説明

湿気硬化型ホットメルト接着剤ならびにこれを用いた造作部材およびフラッシュパネル

【課題】優れた機械強度および接着強さを有するとともに、接着剤単独で優れた耐湿性能を発揮することが可能な湿気硬化型ホットメルト接着剤、ならびにこれを用いた造作部材およびフラッシュパネルを提供する。
【解決手段】ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有し、ポリオール成分(A)は、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリオール(a)を含有し、ウレタンプレポリマー中のシクロオレフィン構造の含有量が10〜30質量%の範囲内である、湿気硬化型ホットメルト接着剤に関する。ポリオール成分(A)中のポリオール(a)の含有量は50〜100質量%の範囲内であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築部材等における耐透湿層を形成するために使用できる湿気硬化型ホットメルト接着剤、ならびにこれを用いた造作部材およびフラッシュパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア等の建築部材の分野では、美観の向上や耐久性の付与等の要請から、合板、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)、パーチクルボード等の基材と、化粧シート等の表面材とを貼り合わせた化粧造作部材が広く使用されており、このような化粧造作部材を芯材の両面に貼着して建築部材として用いるのが一般的である。
【0003】
軽量化や断熱性付与等の観点から、芯材が中空状であることも多い。よって、建築部材の内部(特に中空部)と外部とでは温度差が生じ易く、夏場や冬場には結露が発生する場合がある。そして、結露が化粧造作部材に吸収された場合、化粧造作部材を構成する部材の間での吸湿度の相違等によって該化粧造作部材の反りや膨れ等の変形が生じる場合がある。そこで、化粧造作部材の反りや膨れを抑え、耐久性を向上させる目的で、化粧造作部材の内部に耐透湿層を設けることが検討されている。
【0004】
特許文献1には、反りや膨れを抑えることができ、十分な耐熱性能を備えている化粧板として、木質基材の表裏両面に、反応性ホットメルト接着剤としてたとえばポリウレタン系接着剤を用いて化粧紙を貼着した化粧板が開示されている。しかし特許文献1の技術において、接着剤として水や溶媒を含まないホットメルト接着剤を使用するのみでは耐透湿性能を十分に得ることが困難である。
【0005】
特許文献2には、反りを効果的に低減することができるフラッシュパネルとして、表面材と裏面材とのそれぞれの内面の全部を、本質的に水を含まない防水剤で防水加工する技術が提案され、該防水剤として、分子内にイソシアネートを0.5〜5重量%含有し、常温下における固化時間が30分以下の物性を有するホットメルト型の湿気硬化ウレタン系防水剤が提案されている。しかし特許文献2で提案される防水剤は、接着剤としての機械強度や最終接着強さを必ずしも有さず、防水剤を形成した部材を他の部材と貼り合わせるには別途接着剤を用いる必要があるため、フラッシュパネルの生産効率および製造コストの面で好ましくない。
【0006】
特許文献3には、寿命安定性、結合熱安定性および強度に優れる反応性ホットメルトウレタン接着剤組成物として、イソシアナート化合物と、多官能性カルボン酸化合物および脂肪族もしくは脂環族ジオールもしくはトリオール化合物を反応させて得たポリエステル−ポリオールとの反応物を含むウレタンプレポリマー組成物が提案されている。
【0007】
特許文献4には、クリープ抵抗および基体への接着性に優れる反応性ホットメルト接着剤組成物として、(a)30,000〜100,000の間の重量平均分子量を有する1以上のポリマー、(b)1以上の多官能性ポリオール、(c)少なくとも2つのヒドロキシ基を有する1以上の有機化合物、および(d)1以上のポリイソシアネートを含み、イソシアネート基のヒドロキシル基に対する比率(NCO/OH)が2.1〜6.0の間であり、遊離イソシアネート基の量が組成物の総重量を基準にして3.5重量パーセントより大である反応性ホットメルト接着剤組成物が提案されている。
【0008】
特許文献5には、優れた最終接着強さが発現する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤として、特定の長鎖ポリエステルポリオールと、3000〜15000の数平均分子量を有する脂肪族ポリエーテルポリオールと、1000〜5000の数平均分子量を有し、かつ40℃以上のガラス転移温度を有する芳香族ポリエステルポリオールと、400〜3500の数平均分子量を有し、かつ20℃以下のガラス転移温度を有する芳香族ポリエステルポリオールとを含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が提案されている。しかし、特許文献3〜5では接着剤組成物に耐透湿性能を付与することについて考慮されていない。
【0009】
すなわち、たとえば建材等の種々の造作部材の耐透湿層として単独で使用できるような、良好な機械強度、接着強さおよび耐透湿性能を兼ね備えた接着剤を得るには至っていないのが実情である。
【特許文献1】特開2006−15505号公報
【特許文献2】特開平10−193491号公報
【特許文献3】特開平1−54087号公報
【特許文献4】特開2006−104468号公報
【特許文献5】特開2005−320520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決し、優れた機械強度および接着強さを有するとともに、接着剤単独で優れた耐透湿性能を発揮することが可能な湿気硬化型ホットメルト接着剤、ならびにこれを用いた造作部材およびフラッシュパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、優れた耐透湿性能の付与を目的として、ウレタンプレポリマーを構成し得るポリオールおよびポリイソシアネートの各種検討を進め、上述の特許文献3に開示されるように、プレポリマーの立体構造の観点から耐透湿性能を付与できるのではないかと検討したが、依然として実用上十分なレベルに耐透湿性能を向上させることはできなかった。さらに検討を進めたところ、ウレタンプレポリマー中に特定量のシクロオレフィン構造を導入したところ、予想外にも格段に優れた耐透湿性能が発現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち本発明は、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有し、ポリオール成分(A)は、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリオール(a)を含有し、ウレタンプレポリマー中のシクロオレフィン構造の含有量が10〜30質量%の範囲内である、湿気硬化型ホットメルト接着剤に関する。
【0013】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤において、ポリオール成分(A)中のポリオール(a)の含有量が50〜100質量%の範囲内であることが好ましい。
【0014】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤において、ポリオール(a)の数平均分子量が500〜3000の範囲内であることが好ましい。
【0015】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤において、上記のシクロオレフィン構造がシクロヘキサン構造であることが好ましい。
【0016】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤において、ポリオール成分(A)が分子中にシクロオレフィン構造を有するポリカーボネートポリオールを50〜90質量%の範囲内で含有することが好ましい。
【0017】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤において、ポリオール成分(A)は、融点が60〜80℃の範囲内である結晶性ポリエステルポリオールを含有することが好ましい。
【0018】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤において、結晶性ポリエステルポリオールは、下記の一般式(1)、
【0019】
【化1】

【0020】
(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素原子数が偶数の直鎖のアルキレン基を示し、かつR1およびR2の有する炭素原子数の合計が12以上である。nは3〜40の整数を示す。)
で表されることが好ましい。
【0021】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、充填材をさらに含有することが好ましい。
上記の充填材は層状珪酸塩を主成分とすることが好ましい。
【0022】
本発明はまた、基材と、シート状またはフィルム状の表面部材と、該基材および該表面部材を接着する接着剤層と、を有し、接着剤層が上述したいずれかの湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化して形成されてなる、造作部材に関する。
【0023】
本発明の造作部材においては、基材が木質基材であり、表面部材が、ポリ塩化ビニルからなるフィルムおよびシート、ポリオレフィンからなるフィルムおよびシート、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムおよびシート、紙、から選択される少なくともいずれかであることが好ましい。
【0024】
本発明はまた、芯材の両面に上述の造作部材を接着してなる、フラッシュパネルに関する。
【0025】
本発明のフラッシュパネルにおいては、芯材がハニカム構造を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、硬化後に優れた機械強度および接着強さを有し、接着剤単独で優れた耐透湿性能を発揮する。よって、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いることにより、耐久性能と耐透湿性能とに優れる耐透湿層を生産効率良く形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[湿気硬化型ホットメルト接着剤]
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有する。ポリオール成分(A)は、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリオール(a)を含有する。また、ウレタンプレポリマー中のシクロオレフィン構造の含有量が10〜30質量%の範囲内である。
【0028】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤に含有されるウレタンプレポリマーは、典型的には、空気中または接着剤が塗布される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を分子内に有する化合物であって、常温で固体あるいは粘稠な性状を有するものである。一般に、ウレタンプレポリマーといわれるものは、比較的低分子量のものが多いが、当業者においては、数万の数平均分子量(Mn)を有するものもウレタンプレポリマーと称されており、本発明においてもたとえば数万の数平均分子量を有するウレタンプレポリマーをも使用することができる。
【0029】
ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、1000〜30000の範囲内が好ましく、4000〜10000の範囲内がより好ましい。ウレタンプレポリマーの数平均分子量が1000以上である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度、最終接着強さおよび耐透湿性能が特に良好であり、30000以下である場合、流動性や加工性が特に良好である。
【0030】
なお、本発明における数平均分子量は、ウレタンプレポリマーに過剰量のアミノ化合物を反応させ、残存するアミン濃度を塩酸で逆滴定することによってイソシアネート基の濃度を測定し、得られたイソシアネート基濃度に基づいて算出した値である。
【0031】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤に含有されるウレタンプレポリマーは、湿気架橋反応性およびホットメルト性の2つの特性を共に有する。ウレタンプレポリマーが有する湿気架橋反応性は、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と湿気(水)とが反応して開始する架橋反応に由来するものであり、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基に起因する性質である。
【0032】
一方、ウレタンプレポリマーが有するホットメルト性は、選択するウレタンプレポリマーの分子構造に起因する性質であり、常温では固体であるが加熱によって溶融して塗布可能となるため、溶融状態で塗布し、冷えると固化し接着性を発現することができる性質である。
【0033】
ホットメルトとは、常温では固体あるいは粘稠な性状であるが、加熱すると溶融し、流動状態あるいは液状となる性質もしくは物質の総称であり、例えばエチレン酢酸ビニル系に代表されるホットメルトなどが一般に知られている。ホットメルトは、無溶剤型であるとともに、常温では固体あるいは粘稠な性状であるが、熱を加えると溶融して塗布が可能な状態となり、冷却により再度凝集力が出る性状を有すため、例えば、無溶剤型の接着剤やコーティング材などとして有用である。
【0034】
ホットメルト性は軟化点と密接な関係があり、一般に、ウレタンプレポリマーの軟化点が低いほど作業性は良好となり、逆に、軟化点が高いほど最終接着強さは良好になる傾向がある。
【0035】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤に含有されるウレタンプレポリマーの軟化点は、40〜120℃の範囲内であることが好ましい。ウレタンプレポリマーの軟化点が40℃以上である場合、最終接着強さが良好であり、120℃以下である場合、作業性が良好である。ウレタンプレポリマーの軟化点は、60℃以上であることがさらに好ましく、また100℃以下であることがさらに好ましい。なお、本発明でいう軟化点とは、ウレタンプレポリマーの温度を段階的に上昇させた場合に、熱流動し始め凝集力を失う温度をいう。なお、本発明における軟化点は、JIS K 5902に準拠した環球法により求められた値である。
【0036】
ウレタンプレポリマーの軟化点の調整方法としては、例えば、(1)ウレタンプレポリマーの分子量による調整方法、(2)原料としてポリエステルポリオールを使用した場合における、該ポリエステルポリオールのポリアルキレン鎖の結晶性による調整方法、(3)ポリオールやポリイソシアネートを用いた芳香族環式構造の導入による調整方法、(4)ウレタン結合の含有量による調整方法、等を採用することができ、これらを単独であるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0037】
上記のウレタンプレポリマーの軟化点の調整方法の(1)では、一般にウレタンプレポリマーの高分子量化に伴い軟化点は上昇する傾向にある。尚、ウレタンプレポリマーの分子量の調整は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとのモル比による調整、高分子量ポリオールの使用等の手法を採用することができ、特に制限はない。
【0038】
また、上記のウレタンプレポリマーの軟化点の調整方法の(2)では、一般に、結晶性のポリエステルポリオールのポリアルキレン鎖の炭素数が多い程、得られるウレタンプレポリマーの結晶性が向上し、軟化点は上昇する傾向があり、また、結晶性のポリエステルポリオールの使用量が多い程、軟化点は上昇する傾向がある。
【0039】
また、上記のウレタンプレポリマーの軟化点の調整方法の(3)では、通常、ウレタンプレポリマー中の芳香族環式構造の含有量が多い程、軟化点は上昇する傾向がある。
【0040】
また、上記のウレタンプレポリマーの軟化点の調整方法の(4)では、通常、ウレタン結合の含有量が多い程、軟化点が上昇する傾向がある。
【0041】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤に含有されるウレタンプレポリマーは、以下に説明するポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを、ポリイソシアネート成分(B)の有するイソシアネート基がポリオール成分(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0042】
なお、本発明における融点およびガラス転移温度とは、示差走査熱量計を使用して昇温速度10℃/分の条件で測定し検出された吸熱ピークにより求められた値である。
【0043】
また、本発明における「最終接着強さ」とは、特記がない限り、湿気硬化型ホットメルト接着剤を溶融状態で被接着物に塗布し、所望の被接着物どうしを貼り合わせた後、湿気硬化反応がほぼ完全に進行することにより発現する接着強さを意味するものとする。接着強さが発現するに至る条件は、使用する湿気硬化型ホットメルト接着剤によって異なるが、一般には、被接着物どうしを貼り合わせた後、温度23℃および相対湿度65%の環境下で24時間程度養生させれば「最終接着強さ」が発現する。
【0044】
<ポリオール成分(A)>
(ポリオール(a))
本発明において、ポリオール成分(A)はシクロオレフィン構造を分子中に有するポリオール(a)を含有する。ウレタン系接着剤においては、一般に、ポリオール成分とイソシアネート成分との反応によって得られるウレタンプレポリマーを接着剤の適用部位に形成し、該ウレタンプレポリマーの架橋によって硬化させて接着性を発揮させる。ポリウレタンは、主にポリオール由来部分によるソフトセグメントと、主にウレタン結合部分によるハードセグメントとを形成し、ウレタン系接着剤における水分透過は分子の自由度が比較的高いソフトセグメントの部位で優位に生じると考えられる。
【0045】
シクロオレフィン構造を分子中に有するポリオールは、環状構造の存在により比較的強固な分子構造を有するが、たとえば芳香族構造のみからなる分子ほど剛直ではない。よって、シクロオレフィン構造を分子内に有するポリオール(a)を含有するポリオール成分(A)を用いることによって、湿気硬化型ホットメルト接着剤に良好な機械強度を付与し、湿気硬化型ホットメルト接着剤の特にソフトセグメント部分からの水分透過を抑制して接着剤に良好な耐透湿性能を付与するとともに、最終接着強さをも良好に発揮させることができる。すなわち本発明によれば、良好な機械強度、最終接着強さおよび耐透湿性能を兼ね備えた湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる。
【0046】
ポリオール(a)は、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリオールであれば良いが、主鎖中にシクロオレフィン構造を有することが特に好ましい。この場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能がより良好に得られる。
【0047】
本発明において、ウレタンプレポリマー中のシクロオレフィン構造の含有量は、10〜30質量%の範囲内である。ウレタンプレポリマー中のシクロオレフィン構造の含有量が10質量%未満である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能を十分に向上させることができず、30質量%を超える場合、ウレタンプレポリマーの硬化が不十分となって湿気硬化型ホットメルト接着剤に良好な機械強度および最終接着強さを付与することができず、耐透湿性能を十分に得ることができない。ウレタンプレポリマー中のシクロオレフィン構造の含有量は、15質量%以上であることがより好ましく、また26質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
ポリオール(a)が有するシクロオレフィン構造としては、入手容易性等の点で、たとえば炭素数5〜10の範囲内のシクロオレフィン構造が好ましい。中でも、多種の誘導体が存在し、かつ、得られるウレタンプレポリマーの設計の自由度が高い点で、炭素数6のシクロヘキサン構造であることが特に好ましい。ポリオール(a)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等も使用できる。
【0049】
ポリオール(a)の好ましい具体例としては、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、アダマンタンジ−メタノール、アダマンタンジ−エタノール、シクロペンタンジメタノール、シクロペンタンジエタノール、等の低分子ポリオール等を例示できる。中でも、得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度、最終接着強さ、耐透湿性能のバランスが良好であるとともに、作業性、加工性、ポリイソシアネート成分(B)との反応性にも優れる点で、シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
【0050】
また、ポリオール(a)として使用できるポリエステルポリオールとしては、ポリオールとポリカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオールを例示できる。この場合のポリオールとしては、上記のような低分子ポリオールを例示でき、ポリカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸等を例示できる。
【0051】
上記のポリエステルポリオールを得る際のポリオールとポリカルボン酸との組合せの例としては、シクロオレフィン構造を有するポリオールとシクロオレフィン構造を有さないポリカルボン酸との組合せや、シクロオレフィン構造を有さないポリオールとシクロオレフィン構造を有するポリカルボン酸との組合せを例示できる。
【0052】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤において、ポリオール成分(A)中のポリオール(a)の含有量が50〜100質量%の範囲内であることが好ましい。ポリオール(a)の該含有量が50質量%以上である場合、接着強度および耐透湿性能の向上効果がより良好に得られる。ポリオール(a)の該含有量は、70質量%以上であることがより好ましい。ポリオール(a)の該含有量は100質量%でも良いが、たとえば90質量%以下、さらに80質量%以下とし、残部に、たとえば機械強度、最終接着強さ等の特性をより向上させるとともに、接着加工直後に接着部へ切削加工等の二次加工を施した際の該接着部の剥離等を防止する観点から、他のポリオールを含有させることも好ましい。
【0053】
なお、本発明におけるシクロオレフィン構造の含有量は、ウレタンプレポリマー中へのシクロオレフィン構造の導入に寄与する原料成分の質量に基づいて計算で求めた値である。
【0054】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤において、ポリオール(a)の数平均分子量は、500〜3000の範囲内であることが好ましい。ポリオール(a)の数平均分子量が500以上である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能がより良好となり、3000以下である場合、最終接着強さが良好であるとともに、塗装作業性、加工性が損なわれ難い。ポリオール(a)の数平均分子量は、800以上であることがより好ましく、2000以下であることがより好ましい。
【0055】
ポリオール成分(A)は、ポリオール(a)として、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリカーボネートポリオールを含有することが好ましい。本発明において、ポリカーボネートポリオールとは、主鎖中に炭酸エステル結合を持ち、かつ分子中に2以上の水酸基を持つ線状高分子を意味する。分子中にシクロオレフィン構造を有するポリカーボネートポリオールの存在によって、湿気硬化型ホットメルト接着剤に、より良好な機械強度や、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、耐加水分解性等の優れた耐久性が付与される。
【0056】
ポリオール成分(A)中の、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリカーボネートポリオールの含有量は、50〜90質量%の範囲内であることが好ましい。ポリオール成分(A)中の該ポリカーボネートポリオールの含有量が50質量%以上である場合、機械強度の向上効果がより良好に得られ、90質量%以下である場合、残部に、たとえば機械強度、最終接着強さ等の特性をより向上させるとともに、接着加工直後に接着部へ切削加工等の二次加工を施した際の該接着部の剥離等を防止する観点から、他のポリオールを含有させることができる。ポリオール成分(A)中の該ポリカーボネートポリオールの含有量は、70質量%以上であることがより好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
ポリカーボネートポリオールとしては、たとえば、炭酸と脂肪族系多価アルコールとをエステル化反応させて得られるものを使用でき、具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオール類と、ジメチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートまたはエチレンカーボネート等に代表される環式カーボネートとの反応生成物等が挙げられる。
【0058】
ポリカーボネートポリオールとしては、数平均分子量が500〜3000の範囲内のものが特に好ましく用いられる。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が500以上である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度の向上効果がより良好に得られ、3000以下である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の最終接着強さを良好に維持することができる。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、800以上であることがより好ましく、2000以下であることがより好ましい。
【0059】
(結晶性ポリエステルポリオール)
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤において、ポリオール成分(A)は結晶性ポリエステルポリオールを含有することが好ましい。ポリオール成分(A)が結晶性ポリエステルポリオールを含有する場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能がより良好となる。結晶性ポリエステルポリオールとして、典型的には、融点が60〜80℃の範囲内である結晶性ポリエステルポリオールを用いることができる。結晶性ポリエステルポリオールの融点が60℃以上である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能が特に良好となる。一方、結晶性ポリエステルポリオールの融点が80℃以下である場合には、湿気硬化型ホットメルト接着剤の流動性、加工性を良好に保つことができる。結晶性ポリエステルポリオールの融点は、65℃以上、さらに70℃以上であることがより好ましい。
【0060】
ポリオール成分(A)に占める結晶性ポリエステルポリオールの割合は、5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。ポリオール成分(A)に占める結晶性ポリエステルポリオールの割合が5質量%以上である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能をより向上させることができ、一方、該割合が50質量%以下である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度の過度な上昇を防止して流動性、加工性を良好に保つことができる点で有利である。
【0061】
結晶性ポリエステルポリオールの好ましい具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸、1,6−へキサンジオールとセバシン酸、1,4−ブタンジオールと1,12−ドデカンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジオールと1,12−ドデカンジカルボン酸、1,10−ノナンジオールとコハク酸、1,10−ノナンジオールとアジピン酸、1,8−オクタンジオールとアジピン酸、をそれぞれ反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0062】
特に、結晶性ポリエステルポリオールは、下記の一般式(1)、
【0063】
【化2】

【0064】
(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素原子数が偶数の直鎖のアルキレン基を示し、かつR1およびR2の有する炭素原子数の合計が12以上である。nは3〜40の整数を示す。)
で表されることが好ましい。
【0065】
一般式(1)中のR1は、炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基であり、R1およびR2の有する炭素原子数の合計が12以上になる範囲で適宜選択することができるが、炭素数が4以上の偶数である直鎖のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0066】
一般式(1)中のR2は、R1とは独立して炭素数が偶数である直鎖のアルキレン基であり、R1およびR2の有する炭素原子数の合計が12以上になる範囲で適宜選択できるが、炭素原子数が10以上の偶数である直鎖のアルキレン基であることが好ましい。
【0067】
1およびR2が、それぞれ上記の範囲内の炭素原子数を有する直鎖のアルキレン基である長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを使用する場合、得られるウレタンプレポリマーの結晶性が高まり、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能がより良好となる。
【0068】
一般式(1)中のnは3〜40の整数であり、9〜25の範囲内であることがより好ましく、9〜15の範囲内であることがさらに好ましい。nが3以上である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能が特に良好である。また、nが40以下である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度が高くなり過ぎず、作業性、加工性が特に良好である。
【0069】
上述したような長鎖脂肪族ポリエステルポリオールは、たとえば、炭素原子数が偶数である直鎖脂肪族ジオールと炭素原子数が偶数である直鎖脂肪族ジカルボン酸とを縮合反応させることによって製造することができる。直鎖脂肪族ジオールとしては、たとえばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、10−デカンジオール等を使用することができ、好ましくは1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールを使用することができる。
【0070】
直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、たとえばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を使用することができ、好ましくはセバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸を使用することができる。
【0071】
また、長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを製造する際に使用する直鎖脂肪族ジオールと直鎖脂肪族ジカルボン酸との組み合わせは、前述の一般式(1)で示されるR1およびR2に含まれる炭素原子数の合計が12以上、好ましくは12〜20の範囲内で適宜選択することができる。なかでも、直鎖脂肪族ジオールとして1,6−ヘキサンジオールを、直鎖脂肪族ジカルボン酸として1,12−ドデカンジカルボン酸またはセバシン酸を反応させて得られる長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを使用することが好ましい。
【0072】
結晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量は、10000以下であることが好ましく、3000〜5000の範囲内であることがより好ましい。該数平均分子量が10000以下である場合、作業性、加工性、および湿気硬化型ホットメルト接着剤の最終接着強さが特に良好である。なお、該数平均分子量が3000以上である場合には、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能が特に良好である。
【0073】
(その他のポリオール)
ポリオール成分(A)には、上述した以外のポリオールを含有させても良い。たとえば、ポリオール成分(A)が芳香族ポリエステルポリオールを含有する場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度がより良好となる。芳香族ポリエステルポリオールは、例えば芳香族ポリカルボン酸と低分子量の脂肪族ポリオールとを縮合反応させる方法や、脂肪族ポリカルボン酸と低分子量の芳香族ポリオールとを縮合反応させる方法等によって製造することができる。
【0074】
上記の芳香族ポリカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などが挙げられ、これらを単独で使用し、または2種以上を併用することができる。また、上記の脂肪族ポリカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0075】
上記の低分子量の脂肪族ポリオールの好ましい例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0076】
芳香族ポリエステルポリオールの製造においては、上記の低分子量の脂肪族ポリオールとしてエチレングリコールやネオペンチルグリコールを、上記の芳香族ポリカルボン酸としてイソフタル酸やテレフタル酸を、それぞれ選択し、芳香族ポリエステルポリオールのガラス転移温度がたとえば30℃以上、より典型的には30〜80℃の範囲内になるように、脂肪族ポリオールと芳香族ポリカルボン酸との組み合わせを適宜設計することができる。公知の方法により該脂肪族ポリオールと該芳香族ポリカルボン酸とを縮合反応させることにより、目的の芳香族ポリエステルポリオールを得ることができる。ポリオール成分(A)がこのような高ガラス転移温度の芳香族ポリエステルポリオールを含有する場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤により良好な機械強度が付与される。
【0077】
この場合の芳香族ポリエステルポリオールの数平均分子量は、たとえば400〜6000の範囲内、より好ましくは800〜4000の範囲内とされることができる。
【0078】
また、例えばジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルなどの側鎖を有する低分子量のポリオール等と、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の芳香族ポリカルボン酸とを適宜組み合わせ、公知の方法により該ポリオールと該芳香族ポリカルボン酸とを縮合反応させることにより、ガラス転移温度がたとえば−30℃〜60℃の芳香族ポリエステルポリオールを得ることができる。ポリオール成分(A)がこのような低ガラス転移温度の芳香族ポリエステルポリオールを含有する場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤により良好な最終接着強さが付与される。
【0079】
この場合の芳香族ポリエステルポリオールの数平均分子量は、たとえば400〜6000の範囲内、より好ましくは800〜4000の範囲内とされることができる。
【0080】
なお、芳香族ポリエステルポリオールの含有量は、ポリオール成分(A)のうち0.1〜20質量%の範囲内であることが好ましく、1〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。芳香族ポリエステルポリオールの含有量がポリオール成分(A)のうち0.1質量%以上である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度が良好であり、20質量%以下である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の最終接着強さが良好に保たれる。
【0081】
また、芳香族ポリオールとして、たとえば、ビスフェノールAやビスフェノールF等に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等を開環付加反応させて得られる芳香族ポリオールが含有されても良い。
【0082】
さらに本発明において、ポリオール成分(A)は、ポリエーテルポリオールを含有しても良い。この場合、ポリオール成分(A)に含有されるポリエーテルポリオールは、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤からなる接着層への応力を分散させる作用を有するため、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の最終接着強さを向上させる作用を有する。
【0083】
ポリエーテルポリオールとしては、たとえば脂肪族ポリエーテルポリオールが好ましく用いられる。ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、300〜10000の範囲内であることが好ましい。該数平均分子量が300以上である場合、最終接着強さの向上効果が良好である点で好ましく、10000以下である場合、ポリイソシアネートとの反応性が良好である点で好ましい。
【0084】
好ましいポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等を例示できる。
【0085】
ポリエーテルポリオールは、たとえば後述する低分子量ポリオールを開始剤として使用し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを開環重合させることによって製造することができる。また、開環重合によって得られた重合体に、さらにγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等を開環付加させることによって製造することも可能である。
【0086】
ポリエーテルポリオールを製造する際に開始剤として使用可能な低分子量ポリオールとしては、たとえばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0087】
ここで、たとえば2級水酸基を分子末端に有するポリエーテルポリオールは、一般に分子量が大きくなるにしたがってポリイソシアネートとの反応性が低下する傾向にある。2級水酸基を分子末端に有しかつ比較的分子量が大きいポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応性を改善する方法としては、ポリエーテルの両末端に、たとえばエチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させて、両末端が1級水酸基となるように変性する手法が有効である。このようなアルキレンオキシド変性ポリエーテルポリオールを用いる場合、イソシアネートとの反応性が良好でかつ良好な最終接着強さを有する湿気硬化型ホットメルト接着剤が得られる点で有利である。
【0088】
このようなアルキレンオキシド変性ポリエーテルポリオールの好ましい具体例としては、たとえば、ポリプロピレングリコールやポリブチレングリコールのポリエーテルポリオールの両末端をエチレンオキシド等のアルキレンオキシドで変性したアルキレンオキシド変性ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0089】
また、アルキレンオキシド変性ポリエーテルポリオールにおけるアルキレンオキシド由来の構造単位の含有量は、ポリエーテルポリオール全体のうち20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。アルキレンオキシド由来の構造単位の含有量がポリエーテルポリオール全体のうち20質量%以下である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の最終接着強さが良好であるとともに、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応性が良好である点で有利である。
【0090】
ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール成分(A)のうち0.1〜20質量%の範囲内とされることが好ましく、1〜10質量%の範囲内とされることがより好ましい。ポリエーテルポリオールの該含有量が0.1質量%以上である場合、最終接着強さの向上効果が良好である点で有利であり、20質量%以下である場合、ポリオール成分(A)中のたとえばポリオール(a)等の含有量が少なくなり過ぎることがなく、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および耐透湿性能が良好である点で有利である。
【0091】
さらに、ポリオール(A)には、上記したポリオール以外にも、本発明の目的を阻害しない範囲でその他のポリオールを含有させることができる。その他のポリオールとしては、例えば、上述した以外のポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールの他、アクリルポリオール、ひまし油系ポリオール等を使用することができる。
【0092】
<ポリイソシアネート成分(B)>
本発明において用いられるポリイソシアネート成分(B)は、分子中に2以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物である。
【0093】
ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートあるいは脂環式構造を有するポリイソシアネート等を使用することができる。中でも、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は加熱溶融させて使用するため、加熱溶融時の蒸気圧が低いジフェニルメタンジイソシアネートは特に好ましい。
【0094】
<ウレタンプレポリマーの製造>
次に、ウレタンプレポリマーの製造方法について詳細に説明する。本発明において、ウレタンプレポリマーは、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との反応によって得られる。ウレタンプレポリマーの製造は、公知慣用の方法で行なうことができ、例えば、反応容器中のポリイソシアネート成分(B)に、水分を除去したポリオール成分(A)を滴下した後、ポリオール成分(A)の有する水酸基が実質的に無くなるまで反応させる方法等が用いられる。ポリオール成分(A)が複数種類のポリオールからなる場合の上記の滴下は、各々のポリオールを別々に滴下する方法で行なわれても各々のポリオールの混合物を滴下する方法で行なわれても良い。
【0095】
ウレタンプレポリマーの製造は、通常、無溶剤で行なうことができるが、有機溶剤中で反応させることによって製造してもよい。有機溶剤中でポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させる場合には、反応を阻害しない酢酸エチル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤を使用することができるが、反応の途中または反応終了後に、減圧加熱等の方法により有機溶剤を除去することが好ましい。
【0096】
ウレタンプレポリマーを製造する際には、必要に応じてウレタン化触媒を使用することができる。ウレタン化触媒は、上記の反応の任意の段階で、適宜加えることができる。
【0097】
ウレタン化触媒としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の含窒素化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の金属塩;ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等を使用することができる。
【0098】
ウレタンプレポリマーを製造する際の、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との量比は、ポリイソシアネート成分(B)が有するイソシアネート基とポリオール成分(A)が有する水酸基との当量比(以下、「イソシアネート基/水酸基(当量比)」ともいう)が、1.1〜7.0の範囲内であることが好ましく、1.5〜5.0の範囲内であることがより好ましい。イソシアネート基/水酸基(当量比)をかかる範囲内に調整することによって、塗工性の良好な湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる。
【0099】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、120℃における溶融粘度が2000〜9000mPa・sの範囲内であることが好ましい。120℃における溶融粘度が上記の範囲内である場合、例えば建材用途の造作部材において一般的に使用される基材とシート状またはフィルム状の表面部材とを、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いて貼り合わせた際、貼り合わせてから一定時間内、目安として5分以内であれば、基材の表面を侵すことなく表面部材を容易に剥離することができる点で好都合である。
【0100】
<ウレタンプレポリマーの構造>
なお、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤に含有されるウレタンプレポリマーは、典型的には、下記の一般式(2)、
【0101】
【化3】

【0102】
(一般式(2)中、A1は、主鎖中にシクロオレフィン構造を有する2価の有機基、B1は、2価の有機基、oは、1以上の整数、をそれぞれ表す)
で表される繰返し単位を含む。
【0103】
本発明のウレタンプレポリマーの調製においてポリカーボネートポリオールを用いる場合、ウレタンプレポリマーは、典型的には、下記の一般式(3)、
【0104】
【化4】

【0105】
(一般式(3)中、A2は、主鎖中に炭酸エステル結合および芳香族基を有する2価の有機基、B1は上記一般式(2)と同様に2価の有機基、pは1以上の整数、をそれぞれ表す)
で表される繰返し単位をさらに含む。
【0106】
また、本発明において、ウレタンプレポリマーの調製の際に結晶性ポリエステルポリオールを用いる場合、ウレタンプレポリマーは、典型的には、下記の一般式(4)、
【0107】
【化5】

【0108】
(一般式(4)中、A3は、主鎖中に、炭素数の和が12以上で、実質的に直鎖状である脂肪族の2価の炭化水素基を含む2価の有機基、B1は上記一般式(2)と同様に2価の有機基、qは1以上の整数、をそれぞれ表す)
で表される繰返し単位をさらに含む。
【0109】
本発明において、ウレタンプレポリマーが上記の繰返し単位を含むことは、たとえばNMR(各磁気共鳴装置)を用いた分析等により確認できる。
【0110】
<ウレタンプレポリマー以外の成分>
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマーのみから構成されても良いが他の成分を含有しても良い。湿気硬化型ホットメルト接着剤中のウレタンプレポリマーの含有量は、50〜100質量%の範囲内、より好ましくは70〜99質量%の範囲内とされることができる。湿気硬化型ホットメルト接着剤中のウレタンプレポリマーの含有量が50質量%以上である場合、機械強度、接着強さおよび耐透湿性能が良好である。なお、該含有量が100質量%未満、さらに99質量%以下である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤をさらに改質するための種々の添加剤を含有させることができる。
【0111】
(充填材)
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、充填材をさらに含有することが好ましい。充填材を含有する場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の機械強度および耐透湿性能がより良好となる点で有利である。充填材は層状珪酸塩を主成分とすることが特に好ましい。ここで主成分とは全体の50質量%を超える量で含有される成分を意味する。充填材が層状珪酸塩を主成分とする場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の機械強度および耐透湿性能の向上効果がより良好に得られる点で有利である。
【0112】
層状珪酸塩の好ましい具体例としては、マイカ、タルク、カオリン、スメクタイト等が挙げられる。マイカとしては、有機処理マイカ、薄膜マイカが好ましい。
【0113】
充填材としては、上記の層状珪酸塩の他、たとえば、金属粉、炭酸カルシウム、クレー、カーボンブラック等をさらに用いても良い。
【0114】
(その他の成分)
さらに、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、硬化触媒、可塑剤、安定剤、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等の添加剤、熱可塑性樹脂等を、本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜、選択して使用することができる。
【0115】
粘着付与剤としては、例えばロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、水添テルペン系樹脂や、石油樹脂としてC5系の脂肪族樹脂、C9系の芳香族樹脂、およびC5系とC9系との共重合樹脂等を使用することができる。
【0116】
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、トリオクチルホスフェート、エポキシ系可塑剤、トルエン−スルホアミド、クロロパラフィン、アジピン酸エステル、ヒマシ油等を使用することができる。
【0117】
安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等を使用することができる。
【0118】
[造作部材]
本発明はまた、基材と、シート状またはフィルム状の表面部材と、該基材および該表面部材を接着する接着剤層と、を有し、接着剤層が上述したいずれかの湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化して形成されてなる、造作部材に関する。
【0119】
図1は、本発明に係る造作部材の構成の例を示す断面図である。造作部材1は、基材11と、シート状またはフィルム状の表面部材14,15とが、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化して形成された接着剤層12,13で貼り合わされることにより形成されている。なお図1においては基材の両面に本発明の表面部材が形成される場合について示しているが、本発明の表面部材が基材の片面のみに形成されても構わない。
【0120】
本発明の造作部材は、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いて、後述するような基材とシート状またはフィルム状の表面部材とを貼り合わせることによって製造することができ、例えば、ドア材、壁パネル、天井パネル、クローゼット扉、間仕切り、机、棚、収納家具等に使用することができる。
【0121】
基材としては、例えば、合板、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)、パーチクルボード等の木質基材や、アルミ、鉄等の金属基材等を使用することができる。基材は、溝部、R部、逆R部等の複雑な形状の部位を有していてもよい。
【0122】
表面部材としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなるシートまたはフィルムや、紙、突板、金属箔、等を使用することができる。中でも、ポリ塩化ビニルからなるフィルムおよびシート、ポリオレフィンからなるフィルムおよびシート、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムおよびシート、紙、から選択される少なくともいずれかが特に好ましく用いられる。
【0123】
表面部材は、無地または多彩な色、模様等で装飾が施された、一般に化粧紙、化粧板用原紙、化粧シートなどと称呼されているようなものであっても良い。また、表面部材の裏面、すなわち基材側となる面に、樹脂等によるプライマー処理が施されていても良い。
【0124】
基材と表面部材とを貼り合わせて本発明の造作部材を形成する方法としては、例えば、湿気硬化型ホットメルト接着剤を60〜150℃の範囲内に加熱することで溶融させ、ロールコーター、スプレーコーター、T−ダイコーター、ナイフコーター等を用いて該湿気硬化型ホットメルト接着剤を基材上に塗布し、塗布面に表面部材を貼り合わせる方法や、上記と同様に溶融させた湿気硬化型ホットメルト接着剤を、ロールコーター等を用いて表面部材の上に塗布し、その塗布面に基材を貼り合わせて、ロールプレス、フラットプレス、ベルトプレス等の方法で基材の形状に合わせて適宜、圧着させる方法等が挙げられる。
【0125】
[フラッシュパネル]
本発明はまた、芯材の両面に上述の造作部材を接着してなるフラッシュパネルに関する。本発明のフラッシュパネルは、ドア材、壁パネル、天井パネル、クローゼット扉、間仕切り、机、棚、収納家具等に使用することができる。
【0126】
図2は、本発明に係るフラッシュパネルの構成の例を示す断面図である。フラッシュパネル200においては、接着剤層12,13を介して基材11の両面に表面部材14,15が貼り合わされてなる造作部材1と、接着剤層22,23を介して基材21の両面にフィルム状またはシート状の表面部材24,25が貼り合わされてなる造作部材2とが、芯材3の両面に接着されている。なお図2においては芯材の両面に本発明の造作部材が形成される場合について示しているが、本発明の造作部材が芯材の片面のみに形成されても構わない。
【0127】
芯材としては、例えば、LVL(単板積層材)、合板、OSB(配向性ストランドボード)、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質材、アルミニウム、マグネシウム、鋼板、SUS等の金属材、紙材、等を用いることができる。フラッシュパネルの軽量化や断熱性の向上が可能な点で、芯材はハニカム構造を有することが特に好ましい。
【0128】
芯材と造作部材とを接着して本発明のフラッシュパネルを形成する方法としては、例えば、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤を、ロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、ダイコーター等で化粧造作材に塗布し、フラットプレス、ロールプレス、ベルトプレス等の方法により芯材と造作部材とを接着する方法等を用いることができる。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0130】
<ポリオール成分(A)>
表2および表3の配合処方における、シクロオレフィン構造を有するポリオール(a)であるポリオール(a−1),(a−2),(a−3),(a−4),(a−5)、および、シクロオレフィン構造を有さないポリオールであるポリオール(a’−6),(a’−7),(a’−8)の詳細は表1および以下の通りである。
【0131】
(合成例1:ポリオール(a−5)の調製例)
2リットルの四つ口フラスコに内に、シクロヘキサンジメタノールを100質量部、エチレングリコールを125質量部、ネオペンチルグリコールを210質量部、イソフタル酸を350質量部、テレフタル酸を280質量部およびアジピン酸を50質量部、ブチル酸スズを0.03質量部加え、220℃で反応させることによって、シクロ環構造を有するポリエステルポリオールであるポリオール(a−5)(表2,3中では、「CHPES」とも記載)を調製した。
【0132】
(合成例2:ポリオール(a’−7)の調製例)
4リットルのフラスコに、1,12−ドデカンジカルボン酸(分子量230.30)を1150質量部、1,6−へキサンジオール(分子量118.17)を615質量部、およびエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.007質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、攪拌しながら3〜4時間かけて220℃に昇温して4時間保持した後、100℃に冷却することによって、長鎖脂肪族ポリエステルポリオールであるポリオール(a’−7)(表2,3中では、「HG/DDA」とも記載)(数平均分子量3500、酸価0.4、水酸基価31.6)を調製した。
【0133】
(合成例3:ポリオール(a’−8)の調製例)
2リットルのフラスコにアジピン酸を720質量部、1,6−ヘキサンジオール(分子量118.17)を615質量部、およびエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.007質量部添加し、120℃でそれらを溶融した。次いで、攪拌しながら3〜4時間かけて220℃で昇華して4時間保持した後、100℃に冷却することによって、長鎖脂肪酸ポリエステルポリオールであるポリオール(a’−8)(表2,3中では、「HG/AA」とも記載)(数平均分子量4500、酸価0.1、水酸基価24.8)を調製した。
【0134】
また、ポリオール(a−1),(a−2),(a−3),(a−4),(a’−6)として、表1に示す市販品を用いた。
【0135】
【表1】

【0136】
注1:(a−1)は、下記の一般式(5)、
【0137】
【化6】

【0138】
(一般式(5)中、rは、2〜16である)
で表される構造からなるポリオール(a−1)である。
注2:(a−2)は、上記の一般式(5)で表される構造の数Xと、下記の一般式(6)、
【0139】
【化7】

【0140】
(一般式(6)中、rは、2〜21である)
で表される構造の数Yとの比(X/Y)が3/1であるポリオール(a−2)である。
注3:(a−3)は、上記の比(X/Y)が1/1であるポリオール(a−3)である。
注4:(a−4)は、上記の比(X/Y)が1/3であるポリオール(a−4)である。注5:(a’−6)は、ヘキサンジオールとポリカーボネートとに由来するポリオール(a’−6)である。
【0141】
<充填材の調製>
後述の表2および表3の配合処方における有機処理マイカおよび薄膜マイカの詳細は下記の通りである。
【0142】
(有機処理マイカの調製)
クラライト・マイカ300−D(株式会社クラレ製)100質量部をイソプロピルアルコール150質量部中に分散し、続いてアクリルプロピルシラン(信越化学株式会社製、KBM503)を2質量部加え、30分間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて上記のイソプロピルアルコールを除去し、さらに、80℃減圧乾燥を8時間行なうことで、有機処理マイカを得た。
【0143】
(薄膜マイカ)
薄膜マイカとしては、商品名「斐川マイカZ20」(斐川礦業株式会社製、劈開処理セリサイト、最大粒径20μm、厚さ0.01〜0.1μm)を使用した。
【0144】
<実施例1>
(湿気硬化型ホットメルト接着剤の調製)
表2に示す配合処方に従い、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を調製した。2リットル4ツ口フラスコ内で、シクロオレフィン構造を有するポリオール(a−3)604質量部と、長鎖脂肪族ポリエステルであるポリオール(a’−7)67質量部とを混合し、100℃で減圧加熱することにより、4ツ口フラスコ内の全量に対する水分が0.05質量%となるまで脱水した。
【0145】
上記の4ツ口フラスコ内を70℃に冷却した後、70℃で溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、ミリオネートMT)を328質量部加え、イソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(I)を得た。
【0146】
次に、上記のウレタンプレポリマー(I)と、有機処理マイカ150質量部と、消泡剤として、SH5500(東レダウコーニングシリコーン株式会社製)0.02質量部とを混合し、110℃で2時間攪拌することによって湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を調製した。
【0147】
(試験片の作製)
図3は、造作部材の常態接着強さの評価に用いた試験片の作製方法について説明する図である。基材31としてのミディアムデンシティファイバーボード(MDF:縦300mm、横300mm、厚み2.4mm)の片表面に、表面部材(図示せず)としてのオレフィン化粧シートが貼り合わされた造作部材を用意し、該造作部材のオレフィン化粧シートが貼り合わされていない方の面に、120℃で加熱溶融した湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を、ロールコーター(速度5m/分)を用いて、塗布量が120g/m2となるように塗布した。
【0148】
次いで、上記で形成した湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の塗布面32に、基材33として、単板積層材(LVL(Laminated Veneer Lumber)合板:縦300mm、横30mm、厚み25mm)10本を、図3に示すように載置した。
【0149】
その後、上記塗布面32の上に載置されたLVL合板上に、上記と同様の方法で湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗布した上記と同様の造作部材を載置し、載置から1分後に、2kgf/cm2で30秒間、平面プレス器を用いて圧締して、1辺50mmの立方体を切り出したものを、常態接着強さを評価するための試験片を得た。
【0150】
(フラッシュパネルの作製)
上記で得た湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を用いてフラッシュパネルを作製した。図4は、フラッシュパネルの作製に用いた枠材について説明する図であり、図5は、フラッシュパネルの反り評価の方法について説明する図である。ミディアムデンシティファイバーボード(MDF:縦300mm、横300mm、厚み2.4mm)の片表面にオレフィン化粧シートが貼り合わされた造作部材51を用意し、該造作部材のオレフィン化粧シートの貼り合わされていない方の面に、湿気硬化型ホットメルト接着剤を、ロールコーター(速度5m/分)を用いて、塗布量が120g/m2となるように塗布した。次いで、上記で形成した湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の塗布面に、図4に示す枠材400を載置し、該枠材400上に、上記と同様に湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗布した上記と同様の造作部材51を載置した。
【0151】
載置から1分後に、2kgf/cm2で30秒間、平面プレス器を用いて圧締することによってフラッシュパネル500を得た。
【0152】
<比較例1>
(造作部材の作製)
市販品の接着剤および防湿紙を用いて造作部材を作製した。横300mm、縦1820mm、厚み2.4mmのMDFの片表面にオレフィン化粧シートが貼り合わされた造作部材の、オレフィン化粧シートが貼り合わされていない方の面に、タイフォースH−845(大日本インキ化学工業株式会社製)を、20m/分の速度、120℃の温度に調整したロールコーターを用いて、塗布量が40g/m2となるように塗布した後、該塗布面に、連続して防湿紙(凸版印刷株式会社製、VSシート)を貼り合わせ、次いで、ゴム製のバックアップロールと金属製のロールからなるロールコーターを用いて圧締し、さらに2日間養生することによって、耐透湿性能を有する造作部材を作製した。
【0153】
MDFおよびオレフィン化粧シートからなる部材に防湿紙を貼り合わせる際には、防湿紙の皺の発生等に起因した耐透湿性能の低下や、外観不良等の不良品が一部で見られた(歩留り90%)。また、上記の防湿紙の貼り合わせ開始から養生終了までに3日間を要した。
【0154】
(フラッシュパネルの作製)
上記の方法で得られた造作部材の防湿紙からなる方の面に、防湿機能のない湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤(商標名:タイフォースFH−420、大日本インキ化学工業株式会社製)を、上記と同様のロールコーターを用いて、5m/分の速度で、塗布量120g/m2となるように塗布して、フラッシュパネルを作製した。
【0155】
<実施例2〜6,比較例2〜5>
表2に示す実施例1の配合処方に代えて表2および表3に示す各々の配合処方に従った他は実施例1と同様の方法で、実施例2〜6,比較例2〜5として、ウレタンプレポリマー(II),(III),(IV),(V),(VI),(VIII),(IX),(X),(XI)の調製、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の調製、造作部材およびフラッシュパネルの作製を行なった。
【0156】
[性能評価]
(溶融粘度)
得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を125℃で加熱溶融させたときの溶融粘度をICI型コーンプレート粘度計(ICI社製、コーン直径:19.5mm、コーン角度:2.0°)を用いて測定した。
【0157】
(透湿度)
表面温度100℃に調整したガラス板上に、ポリエチレンテレフタレートからなる離型フィルムを載置した。該離型フィルム上に、120℃で加熱溶融した湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を、膜厚が100μmになるようにアプリケーターを用いて塗布し、塗布物を調製した。該塗布物を、温度23℃および相対湿度65%の雰囲気下で1週間養生した後、該湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤から形成されたフィルムを該離型フィルムから剥離し、測定用試料とした。該測定用試料の透湿度を、透湿度カップ法(JIS−Z−0208−B法)に基づいて測定した(単位:g/m2・24hr)。なお、透湿度は、概ね35以下であれば耐透湿性能において良好であり、20以下であればより好ましい。
【0158】
なお比較例1については、上記のフィルムに代えてVSシートの透湿度を測定した。また、上記タイフォースFH−420からなる硬化皮膜の透湿度を上記と同様の方法で測定したところ、100であった。
【0159】
(造作部材の常態接着強さの評価方法)
図3に示す方法で作製した上述の試験片を用いて常態接着強さの評価を行なった。評価は、JAS(昭和44年10月施行)の平面引張試験方法に準拠して行なった。具体的には、上記で作製した試験片を、オレフィン化粧シートからなる面が上になるように固定した後、その面に、LVL合板に達する深さの正方形の溝(1辺が20mm)を作製した。次に、該正方形の表面を♯120のサンドペーパーを用いて研磨した後、該表面に接着剤(アロンアルファプロ用No.3)東亜合成株式会社製)を塗布し、同形の金属部材を接着した。
【0160】
接着した該金属部材を上方に引き上げたときの造作部材とLVL合板との接着強さを測定した。評価は、10個の試験片に対して行ない、その平均値(単位:kg/cm2)を算出した。
【0161】
(フラッシュパネルの反りの評価方法)
上記で作製したフラッシュパネルにつき、温度40℃および相対湿度30%の雰囲気下での養生を8時間、ならびに、温度40℃および相対湿度90%の雰囲気下での養生を16時間行なうことを1サイクルとし、これを5サイクル行なった後の、フラッシュパネルの反りを測定した。
【0162】
フラッシュパネルの反りは、図5に示すフラッシュパネルの長方向の反り量Hが、養生前のフラッシュパネルを基準としたときに5mm未満である場合を○と評価し、5mm以上である場合を×と評価した。
【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
表2,3の結果に示すように、湿気硬化型ホットメルト接着剤から形成された各実施例のフィルムの透湿度は、比較例1の30に対して15〜32の範囲内であり、良好な耐透湿性能を示した。また、養生終了までの期間について、比較例1の4日間に対して各実施例では1日間と顕著に低減された。また歩留りについて、比較例1の90%に対して各実施例ではほぼ100%と顕著に向上した。これらの結果から、本発明によれば、透湿性能に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を得ることができ、さらに該接着剤を用いたフラッシュパネルを効率良く製造できることが確認された。
【0166】
一方、ウレタンプレポリマー中のシクロオレフィン構造の含有量が少な過ぎる比較例2,4、およびウレタンプレポリマー中にシクロオレフィン構造を含まない比較例3においては、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤から形成されたフィルムの透湿度が高く、またこれに起因してフラッシュパネルの反りが生じた。またウレタンプレポリマー中のシクロオレフィン構造の含有量が多過ぎる比較例5においても、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤から形成されたフィルムの透湿度が高かった。よって、ウレタンプレポリマー中のシクロオレフィン構造の含有量を所定の範囲内とすることによって、優れた耐透湿性能を与える湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を得ることができることが確認された。
【0167】
また、層状珪酸塩である有機処理マイカまたは薄膜マイカを充填材としてさらに含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を用いた実施例1,2においては、充填材を含有しない場合と比べて、透湿度がさらに低い値を示し、充填材を含有させることによって耐透湿性能を一層向上させることが可能であることが確認された。
【0168】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、例えばドア材、壁パネル、天井パネル、クローゼット扉、間仕切り、机、棚、収納家具、窓枠、幅木、床部材等の建築部材の耐透湿層として好適に適用され、本発明の造作部材およびフラッシュパネルは、例えば上記のような建築部材として好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明に係る造作部材の構成の例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るフラッシュパネルの構成の例を示す断面図である。
【図3】造作部材の常態接着強さの評価に用いた試験片の作製方法について説明する図である。
【図4】フラッシュパネルの作製に用いた枠材について説明する図である。
【図5】フラッシュパネルの反り評価の方法について説明する図である。
【符号の説明】
【0171】
1,2,51 造作部材、11,21,31,33 基材、12,13,22,23 接着剤層、14,15,24,25 表面部材、3 芯材、32 塗布面、200,500 フラッシュパネル、400 枠材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有し、
前記ポリオール成分(A)は、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリオール(a)を含有し、
前記ウレタンプレポリマー中の前記シクロオレフィン構造の含有量が10〜30質量%の範囲内である、湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記ポリオール成分(A)中の前記ポリオール(a)の含有量が50〜100質量%の範囲内である、請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記ポリオール(a)の数平均分子量が500〜3000の範囲内である、請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記シクロオレフィン構造が、シクロヘキサン構造である、請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記ポリオール成分(A)が、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリカーボネートポリオールを50〜90質量%の範囲内で含有する、請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項6】
前記ポリオール成分(A)は、融点が60〜80℃の範囲内である結晶性ポリエステルポリオールを含有する、請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項7】
前記結晶性ポリエステルポリオールは、下記の一般式(1)、
【化1】

(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素原子数が偶数の直鎖のアルキレン基を示し、かつR1およびR2の有する炭素原子数の合計が12以上である。nは3〜40の整数を示す。)
で表される、請求項6に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項8】
充填材をさらに含有する、請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項9】
前記充填材は層状珪酸塩を主成分とする、請求項8に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項10】
基材と、シート状またはフィルム状の表面部材と、前記基材および前記表面部材を接着する接着剤層と、を有し、前記接着剤層は請求項1〜9のいずれかに記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤を硬化して形成されてなる、造作部材。
【請求項11】
前記基材が木質基材であり、前記表面部材が、ポリ塩化ビニルからなるフィルムおよびシート、ポリオレフィンからなるフィルムおよびシート、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムおよびシート、紙、から選択される少なくともいずれかである、請求項10に記載の造作部材。
【請求項12】
芯材の両面に請求項10に記載の造作部材を接着してなる、フラッシュパネル。
【請求項13】
前記芯材がハニカム構造を有する、請求項12に記載のフラッシュパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−231151(P2008−231151A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68622(P2007−68622)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】