説明

湿度検知材

【課題】塩化コバルトを使用せず、塩化コバルトと同一色に変色可能な、人体に安全な湿度検知材を提供することにある。
【解決手段】乾燥時には青色に、吸湿時には赤色またはピンク色に呈色して乾燥状態または吸湿状態を識別するための指示薬を、シリカゲルに担持している。指示薬としては、有機系色素であるサフラニンが好適である。サフラニンは、20ppm以上200ppm以下となるように担持されている。これにより、従来の塩化コバルトによる変色の認識を変えずに塩化コバルトを代替することができ、使用者は、違和感なく使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や電気部品等を保存する包装容器内の湿度を検知する検知材に関し、より詳しくは、有機色素を使用した検知材に関する。
【背景技術】
【0002】
湿度を検知する検知材(以下、湿度検知材)として、塩化コバルトを担持したシリカゲルが広く知られている。このシリカゲルは、乾燥時には青色を呈し、吸湿時には赤色またはピンク色を呈する。これらの2色の違いを識別することにより、シリカゲルが吸湿したか否かを判定し、乾燥剤としての有効性を判断することができる。これらのシリカゲルの色は、湿度検知材として長い間定着し、使用者は、色を見た瞬間に、乾燥剤の状態を判断することができる。
【0003】
ところで、塩化コバルトは、発癌性の可能性が指摘されており、人体の安全面から塩化コバルトの使用が規制されつつある。この塩化コバルトの代替技術として、特許文献1には、酸塩基指示薬を使用することが記載されている。
また、酸塩基指示薬は様々なものがあり、湿度検知材以外にも、他の用途に利用されることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−350419号公報
【特許文献2】特開昭59−142463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の酸塩基指示薬は、赤色、青色、黄色、緑色、橙色等、複数種の湿度表示色に段階的に変色するものである。これにより、使用者は、乾燥時や吸湿時の変色パターンを覚えて認識しなければならず、塩化コバルトによる変色の認識を変えずに塩化コバルトを代替することができない。従って、使用者は、湿度検知材を入手する時にその変色パターンを確認して、乾燥剤としての有効性を認識しなければならず、使用しづらい。
【0006】
さらに、特許文献1に記載の酸塩基指示薬を使用しても、塩化コバルトの色とは同一色にはならず、塩化コバルトと同じ青色と赤色(またはピンク色)を再現することはできない。
また、特許文献2に記載の酸塩基指示薬は、酸素検知材として使用される色素であり、湿度検知材として使用されるものではない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、塩化コバルトを使用せず、塩化コバルトと同一色に変色可能な、人体に安全な湿度検知材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の湿度検知材は、乾燥時には青色に、吸湿時には赤色またはピンク色に呈色して乾燥状態または吸湿状態を識別するためのサフラニンを、シリカゲルに担持してなることを特徴とする。本発明者は、シリカゲルにサフラニンを担持させたものは、塩化コバルトを使用した従来の湿度検知材と同一色となるように呈色することを発見し、本発明に至った。サフラニンを使用することにより、塩化コバルトと同一色(青色と、赤色またはピンク色)に変色させることができる。
【0009】
これにより、従来の塩化コバルトによる変色の認識を変えずに塩化コバルトをサフラニンに代替することができ、使用者は、色に関して違和感なくサフラニンを使用した湿度検知材を使用することができる。また、従来の塩化コバルトをスムーズに代替することができ、環境対策にも良い。
【0010】
ここで、色について説明する。「同一色」とは、サフラニンを担持した湿度検知材の色と、塩化コバルトを担持した湿度検知材の色とが、同程度または違和感を感じない程度の色調であり、両者を比較した場合に、乾燥状態および吸湿状態の識別性に違和感が生じない色を意味する。具体的には、乾燥状態においては、前記両者が識別できない程度に類似した青色を呈する(同一色)。また、吸湿状態においては、塩化コバルトを担持した湿度検知材は、ピンク色を呈するが、サフラニンを担持した湿度検知材は、ピンク〜赤色を呈し、艶やかな色となるが、違和感が生じることはないため、同一色である。サフラニンを担持した湿度検知材の使用開始時は青色なので、使用者は、従来の塩化コバルトを担持した湿度検知材の青色のイメージを全く変えることなく使用することとなる。
【0011】
また、本発明者は、サフラニンの好適な使用量が微量であることと、その使用量の許容範囲が非常に狭い範囲であることを発見した。
すなわち、サフラニンは、20ppm以上200ppm以下となるように担持されることが望ましい。湿度検知材全体におけるサフラニンの含量を20ppm以上200ppm以下とすれば、湿度検知材は、塩化コバルトを使用した湿度検知材と同一色となり、使用者は、容易に湿度検知材の有効性を確認することができる。また、サフラニンの含量は非常に微量であるため、他の指示薬等を使用する場合よりもコスト面で有利であると考えられる。
【0012】
ここで、サフラニンの担持量を20ppm未満とすると、乾燥時または吸湿時において、青色や、赤色またはピンク色が薄いものとなり、従来の塩化コバルトを使用した湿度検知材とは同一色にはならない。このため、使用者が使用しづらいものとなる。
また、サフラニンの担持量が200ppmを超えると、乾燥時または吸湿時において、青色や、赤色またはピンク色が非常に濃いものとなり、従来の塩化コバルトを使用した湿度検知材と同一色とすることができない。また、色が濃くなって、乾燥時と吸湿時の判断も困難となる。従って、使用者が使用しづらいものとなる。
【0013】
一方、本発明の湿度検知材は、シリカゲル微粉砕物を紙または樹脂に担持してシート状または板状に形成したシート材と、乾燥時には青色に、吸湿時には赤色またはピンク色に呈色して乾燥状態または吸湿状態を識別するためのサフラニンを前記シート材に担持して形成した湿度検知部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
予めシリカゲルを紙または樹脂に担持しておけば、サフラニンを含んだ水溶液を紙または樹脂に滴下するだけで湿度検知材を形成することができるため、製造が容易である。また、塩化コバルトと同一色(青色と、赤色またはピンク色)に変色させることができるため、従来の塩化コバルトによる変色の認識のまま使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の最大の特徴は、乾燥時には青色に、吸湿時には赤色またはピンク色に呈色して乾燥状態または吸湿状態を識別するためのサフラニンを、シリカゲルに担持してなることを特徴とする。これにより、従来の塩化コバルトによる変色の認識を変えずに塩化コバルトを代替することができ、使用者は、違和感なく使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明をその実施形態に基づいて説明する。
本発明の湿度検知材は、乾燥時には青色に、吸湿時には赤色またはピンク色に呈色して乾燥状態または吸湿状態を識別するための指示薬を、シリカゲルに担持している。指示薬としては、有機系色素であるサフラニン(C2019ClN4)が好適であり、サフラニンは、20ppm以上200ppm以下となるように担持されている。
【0017】
シリカゲルは多孔質であり、この孔内に酸性物質(硫酸等)とサフラニンを含浸しておけば、乾燥状態ではpHは低いため、青色を呈する。湿度が高くなると、シリカゲルの吸湿作用により空気中の水蒸気を吸湿し、この吸湿量は、酸性物質の濃度、すなわちpHを変える(高くなる)こととなる。これにより、pHの変化に対応して赤色またはピンク色へと変色する。すなわち、湿度検知材は、湿度の変化によって、変色することとなる。同様に、乾燥すると、シリカゲル中の水分が減少して、pHが低くなり、青色へと戻る。
【0018】
以上のように、サフラニンを使用することにより、従来の塩化コバルトによる変色の認識を変えずに塩化コバルトを代替することができ、使用者は、サフラニンを使用した湿度検知材を使用しても色に関して違和感なく使用することができる。
【0019】
以下、実施例について説明する。
(実施例1)
本発明の実施形態である湿度検知材の製造方法について説明する。市販の粒状シリカゲル(A型)を蒸気により水分を飽和状態とした後、事前にサフラニンを水に溶かして得たサフラニン液をシリカゲルに含浸させて、最終製品中に20ppm以上200ppm以下となるように担持する。次に、硫酸により酸度を調整し、水洗後、乾燥して、青色で粒状の湿度検知材(最終製品)となる。ここで、20ppm以上200ppm以下とは、質量1kgの製品中に質量20mg以上200mg以下のサフラニンが担持されていることを意味する。
【0020】
ここで、サフラニンを水溶液の状態にしてから含浸することにより、サフラニンの使用量を微量としながらも、均一に、且つ、シリカゲルの孔に担持することができる。粉状のサフラニンを使用した場合、サフラニンの粒はシリカゲルの小孔に入り込まずに吸着しないため、シリカゲルに担持することができない。これにより、シリカゲルは呈色しなかったり、不均一となって呈色にばらつきを生じたりすることとなり好ましくない。
【0021】
次に、図面を用いて本発明をその実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態である湿度検知材を使用した乾燥剤を示す一部を切り欠いた斜視図である。
図1に示すように、乾燥剤1は、乾燥パック2の内部に、シリカゲル3と湿度検知材4とを有している。乾燥パック2は、端部2aと収容部2bとから構成されており、シリカゲル3と湿度検知材4とを収容部2bに収容した後に、熱融着して端部2aが形成されている。シリカゲル3および湿度検知材4は、直径が概ね2mm〜4mmの粒状であるが、これに限定するものではなく、適宜粒度を設計変更することができる。
【0022】
乾燥パック2は、通気性を備えた樹脂製であり、収容部2b内に水蒸気が入りこんで、シリカゲル3と湿度検知材4を、吸湿または乾燥することができる。湿度検知材4の使用割合は、シリカゲル3と湿度検知材4との合計重量の約10%としている。乾燥パック2の大きさは、約5cm×約6cmであるが、状況に合わせて変更することができる。
【0023】
次に、湿度検知材4のサフラニンの担持量(含有量)を13段階に変えて、乾燥状態および吸湿状態とした時の識別性試験を行った結果を表1に示す。表1の結果から、製品中の担持量(含有量)として、20ppm以上200ppm以下が好適であり、より好ましくは、50ppm以上100ppm以下という極めて狭い範囲において特に有効である。この範囲内においては、きれいに発色して艶やかであり、塩化コバルトを使用した従来のシリカゲルの色とほぼ同一の色を再現することができる。従って、従来の塩化コバルトによる変色の認識を変えずに塩化コバルトを代替することができ、使用者は、違和感なく使用することができる。
【0024】
【表1】

【0025】
また、その他の湿度検知材4の性質として、吸湿率については、RH(相対湿度)20%時においては12%以上、RH50%においては28%以上、RH90%では38%以上であり、塩化コバルトを使用した場合とほぼ同等の状態としてある。乾燥状態の含水率は2%以下である。
なお、本実施形態において担持させたシリカゲルはA型のものであるが、B型やC型のシリカゲルに担持して変色させることも可能である。
【0026】
(実施例2)
次に、本発明の他の実施形態である湿度検知材について図2を用いて説明する。
湿度検知材11は、シリカゲルの微粉砕物を紙に担持してシート状または板状に形成したシート材12と、このシート材12に乾燥状態または吸湿状態を識別するための指示薬としてのサフラニンを担持してなる三つの湿度検知部14とを備えている。サフラニンは、シート材12のシリカゲルに20ppm以上200ppm以下となるように担持されており、湿度検知部14が湿度を検知することができる。ここで、20ppm以上200ppm以下とは、質量1kgのシリカゲル中に質量20mg以上200mg以下のサフラニンが担持されていることを意味する。
【0027】
サフラニンは、事前に水に溶かし、目的の検出湿度において発色するように硫酸で酸度を調整して得たサフラニン液をシート材12に含浸させて、シリカゲルに担持している。シリカゲルは、325メッシュ(44μm)以下の微粉砕物を使用しており、紙の製造時にシリカゲルを混合して、紙全体に均一に担持している。
以上のように、予めシリカゲルを紙に担持しておけば、サフラニンを含んだ水溶液を紙または樹脂に滴下するだけで湿度検知材を形成することができる。ここで、シリカゲル微粉砕物として粒径が小さいものが好ましく、325メッシュ(44μm)のものを使用することにより、均一に紙または樹脂に担持させることができるが、100〜325メッシュ程度の粒度でも担持して使用することは可能であると考えられる。
【0028】
ここで、紙にシリカゲルを担持する方法としては、シート状または板状のシリカゲルを形成した後に紙に担持して2層構造としても良く、また、紙にスポット状にシリカゲルを担持しても良い。
さらに、シート材12のベース材料としては紙に限定することなく、樹脂、布等も選択することができる。また、湿度検知材11の大きさは、約8cm×4cmとしているが、使用状況において変更しても良い。
【0029】
次に、湿度検知材11の使用方法について説明する。シート材12には、湿度検知部14a,14b,14cが設けられており、それぞれの湿度(RH)が50%、40%、30%の状態になったときに呈色(変色)することにより湿度を検知する。各湿度の設定値は、各湿度検知部14a,14b,14cの酸度を調整することにより設定されている。これにより、使用者は、湿度検知材11を見て、湿度が30%未満、30%以上40%未満、40%以上50%未満、50%を超えた場合の各状態において、表2のように識別することができる。なお、各境界域の湿度においては、青色から赤色またはピンク色へと変わるため、やや薄い色となる。
【0030】
【表2】

なお、湿度検知部14の個数は、3箇所に限定されるものではなく、検知可能な湿度を適宜調整して、使用状況によりさらに多くの箇所に設けることも可能である。
【0031】
本実施形態においても、塩化コバルトを使用した従来のシリカゲルの色と同一の色を再現することができるため、使用者は、従来の色の認識を変えることなく、湿度検知材11を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の湿度検知材および湿度検知材は、塩化コバルトを使用せずに、食品や電気部品等を保存する包装容器内の湿度を検知するための検知材として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態である湿度検知材を使用した乾燥剤を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である湿度検知材を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 乾燥材
2 乾燥パック
2a 端部
2b 収納部
3 シリカゲル
4 湿度検知材
11 湿度検知材
12 シート材
14 湿度検知部
14a,14b,14c 湿度検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥時には青色に、吸湿時には赤色またはピンク色に呈色して乾燥状態または吸湿状態を識別するためのサフラニンを、シリカゲルに担持してなることを特徴とする湿度検知材。
【請求項2】
前記サフラニンは、20ppm以上200ppm以下となるように担持されている請求項1記載の湿度検知材。
【請求項3】
シリカゲル微粉砕物を紙または樹脂に担持してシート状または板状に形成したシート材と、
乾燥時には青色に、吸湿時には赤色またはピンク色に呈色して乾燥状態または吸湿状態を識別するためのサフラニンを前記シート材に担持して形成した湿度検知部と、を備えたことを特徴とする湿度検知材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−40871(P2007−40871A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226470(P2005−226470)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(505284194)株式会社鳥繁産業 (1)
【出願人】(505294827)青島源和工貿有限公司 (1)
【Fターム(参考)】