説明

湿気硬化型ホットメルト接着剤

【課題】初期接着強度が高く、耐熱性にも優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと、(A)脂環式構造を有するアクリルポリマーとを含み、ウレタンプレポリマーは、結晶性ポリエステルポリオールに由来する化学構造を有する湿気硬化型ホットメルト接着剤であり、(A)アクリルポリマーが、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸誘導体に由来する化学構造を有する湿気硬化型ホットメルト接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ホットメルト接着剤、特に初期接着強度及び耐熱性に優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建築内装材分野(又は建材分野)及び電子材料分野等の様々な分野で、湿気硬化型ホットメルト接着剤が利用されている。湿気硬化型ホットメルト接着剤は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む接着剤であって、一般に加熱溶融状態で被着体同士(又は基材と被着体)に塗工され、冷却固化することによる初期接着後、イソシアネート基が大気中の水分で架橋して、ウレタンプレポリマーが高分子量化することによる湿気硬化によって、接着力及び耐熱性等が向上する接着剤である。
【0003】
湿気硬化型ホットメルト接着剤に要求される性能の一つとして、初期接着強度がある。初期接着強度を高くする手段として、熱可塑性樹脂を湿気硬化型ホットメルト接着剤に配合し、初期凝集力を向上させる方法がある。
【0004】
特許文献1及び2は、低分子量のアクリル樹脂を添加することで、ウレタンホットメルト接着剤の凝集力及び接着強度を改善することを開示する(特許文献1段落番号0001及び特許文献2第2頁左欄第32〜35行参照)。
しかし、両文献の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、熱可塑性樹脂として配合されたアクリル樹脂が低分子量であるため、ユーザーにとっては充分満足できる初期接着強度ではなかった。
【0005】
特許文献3は、高分子量アクリルポリマーが添加されたウレタンホットメルト接着剤を開示する(特許文献3請求項1参照)。高分子量のアクリルポリマーが添加されることで、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度の向上が期待される。しかしながら、添加されるアクリルポリマーが高分子量になると、アクリルポリマーがウレタンプレポリマーと相溶し難くなる。
【0006】
更に、近年では、湿気硬化型ホットメルト接着剤に対する要求が厳しくなっている。湿気硬化型ホットメルト接着剤には、初期接着強度だけではなく、湿気硬化後の耐熱性に優れていることも要求されている。近年の高い要求性能を考慮すると、同文献の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、湿気硬化後の耐熱性が充分とは言い難い。
【0007】
このように、近年では、初期接着強度及び耐熱性の双方に優れた湿気硬化型ホットメルト接着剤が望まれており、その開発が急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−78515号公報
【特許文献2】特公平6−4840号公報
【特許文献3】特表2008−500406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、その課題は、初期接着強度が高く、更に、耐熱性にも優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、特定のアクリルポリマーを添加することで、初期接着強度に優れ、更に、湿気硬化後の耐熱性にも優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、一の要旨において、
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと、(A)脂環式構造を有するアクリルポリマー(以下、「(A)アクリルポリマー」ともいう)を含み、
ウレタンプレポリマーが結晶性ポリエステルポリオールに由来する化学構造を有する湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【0012】
本発明は、一の態様において、(A)アクリルポリマーは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸誘導体に由来する化学構造を有する湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【0013】
本発明は、他の態様において、結晶性ポリエステルポリオールは、融点が55℃以上である湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
本発明は、他の好ましい態様において、(A)アクリルポリマーは、ガラス転移温度が60℃以上である湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【0014】
本明細書において、「脂環式構造」とは、炭素原子が環状に結合した環状構造を意味し、置換基を有しても分岐構造を有してもよいが、芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等)を含まない。「脂環式構造」として、例えば、シクロヘキシレン、シクロヘキシル、イソボルニル等を例示することができる。
このような脂環式構造は、通常脂環式構造を有する有機化合物に由来する。本発明において「脂環式構造を有する有機化合物」とは、具体的には、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等を例示できるが、(A)アクリルポリマーに、「脂環式構造」を提供することから、更にエチレン性(又はラジカル重合性)二重結合を有する単量体であることが好ましい。
【0015】
本明細書では、「初期接着強度」とは、湿気硬化型ホットメルト接着剤を溶融して被着体に塗布した後、接着剤の温度が低下して固化した時の接着強度をいう。初期接着強度は、接着剤の「濡れ性」や「凝集力」に影響される。初期接着強度は、大きいことが好ましい。
【0016】
「凝集力」とは、加熱溶融した湿気硬化型ホットメルト接着剤を、アプリケーターを用いて塗布した後、接着剤が冷える過程で生じる、接着剤中の分子間に働く相互作用に起因する力をいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと、(A)脂環式構造を有するアクリルポリマーとを含み、
ウレタンプレポリマーが結晶性ポリエステルポリオールに由来する化学構造を有するので、
初期接着強度に優れ、湿気硬化後の耐熱性にも優れる。
このような本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、夏場の使用に好適であり、耐熱性の要求が厳しい建材用途に適する。
【0018】
(A)アクリルポリマーがシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸誘導体に由来する化学構造を有する場合、初期接着強度及び湿気硬化後の耐熱性がよりいっそう向上する。
【0019】
上記結晶性ポリエステルポリオールの融点が55℃以上である場合、初期接着強度が著しく向上する。
(A)アクリルポリマーのガラス転移温度が60℃以上である場合、初期接着強度が更に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、「イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー」を含んで成る。
本発明に係る「イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー」とは、通常「ウレタンプレポリマー」と理解されるものであって、「イソシアネート基を末端に有」し、かつ、結晶性ポリエステルポリオールに由来する化学構造を有する。
【0021】
本発明に係るウレタンプレポリマー(以下「ウレタンプレポリマー」ともいう)は、結晶性ポリエステルポリオールを含むポリオールとイソシアネート化合物とを従来既知の方法にしたがって反応させることで得ることができる。
【0022】
本発明において、結晶性ポリエステルポリオールとは、一般的に結晶性ポリエステルポリオールとされるものをいい、より特には、融点を有するポリエステルポリオールをいう。
本発明では、結晶性ポリエステルポリオールの融点は、55℃以上であることが好ましく、特に60℃以上であることが好ましく、60℃〜75℃であることが最も好ましい。融点が55℃以上である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度がより向上する。
本明細書では、融点は、DSC(示差走査熱量計)で測定された値をいう。示差走査熱量計によって、測定試料と基準物質との間の熱量の差が計測され、測定資料の融点が算出される。具体的には、−50℃から10℃/分で150℃まで昇温して観察される吸熱ピークのピークトップを融点とした。
【0023】
尚、本発明に関するウレタンプレポリマーは、結晶性ポリエステルポリオールに由来する化学構造を有していれば、他のポリオール(例えば、非晶性ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール等)に由来する化学構造を含んでいても良い。
非晶性ポリエステルポリオールは、一般に非晶性ポリエステルポリオールとされるものをいうが、より特には、融点を有さずガラス転移温度のみを有するポリエステルポリオールをいう。
【0024】
結晶性ポリエステルポリオールと非晶性ポリエステルポリオールとは、DSCでも容易に区別される。結晶性ポリエステルポリオールの融点は、DSC測定によって、昇温時に吸熱ピークとして観察され、降温時には発熱ピークとして観察される。
非晶性ポリエステルポリオールの融点はDSCで測定すると、明確に観察されないことから、結晶性ポリエステルポリオールと区別することは可能である。
尚、一般的に、結晶性ポリエステルポリオールは固体状態で白色不透明であるのに対し、非晶性ポリエステルポリオールは透明である。
【0025】
上述の「結晶性ポリエステルポリオールを含むポリオール」は、本発明が目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、通常のポリウレタン製造に使用されるポリオールを含むことができる。これらの通常使用されるポリオールは、結晶性であっても、非晶性であってもよい。
ポリオールとして、官能基数が1〜3個のものが好ましく、特に、二官能性ポリオール、いわゆるジオールが好ましい。このようなポリオールは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0026】
ジオールには、例えば、エチレングリコール、1−メチルエチレングリコール、1−エチルエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール等の炭素原子数が、2〜12の低分子量ジオールが含まれる。エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール及びデカンジオールから選択される少なくとも一種が好ましい。これらのジオールは、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0027】
本発明に係る「ポリオール」は、結晶性ポリエステルポリオールを含み、例えば、非晶性ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール等の他のポリオールを含み得る。
結晶性ポリエステルポリオール及び非晶性ポリエステルポリオールとして、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオールを例示できる。
【0028】
脂肪族ポリエステルポリオールは、脂肪族ジカルボン酸と上述のジオールとの反応で得ることができる。脂肪族ジカルボン酸として、例えばアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカメチレンジカルボン酸を例示できる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。脂肪族ポリエステルポリオールの一例として、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)、ポリヘキサメチレンセバケート(PHMS)、ポリヘキサメチレンドデカネート(PHMD)、ポリブチレンアジペート(PBA)を例示できる。
【0029】
芳香族ポリエステルポリオールは、芳香族ポリ(又はジ)カルボン酸と上述のジオールとの反応で得られるものが好ましい。芳香族ポリ(又はジ)カルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を例示できる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。芳香族ポリエステルポリオールの一例として、ポリアルキレンフタレート、ポリアルキレンイソフタレート、ポリアルキレンテレフタレートを例示できる。
【0030】
ポリエーテルポリオールには、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及び、ポリオキシエチレングリコール(PEG)等が含まれる。ポリエーテルポリオールとして、特にポリオキシプロピレングリコールが好ましい。
【0031】
本発明では、結晶性ポリエステルポリオールを含むポリオールはポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。即ち、結晶性ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを混合し、そのポリオール混合物とイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを合成することが好ましい。
本発明の態様としては、60℃〜75℃の融点を有する結晶性ポリエステルポリオールとポリオキシプロピレングリコールとのポリオール混合物をイソシアネート化合物と反応させてウレタンプレポリマーを合成することがより好ましい。
【0032】
本発明における、イソシアネート化合物は、目的とするウレタンプレポリマーを得ることができれば特に制限されるものではなく、通常のポリウレタン製造に使用されるものであれば差し支えない。イソシアネート化合物として、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均1〜3個のものが好ましく、特に、二官能性イソシアネート化合物、いわゆるジイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
「イソシアネート化合物」として、例えば、エチレンジイソシアネート、エチリデン−ジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレン−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−ジイソシアネート、トルエン−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、アゾベンゼン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジクロロヘキサメチレンジイソシアネート、フルフリデンジイソシアネート、及び1−クロロベンゼン−2,4−ジイソシアネート等を例示できる。イソシアネート化合物は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明に係る「ウレタンプレポリマー」を製造する場合、目的とするウレタンプレポリマーを得られる限り、モノオールやモノイソシアネートを用いることができ、三官能性ポリオール及び三官能性イソシアネートを用いることもできるが、二官能性ポリオール(ジオール)及び二官能性イソシアネート(ジイソシアネート)を用いて製造することが好ましい。
【0035】
「ウレタンプレポリマー」は、二官能性ポリオール及び二官能性イソシアネートを反応させて製造することが、得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤の熱安定性及び製造方法(及びその製造工程)の制御の点から、より好ましい。尚、1モルの二官能性ポリオールに対して2モルの二官能性イソシアネートを用いると、比較的容易に目的とするウレタンプレポリマーを製造できるので好ましい。
【0036】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、上述の「ウレタンプレポリマー」と(A)アクリルポリマーとを混合することで製造される。
具体的には、予め製造された「ウレタンプレポリマー」と(A)アクリルポリマーとを混合することで、湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造してもよいし、ウレタンプレポリマーの前駆体であるポリオールとイソシアネート化合物を(A)アクリルポリマーと混合、ポリオールとイソシアネート化合物を反応させることで、湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造してもよい。
【0037】
(A)脂環式構造を有するアクリルポリマーとは、アクリルポリマーであって、その炭素骨格に脂環式構造を有するポリマーをいうが、一般的には、脂環式構造を有し、エチレン性二重結合を有する単量体(以下、「脂環式構造を有する単量体」ともいう)を含む単量体を重合して得ることができる。尚、芳香環を含む場合、脂環式構造を有する単量体に含まれない。
【0038】
そのような脂環式構造を有し、エチレン性二重結合を有する単量体として、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a)(以下、「(メタ)アクリル酸(a)」ともいう)が好ましい。
(メタ)アクリル酸誘導体(a)として、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートを例示することができ、また、これらから選択される少なくとも1種が好ましく、特に、イソボルニルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートが好ましく、シクロヘキシルメタクリレートが最も好ましい。これらの脂環式化合物に由来する化学構造によって、(A)アクリルポリマーが脂環式構造を有することになる。
【0039】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸誘導体」とは、メタクリル酸誘導体及びアクリル酸誘導体の双方を意味し、単に「メタクリル酸誘導体」と記載した場合、メタクリル酸自身も含むことがある。単に「アクリル酸誘導体」と記載した場合、アクリル酸自身も含むことがある。
【0040】
本発明では、(A)アクリルポリマーは、上述の脂環式構造を有する単量体である(メタ)アクリル酸誘導体(a)を単独で重合して得ることができるが、(メタ)アクリル酸誘導体(a)とその他のエチレン性二重結合を有する単量体(以下「その他の単量体」ともいう)との共重合体であることが好ましい。
【0041】
本明細書において「その他のエチレン性二重結合を有する単量体」とは、脂環式構造を有する単量体以外の単量体をいい、そのような単量体として、芳香環を有し、エチレン性二重結合を有する単量体(以下「芳香環を有する単量体」ともいう)と、環状構造を有さず、エチレン性二重結合を有する単量体(以下「環状構造を有さない単量体」ともいう)等を例示することができる。
その他のエチレン性二重結合を有する単量体として、環状構造を有さない単量体が好ましく、環状構造を有さない(メタ)アクリル酸誘導体がより好ましい。
本発明の好ましい態様として、脂環式構造を有する単量体と環状構造を有さない(メタ)アクリル酸誘導体とを共重合することで(A)アクリルポリマーを生成し、(A)アクリルポリマーをウレタンプレポリマーに配合することを例示できる。
【0042】
環状構造を有さない(メタ)アクリル酸誘導体として、炭素原子が鎖状に結合した(枝分かれを有し得る)鎖状構造を有してよい(メタ)アクリル酸誘導体(a’)を例示できる。そのような(メタ)アクリル酸誘導体(a’)は、以下のように区別され得る。
炭素数6以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a’)、
炭素数6未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a’)、
(メタ)アクリル酸(a’)及び
その他の(メタ)アクリル酸誘導体(a’)。
【0043】
炭素数6以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a’)は、例えば、
n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(又はラウリル)(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;
N−ヘキシルアクリル酸アミド、N−オクチルアクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸アミド;
(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸アミドは、(メタ)アクリル酸アルキルアミドであることが好ましい。
【0044】
アルキル基は、(例えば、n−ヘキシル及びn−オクチル等の)直鎖状でも、(例えば、2−エチルヘキシル等の)分枝状でもよく、(例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、メトキシ基等の)置換基を有していても有していなくてもよいが、有さないことが好ましい。
【0045】
炭素数6以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a’)は、炭素数6以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
これらは、単独で用いても、複数種組み合わせて用いても良い。
【0046】
炭素数6未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a’)は、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;
N,N−ジメチルアクリル酸アミド、N−ブチルアクリル酸アミド、N−プロピルアクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸アミド;
2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸等のその他誘導体を含む。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸アミドは、(メタ)アクリル酸アルキルアミドであることが好ましい。
【0048】
アルキル基は(例えば、メチル、エチル及びプロピル等の)鎖状構造であってもよく、(例えば、n−プロピル、n−ブチル等の)直鎖状でも、(例えば、イソブチル及びt−ブチル等の)分枝状でもよく、(例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、メトキシ基等の)置換基を有していても有していなくてもよいが、有さないことが好ましい。
【0049】
炭素数6未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a’)は、炭素数6未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
これらは、単独で用いても、複数種組み合わせて用いても良い。
【0050】
(メタ)アクリル酸(a’)は、アクリル酸及びメタクリル酸から選択される少なくとも一種を含む。
「その他の(メタ)アクリル酸誘導体(a’)」は、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等を含む。
これらは、単独で用いても、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明において、(A)アクリルポリマーは、目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得られる限り、芳香環を含んでいてもよく、芳香環は、芳香環を有する単量体を用いることで、提供される。
【0052】
芳香環を有する単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル
3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸アミド等
クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエステル類
スチレン、アルキルスチレン等が含まれる。
【0053】
本発明の態様としては、
(A)アクリルポリマーは、脂環式構造を有する単量体である(メタ)アクリル酸誘導体(a)と鎖状構造を有してよい(メタ)アクリル酸誘導体(a’)との共重合体を含み、
(メタ)アクリル酸誘導体(a)はシクロヘキシル(メタ)アクリレートであることが好ましく、特に望ましいのはシクロヘキシルメタクリレートであり、
(メタ)アクリル酸誘導体(a’)はメチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸から成る群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、特に望ましいのはメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メタクリル酸である。
【0054】
従って、本発明における(A)アクリルポリマーの最も好ましい態様は、シクロヘキシルメタクリレートと、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びメタクリル酸との共重合体である。
【0055】
(A)アクリルポリマーの製造方法は、本発明が目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる製造方法であれば、特に制限することなく使用することができる。
通常、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等を用いて製造することができる。
【0056】
本発明では、(A)アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、特に80℃〜100℃であることが最も望ましい。Tgが60℃以上であることによって、最終的に得られる“湿気硬化型ホットメルト接着剤”の初期接着強度が向上する。
(A)アクリルポリマーは、脂環式構造を有する単量体(a)と「脂環式構造を有さないその他の単量体(a’)」を含む単量体混合物を重合して得られるので、単量体(a)と「その他の不飽和単量体(a’)」の種類、及び単量体(a)と「その他の和単量体(a’)」の混合比(重量部)によって、(A)アクリルポリマーのTgが定まる。
【0057】
所望のTgを有するアクリルポリマーを設計するためには、単量体混合物中の単量体(a)及びその他の単量体(a’)の各々の単量体が単独重合したときに得られるホモポリマーのガラス転移温度(以下「ホモポリマーのTg」ともいう)を考慮して、単量体(a)と「その他の単量体(a’)」の混合比(重量部)を決める。
【0058】
具体的には「アクリルポリマーのTg」は、アクリルポリマーの理論Tgの算出式(1)を用いて計算することによって求めることができる。

1/Tg=C1/Tg1+C2/Tg2+・・・+Cn/Tgn :(1)
[算出式(1)において、Tgは、アクリルポリマーの理論Tg、Cnは、n番目の単量体nが単量体混合物中に含まれる重量割合、Tgnは、n番目の単量体nのホモポリマーのTg、nは、アクリルポリマーを構成する単量体の数であり、正の整数。]
【0059】
単量体のホモポリマーのTgは、文献に記載されている値を用いることができる。そのような文献として、例えば、以下の文献を参照できる:三菱レーヨン社のアクリルエステルカタログ(1997年度版);並びに北岡協三著、「新高分子文庫7、塗料用合成樹脂入門」、高分子刊行会、1997年発行、第168〜169頁。
以下に、上述のアクリルポリマーのTgの設計の一例について説明する。
【0060】
単量体(a)として、ホモポリマーのTgが83℃である単量体であるシクロヘキシル(メタ)アクリレート(以下「CHMA」ともいう。)を用い、単量体混合物に含まれる比率を40〜67重量部とした場合、「その他の単量体(a’)」として、例えばホモポリマーのTgが95℃以上の単量体及びホモポリマーのTgが−50℃以下の単量体を使用し、この場合、単量体混合物に含まれる比率は、前者については20〜30重量部とし、後者は13〜30重量部とする。
【0061】
具体的には、ホモポリマーのTgが83℃であるCHMAを、40〜67重量部、「その他の単量体(a’)」として、ホモポリマーのTgが95℃以上である単量体であるメチルメタクリレート(以下「MMA」ともいう。ホモポリマーのTgは105℃である)及び/もしくはスチレン(以下「St」ともいう。ホモポリマーのTgは100℃である)を20〜30重量部、並びにホモポリマーのTgが−50℃以下である2−エチルヘキシルアクリレート(以下「2EHA」ともいう。ホモポリマーのTgは−85℃である)及び/もしくはブチルアクリレート(以下「BA」ともいう。ホモポリマーのTgは−54℃である)を13〜30重量部を使用し、単量体混合物を重合させることで、理論Tgが10〜60℃を示す(A)アクリルポリマーを得ることができる。
【0062】
「単量体(a)」として、CHMAの他、例えば、メチルシクロペンチルメタクリレートを例示できる。その他の単量体(a’)として、MMA、Stの他、例えば、アクリルアミド(ホモポリマーのTgは153℃である)、アクリル酸(以下「AA」ともいう。ホモポリマーのTgは106℃である)、メタクリル酸(以下「MAA」ともいう。ホモポリマーのTgは130℃である)、アクリロニトリル(ホモポリマーのTgは100℃である)及びマレイン酸(ホモポリマーのTgは130℃である)を例示できる。「ホモポリマーのTgが−50℃以下である単量体」として、2EHA及びBAの他、例えば、ドデシルメタクリレート(ホモポリマーのTgは−65℃である)を例示できる。
【0063】
尚、CHMAのホモポリマーのTgの値については、三菱レーヨン社のアクリルエステルカタログ(1997年度版)の値を、MMA、St、2EHA、BA、AA、MAA、アクリルアミド、アクリルニトリル、マレイン酸、ドデシルメタクリレートについては、北岡協三著、「新高分子文庫7、塗料用合成樹脂入門」、高分子刊行会、1997年発行、第168〜169頁に記載の値を使用した。
【0064】
本発明では、(A)脂環式構造を有するアクリルポリマーは、重量平均分子量(Mw)が30,000〜250,000であることが好ましく、特に40,000〜60,000が好ましい。(A)アクリルポリマーのMwが上記範囲にあることで、初期接着強度に優れた湿気硬化型ホットメルト接着剤が得られる。
【0065】
本明細書におけるMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定された値をいう。より具体的には、Mwは、下記のGPC装置及び測定方法を用いて測定された値をいう。GPC装置は、ウォーターズ(Waters)社製の600Eを用い、検出器として、RI(Waters410)を用いた。GPCカラムとして、ショーデックス(Shodex)社製のLF−804 2本を用いた。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を1.0ml/min、カラム温度を40℃にて流し、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量の換算を行い、Mwを求めた。
【0066】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマーを形成するポリオールとイソシアネート化合物との反応に悪影響を与えず、本発明が目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、その他の添加剤を含むことができる。添加剤を、湿気硬化型ホットメルト接着剤に添加する時期は、本発明が目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。添加剤は、例えば、ウレタンプレポリマーを合成する際に、ポリオール、イソシアネート化合物と一緒に添加しても良いし、先に、ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを合成し、その後、添加しても良い。
【0067】
「添加剤」とは、湿気硬化型ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような添加剤として、例えば、可塑剤、酸化防止剤、顔料、光安定剤、難燃剤及び触媒、ワックス等を例示することができる。
【0068】
「可塑剤」として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ミネラルスピリット等を例示できる。
「酸化防止剤」として、例えば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を例示できる。
「顔料」として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック等を例示できる。
【0069】
「光安定剤」として、例えば、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン、ベンゾエート、ベンゾトリアゾール等を例示できる。
「難燃剤」として、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤等を例示できる。
【0070】
「触媒」として、金属系触媒、例えば錫系触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、そのほかの金属系触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
「ワックス」として、例えば、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等のワックスを例示できる。
【0071】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、常温(15〜30℃)では、固体であり、従来から湿気硬化型ホットメルト接着剤が使用されている分野で用いることができる。更に高い初期接着強度を要求される建築材料用の外装材及び内装材、フローリング、基材への化粧シートの貼り付け及びプロファイルラッピング等に用いることもできる。
【0072】
上記湿気硬化型ホットメルト接着剤は、化粧材料を建築内装部材として、床に貼り付ける際に好適であるが、床への貼り付けに限定されるものではなく、他の基材にも化粧シートを貼り付けることも出来る。従って、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、木工用、紙加工用、繊維加工用、一般用等として用いることもできる。
【0073】
本発明では、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、従来の湿気硬化型ホットメルト接着剤と同様の方法を用いて使用することができ、その使用方法は特に制限されるものではない。また、例えば、基材に被着体を貼り付ける際、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、基材側及び/又は被着体側に塗布して良い。
【0074】
「被着体」は、通常使用されているものでよく、特に限定されるものではないが、具体的には、フィルム及びシート等を例示できる。
フィルムは、無色であっても着色されていても、透明であっても不透明であってもよいが、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等から作られたフィルムを例示できる。ポリオレフィン樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンを例示でき、ポリエステル樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレートを例示できる。
【0075】
化粧シートとしては、例えば以下のものを例示できる。
硬質もしくは半硬質の塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等のプラスチック材料で作られたシート;
木材をシート状に加工した突板;並びに
各種化粧印刷の施された化粧紙。
【0076】
本発明では、「基材」は、通常使用されているものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば以下のものを例示できる。
ラワン合板等の合板、中繊維板(MDF)、パーティクルボード、無垢材、木質繊維板等の木質系材料;並びに
セメントボード、石膏ボード、軽量気泡コンクリート(ALC)等の無機系材料;
塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等のプラスチック材料。
【0077】
被着体と基材とを、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤で貼り合わせることで得られた積層品は、具体的に、建築材料、電子材料及び自動車分野等、種々の用途に利用可能である。積層品を製造するために、特別な装置を使う必要はなく、搬送機、コーター、プレス機、ヒーター、裁断機を含む一般的に既知の製造装置を用いて製造することができる。例えば、積層品は以下のように製造することができる。基材及び被着体を搬送機で流しながら、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤をコーターで基材若しくは被着体に塗布する。塗布する時の温度は、ヒーターで所定の温度に制御する。被着体をプレス機で基材に軽く押し付け、湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して、被着体と基材とを貼り合わせる。その後、貼りあわされた被着体と基材を放冷し、そのまま搬送機で流して、湿気硬化型ホットメルト接着剤を固化させる。その後、被着体が貼られた基材を裁断機で適当な大きさに裁断加工する。
【0078】
これら積層品は、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度が高く、湿気硬化後の耐熱性に優れているので、夏場であっても、基材と被着体とが剥がれ難くなる。
尚、コーターを使わずに、作業者が接着剤を塗工し、積層品を製造することも可能である。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
(A−1)から(A−6)までのアクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定された値である。(A’−7)、(A’−8)のアクリルポリマー、(B)ポリエーテルポリオール、(C)ポリエステルポリオールの分子量は原料カタログより引用している。
(A−1)から(A−6)までのアクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、原料モノマーの組成より算出した値である。(A’−7)、(A’−8)のアクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は原料カタログより引用した値である。
(A)〜(C)成分の融点(M.P)はDSC(示差走査熱量計)により測定された値である。
【0080】
アクリルポリマー
(A)脂環式構造を有するアクリルポリマー
(A−1)シクロヘキシル構造を有するアクリルポリマー
重量平均分子量(Mw)50,000、ガラス転移温度(Tg)61℃
(A−2)シクロヘキシル構造を有するアクリルポリマー
重量平均分子量(Mw)50,000、ガラス転移温度(Tg)70℃
(A−3)シクロヘキシル構造を有するアクリルポリマー
重量平均分子量(Mw)50,000、ガラス転移温度(Tg)83℃
(A−4)シクロヘキシル構造を有するアクリルポリマー
重量平均分子量(Mw)50,000、ガラス転移温度(Tg)93℃
(A−5)シクロヘキシル構造を有するアクリルポリマー
重量平均分子量(Mw)50,000、ガラス転移温度(Tg)93℃
(A−6)イソボルニル構造を有するアクリルポリマー
重量平均分子量(Mw)50,000、ガラス転移温度(Tg)140℃
【0081】
(A’)脂環式構造を有さないアクリルポリマー
(A’-7)脂環式構造を有さない(メタ)アクリル酸誘導体(a’)のみから得られたアクリルポリマー(三菱レーヨン社製BR113(製品名)、Mw35,000、ガラス転移温度(Tg)75℃)
(A’-8)脂環式構造を有さない(メタ)アクリル酸誘導体(a’)のみから得られたアクリルポリマー(三菱レーヨン社製BR106(製品名)、Mw60,000、ガラス転移温度(Tg)50℃
上述のアクリルポリマー(A−1)から(A−6)の合成は、後述する。
【0082】
(B)ポリエーテルポリオール
(B−1)ポリオキシプロピレングリコール(第一工業製薬製ハイフレックスD2000(製品名)、水酸基価56(mgKOH/g)、重量平均分子量(Mw)2000)
(B−2)ポリオキシプロピレングリコール(第一工業製薬製ハイフレックスD400(製品名)、水酸基価280(mgKOH/g)、重量平均分子量(Mw)400)
【0083】
(C)ポリエステルポリオール
(C−1)結晶性ポリヘキサメチレンアジペート(豊国製油製HS 2H−351A(製品名)、融点55℃、水酸基価32(mgKOH/g)、重量平均分子量(Mw)3500)
(C−2)結晶性ポリヘキサメチレンセバケート(豊国製油製HS 2H−350S(製品名)、融点65℃、水酸基価32(mgKOH/g)、重量平均分子量(Mw)3500)
(C−3)結晶性ポリヘキサメチレンドデカネート(宇部興産製エテルナコール3010(製品名)、融点70℃、水酸基価32(mgKOH/g)、重量平均分子量(Mw)3500)
(C’−4)非晶性ポリエステルポリオール(旭川化学製PES0001(製品名)、融点無し(20℃で液状)、水酸基価56(mgKOH/g)、重量平均分子量(Mw)2000)
【0084】
イソシアネート化合物
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」ともいう)(日本ポリウレタン工業社製ミリオネートMT(製品名))
【0085】
その他添加剤
開始剤
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN 大塚化学社製)
【0086】
<(A)アクリルポリマーの合成>
脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体(a)、環状構造を有さず、鎖状構造を有してよい(メタ)アクリル酸誘導体(a’)を混合後、重合して、(A−1)〜(A−6)のアクリルポリマーを製造した。
(A)アクリルポリマーの原料となる(メタ)アクリル酸誘導体(a)、(メタ)アクリル酸誘導体(a’)を以下に記載する。
(a−1)シクロヘキシルメタクリレート
(a−2)イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製IB−X(製品名))
(a’−3)メチルメタクリレート
(a’−4)ブチルメタクリレート
(a’−5)メタクリル酸
(a’−6)2−ヒドロキシエチルメタクリレート
【0087】
以下、(A−1)アクリルポリマーの製造を詳細に説明する。
(A−1)の製造
(a−1)シクロヘキシルメタクリレート 150g
(a’−3)メチルメタクリレート 45g
(a’−4)ブチルメタクリレート 105g
(a’−5)メタクリル酸 1.5g
単量体(a)及び単量体(a’)を上記重量で混合し、合計301.5gの単量体混合液を準備した。一方、549gのポリエーテルポリオール(B−1)を2Lの反応容器に入れ、同反応容器に上述の単量体混合液50gを加え、更に、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)4.0gを同反応容器に加えた。
攪拌翼、還流管等、温度計等を反応容器に取り付けた後、同反応容器を80℃の温浴につけ、容器内の混合液を攪拌しながら重合反応を開始した。反応熱が出てから約20分後、上述の単量体混合液の残りを約2時間かけて滴下した。
滴下終了から30分後、0.15gのAIBNを30分毎に3度にわたって加え、その後、90℃で2時間攪拌を行った。撹拌終了後、生成したアクリルポリマー調製液を反応器から取り出した。調製液のアクリルポリマー濃度は、32.8重量%であった。
【0088】
(A−2)〜(A−6)アクリルポリマーの製造
表1に示す組成で単量体(a)及び単量体(a’)を混合して単量体混合物を得た後、(A−1)と同様の方法で、(A−2)〜(A−6)を製造した。尚、市販品の(A’−7)〜(A’−8)は、そのまま使用した。(A−1)〜(A’−8)の組成は表1に示すとおりである。
【0089】
【表1】

【0090】
<湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造>
実施例1〜6及び比較例1〜5
ポリオール、イソシアネート化合物、(A)アクリルポリマーを表2に示す組成で混合し、湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造した。
具体的には、ポリオール、(A)アクリルポリマーを反応容器に入れ、減圧下で1時間撹拌した。水分を取り除いた後、同温度でイソシアネート化合物(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)を添加し、減圧下で2時間撹拌し、湿気硬化型ホットメルト接着剤を得た。
但し、表2に開示された(A)アクリルポリマーの数値は、溶媒を除去した数値(固形分換算値)である。
【0091】
【表2】


【0092】
実施例および比較例の湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度を評価するために初期ピール強度を各温度で測定した。耐熱接着性を評価するため、耐熱クリープ試験を実施した。更に、塗工性能を評価するために粘度を測定した。
以下に試験方法及び評価基準を記載する。
【0093】
<硬化前初期強度評価(初期ピール強度測定)>
試験するための材料として、40℃の恒温器内で12時間以上保温されたMDF(中繊維板)と、プライマーにより易接着処理されたオレフィンシートを用いた。
実施例および比較例の湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃で溶融させ、40g/m2の塗布量になるようにT台コーターにてオレフィンシート側へ塗布、直ちにMDFへラミネートし、ロールプレスを行った。ロールプレス後に自然冷却の中で表面温度を測定しながら180°ピール強度の測定をハンドピールテスターにて測定を行った。
初期ピール強度については、以下のように評価した。
×:2.0kg/25mm未満の場合
△:2.0kg/25mm以上、3.0kg/25mm未満の場合
○:3.0kg/25mm以上、4.0kg/25mm未満の場合
◎:4.0kg/25mm以上の場合
尚、剥離の際に、MDF又はオレフィンシートが破壊された場合を、「MF」で示し、接着剤層が破壊された場合を、「CF」で示した。MFの方が、接着剤層そのものの強度が強いことが明らかであり、好ましい。
【0094】
<耐熱性評価(硬化後耐熱クリープ測定)>
試験するための材料として、20℃で12時間以上保管されたパーティクルボードと、無処理のPETシートを用いた。
実施例および比較例の湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃で溶融させ、120℃のロールコーターを用いて40g/mでパーティクルボード側に塗布した。オープンタイム30秒にてPETシートをパーティクルボードに貼りつけ、ロールプレスでラミネートし、ラミネート後、20℃、50%RHの環境下で3日間養生した。
養生後シート上から25mm幅で切れ込みを入れ、PETシート端部を20mm程度剥離し、剥離した端部に500g錘を下げた。各温度(80、90、100℃)で4時間保持し、クリープした距離を測定した。
耐熱クリープについては、以下のように評価した。
×:10mm以上のクリープ。
△:2mm以上、10mm未満のクリープ
○:2mm未満のクリープ
【0095】
<粘度測定>
粘度計(ブルックフィールド社製)を用い、粘度を測定した。
溶融した湿気硬化型ホットメルト接着剤10.5gを粘度管に入れ、スピンドル(ロット番号27)を粘度計へ差し込み、120℃で30分間放置した。その後、スピンドルを速度5rpmで1分間回転させた後、120℃で溶融粘度を測定した。
【0096】
表2に示すように、実施例1〜6の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(A)アクリルポリマーが脂環式構造を含み、ウレタンプレポリマーが(C)結晶性ポリエステルポリオールに由来する化学構造を有するので、初期ピール強度、耐熱クリープの双方の性質に優れる。
実施例の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、28℃〜33℃での初期ピール強度に優れるので夏場の使用に好適であり、耐熱クリープにも優れるので耐熱性の要求が厳しい建材用途に適する。
【0097】
これに対し、比較例1〜4の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、初期ピール強度、耐熱クリープのいずれかの性能が劣る。
比較例1〜3の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(A’)アクリルポリマーが脂環式構造を有さないので、初期ピール強度および耐熱クリープの双方に劣る。
比較例4の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマーが(C)結晶性ポリエステルポリオールに由来する化学構造を含まないので、初期ピール強度が低い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、建築材料用の外装材及び内装材、フローリング、基材への化粧シートの貼り付け及びプロファイルラッピング等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと、(A)脂環式構造を有するアクリルポリマーとを含み、
ウレタンプレポリマーが結晶性ポリエステルポリオールに由来する化学構造を有する湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項2】
(A)アクリルポリマーは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸誘導体に由来する化学構造を有する請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項3】
結晶性ポリエステルポリオールは、融点が55℃以上である請求項1又は2に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項4】
(A)アクリルポリマーは、ガラス転移温度が60℃以上である請求項1〜3のいずれかに記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。

【公開番号】特開2012−241182(P2012−241182A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116078(P2011−116078)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】