説明

湿度雰囲気用熱機械分析装置

【課題】装置本体および付属装置の劣化や故障の原因となる結露を回避させるとともに、試料の温度および湿度に対する機械的挙動を安定かつ高精度に測定することを可能にする。
【解決手段】湿度ガスが導入される保温チャンバー20内に設置された試料15の機械的挙動を、支持管30内に移動可能に遊嵌挿されたプローブ・ロッド35によって外部の測定装置50へ伝達する方式の湿度雰囲気用熱機械分析装置10であって、支持管30内に結露防止のためのカーテンガスを供給するカーテンガス供給手段56を備えるとともに、保温チャンバー20内の試料15と排気ポート22の間に介在して上記カーテンガスの流れを排気ポート22へ誘導する遮蔽板60を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度および湿度に対する物質の特性を把握するために用いられる湿度雰囲気用熱機械分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙やフィルム、繊維、その他の様々な素材や物質では、温度および湿度に対する膨張・収縮などの機械的挙動が重視される場合が多い。この挙動を把握するために、物質を所定の温度および湿度の環境下に置くとともに、その環境下での物質の機械的挙動を測定するようにした湿度雰囲気用熱機械分析装置が従来から提供されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
この熱機械分析装置は、所定の温度および湿度に調整された雰囲気ガスを内部に流通させるための給気ポートおよび排気ポートを備えた保温チャンバーと、この保温チャンバー内に一方の筒端部が位置するとともにその筒端部に試料の支持台が設けられた支持管と、この支持管内に移動可能に遊嵌挿されて上記試料の機械的挙動を外部へ伝動・伝達するプローブ・ロッドとによって構成される。
【0004】
プローブ・ロッドは支持管の外に設置された測定装置に連結される。測定装置は差動トランスや天秤機構などを備え、プローブ・ロッドを介して試料の機械的挙動(特性)を測定する。保温チャンバー内に所定の温度および湿度の雰囲気ガスを流通させながら、プローブ・ロッドの機械的挙動を測定することで、試料の温度および湿度に対する特性を把握することができる。
【0005】
上述した装置による分析を高精度に行わせるためには、保温チャンバー内での温度および湿度を高精度に設定する必要がある。このため、温度および湿度を高精度に設定することが可能な湿度発生装置が提供されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−145918号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した装置では、測定用の雰囲気ガスとして湿度ガスが保温チャンバー内に導入される。保温チャンバー内は、試料の機械的挙動をプローブ・ロッドで外部の測定装置に伝動・伝達させる必要上、そのプローブ・ロッドを遊嵌挿させ、支持管を介して外部に連通している。
【0008】
このため、チャンバー内に導入された湿度ガスの一部は支持管を通って外部に抜ける。このとき、その湿度ガスは途中で結露する。この結露は分析装置本体および付属装置である測定装置の劣化や故障の原因となる。
【0009】
そこで、本発明者は、支持管内に結露防止のためのカーテンガス(乾燥ガス)を供給することを検討した。このカーテンガスの供給により湿度ガスが支持管に流入することを阻止できるとともに、装置本体および付属装置に結露が生じるのを回避させることが可能になる。
【0010】
ところが、上述した結露の回避策は次のような問題を生じることが判明した。すなわち、乾燥したカーテンガスが保温チャンバー内に流れ込んで試料周辺の雰囲気ガスの温度お
よび湿度条件を乱し、試料の温度および湿度に対する機械的挙動を安定かつ高精度に測定する上で大きな支障となることが判明した。
【0011】
本発明は以上のような問題を解決するものであって、その目的は、湿度ガスが導入される保温チャンバー内に設置された試料の機械的挙動を、支持管内に移動可能に遊嵌挿されたプローブ・ロッドによって外部の測定装置へ伝達する方式の湿度雰囲気用熱機械分析装置において、装置本体および付属装置の劣化や故障の原因となる結露を回避させることができるとともに、試料の温度および湿度に対する機械的挙動を安定かつ高精度に測定できるようにすることにある。
【0012】
本発明の上記以外の目的および構成については、本明細書の記述および添付図面により明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題の解決手段として、本発明は以下の手段を提供する。
【0014】
(1)所定の温度および湿度に調整された雰囲気ガスを内部に流通させるための給気ポートおよび排気ポートを備えた保温チャンバーと、この保温チャンバー内に筒端部が位置するとともにその筒端部に試料の支持台が設けられた支持管と、この支持管内に移動可能に遊嵌挿されて上記試料の機械的挙動を外部へ伝達するプローブ・ロッドとを備える湿度雰囲気用熱機械分析装置であって、
上記支持管内に結露防止のためのカーテンガスを供給するカーテンガス供給手段を備えるとともに、上記試料と上記排気ポートの間に介在して上記カーテンガスの流れを排気ポートへ誘導する遮蔽板を設置したことを特徴とする湿度雰囲気用熱機械分析装置。
【0015】
(2)前記手段(1)において、前記支持台は前記支持管の筒端に支柱を介して取り付けられ、前記遮蔽板はその支柱に固定されていることを特徴とする湿度雰囲気用熱機械分析装置。
【0016】
(3)前記手段(1)または(2)において、前記支持管を前記保温チャンバー内の温度以上に保つ保温手段を備えたことを特徴とする湿度雰囲気用熱機械分析装置。
【0017】
(4)前記手段(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記保温チャンバーを、所定温度の熱媒体が循環する恒温ジャケットの内側に形成するとともに、前記給気ポートに通じる給気管をその恒温ジャケット内を通過させて恒温化させるようにしたことを特徴とする湿度雰囲気用熱機械分析装置。
【発明の効果】
【0018】
湿度ガスが導入される保温チャンバー内に設置された試料の機械的挙動を、支持管内に移動可能に遊嵌挿されたプローブ・ロッドによって外部の測定装置へ伝達する方式の湿度雰囲気用熱機械分析装置において、装置本体および付属装置の劣化や故障の原因となる結露を回避させるとともに、試料の温度および湿度に対する機械的挙動を安定かつ高精度に測定することが可能になる。
【0019】
本発明の上記以外の作用/効果については、本明細書の記述および添付図面により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明による湿度雰囲気用熱機械分析装置の一実施形態を示す。また、図2は、本発明の要部を拡大して示す。
【0021】
同図に示す湿度雰囲気用熱機械分析装置10は、その主要部が、保温チャンバー20、試料支持台25、支持管30、プローブ・ロッド35などによって構成されている。
【0022】
保温チャンバー20は、所定の温度および湿度に調整された雰囲気ガスを内部に流通させるための給気ポート21および排気ポート22を備えている。給気ポート21は給気管23を介して雰囲気ガス発生装置52に接続されている。
【0023】
雰囲気ガス発生装置52は、所定の温度および湿度に調整された雰囲気ガスを生成して保温チャンバー20内に導入する。導入された雰囲気ガスは、保温チャンバー20内を循環して排気ポート22から排出される。これにより、保温チャンバー20内の雰囲気条件が所定の温度および湿度に設定および保持されるようになっている。
【0024】
支持管30は両端が開口した直筒であって、その一方の筒端部が保温チャンバー20内に位置させられるとともに、その筒端部に試料(被分析試料)15の支持台25が設置されている。試料支持台25は支柱(4本)26を介して支持管30の筒端に取り付けられている。
【0025】
プローブ・ロッド35は試料15の機械的挙動を外部の測定装置50へ伝動・伝達するためのものであって、支持管30内に移動可能に遊嵌挿されている。その一端は支持台25の試料に連結させられ、その他端は測定装置50に連結されている。測定装置50はたとえば差動トランスや天秤機構などを備え、プローブ・ロッド35を介して試料15の機械的挙動を測定する。
【0026】
また、上記装置10では、保温チャンバー20が、所定温度の熱媒体が循環する恒温ジャケット42の内側に形成されている。これとともに、保温チャンバー20の給気ポート21および排気ポート22に通じる給気管23および排気管24もそれぞれ、その恒温ジャケット42内を通過させられて恒温化されるようになっている。
【0027】
この恒温ジャケット42により、保温チャンバー20内が所定温度に保持されるようになっている。支持管30も、所定温度の熱媒体が循環する恒温ジャケット43の内側に形成されていて、所定温度に保たれるようになっている。
【0028】
上記恒温ジャケット42,43の熱媒体は恒温水供給装置54から供給される。恒温水供給装置54からは熱媒体である恒温水が供給されるが、この恒温水は、支持管30の恒温ジャケット43を流通した後、保温チャンバー20の恒温ジャケット42を流通し、最終的に恒温水供給装置54に還流されて再利用される。
【0029】
さらに、上記装置10は、結露を防止するための乾燥ガスを支持管30内に供給するカーテンガス供給装置56を備えている。これとともに、上記試料15と上記排気ポート22の間に介在して上記カーテンガスの流れを排気ポート22へ誘導する遮蔽板60が設置されている。
【0030】
遮蔽板60は保温チャンバー20の内径よりも若干小径の円盤状であって、支持管30の筒端に近い位置にて支持台25の支柱26に固定されている。つまり、支持台25の上方に覆い被さる状態で設置されている。この遮蔽板60の中央にはプローブ・ロッド35を遊貫通させる透孔が形成されていて、プローブ・ロッド35の動作には干渉しないようになっている。
【0031】
上記装置10では、保温チャンバー20内での試料15の温度および湿度に対する挙動
を、プローブ・ロッド35を介して外部の測定装置50で把握することができる。このとき、保温チャンバー20内に導入された湿度ガスは、遮蔽板60と保温チャンバー20間の隙間を潜り抜けて排気ポート22から排出される。
【0032】
一方、支持管30内はカーテンガスの供給により湿度ガスの侵入が阻止される。これにより、機器の劣化や故障の原因となる結露が防止される。このとき、そのカーテンガスの一部は保温チャンバー20内に流入しようとするが、遮蔽板60によってチャンバー20内部に直接流れ込むのことは阻止され、排気ポート22へ流れを誘導されてチャンバー20内の雰囲気ガスとともに排出される。したがって、試料15周辺の雰囲気ガスの温度および湿度条件は、そのカーテンガスに乱されることなく、所定の安定状態を保つことができる。
【0033】
これにより、装置10本体および付属装置の劣化や故障の原因となる結露を回避させることができるとともに、試料15の温度および湿度に対する機械的挙動を安定かつ高精度に測定することが可能になる。
【0034】
上記実施形態では、試料15の支持台25を支持管30の筒端に支柱26を介して取り付け、この支柱26に遮蔽板60を固定しているが、これにより、その遮蔽板60を、カーテンガスによるチャンバー20内の雰囲気条件の乱れや不安定化を抑えるのに最適な位置に設置することを可能にしている。
【0035】
支持管30は恒温ジャケット43の内側に形成されることにより、保温チャンバー20内と同温以上に保たれるようになっている。これにより、その支持管30での結露を一層確実に防止させることができる。
【0036】
保温チャンバー20は、恒温ジャケット42の内側に形成されるとともに、給気ポート21に通じる給気管23がその恒温ジャケット42内を通過させられて恒温化されるようになっている。これにより、保温チャンバー20において特別な温度調節や機構を必要とせず、非常に容易な方法でもって、チャンバー20内に導入された雰囲気ガスの温度および湿度条件を高精度に安定化させることができる。つまり、装置10の構成および運用操作を簡単化しつつ、試料15の温度および湿度に対する機械的挙動をさらに安定かつ高精度に測定することが可能になる。
【0037】
以上、本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能である。たとえば、保温チャンバー20および支持管30の恒温制御は電熱式の温度調節で行わせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
湿度ガスが導入される保温チャンバー内に設置された試料の機械的挙動を、支持管内に移動可能に遊嵌挿されたプローブ・ロッドによって外部の測定装置へ伝達する方式の湿度雰囲気用熱機械分析装置において、装置本体および付属装置の劣化や故障の原因となる結露を回避させるとともに、試料の温度および湿度に対する機械的挙動を安定かつ高精度に測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による湿度雰囲気用熱機械分析装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 湿度雰囲気用熱機械分析装置
15 試料(被分析試料)
20 保温チャンバー
21 給気ポート
22 排気ポート
23 給気管
24 排気管
25 試料支持台
26 支柱
30 支持管
35 プローブ・ロッド
42 恒温ジャケット
43 恒温ジャケット
50 外部測定装置
52 雰囲気ガス発生装置
54 恒温水供給装置
56 カーテンガス供給装置
60 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度および湿度に調整された雰囲気ガスを内部に流通させるための給気ポートおよび排気ポートを備えた保温チャンバーと、この保温チャンバー内に筒端部が位置するとともにその筒端部に試料の支持台が設けられた支持管と、この支持管内に移動可能に遊嵌挿されて上記試料の機械的挙動を外部へ伝達するプローブ・ロッドとを備える湿度雰囲気用熱機械分析装置であって、
上記支持管内に結露防止のためのカーテンガスを供給するカーテンガス供給手段を備えるとともに、上記試料と上記排気ポートの間に介在して上記カーテンガスの流れを排気ポートへ誘導する遮蔽板を設置したことを特徴とする湿度雰囲気用熱機械分析装置。
【請求項2】
請求項1において、前記支持台は前記支持管の筒端に支柱を介して取り付けられ、前記遮蔽板はその支柱に固定されていることを特徴とする湿度雰囲気用熱機械分析装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記支持管を前記保温チャンバー内の温度以上に保つ保温手段を備えたことを特徴とする湿度雰囲気用熱機械分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記保温チャンバーを、所定温度の熱媒体が循環する恒温ジャケットの内側に形成するとともに、前記給気ポートに通じる給気管をその恒温ジャケット内を通過させて恒温化させるようにしたことを特徴とする湿度雰囲気用熱機械分析装置。

【図1】
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【図2】
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