説明

湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物、及び成形品

【課題】 生産性に優れる短時間での脱型性(結晶固化時間の短縮化)と、弾性と伸びの優れた機械的特性、及び優れた耐熱性を満足する成形品(ホットメルトモールディング)に適した湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を、結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の存在下で反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物であり、前記ポリオール(A)100質量部中に、脂肪族ポリエステルポリオール(a1)50〜90質量部及び芳香族ポリエステルポリオール(a2)10〜50質量部を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物、及びそれを用いてなる成形品に関する。更に詳しくは、従来のホットメルト樹脂組成物と較べて結晶固化時間が大幅に短いので脱型性に優れ、短時間での成形加工が可能であり生産性に優れる湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物に関する。また、前記湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(即ち、ホットメルトモールディング用RHM)を用いることにより、弾性と伸びを両立でき、且つ優れた耐熱性を有する成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機溶剤系樹脂組成物は、例えば接着剤や粘着剤などとして多岐の分野で使用されているが、有機溶剤を多量に含むため、人体への有害性、火気に対する引火の危険性、水質や大気などの環境汚染、乾燥による生産性の低下、溶剤の回収ロス、溶剤回収のためのエネルギー負担などの種々の問題があった。
【0003】
近年では、有機溶剤系樹脂組成物に代わるものとして、無溶剤であり溶剤回収を必要としない省エネ・環境対応型の樹脂組成物が種々検討されている。その中でも、特に反応性ホットメルトウレタンは、優れた接着性を有し、且つ接着時間を比較的自由に調整できるため、連続生産を必要とする接着加工や封止作業などの成形加工に適しており、現在工業界で注目されている。
【0004】
反応性ホットメルトウレタンは、従来の有機溶剤系樹脂組成物や水系樹脂組成物などに代わる高付加価値製品として、建材用や繊維用の接着剤としての用途のほか、例えば、製靴工業、材木加工工業、建築材料工業、製本工業、金属工業、樹脂加工工業、自動車製造工業、電気・電子部品製造工業、半導体部品製造工業など多岐の分野に使用され始めており、無溶剤化や製品性能向上、コストダウンなどに効果的手法として期待されている。
【0005】
反応性ホットメルトウレタンの特徴は、(1)常温では固体であるが加熱により溶融して液状又は粘ちょうな性状になり、冷却により再度凝集力が発現する性質である「ホットメルト性」と、(2)空気中の湿気(水)とイソシアネート基との反応に起因する架橋構造形成による接着性が発現する性質である「湿気硬化性」を併有することである。なお、本発明では、湿気(水)と水蒸気は同意として扱う。
【0006】
かかる反応性ホットメルトウレタンの代表的なものとしては、例えばイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを用いた湿気硬化性ホットメルトウレタンが知られている。
【0007】
ところで、従来の反応性ホットメルトウレタンは、例えばポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などを用いた汎用のホットメルトに較べて、冷却固化時間が長く、成形加工の際に金型から短時間での脱型が要求されるような大量且つ連続生産には不向きであり、生産性に劣っていた。また、得られる成形品の初期強度の発現時間が遅いという問題もあった。
【0008】
このような従来の反応性ホットメルトウレタンを、例えば大量生産が要求される電気・電子部品や自動車部品などの封止材料の連続生産ラインに用いた場合には、ラインスピードが極めて高速であるために、ウレタン樹脂の冷却固化が未だ不充分な状態のままで次の工程に移行してしまうという工程トラブルが頻発してしまい、工程管理上も品質管理上も重大な問題があった。
【0009】
かかる問題は、反応性ホットメルトウレタンに用いられるポリエステルポリオールの結晶性を向上させることである程度の改善は可能ではあるが、その反面、成形品の脆性不良や、弾性、伸び、接着強度などの物性低下という弊害を招き、実用上採用できなかった。
【0010】
反応性ホットメルトウレタンの脱型性の改良(生産性の向上)と共に、弾性や伸びなどの機械的特性を改善させ、且つ、良好な耐熱性など特性を付与する目的で種々の提案がなされてきた。
【0011】
例えば、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として製造される結晶性ポリエステルポリオール10〜97重量%、芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として製造されるポリエステルポリオール0〜45重量%、ポリカーボネートポリオール 3〜45重量%を含むポリオール混合物が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0012】
かかるポリオール混合物から得られる反応性ホットメルト組成物は、アルミニウムとの接着性が良好であり、該組成物を使用した成形品は、特に電気・電子構成部品、電気・電子部品や半導体部品の用途に使用できるという。
【0013】
しかしながら、引用文献1に記載の反応性ホットメルト組成物は、結晶固化時間が長いために、例えば電気・電子部品や半導体部品、自動車部品などのハイスピードで高サイクルの大量生産が必須に要求される生産ラインには不向きであるという実用上の問題があった。
【0014】
また、オリゴマーポリオール、ならびに、カルボキシル基を有するポリオール化合物を含むポリオール混合物が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0015】
特許文献2には、前記ポリオール混合物を製造する際に、使用可能な安定剤として、亜リン酸、リン酸、アシッドリン酸エステル等の酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン化合物が記載されている。
【0016】
しかしながら、特許文献2に記載のリン化合物は、反応性ホットメルト組成物の安定性改良には比較的有効ではあるが、結晶固化時間の短縮化による脱型性の改良には効果がなく、生産性の向上には到らなかった。また、耐熱性に劣り、弾性や伸びなどの機械的物性を向上させることもできなかった。
【0017】
更に、結晶性ポリエステルポリオール及び非晶性ポリエステルポリオールを含む組成物とポリイソシアネートとを反応させてなり、示差熱分析法により溶融温度から50℃まで500℃/分の降温速度で冷却し、その後50℃で保持する温度条件において、半結晶化時間が150秒以下であり、かつ結晶化熱が30〜90J/gである反応性ホットメルト組成物が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0018】
かかる反応性ホットメルト組成物は、電気・電子部品等の製造において、金型内で比較的速く固化して一体化することができるため、成形サイクルを短縮化することができ、且つアルミニウム等の金属等との接着性が良好であるという。
【0019】
しかしながら、引用文献3の反応性ホットメルト組成物の如く、有機系結晶核剤としてリン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム等の有機リン酸の金属塩を用いた場合には、樹脂の結晶化の促進が未だ充分に図れず、結晶固化時間が長いために、電気・電子部品や半導体部品、自動車部品などのハイスピードで高サイクルの大量の連続生産が要求される生産ラインには適用が困難であった。
【0020】
以上のように、短時間での脱型性(生産性の向上)と共に、弾性や伸び等の優れた機械的物性と、耐熱性などの優れた特性を何れも満足できるホットメルトモールディングに適した湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物、及びそれを用いた成形品の開発が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開2004/031296号公報
【特許文献2】特開2005−23181号公報
【特許文献3】国際公開2008/026513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、ホットメルトウレタン樹脂組成物に用いるポリエステルポリオール成分の結晶性を大幅に上昇させずに、脂肪族ポリエステルポリオールと芳香族ポリエステルポリオールとの組成比と、少量用いる特定の結晶核剤との組合せにより、(1)ホットメルトウレタン樹脂組成物の結晶固化時間の大幅な短縮化を図り、短時間での脱型性を可能にして生産性を大幅に向上すること、(2)弾性と伸び等の機械的物性を向上すること、(3)耐熱性などの優れた特性を付与すること、などの特徴を有する湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(即ち、ホットメルトモールディング用RHM)、及びそれを用いた成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を進めた結果、結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩の存在下で、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物において、前記ポリオールとして脂肪族ポリエステルポリオールと芳香族ポリエステルポリオールとを特定範囲の比率で含有するポリオールを用いることにより、(1)前記樹脂組成物の結晶固化時間を大幅に短縮化でき短時間での金型からの脱型が可能となり、生産性が大幅に向上すること、(2)弾性と伸び等の機械的物性が向上すること、(3)耐熱性などの優れた特性を付与できること、などの要求を何れも満足できる湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物、及びそれを用いた成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0024】
即ち、本発明は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を、結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の存在下で反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物であり、前記ポリオール(A)100質量部中に、脂肪族ポリエステルポリオール(a1)50〜90質量部及び芳香族ポリエステルポリオール(a2)10〜50質量部を含有することを特徴とする湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物に関するものである。
【0025】
また、本発明は、前記湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を用いて成形してなることを特徴とする成形品に関するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、前記樹脂組成物に用いるポリオールを構成する脂肪族ポリエステルポリオールと芳香族ポリエステルポリオールの組成比と、特定の結晶核剤との組合せにより、前記ポリオールの結晶性を大幅に上昇させずに接着強度の低下を抑え、(1)樹脂組成物の結晶固化時間が大幅に短縮化して短時間での脱型性が可能となり生産性が向上すること、(2)弾性と伸び等の機械的物性が向上すること、(3)優れた耐熱性などの特性が得られること等の効果を得ることができるので、例えば電気・電子部品製造工業、自動車製造工業、半導体部品製造工業、製靴工業、材木加工工業、建築材料工業、製本工業、金属工業、樹脂加工工業などの工業分野で製造される成形品として広範囲に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを、結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の存在下で反応させて得ることができる。
【0029】
前記ポリオール(A)は、脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と、芳香族ポリエステルポリオール(a2)を必須に含有してなる。
【0030】
前記ポリオール(A)を構成する脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)との含有比は、前記ポリオール(A)100質量部中に、前記(a1)50〜90質量部及び(a2)10〜50質量部の範囲であり、好ましくは前記(a1)60〜80質量部及び(a2)20〜40質量部の範囲である。前記ポリオール(A)中の前記(a1)と(a2)の含有比がかかる範囲であれば、前記ポリオール(A)の溶融粘度を適度な範囲に調整でき、優れた作業性と混和性を発現でき、且つ速固化性を有する湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0031】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)とは、脂肪族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として公知慣用の方法により製造されるポリエステルポリオールであり、その製造法については、特に限定しない。
【0032】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成に用いる脂肪族ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、エイコサ二酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などの炭素数4〜12の脂肪族ポリカルボン酸が好ましい。これらの中でも、より好ましくはアジピン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸であり、更に好ましくはセバシン酸、ドデカン二酸である。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記脂肪族ポリカルボン酸は、例えば、メチルエステル等の低級アルキルエステル誘導体、酸無水物、酸ハロゲン化物等の対応する酸誘導体を用いてもよい。
【0034】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成に用いる脂肪族ポリオールとしては、分子内に少なくとも2個の水酸基を持つものであり、炭素数2〜12の脂肪族ポリオールが好ましい。前記(a1)は、直鎖、分岐、環状の何れの構造であってもよい。
【0035】
前記(a1)としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどの直鎖型脂肪族ポリオール、あるいはネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチルプロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの分岐型脂肪族ポリオール、あるいはシクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ポリオールが挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0036】
また、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどに各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。また、低分子量ポリオールを開始剤として使用し、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどを開環重合させた重合物も使用できる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記脂肪族ポリカルボン酸と前記脂肪族ポリオールの組合せの中でも、炭素数4〜12の脂肪族ポリカルボン酸と炭素数2〜12の脂肪族ポリオールの組合せにより製造される脂肪族ポリエステルポリオール(a−1)をポリオール(A)に含有させることにより、ホットメルトウレタン樹脂組成物の成形加工時の粘度安定性がより向上し、溶融粘度の低下防止に優れた効果を発現できるので、好ましい。
【0038】
また、前記芳香族ポリエステルポリオール(a2)とは、芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオール、あるいは脂肪族ポリカルボン酸と芳香族ポリオールを主成分として公知慣用の方法にて製造されるポリエステルポリオールであり、その製造法は特に限定しない。
【0039】
前記芳香族ポリカルボン酸とは、芳香環に少なくとも2個のカルボキシル基が結合したカルボン酸であり、好ましくは炭素数8〜24の芳香族ポリカルボン酸であり、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらの中でも、オルトフタル酸、テレフタル酸が好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、前記芳香族ポリカルボン酸は、例えばメチルエステル等の低級アルキルエステル誘導体、酸無水物、酸ハロゲン化物等の対応する酸誘導体を用いてもよい。
【0041】
前記脂肪族ポリオールとしては、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成で使用可能な脂肪族ポリオールと同様のものが挙げられる。
【0042】
また、前記芳香族ポリエステルポリオール(a2)及び前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成で使用可能な前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、その炭素原子の一部を酸素原子や芳香環で置換したジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングルコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等であってもよい。これら脂肪族ポリオールも単独又は2種以上を併用してもよい。
【0043】
更に、これら芳香族ポリカルボン酸及び脂肪族ポリオールから得られるポリエステルポリオールの混合物であってもよい。
【0044】
前記芳香族ポリエステルポリオール(a2)の合成に使用可能な脂肪族ポリカルボン酸としては、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)の合成で使用可能な脂肪族ポリカルボン酸と同様の炭素数4〜12の脂肪族ポリカルボン酸が挙げられ、それらの中でも、好ましくはアジピン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸であり、より好ましくはセバシン酸、ドデカン二酸である。
【0045】
前記芳香族ポリオールとしては、特に限定しないが、例えば、エチレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂肪族ポリオールと、オルトフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ポリカルボン酸から得られる芳香族ポリオールなどが挙げられる。
【0046】
また、前記芳香族ポリオールとして、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドが付加した付加物も使用可能である。
【0047】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)の合成時の脂肪族ポリオールと芳香族ポリオールが有する水酸基と、脂肪族ポリカルボン酸と芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基との当量比(即ち[OH/COOH当量比]は、好ましくは1.03〜1.50の範囲であり、より好ましくは1.05〜1.30の範囲である。前記[OH/COOH当量比]がかかる範囲であれば、水酸基末端のポリオールをより多く生成させることができ、ポリイソシアネート(B)とのウレタン化反応をより容易に進行させることができるので、好ましい。
【0048】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)の合成時の重縮合条件としては、異常な反応を起こさず、正常な生成物を得ることができれば、特に限定しない。通常は、所定量の脂肪族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオール、あるいは芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを触媒の存在下又は不存在下で内温150〜250℃で5〜50時間、エステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで、重縮合反応を行なえばよい。
【0049】
重縮合反応は、触媒の存在下に行うことが反応が容易に進行するので、好ましい。前記触媒としては、特に限定せず、例えば、チタンテトラブトキシドなどのチタン系触媒、ジブチルスズオキシドなどのスズ系触媒などが挙げられる。
【0050】
前記触媒は、脂肪族ポリオールと脂肪族ポリカルボン酸、或いは脂肪族ポリオールと芳香族ポリカルボン酸と共に仕込んでもよく、あるいは無触媒で予備重合後に、加えてもよい。
【0051】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)の製造において、両末端を殆ど水酸基にし、カルボキシル基末端を出来るだけ残存させない様にすることが望ましく、この目的のために、予備重合を行った後に前記触媒を加えることは効果的であり好ましい。
【0052】
前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)の数平均分子量(以下「Mn」という。)は、好ましくは500〜6000の範囲であり、より好ましくは1000〜5000の範囲であり、特に好ましくは2000〜4000の範囲である。前記(a1)と(a2)のMnがかかる範囲であるならば、用途に応じた強度と伸びなどの物性バランスを得ることができ、好ましい。
【0053】
また、前記脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)と共に、その他のポリオールを本発明の目的を阻害しない範囲で用いてもよい。
【0054】
前記その他のポリオールとしては、例えばポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの前記直鎖型脂肪族ポリオールを用いて得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。また、前記ポリラクトンポリオールとしては、例えばカプロラクトンモノマーの開環重合により得られるポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。また、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0055】
次に、本発明で用いるポリイソシアネート(B)について、以下に説明する。
【0056】
前記ポリイソシアネート(B)は、公知慣用の脂肪族、芳香族、脂環式ポリイソシアネートなどを挙げることができ、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物、クルードMDI)、カルボジイミド変性MDI(変性MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネ−ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネ−ト、あるいはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、あるいはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられ、これらの中でも、前記ポリオール(A)及び湿気(水)との反応が速く、作業性に優れることから、MDI、XDIが好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用しても構わない。
【0057】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下「プレポリマー」という。)を合成する際に使用する前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)の割合は、反応挙動や製品品質などに悪影響を生じさせない範囲であればよく、通常、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と、前記ポリオール(A)が有する水酸基との当量比(以下[NCO/OH当量比]という。)として、好ましくは1.2〜4.0の範囲であり、より好ましくは1.5〜3.0の範囲である。前記[NCO/OH当量比]がかかる範囲であれば、目的とする湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物の溶融粘度が適正な範囲になり、且つ優れた作業性、フィルム物性、速固化性などの性能を発現できる。
【0058】
反応条件は、反応挙動や製品品質などに悪影響を生じさせない範囲で設定すればよく、特に限定しないが、通常は、反応温度80〜130℃で1〜10時間、反応させることが好ましい。
【0059】
反応方式は、例えばバッチ反応、半連続反応、連続反応など、公知の反応方式を選択することができる。
【0060】
また、反応は、溶媒中でも無溶媒でも行うことが可能である。但し、溶媒中で反応を行う場合には、反応塗中あるいは反応終了後に脱溶媒を行ない、最終的には無溶媒とすることが、好ましい。脱溶媒の方法は、特に限定しない。
【0061】
必要に応じて、遷移金属化合物触媒、例えば、チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、ジラウリン酸ジブチルスズ、2−エチルカプロン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルカプロン酸亜鉛、グリコール酸モリブデン、塩化鉄、塩化亜鉛などや、アミン触媒、たとえばトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジブチルアミンなどの触媒を添加してもよい。
【0062】
反応は通常、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、乾燥空気雰囲気下又は密閉条件下などの水分が混入しない条件下であれば何ら問題はない。
【0063】
次に、特定の結晶核剤である芳香族ホスホン酸の金属塩(C)について、以下に説明する。
【0064】
本発明は、前記ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得る反応を、結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の存在下で行なうことを必須条件にしている。
【0065】
前記芳香族ホスホン酸の金属塩(C)を必須に用いることにより、成形加工時での樹脂組成物の結晶化を目覚しく促進でき、結晶固化時間の大幅な短縮化が図れ、金型からの短時間での脱型が可能となるので、生産性の向上に優れた効果が得られ、且つ成形品の耐熱性の向上に優れた効果を有する。
【0066】
前記芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の中でも、フェニルホスホン酸化合物の金属塩が、結晶固化時間の短縮化、及び耐熱性などの効果を一層良好に発現できるので好ましい。
【0067】
前記フェニルホスホン酸化合物とは、下記構造式(I)で表される芳香族ホスホン酸類であり、式中のR1及びR2を示す置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基が例示できる。これらの置換基は同一でも又は相異なっていてもよい。前記フェニルホスホン酸化合物としては、例えばフェニルホスホン酸、4−メチルフェニルホスホン酸、4−エチルフェニルホスホン酸、4−n−プロピルフェニルホスホン酸、4−イソプロピルフェニルホスホン酸、4−n−ブチルフェニルホスホン酸、4−イソブチルフェニルホスホン酸、4−t−ブチルフェニルホスホン酸、3,5−ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸、3,5−ジエトキシカルボニルフェニルホスホン酸、2,5−ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸、2,5−ジエトキシカルボニルフェニルホスホン酸等が挙げられる。これら化合物は単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0068】
【化1】

【0069】
前記構造式(I)で表される前記フェニルホスホン酸化合物の金属塩としては、1価、2価及び3価の金属の塩を使用することができる。塩を形成する金属の具体例としては、例えば、亜鉛、コバルト、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、銀、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、これらの中でも、好ましくは亜鉛、コバルトであり、より好ましくは亜鉛である。これら金属塩を配合すれば、得られるホットメルトウレタン樹脂組成物の成形加工時の結晶化速度を促進でき、結晶固化時間の大幅な短縮化が図れ、金型からの短時間での脱型が可能となり、生産性の向上に多大な効果を得ることができる。これらの金属塩は、単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0070】
前記芳香族ホスホン酸の金属塩(C)は、金属塩を形成していない酸性の芳香族ホスホン酸あるいは金属自体を含まないことが望ましいことから、前記芳香族ホスホン酸と金属イオンのモル比は、芳香族ホスホン酸/金属イオン=1/2〜2/1モル比の範囲であることが好ましい。
【0071】
前記芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の平均粒子径(α)は、通常は0.01〜3.0μmであり、好ましくは0.01〜2.0μmであり、より好ましくは0.01〜1.0μmであり、更に好ましくは0.01〜0.5μmであり、最も好ましくは0.01〜0.3μmの範囲である。前記平均粒子径(α)がかかる範囲であれば、ホットメルトウレタン樹脂組成物の成形加工時の結晶化速度を促進でき、結晶固化時間の大幅な短縮化が図れ、金型からの短時間での脱型が可能となるので、生産性の向上に多大な効果を発現できると共に、優れた耐熱性などの効果を得ることができる。
【0072】
前記芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の配合量は、ポリオール(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜3.0質量部であり、より好ましくは0.5〜2.0質量部であり、更に好ましくは0.5〜1.5質量部である。前記金属塩(C)をかかる範囲で配合すれば、ホットメルトウレタン樹脂組成物の成形加工時の結晶化速度を促進でき、結晶固化時間の大幅な短縮化が図れ、金型からの短時間での脱型が可能となるので、生産性の向上に多大な効果を発現できると共に、優れた耐熱性などの効果を得ることができる。
【0073】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物の溶融粘度は、好ましくは500〜30000mPa・s(測定温度:120℃)の範囲であり、より好ましくは1000〜20000mPa・sの範囲である。前記ウレタン樹脂組成物の溶融粘度がかかる範囲であれば、成形時の作業性に優れ、且つエアーだまり等の外観不良防止にも有効である。
【0074】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、そのまま成形に使用することもできるが、通常の樹脂組成物に使用される各種添加剤を本発明の目的を逸脱しない範囲内で、製造工程の何れの段階においても用いることができ、特に限定しない。
【0075】
かかる添加剤としては、例えば、整泡剤、酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、砥粒、充填剤、顔料、染料、着色剤、増粘剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、粘着付与剤、硬化触媒、安定剤、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等が例示できる。また、必要に応じて、ブレンド用樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜、選択して使用することができる。尚、前記添加剤はほんの一例であって、本発明の目的を阻害しない限り、特にその種類及び使用量を限定するものではない。
【0076】
また、本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、部品の挿入物や接着、封止などを行わずに、前記湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物のみを用いて成形物を作成することもできる。
【0077】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物の加工温度は、前記樹脂組成物の少なくとも融点以上であり、好ましくは80〜130℃の範囲、より好ましくは100〜120℃の範囲である。加工温度が融点より低い温度の場合には、成形作業上不具合が生じたり、作業効率が低下したりして、好ましくない。また、加工温度が過剰に高い場合には、高熱による樹脂組成物の変質、分解、ゲル化などが起こるおそれがあり、好ましくない。
【0078】
また、本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を成形加工に使用する場合には、その加工方法は、特に制限はなく、例えば射出成形機や押出成形機、アプリケーターなどの加工機器を使用してもよい。
【0079】
前記成形加工の一例を挙げるならば、射出成形法の場合、前記樹脂組成物を融点以上の温度で溶融させ、この溶融物を流動可能な状態で加圧しながら密閉金型中に射出し、前記金型中で結晶化が促進され短時間にて冷却固化した成形品を金型から取り出し(脱型し)、次いで湿気(水)により硬化させる。尚、前記密閉金型中には、成形前の部品を接着用あるいは封止用の部材として挿入することも可能であり、特に制限しない。
【0080】
尚、この場合の湿気(水)は、例えば、大気中に存在する水分であっても、噴霧や浸漬など適当な手段により強制的に供給される水分であってよい。
【0081】
予め部品を金型内にセットしておき、本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を流動可能な状態で前記金型内に注入させれば、従来の成形実績と較べて極めて短時間で結晶固化が完結して、部品と樹脂組成物が強固に接着した成形品(即ちホットメルトモールディング成形品)を得ることができるので、生産性の大幅な向上に多大な効果がある。
【0082】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物をまとめると以下のようになる。
即ち、本発明の2つの特徴は、〔特徴1〕脂肪族ポリエステルポリオール(a1)及び芳香族ポリエステルポリオール(a2)を特定の質量比で含有するポリオール(A)をポリイソシアネート(B)とウレタン化反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有すること、及び〔特徴2〕特定の結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の存在下で反応させて、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得ること、である。
【0083】
従来のホットメルトウレタン樹脂組成物は、冷却固化時間が長いので、成形加工の際に金型から短時間での脱型が要求される大量且つ連続生産には極めて不向きであり、生産性に劣り、得られる成形品の初期強度の発現時間が遅いという問題もあった。
従来から、前記問題の改良が検討され、例えばウレタンプレポリマーに用いられるポリオールを構成するポリエステルポリオールの結晶性の向上により、ホットメルトウレタン樹脂組成物の射出成形時での脱型性の若干の改良は可能であったが、脆性、弾性、伸び、接着強度などの物性の低下が問題になっていた。
また、結晶化を促進させる目的で、例えば、リン酸エステルの金属塩、有機系リン酸金属塩、合成ワックスなどの種々の結晶核剤の配合も検討されてきた。しかしながら、従来の結晶核剤では樹脂組成物の脱型性は多少改善されたとしても、決して充分ではなく満足いくものではなかった。
【0084】
このように、従来のホットメルトウレタン樹脂組成物を用いた場合には、従来の結晶核剤をウレタン樹脂組成物に配合した場合では、(1)結晶固化時間の短縮化による脱型性の改良と生産性の向上、(2)弾性や伸びなどの機械的物性の向上、(3)耐熱性などの優れた特性などの効果の付与、という3つの目的を達成することは決してできなかった。
【0085】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物では、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを構成するポリオール(A)中の結晶性ポリエステルポリオール量を殆ど増加させず、前記ポリオール(A)を構成する脂肪族ポリエステルポリオール(a1)と芳香族ポリエステルポリオール(a2)との含有比率を最適範囲に調整し、且つ、特定の結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩の存在下で反応を行なうことにより、特に射出成形に適した溶融粘度で短時間での結晶化で脱型が可能であり、優れた機械的強度を有するホットメルトモールディング用RHMを得ることを初めて可能にした。
【0086】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、成形加工時の結晶化速度を促進でき、結晶固化時間の大幅な短縮化が図れ、金型からの短時間での脱型が可能となるので、生産性の向上に多大な効果を発現できるので、例えば電気・電子部品や自動車部品などの封止材料の生産ラインのようにラインスピードが高速で、且つ大量安定生産が要求される成形品の成形のために、本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を用いるならば、目覚しい効果を得ることができる。
【0087】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物は、ホットメルト接着剤としての用途だけでなく、特に金属(例えば銅、マグネシウム、アルミニウムなどの金属類、好ましくはアルミニウム。)との優れた接着性と接着時間が任意に調整できるため、連続作業での接着加工や封止作業などの成形加工に特に向いており、例えば、電気・電子部品製造工業、自動車製造工業、半導体部品製造工業、製靴工業、材木加工工業、建築材料工業、製本工業、金属工業、樹脂加工工業などの広範囲の分野に利用可能である。
【0088】
本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を用いて、これらの工業分野で製造される成形品である。電気・電子部品製造工業及び半導体部品製造工業分野などでの具体的な成形品としては、例えば、半導体封止製品および、コンピューター、ビデオ、カメラ、ゲーム機、テレビ、ラジオや携帯電話部品などの、回路板、素子、スイッチ、配線、プラグコネクター、表示装置、電池を挿入し、反応性ホットメルト組成物で封止し、一体化させた電気・電子部品、電気・電子製品などのホットメルトモールディング成形品などが挙げられる。
【0089】
その他にも本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を用いてなる成形品としては、例えば、フィルム、シート、繊維などの各種形状のものが挙げられ、特に限定しない。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
尚、本発明で用いた測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
【0091】
〔成形品の作成、硬度の経時変化の測定方法、及び脱型性の評価〕
実施例及び比較例で得た湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(ホットメルトモールディング用RHM)を110℃に加熱溶融させ、23℃のアルミ製金型(Φ50mm×3mmクローズ型)に6g注入し5秒後に脱型して、成形品(ホットメルトモールディング)を作成した。
成形後、直ちに23℃の温度条件下で脱型開始時点を0秒として脱型開始時点から30秒毎の成形品上面の硬度を日本工業規格(JIS) K6253法に準拠して測定し、硬度の経時変化を測定して、下記の基準に従い、脱型性を評価する。
実型の脱型可能時間を推定するため、上記の成形品について一定硬度(JIS A硬度20)に達する所要時間を測定する。脱型時の保形性を確保できる硬度はJIS A硬度20以上が必要であり、JIS A硬度20以下では形状保持性が劣る。A硬度20を超える時間を「脱型可能時間」(秒)とした。脱型作業開始から30秒間は脱型作業中のため、実質上硬度測定ができないので脱型作業開始30秒以降のA硬度測定を行った。
尚、A硬度測定による脱型可能時間(脱型性)の評価は、以下の基準に従い行なった。
脱型性の評価基準(脱型開始30秒後の硬度経時変化)
○: JIS A硬度が20以上。
×: JIS A硬度が20未満。
【0092】
〔フィルムの作成方法〕
実施例及び比較例で得た湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を110℃に加熱溶融させ、110℃に加熱したナイフコーターを用いて、離型紙上に100μmの厚みに塗布した後、湿気硬化処理(温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿槽中3日間放置)により、フィルムを作成した。
【0093】
〔フィルムの引張特性の測定方法〕
前記フィルムを幅5mm×長さ70mm×厚み100μmの形状に切り取った試験片を用いて、JIS K7127に準拠して、テンシロン((株)島津製作所製、ヘッドスピード=300mm/分)により、引張特性(応力(MPa)と伸び(%))を測定した。
尚、引張特性は、以下の基準に従い評価した。
引張特性の評価基準。
○:応力が20MPa以上、及び/又は伸びが700%以上。
△:応力が10MPa以上20MPa未満、及び/又は伸びが500%以上700%未満。
×:応力が10MPa未満、及び/又は伸びが500%未満。
【0094】
〔実施例1〕
≪湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物の調整≫
1リットル4ツ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール(HG)とセバシン酸(SEBA)をHG/SEBA=40/60質量比で反応させて得られる脂肪族ポリエステルポリオール(a1)(Mn=3500)70質量部、及びエチレングリコール(EG)、無水フタル酸、テレフタル酸(TPA)、アジピン酸(AA)をEG/無水PA/TPA/AA=30/14/15/41質量比で反応させ得られる芳香族ポリエステルポリオール(a2)(Mn=3500)30質量部とを混合し溶融させてポリオール(A)を調整した。
次いで、芳香族ホスホン酸の金属塩(C)としてフェニルホスホン酸の亜鉛塩(平均粒子径200nm(0.2μm)のもの)1質量部加え、120℃に加熱して減圧条件下、水分が0.05質量%になるまで脱水した。
その後、70℃に冷却し、ポリイソシアネート(C)として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’MDI)を14質量部加えて、次いで90℃でNCO含有量(%)が一定になるまで3時間反応させ、本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(X1)を得た。
実施例1で得た前記湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(X1)は、コーンプレート粘度計で測定した溶融粘度が8600mPa・s(測定温度120℃)であり、NCO含有量は1.98質量%であった。
前記湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(X1)を用い、前述の条件に従い、成形品(ホットメルトモールディング)(Y1)及びフィルム(F1)を作成した。前記成形品(Y1)の硬度及びフィルム(F1)の引張特性などの測定結果を第1表にまとめた。
実施例1で得た本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(X1)は、粘度が適度であり、作業性及び速固化性に優れており、成形品(Y1)及びフィルム(F1)は優れた物性を有していた。
【0095】
〔実施例2〜7〕
実施例1と同様の操作にて、第1表に記載の組成で実施例2〜7を行なった。
実施例2〜7で得た本発明の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(X2)〜(X7)、成形品(Y1)〜(Y7)、及びフィルム(F2)〜(F7)は、何れも優れた性能を有していた。
【0096】
〔比較例1〜7〕
実施例1と同様の操作にて、第2表に記載の組成で比較例1〜7を行なった。
比較例1〜7で得た湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物(X8)〜(X14)、成形品(Y8)〜(Y14)、及びフィルム(F8)〜(F14)は、何れも性能に劣っていた。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
第1表及び第2表に記載の略号は、下記の化合物を意味する。
HG :1,6−ヘキサンジオール
SEBA :セバシン酸
EG :エチレングリコール
NPG :ネオペンチルグリコール
無水PA :無水フタル酸
TPA :テレフタル酸
IPA :イソフタル酸
AA :アジピン酸
4,4’MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
アデカスタブ NA−11:商品名、旭電化工業株式会社製、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム
リコワックス E:商品名、クラリアントジャパン株式会社製、モンタン酸のエステルワックス
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のホットメルトウレタン樹脂組成物は、ポリエステルポリオール成分の結晶性を大幅に上昇させずに、脂肪族ポリエステルポリオールと芳香族ポリエステルポリオールとの組成比と、少量用いる特定の結晶核剤との組合せにより、(1)ホットメルトウレタン樹脂組成物の結晶固化時間の大幅な短縮化を図り、短時間での脱型性を可能にして生産性を大幅に向上すること、(2)弾性と伸び等の機械的物性を向上すること、(3)耐熱性などの優れた特性を付与すること、などの特徴を有するので、優れた接着性と接着時間が調整できるため、連続作業での接着加工や封止作業などの成形加工に適しており、例えば、電気・電子部品製造工業、自動車製造工業、半導体部品製造工業、製靴工業、材木加工工業、建築材料工業、製本工業、金属工業、樹脂加工工業などの分野が挙げられ、これらの工業分野で製造される製品が成形品となる。電気・電子部品製造工業及び半導体部品製造工業分野での具体的な成形品としては、半導体封止製品および、コンピューター、ビデオ、カメラ、ゲーム機、テレビ、ラジオや携帯電話部品などの、回路板、素子、スイッチ、配線、プラグコネクター、表示装置、電池を挿入し、反応性ホットメルト組成物で封止し、一体化させた電気・電子部品、電気・電子製品などのホットメルトモールディング成形品などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を、結晶核剤として芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の存在下で反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物であり、前記ポリオール(A)100質量部中に、脂肪族ポリエステルポリオール(a1)50〜90質量部及び芳香族ポリエステルポリオール(a2)10〜50質量部を含有することを特徴とする湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記芳香族ホスホン酸の金属塩(C)が、フェニルホスホン酸化合物の金属塩である請求項1に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記芳香族ホスホン酸の金属塩(C)が、フェニルホスホン酸化合物の亜鉛塩又はコバルト塩である請求項1に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族ホスホン酸の金属塩(C)の平均粒子径が、0.01〜3.0μmの範囲である請求項1に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオール(A)100質量部に対して、前記芳香族ホスホン酸の金属塩(C)を0.1〜3.0質量部配合してなる請求項1に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
110℃に加熱溶融させ、23℃のアルミ製金型(Φ50mm×3mmクローズ型)に6g注入し5秒後に脱型し、成形後直ちに23℃の温度条件下で、脱型開始時点を0秒として脱型開始時点から30秒毎の成形品上面の硬度を日本工業規格 K6253法に準拠して測定した場合に、前記成形品上面のJIS A硬度が、脱型開始30秒後に20以上である請求項1に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の湿気硬化性ホットメルトウレタン樹脂組成物を用いて成形してなることを特徴とする成形品。

【公開番号】特開2012−177016(P2012−177016A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39858(P2011−39858)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】