175)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
【Fターム(参考)】