説明

湿度インジケータとその製造方法

【課題】湿度インジケータの製造工程において、一旦、印刷して基材に付着させた呈色組成物の印刷装置の部材等への付着を抑制して、印刷不良を防止すると同時に上記印刷装置のメンテナンス頻度を低減して、効率良く湿度インジケータを製造しうる方法を提供する。
【解決手段】呈色組成物4中に、呈色組成物の構成成分と反応しないビーズ3を分散させて凸部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色により湿度の上昇を容易に視認しうる湿度インジケータとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、商品包装に封入される乾燥剤として、シリカゲル入りの小袋が用いられており、この小袋内には、乾燥状態を把握するためのインジケータとして、青ゲルと呼ばれる塩化コバルト含浸シリカゲルが混入されていた。しかし、コバルトは重金属であるため、環境上、コバルトを含有しない湿度インジケータが望まれている。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1に、電子供与性呈色化合物と、常温で固体である酸性化合物と、潮解性を有する物質と、樹脂バインダーからなる呈色組成物を不織布等の担持体に付着させてなる湿度インジケータを提案した。係る湿度インジケータは、潮解性を有する物質が周囲の湿気によって潮解し、この水分によって電子供与性呈色化合物が変色或いは消色して湿度上昇を示すものである。
【0004】
【特許文献1】特開2007−316058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に提案した湿度インジケータを大量生産する場合、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解性を有する物質と、水系樹脂エマルジョン又は水溶性高分子化合物水溶液とからなる湿度インジケータ用塗料を、ロール・ツー・ロールで担持体上に連続的にグラビア法などにより印刷し、所定の大きさに切断して製造する。
【0006】
ここで、上記塗料は潮解性を有する物質を含んでいることから、印刷した塗料を乾燥した後に周囲の湿度が上昇した場合には、周囲の湿気を吸収して呈色組成物がべたつきを生じ、印刷面が接触したロール表面に呈色組成物が付着してしまうため、印刷ムラや印刷抜けといった印刷不良が生じる恐れがある。また呈色組成物は酸性化合物を含むことから、潮解性を有する物質によって吸収した水分と酸性化合物による化学反応により、呈色組成物が付着したロールの腐食等を招く恐れがあり、該呈色組成物が付着したロールのメンテナンスを頻繁に行う必要があった。
【0007】
さらに、上記湿度インジケータを複数枚重ねた場合には、互いに重なり合う湿度インジケータの一方の呈色組成物が他方の裏面に付着し、ブロッキングを生じるという問題もあった。
【0008】
本発明の課題は、上記問題を解決し、湿度インジケータの製造工程において、一旦、印刷して担持体に付着させた呈色組成物の印刷装置の部材等への付着を抑制して、印刷不良を防止すると同時に上記印刷装置のメンテナンス頻度を低減して、効率良く湿度インジケータを製造しうる方法及び該方法による湿度インジケータを提供することにある。また、本発明は、印刷後の湿度インジケータを複数枚重ねた場合のブロッキングを防止することも解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解性を有する物質と、樹脂バインダーとからなる呈色組成物中にビーズが分散されてなる印刷層を基材に担持させてなり、該印刷層が表面にビーズによる凸部を有することを特徴とする湿度インジケータである。
【0010】
本発明の湿度インジケータにおいては、
上記基材が多孔性であること、
上記ビーズが呈色組成物の構成成分と反応しない材料で構成されていること、
上記基材の裏面に樹脂フィルムが積層されていること、
少なくとも上記印刷層を覆う樹脂からなるトップコート層を有すること、
上記トップコート層が樹脂中にビーズを分散してなり、該トップコート層が表面にビーズによる凸部を有すること、
上記湿度インジケータの印刷層側の最表面にさらに樹脂からなる透湿度調整層が積層されていること、
印刷層と基材との間に、有彩色インク層が配置されていること、
をそれぞれ好ましい態様として含む。
【0011】
本発明の第2は、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解性を有する物質と、ビーズと、水系樹脂エマルジョン又は水溶性高分子化合物水溶液とからなる湿度インジケータ用塗料を、基材に印刷し、加熱乾燥して呈色組成物にビーズが分散されてなる印刷層を形成すること、を特徴とする湿度インジケータの製造方法である。
【0012】
本発明の湿度インジケータの製造方法においては、
上記基材が多孔性であること、
上記ビーズが湿度インジケータ用塗料の構成成分と反応しない材料で構成されていること、
上記湿度インジケータ用塗料が、水系樹脂エマルジョン又は水溶性高分子の架橋剤を含むこと、
上記基材の裏面に予め樹脂フィルムが積層されていること、
湿度インジケータ用塗料を基材に印刷し、加熱乾燥した後、少なくとも印刷層を覆うように、該印刷層が不溶性の樹脂マトリックスを塗布して樹脂からなるトップコート層を設けること、
上記樹脂マトリックス中にビーズが分散されていること、
を好ましい態様として含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基材に印刷された呈色組成物表面にビーズによる凸部が形成されるため、印刷面が印刷装置の部材等と接触した場合に、該部材表面への呈色組成物の付着が大幅に抑制される。よって、本発明によれば、印刷不良が抑制され、上記部材のメンテナンス頻度も低減して、効率良く湿度インジケータを製造することができる。
【0014】
また、該凸部が存在することで、湿度インジケータを複数枚積層した場合でも、互いに重なり合う一方の湿度インジケータの裏面に他方の湿度インジケータの印刷面が密着しにくく、ブロッキングを低減することができる。
【0015】
本発明においては、印刷層の上にさらにトップコート層を設けることにより、ビーズ表面の呈色組成物が該トップコート層に覆われ、製造後のブロッキングがより効率良く防止される。特に、該トップコート層にビーズを添加した場合には、呈色組成物中のビーズが存在しない領域にも、トップコート層中のビーズが配置し、より高度にブロッキングを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の湿度インジケータとその製造方法について、ロール・ツー・ロール方式の印刷装置を用いて製造する場合を例に挙げて詳細に説明する。
【0017】
本発明の湿度インジケータは、呈色組成物中にビーズを分散させてなる印刷層を基材に担持させてなり、所定の成分とビーズを含む水性の湿度インジケータ用塗料を基材に印刷し、加熱乾燥することにより製造される。
【0018】
本発明に用いられる基材としては、水性塗料を付着させて加熱乾燥させることにより、該基材の表面や内部に該塗料の成分を含む呈色組成物を担持させ得るものであればいかなる素材も用いることができるが、紙や、布、不織布などの多孔性基材が好ましく、紙は紙粉やpHの問題があることから、特に、繊維の長い不織布が好ましく用いられる。
【0019】
本発明に用いられる基材は、予め裏面に樹脂フィルム、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを積層して用いることが好ましい。その理由は、本発明の湿度インジケータをロール・ツー・ロール方式で印刷して製造する場合、係る基材にはオーブンの熱とテンションとがかけられるため、伸びが生じやすく、印刷後に該伸びが再び縮んで外観不良となる場合があるためである。基材の裏面に樹脂フィルムが積層されていると、基材にテンションがかけられても伸びが防止される。また、基材に湿度インジケータ用塗料を印刷した際に、該塗料の裏面への浸み出しも該樹脂フィルムで防止することができる。尚、基材の裏面に樹脂フィルムを積層する方法としては、ラミネート法が好ましく用いられる。
【0020】
本発明で基材の裏面に積層されるPETフィルムの厚さとしては、4μm〜100μmが好ましい。4μm以上であれば基材の伸びを防止する効果が充分に得られ、また、100μm以下であれば湿度インジケータとして必要な通気性を妨げない。
【0021】
本発明に係る呈色組成物は、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解性を有する物質と、樹脂バインダーからなり、該呈色組成物中にビーズが分散されて印刷層を構成する。
【0022】
本発明に用いられる電子供与性呈色化合物としては、酸により発色する化合物であれば特に限定されないが、具体的にはロイコ染料が好ましく用いられ、例えば、酸性で発色或いは色変化を起こすようなpH指示薬、トリアリールメタン誘導体、フルオラン誘導体等が使用される。具体的には、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−インドリノ−3−p−ジメチルアミノフェニル−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−tert−ブチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−ブチルアニリノフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)−フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−N−メチルシクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチルペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0023】
酸性化合物としては、常温において固体であれば特に限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸、ほう酸、p−トルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらのうちでも、水に対する溶解度が高いという点で、シュウ酸、マロン酸、p−トルエンスルホン酸が好ましい。
【0024】
潮解性を有する物質としては、潮解性を示す物質であれば特に限定されないが、好ましくは塩、より好ましくは金属塩である。潮解性を有する物質としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、臭化マグネシウム等が挙げられる。これらのうちでも、潮解性の温度依存性が少ない物質を使用すると、温度の変動によらず安定した湿度表示性能を発揮することができ、好ましい。潮解性の温度依存性が少ない物質としては、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0025】
潮解性を有する物質と酸性化合物との混合割合は、湿度インジケータ用塗料中の重量比で、好ましくは潮解性を有する物質(水和物として):酸性化合物=200:1〜1:5であり、より好ましくは100:1〜1:2である。また、塗料中の電子供与性呈色化合物の含有量は、ビーズ添加前の塗料中に好ましくは0.05〜20.0重量%、より好ましくは0.1〜10.0重量%である。
【0026】
本発明においては、上記した電子供与性呈色化合物、酸性化合物、潮解性を有する物質を水系樹脂エマルジョン或いは水溶性高分子化合物水溶液に投入して十分に撹拌し、微分散及び/または溶解させる。
【0027】
樹脂エマルジョンとしては、基材に影響を及ぼさない程度の加熱乾燥によって固化し、上記成分を担持する樹脂バインダーとなり、潮解性を有する物質や酸性化合物と反応せず、また、これら成分の存在によって凝集しない水系エマルジョンであれば、特に限定されないが、好ましくはノニオンエマルジョン、具体的にはアクリル系エマルジョンが好ましく用いられる。また、その他にも弱アニオンエマルジョンなどを好ましく用いることができる。また、該樹脂エマルジョンは、適宜水で希釈して用いることができ、エマルジョン濃度を適宜選択することにより、湿度インジケータの発色の程度を調整することができる。
【0028】
水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)や、ポリビニルピロリドン(PVP)またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)などが好ましく用いられ、1〜20重量%の水溶液として好ましく用いられる。尚、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物を用いた場合、呈色組成物が吸湿した際にかかる水溶性高分子化合物が溶出し、塗布面が若干べたつく場合がある。よって、本発明においては水系樹脂エマルジョンの方が好ましく用いられる。
【0029】
特に、水系樹脂エマルジョンを用いた場合には、潮解性を有する物質が樹脂エマルジョンの水系溶媒に均一に溶解して供給されるため、該潮解性を有する物質が樹脂バインダー中に分子レベルで分散し、呈色組成物中にも微細に且つ均一に存在する。そのため、呈色組成物に接した微量の湿気によっても潮解性を有する物質が潮解して電子供与性呈色化合物を変色せしめることができる。さらに、樹脂エマルジョンを用いることにより、呈色組成物自体が吸湿しやすい。
【0030】
尚、本発明においては、ビーズを基材に強固に固着させるために、上記樹脂エマルジョン又は水溶性高分子化合物の架橋剤を湿度インジケータ用塗料に添加しても良い。例えば、樹脂バインダーとしてアクリル系エマルジョンを用いた場合には、オキサゾリン系樹脂やエポキシ系樹脂が架橋剤として好ましく用いられる。架橋剤の添加量は、樹脂エマルジョン又は水溶性高分子化合物水溶液100重量部に対して2〜5重量部である。
【0031】
また、常温で固体の酸性化合物は、水系樹脂エマルジョンや水溶性高分子化合物水溶液のような水系溶媒には均一に微分散及び/または溶解しうるため、塗料中において電子供与性呈色化合物を均一に且つ良好に発色させることができる。
【0032】
よって、本発明の湿度インジケータに係る呈色組成物は非常に鋭敏に空気中の湿気を検知することができる。
【0033】
また、水への溶解度の高い酸性化合物を選択したり、電子供与性呈色化合物の塗料への分散性を高めることで、これらの成分を樹脂バインダー中に微分散させることにより、樹脂バインダーの物理的な強度が高く、呈色組成物を基材から剥がれにくくすることができる。
【0034】
本発明においては、上記湿度インジケータ用塗料に、有機溶媒を添加する構成を好ましい態様として含む。かかる有機溶媒としては、水に対する溶解度が5ml/100ml以上で加熱によって揮発する極性溶媒が好ましく用いられる。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブチルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、アセトン、アセトニトリルのうち1種、或いは少なくとも1種を含む混合溶媒が好ましく用いられる。
【0035】
尚、電子供与性呈色化合物、潮解性を有する物質、酸性化合物を有機溶媒添加前に水系樹脂エマルジョンまたは水溶性高分子化合物水溶液に微分散及び/または溶解させておくことにより、各成分を前記したように塗料中に均一に微分散及び/または溶解させることができる。有機溶媒の添加量は、上記電子供与性呈色化合物、潮解性を有する物質、酸性化合物、水系樹脂エマルジョンまたは水溶性高分子化合物水溶液の合計100容量部に対して好ましくは10〜100容量部である。
【0036】
尚、上記塗料には本発明の効果を損ねない範囲で必要に応じて消泡剤や防腐剤等を加えてもかまわない。
【0037】
本発明に用いられるビーズは、呈色組成物の構成成分、即ち湿度インジケータ用塗料の構成成分と反応しない材料で構成されているビーズを言う。具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、或いはアクリルウレタン樹脂からなるビーズが好ましく用いられ、本発明の効果を得る上で好ましい粒径は、体積平均粒径で1μm〜10μmである。1μm未満では、呈色組成物とロールとの接触を阻止するに十分な大きさの凸部を形成しづらく、10μmを超えると呈色組成物から脱離しやすくなり、ビーズごと呈色組成物がロールに付着したり、さらには、本発明の湿度インジケータを商品の包装内に収納した際に、脱離したビーズが商品を汚染する恐れもあり好ましくない。
【0038】
また、本発明に用いられるビーズは、呈色組成物の呈する色に影響を与えないことが好ましく、この点から無色の材料で構成されていることが好ましい。また、その形状は、呈色組成物の変色が明瞭に観察されるように、基材表面への投影面積が小さいほど好ましく、よって、真球状が好ましい。
【0039】
係るビーズは、上記の全ての成分を含む湿度インジケータ用塗料中に1〜20重量%の割合で添加される。ビーズの量が少なすぎると、呈色組成物とロールとの接触を阻む効果が不十分になりやすく、また、多すぎるとビーズ以外の層の領域が狭くなり、呈色組成物の変色がわかりにくくなる場合があり、好ましくない。
【0040】
本発明においては、上記湿度インジケータ用塗料を基材に所定の意匠で印刷し、加熱して乾燥させることにより、該塗料に含まれる電子供与性呈色化合物、潮解性を有する物質、酸性化合物、樹脂エマルジョンまたは水溶性高分子由来の樹脂バインダーからなる呈色組成物が固化し、該呈色組成物中にビーズが分散された印刷層が基材に担持された湿度インジケータが得られる。上記塗料を基材に印刷する方法としては、ロール・ツー・ロール方式のグラビア印刷が好ましく用いられるが、本発明においてはこれに限定されるものではない。
【0041】
加熱方法としてはオーブンなどを適宜用いることができる。加熱温度及び加熱時間は基材の素材や塗料の組成にもよるが、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜130℃で加熱する。また、塗料の付着と加熱乾燥を複数回繰り返して呈色組成物を所定量担持させることも可能である。乾燥後の湿度インジケータにおいて担持される呈色組成物の量は、好ましくは0.3〜100g/m2である。
【0042】
尚、印刷と加熱乾燥は、所定の厚さの呈色組成物層(ビーズ以外の領域)が形成しうるように、繰り返し行っても良い。
【0043】
本発明において、基材が多孔性基材の場合には、印刷時に湿度インジケータ用塗料が多孔性基材の孔の中に浸入するため、印刷層は多孔性基材の表面を覆うと同時に基材の孔内に入り込んで互いに強固に一体化する。
【0044】
また、多孔性基材は表面に凹凸を有していることから、塗料中のビーズは係る多孔性基材表面の凹部に部分的に嵌るように配置され、呈色組成物によって多孔性基材とビーズとが強固に固着する。特に、基材として不織布を用いた場合には、不織布を構成する繊維間の間隙にビーズが部分的に嵌り込むように配置し、呈色組成物によって該繊維とビーズとが固着する。
【0045】
図1は、本発明の湿度インジケータの好ましい一実施形態の断面模式図であり、図中、1は多孔性基材、2は印刷層、3はビーズ、4は呈色組成物、10は樹脂フィルムである。図1に示すように、ビーズ3を覆う呈色組成物4は、印刷時の流動性によってビーズ3以外の領域よりも薄くなる。よって、ビーズ3の頂部が印刷装置のロールと接触しても、ロールに付着する呈色組成物は微量である。また、ビーズ3以外の領域の呈色組成物4は、ビーズ3によって排除された分だけ厚みを増すことになり、インジケータとして必要な厚みが得られやすくなっている。
【0046】
上記のようにして得られた本発明の湿度インジケータは、基材に担持された呈色組成物に含まれる潮解性を有する物質が湿気によって潮解し、この水分によって電子供与性呈色化合物が変色(消色を含む)して湿度上昇を示す。一旦変色した呈色組成物はオーブン等で加熱することにより容易に変色前の色に戻すことができる。
【0047】
本発明の湿度インジケータは、呈色組成物中に分散させたビーズによって、製造工程中のロールへの呈色組成物の付着が抑制され、さらに、得られた湿度インジケータをロール状に巻き取った場合にも、互いに重なり合う湿度インジケータの一方の表面の呈色組成物が他方の裏面に付着するのが抑制され、ブロッキングが低減する。
【0048】
本発明においては、上記ブロッキングの防止効果をさらに向上させるために、湿度インジケータ用塗料を印刷し、加熱乾燥した後に、印刷層を覆うように樹脂マトリックスを塗布してトップコート層を設けることが好ましい。後述する透湿度調整層を表面に設ける場合に、多孔性基材の表面凹凸が粗く、印刷層の上にそのまま透湿度調整層をラミネートすると強度に劣るような場合でも、該トップコート層を設けた上に透湿度調整層をラミネートすると、該トップコート層によって多孔性基材表面の凹凸が均されるため、該透湿度調整層のラミネート強度が向上するという効果も得られる。トップコート層を設ける方法としては、グラビアコーティング、ワイヤーバーコーティングなどの公知の方法を用いることができる。
【0049】
係るトップコート層は、印刷層を覆うだけで良いため、厚さは薄くても良い。よって、特に透明である必要はないが、呈色組成物の変色を容易に目視できるように透明であることが好ましい。また、塗布した際に印刷層が不溶性であることが必要である。このような印刷層が不溶性である樹脂マトリックスとしては、アクリル樹脂が好ましく用いられる。また、トップコート層の厚さが厚すぎると通気性が低下して呈色組成物の湿気による変色を阻害してしまうため、50μm以下が好ましい。
【0050】
図2は図1の湿度インジケータにさらにトップコート層を設けた構成の断面模式図であり、図中、7は樹脂である。図2に示すように、印刷層2が樹脂7で完全に覆われてしまうため、湿度インジケータを積層した場合でも、一方の裏面に他方の呈色組成物4が接触せず、ブロッキングがより効果的に防止される。
【0051】
さらに、本発明においては、上記トップコート層にビーズを添加することによって、さらに高度にブロッキングを防止することができる。即ち、図3に示すように、ビーズ6を樹脂マトリックスに添加して湿度インジケータの印刷面に塗布し、樹脂7中にビーズ6が分散したトップコート層5とする。当該構成では、印刷層2のビーズ3以外の領域にもビーズ6が配置し、単位面積当たりのビーズ個数が増加する。尚、当該構成で用いられるビーズ6は、樹脂マトリックスの成分及び印刷層中の各成分と反応しない材料で構成され、好ましくは、呈色組成物の変色を容易に視認できるように無色である。具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂からなるビーズが好ましく用いられる。ビーズ6は、良好な凸部を形成する上で、体積平均粒径が1〜10μmであることが好ましく、1μm未満では、適当な高さの凸部を形成することができず、また、10μmを超えるとトップコート層から脱離しやすくなり、本発明の湿度インジケータを商品の包装内に収納した際に、脱離したビーズが商品を汚染する恐れもあり好ましくない。係るビーズはトップコート層中に0.1〜20重量%含有させることが好ましい。また、ビーズを分散させたトップコート層5としては、樹脂7が薄すぎるとビーズ6がトップコート層5から脱離しやすくなるため、樹脂7の厚さとしては、0.1〜50μmが好ましい。
【0052】
図2、図3に示すように、本発明の湿度インジケータにおいては、トップコート層を設けることで、ブロッキングをより良く防止することができる。尚、係るトップコート層は、呈色組成物4に起因するブロッキングを防止するための部材であるから、少なくとも呈色組成物4が担持された領域(印刷層)を覆っていればよい。
【0053】
尚、上記の説明においては、ロール・ツー・ロール方式の印刷装置を用いた場合を例に挙げて説明したため、呈色組成物が接触する印刷装置の部材としてロールを例に挙げたが、本発明において呈色組成物が接触する部材はこれに限定されるものではなく、湿度インジケータ用塗料を基材に印刷し、加熱乾燥して呈色組成物が形成された後、該呈色組成物に接触するいかなる部材についても、本発明においては呈色組成物の付着が防止されるものである。また、ブロッキングについては、湿度インジケータをロール状に巻き取った場合を例に挙げて説明したが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、複数枚の湿度インジケータを積層した場合も同様である。
【0054】
本発明の湿度インジケータのさらに好ましい実施形態について説明する。
【0055】
本発明の湿度インジケータの、湿度上昇をより明確に検知する形態として、湿潤により消色する呈色組成物を用い、基材の表面(湿度インジケータ用塗料を印刷する側)に予め、加熱乾燥後の呈色組成物の色相とは異なる色相の有彩色インク層を設けておく。例えば、呈色組成物が湿潤前に青色である場合、基材に赤色のインクを塗布しておき、該インク層を呈色組成物で覆っておけば、乾燥時には呈色組成物の青色が視認され、湿度上昇によって呈色組成物が消色することにより、呈色組成物に覆われていた赤色のインク層が視認されるようになる。即ち、湿度インジケータとしては、湿度上昇により青色から赤色に変化するため、一目で湿度上昇が検知される。また、かかるインク層を所定の意匠或いは文字の印刷としておけばより明瞭に検知される。
【0056】
図4は、図1の湿度インジケータに係る有彩色インク層を設けた構成の断面模式図であり、図中の8が有彩色インク層である。尚、本形態に図2、図3のトップコート層を組み合わせて構成しても良い。
【0057】
また、本発明の湿度インジケータには、裏面に接着層を設け、該接着層表面を剥離層で覆っておき、使用時に該剥離層を剥ぎ、該接着層により商品の包装材の内側や乾燥剤を収納した袋に貼り付けて用いる形態も好ましく適用される。或いは、本発明の湿度インジケータをそのまま乾燥剤の収納袋として用いることも可能である。その場合、印刷層は基材の一部にのみ設け、該基材を袋状に成形して乾燥剤を収納すればよい。尚、乾燥剤としては、湿度インジケータの呈色組成物と反応しないシリカゲルが好ましく用いられる。
【0058】
またさらに、本発明の湿度インジケータには、印刷面の表面(図1、図4の印刷層2の上、図2の樹脂7の上、図3のトップコート層5の上)に、樹脂からなる透湿度調整層を積層して当該表面の通気性を制御し、湿度上昇による呈色組成物の変色の速度を抑制する形態も好ましく適用される。係る透湿度調整層としては、適度な通気性を有し、呈色組成物の変色が視認しやすい透明性も備えたPETフィルムが好ましく用いられ、厚さとしては、4〜100μm程度が好ましい。図5は、図3のトップコート層5の上に係る透湿度調整層11を設けた形態の断面模式図である。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
ロイコ染料「BLUE−63」(山本化成(株)製)1重量部、シュウ酸2水和物(和光純薬工業(株)製)1重量部、塩化マグネシウム6水和物10重量部をアクリルエマルジョン「DICNAL RS−308」(大日本インキ化学工業(株)製;固形成分40重量%)100重量部に加え、均一になるように攪拌した。ここにさらにビーズ((株)岐阜セラツク製造所製;アクリルウレタンビーズ)を最終的な塗料中の含有量が表1に記載した数値となるように加え、湿度インジケータ用塗料とした。
【0060】
公知のロール・ツー・ロール方式の印刷装置を用い、裏面に厚さ25μmのPETフィルムをラミネートした厚さ0.17mm、幅100cmの不織布(デュポン(株)製、商品名「Tyvek」)に上記塗料を用いて印刷を施した。印刷の意匠は、直径1.5cmの円の内側を塗りつぶしたものとした。
【0061】
本例の湿度インジケータを23℃、湿度50%の環境に1週間保存してブロッキングテスターによりブロッキングの状態を観察した。結果を表1に示す。尚、ブロッキングの状態は以下の基準で判断した。
○:非粘着。接着の跡がなく、被覆面が離れる。
△:微接着。接着の跡が所々見られるが、被覆面は異常なし。
×:剥離困難で、被覆面が剥がれる。
【0062】
(実施例2)
実施例1の湿度インジケータの印刷面に、樹脂マトリックスとして大日本インキ化学工業(株)製、「アクリディックBZ−1161」を、メチルエチルケトン/トルエンの3/7(重量比)にて粘度がザーンカップ♯3で15〜17秒となるように希釈したものを塗布し、100℃で乾燥させて厚さ3μmのトップコート層を形成し、実施例1と同様にブロッキングの状態を観察した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例3)
実施例2の樹脂マトリックスに、実施例1で用いた粒径4.0μmのビーズを5重量%となるように添加した以外は実施例2と同様にして厚さ3μmのトップコート層を形成し、実施例1と同様にブロッキングの状態を観察した。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の湿度インジケータの一実施形態の断面模式図である。
【図2】本発明の湿度インジケータにトップコート層を設けた形態の断面模式図である。
【図3】本発明の湿度インジケータにビーズを分散させたトップコート層を設けた形態の断面模式図である。
【図4】本発明の湿度インジケータに有彩色インク層を設けた形態の断面模式図である。
【図5】本発明の湿度インジケータに透湿度調整層を設けた形態の断面模式図である。
【符号の説明】
【0066】
1 多孔性基材
2 印刷層
3 ビーズ
4 呈色組成物
5 トップコート層
6 ビーズ
7 樹脂
8 有彩色インク層
10 樹脂フィルム
11 透湿度調整層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解性を有する物質と、樹脂バインダーとからなる呈色組成物中にビーズが分散されてなる印刷層を基材に担持させてなり、該印刷層が表面にビーズによる凸部を有することを特徴とする湿度インジケータ。
【請求項2】
上記基材が多孔性である請求項1に記載の湿度インジケータ。
【請求項3】
上記ビーズが呈色組成物の構成成分と反応しない材料で構成されている請求項1又は2に記載の湿度インジケータ。
【請求項4】
上記基材の裏面に樹脂フィルムが積層されている請求項1〜3のいずれかに記載の湿度インジケータ。
【請求項5】
少なくとも上記印刷層を覆う樹脂からなるトップコート層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の湿度インジケータ。
【請求項6】
上記トップコート層が樹脂中にビーズを分散してなり、該トップコート層が表面にビーズによる凸部を有する請求項5に記載の湿度インジケータ。
【請求項7】
上記湿度インジケータの印刷層側の最表面にさらに樹脂からなる透湿度調整層が積層されている請求項1〜6のいずれかに記載の湿度インジケータ。
【請求項8】
印刷層と基材との間に、有彩色インク層が配置されている請求項1〜7のいずれかに記載の湿度インジケータ。
【請求項9】
少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解性を有する物質と、ビーズと、水系樹脂エマルジョン又は水溶性高分子化合物水溶液とからなる湿度インジケータ用塗料を、基材に印刷し、加熱乾燥して呈色組成物にビーズが分散されてなる印刷層を形成することを特徴とする湿度インジケータの製造方法。
【請求項10】
上記基材が多孔性である請求項9に記載の湿度インジケータの製造方法。
【請求項11】
上記ビーズが湿度インジケータ用塗料の構成成分と反応しない材料で構成されている請求項9又は10に記載の湿度インジケータの製造方法。
【請求項12】
上記湿度インジケータ用塗料が、水系樹脂エマルジョン又は水溶性高分子の架橋剤を含む請求項9〜11のいずれかに記載の湿度インジケータの製造方法。
【請求項13】
上記基材の裏面に予め樹脂フィルムが積層されている請求項9〜12のいずれかに記載の湿度インジケータの製造方法。
【請求項14】
湿度インジケータ用塗料を基材に印刷し、加熱乾燥した後、少なくとも印刷層を覆うように、該印刷層が不溶性の樹脂マトリックスを塗布して樹脂からなるトップコート層を設ける請求項9〜13のいずれかに記載の湿度インジケータの製造方法。
【請求項15】
上記樹脂マトリックス中にビーズが分散されている請求項14に記載の湿度インジケータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−8118(P2010−8118A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165327(P2008−165327)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】