説明

湿式選別装置

【課題】設備を簡素化して洗浄水量を低減しながらも、粉粒体を分級して、水溶性成分や重金属等の障害物質を効率的に除去することができる湿式選別装置を提供する
【解決手段】脈動発生装置30を備えたU字管形状の洗浄槽20で、粉粒状の処理対象物を洗浄しながら沈降速度差によって微粒物と中粒物に分離して、上層の洗浄水を微粒物とともに排水部となる溢流堰26から排水し、洗浄槽20に沈降した中粒物をバケット式のコンベア装置29で槽外に搬出するように構成し、バケットの底部に水切り用の開口を形成し、水切り後の処理対象物にリンス水を噴射供給する給水ノズルを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗大物等が混入した粉粒状の処理対象物を洗浄して該処理対象物に混入する障害物質を除去する湿式選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属類、ガラ類(石やガラス片等)さらには有機質材(ゴム、プラスチック、紙、繊維、木片等)といった粗大物が混入した灰や土壌等の粉粒体を資源化して再利用する場合、粗大物を分離除去するとともに資源化に障害となる様々な水溶性成分や重金属等の障害物質を除去する必要がある。
【0003】
例えば、一般に都市ゴミ焼却施設等で発生した焼却灰等の焼却残渣をセメント原料として再利用する場合には、焼却残渣から金属類、ガラ類、有機質材等の粗大物を分離除去するとともに、焼却灰に付着した塩分等を除去する必要がある。
【0004】
また、雑多な廃棄物が不法投棄された汚染土壌を浄化して再利用する場合には、土壌を掘削して金属類、ガラ類、有機質材等の粗大物を分離除去するとともに、土砂に付着した重金属等の有害成分を除去する必要がある。
【0005】
従来からこのような処理対象物に対しては、磁選機や振動篩で粗大物を除去した後に、粉粒体を水で洗浄する方法が採用されていたが、処理対象物の含水量が多いと金属類に粉粒体が付着するために磁選機で良好に選別できず、振動篩の篩目が有機質材で閉塞されるために頻繁にメンテナンスが必要になるといった問題があり、また、選別された粗大物に付着した粉粒体を別工程で洗浄しなければならず、設備が増えるばかりか、洗浄のための水量が増し、洗浄装置の後段に大型の排水処理設備を設置しなければならないという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1には、都市ごみ焼却灰中からステンレス等の異物と、含まれる塩素分とを同時に除去することを目的として、水槽内の水中に保持された都市ごみ焼却灰を上下に躍動させて、この都市ごみ焼却灰中の塩素分を水洗すると同時に、比重の差を利用した比重選別により、この都市ごみ焼却灰のうち、比較的比重の小さい灰成分を分離する一方、比較的比重の大きな金属類成分を除去する都市ごみ焼却灰の塩素及び金属類等の除去方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、焼却灰から粗粒子と微粒子を速やかに分離し、微粒子には充分に時間と適当な攪拌を与えて脱塩作用を完結させる灰の洗浄処理方法として、2段以上の複数の機械式湿式分級機を直列に設置し、前段の分級機に焼却灰を入れ後段の分級機に洗浄水を加えて洗浄脱水作用と粒子分級作用をしながら、焼却灰は前段から後段へ水は後段から前段へ向流的に接触移動させ、粗粒の焼却灰は後段から系外に取り出し、微粒の焼却灰を含んだ洗浄液は前段から取り出し、その後、洗浄液と微粒とを分離させ脱塩された焼却灰と含塩洗浄液を得る灰の洗浄処理方法が提案されている。
【特許文献1】特開平11−90408号公報
【特許文献2】特開2003−80199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に記載されているように、様々な粒径分布を有する焼却灰や土壌では、粒径によって塩類や重金属等の障害物質の汚染濃度が異なるため、同一の水槽内で均一に洗浄するのは極めて困難である。
【0009】
粉粒状の処理対象物に混入する障害物質の含有量は、粒径が小さいほど多いという傾向があり、粒径の小さなものと大きなものとを分離して洗浄した方が効率的なためである。
【0010】
本発明は上述した問題点に鑑み、設備を簡素化して洗浄水量を低減しながらも、粉粒体を分級して、水溶性成分や重金属等の障害物質を効率的に除去することができる湿式選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による湿式選別装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、洗浄槽に投入された処理対象物を洗浄水で洗浄しながら沈降速度差によって微粒物と微粒物より粒径が大きい中粒物とに分離し、分離された微粒物を上層の洗浄水とともに排水部から排出し、前記洗浄槽に沈降した中粒物をバケット式のコンベア装置により槽外に搬出するように構成された湿式選別装置であって、前記バケット式のコンベア装置のバケットの底部に水切り用の開口が形成され、水切り後の処理対象物にリンス水を噴射供給する給水ノズルを備えている点にある。
【0012】
洗浄槽に粉粒状の処理対象物が投入されると、粉粒体は洗浄水で洗浄されながら解され、洗浄水の中を沈降していく。このとき、粒径が大きな粉粒体は粒径が小さな粉粒体より沈降速度が速いため、水面付近で浮遊する粒径が小さな粉粒体と、比較的早期に沈降する粒径が大きな粉粒体との二層に分離される。そのため、粒径が小さな粉粒体は上層の洗浄水とともに排水部から槽外に流出され、粒径が大きな粉粒体は沈降する。
【0013】
その後、洗浄槽の底部に沈降した粒径の大きな粉粒体がバケットによって掻き揚げられ槽外に搬出される過程で、障害物質の濃度が高い洗浄水が開孔から排水されるため、粉粒体に含まれる障害物質の濃度を低減させることができる。更に、水切り後の処理対象物に給水ノズルからリンス水を噴射供給することにより、粉粒体の間隙に残存する障害物質の濃度が高い洗浄水をリンス水で置換することができ、粉粒体に含まれる障害物質の濃度をさらに低減させることができる。

【0014】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記洗浄槽内の洗浄水の塩素イオン濃度または電気伝導度に基づいて、前記給水ノズルから供給されるリンス水の水量が調整される点にある。
【0015】
上述の構成によれば、塩素イオン濃度または電気伝導度が高いときには、リンス水の水量を増加して中粒物に含まれる塩素含有量の更なる低減を図ることができる。
【0016】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記水切り用の開口は、孔径3mmから5mmの範囲、底面の開孔率15%から25%の範囲に形成されている点にある。
【0017】
上述の構成によれば、良好な水切り特性が得られる。
【0018】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記洗浄槽の内部から槽内上方に向けて洗浄水を供給する注水部を備えている点にある。
【0019】
洗浄槽に充填された洗浄水の一部が排水部から流出するため、補充する必要がある。そのため、洗浄槽の内部から槽内に洗浄水を供給する注水部を設けることにより、洗浄水を補充することができる。このとき、槽内上方に向けて洗浄水を供給することにより、槽内を沈降する粉粒体に対向する洗浄水の流れが形成され、団子状に固まって沈降する粉粒体が解され、障害物質の含有量が多い粒径の小さな粉粒体が、洗浄水の流れに沿って洗浄されながら上方に浮遊し、排水部から排出されるようになる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した通り、本発明によれば、設備を簡素化して洗浄水量を低減しながらも、粉粒体を分級して、水溶性成分や重金属等の障害物質を効率的に除去することができる湿式選別装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明による湿式選別装置が粉粒体処理システム1に適用される例を図面に基づいて説明する。ここでは、湿式選別装置により、金属類、ガラ類(石やガラス片等)さらには有機質材(ゴム、プラスチック、紙、繊維、木片等)といった粗大物が混入した粒径200mm以下の焼却灰を洗浄選別する場合を説明する。
【0022】
焼却灰はその粒径により塩素含有量が異なり、粒径が小さいほど塩素含有量が多い。本粉粒体処理システムでは、塩素含有量に基づいて粒径2mm以上の粗粒物(以下、「粗粒灰」とも記す。)と、粒径0.15mm〜2mmの細粒物(以下、「細粒灰」とも記す。)と、0.15mmより小径の微粒物(以下、「微粒灰」とも記す。)に分級し、夫々において洗浄条件を変えることで効率的に脱塩素処理が行なわれる。
【0023】
図7に示すように、粉粒体処理システム1は、処理対象物を洗浄しながら粗大物と粉粒体とに選別するとともに粉粒体を微粒物と微粒物より粒径が大きい中粒物(粗粒灰及び細粒灰)に分級する湿式選別装置2と、湿式選別装置2で分級された微粒物を再洗浄する第一の再洗浄手段4と、湿式選別装置2で分級された中粒物を再洗浄する第二の再洗浄手段6を備えている。
【0024】
さらに、第一の再洗浄手段4から排出された洗浄排水を前記湿式選別装置2へ返送する第一の循環経路8と、第二の再洗浄手段6から排出された洗浄排水を第二の再洗浄手段へ返送する第二の循環経路9を備え、それぞれの循環経路を介して返送された洗浄排水を洗浄水として再利用するように構成されている。
【0025】
図1から図3に示すように、湿式選別装置2は、洗浄水が充填された側面視U字管形状の洗浄槽20と、洗浄槽20の一方の開口部20aに処理対象物を投入する投入部としての振動式のフィーダ24と、洗浄槽20の他方の開口部20bから洗浄水を脈動させる脈動発生装置30と、フィーダ24で投入された粉粒状の処理対象物に含まれる粗大物を洗浄槽20内で洗浄して、粗大物のうち重量物を分離搬出するコンベア装置22と、洗浄槽20の上層の洗浄水を粗大物のうち軽量物とともに重量物の搬出方向と対向する方向に排水する排水部としての溢流堰26と、洗浄槽20の底部20dに沈降した処理対象物を洗浄槽20の外部に搬出する複数のバケット29aを有するコンベア装置29等を備えている。
【0026】
コンベア装置22は、駆動側プーリ22a及び従動側プーリ22bに網目状の孔部を備えた搬送面を備えた無端状のコンベアベルト22cが巻き付けられ、コンベアベルト22cの一部が洗浄槽20の一方の開口部20aの一端側から他端側にかけて浸漬するように配置されている。
【0027】
洗浄槽20の一方の開口部20aは、正面視で他方の開口部20bよりも横方向に延出形成され、その上部にはコンベアベルト22cの移動方向(図1中、右から左への方向)とは逆方向に向けて水流を形成する給水ノズル23a、23b、23c、23dが配置されている。
【0028】
尚、洗浄槽20の形状は、側面視U字管形状に限らず、側面視V字管形状となるように構成してもよい。また、一方の開口部20aと他方の開口部20bの横方向の長さが等しい形状に構成してもよい。さらに、図3に示すように、処理対象物が沈降する底部20dが、側面視U字管形状の洗浄槽20から鉛直壁で下方に延出形成されるものに限らず、図3に破線で示すように、上方ほど幅広となる傾斜壁で下方に延出形成されるものであってもよい。
【0029】
また、洗浄槽20の形状はU字管形状に構成されるものに限らず、上部が二つに分岐し下部が連結された管形状であれば、V字管形状やY字管形状であってもよい。
【0030】
給水ノズル23a、23b、23c、23dからの噴射水により形成される水流の下流側には、上層の洗浄水を排水する溢流堰26が設けられ、その上方には、処理対象物を搬送するベルトコンベア装置36と、ベルトコンベア装置36によって搬送された処理対象物を洗浄槽20に投入する振動式のフィーダ24が配置されている。
【0031】
さらに、洗浄槽20は、コンベアベルト22cの延出方向に沿って、側面視U字状の隔壁20cにより三領域に分割され、一方の開口部20a側に延出した隔壁20cの上縁より上方の水面近傍で処理対象物が分離される分離領域が形成されている。
【0032】
脈動発生装置30は、洗浄槽20の他方の開口部20bに設置され、隔壁20cで仕切られた三領域の夫々に対応して配置された、ベローズ37、ロッド32、プランジャ31及びエキセントリックシーブ33と、各エキセントリックシーブ33の回転軸に連結された単一のモータ34で構成されている。
【0033】
モータ34の回転数を制御するインバータ装置が設けられ、モータ34の回転に伴なってエキセントリックシーブ33が回転し、ロッド32を介してプランジャ31が上下動する。プランジャ31の上下動に伴なってベローズ37が伸縮作動することにより、洗浄槽21の一方の開口部20aの水面が上下方向に脈動する。
【0034】
尚、脈動発生装置30に、上下動するプランジャ31のストローク長を調整するストローク長調整機構(図示せず)を備えることにより、脈動する液面の高さを変更することができ、後述の比重分離及び沈降速度による粉流体の分離の精度が調整可能になる。
【0035】
ストローク長調整機構は、プランジャ31の取付け位置を上下方向に調整する機構、ロッド32の長さを調整する機構、またはロッド32のエキセントリックシーブ33への取付け位置をエキセントリックシーブ33の径方向に調整する機構の何れかまたはそれらを組合せることにより実現できる。
【0036】
三領域に対応して設けられた三つのエキセントリックシーブ33は、夫々に異なる偏心位置で回転軸35が取付けられ、夫々の領域で位相が異なる脈動が付与される。
【0037】
フィーダ24から洗浄水槽20に投入された処理対象物は、洗浄水の上下方向の脈動により分離領域で分散され、洗浄されながら比重分離される。
【0038】
灰に混入した粗大物のうち比重の大きな金属類、ガラ類(石やガラス片等)は、付着した灰が洗浄水によって除去されながら分離領域で沈降し、コンベアベルト22cによって粗大物搬出口25から搬出され、比重の小さな有機質材(ゴム、プラスチック、紙、繊維、木片等)は、水面に浮上して給水ノズル23a、23b、23c、23dからの噴射水による水流に従って溢流堰26から搬出される。尚、溢流堰26からの排水は排水樋27を介して水切りスクリーン28に導かれる。
【0039】
即ち、湿式選別装置2では、処理対象物に混入した粗大物が、比重の大きい粗大物と比重の小さい粗大物に選別される選別工程が実行される。
【0040】
また、図4に示すように、洗浄槽20に投入された焼却灰は、分離領域で洗浄水の上下方向の脈動により分散され、沈降速度が大きく上方向の脈流に抗して沈降する中粒物(粗粒灰と細粒灰)Aが水槽内に沈降し、沈降速度の小さい微粒灰Bが給水ノズル23a、23b、23c、23dによる水流に従って洗浄水中を浮遊して溢流堰26から排水樋27に流出する。
【0041】
即ち、湿式選別装置2では、洗浄槽20内での沈降速度差によって微粒物と微粒物より粒径が大きい中粒物とに分離され、微粒物が上層の洗浄水とともに溢流堰26から搬出され、中粒物が洗浄槽20に沈降する分級工程が実行される。
【0042】
このような比重選別工程及び分級工程の過程で、粗大物や粉粒体に付着した塩分等の障害物質が洗浄除去される。
【0043】
図1、図2及び図4に示すように、フィーダ24と溢流堰26との間に、洗浄液を噴射供給する給水ノズル23eが配置され、フィーダ24から投入された焼却灰が沈降速度差により二層に分離するまでの間に、溢流堰26に向けて流れる焼却灰に向けて給水ノズル23eから洗浄水を噴射供給するように構成されている。
【0044】
例えば、粒径が大きな灰であっても半乾きの状態で投入されると十分に沈降せずに溢流堰から流出する虞があるが、給水ノズル23eから焼却灰に洗浄液を噴射供給することにより、粒径が大きな中粒物を速やかに沈降させることができる。また、中粒物と微粒物が団子状に固まった焼却灰であっても、給水ノズル23eから噴射供給される洗浄水により速やかに解され、沈降速度による分離が促される。
【0045】
従って、フィーダ24と溢流堰26との距離をより短く設定することができ、装置をより小型化することができるようになる。
【0046】
排水樋27に流出した溢流水は、水切りスクリーン28によって有機質材が除去された後に微粒灰とともに第一の再洗浄装置4(図7参照)に送られる。この時、水切りスクリーン28部では、洗浄水を噴霧して有機質材を洗浄してもよい。
【0047】
図3及び図6に示すように、洗浄槽20の底部20dに沈降した中粒物は、底部に複数の小径の開口29bが形成された複数のバケット29aが無限軌道に沿って並設されたバケットコンベア機構29によって水切りされながら槽外に搬出され、第二の再洗浄手段6(図7参照)によってさらに洗浄処理される。
【0048】
搬送中にバケット29aで掻き揚げられた中粒物と洗浄水のうち、主に洗浄水が開口29bから流出することにより、洗浄水由来の塩素の含有量を低減させた中粒物を次工程に供給することができる。
【0049】
孔径3mmから5mmの範囲で、底面の開孔率15%から25%の範囲で開口29bを形成すると、搬出される中粒物の含水率が50%程度となり、良好な水切り特性が得られる。
【0050】
例えば、開口29bが3mmの角孔で底面の開孔率25%となるように形成された織網でバケット29aの底部を構成すると、中粒物の含水率が52%となり、開口29bがφ3mmの丸孔で底面の開孔率17%となるように形成された打ち抜き板でバケット29aの底部を構成すると、中粒物の含水率が約50%と良好な水切り特性が得られる。尚、開口29bが1mmの角孔で底面の開孔率22%となるように形成された織網でバケット29aの底部を構成すると、バケット29aの中粒物に水溜りが形成され、水抜きができない。
【0051】
さらに、図6(b)に示すように、バケット式のコンベア装置29には、水切り後の中粒物にリンス水を噴射供給する給水ノズル29cを備え、中粒物の間隙に残存する塩素の濃度が高い洗浄水をリンス水で置換するように構成されている。尚、リンス水は、第二循環経路9を経由した洗浄排水が好適に用いられるが、新規水が用いられるものであってもよい。
【0052】
つまり、洗浄槽20の底部20dに沈降した粒径の大きな中粒物がバケット29aによって掻き揚げられ槽外に搬出される過程で、障害物質の濃度が高い洗浄水が開孔から排水され、更に、水切り後の処理対象物に給水ノズル29cからリンス水を噴射供給することにより、粉粒体に含まれる障害物質の濃度を大きく低減させることができる。
【0053】
洗浄槽20に充填された洗浄水の塩素イオン濃度または電気伝導度を計測するセンサを洗浄槽20内に配置して、当該センサの検出値に基づいて、給水ノズル29cから噴射供給するリンス水の水量を調整することが好ましい。塩素イオン濃度または電気伝導度が高いときには、リンス水の水量を増加して中粒物に含まれる塩素含有量の更なる低減を図ることができる。
【0054】
溢流堰26から流出する洗浄水は、第一の循環経路9(図7参照)を介して貯留槽100に貯水され、その後、上述の給水ノズル23a、23b、23c、23d、23e、及び、洗浄槽20の底部近傍に配置された給水ノズル20eを介して洗浄槽20に循環される。
【0055】
給水ノズル20eからの洗浄水の噴射方向は、処理対象物が投入される一方の開口部20aに向けられている。流量調整可能なポンプを介して給水ノズル20eにより上方に噴射供給された洗浄水は、槽内を沈降する粉粒体に対向する洗浄水の流れを形成し、団子状に固まって沈降する粉粒体が解され、障害物質の含有量が多い粒径の小さな粉粒体が、洗浄水の流れに沿って洗浄されながら上方に浮遊し、溢流堰26から排出される。即ち、ポンプと給水ノズル20eにより洗浄槽20の内部から槽内上方に向けて洗浄水を供給する注水部が構成されている。
【0056】
尚、第一の循環経路8から供給される再洗浄水を給水ノズル23a、23b、23c、23d、23eを介して供給するルートと、給水ノズル20eを介して供給するルートの夫々のルートを介した再洗浄水の供給比率を調整することが好ましい。給水ノズル20eから供給する比率を調整し、洗浄槽20の上昇流の速度を調整することによって、粉粒体の沈降速度を制御して分級する粒径を設定することも可能となる。
【0057】
コンベア装置22のコンベアベルト22cは、目幅が5から15mmの織網で構成され、洗浄槽20内で、粗大物として沈降するボルト類、金属片、ガラス片等の不適物を受け止めるとともに、網目から中粒物を底部に向けて沈降するように通過させる。
【0058】
例えば、目幅が10mmの角孔を開口率70%となるように、線径2mmの鋼線で構成した織網を好適に用いることができる。目幅が5mmより小さくなると網目の閉塞により、粗大物と中粒物を分離できなくなり、15mmを超えると粗大物が網目を通り抜けることが多く、中粒物に対するその後の洗浄処理に不都合を来たす。
【0059】
また、打ち抜き網では、強度を確保するために開口率が制限され、中粒物が網上に残存するため、排出された金属類に灰が再付着して、資源化が妨げられるという不都合がある。
【0060】
図1、図3及び図5に示すように、洗浄槽20内で粗大物を受け止め、粗大物搬出口25で粗大物が離脱されたコンベアベルト22cは、洗浄槽20の外部に設けられた清掃機構21により清掃され、網目に詰った金属類等が除去される。
【0061】
清掃機構21は、多数の細い鋼線が支持部に固定されたブラシで構成され、コンベアベルト22cの移動に伴なってコンベアベルト22cの裏面とブラシが摺動することにより、網目に詰った金属類等が落下除去される。
【0062】
コンベアベルト22cの下方にはホッパまたはシュート11が設けられ、コンベアベルト22cから自由落下した粗大物や、清掃機構21により除去された粗大物が当該ホッパまたはシュート11に落下し、その下部に配置された粗大物搬送用のコンベア装置12により、粗大物搬出口25で離脱した粗大物とともに、図7に示す金属回収部10に搬送されて、金属回収部10に備えた磁選機により金属とガラ類に分離して回収される。
【0063】
また、図8に示すように、粗大物搬出口25の上方であって、駆動側プーリ22aの下流側に清掃機構21を設けることにより、網目に詰った金属類等を粗大物搬出口25から落下させるように構成してもよい。
【0064】
図7に示すように、水切りスクリーン28を経た溢流水に含まれる微粒物を洗浄する第一の再洗浄手段4が設けられている。以下、詳述する。
【0065】
水切りスクリーン28を経た溢流水が必要に応じて設けた中継槽40に蓄積され、攪拌ポンプにより濃度を均一に攪拌され、溢流水に含まれる微粒灰がポンプにより濃縮装置42としてのシックナーに送られて濃縮される。尚、濃縮装置42として、湿式サイクロン、ベルト濃縮機、遠心濃縮機等の公知の装置を用いることもできる。また、中継槽40には硫酸バンド等の凝集剤、pH調整剤、キレート剤等の薬品41を添加してもよい。
【0066】
前記濃縮された微粒灰は、シックナーの底部から引き抜かれ、中継槽43に送られて給水槽101から供給される新たな洗浄水で攪拌洗浄され、その後、脱水洗浄装置44で脱水洗浄されセメント原料に供される。尚、中継槽43を設けることなく、シックナーで濃縮された微粒灰を直接脱水洗浄装置44へ送り、洗浄水を注入しながら脱水してもよい。このような脱水洗浄装置44として、フィルタプレス、遠心分離脱水機、ベルト式脱水機等を用いることができる。洗浄水の供給量は、シックナーの上澄み液の塩分濃度に応じて調整され、塩分濃度が高ければ洗浄水の供給量が増加される。
【0067】
尚、濃縮装置42を設けず、微粒灰を中継槽40から直接脱水洗浄装置44へ送ってもよい。
【0068】
脱水洗浄装置44からの洗浄排水は中継槽45に排水され、最終的に貯留槽46に貯水される。
【0069】
貯留槽46には高さが異なる二枚の堰で三室に区分され、高い方の堰を溢れた排水が最終の貯留槽47に貯水され、水処理装置で浄化処理された後に系外に排水される。
【0070】
濃縮装置42及び脱水洗浄装置44によって分離され貯留槽46に貯水された洗浄排水は,ポンプによって第一の循環経路8を介して貯留槽100に返送され、貯留槽100から給水ノズル23a、23b、23c、23d、23e、20eを介して洗浄槽20に再供給されて再洗浄水として利用される。
【0071】
また、濃縮装置42によって分離された洗浄排水は、障害物質の濃度が高いので、優先的に系外へ排出するため、貯留槽46を介さず貯留槽47へ送り、洗浄水が不足した場合のみ貯留槽46へ送り再洗浄水として利用する構成であってもよい。
【0072】
微粒灰の塩分含有量は、中粒灰の塩分含有量よりも多く、第一の再洗浄手段4からの洗浄排水の塩分含有量は第二の再洗浄手段6の洗浄排水よりも高いため、第二の再洗浄手段6とは分離して湿式選別手段2へ返送するのである。
【0073】
このようにして、湿式選別装置2及び第一の再洗浄手段4では、塩分濃度が高い洗浄排水で洗浄処理されるが、濃縮装置42を経ることにより脱水洗浄装置44に供給される新たな洗浄水(リンス水)の量は極めて僅かに抑えることができる。
【0074】
第二の再洗浄手段6は、バケットコンベア機構29によって槽外に搬出された中粒物を粗粒灰と細粒灰に分級する分級装置61と、分級装置61で分級された細粒物を再洗浄する洗浄装置62を備えている。分級装置61は湿式の振動篩装置で構成され、バケットコンベア機構29からシュート60を介して落下供給される。尚、分級装置61として、スクリーン装置を用いることができる。
【0075】
シュート60及び分級装置61には、第二の循環経路9を介して循環供給された塩分濃度が低い洗浄排水が噴霧供給されるとともに、分級装置61の下流側では給水槽101から新たな洗浄水が噴霧供給され、分級された粗粒灰はそのまま水切りしてセメント原料として供される。粒径が大きな粗粒灰には付着塩類が僅かであるため、それほど洗浄する必要が無いのである。
【0076】
洗浄装置62は、分級装置61を経た細粒物及び洗浄排水を貯留する中継槽63と、中継槽63で再度攪拌洗浄された細粒灰を固液分離する固液分離機64としての湿式サイクロンと、湿式サイクロンで固液分離された細粒灰を洗浄する洗浄槽65を備えている。
【0077】
灰沈降槽で沈降した細粒灰は、灰掻揚げコンベア66で搬出されながら給水槽101から供給される新たな洗浄水(リンス水)で濯がれて水切りされた後にセメント材料として供される。尚、洗浄槽65の溢流水は中継槽63に循環供給される。
【0078】
湿式サイクロンで分離された洗浄排水は、洗浄水として上述したシュート60及び分級装置61に循環供給され、余剰の洗浄排水が貯留槽100に貯水された後に、湿式選別装置2の洗浄水として供給される。湿式サイクロンで分離された洗浄排水には湿式選別装置2で十分に分離されなかった微粒灰が含まれており、このような微粒灰は第二循環経路9を経て、再度、湿式選別装置2で分級される。尚、固液分離機64は湿式サイクロンに限られるものではなく、公知の脱水機、沈殿槽等により細粒灰と洗浄排水を分離する構成であってもよい。
【0079】
第二の循環経路9は、洗浄槽65からの洗浄排水を中継槽63へ返送する循環経路91と、固液分離機64の排水を分級装置61へ返送する循環経路92を備えている。
【0080】
つまり、本発明による粉粒体処理システムは、微粒物を再洗浄する第一の再洗浄手段と、中粒物を再洗浄する第二の再洗浄手段と、第一の再洗浄手段から排出された洗浄排水を湿式選別装置へ返送する第一の循環経路と、第二の再洗浄手段から排出された洗浄排水を第二の再洗浄手段へ返送する第二の循環経路を備え、それぞれの循環経路を介して返送された洗浄排水を洗浄水として再利用するように構成されている。
【0081】
従って、設備を簡素化して洗浄水量を低減しながらも、処理対象物に混在する粗大物を洗浄分離除去し、洗浄排水の循環経路を二系統に分離することで、粉粒体から水溶性成分や重金属等の障害物質を効率的に除去することができるようになる。
【0082】
本発明による湿式選別装置は、不法投棄された埋立土壌等、重金属類等により汚染された土壌であって、上述したような粗大物が混入した土壌の粉粒体を資源化して再利用する場合にも適用が可能である。この場合、本発明により土砂から重金属類の汚染物質が洗浄除去される。
【0083】
以上説明した湿式選別装置の具体的構成は実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明による湿式選別装置を正面から眺めた説明図
【図2】同湿式選別装置の平面図
【図3】同湿式選別装置を側面から眺めた要部説明図
【図4】同湿式選別装置の洗浄槽の要部説明図
【図5】同湿式選別装置の搬送装置の要部説明図
【図6】バケット式コンベア装置の要部説明図
【図7】粉粒体処理システムのブロック説明図
【図8】別実施形態を示し、同湿式選別装置の搬送装置の要部説明図
【符号の説明】
【0085】
1:粉粒体処理システム
2:湿式選別装置
4:第一の再洗浄手段
6:第二の再洗浄手段
8:第一の循環経路
9:第二の循環経路
20:洗浄槽
22:コンベア装置
22a:コンベアベルト
23a、23b、23c、23d、23e、29c:給水ノズル
24:フィーダ
26:溢流堰
29:バケット式のコンベア装置
30:脈動発生装置
40:中継槽
42:濃縮装置(シックナー)
43:中継槽
44:脱水洗浄装置
46,47:貯留槽
61:分級装置
62:洗浄装置
63:中継槽
64:固液分離機(湿式サイクロン)
65:洗浄槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽に投入された処理対象物を洗浄水で洗浄しながら沈降速度差によって微粒物と微粒物より粒径が大きい中粒物とに分離し、分離された微粒物を上層の洗浄水とともに排水部から排出し、前記洗浄槽に沈降した中粒物をバケット式のコンベア装置により槽外に搬出するように構成された湿式選別装置であって、
前記バケット式のコンベア装置のバケットの底部に水切り用の開口が形成され、水切り後の処理対象物にリンス水を噴射供給する給水ノズルを備えている湿式選別装置。
【請求項2】
前記洗浄槽内の洗浄水の塩素イオン濃度または電気伝導度に基づいて、前記給水ノズルから供給されるリンス水の水量が調整される請求項1記載の湿式選別装置。
【請求項3】
前記水切り用の開口は、孔径3mmから5mmの範囲、底面の開孔率15%から25%の範囲に形成されている請求項1または2記載の湿式選別装置。
【請求項4】
前記洗浄槽の内部から槽内上方に向けて洗浄水を供給する注水部を備えている請求項1から3の何れかに記載の湿式選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115838(P2012−115838A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29643(P2012−29643)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【分割の表示】特願2008−54172(P2008−54172)の分割
【原出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】