説明

湿式不織布およびその製造方法

【課題】ポリ乳酸繊維を用いてなり引張強度に優れた湿式不織布、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】単糸繊度がともに0.6〜2.2dtexである、ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとを、重量比A/Bが15/85〜85/15の範囲内となるように用いて、目付が10〜100g/mであり、引張強度が、JIS P8113に規定される裂断長で0.8km以上の湿式不織布を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸繊維を用いてなり引張強度に優れた湿式不織布、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物資の輸送に用いられる紙や用紙などの分野で、合成繊維(ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはそれらの複合繊維)からなるカットファイバーや木材パルプを用いた湿式不織布が提案されている。
他方、近年では石油枯渇や木材枯渇問題を解消するため、ポリ乳酸繊維を用いた湿式不織布が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、かかる湿式不織布はその引張強度が小さく実使用上問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−268691号公報
【特許文献2】特開2003−268692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、ポリ乳酸繊維を用いてなり引張強度に優れた湿式不織布、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリ乳酸主体繊維とポリ乳酸バインダー繊維とを用いて湿式不織布を得る際にポリ乳酸主体繊維とポリ乳酸バインダー繊維の単糸繊度をともに特定の範囲内とすることにより、地合いを損わず優れた引張強度を有する湿式不織布が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとで構成され、目付が10〜100g/mの湿式不織布であって、前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bの単糸繊度がともに0.6〜2.2dtexであり、かつ前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとの重量比A/Bが15/85〜85/15の範囲内であり、かつ湿式不織布の引張強度が、JIS P8113に規定される裂断長で0.8km以上であることを特徴とする湿式不織布。」が提供される。
【0007】
その際、前記ポリ乳酸主体繊維Aが延伸繊維であることが好ましい。また、前記ポリ乳酸バインダー繊維Bが未延伸繊維であることが好ましい。また、前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bの繊維長がともに3〜20mmの範囲内であることが好ましい。また、前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとがともにノークリンプであることが好ましい。
【0008】
本発明の湿式不織布において、湿式不織布がポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bのみで構成されることが好ましい。また、湿式不織布が、梱包用紙、ダンボール紙、印刷用紙、テイッシュペーパー、トイレットペーパー、ワイピングペーパー、ろ紙または農業用として用いる湿式不織布であることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、単糸繊度がともに0.6〜2.2dtexである、ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとを用いて湿式抄紙した後、ドラム型熱処理機またはエアースルードライヤーで熱処理を施し、さらにカレンダーローラーにて熱処理を施す、前記の湿式不織布の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリ乳酸繊維を用いてなり引張強度および地合いに優れた湿式不織布、およびその製造方法が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の湿式不織布は、ポリ乳酸主体繊維A(単に「主体繊維」と称することもある。)とポリ乳酸バインダー繊維B(単に「バインダー繊維」と称することもある。)とで構成され、かつ目付が10〜100g/m(好ましくは20〜90g/m)の湿式不織布である。該目付が10g/mよりも小さいと湿式不織布の製造が困難となるおそれがある。逆に、該目付が100g/mよりも大きいと、乾燥の際の熱量が大きくなるため、比較的湿熱に弱いポリ乳酸繊維が湿式不織布に含まれる場合、湿式不織布の品質が低下するおそれがある。
【0012】
ここで、ポリ乳酸主体繊維Aおよびポリ乳酸バインダー繊維Bを構成するポリ乳酸としては、L乳酸を主成分とするもの(好ましくはL乳酸由来の繰返し単位が90〜100モル%)、D乳酸を主成分とするもの(好ましくはD乳酸由来の繰返し単位が90〜100モル%)、国際公開第2008/029934号パンフレットに記載されているように、L乳酸とD乳酸とを用いてステレオコンプレックス結晶を形成してなるポリ乳酸などが例示される。また、他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。その際、共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が例示される。なかでも、L乳酸を主成分とするポリ乳酸が生産性や市場価格の点で特に好ましい。
【0013】
なお、前記ポリ乳酸において、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーを内部可塑剤として、あるいは外部可塑剤として用いることができる。さらには、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
【0014】
本発明の湿式不織布において、ポリ乳酸主体繊維Aは前記のポリ乳酸を用いて常法により紡糸し延伸した延伸繊維が好ましい。一方、ポリ乳酸バインダー繊維Bは前記のポリ乳酸を用いて常法により紡糸し、かつ未延伸のものが好ましい。また、前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bは、前記ポリ乳酸単独成分からなる繊維が最も好ましいが、前記ポリ乳酸を1成分とする複合繊維(例えば、芯鞘型複合繊維やサイドバイサイド型複合繊維など)であってもよい。
【0015】
ここで、前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bの単糸繊度がともに0.6〜2.2dtex(好ましくは0.9〜1.9dtex、特に好ましくは1.2〜1.8dtex)であることが肝要である。該単糸繊度が0.6dtexよりも小さいと不織布としての剛性が小さくなるだけでなく引張強度も低下するおそれがあり好ましくない。逆に、該単糸繊度が2.2dtexよりも大きいと、地合いが悪化するおそれがあり好ましくない。
【0016】
前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bにおいて、単糸繊維の断面形状は丸断面が特に好ましいが、異型断面形状(例えば、中空、三角、扁平、くびれ付扁平など)であってもよい。
【0017】
前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bにおいて、繊維長がともに3〜20mmの範囲内であることが好ましい。該繊維長が3mmよりも小さいとアスペクト比が小さくなるため、抄紙工程時に繊維が脱落しやすくなったり、均一な繊維長でカットするには生産性を落とす必要がある。逆に、該繊維長が20mmよりも大きい場合、抄紙工程において繊維を分散させ難くなるおそれがある。
【0018】
前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bにおいて、特開2001−268691号公報に記載されているような捲縮が付与されていてもよいが、水分散性を高め、地合いをよくする上でノークリンプ(捲縮なし)であることが好ましい。
【0019】
また、前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとの重量比A/Bが15/85〜85/15(好ましくは30/70〜70/30)の範囲内であることが肝要である。ポリ乳酸バインダー繊維Bの重量比が該範囲よりも小さいと、不織布の形態安定性が損われ、毛羽立ち等が発生しやすくなり好ましくない。逆に、ポリ乳酸バインダー繊維Bの重量比が該範囲よりも大きいと、できあがった湿式不織布の目がつまりすぎてフィルムライクとなり、不織布としての引張強度や引裂き強度が低下し好ましくない。
【0020】
本発明の湿式不織布は、前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bのみで構成されることが最も好ましいが、不織布重量に対して10重量%以下(より好ましくは5重量%以下)であれば、芳香族ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維やポリトリメチレンテレフタレート繊維)や木材パルプなどが含まれていてもよい。
【0021】
本発明の湿式不織布は前記の構成を有し、かつ湿式不織布の引張強度が、JIS P8113に規定される裂断長で0.8km以上(好ましくは1.0〜3.0km)と優れた引張強度を有するものである。
【0022】
本発明の湿式不織布は、例えば以下の製造方法により製造することができるが、かかる製造方法に限定されるものではない。
飼料用トウモロコシなどの植物より得られたデンプンを、酵素により加水分解させグルコースを得る。次いで得られたグルコースを乳酸菌により発酵させ乳酸を得る。
【0023】
ポリ乳酸の製造方法には、乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られているが、いずれの製法を採用しても良い。もちろん、市販のポリ乳酸チップ(例えば、ネイチャーワークス社製ポリ乳酸チップ)を用いても何らさしつかえない。
【0024】
次いで、前記ポリ乳酸チップを220〜240℃の温度で溶融し、これを所定の孔径(最終的に得られる繊維の単糸繊度が0.6〜2.2dtexとなるような孔径)を有する口金から押し出し、800〜3000m/minの速度で引き取ることにより、ポリ乳酸の未延伸糸(ポリ乳酸バインダー繊維)を製造する。また、ポリ乳酸の未延伸糸を通常の延伸法により75〜120℃の温度下で1.3〜1.5倍の延伸倍率で延伸し、ポリ乳酸の延伸糸(ポリ乳酸主体繊維A)を得る。次いで、必要に応じてクリンパーにより捲縮をかけた後、必要に応じてポリ乳酸延伸糸と未延伸糸をカッターによりカットし、ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bを得る。
【0025】
次いで、前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとを重量比A/Bが15/85〜85/15の範囲内となるように用いて湿式抄紙した後、乾燥する。その際、湿式抄紙法としては、抄上げるワイヤーパートの形状等により、短網、長網、円網及びそれらのコンビネーション(多層抄き)があるが、いずれの方式でも問題ない。また、乾燥処理工程としては、円筒状ドラム型に接触させるヤンキードライヤーや、ドラムが多数並んだ多筒ドラム、熱風による熱風サクション(エアースルードライヤー)等を用いる事が出来る。その際、乾燥処理温度としては80〜150℃の範囲が好ましい。
【0026】
また、乾燥処理工程の後に、最終的に熱圧カレンダー(2本の熱ロールの間に不織布を通す)処理を行うことが重要である。かかる熱圧カレンダー処理を施すことにより繊維同士の熱接着が強固になり、優れた引張強度を有する湿式不織布が得られる。ここで、カレンダー加工機としては、公知の素材(金属、ペーパー、樹脂等)、公知の柄(フラット、エンボス等)を用いて加工する事が可能である。その際、カレンダーロールの表面温度としては、100〜150℃、線圧としては100〜300kgf/cm(980〜2940N/cm)の範囲が好ましい。
【0027】
かくして得られた湿式不織布は引張強度だけでなく地合いにも優れるので、梱包用紙、ダンボール紙、印刷用紙、テイッシュペーパー、トイレットペーパー、ワイピングペーパー、ろ紙または農業用として好適に用いられる。
【実施例】
【0028】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)引張り強度(裂断長)
JIS P8113(紙及び板紙の引張強さ試験方法)に基づいて実施した。
(2)伸度
JIS P8132(紙及び板紙の伸び試験方法)に基づいて実施した。
(3)目付
JIS P8124(紙のメートル坪量測定方法)に基づいて実施した。
(4)厚み
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の試験方法)に基づいて実施した。
(5)密度
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の試験方法)に基づいて実施した。
(6)通気度
JIS L1913(一般短繊維不織布試験方法)に基づいて測定した。
(7)資源適応性
○ 使用繊維の中に占める木材資源、石油資源を使用しない場合
× 使用繊維の中に占める木材資源、石油資源の比率が0%を超え20%未満の場合
×× 使用繊維の中に占める木材資源、石油資源の比率が20%を超える場合
(8)地合い
出来上がったサンプルの表面の状態を目視にて4段階判定を実施した(地合いが良いものから順に、4級、3級、2級、1級)
【0029】
[実施例1]
(ポリ乳酸主体繊維A)
ネイチャーワークス社製ポリ乳酸チップを乾燥後、225℃で溶融し、孔数が1008の紡糸口金を通して、510g/分で吐出し、1300m/分の速度で引取った。この繊維を収束し、約14万dtexのトウにした後、温水中で2.4倍に延伸し、酸成分がモル比でテレフタル酸が80%、イソフタル酸が20%と数平均分子量3000のポリエチレングリコール70重量%とを共重合した数平均分子量が約10000のポリエーテル・ポリエステル共重合体のエマルジョン(濃度2%)を通過させ、約12%の水分率になるように絞った後、乾燥せずに5mmの繊維長に切断し、単糸繊度が1.6dtexのポリ乳酸主体繊維A(延伸繊維、ノークリンプ)を得た。
【0030】
(ポリ乳酸バインダー繊維)
ネイチャーワークス社製ポリ乳酸チップを乾燥後、225℃で溶融し、孔数が3006の紡糸口金を通して、440g/分で吐出し、1000m/分の速度で引取った。この繊維を収束し、約14万dtexのトウにした後、延伸せずに、酸成分がモル比でテレフタル酸が80%、イソフタル酸が20%と数平均分子量3000のポリエチレングリコール70重量%とを共重合した数平均分子量が約10000のポリエーテル・ポリエステル共重合体のエマルジョン(濃度2%)を通過させ、約12%の水分率になるように絞った後、乾燥せずに5mmの繊維長に切断し、単糸繊度が1.5dtexのポリ乳酸バインダー繊維(未延伸繊維、ノークリンプ)を得た。
【0031】
(湿式抄紙および乾燥処理およびカレンダー加工)
ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bを80/20の重量比で混合撹拌した後、手抄きマシン(熊谷理機工業製、型番:No.2555、標準角型シートマシン、以下同じ)を用いて、75g/mを抄紙した後、ドライヤー(熊谷理機工業製、型番:No.2575−II、回転式乾燥機(高温型))を用いて、100℃×2分で乾燥処理を施した。その後、金属/金属からなるカレンダー加工(120℃×200kg/cm(1960N/cm))を施し、湿式不織布を得た。その物性を表1に示す。また、地合いは優れており4級であった。
次いで、該湿式不織布を用いて印刷用紙を得たところ、引張強度および地合いに優れるものであった。
【0032】
[実施例2]
実施例1記載の中で繊維の比率を変更(ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bを20/80)した以外は同様の方法で不織布を得た。その物性を表1に示す。また、地合いは優れており4級であった。
【0033】
[比較例1]
実施例1において、ポリ乳酸主体繊維A(1.6dt×5mm)に変えて、ポリエチレンテレフタレート延伸繊維(帝人ファイバー株式会社、登録商標:テピルス、銘柄:TT04N SD1.7×5)に変更する以外は同様の方法で不織布を得た。その物性を表1に示す。また、地合いは優れており4級であった。
【0034】
[比較例2]
実施例1の中で、ポリ乳酸バインダー繊維B(1.4dt×5mm)に変えて、ポリエチレンテレフタレート未延伸型バインダー繊維(帝人ファイバー株式会社、登録商標:テピルス、銘柄:TA07N SD1.2×5)に変更した以外は同様の方法で不織布を得た。その物性を表1に示す。また、地合いは優れており4級であった。
【0035】
[比較例3]
実施例1において、木材パルプCを少量添加し、(A/B/C=70/20/10))とすること以外は同様の方法で不織布を得た。その物性を表1に示す。また、地合いは優れており4級であった。
【0036】
[比較例4]
実施例1において、ポリ乳酸主体繊維Aの単糸繊度を0.4dtexに変更すること以外は実施例1と同様にした。得られた湿式不織布の引張強度は0.5kmと引張強度に劣るものであった。
【0037】
[比較例5]
実施例1において、ポリ乳酸主体繊維Aの単糸繊度を2.5dtexに変更すること以外は実施例1と同様にした。得られた湿式不織布の地合いは2級と地合いに劣るものであった。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、ポリ乳酸繊維を用いてなり引張強度および地合いに優れた湿式不織布、およびその製造方法が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとで構成され、目付が10〜100g/mの湿式不織布であって、
前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bの単糸繊度がともに0.6〜2.2dtexであり、かつ前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとの重量比A/Bが15/85〜85/15の範囲内であり、かつ湿式不織布の引張強度が、JIS P8113に規定される裂断長で0.8km以上であることを特徴とする湿式不織布。
【請求項2】
前記ポリ乳酸主体繊維Aが延伸繊維である、請求項1に記載の湿式不織布。
【請求項3】
前記ポリ乳酸バインダー繊維Bが未延伸繊維である、請求項1または請求項2に記載の湿式不織布。
【請求項4】
前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bの繊維長がともに3〜20mmの範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載の湿式不織布。
【請求項5】
前記ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとがともにノークリンプである、
請求項1〜3のいずれかに記載の湿式不織布。
【請求項6】
湿式不織布がポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bのみで構成される、請求項1〜5のいずれかに記載の湿式不織布。
【請求項7】
湿式不織布が、梱包用紙、ダンボール紙、印刷用紙、テイッシュペーパー、トイレットペーパー、ワイピングペーパー、ろ紙または農業用として用いる湿式不織布である、請求項1〜6のいずれかに記載の湿式不織布。
【請求項8】
単糸繊度がともに0.6〜2.2dtexである、ポリ乳酸主体繊維Aとポリ乳酸バインダー繊維Bとを用いて湿式抄紙した後、ドラム型熱処理機またはエアースルードライヤーで熱処理を施し、さらにカレンダーローラーにて熱処理を施す、請求項1〜7のいずれかに記載の湿式不織布の製造方法。

【公開番号】特開2010−180492(P2010−180492A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23912(P2009−23912)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】