説明

湿式粉砕により得られる無機発光体

本発明は、湿式粉砕により得られる、粒径分布D90が<5μmの無機発光体、この顔料の製造方法、及びその使用に関する。粒子の90%が直径5μm以下、特に3μm以下、極めて特に1μm以下である、湿式粉砕された無機発光体粒子の使用により、一般に考えられるのとは対照的に、改善された蛍光性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式粉砕により得られる、粒径分布D90が≦5μmの無機発光体、当該顔料の製造方法、及びその使用に関する。粒子の90%が直径5μm以下、特に3μm以下、極めて特に1μm以下である、湿式粉砕された無機発光体粒子の使用により、一般に考えられるのとは対照的に、改善された蛍光性を得ることができる。
【0002】
US6344261 B1は、少なくとも1つの希土類金属でドープされたホスト格子ベースの発光物質の形態で、少なくとも1つの認証識別子を有する印刷された重要文書に関する。好ましくはこの発光物質は、一般式
3Cr5-xAlx12
[式中、Aはスカンジウム、イットリウム、ランタニド及びアクチニドから成る群から選択される1の元素を表し、指数xは、0<x<4.99という条件を満たす]
のガーネット構造を有する。さらにより好ましいのは、
3-zNdzCr5-xAlx12、Y3-zYbzCr5-xAlx12、及びY3-zPrzCr5-xAlx12
[式中、指数xは0<z<1と言う条件を満たす]
の発光物質である。US6344261 B1の実施例1には、Y2.75Nd0.05Yb0.2Al4.212の製造が記載されている。非常に微細な粒径を得るために、この粉末を水中で撹拌しながらボールミルで粉砕して、1μm未満の平均粒径が製造される。
【0003】
EP-A-1842892は、UV発光性発光体、及び当該発光体を含むランプを開示している。この発光体は、一般式(Ca2-x,Srx)P27:Pr[式中、0≦x≦2]で表すことができる、プラセオジムで賦活されたピロホスホネートベースの発光体である。EP-A-1842892の実施例1によればCa227:Prは、適切な反応体を完全に乾燥混合し、それからこのブレンド材料を、還元雰囲気下、好ましくは2〜4時間、1000℃〜1200℃で、H25%−N295%の雰囲気下で焼成することにより製造することができる。焼成ケーキは、2〜12時間の脱イオン水中での浸漬により軟化させることができ、そしてそれから60メッシュで湿式ふるい分けし、そして乾燥させる。代替的には、乾いた焼成ケーキを小さなかけらに砕き、粉砕し、そしてそれから60メッシュで乾式ふるい分けをする。発光体粉末はボールミル技術を使って適切な大きさに湿式粉砕することができ、粒子損傷による明度の損失は最小限である。
【0004】
WO2007042653は、ほぼ単結晶の粒子(平均粒径範囲100〜400nm)の懸濁液の液相の形で埋め込まれている希土類ホウ酸塩に関する。このホウ酸塩は、ホウ酸塩を形成するのに充分な温度で、希土類ボロカーボネート又はヒドロキシボロカーボネートを焼く工程、及び比表面積が3m2/g以上で生成物を得る工程、及び焼いた生成物の湿式粉砕を実施する工程から成る方法により製造される。この発明によるホウ酸塩は、発光性物質(luminophor)、とりわけ発光性透明材料を製造するために使用することができる。WO2007042653の実施例では、湿式粉砕工程を使用して、か焼後に発光体粒子が脱アグロメレート化される。
【0005】
一般的には、蛍光物質の粒径が3μm未満、とりわけ1μm未満になると、慣用の粉砕技術の適用が原因となって蛍光の明度は逆に低下すると考えられている。これについては例えば、CRC Press編(M. Yen; Marvin J. Weber著)、"Inorganic Phosphors, Compositions, Preparations and Optical Properties"の4.1.6.4章で言及されており、強力な粉砕は、結晶上に生じる欠陥により発光効率の低下につながると述べられている。
【0006】
4.2.2.2章には、ボールミル中での粉砕は粒子を損傷させ、そして発光効率の減少につながると述べられている。4.4.3章(分散液)には、発光特性が劣化するので、激しい機械的な分散は避ける必要があると言及されている。
【0007】
意外なことに、粒子の約90%が5μm以下、特に3μm以下、極めて特に1μm以下の直径を有する発光性、特に蛍光性顔料粒子を使用することにより、一般に考えられるのとは対照的に、改善された蛍光性が得られることを、本願の発明者は明らかにした。
【0008】
従って本発明は、粉砕機を粉砕スペース1lあたり>0.5kWの出力密度で稼働させ、かつ湿式粉砕された無機発光体の発光(蛍光、又はリン光)強度が、粉砕工程で開始材料として使用される無機発光体の発光強度の少なくとも約50%、特に70%、極めて特に90%である、湿式粉砕により得られる無機発光体に関する。
【0009】
発光体粒子の粉末バッチはまた、粒子の大部分がほぼ同一の大きさであるような狭い粒径分布を有する。好ましくは、粒子の少なくとも90質量%、及びより好ましくは粒子の少なくとも約95質量%が、平均粒径の2倍より大きくはない。従って、平均粒径が約2μmである場合、粒子の少なくとも約90質量%が4μmより大きくなく、そしてより好ましくは、粒子の少なくとも約95質量%が4μmより大きくない。ここで使用されるように、平均粒径は体積平均粒径である。
【0010】
さらに、好ましくは粒子の少なくとも約90質量%が平均粒径の約1.5倍より大きくない。従って、平均粒径が約2μmの場合、好ましくは粒子の少なくとも約90質量%が約3μmより大きくない。
【0011】
加えて、本発明の発光体粒子は、分布係数(D10+D90)/D50<1.2、特に<1.0により特徴付けられる。
【0012】
本発明の好ましい態様では、無機発光体の平均粒径及び/又はD50が、0.4μm未満、特に0.2μm未満である。
【0013】
粉砕工程で開始材料として使用される無機発光体(未加工の無機発光体)は、焼結工程により得られる、粉砕されていない無機発光体であってよい。
【0014】
本発明の無機発光体は、小さな粒径分布、並びに良好な光物理的特性、例えば発光強度(量子効率)と組み合わされた、驚くべき耐薬品性、機械的耐性、及び耐熱性を有する。
【0015】
「発光」という言葉は、エネルギー入力後の可視光、UV領域の光、及びIR領域の光の放射を意味する。発光材料は、蛍光材料、又はリン光材料であってよい。このような発光材料はエネルギー源に応答して、一般的にはほとんど温度上昇せずに電磁エネルギーの特徴的な放射を示す。
【0016】
粉砕は「湿式」で、すなわち液状媒体中で行われる。一般的な粉砕条件は、原材料、滞留時間、インペラ速度、及び粉砕媒体の粒径次第で、変わりうる。適切な条件と滞留時間は、実施例に記載されている。これらの条件は、0.01〜約5μm、特に0.02〜約1μmの範囲内の所望の大きさを得るために変えることができる。
【0017】
本発明の粉砕工程は基本的に、中性の液状媒体中、例えば、有機極性溶媒、例えばアルコールなど、又は有機の非極性溶媒、例えばジクロロメタン、クロロベンゼン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなど、又はこれらの混合物中で行うことができるが、好ましくは水及び選択的に中性の極性有機溶媒の中で行う。
【0018】
中性の極性有機溶媒の例は、アセトアミド、ホルムアミド、メチルアセトアミド、メチルホルムアミド、カプロラクタム、バレロラクタム、1,1,2,2−テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、メタノール、エチレンカーボネート、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、及びN−メチルピロリドン、好ましくはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、又はN−メチルピロリドン、特にN−メチルピロリドンであり、及び複数の中性液体から成る混合物であって、全体で極性が同じものである。
【0019】
好ましくは、UV領域で吸収しない溶媒を使用する。
【0020】
水と中性の極性液体を使用する場合、中性の極性液体の量は、液体と水の全量に対して1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%、特に5〜10質量%である。
【0021】
もとの無機発光体粒子を粉砕するために使用される粉砕装置は、例えば機械的な動作によって、材料を激しく粉砕して大きさ約5μm、又はそれより小さく、とりわけ1μm未満の粒子に小さくすることができるタイプのものである。このような粉砕機は、市販で手に入る。湿式粉砕機は、標準的な粉砕装置、例えばDyno KDL型粉砕機、Drais TEX型粉砕機、又はNetsch LME型粉砕機である。好ましくは、Netsch社製LabStar、Netsch社製LMZモデル、Drais DCP Superflow、Drais Advantis、及びWAB社のDyno MultiLabモデルを使用する。前記ボールミルを使用することにより、非常に小さい、例えば粒径が200nm未満の無機発光体の最終結晶を得ることができる。これらの粉砕機は、粉砕スペース1lあたり>0.5kWの出力密度で稼働させ、粉砕効率の点でより効率的である。粉砕機の構成、及び特に粉砕チャンバの取り入れ口と粉砕機の撹拌シャフトは、標準的な材料により形成されていてよいが、摩耗を最小限にし、かつ粉砕された製品中の不純物を減少させるために好ましくは、セラミック材料、例えば炭化ケイ素又は窒化ケイ素により形成されている。
【0022】
本発明の方法で行われる粉砕に特に適している粉砕機の例は、バッチ式、及び連続式稼働に設計されている撹拌ボールミルであり、この粉砕機は水平式又は垂直式の構成で円筒形の、又は中空円筒形の粉砕チャンバを有し、かつ粉砕スペース1リットルあたり0.5kW超、とりわけ0.65kW超の比出力密度(specific power density)で稼働させることができ、そしてその撹拌機の周速度が12m/秒のものである。この目的に適切な粉砕機は例えば、DE−C−3 716 587に記載されている。優れた結果のためには、比出力密度が、粉砕スペース1リットルあたり1.5〜最大2.0kJ・s-1、そしてその時に撹拌機の周速度が5〜12m・s-1、好ましくは6〜11m・s-1である。約15m・s-1の、より速い周辺速度(将来的にはさらに速くなり得る)は、いくつかの特定の装置で可能であるが、粉砕スペース1リットルあたり最大2.0kJ・s-1の比出力密度でのみ可能となる。
【0023】
湿式粉砕機は事前にセラミック製粉砕ビーズ(0.1mm<d<3mm;特定密度>3g/cm3)で60〜95%、特に80〜95%満たし、そしてチップ速度8〜20m/秒、好ましくは10〜15m/秒で稼働させる。セラミック製粉砕ビーズの例は、酸化ジルコニウムビーズ(ZrO2、ZrSiOx、又はZrAl2x)、イットリウム安定化ジルコニアビーズ、イットリウム安定化ジルコニウムシリケート、又はUS6,491,239、及びUS6,309,749に記載のジルコニアコア/シェル型複合材の粉砕媒体である。市販で手に入るイットリウム安定化ジルコニアのセラミックビーズの例は、SiLibeads(登録商標)ZY型、又はZY型Premium(Sigmund Linder社製)、及びZirmill(登録商標)Zirpro(登録商標)(Saint Gobain社製)であり、好ましくはこれらを本発明による工程で使用する。酸化ジルコニウムビーズは、直径が0.05mm〜1mm、特に0.2〜0.3mmである。
【0024】
無機発光体は水中に懸濁させる。この混合物を均一な懸濁液が形成されるまで撹拌する。撹拌は例えば、プロペラ撹拌機を用いて行うことができる。撹拌時間は通常、10〜180分である。この懸濁液をその後、再循環式でビーズミルに0.5〜12時間の間、送り込む。粉砕の間、温度を5〜95℃、好ましくは15〜55℃に保つために、粉砕機の外部冷却により熱を除去する。
【0025】
効果的な粉砕温度次第で、粘度を500mPa s未満、好ましくは200mPa s未満に保つため、ミルベースに水を添加する。通常は無機発光体と溶媒に対して、無機発光体を1〜40質量%、特に5〜25質量%、そして溶媒を99〜60質量%、特に95〜75質量%使用する。
【0026】
撹拌媒体パールミル中での無機発光体処理時間は、通常0.5〜12時間である。
【0027】
粉砕の最後に無機発光体の結晶が得られるが、その結晶の粒径は粉砕時間と粉砕パラメータによる。
【0028】
必要な場合には、粉砕又は焼成の間の酸化から発光体を守るために、保護ガス、例えば窒素及びアルゴン雰囲気の存在下、酸素遮断下で粉砕工程を行うことができる。発光体成分の酸化は、還元剤、例えばNa224を少量添加することによって防止できる。
【0029】
粒径1μmの無機発光体が本発明の工程により得られ、この発光体は意外なことに、従来の発光体ではこれまで不可能だった適用に対して、充分な蛍光性を発揮する。
【0030】
適用領域次第で、粉砕された水性懸濁液は、
水性適用、例えば水性インクでの粉砕スラリーとして使用すること、
濾過により単離し、そして湿潤状態で保管すること、
スプレー乾燥させ、そしてこの後、選択的に50〜1300℃、好ましくは150〜1000℃で炉内で焼成すること、
濾過により単離し、そして50〜1300℃、好ましくは70〜1000℃で炉内で乾燥させること、又は
炉内で(真空で又は真空無しで)50〜1300℃、好ましくは70〜1000℃で炉内で乾燥させること
ができる。
【0031】
粉砕された発光体の焼成は、発光体の発光を改善させることができる。
【0032】
ほぼすべての粒子分布が1ミクロン未満、又はそれより小さいことを保証するためには、さらなる加工が必要であってよい。このような場合、粉砕された分散液を加工して1ミクロンより大きい粒子からサブミクロン粒子を分離する。この分離は、粉砕された無機発光体粒子を最終生成物の粒子を含む上澄み相と、比較的大きな粒子を含む沈殿相とに遠心分離することによって行うことができる。この後、上澄み相を沈殿相から、例えばデカンタによって除去する。この上澄みが、本発明の分散液である。この相分離のためには、慣用の遠心分離を行うことができる。いくつかの例では、上澄みを2回、3回、又はそれより多い回数遠心分離して、最初の遠心分離後に残っている大きな粒子をさらに除去し、そしてより均一な粒径分布を得ることが好ましくあり得る。
【0033】
本発明の工程で開始材料として使用される未加工の無機発光体は市販で、例えばランプ用発光体として手に入る。「未加工の無機発光体」とは、合成及び焼成後に存在する無機発光体である。これについては例えば、 CRC Press編(M. Yen; Marvin J.Weber著)、"Inorganic Phosphors, Compositions, Preparations and Optical Properties"の4.2章を参照。特に適切な未加工の無機発光体は、マグネシウムフロロゲルマネート:Mn(Mg8Ge2112:Mn))、イットリウムバナデートホスフェート:Eu(YPVO4:Eu3)、バリウムマグネシウムアルミネート:Eu,Mn(BaMgAl1017:Eu,Mn)である。
【0034】
原則的に本発明の方法では、あらゆる無機発光体が使用可能である。無機発光体の例は、以下に示す。
【0035】
I)硫化物及びセレン化物
a)硫化亜鉛及び硫化カドミウム、及びスルホセレナイド
スルフィド発光体製造のための原材料は、精製された塩溶液から硫化水素又は硫化アンモニウムで沈殿される高純度の硫化亜鉛及び硫化カドミウムである。Zn1-yCdyS(0≦y≦0.3)は、混合された亜鉛−カドミウム塩溶液から共沈により製造することができる。
【0036】
スルフィド発光体のための最も重要な賦活剤は、銅と銀であり、その次にマンガン、金、希土類金属、及び亜鉛である。ホスト格子の電荷補償は、一価又は三価のイオン(例えばCl-又はAl3+)による共役置換により行われる。
【0037】
発光特性は、賦活剤及び補助賦活剤の性質、これらの濃度、及び焼成条件により影響を受けることがある。加えて、カドミウム又はセレンによるホスト格子中の亜鉛又は硫黄の特定置換が可能であり、これはまた発光特性に影響を与える。
【0038】
銀(銀賦活剤)で硫化亜鉛をドープすることは、440nmでのスペクトルの青い領域での強力な放射バンドの出現につながり、この減衰時間は短い。
【0039】
ZnS:Ag発光体での、カドミウムによる亜鉛の置換により、放射最大値が青から緑、黄色、赤にわたって、IRスペクトル領域への偏移につながる。
【0040】
銅による賦活により、その製造次第で様々な割合での青(460nm)、及び緑のバンド(525nm)から成る、硫化亜鉛での放射につながる。
【0041】
硫化亜鉛は、幅広い範囲で硫化マンガンにより置換的に混合された結晶を形成する。マンガンで賦活された硫化亜鉛は、580nmで黄色いスペクトル領域での放射バンドを有する。
【0042】
金による硫化亜鉛の賦活は、その製造次第で黄緑(550nm)、又は青(480nm)のスペクトル領域での発光につながり、一方、青−白発光の発光体は、リンによる賦活で形成される。
【0043】
賦活剤は、酸化物、オキサレート、カーボネート、又は比較的高い温度ですぐに分解する他の化合物の形で添加される。
【0044】
b)アルカリ土類金属硫化物、及びスルホセレナイド
賦活されたアルカリ土類金属硫化物は、放射バンドが紫外線から近赤外線の間である。ユウロピウム、セリウム、又はサマリウムのような希土類金属で賦活されたアルカリ土類金属硫化物、例えばMgS、又はCaSは、非常に重要である:
CaS:Ce3+は、緑放射性発光体である。セリウム10-4mol%で賦活すると、放射最大値は、540nmで現れる。より高い賦活剤濃度は、赤方偏移につながる;一方でストロンチウムでカルシウムを置き換かえると、青方偏移につながる。MgS:Ce3+(0.1%)は、525nm、及び590nmで緑の、及び赤のスペクトル領域での2つの放射バンドにつながる;MgS:Sm3+(0.1%)は、575nm(緑)、610nm(赤)、及び660nm(赤)での3つの放射バンドにつながる。
【0045】
ユウロピウム−サマリウム又はセリウム−サマリウムで二重に賦活された硫化カルシウム又は硫化ストロンチウムは、IR照射で刺激することができる。放射はユウロピウム又はセリウムで起こり、そしてオレンジ−赤(SrS:Eu2+,Sm3+)、又は緑(CaS:Ce3+,Sm3+)の発光につながる。
【0046】
c)オキシスルフィド
22S:Eu3+の主な輝線は、565及び627nmで起こる。長波長放射の強度は、ユウロピウム濃度により増加し、この際に放射色はオレンジから深い赤に偏移する。Y22S中のテルビウムは、メイン放射バンドが青(489nm)、及び緑のスペクトル領域(545及び587nm)であり、その強度比はテルビウム濃度による。低いドープレベルでは、Y22S:Tb3+は青−白に発光し、より高いレベルではその色は緑になっていく傾向がある。Gd22S:Tb3+は、緑の発光を示す。
【0047】
II)酸素優位の発光体
a)ホウ酸塩
Sr312202:Eu2+
【0048】
b)アルミン酸塩
イットリウムアルミネートY3Al512:Ce3+(YAG)は、硝酸塩溶液からNH4OHによる水酸化物の沈殿、及び引き続いた焼成により製造される。
【0049】
セリウムマグネシウムアルミネート(CAT)Ce0.55Tb0.35MgAl1119は、硝酸塩溶液からNH4OHによる金属水酸化物の共沈、及び引き続いた焼成により製造される。希土類金属がCe3+及びTb3+として存在することを保証するために、激しい還元性雰囲気が必要である。さらなるアルミネート発光体の例は、BaMg2Al1627:Eu2+、及びY2Al3GaO12:Tb3+である。
【0050】
希土類金属で賦活された二価の、ボロン置換されたアルミネートからなる減衰時間が長い発光体は、US−B−5,376,303に開示されている。とりわけ、減衰時間が長い発光体は、MOa(Al1-bb23:cR103[式中、0.5≦a≦10.0、0.0001≦b≦0.5、及び0.0001≦c≦0.2であり、MOはMgO、CaO、SrO、及びZnOから成る群から選択される少なくとも1つの二価の金属酸化物を表し、そしてR103はEu、及び少なくとも1つの付加的な希土類元素を表す]から成る。好ましくは、R103がEu、並びにPt、Nd、Dy及びTmから成る群から選択される少なくとも1つの付加的な希土類元素を表す。
【0051】
c)ケイ酸塩
ZnSiO4:Mnは、緑の発光体として使用される。その製造は、[Zn(NH34](OH2)及びMnCO3の溶液を多孔質のSiO2フレーク上へ沈殿させることを含み、これを引き続き乾燥して、焼成する。
【0052】
イットリウムオルトケイ酸塩Y2SiO5:Ce3+は、(Y,Tb)(NO33の水溶液をSiO2フレークで処理し、加熱し、そして引き続きN2/H2下で還元焼成することによって、製造することができる。イットリウムオルトケイ酸塩は、Ce、Tb、及びMnでドープすることができる。
【0053】
d)ゲルマニウム酸塩
マグネシウムフロロゲルマネート、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+は、鮮やかな赤発光体である。
【0054】
e)ハロリン酸塩、及びリン酸塩
ハロリン酸塩は、その中でSb3+及びMn2+が増感剤及び賦活剤として機能する二重に賦活された発光体であり、放射スペクトルで2つの相関最大値を上昇させる。アンチモンは増感剤及び賦活剤として同様に作用する。その化学組成は最も明確には、3Ca3(PO42・Ca(F,Cl)2:Sb3+,Mn2+と表すことができる。その例は、(Sr,Mg)3(PO42:Sn2+、LaPO4:Ce3+,Tb3+、Zn3(PO42:Mn2+、Cd5Cl(PO42:Mn2+、Sr3(PO42・SrCl2:Eu2+、及びBa227:Ti4+である。
【0055】
3Sr3(PO42・SrCl2:Eu2+は、UV範囲全体からの照射により励起することができる。励起最大値は375nmにあり、そして放射最大値は447nmにある。Ca3+及びBa2+で連続的に置換すると、放出最大値は450nmに偏移する。
【0056】
f)酸化物:
23:Eu3+の沈殿は一般的に、硝酸イットリウム及び硝酸エウロピウムの精製溶液からの混合オキサレートを沈殿させることによって行う。乾燥されたオキサレートの焼成に続いて、結晶化焼成を行う。
【0057】
23:Eu3+は、赤の領域の611.5nmで激しい輝線を示す。この赤い輝線の発光は、最大約10mol%まではEu濃度の上昇とともに上昇する。極微量のTbは、Y23:Eu3+のEu蛍光を強化する。
【0058】
ZnO:Znは、自己賦活型発光体の典型的な例である。
【0059】
g)ヒ酸塩:
ヒ酸マグネシウム6MgO・AS25:Mn4+は、非常に鮮やかな赤発光体である。その製造は、MgCl2及びMnCl2の溶液を用いた、ピロヒ酸によるマグネシウム及びマンガンの沈殿を含む。
【0060】
h)バナジウム酸塩:
希土類金属で賦活されたバナジウム酸塩の例は、YVO4:Eu3+、Tm、Tb、Ho、Er、Dy、Sm、又はInを有するYVO4、GdVO4:Eu、LuVO4:Euである。Bi3+の組み込みは、Eu3+放射を増感させ、そして発光色のオレンジへの偏移をもたらす。
【0061】
i)硫酸塩:
フォトルミネセンス硫酸塩は、短波照射を吸収するイオン、例えばCe3+で賦活することによって得られる。Ce3+を有するアルカリ金属及びアルカリ土類金属の硫酸塩は、300〜400nmの間で放射する。付加的なマンガン賦活の際に、Ce3+により吸収されるエネルギーは、マンガンに移動して緑から赤の領域への放射に偏移する。水不溶性の硫酸塩は、賦活剤と共に沈殿させ、そして融点未満で焼成する。
【0062】
j)タングステン酸塩及びモリブデン酸塩
タングステン酸マグネシウムMgWO4、及びタングステン酸カルシウムCaWO4は、最も重要な自己賦活型発光体である。タングステン酸マグネシウムは、50〜270nmの照射を可視光にする変換に対して84%という高い量子収率を有する。希土類イオンによる付加的な賦活の際に、それらの典型的な放射も起こる。Eu3+で賦活されたモリブデン酸塩の例は、Eu2(Wo43である。
【0063】
III)ハロゲン化物の発光体
発光性のアルカリ金属ハロゲン化物は、高純度で、かつ大きな単結晶で容易に製造することができる。外部由来のイオン(例えばTl+、Ga+、In+)を結晶格子に組み込むことにより、さらなる発光中心が形成される。放射スペクトルは個々の外部由来イオンに特徴的なものである。
【0064】
いくつかの重要なアルカリ金属ハロゲン化物の発光体は、以下の表にリスト化されている。
【表1】

【0065】
ハロゲン化物発光体の例は、CaF2:Mn、CaF2:Dy、(Zn,Mg)F2:Mn2+、KMgF3:Mn2+、MgF2:Mn2+、(Zn,Mg)F2:Mn2+である。
【0066】
イットリウム、ランタン、及びガドリニウムのオキシハロゲン化物は、他の希土類金属イオン、例えばテルビウム、セリウム、及びツリウムによる賦活のために良好なホスト格子であり、その例はLaOCl:Tb3+、及びLaOBr:Tb3+である。賦活剤の濃度(Tb,Tm)は、0.01〜0.15mol%である。補助賦活剤により、イッテルビウムと共に、残光を減少させることができる。LaOBr:Ce3+でのガドリニウムによるランタンの部分置換は、電子励起の際の、及び急冷温度での量子収率向上につながる。
【0067】
無機蛍光物質については、酸化物、硫化物、ケイ酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩などの結晶、Ca、Ba、Mg、Zn、Cdなどの結晶を主成分として、金属元素、例えばMg、Ag、Cu、Sb、若しくはPb、又は希土類金属元素、例えばランタノイド(これらは組成物中に賦活剤として添加されている)と共に含む組成物のか焼により製造することができる、無色の発光体を使用することができる。
【0068】
赤い光を放射する使用可能な無機発光体は例えば、

などを含む。
【0069】
緑の光を放射する使用可能な無機発光体は例えば、

などを含む。
【0070】
青又は黄色の光を放射する使用可能な無機発光体は例えば、Y3Al512:Ce、Y3(Al,Ga)512:Ce(両方とも黄色放射)、そしてSr3Ca2(PO43Cl:Eu、(SrBaCa)5(PO43Cl:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb、Ba,MgAl1017:Eu,Mn、BaMg2Al1627:Eu,Mn、Ba,MgAl1017:Eu、BaMg2Al1627:Eu、これらはすべて青放射)などを含む。
【0071】
本発明の他の好ましい実施態様では、無機発光体は青、緑、又は赤の光を放射する無機リン光物質である。
【0072】
青、又は緑の光を放射する無機のリン光物質は、例えばEP−A1−0622440に記載されている。
【0073】
ここに記載されている無機リン光物質は、式
MAl24
[式中、Mはカルシウム、ストロンチウム又はバリウムである]
のマトリックス、又は式
(M’xM’’y)Al24
[式中、x+y=1であり、かつM’とM’’は異なるものであり、それぞれカルシウム、バリウム、ストロンチウム及びマグネシウムから選択される金属である]
のマトリックスを含む。このマトリックスは賦活剤として、ユウロピウムを含む。このマトリックスは補助賦活剤として、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、マンガン、スズ、及びビスマスから選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0074】
このマトリックスは、マトリックス中にある1つの、又は複数の金属に対してユウロピウムを0.0001〜10mol%の量で含む。補助賦活剤は、マトリックス中にある1つの、又は複数の金属に対して0.0001〜10mol%の量で含まれる。

【0075】
緑放射性無機リン光物質の他の例は、ZnS:Cuである。
【0076】
本発明の1つの態様では、金属(III)バナデート又はバナデート/ホスフェートをベースとする発光体は、あまり好ましくない。
【0077】
本発明の他の実施態様では、希土類金属(Ln)リン酸塩の粒子をベースとする発光体(前記材料はP/Lnモル比が1より大きい)は、あまり好ましくない。
【0078】
前記無機リン光物質は、紫外線光又は室温で波長が200〜450nmの可視光線による照射中、及び照射後に、(強度の)リン光(残光)を示す。
【0079】
適切な発光体光性無機材料のリストは、以下に示されている。
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【0080】
本発明の好ましい態様では、無機発光体は一般式
3Cr5-xAlx12
[式中、Aはスカンジウム、イットリウム、ランタノニド、及びアクチニドから成る群から選択される元素であり、かつ、指数xは0<x<4.99という条件を満たす]
を満たす発光体ではない。
【0081】
本発明の好ましい態様では、無機発光体は式
(Ca2-x,Srx)P27:Pr
[式中、0≦x≦2]
によって表される発光体ではない。
【0082】
本発明の好ましい実施態様において無機発光体は、平均粒径が100〜400nmの範囲のほぼ単結晶の粒子の液相懸濁液の形で埋め込まれている希土類金属ホウ酸塩ではない。
【0083】
無機リン光物質は、可視光又は紫外線による照射の間、又はその後、激しいリン光を示す。
【0084】
実際には、可視光、長波のUV(365nm、又は395nm)、又は短波のUV(254nm)が、リン光を誘導するために使用される。リン光は一重項の基底状態に対して三重項の励起状態の放射減衰を示す;移行は禁止されており、三重項状態は比較的長い寿命を有する。
【0085】
粉砕の最後に、粉砕時間及びパラメータ次第で、10nm〜1μの結晶を形成することができる。意外なことに後者は、粒径4〜12μmの従来の発光体ではこれまで可能ではなかった適用に対して充分な蛍光性を発揮する。
【0086】
インクジェット印刷、(セキュリティ)印刷、(強化繊維)プラスチック、薄層コーティング/印刷、ランプ用薄層発光体が、現在可能である。
【0087】
従って、当該無機発光体は塗料、ラッカー、印刷インキ、粉末コーティング、紙コーティング、プラスチック、化粧品、インク、セラミック用及びガラス用光沢剤、食品及び薬品用の装飾的適用、及びセキュリティ強化機構(security enhancing features)で使用することができ、そして本発明はまた、本発明による無機発光体を含む、塗料、ラッカー、印刷インキ、粉末コーティング、紙コーティング、プラスチック、化粧品、インク、セラミック用及びガラス用光沢材に関し、これらの製品には、本発明による無機発光体を含む偽造防止用製品が含まれる。
【0088】
当該無機発光体は、付加的な安定化保護層、いわゆるポストコーティングを備えることができ、これは同時にバインダーシステムに対して最適な適用をもたらすものである。この保護層は、1つ、又は1つより多い金属酸化物、及び/又は有機化学表面変性を含む。保護層の金属酸化物/水酸化物は好ましくは、ケイ素の酸化物/水酸化物(酸化ケイ素、酸化ケイ素水和物)、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄(III)、イットリウム、セリウム、亜鉛、ホウ素の酸化物/水酸化物、及びこれらの組み合わせである。
【0089】
本発明の好ましい態様では、金属の酸化物/水酸化物は、珪素の、アルミニウムの酸化物/水酸化物(酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物)、ジルコニウムの酸化物/水酸化物((水和された)二酸化ジルコニウム)、又はこれらの混合物である。
【0090】
有機化学表面変性は好ましくは、1つ又は1つより多くの有機官能性シラン、アルミネート、ジルコネート、及び/又はチタネートから成る。殊に非常に好ましくは、有機化学表面変性は、金属酸化物表面に適用された1つ又は1つより多くの有機官能性シランから成る。
【0091】
本発明の様々な特徴と態様は、以下の実施例にさらに説明されている。これらの実施例は当業者が本発明の範囲内でどのように行うかを示すものであり、これらの実施例は、そのような範囲が請求項のみに規定されているからといって、本発明の範囲の限定に用いられるべきではない。以下の実施例及び明細書及び請求項の他の箇所では、特に言及されない限り、すべての部と%は質量部と質量%であり、温度は摂氏、そして圧力は大気圧又はほぼ大意気圧である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1a】未加工のY(PV)O4:Eu発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【図1b】湿式粉砕後に得られる、Y(PV)O4:Eu発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【図2a】未加工のMg8Ge2112:Mn発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【図2b】湿式粉砕後に得られる、Mg8Ge2112:Mn発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【図3a】未加工のBaMgAl1017:Eu,Mn発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【図3b】は、湿式粉砕後に得られる、BaMgAl1017:Eu,Mn発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【0093】
実施例
発光(蛍光又はリン光)は、UVC放射ランプを用いた粉末状無機発光体の励起、及び分光放射計による放射の測定により測る(発光はcd/m2で)。
【0094】
実施例1
未加工のY(PV)O4:Eu発光体(平均粒径=8.0μm;D50<7μm)200gを貯蔵槽に流し込み、水中でスラリーにする(懸濁液の全質量:1000g)。容量の約90%にまで、直径0.3〜0.4mmの混合酸化ジルコニウム粉砕要素が充填された、円筒形の湿式粉砕機(Netzsch LabStar)を介して、12m・s-1の半径速度でスラリーを通過させる。この混合物を、再循環式で粉砕機を通して通過させ、そして4時間にわたって貯蔵槽に戻す。それからこの生成物を濾過し、そして洗浄し、そして慣用の方法で乾燥させる。平均粒径=0.06μm;D50<0.05μm、D90<0.07μm、及び狭い粒径分布(分布係数(D10+D90)/D50<1.2)を有する、Y(PV)O4:Eu発光体が得られる。湿式粉砕後に得られるY(PV)O4:Eu発光体は、最初の未加工のY(PV)O4:Eu発光体の発光の60%を示す。
【0095】
図1aは、未加工のY(PV)O4:Eu発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【0096】
図1bは、湿式粉砕後に得られる、Y(PV)O4:Eu発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【0097】
実施例2
未加工のMg8Ge2112:Mn発光体(平均粒径=7μm;D50<6.5μm)200gを貯蔵槽に流し込み、水中でスラリーにする(懸濁液の全質量:1000g)。容量の約90%にまで、直径0.3〜0.4mmの混合酸化ジルコニウム粉砕要素が充填された、円筒形の湿式粉砕機(Netzsch LabStar(登録商標))を介して、12m・s-1の半径速度でスラリーを通過させる。この混合物を、再循環式で粉砕機を通して通過させ、そして4時間にわたって貯蔵槽に戻す。それからこの生成物を濾過し、そして洗浄し、そして真空炉中で70℃で乾燥させる。炉内で850℃で焼成後、平均粒径=0.07μm;D50<0.08μm、D90<0.10μm、及び狭い粒径分布(分布係数(D10+D90)/D50<1.2)を有する、Mg8Ge211:Mnの発光体が得られる。湿式粉砕後に得られるMg8Ge2112:Mn:Eu発光体は、最初の未加工のMg8Ge2112:Mn:Eu発光体の発光91%を示す。
【0098】
図2aは、未加工のMg8Ge2112:Mn発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【0099】
図2bは、湿式粉砕後に得られるMg8Ge2112:Mn発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【0100】
実施例3
未加工のBaMgAl1017:Eu,Mn発光体(Eu>Mn、平均粒径=6.4μm;D50<6μm)200gを貯蔵槽に流し込み、水中でスラリーにする(懸濁液の全質量:1000g)。容量の約90%にまで、直径0.3〜0.4mmの混合酸化ジルコニウム粉砕要素が充填された、円筒形の湿式粉砕機(Netzsch LabStar(登録商標))を介して、12m・s-1の半径速度でスラリーを通過させる。この混合物を、再循環式で粉砕機を通して通過させ、そして4時間にわたって貯蔵槽に戻す。それからこの生成物を濾過し、そして洗浄し、そして真空炉中で70℃で乾燥させる。平均粒径=0.09μm;D50<0.1μm、D90<0.12μm、及び狭い粒径分布(分布係数(D10+D90)/D50<1.2)を有する、BaMgAl1017:Eu,Mnの発光体が得られる。湿式粉砕後に得られるBaMgAl1017:Eu,Mn発光体は、最初の未加工のBaMgAl1017:Eu,Mn発光体の発光の50%を示す。
【0101】
図3aは、未加工のBaMgAl1017:Eu,Mn発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【0102】
図3bは、湿式粉砕後に得られるBaMgAl1017:Eu,Mn発光体の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【0103】
実施例4
未加工のY(PV)O4:Eu発光体(平均粒径=8.0μm;D50<7μm)200gを貯蔵槽に流し込み、水中でスラリーにする(懸濁液の全質量:1000g)。容量の約90%にまで、直径0.3〜0.4mmの混合酸化ジルコニウム粉砕要素が充填された、円筒形の湿式粉砕機(Netzsch LabStar)を介して、12m・s-1の半径速度でスラリーを通過させる。この混合物を、再循環式で粉砕機を通して通過させ、そして1時間にわたって貯蔵槽に戻す。それからこの生成物を濾過し、そして洗浄し、そして慣用の方法で乾燥させる。平均粒径=0.13μm;D50<0.15μm、D90<0.18μm、及び狭い粒径分布(分布係数(D10+D90)/D50<1.2)を有する、Y(PV)O4:Eu発光体が得られる。湿式粉砕後に得られるY(PV)O4:Eu発光体は、最初の未加工のY(PV)O4:Eu発光体の発光の70%を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式粉砕により得られる無機発光体であって、この際に粉砕機を、粉砕スペース1lあたり>0.5kWの出力密度で稼働させ、かつ湿式粉砕された無機発光体の発光(蛍光、又はリン光)強度が、粉砕工程で開始材料として使用される無機発光体の発光強度の少なくとも約50%である、無機発光体。
【請求項2】
前記無機発光体が、D90≦5μmの粒径分布を有する、請求項1に記載の無機発光体。
【請求項3】
粒子の少なくとも約90質量%、及びより好ましくは粒子の少なくとも約95質量%が、平均粒径の2倍よりも大きくない、請求項1に記載の無機発光体。
【請求項4】
粒子の少なくとも約90質量%が、平均粒径の約1.5倍よりも大きくない、請求項3に記載の無機発光体。
【請求項5】
前記発光体粒子が、分布係数(D10+D90)/D50<1.2により特徴付けられる、請求項1に記載の無機発光体。
【請求項6】
無機発光体の平均粒径及び/又はD50が、0.4μm未満、特に0.2μm未満である、請求項1に記載の無機発光体。
【請求項7】
前記無機発光体が、

又は

である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の無機発光体。
【請求項8】
a)液体、特に水及び選択的に中性の極性液体中で未加工の無機発光体の懸濁液を形成する工程、及び
b)粉砕スペース1lあたり>0.5kWの出力密度で粉砕機を稼働させて、前記混合物を湿式粉砕する工程、及び
c)選択的に、粉砕された発光体を焼成する工程
を含む、請求項1に記載の無機発光体の製造方法。
【請求項9】
前記中性の極性液体が、アセトアミド、ホルムアミド、メチルアセトアミド、メチルホルムアミド、カプロラクタム、バレロラクタム、1,1,2,2−テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、メタノール、エチレンカーボネート、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、及びN−メチルピロリドン、好ましくはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、又はN−メチルピロリドン、特にN−メチルピロリドンであるか、又は複数の中性液体から成る混合物であって、全体で極性が同じものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
中性の極性液体の量が、液体及び水の全量に対して1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%、特に5〜10質量%である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記無機発光体が、D90≦5μmの粒径分布を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の無機発光体を含む、偽造防止用製品。
【請求項13】
塗料、ラッカー、印刷インキ、粉末コーティング、紙コーティング、プラスチック、化粧品、インク、セラミック用及びガラス用光沢剤、食品用及び薬品用の装飾的適用、及びセキュリティ強化機構での、請求項1から7までのいずれか1項に記載の無機発光体の使用。
【請求項14】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の無機発光体を含む、塗料、ラッカー、印刷インキ、粉末コーティング、紙コーティング、プラスチック、化粧品、インク、セラミック用及びガラス用光沢剤。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2011−506661(P2011−506661A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537391(P2010−537391)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066843
【国際公開番号】WO2009/077350
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】