説明

湿式摩擦材

【課題】未変性フェノール樹脂を用いたものと同等以上の耐久性を有し、且つ摩擦係数の高い湿式摩擦材を提供すること。
【解決手段】ビスフェノールF型エポキシ樹脂とオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを必須成分とし、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率が全エポキシ樹脂の中で15質量%〜65質量%であり且つ全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対しノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.1〜0.6である樹脂組成物を結合材として用いることを特徴とする湿式摩擦材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用オートマチックトランスミッションにおける湿式クラッチ、マニュアルトランスミッションにおけるシンクロナイザーリング、オートバイ用湿式多板クラッチディスク、湿式ブレーキ等に有用な湿式摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式摩擦材は紙を基材とするペーパー系湿式摩擦材が主に用いられている。このペーパー系湿式摩擦材は、天然パルプ繊維、有機合成繊維や無機繊維等の繊維基材と、摩擦調整剤等を湿式抄紙した後、熱硬化性樹脂からなる結合材を含浸させ、加熱硬化したものである。
【0003】
このようなペーパー系湿式摩擦材における熱硬化性樹脂は、繊維基材と充填剤等を保持する役割を持つばかりでなく、湿式摩擦材の摩擦特性や耐久性に大きな影響を及ぼす。従来、結合材としては、耐熱性に優れ、機械的強度が高い未変性フェノール樹脂が主に用いられてきた。しかし、近年の車両のエンジン出力アップや燃費向上のために摩擦係数を引き上げることが望まれるが、未変性フェノール樹脂を結合材とした湿式摩擦材では対応することができなかった。
【0004】
そこで、このような問題を改善するために、油変性フェノール樹脂、アルキル変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂を結合材として用いることが検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0229029号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの変性フェノール樹脂は、耐熱性や機械的強度が未変性フェノール樹脂に劣るため、耐久性の面で満足し得る湿式摩擦材が得られていないというのが実情である。
従って、本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、未変性フェノール樹脂を用いたものと同等以上の耐久性を有し、且つ摩擦係数の高い湿式摩擦材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、結合材に用いる樹脂組成について鋭意研究を重ねた結果、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、オルソクレゾール型エポキシ樹脂とを特定の比率で配合し、特定の水酸基量のノボラック型フェノール樹脂で架橋させて得られる結合材が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを必須成分とし、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率が全エポキシ樹脂の中で15質量%〜65質量%であり且つ全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対しノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.1〜0.6である樹脂組成物を結合材として用いることを特徴とする湿式摩擦材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、未変性フェノール樹脂を用いたものと同等以上の耐久性を有し、且つ摩擦係数の高い湿式摩擦材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による湿式摩擦材は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを必須成分とし、全エポキシ樹脂に占めるビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率が15質量%〜65質量%であり、且つノボラック型フェノール樹脂が、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.1〜0.6となるように配合された樹脂組成物を結合材として用いたことに特徴がある。
【0010】
全エポキシ樹脂に占めるビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率が15質量%未満であるか、または65質量%を超える場合、湿式摩擦材の硬度が高くなり、摩擦係数が低下する。また、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.1未満である場合、結合材としたときに架橋点が殆ど無くなり、耐久性が低下する。一方、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.6を超える場合、湿式摩擦材の硬度が高くなり過ぎ、摩擦係数が低下する。
【0011】
本発明における樹脂組成物の必須成分であるビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びノボラック型フェノール樹脂としては、一般に市販されているものを制限なく使用することができる。中でも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、900〜2,000の重量平均分子量を有するものが好ましい。ビスフェノールFエポキシ樹脂の重量平均分子量が900未満であると、樹脂としてのバインダー力が低くなって耐久性が低下する場合があり、また、重量平均分子量が2,000を越えると、湿式摩擦材の硬度が低くなって耐久性が低下する場合がある。また、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、300〜500の重量平均分子量を有するものが好ましい。オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の重量平均分子量が300未満であると、樹脂としてのバインダー力が低くなって耐久性が低下する場合があり、また、重量平均分子量が500を越える場合、湿式摩擦材の硬度が高くなって高い摩擦係数が得られない場合がある。また、ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量は特に限定されない。
なお、本発明における硬度は、ロックウェル硬度を意味する。このロックウェル硬度は、湿式摩擦材同士の当たり方に寄与し、湿式摩擦材の柔軟性を評価する指標となる。硬度が高過ぎると摩擦係数が低下し、硬度が低過ぎると湿式摩擦材としてのコシが無くなりヘタリが早まると考えられる。
なお、本発明における重量平均分子量の値は、GPC法(ゲルパーミッションクロマトグラフィ法)によって測定される分子量である。
【0012】
本発明による湿式摩擦材の製造方法は、公知の方法に従い得ることができる。即ち、繊維基材で構成される抄紙体に上記した樹脂組成物を含浸させ、加熱硬化し、リング状に打ち抜いた後、これを芯板にフェノール樹脂系接着剤で接着することにより湿式摩擦材を製造することができる。
抄紙体は、天然パルプ、アラミド繊維等の有機繊維や炭素繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、金属繊維等の無機繊維等から構成される繊維基材を用いて、通常の抄紙操作により抄造されたものである。この抄紙体は、グラファイト、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、シリカ粉末、珪藻土等の無機質粉状物質、カシューダスト等の有機質粉状物質等を摩擦調整剤として含んでいてもよい。
抄紙体に樹脂組成物を含浸する方法としては、例えば、抄紙体を樹脂組成物に浸漬する方法、各種コーターにより樹脂組成物を抄紙体に塗布する方法、スプレーにより樹脂組成物を抄紙体に吹き付ける方法等が挙げられる。
【実施例】
【0013】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
1Lのセパラブルフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDF−2001、エポキシ当量486、重量平均分子量1,000)100g及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDCN−703、エポキシ当量208、重量平均分子量420)400gを入れ、これにメチルエチルケトン500g加えて60℃で1時間、溶解混合した(全エポキシ樹脂に占めるビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率は20質量%)。
その後、エポキシ樹脂溶液にノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRG−558、水酸基当量104、重量平均分子量400)25g(全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.11となる量)を添加した。更に、60℃で1時間、混合溶解させた後、室温まで冷却し、結合材用樹脂組成物を得た。
この結合材用樹脂組成物をメチルエチルケトンで更に30%に希釈し、硬化助剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製2E4MZ)を樹脂固形分100gに対して3g配合した後、常法で得られた紙状シートに含浸し、室温で30分間乾燥させた。このシートをオーブンに投入し、120℃で10分間予備硬化させた後、200℃で10分間硬化させた。得られたシートをリング状に打ち抜き、常法により実施例1の湿式摩擦材を作製した。
この湿式摩擦材の摩擦特性を下記表1に示す条件にて評価したところ、摩擦係数は0.133であり、摩耗量は4μmであった。
【0014】
【表1】

【0015】
また、油中にて湿式摩擦材の圧縮、減圧(圧縮−減圧で1サイクル)を繰り返して疲労耐久を評価したところ、一般的な湿式摩擦材の指標とされる10万サイクルをクリアし、十分な機械的強度を示した。また、湿式摩擦材の硬度を測定したところ、84であった。
【0016】
<実施例2>
1Lのセパラブルフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDF−2001、エポキシ当量486、重量平均分子量1,000)250g及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDCN−703、エポキシ当量208、重量平均分子量420)を250g入れ、これにメチルエチルケトン500g加えて60℃で1時間、溶解混合した(全エポキシ樹脂に占めるビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率は50質量%)。
その後、エポキシ樹脂溶液にノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRG−558、水酸基当量104、重量平均分子量400)25g(全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.15となる量)を添加した。更に60℃で1時間、混合溶解させた後、室温まで冷却し、結合材用樹脂組成物を得た。
実施例1と同様の方法で湿式摩擦材を作製して性能を評価したところ、摩擦係数は0.148であり、摩耗量は1μmであり、硬度は76であった。また、疲労耐久は10万サイクルをクリアし、十分な機械的強度を示した。
【0017】
<実施例3>
1Lのセパラブルフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDF−2001、エポキシ当量486、重量平均分子量1,000)300g及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDCN−703、エポキシ当量208、重量平均分子量420)200gを入れ、これにメチルエチルケトン500g加えて60℃で1時間、溶解混合した(全エポキシ樹脂に占めるビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率は60質量%)。
その後、エポキシ樹脂溶液にノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRG−558、水酸基当量104、重量平均分子量400)25g(全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.15となる量)を添加した。更に、60℃で1時間、混合溶解させた後、室温まで冷却し、結合材用樹脂組成物を得た。
実施例1と同様の方法で湿式摩擦材を作製して性能を評価したところ、摩擦係数は0.136であり、摩耗量は4μmであり、硬度は81であった。また、疲労耐久は10万サイクルをクリアし、十分な機械的強度を示した。
【0018】
<比較例1>
1Lのセパラブルフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDF−2001、エポキシ当量486、重量平均分子量1,000)500gを入れ、これにメチルエチルケトン500g加えて60℃で1時間、溶解混合して結合材用樹脂組成物を得た。
実施例1と同様の方法で湿式摩擦材を作製して性能を評価したところ、摩擦係数は0.116であり、摩耗量は104μmであり、硬度は45であった。また、疲労耐久は3万サイクルであった。
【0019】
<比較例2>
1Lのセパラブルフラスコに、オルソクレゾール型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDCN−703、エポキシ当量208、重量平均分子量420)500gを入れ、これにメチルエチルケトン500g加えて60℃で1時間、溶解混合した。その後、ノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRG−558、水酸基当量104、重量平均分子量400)25g(全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.15となる量)を添加した。更に、60℃で1時間、混合溶解させた後、室温まで冷却し、結合材用樹脂組成物を得た。
実施例1と同様の方法で湿式摩擦材を作製して性能を評価したところ、摩擦係数は0.113であり、摩耗量は67μmであり、硬度は97であった。また、疲労耐久は7万サイクルであった。
【0020】
<比較例3>
1Lのセパラブルフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDF−2001、エポキシ当量486、重量平均分子量1,000)350g及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDCN−703、エポキシ当量208、重量平均分子量420)150gを入れ、これにメチルエチルケトン500g加えて60℃で1時間、溶解混合した(全エポキシ樹脂に占めるビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率は70質量%)。
その後、エポキシ樹脂溶液にノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRG−558、水酸基当量104、重量平均分子量400)25g(全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.15となる量)を添加した。更に、60℃で1時間、混合溶解させた後、室温まで冷却し、結合材用樹脂組成物を得た。
実施例1と同様の方法で湿式摩擦材を作製して性能を評価したところ、摩擦係数は0.111であり、摩耗量は135μmであり、硬度は67であった。また、疲労耐久は3万サイクルであった。
【0021】
<比較例4>
1Lのセパラブルフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDF−2001、エポキシ当量486、重量平均分子量1,000)50g及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDCN−703、エポキシ当量208、重量平均分子量420)450gを入れ、これにメチルエチルケトン500g加えて60℃で1時間、溶解混合した(全エポキシ樹脂に占めるビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率は10質量%)。
その後、エポキシ樹脂溶液にノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRG−558、水酸基当量104、重量平均分子量400)25g(全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.15となる量)を添加した。更に、60℃で1時間、混合溶解させた後、室温まで冷却し、結合材用樹脂組成物を得た。
実施例1と同様の方法で湿式摩擦材を作製して性能を評価したところ、摩擦係数は0.111であり、摩耗量は25μmであり、硬度は94であった。また、疲労耐久は8万サイクルであった。
【0022】
<比較例5>
1Lのセパラブルフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDF−170、エポキシ当量389、重量平均分子量800)100g及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDCN−703、エポキシ当量208、重量平均分子量420)400gを入れ、これにメチルエチルケトン500g加えて60℃で1時間、溶解混合した(全エポキシ樹脂に占めるビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率は20質量%)。
その後、エポキシ樹脂溶液にノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRG−558、水酸基当量104、重量平均分子量400)12.5g(全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.05となる量)を添加した。更に、60℃で1時間、混合溶解させた後、室温まで冷却し、結合材用樹脂組成物を得た。
実施例1と同様の方法で湿式摩擦材を作製して性能を評価したところ、摩擦係数は0.117であり、摩耗量は211μmであり、硬度は69であった。また、疲労耐久は3万サイクルであった。
【0023】
<比較例6>
1Lのセパラブルフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDF−170、エポキシ当量389、重量平均分子量800)100g及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製YDCN−703、エポキシ当量208、重量平均分子量420)400gを入れ、これにメチルエチルケトン500g加えて60℃で1時間、溶解混合した(全エポキシ樹脂に占めるビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率は20質量%)。
その後、エポキシ樹脂溶液にノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量104、重量平均分子量400)150g(全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対してノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.75となる量)を添加した。更に、60℃で1時間、混合溶解させた後、室温まで冷却し、結合材用樹脂組成物を得た。
実施例1と同様の方法で湿式摩擦材を作製して性能を評価したところ、摩擦係数は0.114であり、摩耗量は142μmであり、硬度は95であった。また、疲労耐久は5万サイクルであった。
【0024】
<比較例7>
結合材用樹脂としてフェノール樹脂のみを用いて、実施例1と同様の方法で湿式摩擦材を作製して性能を評価したところ、摩擦係数は0.117であり、摩耗量は11μmであり、硬度は97であった。また、疲労耐久は10万サイクルをクリアし、十分な機械的強度を示した。
【0025】
以上の結果から分かるように、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを特定の割合で配合した結合材を用いた実施例1〜3の湿式摩擦材は、未変性フェノール樹脂を用いた比較例7の湿式摩擦材と同等以上の耐久性(摩耗量及び疲労耐久)を有する上に、摩擦係数が0.133〜0.148と高いものである。このような湿式摩擦材は、自動車用クラッチ、湿式ブレーキ等に極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂とオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを必須成分とし、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率が全エポキシ樹脂の中で15質量%〜65質量%であり且つ全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対しノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量が0.1〜0.6である樹脂組成物を結合材として用いることを特徴とする湿式摩擦材。

【公開番号】特開2009−263449(P2009−263449A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112569(P2008−112569)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)