説明

湿度検出装置

【課題】苛酷な環境条件下であっても計測精度の良い湿度検出装置を提供することにある。
【解決手段】電子回路基板1と、前記電子回路基板の一方の面に実装された湿度検出素子2を有し、前記湿度検出素子の全体と前記電子回路基板の一部を空気に晒して空気中の湿度を検出する湿度検出装置において、前記湿度検出素子が実装されている面と同一面に複数の加熱抵抗体3が実装され、前記加熱抵抗体は、前記湿度検出素子の周囲に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検出装置に係り、特に、内燃機関の吸入空気の温湿度計測に好適な検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に高分子からなるセンサ素子を形成し、この素子の静電容量値の変化から雰囲気の湿度を測定する高分子電気容量式の湿度センサがある。この湿度センサは低湿度まで検出することが可能であり、比較的精度も良く、低コストであるため、雰囲気湿度の検出センサとして、民生用から工業用の計測器まで広範囲において使用されている。
【0003】
自動車産業では、例えば、内燃機関用の吸入空気流量測定装置に、湿度検出装置などを一体化してなる複数の物理量を計測可能なセンサがある。特許文献1には、湿度計測装置と圧力計測装置とを一体化した例が示される。
【0004】
さらに、湿度センサの結露抑制を目的に加熱部を備える湿度センサの例が特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−43883号公報
【特許文献2】特開2002−39983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、電子制御燃料噴射システムを用いた自動車が一般化しており、この場合エンジンルームの内部には様々なセンサや制御機器が配置されると共に、電装品の増加に伴い各電子機器の消費電力低減が一つの課題となっている。
【0007】
その中の一つに湿度検出装置がある。湿度検出装置は最近になって燃料制御用途への利用実績が出たばかりであり、従来は主に車室内の空調管理などに用いられてきた。車室内への用途には苛酷な環境を想定した耐久性などへの要求は存在しない。しかし、燃料制御用の用途に使用する場合、例えば、内燃機関に設置される吸入空気流量測定装置やその他のセンサなどと一体化して使用する場合、吸入空気流量測定装置と等価な耐環境性能が要求される。
【0008】
湿度検出装置は、湿度検出素子部への汚損物付着や水滴付着、更にはそれらが複合的に発生する環境に影響を受けて計測精度が悪化してしまい、これらに対する明確な技術的対策が必須となる。
【0009】
内燃機関のような苛酷な環境条件下で使用する場合、例えば、特許文献2に示した従来技術では、結露抑制は可能であってもカーボン等の汚損物質を抑制することが考慮できていない。また、特許文献2が指摘するように、湿度検出素子周囲の環境が急激に変化し、露点に達すると湿度検出素子が結露してしまうと言う問題もある。
【0010】
更には、前述したカーボンを含め大気中に浮遊する汚損物質が湿度検出素子の近傍に付着すると、その汚損物質自体が吸湿性を有することから、結露等が複合的に起こり、高湿度の空気が流入してきた場合には、汚損物質が吸湿し、その水分が乾燥するまでの時間は、実際の環境よりも高い湿度を検出し続けると言う計測精度上の問題も起きる。
【0011】
本発明の目的は、苛酷な環境条件下であっても計測精度の良い湿度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の湿度検出装置は、電子回路基板上に湿度検出素子を実装し、電子回路基板上の湿度検出素子が実装されている面と同一面上に複数個の加熱抵抗体を実装した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、苛酷な環境条件下であっても計測精度の良い湿度検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示す平面図。
【図2】本発明のその他の一実施例を示す平面図。
【図3】本発明のその他の一実施例を示す平面図。
【図4】本発明のその他の一実施例を示す平面図。
【図5】本発明を湿度センサに利用した一実施例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の具体的な構成例について図1を使い説明する。
電子回路基板1上に湿度検出素子2が実装され、更に、電子回路基板1は外部との入出力を行うための入出力端子4を備える。これらを用いた湿度検出は、湿度検出素子2の全体と電子回路基板1の一部を、吸入空気管路を流れる空気に直接触れるように吸入空気管路に装着することで達成する。
【0016】
この電子回路基板1には、湿度検出素子2が実装される面と同一の面上で、且つ、湿度検出素子2の周囲に加熱抵抗体3が実装され、電子回路基板1の全体ではなく、湿度検出素子2部分のみを局部的に加熱し、電子回路基板1の表面に加熱域5ができるように構成している。この構成により、低消費電力で効率良く湿度検出素子2周囲のみを加熱することができ、結露への対策が可能となる。
【0017】
更には、局部加熱であるため、加熱域5の境界線付近では温度差が最も大きくなる。この温度差の中で空気中に浮遊する汚損物質が低温側に向う特性を利用して、汚損物質を加熱域5の外周部に意図的に付着させることができる。
【0018】
例えば、電子回路基板1の全体を均一に加熱してしまうと、前述の温度差を基板上に作ることができなくなる。そのため、空気中の汚損物質は基板上に均一に付着し、湿度検出素子2自体にも汚損物が付着してしまう。そして、結露が複合的に起きた際にはその汚損物質が吸湿し、湿度計測誤差を発生させてしまう。
【0019】
しかし、本構成であれば結露と汚損を防止した上、汚損物質を湿度検出素子2から離れた場所に付着させることができるため、湿度計測誤差の発生を防ぐことが可能となる。
【0020】
また、本構成のように、加熱抵抗体3を湿度検出素子2の周りを囲むように周囲に4箇所実装しておけば、空気の流れ方向がランダムに発生する流れ場の中でも湿度検出素子2を基準として温度分布が対称性を有するため、空気の流れに影響されること無くその性能を維持することが可能となる。
【0021】
次に、他の一実施例について、図2を用いて説明する。先の実施例と同じ構成については符号を同じくして説明を省略する。
【0022】
図2に示されるように、本実施例の湿度検出装置は、先の実施例とは異なり、湿度検出素子2に対しての空気の流れの上流と下流に加熱抵抗体3をそれぞれ一つ設けた構成となっている。すなわち、湿度検出素子2の周囲を流れる空気の流れを、本装置の構成や、実装方法などにより一軸方向に可能とできるような場合、湿度検出素子2に対しての空気の流れの上流と下流にそれぞれ加熱抵抗体3を実装する。これにより、加熱抵抗体3の実装数量を低減でき、更なる消費電力の低減が図れると共に、装置全体の小型軽量化も図ることが可能となる。また、吸入空気に触れる部分の面積を減少させることができるため、本装置の装着に起因する空気抵抗の低減も可能となる。
【0023】
更なる他の一実施例について、図3を用いて説明する。先の実施例と同じ構成については符号を同じくして説明を省略する。
【0024】
本実施例では、図2に示した構成に対して、湿度検出素子2と加熱抵抗体3の実装位置の関係を規定したものである。すなわち、湿度検出素子2と加熱抵抗体3との距離をL、加熱抵抗体3の短辺の長さをWとしたとき、L<4Wとなるように湿度検出素子2および加熱抵抗体3を実装している。加熱域5は極力湿度検出素子2から遠い方が、汚損や、汚損物質の吸湿による計測誤差に対して有利である。一方、2つの加熱抵抗体3を離しすぎて実装すると、その中間にある湿度検出素子2の部分に温度、即ち、低温領域が発生し、汚損物質が付着しやすくなってしまう。そのため、湿度検出素子2と加熱抵抗体3との距離Lを3W、加熱抵抗体3の発熱量も考慮すると湿度検出素子2と加熱抵抗体3との距離を最大でも4W程度とすることで、汚損物本来の目的を達成可能な湿度検出装置とすることができる。
【0025】
更なる他の一実施例について、図4を用いて説明する。先の実施例と同じ構成については符号を同じくして説明を省略する。
【0026】
図4に示されるように、本実施例では、電子回路基板1の湿度検出素子2および加熱抵抗体3が実装される面と相反するもう一方の面に、湿度検出装置を構成するその他の電子部品7を実装した。また入出力端子4もその他電子部品7を実装する面と同一面上に実装する構成である。
【0027】
本構成により、吸入空気に直接晒して計測を行う計測面と、外部環境からの保護が必要な電子回路面とに分離ができ、使い勝手性が向上し、更には簡単な周囲構造により本装置の実装、取付けが可能となる。
【0028】
最後に図5を用い、本発明を内燃機関の湿度検出装置として利用した一例について説明する。
【0029】
主通路8を構成する吸気管路構成部材9には、その一部に湿度センサ10の装着穴11が設けられており、Oリングなどのシール部材12を介して取り付ける。
【0030】
湿度センサ10は、コネクタ13及びコネクタ端子14を一体成型したハウジング部材15を基礎に、湿度検出素子2、加熱抵抗体3、その他電子部品7を実装した電子回路基板1を内装し、注型樹脂などのコーティング部材16をその他電子部品7が実装される側から注入して構成する。コネクタ端子14と電子回路基板1の電気的接続は金属ワイヤ17により行い、コネクタ13を介して外部との入出力を可能にしている。ハウジング部材15には、主通路8を流れる吸入空気の一部を取り込むための副通路18が構成されており、湿度検出素子2と加熱抵抗体3は副通路18を流れる空気に直接触れることで計測ができ、さらにこの副通路18により、空気の流れ方向6が一軸に限られるため、実装が必要な加熱抵抗体3は湿度検出素子2の上下流に限られている。
【0031】
本装置により、汚損、結露、更には汚損と結露の複合発生に起因する計測精度の悪化を低消費電力で達成することができ、品質や性能に優れた内燃機関での使用に最適な湿度検出装置を提供できる。
【符号の説明】
【0032】
1 電子回路基板
2 湿度検出素子
3 加熱抵抗体
4 入出力端子
5 加熱域
6 空気の流れ方向
7 その他電子部品
8 主通路
9 吸気管路構成部材
10 湿度センサ
11 装着穴
12 シール部材
13 コネクタ
14 コネクタ端子
15 ハウジング部材
16 コーティング部材
17 金属ワイヤ
18 副通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板と、前記電子回路基板の一方の面に実装された湿度検出素子とを有し、前記湿度検出素子の全体と前記電子回路基板の一部を空気に晒して空気中の湿度を検出する湿度検出装置において、
前記湿度検出素子が実装されている面と同一面に複数の加熱抵抗体が実装され、
前記加熱抵抗体は、前記湿度検出素子の周囲に設けられていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の湿度検出装置において、
前記複数の加熱抵抗体は、前記湿度検出素子に対して空気の流れの上流及び下流側にそれぞれ少なくとも一つ設けられていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の湿度検出装置において、
前記湿度検出素子と前記加熱抵抗体との距離をL、前記加熱抵抗体の幅をWとすると、
L<4Wの関係となるように前記湿度検出素子および前記加熱抵抗体を配置したことを特徴とする湿度検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の温度検出装置において、
前記湿度検出素子および前記加熱抵抗体が実装された面とは相反するもう他方の面に、その他の電子部品が実装されていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の湿度検出装置において、
前記その他の電子部品が実装される側の電子回路基板の表面がコーティング部材で覆われていることを特徴とする湿度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96708(P2013−96708A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236608(P2011−236608)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】