説明

湿式電子写真印刷用紙

【課題】本発明の目的は、湿式電子写真方式での印刷時に、転写ドラムから紙への液体トナーの転移性、液体トナーの紙への定着性及び走行性が良好で、かつ、一般的な商業印刷にも好適に使用可能である安価な非塗工の普通紙タイプの湿式電子写真印刷用紙を供給することである。
【解決手段】本発明に係る湿式電子写真印刷用紙は、支持体が、パルプ及び填料を含有する非塗工の湿式電子写真印刷用紙において、湿式電子写真印刷用紙の少なくとも一方の面に、(条件1)に従って、プリズムの平坦面を押し当て、0.16mm未満の面積を有する微小非接触部を含む接触部と0.16mm以上の面積を有する非接触部とに分類したとき、測定部面積に対する非接触部の合計面積の割合を示す「非接触部の合計面積率(I)」が0.05%以上1.8%以下であり、かつ、厚さが70〜300μmである。
(条件1)押し圧3.4MPa及びクランピング時間0.02秒

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式電子写真印刷に用いられる印刷用紙に関する。さらに詳しくは、液体トナーを使った電子写真方式を用いて印刷する時に、転写ドラムから紙への液体トナーの転移性、液体トナーの紙への定着性及び走行性が良好な非塗工の普通紙タイプの紙又は板紙湿式電子写真印刷用紙であり、かつ、オフセット印刷方式又は凸版印刷方式での印刷にも好適に使用可能な印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
商業印刷の主体は、キャスト紙、アート紙、コート紙、微塗工紙若しくは非塗工の普通紙タイプの紙又は板紙を用いたオフセット印刷である。しかし、近年は多品種小ロット印刷に対応するため、乾式電子写真方式、湿式電子写真方式又はインクジェット方式といった可変情報を扱えるオンデマンド印刷方式が開発されてきた。これらのオンデマンド印刷方式の中でも、湿式電子写真方式は、オフセット印刷に近い画像が得られるため、急速に需要が伸びてきている。湿式電子写真印刷の分野が、今後更に成長するためには、次に述べる用紙の適性の他に、専用紙ではなく、安価で入手し易い一般的な商業印刷にも好適に使用可能な用紙が使用できることが重要な点となる。
【0003】
湿式電子写真方式は、感光体上に現像された液体トナーを転写ドラムへ転移させ、液体トナー中の溶剤を揮発させ、圧力などによって転写ドラムから紙へ転写して印刷を行う。湿式電子写真印刷用紙には、液体トナーの転写ドラムから用紙への転移性、液体トナーの定着性及び用紙の走行性が求められる。液体トナーの転移性が不足すると、印刷時の操業性悪化又は1枚毎に印刷情報を変える場合に汚れが発生するなどの問題が生じる。液体トナーの定着性が弱いと、印刷後の印刷面同士の擦れなどによって、印刷面からトナーが欠落する場合がある。
【0004】
液体トナーの定着性を高める方法として、用紙にイミン系化合物を塗布するいわゆるサファイヤ処理が行われてきた。サファイヤ処理した用紙は、液体トナーの定着性には有効であるが、一般紙と異なり製造コストが高い、経時で性能が劣化する、変色するなどの問題点があった。
【0005】
そこで、サファイヤ処理を行わない普通紙タイプの湿式電子写真印刷用紙の提案がいくつかなされている。液体トナーの定着性を改善する目的で、パーカープリントサーフで測定した表面平滑性が4.7ミクロン以上であり、内添サイズ剤の種類を限定した用紙が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、液体トナーの定着性を改善する目的で、ガーレー透気度が200秒以上であり、ブリストー法吸収係数が3.2ml/m・ms1/2以下であり、且つパーカープリントサーフで測定した表面粗さが6.5〜10μmである用紙が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0006】
湿式電子写真方式では、用紙を枚葉の形態で供給することがある。枚葉の形態で供給する場合、乾式電子写真方式とは異なり、用紙の厚さが適正な範囲外であると、印刷機に適する曲がりが得られず、結果として転写ドラムから用紙が剥離する時の搬送不良又はデリバリー部の収納不良が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−171148号公報
【特許文献2】特開2001−75303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で得られた用紙は、液体トナーの定着性を満足するものではない。さらに、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを使用できないという問題がある。また、特許文献2のような200秒以上という高い透気度を有する用紙では、液体トナーのブランケットから紙への転移性が悪化するという問題が発生する。
【0009】
本発明の目的は、前述した問題点を解消し、液体トナーを使った電子写真方式を用いて印刷する時に、転写ドラムから紙への液体トナーの転移性、液体トナーの紙への定着性及び走行性が良好で、かつ、一般的な商業印刷のオフセット印刷方式又は凸版印刷方式での印刷にも好適に使用可能である安価な非塗工の普通紙タイプの湿式電子写真印刷用紙を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、用紙の表面の凹凸を特定の大きさに制限することによって、課題を達成できることを見出した。すなわち、本発明に係る湿式電子写真印刷用紙は、支持体が、パルプ及び填料を含有する非塗工の湿式電子写真印刷用紙において、該湿式電子写真印刷用紙の少なくとも一方の面に、(条件1)に従って、プリズムの平坦面を押し当て、0.16mm未満の面積を有する微小非接触部を含む接触部と0.16mm以上の面積を有する非接触部とに分類したとき、測定部面積に対する前記非接触部の合計面積の割合を示す「非接触部の合計面積率(I)」(以降、合計面積率(I)をMA値(I)ということもある。)が0.05%以上1.8%以下であり、かつ、厚さが70〜300μmであることを特徴とする。
(条件1)押し圧3.4MPa及びクランピング時間0.02秒
【0011】
本発明に係る湿式電子写真印刷用紙では、前記湿式電子写真印刷用紙の少なくとも一方の面に、(条件2)に従って、プリズムの平坦面を押し当て、0.16mm未満の面積を有する微小非接触部を含む接触部と0.16mm以上の面積を有する非接触部とに分類したとき、測定部面積に対する前記非接触部の合計面積の割合を示す「非接触部の合計面積率(II)」(以降、合計面積率(II)の値をMA値(II)ということもある。)が0.8%以下であることが好ましい。用紙と転写ドラムとを接触させる圧力を高くすることによって、画像再現性を更に向上させることができる。
(条件2)押し圧3.4MPa及びクランピング時間0.10秒
【0012】
本発明に係る湿式電子写真印刷用紙では、前記支持体の表面に、表面サイズ液を塗布し、該表面サイズ液が、澱粉系表面紙力増強剤、ポリビニアルコール系表面紙力増強剤又はポリアクリルアミド系表面紙力増強剤の少なくともいずれか一種を含むことが好ましい。オフセット印刷又は凸版印刷などの一般的な商業印刷に必要な表面強度を維持しつつ、液体トナーの転移性及び定着性を更に向上させることができる。
【0013】
本発明に係る湿式電子写真印刷用紙では、前記填料が、炭酸カルシウムを全填料の合計量に対して20〜100質量%含み、前記湿式電子写真印刷用紙の全質量を100質量%としたとき、灰分が4〜35質量%であり、かつ、炭酸カルシウムの含有量が4質量%以上であることが好ましい。液体トナーの定着性を更に向上させることができる。
【0014】
本発明に係る湿式電子写真印刷用紙では、前記パルプが、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)を含み、該LBKPのカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が、300〜600mlであることが好ましい。MA値(I)を適正な範囲に、容易に制御することができ、液体トナーの転移性及び定着性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る湿式電子写真印刷用紙では、前記パルプ中の機械パルプの配合割合が、20質量%以下であることが好ましい。MA値(I)を適正な範囲に、容易に制御することができ、液体トナーの転移性及び定着性を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る湿式電子写真印刷用紙では、密度(JIS P 8118:1998)が、0.77〜0.95g/cmであることが好ましい。MA値(I)を適正な範囲に、容易に制御することができ、液体トナーの転移性及び定着性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る湿式電子写真印刷用紙では、前記パルプ中の嵩高剤の配合割合が、0.2〜1.5質量%であることが好ましい。MA値(I)を適正な範囲に、容易に制御することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、液体トナーを使った電子写真方式を用いて印刷する時に、転写ドラムから紙への液体トナーの転移性、液体トナーの紙への定着性及び走行性が良好で、かつ、一般的な商業印刷のオフセット印刷方式又は凸版印刷方式での印刷にも好適に使用可能である安価な非塗工の普通紙タイプの湿式電子写真印刷用紙を供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0020】
本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙は、支持体が、パルプ及び填料を含有する非塗工の湿式電子写真印刷用紙において、湿式電子写真印刷用紙の少なくとも一方の面に、(条件1)に従って、プリズムの平坦面を押し当て、0.16mm未満の面積を有する微小非接触部を含む接触部と0.16mm以上の面積を有する非接触部とに分類したとき、測定部面積に対する非接触部の合計面積の割合を示す「非接触部の合計面積率(I)」が0.05%以上1.8%以下であり、かつ、厚さが70〜300μmである。
(条件1)押し圧3.4MPa及びクランピング時間0.02秒
【0021】
用紙の厚さは、一定の範囲とすることで、用紙の走行性及びクッション性を保つことができ、転写ドラムから用紙への液体トナーの転移性を良好とすることができる。本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙では、厚さは、70〜300μmである。より好ましくは、80〜250μmである。厚さが70μm未満では、角折れ、ジャミングなどの走行不良が発生する。また、クッション性が足りず、用紙と転写ドラムとの密着性が不足して、液体トナーの転移が悪化する。300μmを超えると、用紙が適度に曲がらず、印刷後のソーターに収納できない。また、エアーを用いたバキューム方式において、枚葉用紙の給紙で、用紙が搬送されない場合がある。
【0022】
MA値(I)が1.8%を超えると、用紙の表面に、大きな凹みが多くなり、用紙と転写ドラムとの密着性が不足する。結果として、液体トナーの転移が悪化し、更には画像再現性が劣る。より好ましくは、MA値(I)が1.5%以下である。さらに好ましくは、MA値(I)が1.3%以下である。なお、MA値(I)の下限値は、0.05%である。MA値(I)の下限値は、より好ましくは0.1%である。MA値(I)が、0.05%未満とするには、例えば、支持体に使用するパルプ繊維を細くする又は填料の添加量を相当量とする必要があり、結果的に紙力低下が発生し実質生産することができない。
【0023】
MA値(I)が、抄紙工程での乾燥状態によって、所望する範囲に入らない場合は、適宜キャレンダー処理などによって調節することが好ましい。なお、MA値(I)を0.05%以上1.8%以下にする具体的手段としては、例えば、後述する紙基材を抄造する時のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)を特定範囲内に収めること、填料を特定範囲内に収めること、キャレンダー処理を行うことである。
【0024】
湿式電子写真方式での印刷においては、乾式電子写真方式で用いる粉体トナーよりも粒子径の小さい液体トナーを用いる。そのため、乾式電子写真方式での印刷よりも、解像度の高い高画質の印刷物を得ることができる。このような高画質の印刷物を得るには、液体トナーの転移性及び定着性が十分となるように、用紙の表面状態を平滑とすることが好ましい。しかし、微小な液体トナーで描写された画像の画質は、用紙の表面に生じた、深さ4〜6μmといった微小な凹凸によって左右される。そのため、湿式電子写真印刷用紙では、印刷面となる表面は、微小な凹凸が少ない表面状態を有することが要求される。本実施形態では、用紙の表面の凹凸について、一定加圧時の非接触面積率(MA値)で規定した。その理由としては、この方法によれば、パーカープリントサーフ(PPS)若しくはベック平滑度などのいわゆるエアリーク法又は触針法による平滑性評価よりも、より細かで、画質評価に直接的な表面状態を把握できるからである。なお、本実施形態では、MA値(I)を測定する手段として、PST2600(FIBRO system ab社製)を使用した。次に、測定方法について説明する。
【0025】
まず、特定のクランピング圧力(押し圧)及び特定の時間(条件1では、押し圧は3.4MPaであり、かつ、クランピング時間は0.02秒である。)にて紙をプリズムとバッキングプレートとでクランプする。次いで、紙の表面に押し当てたプリズムを介して紙の表面に斜め上方から光を当てる。反射光を上部CCDカメラにて読み取る。そして、市販パーソナルコンピューターに取り付けたPST2600の専用画像解析基盤及び専用プログラムによって、測定画像からプリズム表面と紙表面との接触/非接触エリアを算出する。非接触エリアは、面積に応じて階級分けされるため、着肉不良による画線部の欠けと相関するデータが得られる。面積の大きな非接触部が多いと、印刷インキが定着しにくくなり、印画部の欠けの原因となりやすい。以上の原理によって、いわゆるエアリーク法による平滑度測定法よりも直接的な表面状態測定を行うことが可能となる。本実施形態においては、MA値(I)は、測定部面積に対する0.16mm以上の面積を有する非接触部の合計面積の割合であり、次に示す(数1)から求める。
(数1)MA値(I)[%]=(0.16mm以上の面積を有する非接触部の合計面積[mm]÷測定部面積[mm])×100
数1において、測定部面積とは、プリズムの押し当て面のうち、光を当てる実際の測定部分の面積である。
【0026】
本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙では、湿式電子写真印刷用紙の少なくとも一方の面に、(条件2)に従って、プリズムの平坦面を押し当て、0.16mm未満の面積を有する微小非接触部を含む接触部と0.16mm以上の面積を有する非接触部とに分類したとき、測定部面積に対する前記非接触部の合計面積の割合を示す「非接触部の合計面積率(II)」が0.8%以下であることが好ましい。
(条件2)押し圧3.4MPa及びクランピング時間0.10秒
【0027】
MA値(II)の測定方法は、クランプする条件を、条件2に変更した以外は、MA値(I)の測定方法と同様である。条件2のように、クランピング時間が長い条件で、MA値(II)を低く保つことは、用紙と転写ドラムとが接する圧力を高くすることによって、画像再現性を向上させることができることを意味する。MA値(II)は、0.6%以下であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙では、支持体の表面に、表面サイズ液を塗布し、表面サイズ液が、澱粉系表面紙力増強剤、ポリビニアルコール系表面紙力増強剤又はポリアクリルアミド系表面紙力増強剤の少なくともいずれか一種を含むことが好ましい。オフセット印刷又は凸版印刷などの一般的な商業印刷に必要な表面強度を維持しつつ、液体トナーの転移性及び定着性を更に向上させることができる。表面サイズ液を塗布する面は、支持体の片面又は両面である。本実施形態では、両面であることが好ましい。表面サイズ液の塗布量としては、固形分換算で、用紙の両面あたり、0.1〜6.0g/mであることが好ましい。より好ましくは、1.0〜5.0g/mである。0.1g/m未満では、湿式電子写真印刷を含めた印刷時の紙剥け、粉落ち、紙加工時の用紙表層剥離などの問題が発生する場合がある。6.0g/mを超えると、透気度が上昇することによって液体トナーの転移性不足、定着性不足、ベタツキなどの問題などが発生する場合がある。なお、用紙の片面あたりの表面サイズ液の塗布量は、固形分換算で、0.05〜3.00g/mであることが好ましい。より好ましくは、0.50〜2.50g/mである。ポリアクリルアミド系表面紙力増強剤は、用紙表面を硬くしないためクッション性が保たれ、MA値(I)を小さくできる点で好ましい。ポリアクリルアミド系表面紙力増強剤の塗布量は、固形分換算で、用紙の両面あたり、0.5〜6.0g/mであることが好ましい。より好ましくは、1.0〜6.0g/mである。また、ポリビニルアルコール系表面紙力増強剤は、液体トナーの転移性及び定着性向上に効果的であるが、透気性を悪くするため、ポリビニルアルコール系表面紙力増強剤の塗布量は、固形分換算で、用紙の両面あたり、0.1〜1.5g/mであることが好ましい。より好ましくは、0.2〜1.0g/mである。
【0029】
表面サイズ液は、表面紙力増強剤の他に、表面サイズ剤、導電剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤などを各製品に合わせて好適に配合することができる。また、表面サイズ液を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、サイズプレス、ゲートロールサイズプレス、シムサイザー、ロッドコーター、エアーナイフコーターを用いて塗布することができる。
【0030】
本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙では、縦方向のガーレー剛度(JAPAN TAPPI No.40:2000年)が、1.0mN以上であることが好ましい。より好ましくは、1.5mN以上である。ガーレー剛度は、紙又は板紙の硬さの指標である。ガーレー剛度が1.0mN未満では、転写ドラムから用紙が剥離する時に、搬送不良の問題が発生する場合がある。また、ガーレー剛度が高すぎると、印刷後のデリバリー収納性が悪化するため、35mN以下とすることが好ましい。より好ましくは、30mN以下とする。
【0031】
本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙では、密度(JIS P 8118:1998「紙及び板紙‐厚さ及び密度の試験方法」)が、0.77〜0.95g/cmであることが好ましい。MA値(I)を適正な範囲に、容易に制御することができる。用紙の密度を一定の範囲にすることで、クッション性が保たれ、転写ドラムから用紙への液体トナーの転移性を良好とすることができる。密度は、より好ましくは0.79〜0.90g/cmである。密度が0.77g/cm未満では、用紙中の空隙が大きくなりすぎて、エアーを用いたバキューム方式において、枚葉用紙の給紙で重送の問題が発生する場合がある。0.95g/cmを超えると、クッション性が不足して、所望するMA値(I)とならず、用紙と転写ドラムとの密着性が不足する。結果として液体トナーの転移性及び密着性が劣る場合がある。
【0032】
支持体としては、主としてパルプと填料を含む紙を用いる。パルプとしては、例えば、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプである。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。なお、機械パルプは、用紙の密度を低くするが、パルプ自体の性質上、用紙を硬くするため、MA値(I)を高くする傾向にある。よって、本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙では、パルプ中の機械パルプの配合割合が、20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以下である。
【0033】
填料としては、従来公知の顔料を使用することが可能である。填料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、タルク、カオリン、焼成カオリン、二酸化チタン、合成シリカである。これらは、単独で使用するか、又は併用してもよい。液体トナーの定着性を向上させるためには、炭酸カルシウムが好ましく、炭酸カルシウムのなかでも軽質炭酸カルシウムがより好ましい。炭酸カルシウムは、防滑剤としての機能があり、また、タルクは、滑剤としての機能があるため、炭酸カルシウムと共にタルクを併用し、適宜配合割合を調整することが好ましい。炭酸カルシウムとタルクとの配合割合は、質量比で、20:80〜95:5とすることが好ましい。より好ましくは、25:75〜80:20である。用紙表面の滑り性を適性範囲に収めることができる。また、二酸化チタンは、印刷用紙の画像裏抜け防止効果が高いため、二酸化チタンも併用することが好ましい。二酸化チタンは、画像裏抜け防止とコストの点から灰分として0.5〜2質量%であることが好ましい。より好ましくは、1.0〜2.0質量%である。
【0034】
本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙では、填料が、炭酸カルシウムを全填料の合計量に対して20〜100質量%含み、湿式電子写真印刷用紙の全質量を100質量%としたとき、灰分が4〜35質量%であり、かつ、炭酸カルシウムの含有量が4質量%以上であることが好ましい。液体トナーの溶剤分を用紙中へ効率よく吸収し易くなり、液体トナーの定着性を更に向上させることができる。灰分が4質量%未満では、用紙が硬くなりクッション性が損なわれ、MA値(I)が大きくなって、液体トナーの転移性及び定着性が弱くなる場合がある。灰分が35質量%を超えると、液体トナーの定着性の改良効果が飽和し、表面強度が低下するため、紙剥け又は粉落ちの問題が発生する場合がある。灰分は、8〜28質量%であることがより好ましい。また、炭酸カルシウムは、用紙の表面に転移した液体トナーの残存溶媒を吸収し易いため、炭酸カルシウムを配合することで液体トナーの定着性を更に向上させることができる。炭酸カルシウムは、全填料の合計量に対して、20〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、25〜100質量%である。炭酸カルシウムの全填料の合計量に対する含有量が20質量%未満の場合は、液体トナーの転移性及び定着性が弱くなる場合がある。炭酸カルシウムの用紙全体に対する含有量は、4質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以上である。4質量%未満では、液体トナーの定着性を向上させる効果が小さい場合がある。ただし、炭酸カルシウムとして軽質炭酸カルシウムを用いる場合、軽質炭酸カルシウムの用紙全体に対する含有量は、支持体の表面強度が低下するおそれがあるため、25質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、20質量%以下である。また、炭酸カルシウムとして重質炭酸カルシウムを用いる場合、重質炭酸カルシウムの用紙全体に対する含有量は、抄造ワイヤの磨耗が早くなるおそれがあるため、25質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、20質量%以下である。
【0035】
支持体には、内添サイズ剤を更に含有させることが好ましい。内添サイズ剤は、各種公知のものが使用でき、特に限定されず、例えば、強化ロジンサイズ剤、中性ロジンサイズ剤、酸性ロジンサイズ剤、弱酸性ロジンサイズ剤、AKD、ASAである。
【0036】
支持体には、パルプ、填料及び内添サイズ剤以外に、湿潤紙力増強剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、硫酸バンド、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などの各種助剤を、各製品に合わせて好適に配合することができる。内添紙力増強剤としては、従来公知の紙力増強剤を使用することが可能であり、例えば、澱粉系紙力増強剤、ポリアクリルアミド系紙力増強剤、ポリビニルアルコール系紙力増強剤である。
【0037】
支持体を抄紙する方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造できる。抄紙方式は、特に限定されず、例えば、酸性抄紙又は中性抄紙のいずれでもよい。ただし、填料として炭酸カルシウムを高配合する場合は、中性抄紙が好ましい。
【0038】
本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙は、普通紙タイプの湿式電子写真印刷用紙である。ここで、普通紙とは、表面に顔料を含有する塗工液が塗工されていない紙をいう。具体的には、例えば、上質紙、中質紙、更紙である。また、紙としては、多層抄き又は単層抄きの板紙を包含する。支持体の坪量は、特に限定されないが、65〜280g/mであることが好ましく、より好ましくは80〜230g/mである。
【0039】
MA値(I)を適正な範囲に制御する方法としては、例えば、パルプの叩解によるフリーネスを制御する方法、抄紙機のプレスの線圧を制御する方法若しくはカレンダーの線圧を制御する方法又はこれらを組み合わせて制御する方法がある。さらに、嵩高剤の使用、填料の種類及び配合量の組み合わせが例示できる。本実施形態では、パルプが、LBKPを含む場合、LBKPのカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)(カナダ標準ろ水度)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)が、300〜600mlであることが好ましい。より好ましくは、330〜550mlである。フリーネスが300ml未満では、用紙が硬くなり、MA値(I)が所望する範囲に入らない場合がある。また、厚さが小さくなるため、所望する厚さの範囲となるように、生産条件を変更する必要が発生する。600mlを超えると、紙層強度が低下して、印刷で問題が発生する場合がある。また、嵩高剤の配合量は、絶乾パルプ100質量部に対して、固形分換算で、0.2〜1.5質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.3〜1.1質量部である。0.2質量部未満では、MA値(I)を所望する範囲内とすることができない場合がある。1.5質量部を超えると、紙層強度が低下して、抄紙工程の汚れが発生し、実質、用紙を製造することができない場合がある。
【0040】
本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙では、MA値(I)を制御する目的で、抄紙機のプレス、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなど公知のカレンダー装置によって平滑化処理を行うことが好ましい。
【0041】
本実施形態に係る湿式電子写真印刷用紙は、湿式電子写真印刷用紙としての使用に留まらず、乾式電子写真方式の複写機・プリンターの記録用紙、インクジェット方式の記録用紙として、使用することができる。
【実施例】
【0042】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0043】
得られた湿式電子写真印刷用紙について、次に示す評価法に基づいて試験を行った。
【0044】
(MA値(I)の測定)
PST2600(FIBRO system ab社製)を使用し、クランピング圧力を3.4MPa及びクランピング時間を0.02秒(条件1)として、MA値(I)を数1から求めた。
【0045】
(MA値(II)の測定)
PST2600(FIBRO system ab社製)を使用し、クランピング圧力を3.4MPa及びクランピング時間を0.1秒(条件2)として、MA値(II)を数1から求めた。
【0046】
(坪量)
JIS P 8124:2011年「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定した。
【0047】
(厚さ及び密度)
JIS P 8118:1998年「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0048】
(灰分)
JIS P 8251:2003年「紙,板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した。
【0049】
(ガーレー剛度)
JAPAN TAPPI No.40:2000年に準拠して測定した。
【0050】
(フリーネス)
JIS P 8121:1995年「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定した。
【0051】
得られた用紙について、湿式電子写真印刷適性として、走行性、液体トナー転移性及び液体トナー定着性を、次の方法にて評価を行った。評価にあたり、湿式電子写真印刷機としてHP社製「HP Indigo5500 Digital Press」を使用し、幅320mm及び長さ460mmの寸法の用紙を用いて、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色単色印刷のベタを含む画像の印刷を行った。
【0052】
(走行性)
1000枚印刷を2回行ったときの全搬送不良回数を計測した。
◎:搬送不良回数が0回である(実用レベル)。
○:搬送不良回数が1回である(実用レベル)。
△:搬送不良回数が2回である(実用下限レベル)。
×:搬送不良回数が3回以上である(実用上不可レベル)。
【0053】
(液体トナー転移性)
6000枚印刷後の転写ドラム上のトナーの残存状況を目視で評価した。
◎:転写ドラム上にトナーの汚れが無く、良好である(実用レベル)。
○:転写ドラム上にトナーの汚れがほとんど無く、良好である(実用レベル)。
△:転写ドラム上にトナーの汚れが多少あるが、実用上問題無い(実用下限レベル)。
×:転写ドラム上にトナーの汚れが酷い(実用上不可レベル)。
【0054】
(液体トナー定着性)
印刷後、24時間経過した印刷サンプルの各色ベタ部にセロハン粘着テープ(登録商標 セロテープR、ニチバン社製)を貼り付け、180度剥離で約5mm/秒の速さで粘着テープを剥離した。剥離後の紙表面上の液体トナーの定着度合いを目視で評価した。
◎:粘着テープへの液体トナーの付着が無く、粘着テープの剥離跡の印刷濃度は変わらない(実用レベル)。
○:液体トナーが粘着テープに多少取られるが、粘着テープの剥離跡の印刷濃度はほとんど変わらない(実用レベル)。
△:液体トナーが粘着テープに取られ、粘着テープの剥離跡の印刷濃度がやや低下しているが、実用上問題無い(実用下限レベル)。
×:液体トナーが粘着テープに多く付着し、粘着テープの剥離跡に白く抜けた部分が発生している(実用上不可レベル)。
【0055】
次に、得られた湿式電子写真印刷用紙について、オフセット印刷適性として耐刷力を、次の方法にて評価を行った。
【0056】
(耐刷力)
オフセット印刷機として、リスロン40(L−40)(小森社製)を使用し、墨、藍、紅及び黄インキにて4色印刷を8500枚/時の印刷速度で印刷し、耐刷力を評価した。
◎:ブランケットの汚れがほとんど無く、良好である(実用レベル)。
○:ブランケットの汚れが多少あるが、画線部の抜けがほとんど無く、良好である(実用レベル)。
△:ブランケットの汚れが多く、画線部の抜けが有る(実用上下限レベル)。
×:ブランケットの汚れが酷く、画線部の抜けも多い(実用上不可レベル)。
【0057】
(実施例1)
パルプとしてECF漂白したLBKP100部をフリーネス450mlに叩解してパルプスラリーとし、このパルプスラリーに、カチオン化澱粉1.0部(ネオタック30T:日本食品化工社製)と、填料として炭酸カルシウム10.0部(TP121:奥多摩工業社製)及びタルク10.0部(タルクNTL:日本タルク社製)と、内添サイズ剤として中性ロジンサイズ剤0.2部(CC1401:星光PMC社製)と、硫酸バンド1.0部とを添加し、紙料を調製した。この紙料をオントップ型ツインワイヤー式抄紙機で抄紙して支持体を得た。次いで、ゲートロールコーターにて、表面サイズ液として、酸化澱粉(MS3800:日本食品化工社製)8%液を、支持体の表裏に、両面あたり塗布量が固形質量3g/mとなるように塗布し、乾燥した。その後、マシンカレンダーを用いて、線圧100kN/mで平坦化処理を行い、坪量127g/mの湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、8%であった。
【0058】
(実施例2)
実施例1において、LBKPのフリーネスを300mlに変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、実施例1と同様であった。
【0059】
(実施例3)
実施例1において、LBKPのフリーネスを550mlに変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、実施例1と同様であった。
【0060】
(実施例4)
実施例1において、填料を、炭酸カルシウム15部(TP121:奥多摩工業社製)及びタルク1部(タルクNTL:日本タルク社製)に変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、13%であった。
【0061】
(実施例5)
実施例1において、填料を、炭酸カルシウム17部及びタルク17部に変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、15%であった。
【0062】
(実施例6)
実施例1において、填料を、炭酸カルシウム5部及びタルク1部に変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、4.5%であった。
【0063】
(実施例7)
実施例1において、原料取り高を変更して、坪量を70g/mに変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、7%であった。
【0064】
(実施例8)
実施例1において、原料取り高を変更して、坪量を250g/mに変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、9%であった。
【0065】
(実施例9)
実施例1において、表面サイズ液を、変性ポリアクリルアミド6%液(ST‐5000:星光PMC社製)に変更し、塗布量を、表裏合計で固形質量3g/mに変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、8%であった。
【0066】
(実施例10)
実施例1において、表面サイズ液を、ポリビニルアルコール4%液(PVA117:クラレ社製)に変更し、塗布量を、表裏合計で固形質量1g/mに変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、8%であった。
【0067】
(実施例11)
実施例2において、嵩高剤(PT8107:星光PMC社製、)を0.8%添加したこと以外は、実施例2に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、実施例2と同様であった。
【0068】
(比較例1)
実施例1において、原料取り高を変更して、坪量60g/mに変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、6%であった。
【0069】
(比較例2)
実施例1において、原料取り高を変更して、坪量300g/mに変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、9%であった。
【0070】
(比較例3)
実施例1において、マシンカレンダーの線圧を、30kN/mに減圧した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、実施例1と同様であった。
【0071】
(比較例4)
実施例1において、填料を無添加とした以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。
【0072】
(比較例5)
実施例1において、LBKPのフリーネスを250mlに変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、実施例1と同様であった。
【0073】
(比較例6)
実施例1において、パルプを、LBKP70部及び機械パルプ30部に変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、実施例1と同様であった。
【0074】
(比較例7)
実施例1において、填料を、炭酸カルシウム50部及びタルク0部に変更した以外は、実施例1に準拠して、湿式電子写真印刷用紙を得た。用紙の全質量に対する炭酸カルシウムの含有量は、46%であった。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例1〜11の湿式電子写真印刷用紙は、いずれも、用紙の厚さ及びMA値(I)を所望する範囲にすることで、湿式電子写真印刷での転写ドラムから紙への液体トナーの転移性、液体トナーの紙への定着性及び走行性が良好であった。さらに、これらの湿式電子写真印刷用紙は、オフセット印刷方式などの従来からの一般印刷方式での印刷にも好適に使用可能であった。
【0077】
比較例1では、用紙の厚さが不足しているため、走行中にジャミングが多発し、実用不適となった。比較例2では、用紙の厚さが過大であるため、用紙が適度に曲がらず、結果的に走行性が実用不適となった。また、印刷後の収納ができなかった。比較例3,4,5及び6では、MA値(I)が所望する範囲に入らず、結果として、転写ドラムから紙への液体トナーの転移性及び液体トナーの紙への定着性が不良となった。比較例7は、MA値(I)を小さくするために、填料を多く添加したが、結果として耐刷力が低下し、また、液体トナーの定着性も悪化して実用不適となった。
【0078】
表1から明らかなように、用紙の厚さ及び用紙表面の凹凸を特定の大きさに制限することによって、液体トナーの転移性及び定着性が良好で、かつ、商業印刷の主体であるオフセット印刷適性も有する湿式電子写真印刷用紙を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体が、パルプ及び填料を含有する非塗工の湿式電子写真印刷用紙において、
該湿式電子写真印刷用紙の少なくとも一方の面に、(条件1)に従って、プリズムの平坦面を押し当て、0.16mm未満の面積を有する微小非接触部を含む接触部と0.16mm以上の面積を有する非接触部とに分類したとき、測定部面積に対する前記非接触部の合計面積の割合を示す「非接触部の合計面積率(I)」が0.05%以上1.8%以下であり、かつ、厚さが70〜300μmであることを特徴とする湿式電子写真印刷用紙。
(条件1)押し圧3.4MPa及びクランピング時間0.02秒
【請求項2】
前記湿式電子写真印刷用紙の少なくとも一方の面に、(条件2)に従って、プリズムの平坦面を押し当て、0.16mm未満の面積を有する微小非接触部を含む接触部と0.16mm以上の面積を有する非接触部とに分類したとき、測定部面積に対する前記非接触部の合計面積の割合を示す「非接触部の合計面積率(II)」が0.8%以下であることを特徴とする請求項1に記載の湿式電子写真印刷用紙。
(条件2)押し圧3.4MPa及びクランピング時間0.10秒
【請求項3】
前記支持体の表面に、表面サイズ液を塗布し、
該表面サイズ液が、澱粉系表面紙力増強剤、ポリビニアルコール系表面紙力増強剤又はポリアクリルアミド系表面紙力増強剤の少なくともいずれか一種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の湿式電子写真印刷用紙。
【請求項4】
前記填料が、炭酸カルシウムを全填料の合計量に対して20〜100質量%含み、
前記湿式電子写真印刷用紙の全質量を100質量%としたとき、灰分が4〜35質量%であり、かつ、炭酸カルシウムの含有量が4質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の湿式電子写真印刷用紙。
【請求項5】
前記パルプが、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)を含み、
該LBKPのカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が、300〜600mlであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の湿式電子写真印刷用紙。
【請求項6】
前記パルプ中の機械パルプの配合割合が、20質量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の湿式電子写真印刷用紙。
【請求項7】
密度(JIS P 8118:1998)が、0.77〜0.95g/cmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の湿式電子写真印刷用紙。
【請求項8】
前記パルプ中の嵩高剤の配合割合が、0.2〜1.5質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の湿式電子写真印刷用紙。

【公開番号】特開2013−11752(P2013−11752A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144638(P2011−144638)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)