説明

湿気硬化性樹脂組成物

【課題】硬化前には優れたレベリング性を有し、硬化後には高硬度となり、金属およびガラスへの接着性が良好で、しかも、硬化収縮による外観異常が抑制された湿気硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)100質量部と、エポキシ樹脂(B)3〜100質量部と、ケチミン化合物(C)と、上記加水分解性シリル基に対する硬化触媒(D)とを含み、上記ケチミン化合物(C)が有するイミノ基のモル当量の上記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)が0.5〜1.5であり、上記ケチミン化合物(C)のうち少なくとも0.2モル当量が、1013hPaにおける融点が35℃以下かつ沸点が100℃以上のポリアミンと、ケトンとの反応によって得られるケチミン化合物であり、かつ、23℃における粘度が0.1〜100Pa・sである湿気硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿気硬化性樹脂組成物に関する。より詳細には、本発明は各種封止材用途に好適な湿気硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加水分解性シリル基を有する変性ポリオキシアルキレン重合体を含有する湿気硬化型樹脂組成物は、接着剤、シーリング剤、封止材等のメインポリマーとして使用されている(例えば、特許文献1)。
このような湿気硬化型樹脂組成物について、セルフレベリング性を向上させようとする場合、上記変性ポリオキシアルキレン重合体の分子量を小さくするか、あるいは、揮発性有機化合物(VOC)や可塑剤を多量添加することによって、組成物の硬化前の粘度を下げることが通常である。
【0003】
しかし、上記変性ポリオキシアルキレン重合体の分子量を小さくすると、硬化後の組成物の物性が低下して脆くなり、特に引き裂き性が劣ることから、望ましい結果を得ることができない。また、揮発性有機化合物や可塑剤を多量添加すると、硬化後の組成物の物性が低下して軟らかくなり、特に引裂き性が劣ることから、望ましい結果を得ることができない。しかも、揮発性有機化合物の多量添加は、特に、トルエン、キシレン等の低沸点溶剤を使用した場合には、安全衛生上の問題が大きく、可塑剤の多量添加は、特に、エステル系可塑剤を使用した場合には、組成物が硬化した後に、硬化物表面にブリードアウトする為、硬化後の残留タック・塗装性に課題がある上に、特にフタル酸エステル類はいわゆる環境ホルモンとしてリストアップされるなど環境上問題視されているなど、環境上の問題が大きい。
また、従来、組成物の硬化時に、表面の一部が凹んだりしわが寄る等の変形が生じる場合があったが、このような硬化収縮による外観異常の発生は、特に封止材用途に使用した場合に、外観上および美感上の問題が大きい。
【0004】
そのため、このような問題がなく、硬化前の優れたレベリング性能と硬化後の物性を両立し、かつ、金属、ガラス等への無機部材への接着が良好な湿気硬化型樹脂組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4450107号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、硬化前には優れたレベリング性を有し、硬化後には高硬度となり、金属およびガラスへの接着性が良好で、しかも、硬化収縮による外観異常が抑制された湿気硬化型樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、
加水分解性シリル基を有する有機重合体100質量部と、エポキシ樹脂3〜100質量部と、ケチミン化合物と、当該加水分解性シリル基に対する硬化触媒とを含み、当該ケチミン化合物が有するイミノ基のモル当量の当該エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)=0.5〜1.5であり、当該ケチミン化合物のうち少なくとも0.2モル当量が、1013hPaにおける融点が35℃以下かつ沸点が100℃以上のポリアミン化合物とカルボニル化合物とを反応させて得られるケチミン化合物であり、かつ、23℃における粘度が0.1〜100Pa・sである湿気硬化型樹脂組成物は、硬化前には優れたレベリング性を有し、硬化後には高硬度となり、金属およびガラスへの接着性が良好で、しかも、硬化収縮による外観異常が抑制された湿気硬化型樹脂組成物とすることができることを知得し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明者らは、以下のようなメカニズムの調和によって課題が解決されたのではないかと考えているが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
a)加水分解性シリル基を有する有機重合体とエポキシ樹脂とのブレンド系とすると、海島構造を形成し硬化後には柔軟でよく伸びるとともに、硬化後には硬さを付与することができる。
b)エポキシ樹脂およびケチミン化合物を、それぞれ、ケチミン化合物との反応性が高くエポキシ当量が多いエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂との反応性が高くアミン価が少ないケチミン化合物とすると、硬化前の組成物の粘度を劇的に低下させることができる。
c)ケチミン化合物を、液状ポリアミン化合物を原料とするものとすると、硬化時の変形を低減できる。
【0009】
すなわち、本発明は以下に掲げる(1)〜(8)を提供する。
(1)加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)100質量部と、エポキシ樹脂(B)3〜100質量部と、ケチミン化合物(C)と、上記加水分解性シリル基に対する硬化触媒(D)とを含み、
上記ケチミン化合物(C)が有するイミノ基のモル当量の上記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)が0.5〜1.5であり、
上記ケチミン化合物(C)のうち少なくとも0.2モル当量が、1013hPaにおける融点が35℃以下かつ沸点が100℃以上のポリアミン化合物と、カルボニル化合物との反応によって得られるケチミン化合物であり、かつ、
23℃における粘度が0.1〜100Pa・sである湿気硬化型樹脂組成物。
(2)上記有機重合体(A)が、加水分解性シリル基としてメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有し、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンであるアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体を含む、上記(1)に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
(3)上記ケチミン化合物(C)が、下記式(1)で表されるカルボニル化合物とポリアミンとを反応させて得られるケチミン化合物を含む、上記(1)または(2)に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【化1】


(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、nは1または2である。RとRとは互いに結合して環構造を形成することができる。RとRとは互いに結合して環構造を形成することができる。)
(4)さらに、炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリケート化合物(E)を上記有機重合体(A)100質量部に対して0.5〜15質量部含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
(5)上記アルキルシリケート化合物(E)が、炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリケート化合物であって、当該アルキルシリケート中のSiO組成量が30〜60質量%であるアルキルシリケート化合物を含む、上記(4)に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
(6)上記アルキルシリケート化合物(E)が、炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリケート化合物であって、当該アルキルシリケート化合物が有するアルコキシシリル基のうち少なくとも60モル%以上がメトキシシリル基であるアルキルシリケート化合物を含む、上記(4)または(5)に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
(7)さらに、脂環式骨格樹脂のシラン変性物(F)を上記有機重合体(A)100質量部に対して0.5〜15重量部含む、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
(8)さらに、平均粒径0.05〜0.20μmの脂肪酸処理コロイダル炭酸カルシウム(G)を上記有機重合体(A)100質量部に対して5〜50重量部含む、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬化前には優れたレベリング性を有し、硬化後には高硬度となり、金属およびガラスへの接着性が良好で、しかも、硬化収縮による外観異常が抑制された湿気硬化型樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について、以下詳細に説明する。
本発明の湿気硬化型樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」という場合がある。)は、
加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)100質量部と、エポキシ樹脂(B)3〜100質量部と、ケチミン化合物(C)と、硬化触媒(D)とを含み、
上記ケチミン化合物(C)が有するイミノ基のモル当量(2種類以上のケチミン化合物を含有するときは各ケチミン化合物あたりのモル当量の合計)の上記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量(2種類以上のエポキシ樹脂を含有するときは各エポキシ樹脂あたりのモル当量の合計)に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)が0.5〜1.5であり、
上記ケチミン化合物(C)のうち少なくとも0.2モル当量が、1013hPaにおける融点が35℃以下かつ沸点が100℃以上のポリアミンと、ケトンとの反応によって得られるケチミン化合物であり、かつ、
23℃における粘度が0.1〜100Pa・sである湿気硬化型樹脂組成物である。
【0012】
〈有機重合体(A)〉
加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)(以下、単に「有機重合体(A)」という場合がある。)について以下に説明する。
【0013】
本発明の組成物に含有される重合体(A)は、加水分解性シリル基を有する有機重合体であれば特に限定されないが、アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体であることが好ましい。
【0014】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、反応性基としてアルコキシシリル基を有し、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンである重合体である。アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体を含有することによって、発泡させずに室温における硬化時間を短縮することができる。
【0015】
上記アルコキシシリル基は、シリル基のケイ素原子に結合する3個の水素原子(水素基)のうち、1〜3個の水素原子がアルコキシ基によって置換され、その余の0〜2個の水素原子が非置換であるかまたは非加水分解性基によって置換されたものであれば、特に限定されない。上記3個の水素原子は、アルコキシ基によって2個以上置換されたものが好ましく、3個とも置換されたものがより好ましい。硬化時間がより短縮されるからである。
【0016】
上記アルコキシ基としては、加水分解性の穏やかさから、炭素数1〜5個のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
【0017】
上記非加水分解性基としては、非加水分解性の置換基であれば特に限定されないが、例えば、アルキル基、アシル基、アルケニル基等が挙げられ、この中でも、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0018】
上記アルコキシシリル基としては、例えば、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0019】
上記有機重合体(A)としては、加水分解性シリル基としてメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有し、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンであるアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体が好ましい。
【0020】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体の主鎖は、実質的にポリオキシアルキレンである。ポリオキシアルキレンは特に制限されない。例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが挙げられ、接着性・耐水性などを考慮して選択される。
【0021】
なお、本発明において、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンであるとは、主鎖を構成する繰り返し単位としてオキシアルキレン基を繰り返し単位の総モル数の50%以上の量で含むことをいう。
【0022】
ポリオキシアルキレンが含むことができる、オキシアルキレン基以外の繰り返し単位は特に制限されない。
【0023】
トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体において主鎖はホモポリマーまたは共重合体であってもよい。
【0024】
また、主鎖は直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。主鎖が直鎖状の場合硬化物の伸びに優れる。主鎖が分岐状の場合はより強靭な硬化物を得ることができる。
【0025】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、反応性基として、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有することが好ましい。反応性基の数は、速硬化性により優れ、粘度と可撓性のバランスに優れるという観点から、アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体1分子あたり1〜4個であるのが好ましい。
【0026】
反応性基は主鎖の末端におよび/または側鎖として結合することができる。硬化物の破断強度、破断伸度に優れるという観点から、反応性基は主鎖の少なくとも両末端に結合すのが好ましい。
【0027】
反応性基は主鎖と直接にまたは有機基を介して結合することができる。有機基は特に制限されない。例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。
【0028】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、速硬化性、貯蔵安定性により優れ、粘度と可撓性のバランスに優れるという観点から、末端にトリメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン重合体、末端にトリエトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン重合体が好ましく、2つ以上の末端にトリメトキシシリル基をそれぞれ1個有するポリオキシプロピレン重合体、2つ以上の末端にトリエトキシシリル基をそれぞれ1個有するポリオキシプロピレン重合体がより好ましく、両末端にトリメトキシシリル基を有する直鎖状のポリオキシプロピレン重合体、両末端にトリエトキシシリル基を有する直鎖状のポリオキシプロピレン重合体、両末端にトリメトキシシリル基を有し側鎖の末端にトリメトキシシリル基を有する3官能の分岐状ポリオキシプロピレン重合体、両末端にトリエトキシシリル基を有し側鎖の末端にトリエトキシシリル基を有する3官能の分岐状ポリオキシプロピレン重合体がさらに好ましい。
【0029】
トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化2】


(式中、R、Rは炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、nは9〜900の整数であり、mは1〜5の整数であり、Aは原料として使用される、ポリオキシアルキレンモノオールまたはポリオキシアルキレンポリオールを製造する際に用いられる開始剤の残基である。)
【0030】
トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体を製造する際、原料としてポリオキシアルキレンモノオールまたはポリオキシアルキレンポリオールを使用することができるが、そのポリオキシアルキレンモノオールまたはポリオキシアルキレンポリオールを製造する際に用いられる開始剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0031】
トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、貯蔵安定性、速硬化性により優れ、増粘を抑制することができ組成物の粘度を適正なものとすることができるという観点から、上記式(2)で表されるものが好ましい。
【0032】
本発明の組成物は、組成物を低粘度にすることを目的として、2個以上の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ1個有するポリオキシプロピレン重合体に対して、片末端にアルコキシシリル基を1個有するポリオキシプロピレン重合体を混合することができる。片末端にアルコキシシシリル基を1個有するポリオキシプロピレン重合体は、別の末端にアルコキシシリル基を有さずヒドロキシ基を有してもよい。
【0033】
片末端にアルコキシシリル基を1個有するポリオキシプロピレン重合体の量は、2個以上の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ1個有するポリオキシプロピレン重合体に対して、10質量%以下であるのが硬化物の物性(強度と伸び)が極端に低下しないという点から好ましい。
【0034】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体の分子量は、硬化前の粘度(レベリング性)と硬化後の可撓性のバランスに優れるという観点から、3,000〜50,000であるのが好ましく、10,000〜30,000であるのがより好ましい。
【0035】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、また、硬化後の物性(伸び、強度)に優れるという観点から、ウレタン結合を含んでいてもよい。
【0036】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体はその製造について特に制限されない。例えば、ポリオキシアルキレンモノオールおよび/またはポリオキシアルキレンポリオール(例えば、A−[(OR−OH]で表される化合物が挙げられる。R、n、mは、Aは上記式(V)と同義である。)と、ハロゲン化不飽和炭化水素基(例えば、R−Xで表される化合物が挙げられる。Rは炭素原子数1〜10の、不飽和結合を有する炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のようなハロゲン原子である。)とを反応させ、不飽和結合を有するポリオキシアルキレン化合物(例えば、A−[(OR−O−Rで表される化合物。)を得ることができる。
【0037】
次に、不飽和結合を有するポリオキシアルキレン化合物を白金ビニルシロキサン錯体のような白金触媒の存在下においてヒドロトリアルコキシシラン(例えば、HSi(ORで表される化合物。Rは上記式(V)と同義である。)またはヒドロジアルコキシアルキルシランと反応させることによってアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体を製造することができる。上記白金触媒は、ヒドロシラン化合物と不飽和炭化水素基との反応に使用できるものであれば特に制限されない。
【0038】
本発明の重合体(A)においては、アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
〈エポキシ樹脂(B)〉
エポキシ樹脂(B)について以下に説明する。
本発明の組成物は、エポキシ樹脂(B)およびケチミン(C)を含有することによって、組成物の硬化前粘度を下げながら、硬化後の物性(強度・伸び)を保持することができる。またアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体に単独と比べて耐湿性、耐熱性に優れる。
【0040】
本発明の組成物に含有されるエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レゾルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノールなどの多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸などのポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール、アミノアルキルフェノールなどから誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等から誘導されるグリシジルアミン型;さらにエポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレートが挙げられる。
【0041】
なかでも、粘度が低く、ケチミン化合物との反応性が高いという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
本発明において、エポキシ樹脂の量は、アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体100質量部に対して、3〜100質量部である。貯蔵安定性、粘度および可撓性のバランスに優れるという観点から、エポキシ樹脂の量は、アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体100質量部に対して、10〜50質量部であるのが好ましい。
【0043】
〈ケチミン(C)〉
ケチミン化合物(C)(以下、単に「ケチミン(C)」という場合がある。)について以下に説明する。
【0044】
本発明の組成物に含有されるケチミン化合物(C)は、カルボニル化合物とポリアミン化合物との反応によって得られるケチミン化合物であって、そのうちの少なくとも0.2モル当量以上が、カルボニル化合物と、1013hPaにおける融点が35℃以下かつ沸点が100℃以上のポリアミン化合物とを反応させて得られるケチミン化合物である。
【0045】
上記ケチミン(C)は、下記式(1)で表されるカルボニル化合物と、ポリアミン化合物とを反応させることによって得られるケチミン化合物を含むことが好ましく、このケチミン化合物からなることがより好ましい。
【0046】
【化3】


(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、nは1または2である。RとRとは互いに結合して環構造を形成することができる。RとRとは互いに結合して環構造を形成することができる。)
【0047】
ケチミン化合物が有する1つのイミノ基(−N=)は湿気と反応して加水分解することで1級のアミンになり、1個または2個のエポキシ基と反応することができる。
【0048】
上記ケチミン(C)の製造の際に使用されるカルボニル化合物について以下に説明する。
上記カルボニル化合物としては、式(1)で表されるものが好ましい。
【0049】
式(1)において、炭素原子数1〜6のアルキル基は直鎖状および分岐状のうちのいずれであってもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基が挙げられる。Rとしてのアルキル基は特に制限されない。例えば、上記の炭素原子数1〜6のアルキル基と同義である。
【0050】
上記カルボニル化合物としては、例えば、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルt−ブチルケトン(MTBK)、メチルシクロヘキシルケトン、メチルシクロヘキサノンのような式(I)中のnが1でありRがアルキル基であるケトン;式(I)中のnが2であるケトン:式(I)中のnが1でありRが水素原子であるアルデヒド化合物が挙げられる。なかでも、速硬化性、貯蔵安定性により優れるという観点から、式(1)中のnが1でありRがアルキル基であるケトンが好ましく、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルt−ブチルケトン(MTBK)、メチルシクロヘキシルケトン、メチルシクロヘキサノンがより好ましい。
【0051】
上記ケチミン(C)の製造の際に使用されるポリアミン化合物について以下に説明する。
上記ポリアミン化合物は、ケチミン(C)のうち少なくとも0.2モル当量以上のものの製造については、アミノ基を2個以上有する化合物であって、1013hPaにおける融点が35℃以下であり、かつ、沸点が100℃以上であるものに限定されるが、ケチミン(C)のうちのその余のものの製造については、アミノ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されることなく使用することができる。
【0052】
上記アミノ基を2個以上有する化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
R−(CH−NH (3)
式中、Rは例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基であり、nは2以上の整数である。
Rは速硬化性、貯蔵安定性に優れるという観点から、炭素原子数1〜10であるのが好ましい。
nは、入手が容易な1〜4であるのが好ましい。
【0053】
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパンのような脂肪族ポリアミン;サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148のようなポリエーテル骨格のジアミン;1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、三井東圧化学(株)製のNBDA(ノルボルナンジアミン)に代表されるノルボルナン骨格のジアミン、N−アミノエチルピペラジンのような脂環式炭化水素基を有するポリアミン;芳香族ポリアミン;メタキシリレンジアミン、テトラメチルキシリレンジアミンのような芳香族炭化水素基に結合する脂肪族炭化水素基を有するポリアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミンが挙げられる。
【0054】
“1013hPaにおける融点が35℃以下であり、かつ、沸点が100℃以上であるポリアミン”としては、例えば、1,4−ジアミノブタン(DAB)、1,3−ジアミノプロパン(DAP)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、1,3−ビスアミノシクロヘキサン(1,3−BAC)等が挙げられる。これらの中でも、本発明の組成物の接着性がより優れるという観点から、DABまたはDAPが好ましい。
【0055】
“1013hPaにおける融点が35℃以下であり、かつ、沸点が100℃以上であるポリアミン”ではないポリアミンとしては、速硬化で、エポキシ樹脂との貯蔵安定性に優れるという観点から、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)が好ましい。
【0056】
カルボニル化合物とポリアミンとの組み合わせとしては、得られる本発明の組成物の硬化前の粘度(初期粘度)をより低く、硬化後の接着性能をより高くし、しかも、硬化収縮による外観異常を抑制するという観点から、メチルイソプロピルケトン(MIPK)と1,4−ジアミノブタン(DAB)との組合せ、メチルイソプロピルケトン(MIPK)と1,3−ジアミノプロパン(DAP)との組合せ、メチルイソプロピルケトン(MIPK)とノルボルナンジケトン(NBDA)との組合せ、メチルイソプロピルケトン(MIPK)と1,3−ビスアミノシクロヘキサン(1,3−BAC)との組合せが好ましい。
【0057】
また、ケチミン化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて、使用することができる。
上記した組合せによるケチミン化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて、使用することができるが、ケチミン(C)のうち0.2モル当量以上については、“1013hPaにおける融点が35℃以下であり、かつ、沸点が100℃以上であるポリアミン”を使用したケチミン化合物とする。
“1013hPaにおける融点が35℃以下であり、かつ、沸点が100℃以上であるポリアミン”ではないポリアミンを使用したケチミン化合物としては、例えば、メチルイソプロピルケトン(MIPK)とヘキサメチレンジアミン(HMDA)との組合せによるケチミン化合物が挙げられる。
【0058】
本発明において、上記ケチミン(C)が有するイミノ基のモル当量の、上記エポキシ樹脂(B)が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)は0.5〜1.5である。
また、上記(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)は、硬化温度におけるエポキシ樹脂の反応性に依存し、室温付近では全てのイミノ基がエポキシ基と反応しない為、理論値1.0よりも若干低い0.7〜1.0であるのが好ましい。
【0059】
〈硬化触媒(D)〉
加水分解性シリル基に対する硬化触媒(D)(以下、単に「硬化触媒(D)」という場合がある。)について以下に説明する。
【0060】
本発明の組成物に含有される硬化触媒(D)は、シラノール縮合触媒として使用されるものであれば特に限定されない。例えば、チタン系エステル類、錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、ビスマス化合物、アミン化合物が挙げられる。これらのなかでも、速硬化性、硬化物の変色が比較的おきにくいという観点から、錫化合物が好ましく、4価の錫化合物がより好ましい。
【0061】
上記4価の錫化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ラウリン酸スズのようなカルボン酸塩;ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物;ジアルキルスタノキサンジカルボキシレート;ジブチルスズジメトキシドのようなジアルキルスズアルコラート;(ジアルキルスタノキサン)ジシリケート化合物;ジブチルスズジアセチルアセトナートのようなキレートが挙げられる。これらのなかでも、速硬化性、貯蔵安定性により優れ、ポリエーテルに対して安定であるという観点から、ジアルキルスズアルコラート、キレート、(ジアルキルスタノキサン)ジシリケート化合物が好ましく、ジブチル錫塩と正珪酸エチルとの反応生成物あるいはジオクチル錫塩と正珪酸エチルとの反応生成物がより好ましい。
【0062】
上記硬化触媒(D)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
本発明の組成物に含有する硬化触媒(D)の量は、速硬化性に優れ、耐熱性により優れ、貯蔵安定性に優れるという観点から、有機重合体(A)100質量部に対して、0.1〜3.0質量部であるのがより好ましい。
【0064】
〈アルキルシリケート(E)〉
本発明の組成物は、所望により、さらに、炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリケート化合物(E)(以下、単に「アルキルシリケート(E)」という場合がある。)を含有することができる。
また、上記アルキルシリケート化合物は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて、アルキルシリケート(E)として利用してもよい。
【0065】
上記アルキルシリケート(E)は、一般式:Si(OR)(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表わす)で表されるアルキルシリケートモノマーのほか、これらを部分加水分解重縮合した、縮合度の低い低縮合物(オリゴマー)を利用することができる。
【0066】
上記アルキルシリケート(E)としては、重量平均分子量200〜2000程度の市販の、アルキルシリケートの低縮合物(オリゴマー)を用いてもよい。当該オリゴマーは、アルキルシリケートモノマーまたは市販の低縮合物(オリゴマー)に、水と溶媒と必要によって酸触媒を混合し、ゲル化する以前の所定の時間攪拌保持する方法などによって得ることができる。
【0067】
上記アルキルシリケート(E)の市販品としては、例えば、MKCシリケート MS−39、MS−56、MS−60(以上、三菱化学社製;メチルシリケート)等を使用することができる。
【0068】
本発明の組成物中のアルキルシリケート(E)の含有量は特に限定されないが、上記有機重合体(A)100質量部に対し、0.5〜15質量部であるのが好ましく、0.5〜10質量部であるのがより好ましい。
【0069】
本発明の組成物が上記アルキルシリケート(E)を含有すると、アルキルシリケート(E)の加水分解・重縮合により生成されるシリカにより、本発明の組成物は、硬化前には適度なチクソ性を得ることができ、硬化後には優れた靭性を得ることができる。
【0070】
本発明の組成物に含有するアルキルシリケート(E)のSiO組成量は特に限定されないが、30〜60質量%であるものを含んでもよい。
【0071】
また、上記アルキルシリケート(E)が有するアルコキシシリル基のうち少なくとも60モル%以上がメトキシシリル基であることが好ましい。すなわち、上記アルキルシリケート(E)が1種類のアルキルシリケート化合物からなる場合または2種類以上のアルキルシリケート化合物からなる場合のいずれにおいても、当該1種類または2種類以上のアルキルシリケート化合物が有するアルコキシシリル基の総数のうち、少なくとも60モル%以上がメトキシシリル基であることが好ましい。
【0072】
〈シラン変性物(F)〉
本発明の組成物は、所望により、さらに、脂環式骨格樹脂のシラン変性物(F)(以下、単に「シラン変性物(F)」という場合がある。)含有することができる。
上記シラン変性物(F)としては、脂環式樹脂をシリル基変性したものであれば特に限定されないが、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂などの脂環式骨格樹脂をシリル基変性したもの等が挙げられる。
上記シラン変性物(F)の含有量は特に限定されないが、上記有機重合体(A)100質量部に対して0.5〜15質量部含有するのが好ましく、0.5〜10質量部含有するのがより好ましい。
上記シラン変性物(F)は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用して使用してもよい。
【0073】
上記シラン変性物(F)としては、従来公知の製造方法によって製造したものを使用してもよいが、市販品を使用することもできる。
上記シラン変性物(F)の市販品としては、例えば、Y−プライマー404、Y−プライマー405(以上、山一化学工業社製;シリル基変性テルペン樹脂)が挙げられる。
【0074】
本発明の組成物が上記シラン変性物(F)を含有すると、接着力が向上する。
【0075】
〈コロイダル炭酸カルシウム(G)〉
本発明の組成物は、所望により、さらに、脂肪酸処理コロイダル炭酸カルシウム(以下、単に「コロイダル炭酸カルシウム(G)」という場合がある。)を含有することができる。
上記コロイダル炭酸カルシウム(G)の平均粒径は特に限定されないが、0.05〜0.20μmであるのが好ましく、0.05〜0.10μmであるのがより好ましい。
上記コロイダル炭酸カルシウム(G)の含有量は特に限定されないが、上記有機重合体(A)100質量部に対して、5〜50質量部であるのが好ましく、5〜30質量部であるのがより好ましい。
また、上記コロイダル炭酸カルシウム(G)は、1種類を単独で、または、2種類以上を併用して、本発明の組成物中に含有することができる。
【0076】
上記コロイダル炭酸カルシウム(G)としては、従来公知の製造方法によって製造したものを使用してもよいが、市販品を使用してもよい。
上記コロイダル炭酸カルシウム(G)の市販品としては、例えば、ネオライトSP(平均粒径=0.08μm)、ネオライトP(平均粒径=0.08μm)、ネオライトSP−T(平均粒径0.15μm)、ネオライトSP−TT(平均粒径=0.15μm)、ネオライトSP−60(平均粒径=0.08μm)、ネオライトSP−100(平均粒径=0.08μm)、ネオライトSP−300(平均粒径=0.15μm)(以上、竹原化学工業社製)等が挙げられる。
【0077】
本発明の組成物が上記コロイダル炭酸カルシウム(G)を含有すると、その種類および含有量を適宜調整することによって、本発明の組成物の粘度、チクソ性(揺変性)、粘性、硬化速度、硬化後のモジュラス、せん断強度等の調整をすることができる。
【0078】
〈その他含有してもよい成分〉
本発明の組成物は、上記成分のほかに必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、さらに添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、例えば、カーボンブラック、溶融シリカ、珪砂、珪酸カルシウム等、マイカ、タルク、アルミナ、モンモリロナイトなどの充填剤;チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素などの熱伝導性フィラー;ガラスバルーン、各種樹脂バルーンなどの中空フィラー;ポリメタクリル酸などを微細化した各種樹脂フィラー;可塑剤;ビニルシラン、シリケート化合物などの脱水剤;エポキシシラン、アミノシラン、メタクリルシランなどのシランカップリング剤;脂肪酸ポリアマイド系ワックスなどのチクソトロピー付与剤;酸化チタンなどの顔料;染料;老化防止剤、酸化防止剤;帯電防止剤;接着付与剤;分散剤;溶剤;硬化剤;等が挙げられる。
【0079】
[初期粘度]
本発明の組成物の硬化前の初期粘度は、23℃において、0.1〜100Pa・sである。なお、ここで、上記粘度は、本発明の組成物の初期粘度を、コーン・プレート型(E型)粘度計(ローター#1、0.5rpm)を使用して、23℃の条件下で測定したものである。
【0080】
初期粘度がこの範囲内であると、本発明の組成物は優れたレベリング性を有し、セルフレベリングするため、特に、封止材用途に好適な湿気硬化型樹脂組成物とすることができる。
【0081】
初期粘度は0.1〜100Pa・sの範囲内であれば特に制限されないが、レベリング性が向上するという観点から、0.1〜70Pa・sの範囲内であるのが好ましく、0.1〜50Pa・sであるのがより好ましく、0.1〜30Pa・sであるのがさらに好ましい。
【0082】
[製造方法]
本発明の組成物はその製造について特に制限されない。例えば、上述の各成分を減圧し窒素雰囲気下において混合ミキサー等の攪拌装置を用いて十分混練し、均一に分散させて製造する方法が挙げられる。
本発明の組成物は、1液型または2液型として製造することができる。
本発明の組成物がさらに水を含有する場合は貯蔵安定性に優れるという観点から、アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体、エポキシ樹脂、ケチミン化合物、ポリエーテル、難燃フィラーおよび硬化触媒を含有する主剤と、水を少なくとも含有する硬化剤とを有する2液型とするのが好ましい態様の1つとして挙げられる。ヒュームドシリカ、表面処理炭酸カルシウム、添加剤は、それぞれ主剤および/または硬化剤に加えることができる。
【0083】
[使用方法]
本発明の組成物は室温(5〜35℃)で硬化することができる。
また、本発明の組成物は例えば大気中の湿気、組成物に含有することができる充填剤のような成分中に含まれる水分によって硬化することができる。
【0084】
本発明の組成物を適用することができる被着体は特に制限されない。例えば、金属、プラスチック、ゴム、ガラス、セラミックが挙げられる。
本発明の組成物を被着体に適用する方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0085】
本発明の組成物の用途としては、例えば、シーリング材、接着剤、コーティング材、プライマー、塗料、ポッティング材が挙げられる。
本発明の組成物は、各種電気・電子分野用、建築物用、自動車用、土木用等に使用可能である。
本発明の組成物は、エアコン、ファンヒーター、送風機、除湿機、加湿器に使用することができる。
また、本発明の組成物は難燃性製品の部品接着に使用することができる。難燃性製品としては、例えばスピーカー、ビデオカセットプレイヤー、テレビ、ラジオ、自動販売機、冷蔵庫、パーソナルコンピューター、カード型電池、ビデオカメラ、カメラ、自動車部品、精密機器等が挙げられる。
また、本発明の組成物を高圧部品、高圧となりうる回路やその周辺で使用される部品の接着、長時間連続運転される電器製品内の接着に適用することができる。これらの部品の具体例としては、例えば、コネクター、スイッチ、リレー、電線ケーブル、フライバックトランス、偏向ヨークが挙げられる。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されないことはいうまでもない。
【0087】
1.湿気硬化型樹脂組成物の製造
第1表に示す各成分を、各処方に従い混練して、実施例1〜8および比較例1〜3の湿気硬化型樹脂組成物を製造した。
なお、ケチミン化合物は従来公知の方法によりポリアミン化合物とカルボニル化合物とから合成した。
【0088】
2.湿気硬化型樹脂組成物の試験
(1)粘度(初期粘度)
実施例1〜8および比較例1〜3の各組成物について、初期粘度(単位:Pa・s)を、E型粘度計(TV20型粘度計、ローター#1、0.5rpm)を使用して、23℃の条件下で測定した。
粘度が0.1〜100Pa・sの範囲内にあるものを合格として「○」で評価し、100Pa・sを超えるものを不合格として「×」で評価した。
【0089】
(2)外観
実施例1〜8および比較例1〜8の各組成物について、得られた各組成物を20℃、55%RHの条件下に7日間置き、組成物の表面を観察し、硬化収縮による外観異常が発生しているか否かを観察した。
外観異常が発生しなかったものを合格として「○」で評価し、発生したものを不合格として「×」で評価した。
【0090】
(3)硬度
実施例1〜8および比較例1〜3の各組成物について、得られた各組成物を20℃、55%RHの条件下で7日間養生し、各組成物の硬度を、各タイプAデュロメータを用いて、JIS K 6253:2006の硬さ試験方法に準拠して測定した。
硬度がA50〜A80の範囲内のものを合格として「○」で評価し、この範囲外のものを不合格として「×」で評価した。
(4)ガラス接着性/陽極酸化アルミ接着性
実施例1〜8および比較例1〜3の各組成物について、得られた各組成物をガラス板または陽極酸化アルミ板の上に膜厚約10mmとなるようにビード状に塗布した後、20℃、55%RHの条件下で7日間養生し、試験体を得た。
得られた試験体について、ビード部分を手で剥離し破壊様式を観察した。
凝集破壊(CF)、界面破壊(AF)を記録し,CFとAFが同程度に混在し、CFの面積がAFの面積より大きいものはCF/AFと記録した。
CFおよびCF/AFを合格として、それぞれ、「◎」および「○」と評価し、AFを不合格として「×」と評価した。
(5)総合評価
粘度、表面タック、硬度、ガラス接着性および陽極酸化アルミ接着性のいずれにも「×」評価がなかったものを総合的な合格として「○」と評価した。
【0091】
【表1】

【0092】
第1表において、各成分は下記のものである。なお、各成分の含有量は質量部で表す。
・重合体1:トリメトキシシリル基を有する有機重合体(SAX 510,(株)カネカ社製;数平均分子量=29000,直鎖)
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(アデカレジン EP−4100E(YD−128),(株)アデカ社製;エポキシ当量=188)
・ケチミン化合物1:下記式(A)で表されるケチミン化合物(ヘキサメチレンジアミンとメチルイソプロピルケトンとから製造されたケチミン化合物)
・ケチミン化合物2:下記式(B)で表されるケチミン化合物(1,4−ジアミノブタンとメチルイソプロピルケトンとから製造されたケチミン化合物)
・ケチミン化合物3:下記式(C)で表されるケチミン化合物(1,3−ジアミノプロパンとメチルイソプロピルケトンとから製造されたケチミン化合物)
・ケチミン化合物4:下記式(D)で表されるケチミン化合物(ノルボルナンジケトンとメチルイソプロピルケトンとから製造されたケチミン化合物)
・ケチミン化合物5:下記式(E)で表されるケチミン化合物(1,3−ビスアミノシクロヘキサンとメチルイソプロピルケトンとから製造されたケチミン化合物)
・硬化触媒1:ジオクチル錫(ネオスタン S1,日東化成(株)社製)
・シリケート1:メチルシリケート(MKCシリケート MS−56,三菱化学(株)社製)
・シラン変性物1:脂環式骨格樹脂のシラン変性物(Yプライマー 405,山一化学工業(株)社製)
・炭酸カルシウム1:脂肪酸処理コロイダル炭酸カルシウム(ネオライトSP,竹原化学工業(株)社製)
・シランカップリング剤1:エポキシシラン(KBM 403,信越化学工業(株)社製)
・シランカップリング剤2:ビニルシラン(KBM 1003,信越化学工業(株)社製)
また、第1表において、「モル当量比」は、ケチミン化合物が有するイミノ基のモル当量(2種類以上のケチミン化合物を含有するときは各ケチミン化合物あたりのモル当量の合計)の上記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)を表し、「モル当量」は、ケチミン化合物のうちの、1013hPaにおける融点が35℃以下かつ沸点が100℃以上のポリアミン化合物と、カルボニル化合物との反応によって得られるケチミン化合物のモル当量を表す。
【0093】
【化4】

【0094】
3.試験結果の説明
(実施例1〜8)
実施例1〜8の湿気硬化型樹脂組成物は、粘度、表面タック、硬度、ガラス接着性および陽極酸化アルミ接着性のすべてが「○」または「◎」と評価され、総合的な評価として合格であった。
実施例3、4と実施例7、8とをそれぞれ対比すると、ケチミン化合物を併用すると、陽極酸化アルミに対する接着性が「○」から「◎」に向上することが理解される。
(比較例1〜3)
比較例1は、エポキシ樹脂、ケチミン化合物および特定のシリケートを含有しない例である。
初期粘度は高く不良であり、硬度、接着性のいずれも不良であっが、硬化収縮による外観異常は抑制されていた。
比較例2は、ケチミン化合物として“1013hPaにおける融点が35℃以下であり、かつ、沸点が100℃以上であるポリアミン化合物とカルボニル化合物とから得られるケチミン化合物”ではないもののみを含有する例である。
初期粘度は低く、硬度は高く、それぞれ良好であったが、硬化収縮による外観異常が発生し、接着性も十分なものではなかった。
比較例3は、比較例2の組成物に、特定のシリケート化合物を含有するものである。
比較例2の試験結果と比べると、接着性の向上はあったが、硬化収縮による外観異常が発生し、総合的には不合格であった。
ケチミン化合物として“1013hPaにおける融点が35℃以下であり、かつ、沸点が100℃以上であるポリアミン化合物とカルボニル化合物とから得られるケチミン化合物”を、ケチミン化合物のうち少なくとも0.2モル当量以上含有することが、硬化収縮による外観異常を抑制するために必須であることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の湿気硬化性樹脂組成物は、特に、各種封止材用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)100質量部と、エポキシ樹脂(B)3〜100質量部と、ケチミン化合物(C)と、前記加水分解性シリル基に対する硬化触媒(D)とを含み、
上記ケチミン化合物(C)が有するイミノ基のモル当量の上記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)が0.5〜1.5であり、
上記ケチミン化合物(C)のうち少なくとも0.2モル当量が、1013hPaにおける融点が35℃以下かつ沸点が100℃以上のポリアミン化合物と、カルボニル化合物との反応によって得られるケチミン化合物であり、かつ、
23℃における粘度が0.1〜100Pa・sである湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機重合体(A)が、加水分解性シリル基としてメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有し、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンであるアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体を含む、請求項1に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記ケチミン化合物(C)が、下記式(1)で表されるカルボニル化合物とポリアミンとを反応させて得られるケチミン化合物を含む、請求項1または2に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【化1】


(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、nは1または2である。RとRとは互いに結合して環構造を形成することができる。RとRとは互いに結合して環構造を形成することができる。)

【公開番号】特開2012−1656(P2012−1656A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139155(P2010−139155)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】