説明

湿度インジケータ用塗料とその製造方法、該塗料を用いてなる湿度インジケータ

【課題】重金属を含まず、湿度上昇時の色相変化の視認性が良好で、しかも、色相変化のメモリー性を有する湿度インジケータを提供する。
【解決手段】ロイコ染料と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、樹脂エマルジョンとからなる水性塗料を、樹脂フィルムや不織布、紙などの担持体に付着させ、加熱して乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色により湿度の上昇を容易に視認しうる湿度インジケータと該湿度インジケータの製造に用いる湿度インジケータ用塗料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、商品包装に封入される乾燥剤として、シリカゲル入りの小袋が用いられており、この小袋内には、乾燥状態を把握するためのインジケータとして、青ゲルと呼ばれる塩化コバルト含浸シリカゲルが混入されていた。しかし、コバルトは重金属であるため、環境上、コバルトを含有しない湿度インジケータが望まれている。
【0003】
特許文献1には、粉状潮解性物質と潮解性物質の潮解液と接触することにより顕色化する粉状顕色剤との混合物の乾式成形体よりなる湿度インジケータが開示されている。しかし、特許文献1の湿度インジケータは、顕色剤として合成着色料のような水溶性色素やpH指示薬を用いるため、湿度上昇時の色相変化の視認性が十分ではないという問題があった。
【0004】
さらに、シート状等様々な形態の湿度インジケータが求められており、上記のような乾式成形体では適応しきれないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開平7−174704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決し、重金属を含まず、湿度上昇時の色相変化の視認性が良好で、しかも、色相変化のメモリー性を有し、さらに、様々な形態に適用が可能な湿度インジケータを提供する、及び、該湿度インジケータを製造するための湿度インジケータ用塗料とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
さらに本発明は、様々な形態の湿度インジケータを容易に製造しうる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、水系樹脂エマルジョンとからなることを特徴とする湿度インジケータ用塗料である。
【0009】
上記本発明の湿度インジケータ用塗料においては、さらに、有機溶媒を含有することが好ましく、本発明の第2は、係る有機溶媒を含有する本発明の湿度インジケータ用塗料の製造方法であって、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質とを、水系樹脂エマルジョンに微分散及び/または溶解させた後、有機溶媒を添加することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3は、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、水溶性高分子化合物水溶液とからなることを特徴とする湿度インジケータ用塗料である。
【0011】
上記本発明の第3の湿度インジケータ用塗料においては、さらに、有機溶媒を含有することが好ましく、本発明の第4は、係る有機溶媒を含有する本発明の湿度インジケータ用塗料の製造方法であって、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質とを、水溶性高分子化合物水溶液に微分散及び/または溶解させた後、有機溶媒を添加することを特徴とする。
【0012】
本発明の第5は、担持体に呈色組成物を担持させてなる湿度インジケータであって、該呈色組成物が、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、樹脂バインダーからなり、上記本発明の湿度インジケータ用塗料を担持体に付着させ、加熱乾燥してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0014】
〔1〕本発明の湿度インジケータ用塗料は水性塗料であるため、取り扱いが容易である。
【0015】
〔2〕本発明の湿度インジケータは、水性塗料を紙や樹脂フィルム、布、不織布などの担持体に付着させて乾燥させることで容易に得られるため、様々な形態の湿度インジケータを提供することができ、用途が広い。
【0016】
〔3〕本発明の湿度インジケータは電子供与性呈色化合物を用いていることから、湿度上昇を示す色相の変化の視認性が良好であり、しかも色相の変化を保持するメモリー性を有する。さらに、加熱によって元に戻すことができ、再利用が可能である。また、乾燥時と湿潤持の色相を自由に選択することができ、色相の変化によって湿度レベルを検知することもできる。さらに、変色の速度も容易に調整することができ、用途や製造工程に応じで調整することができる。
【0017】
〔4〕本発明の湿度インジケータ及び湿度インジケータ用塗料はコバルト等重金属を含んでいないため、環境上の問題がなく、一般家庭用ゴミと同様に廃棄することができる。
【0018】
〔5〕本発明の湿度インジケータは包装材料として応用することができるため、内部の乾燥状態を保持する必要のある包装体の包装材料として、また、包装体の内部に収納する乾燥剤の包装材料として用いることにより、別途湿度インジケータを収納する手間が省け、また、湿度インジケータの入れ忘れを生じる恐れもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明の湿度インジケータは、担持体に呈色組成物を担持させてなり、所定の成分を含む水性塗料を該担持体に付着させて加熱乾燥することにより製造される。
【0021】
本発明に用いられる担持体としては、紙や樹脂フィルム、布、不織布など水性塗料を付着させて加熱乾燥させることにより、該担持体の表面や内部に該塗料の成分を含む呈色組成物を担持させ得るものであればいかなる素材も用いることができる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのフィルム、或いはシートが好ましく用いられる。
【0022】
本発明に係る呈色組成物は、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、樹脂バインダーからなる。
【0023】
電子供与性呈色化合物としては、酸により発色する化合物であれば特に限定されないが、具体的にはロイコ染料が好ましく用いられ、例えば、酸性で発色或いは色変化を起こすようなpH指示薬、トリアリールメタン誘導体、フルオラン誘導体等が使用される。具体的には、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−インドリノ−3−p−ジメチルアミノフェニル−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−tert−ブチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−ブチルアニリノフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)−フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−N−メチルシクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチルペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0024】
酸性化合物としては、常温において固体であれば特に限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸、ほう酸、p−トルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらのうちでも、水に対する溶解度が高いという点で、シュウ酸、マロン酸、p−トルエンスルホン酸が好ましい。
【0025】
潮解物質としては、潮解性を示す物質であれば特に限定されないが、好ましくは塩、より好ましくは金属塩である。潮解物質としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、臭化マグネシウム等が挙げられる。これらのうちでも、潮解性の温度依存性が少ない物質を使用すると、温度の変動によらず安定した湿度表示性能を発揮することができ、好ましい。潮解性の温度依存性が少ない物質としては、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0026】
本発明の塗料中における潮解物質と酸性化合物との混合割合は、重量比で、好ましくは潮解物質(水和物として):酸性化合物=200:1〜1:5であり、より好ましくは100:1〜1:2である。また、塗料中の電子供与性呈色化合物の含有量は好ましくは0.05〜20.0重量%、より好ましくは0.1〜10.0重量%である。
【0027】
本発明においては、上記した電子供与性呈色化合物、酸性化合物、潮解物質を水系樹脂エマルジョン或いは水溶性高分子化合物水溶液に投入して十分に撹拌し、微分散及び/または溶解させて湿度インジケータ用塗料とする。
【0028】
樹脂エマルジョンとしては、担持体に影響を及ぼさない程度の加熱乾燥によって固化し、上記成分を担持する樹脂バインダーとなり、潮解物質や酸性化合物と反応せず、また、これら成分の存在によって凝集しない水系エマルジョンであれば、特に限定されないが、好ましくはノニオンエマルジョン、具体的にはアクリル系エマルジョンが好ましく用いられる。また、その他にも弱アニオンエマルジョンなどを好ましく用いることができる。また、該樹脂エマルジョンは、適宜水で希釈して用いることができ、エマルジョン濃度を適宜選択することにより、湿度インジケータの発色の程度を調整することができる。
【0029】
水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)や、ポリビニルピロリドン(PVP)またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)などが好ましく用いられ、1〜20重量%の水溶液として好ましく用いられる。尚、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物を用いた場合、呈色組成物が吸湿した際にかかる水溶性高分子化合物が溶出し、塗布面が若干べたつく場合がある。よって、本発明においては水系樹脂エマルジョンの方が好ましく用いられる。
【0030】
特に、水系樹脂エマルジョンを用いた場合には、潮解物質が樹脂エマルジョンの水系溶媒に均一に溶解して供給されるため、該潮解物質が樹脂バインダー中に分子レベルで分散し、呈色組成物中にも微細に且つ均一に存在する。そのため、呈色組成物に接した微量の湿気によっても潮解物質が潮解して電子供与性呈色化合物を変色せしめることができる。さらに、樹脂エマルジョンを用いたことにより、呈色組成物自体が吸湿しやすい。
【0031】
また、固体の酸性化合物は、水系樹脂エマルジョンや水溶性高分子化合物水溶液のような水系溶媒には均一に微分散及び/または溶解しうるため、塗料中において電子供与性呈色化合物を均一に且つ良好に発色させることができる。
【0032】
よって、本発明の湿度インジケータに係る呈色組成物は非常に鋭敏に空気中の湿気を検知することができる。
【0033】
また、水への溶解度の高い酸性化合物を選択したり、電子供与性呈色化合物の塗料への分散性を高めることで、これらの成分を樹脂バインダー中に微分散させることにより、樹脂バインダーの物理的な強度が高く、呈色組成物を担持体から剥がれにくくすることができる。
【0034】
本発明においては、上記湿度インジケータ用塗料に、有機溶媒を添加する構成を好ましい態様として含む。かかる有機溶媒としては、水に対する溶解度が5ml/100ml以上で加熱によって揮発する極性溶媒が好ましく用いられる。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブチルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、アセトン、アセトニトリルのうち1種、或いは少なくとも1種を含む混合溶媒が好ましく用いられる。
【0035】
係る有機溶媒は、上記電子供与性呈色化合物、潮解物質、酸性化合物を、水系樹脂エマルジョンまたは水溶性高分子化合物水溶液に微分散及び/または溶解させた後に添加する。即ち、電子供与性呈色化合物、潮解物質、酸性化合物を有機溶媒添加前に水系樹脂エマルジョンまたは水溶性高分子化合物水溶液に微分散及び/または溶解させておくことにより、各成分を前記したように塗料中に均一に微分散及び/または溶解させることができる。有機溶媒の添加量は、上記電子供与性呈色化合物、潮解物質、酸性化合物、水系樹脂エマルジョンまたは水溶性高分子化合物水溶液の合計100容量部に対して好ましくは10〜100容量部である。
【0036】
尚、上記塗料には本発明の効果を損ねない範囲で必要に応じて消泡剤や防腐剤等を加えてもかまわない。
【0037】
本発明においては、上記湿度インジケータ用塗料を上記担持体に付着させ、加熱して乾燥させることにより、該塗料に含まれる電子供与性呈色化合物、潮解物質、酸性化合物、樹脂エマルジョンまたは水溶性高分子由来の樹脂バインダーからなる呈色組成物が該担持体に担持された湿度インジケータが得られる。上記塗料を担持体に付着させる方法としては、所望量の塗料を担持体に付着させることができれば特に限定されず、例えば担持体を塗料に浸漬する方法、ワイヤーバーやロールコーター等で塗布する方法、スプレー等で吹き付ける方法など、担持体や塗料の組成に応じて適宜選択される。
【0038】
加熱方法としてはオーブンなどを適宜用いることができる。加熱温度及び加熱時間は担持体の素材や塗料の組成にもよるが、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜130℃で、好ましくは2〜600秒間加熱する。また、塗料の付着と加熱乾燥を複数回繰り返して呈色組成物を所定量担持させることも可能である。乾燥後の湿度インジケータにおいて担持された呈色組成物の量は、例えばフィルムなどの平板の担持体において、好ましくは0.3〜100g/m2である。
【0039】
本発明の湿度インジケータは、紙やフィルムなどの担持体に水性塗料を付着させて得られるため、大面積の担持体に呈色組成物を担持させた後に切断することにより、所望の大きさのインジケータを容易に量産することができる。
【0040】
上記のようにして得られた本発明の湿度インジケータは、担持体に担持された呈色組成物に含まれる潮解物質が湿気によって潮解し、この水分が電子供与性呈色化合物に作用して、変色(消色を含む)して湿度上昇を示す。一旦変色した呈色組成物は変色後の色を維持するが、オーブン等で加熱することにより容易に変色前の色に戻すことができる。
【0041】
本発明の湿度インジケータは、担持体に呈色組成物を担持させた状態で用いることができ、そのまま湿度管理が必要な各種用途に用いることができるが、さらに下記に示すような様々な態様を好ましくとることができる。また、下記の態様はそれぞれ単独で実施しても、複数の態様を組み合わせて実施しても良い。
【0042】
〔速度調整樹脂層〕
本発明に係る呈色組成物は湿度上昇を鋭敏に感知し変色するため、変色速度が速い場合には、包装体内に包装する前に変色してしまう場合もあり得る。そのため、用いる呈色組成物によっては、外側を速度調整樹脂層で覆うことで呈色組成物に接する湿気を制限し、変色速度を遅らせることが好ましい。
【0043】
このような速度調整樹脂層としては、適当な透湿性を有する透明樹脂層を用いれば良く、樹脂素材を溶媒に溶解或いは分散させた樹脂塗料を、呈色組成物を担持した担持体に塗布して加熱乾燥させたり、担持体に樹脂シート或いはフィルムをラミネート等により積層することで形成される。
【0044】
係る樹脂素材としては、樹脂層形成後に適当な透湿性と透明性とを示すものであれば用いることができる。本発明において速度調整樹脂層の透湿性は、下記の測定法による透湿度(g/m2・day)で示す。
【0045】
厚さ12μmのPETフィルムの上に測定用の樹脂層を形成し、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製「PERMATRAN−W 3/33シリーズ」)により測定する。
【0046】
速度調整樹脂層の透湿度としては、速度調整作用が得られれば特に限定されないが、好ましくは0.5〜200g/m2・dayである。透湿度が0.5g/m2・day未満では透湿性が低すぎるため湿気を検知しても変色速度が遅くなりすぎる。また、200g/m2・dayを超えると透湿性が高すぎて梱包作業などにおいて周囲の湿気によって急激に変化してしまう恐れがある。
【0047】
具体的に樹脂素材として、ポリエチレンテレフタレート、ブチラール樹脂、ポリエステルウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、スチレン化エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、塩化酢酸ビニル、アクリル樹脂、ニトロセルロースなどを用いることができる。
【0048】
〔有彩色インク層〕
本発明の湿度インジケータを用いた湿度上昇をより明確に検知する形態として、湿潤により消色する呈色組成物を用い、担持体に予め、加熱乾燥後の呈色組成物の色相とは異なる色相の有彩色インク層を設けておく構成が挙げられる。例えば、呈色組成物が湿潤前に青色である場合、担持体に赤色のインクを塗布しておき、該インク層を呈色組成物で覆っておけば、乾燥時には呈色組成物の青色が視認され、湿度上昇によって呈色組成物が消色することにより、呈色組成物に覆われていた赤色のインク層が視認されるようになる。即ち、湿度インジケータとしては、湿度上昇により青色から赤色に変化するため、一目で湿度上昇が検知される。また、かかるインク層は所定の意匠或いは文字の印刷としておけばより明瞭に検知される。
【0049】
係るインク層は、担持体が透明な素材である場合には、呈色組成物を塗布する面とは反対側に設けても良い。
【0050】
また、係るインク層の代わりに、所定の色相に彩色した担持体を用いても同様の効果が得られる。
【0051】
〔包装材料1〕
食品や電子部品など、包装体内に乾燥剤を収納して包装体内の乾燥状態を保持するような場合には、係る乾燥剤の包装材料に本発明の湿度インジケータを適用することができる。
【0052】
即ち、担持体として透湿性を有する素材を用い、該担持体に本発明に係る呈色組成物を担持させて乾燥剤の包装材料として用いる。
【0053】
係る構成においては、担持体として透湿性を有する素材を用いるので、担持体が透明でない場合には、呈色組成物は担持体の外側に担持させ、担持体が透明である場合には、外側、内側のいずれに担持させても良い。担持体としては不織布などのようにそれ自体が透湿性を有する素材の他に、樹脂シートに乾燥剤よりも小さい径の穴を複数設けたものも好ましく用いられる。
【0054】
例えば、不織布の外側に本発明の湿度インジケータ用塗料を塗布して加熱乾燥させ、呈色組成物を担持させる。次いで、該呈色組成物を速度調整樹脂層で覆う。また、透湿性が低い、或いは実質的にない透明な樹脂シートに乾燥剤よりも小さい径の穴を複数設け、該穴を設けていない領域に呈色組成物を担持させる。さらに、呈色組成物として湿潤により消色するものを用い、上記呈色組成物よりも内側に呈色組成物とは異なる色相の有彩色インク層を設けておくことにより、よりよく湿度上昇が検知される。
【0055】
このような形態では、乾燥剤と湿度インジケータとを個別に包装体内に収納する必要がないことから、包装作業が簡易になり、湿度インジケータの入れ忘れがなくなる。さらに、本発明の湿度インジケータは湿潤による変色にメモリー性があるため、一旦包装体内の湿度が上昇した後に乾燥剤によって湿度が低下した場合であっても、上昇した湿度によって変化した色を保持するため、誤認が防止される。
【0056】
〔包装材料2〕
本発明の湿度インジケータは担持体や速度調整樹脂層を適宜選択することにより、そのまま食品や電子部品など、包装体内の乾燥状態を保持する必要性のある包装体の包装材料として用いることができる。
【0057】
具体的には、呈色組成物の外側の透湿性を低く、好ましくは透湿性が実質的にないように構成し、内側は適度な透湿性を有するように構成する。尚、ここで外側とは、包装体における外側であり、内側とは包装体における内側(被包装体を収納した側)を意味する。
【0058】
より具体的には、担持体として透湿性の低い或いは実質的にない素材を用い、内側に本発明の湿度インジケータ用塗料を用いて塗布面を形成する、或いは、係る構成において塗布面を速度調整樹脂層で覆う構成が好ましく用いられる。
【0059】
係る構成において、上記担持体としては、透湿度が1g/m2・day以下が好ましく、速度調整樹脂層としては、透湿度が10g/m2・day以上であるように構成することが好ましい。担持体の透湿度が1g/m2・を超える場合には、外部の湿度の影響を受けやすく、包装体内の湿度が上昇していない場合であっても外部の湿度が上昇した場合に変色してしまう場合がある。また、速度調整樹脂層の透湿度が10g/m2・day未満である場合には、包装体内の湿度上昇を十分に反映できない場合がある。
【0060】
尚、湿度インジケータの呈色組成物が湿度上昇に対して非常に鋭敏である場合には、包装作業において周囲の湿度に鋭敏に反応して変色する恐れがある。よって、このような場合には、速度調整樹脂層を透湿度が200g/m2・day以下とすることが好ましい。
【0061】
また、上記担持体においては、外側から呈色組成物の塗布面の湿度上昇による変色を認識できる程度に透明である必要がある。また、該担持体においては、包装体内の乾燥状態を維持するために、CVD、PVD等の公知の技術によるアルミナ蒸着層やシリカ蒸着層を設けることが好ましく、このような蒸着層を設けることで透湿度を1g/m2・day以下とすることができる。
【0062】
さらに、呈色組成物の塗布面の密着性を向上させるために該塗布面の片面もしくは両面にアンカーコート層を形成しても良い。アンカーコート層としては公知のものが用いられ、好ましくは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0063】
係る包装材料においても、呈色組成物として湿潤により消色するものを用い、上記呈色組成物よりも内側に呈色組成物とは異なる色相の有彩色インク層を設けておくことにより、よりよく湿度上昇が検知される。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
ロイコ染料「BLUE−63」(山本化成(株)製)1重量部、シュウ酸2水和物(和光純薬工業(株)製)1重量部、塩化マグネシウム6水和物10重量部をアクリルエマルジョン「DICNAL RS−308」(大日本インキ化学工業(株)製;固形成分40重量%)100重量部に加え、均一になるように攪拌した。この塗料をPETフィルムにワイヤーバー♯20を用いて乾燥後の呈色組成物量が16g/m2となるように塗工し、80℃で1分間乾燥させ、湿度インジケータを得た。
【0065】
(実施例2)
シュウ酸2水和物を6重量部用い、塩化マグネシウム6水和物を20重量部用いる以外は実施例1と同様にして湿度インジケータを得た。
【0066】
(実施例3)
塩化マグネシウム6水和物の代わりに塩化カルシウム2水和物を10重量部用いる以外は実施例1と同様にして湿度インジケータを得た。
【0067】
(実施例4)
シュウ酸2水和物を6重量部用い、塩化マグネシウム6水和物の代わりに塩化カルシウム2水和物を20重量部用いる以外は実施例1と同様にして湿度インジケータを得た。
【0068】
(実施例5)
ロイコ染料「RED−40」(山本化成(株)製)1重量部、シュウ酸2水和物1重量部、塩化マグネシウム6水和物10重量部をアクリルエマルジョン「DICNAL E−8203WH」(大日本インキ化学工業(株)製;固形成分45重量%)100重量部に加え、均一になるように攪拌した。この塗料をPETフィルムにワイヤーバー♯14を用いて乾燥後の呈色組成物量が15g/m2となるように塗工し、80℃で1分間乾燥させ、湿度インジケータを得た。
【0069】
(実施例6)
ロイコ染料「BLUE−63」0.5重量部、シュウ酸2水和物0.1重量部、塩化マグネシウム6水和物10重量部をアクリルエマルジョン「DICNAL E−8203WH」100重量部に加え、均一になるように攪拌した。この塗料をPETフィルムにワイヤーバー♯20を用いて乾燥後の呈色組成物量が16g/m2となるように塗工し、80℃で1分間乾燥させ、湿度インジケータを得た。
【0070】
(実施例7)
シュウ酸2水和物を10重量部用いる以外は実施例6と同様にして湿度インジケータを得た。
【0071】
(実施例8)
ロイコ染料「BLUE−63」を0.1重量部、シュウ酸2水和物を1重量部、塩化マグネシウム6水和物を9重量部を用いる以外は実施例6と同様にして湿度インジケータを得た。
【0072】
(実施例9)
ロイコ染料「BLUE−63」を20重量部、シュウ酸2水和物を1重量部、塩化マグネシウム6水和物を9重量部を用いる以外は実施例6と同様にして湿度インジケータを得た。
【0073】
(実施例10)
ロイコ染料「BLUE−63」を1重量部、シュウ酸2水和物の代わりにマロン酸1重量部を用いる以外は実施例6と同様にして湿度インジケータを得た。
【0074】
(評価)
上記実施例1〜10で得られた湿度インジケータを、8%RH、20%RH、50%RH、90%RHの各環境下に24時間放置し、色の変化を観察した。また、90%RHの環境下に放置したインジケータを80℃で10分間オーブンにて乾燥させ、色の変化を観察した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
(実施例11〜13)
ロイコ染料「BLUE−63」(山本化成(株)製)1重量部、シュウ酸2水和物(和光純薬工業(株)製)1重量部、臭化マグネシウム6水和物(和光純薬工業(株)製)10重量部を、アクリルエマルジョン「DICNAL E−8203WH」(大日本インキ化学工業(株)製;固形成分45重量%)80重量部と2−プロパノール40重量部の混合液に加え、均一になるように攪拌した。この塗料を不織布(デュポン(株)製「タイベック1082D」)の表面にワイヤーバー♯20を用いて乾燥後の呈色組成物量が8g/m2となるように塗工し、80℃で1分間乾燥させ、青色の呈色組成物を不織布に担持させた。
【0077】
次いで、上記不織布の両面に、厚さ12μm、25μm、50μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製、エステルフィルム「E5100」)をドライラミネートし、表面に速度調整樹脂層を形成した。
【0078】
(実施例14〜27)
実施例11で用いた塗料を厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャインA4300」)の表面にワイヤーバー♯20を用いて乾燥後の呈色組成物量が8g/m2となるように塗工し、80℃で1分間乾燥させ、青色の呈色組成物を担持させた。
【0079】
その後、表3に示す樹脂成分を含む塗料をワイヤーバー♯20を用いて表3に示す塗布量(乾燥後の固形分)で両面に塗布し、80℃で1分乾燥させて速度調整樹脂層を形成した。
【0080】
(評価)
上記実施例11〜27の各湿度インジケータを、常温、常圧、50%RH環境下に静置し、色の変化を目視で確認し、完全に消色するまでにかかった時間を計測した。結果を表2(実施例11〜13)、表3(実施例14〜27)に示す。
【0081】
表2、3から明らかなように、速度調整樹脂層を設けることによって、湿度インジケータの変色速度を調整することが可能であることがわかった。特に、ポリ塩化ビニリデンからなる速度調整樹脂層を設けた湿度インジケータにおいては、上記評価条件において空気中の湿気によって消色するまでに1800秒を経過している。よって本発明によれば、通常の電子部品などの包装作業において、かかる湿度インジケータが空気中に曝露された場合であっても、曝露時間の差によって包装体毎に目視で確認しうるような変色レベルの差を生じる恐れがない。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、水系樹脂エマルジョンとからなることを特徴とする湿度インジケータ用塗料。
【請求項2】
さらに、有機溶媒を含有する請求項1に記載の湿度インジケータ用塗料。
【請求項3】
請求項2に記載の湿度インジケータ用塗料の製造方法であって、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質とを、水系樹脂エマルジョンに微分散及び/または溶解させた後、有機溶媒を添加することを特徴とする湿度インジケータ用塗料の製造方法。
【請求項4】
少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、水溶性高分子化合物水溶液とからなることを特徴とする湿度インジケータ用塗料。
【請求項5】
さらに、有機溶媒を含有する請求項4に記載の湿度インジケータ用塗料。
【請求項6】
請求項5に記載の湿度インジケータ用塗料の製造方法であって、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質とを、水溶性高分子化合物水溶液に微分散及び/または溶解させた後、有機溶媒を添加することを特徴とする湿度インジケータ用塗料の製造方法。
【請求項7】
担持体に呈色組成物を担持させてなる湿度インジケータであって、該呈色組成物が、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、樹脂バインダーからなり、請求項1,2,4,5のいずれかに記載の湿度インジケータ用塗料を担持体に付着させ、加熱乾燥してなることを特徴とする湿度インジケータ。

【公開番号】特開2007−316058(P2007−316058A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103470(P2007−103470)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】