説明

湿気硬化型シーリング組成物およびシーリング組成物シート

【課題】間隙部分に対する追従性を向上させて、間隙部分を均一に充填することができる湿気硬化型シーリング組成物、および、その湿気硬化型シーリング組成物をシート状に形成したシーリング組成物シートを提供すること。
【解決手段】
湿気硬化型シーリング組成物に、カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、可塑剤と、金属酸化物を含有する金属酸化物含有成分とを含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隙部分などの充填に用いられる湿気硬化型シーリング組成物、および、その湿気硬化型シーリング組成物をシート状に成形したシーリング組成物シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、間隙部分などの充填に用いられるシーリング組成物として、シール対象に応じて、加熱硬化型、湿気硬化型、紫外線硬化型などのシーリング組成物が知られている。
【0003】
これらのうち、湿気硬化型シーリング組成物は、通常、常温液状であり、加熱や紫外線照射ができない間隙部分の充填に広く用いられている。そのような湿気硬化型シーリング組成物として、例えば、シリコーン樹脂、シランカップリング剤および変性シリコーン樹脂を含有する湿気硬化型のシリコーン樹脂系組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、上記した特許文献1に記載されるシリコーン樹脂系組成物は、液状として調製されるため、その流動性により、間隙部分に対するシリコーン樹脂系組成物の注入量が変動しやすく、均一な充填が困難である。
【0006】
また、シリコーン樹脂系組成物では、硬化時に低沸点成分が発生するため、作業環境が低下する。
【0007】
一方、上記の不具合を改善すべく、粘度調整されたゴムからなるパテ状のシーリング組成物も提案されている。
【0008】
しかし、このようなパテ状のシーリング組成物では、環境温度により粘度が変化しやすく、低温では過度に高粘度となり、間隙部分に充填するときに、間隙部分に対する追従性が低下し、高温では過度に低粘度となり、間隙部分に充填した後に、タレや流れが発生して空隙を生じるという不具合がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、間隙部分に対する追従性を向上させて、間隙部分を均一に充填することができる湿気硬化型シーリング組成物、および、その湿気硬化型シーリング組成物をシート状に形成したシーリング組成物シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明の湿気硬化型シーリング組成物は、カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、可塑剤と、金属酸化物を含有する金属酸化物含有成分とを含有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の湿気硬化型シーリング組成物では、硬化前の硬さが、JIS K 7312に規定されるタイプC硬さ試験において、タイプCデュロメータの加圧面を密着させてから10秒後に測定したときに、5〜50であることが好適である。
【0012】
また、本発明の湿気硬化型シーリング組成物では、カルボキシル基が、前記カルボキシル基含有ポリマー中に0.1〜10質量%含有されていることが好適である。
【0013】
また、本発明の湿気硬化型シーリング組成物では、前記カルボキシル基含有ポリマーが、アクリル酸アルキルエステル単量体55〜95質量%と、シアノ基含有ビニル単量体4〜40質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10質量%とを含有する単量体組成物を重合することにより得られることが好適である。
【0014】
また、本発明の湿気硬化型シーリング組成物では、さらに、粘着付与剤を含有することが好適である。
【0015】
また、本発明の湿気硬化型シーリング組成物では、前記可塑剤が、前記カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部含有されていることが好適である。
【0016】
また、本発明の湿気硬化型シーリング組成物では、前記金属酸化物含有成分が、前記カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、5〜200質量部含有されていることが好適である。
【0017】
また、本発明の湿気硬化型シーリング組成物では、前記金属酸化物が、第2族元素の酸化物であることが好適である。
【0018】
また、本発明のシーリング組成物シートは、上記した湿気硬化型シーリング組成物がシート状に形成されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の湿気硬化型シーリング組成物によれば、間隙部分に対する追従性を向上させて、間隙部分を均一に充填することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の湿気硬化型シーリング組成物は、カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、可塑剤と、金属酸化物を含有する金属酸化物含有成分とを含有している。
【0021】
カルボキシル基含有ポリマーとしては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、アクリルポリマーなどをカルボキシル変性したポリマー(ゴムまたは樹脂)が挙げられ、好ましくは、カルボキシル変性されたアクリルポリマーが挙げられる。
【0022】
カルボキシル変性されたアクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体((メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルをいう。以下同じ。)と、カルボキシル基含有ビニル単量体とを含有する単量体組成物を重合することにより得られる。
【0023】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなど、炭素数2〜12の直鎖または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルなどの炭素数2〜4の直鎖または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0024】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を用いれば、湿気硬化型シーリング組成物の硬化前の柔軟性を確保して、間隙部分に対する追従性を向上させることができるとともに、シーリング組成物シートの保形性を向上させることができる。
【0025】
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸、例えば、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0026】
また、単量体組成物には、上記した単量体と共重合可能な単量体を含有してもよく、そのような単量体としては、例えば、反応性官能基含有ビニル単量体、多官能ビニル単量体などが挙げられる。好ましくは、反応性官能基含有ビニル単量体が挙げられる。
【0027】
反応性官能基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニルモノマー、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどのヒドロキシル基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノ基含有ビニルモノマー、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有ビニルモノマー、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミドなどのマレイミド系のイミド基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。好ましくは、シアノ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0028】
多官能ビニル単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
単量体組成物は、アクリル酸アルキルエステル単量体を、90〜99.9質量%、好ましくは、92〜99.5質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体、0.1〜10質量%、好ましくは、0.5〜8質量%とを含有している。また、単量体組成物に共重合可能な単量体を含有する場合には、55質量%未満の割合で含有される。
【0030】
また、単量体組成物に、共重合可能な単量体としてシアノ基含有ビニルモノマーを含有させる場合には、単量体組成物は、アクリル酸アルキルエステル単量体を、55〜95質量%、好ましくは、60〜90質量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10質量%、好ましくは、0.5〜8質量%と、シアノ基含有ビニル単量体4〜40質量%、好ましくは、8〜35質量%とを含有している。
【0031】
アクリルポリマーの重合方法は、公知の方法でよく、例えば、懸濁重合、塊状重合、乳化重合など、適宜選択することができる。
【0032】
また、アクリルポリマーの重合では、公知の重合開始剤、反応溶媒、連鎖移動剤、乳化剤などを、適宜用いることができる。なお、アクリルポリマーの重合において、反応溶媒を用いた場合には、反応後、蒸留などの方法により反応溶媒を留去する。
【0033】
これらカルボキシル基含有ポリマーには、カルボキシル基が、例えば、0.1〜10質量%、好ましくは、0.5〜8質量%含有されている。
【0034】
カルボキシル基の含有量が、0.1質量%未満であると、吸湿硬化性シーリング組成物を十分に硬化させることができない場合がある。カルボキシル基の含有量が、10質量%を超過すると、カルボキシル基含有ポリマーが常温(25℃)で過度に硬くなる場合がある。
【0035】
可塑剤としては、カルボキシル基含有ポリマーを可塑化できれば特に限定されず、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤などが挙げられる。
【0036】
フタル酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、 ジオクチル錫ラウレート(DOTL)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートなどのフタル酸エステルが挙げられる。
【0037】
脂肪酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルアジぺート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジぺート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステルなどのアジピン酸エステルが挙げられる。
【0038】
また、可塑剤としては、例えば、高級アルコール(例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなど)、乾性油類や動植物油類(例えば、パラフィン類(パラフィン系オイルなど)、ワックス類、ナフテン類、アロマ類、アスファルト類、アマニ油など)、石油系オイル類、低分子量ポリマー類、有機酸エステル類(例えば、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなど)なども挙げられる。
【0039】
これら可塑剤は、単独または2種以上併用することができる。また、可塑剤としては、好ましくは、脂肪酸系可塑剤が挙げられ、さらに好ましくは、アジピン酸エステルが挙げられる。
【0040】
可塑剤は、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、例えば、10〜300質量部、好ましくは、15〜200質量部の配合割合で配合される。
【0041】
可塑剤の配合割合が、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、10質量部未満であると、硬化前の湿気硬化型シーリング組成物の柔軟性が不十分となり、湿気硬化型シーリング組成物の間隙部分の形状に追従させることが困難となる場合がある。また、可塑剤の配合割合が、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、300質量部を超過すると、吸湿硬化性シーリング組成物を硬化させることが困難な場合がある。
【0042】
金属酸化物含有成分に含有される金属酸化物としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどの第2族元素(周期表(IUPAC無機化学命名法改訂版(1989))における第2族元素)の酸化物などが挙げられる。
【0043】
金属酸化物が第2族元素であれば、水と金属酸化物との反応により、金属水酸化物を生成することができ、その金属水酸化物の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基とのイオン結合により、架橋を形成することができる。
【0044】
金属酸化物含有成分は、金属酸化物そのもの(金属酸化物100%含有)であってもよく、金属酸化物が混合される混合物として調製することができる。
【0045】
金属酸化物の混合物としては、例えば、白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Feを含有する。)、例えば、高炉セメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Fe、MgOを含有する。)、フライアッシュセメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Fe、MgOを含有する。)、シリカセメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Feを含有する。)などの混合セメント、例えば、アルミナセメント(金属酸化物として、CaO、SiO、Al、Fe、MgOを含有する。)などの特殊セメントなどが挙げられる。好ましくは、ポルトランドセメントが挙げられる。
【0046】
また、金属酸化物含有成分には、金属酸化物が、例えば、85〜100質量%、好ましくは、90〜99.5質量%含有されており、さらに、第2族元素の酸化物が、例えば、55〜75質量%、好ましくは、60〜70質量%含有されている。
【0047】
金属酸化物含有成分は、カルボキシル基含有ポリマーの種類や、カルボキシル基の含有量に応じて、適宜配合され、具体的には、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、例えば、3〜200質量部、好ましくは、10〜180質量部の配合割合で配合される。
【0048】
金属酸化物含有成分の配合割合が、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、3質量部未満であると、湿気硬化性シーリング組成物を硬化させることが困難な場合がある。また、金属酸化物含有成分の配合割合が、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、200質量部を超過すると、湿気硬化型シーリング組成物の硬化速度が過度に速くなり、湿気硬化型シーリング組成物のポットライフが短期化する場合や、硬化前の湿気硬化型シーリング組成物の柔軟性が不十分となり、湿気硬化型シーリング組成物を間隙の形状に追従させることが困難になる場合がある。
【0049】
また、本発明の湿気硬化型シーリング組成物には、必要により、粘着付与剤を配合することもできる。
【0050】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジンエステル類、テルペン系樹脂(例えば、テルペン−芳香族系液状樹脂、ポリテルペン樹脂など)、クマロン樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂(例えば、C5/C9系石油樹脂など)、フェノール樹脂などが挙げられる。好ましくは、クマロン樹脂が挙げられる。
【0051】
粘着付与剤は、カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、例えば、200質量部以下、好ましくは、10〜150質量部の配合割合で配合される。
【0052】
湿気硬化型シーリング組成物に粘着付与剤が配合されていれば、シール対象に対する湿気硬化型シーリング組成物の密着性を向上させることができる。
【0053】
また、本発明の湿気硬化型シーリング組成物には、必要により、充填剤、顔料、老化防止剤、難燃剤などの公知の添加剤を、適宜配合することができる。
【0054】
充填剤としては、例えば、中空ビーズなどの中空充填剤、例えば、加熱発泡ビーズなどの発泡性充填剤、例えば、炭酸カルシウム、タルクなどの無機充填剤などが挙げられる。好ましくは、中空充填剤、発泡性充填剤が挙げられる。
【0055】
充填剤が中空充填剤や発泡性充填剤であれば、湿気硬化型シーリング組成物の見掛け密度を低下させることができ、湿気硬化型シーリング組成物を軽量化することができる。
【0056】
本発明の湿気硬化型シーリング組成物を調製するには、カルボキシル基含有ポリマー、可塑剤、金属酸化物含有成分、必要により、粘着付与剤および添加剤を上記した配合割合で配合し、例えば、ミキシングロールなどを用いて、例えば、50〜150℃で混合する。
【0057】
なお、湿気硬化型シーリング組成物を調製するときには、長時間湿気と接触しないように、例えば、乾燥気体中で混合する。
【0058】
これにより、湿気硬化型シーリング組成物が、粘稠なペースト状(パテ状)に調製される。
【0059】
得られた湿気硬化型シーリング組成物のゲル分率(トルエン不溶分)は、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0060】
また、得られた湿気硬化型シーリング組成物の、伸び率100%における引張り強度(JIS K 6767に準ずる)は、例えば、30N以下、好ましくは、20N以下である。
【0061】
また、得られた湿気硬化型シーリング組成物は、その硬化前の硬さが、JIS K 7312に規定されるタイプC硬さ試験において、タイプCデュロメータの加圧面を密着させてから10秒後に測定したときに、例えば、5〜50、好ましくは、5〜30である。
【0062】
湿気硬化型シーリング組成物の硬化前の硬さは、可塑剤の配合量や、金属酸化物含有成分の配合量を調製することにより、調製することができ、上記した硬さが5未満であると、湿気硬化型シーリング組成物が、タレや流れにより、硬化する前に間隙から流出する場合があり、50を超過すると、湿気硬化型シーリング組成物の柔軟性が不十分となり、湿気硬化型シーリング組成物を間隙部分の形状に追従させることが困難となる場合がある。
【0063】
そして、湿気硬化型シーリング組成物は、間隙部分などに充填され、その後、周囲の湿気を吸収することにより、硬化する。
【0064】
詳しくは、湿気硬化型シーリング組成物が周囲の湿気を吸収すると、水と金属酸化物との反応により、金属水酸化物が生成され、その後、その金属水酸化物の金属イオンと、カルボキシル基含有ポリマーのカルボキシル基との間でイオン結合が形成される。
【0065】
硬化後の湿気硬化型シーリング組成物のゲル分率(トルエン不溶分)は、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上である。
【0066】
また、硬化後の湿気硬化型シーリング組成物の、伸び率100%における引張り強度(JIS K 6767に準ずる)は、例えば、1N以上、好ましくは、5N以上、通常、30N以下である。
【0067】
湿気硬化型シーリング組成物は、ヘラなどを用いて、直接間隙に充填してもよく、また、予めシート状に形成してシーリング組成物シートとし、そのシーリング組成物シートを間隙に充填することもできる。
【0068】
シーリング組成物シートを形成するには、例えば、公知のプレス機、押出成形機などを用いて、湿気硬化型シーリング組成物を圧延し、所定厚みのシートとする。また、不織布などの基材の両面に湿気硬化型シーリング組成物を塗布して、シーリング組成物シートとすることもできる。
【0069】
なお、湿気硬化型シーリング組成物やシーリング組成物シートは、水や湿気と接触しないように、使用するまで密封される。
【0070】
この湿気硬化型シーリング組成物によれば、粘度調整によらずとも、硬化前においては、柔軟性を確保して、間隙部分に対する追従性を向上させることができ、また、硬化後には、タレや流れを防止して間隙部分に空隙が生じることを抑制して、間隙部分を均一に充填することができる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例、および、比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
実施例1
アクリル酸ブチル85質量部、アクリル酸2質量部、アクリロニトリル15質量部からなる単量体組成物を重合して、カルボキシル変性されたアクリルポリマーA(カルボキシル基含有ポリマー、カルボキシル基含有量1.2質量%、固形分100%)を得た。
【0073】
アクリルポリマーA、アジピン酸エステル(ポリサイザーP−103、DIC製)および白色ポルトランドセメント(金属酸化物含有成分、CaO66質量%、SiO24質量%、Al4質量%、Fe0.2質量%)を、表1に示す配合割合で配合し、ミキシングロールを用いて120℃で混合して、湿気硬化型シーリング組成物を得た。
【0074】
得られた湿気硬化型シーリング組成物をプレス機により圧延し、厚み1mmのシーリング組成物シートを得た。
【0075】
実施例2〜5
アクリルポリマーA、アジピン酸エステル(ポリサイザーP−103、DIC製)、白色ポルトランドセメント(金属酸化物含有成分、CaO66質量%、SiO24質量%、Al4質量%、Fe0.2質量%)およびクマロン樹脂(粘着付与剤、クマロンV−120、日塗化学製)を、表1に示す配合割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化型シーリング組成物およびシーリング組成物シートを得た。
【0076】
実施例6
アクリル酸ブチル85質量部、アクリル酸6質量部、アクリロニトリル15質量部からなる単量体組成物を懸濁重合により重合し、カルボキシル変性されたアクリルポリマーB(カルボキシル基含有ポリマー、カルボキシル基含有量3.5質量%、固形分100%)を得た。
【0077】
アクリルポリマーB、アジピン酸エステル(ポリサイザーP−103、DIC製)および白色ポルトランドセメント(金属酸化物含有成分、CaO66質量%、SiO24質量%、Al4質量%、Fe0.2質量%)を、表1に示す配合割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、湿気硬化型シーリング組成物およびシーリング組成物シートを得た。
【0078】
比較例1
アクリルポリマーA、アジピン酸エステル(ポリサイザーP−103、DIC製)を、表1に示す配合量で配合した以外は、実施例1と同様にして、パテ状のシーリング組成物およびシーリング組成物シートを得た。
【0079】
比較例2
市販の1液硬化型シリコーン樹脂(液状、アセトン型)を用いた。
【0080】
評価方法
1.ゲル分率(トルエン不溶分)の測定
各実施例および各比較例で得られた湿気硬化型シーリング組成物を用いて、硬化前、および、硬化後(温度40℃、湿度90%で12時間硬化後、以下の試験において同じ)のトルエン不溶分を測定した。
【0081】
硬化前または硬化後の湿気硬化型シーリング組成物を秤量し、これをトルエンに浸漬48時間膨潤溶解させた。その後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶分を、乾燥後、秤量した。そして、硬化前または硬化後の湿気硬化型シーリング組成物の質量に対する、トルエン不溶分の乾燥質量の百分率を算出した。結果を表1に示す。
2.硬さ試験
各実施例および各比較例で得られた湿気硬化型シーリング組成物(硬化前)を用いて、JIS K 7312に準じて、タイプC硬さ試験を実施し、タイプCデュロメータの加圧面を密着させてから10秒後の硬さを測定した。結果を表1に示す。
3.引張り強度試験
JIS K 6767に準じて測定した。具体的には、各実施例および各比較例の硬化前または硬化後におけるシーリング組成物シートを、ダンベル1号を用いて打ち抜き、測定用サンプルとした。引張り試験機にて、引張り速度500mm/minで測定用サンプルを引張り、測定用サンプルの伸び率が100%に到達したときの荷重(100%引張り強度)を測定した。結果を表1に示す。
4.臭気試験
各実施例および各比較例の湿気硬化型シーリング組成物を硬化させるときの臭気について、試験者の嗅覚による官能試験を実施した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリマーと、
可塑剤と、
金属酸化物を含有する金属酸化物含有成分と
を含有することを特徴とする、湿気硬化型シーリング組成物。
【請求項2】
硬化前の硬さが、JIS K 7312に規定されるタイプC硬さ試験において、タイプCデュロメータの加圧面を密着させてから10秒後に測定したときに、5〜50であることを特徴とする、請求項1に記載の湿気硬化型シーリング組成物。
【請求項3】
カルボキシル基が、前記カルボキシル基含有ポリマー中に0.1〜10質量%含有されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の湿気硬化型シーリング組成物。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有ポリマーが、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体55〜95質量%と、
シアノ基含有ビニル単量体4〜40質量%と、
カルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10質量%と
を含有する単量体組成物を重合することにより得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の湿気硬化型シーリング組成物。
【請求項5】
さらに、粘着付与剤を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の湿気硬化型シーリング組成物。
【請求項6】
前記可塑剤が、前記カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、10〜300質量部含有されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の湿気硬化型シーリング組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物含有成分が、前記カルボキシル基含有ポリマー100質量部に対して、5〜200質量部含有されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の湿気硬化型シーリング組成物。
【請求項8】
前記金属酸化物が、第2族元素の酸化物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の湿気硬化型シーリング組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の湿気硬化型シーリング組成物がシート状に形成されてなることを特徴とする、シーリング組成物シート。

【公開番号】特開2011−246598(P2011−246598A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120963(P2010−120963)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】