説明

湿温度・放射温度測定装置

【課題】 居住域に在席する人付近の温度・湿度を正確に計測する。
【解決手段】 放射温度を測定する放射温度センサー部2と、湿度及び温度を測定する湿温度センサー部3とを有し、放射温度センサー部2と湿温度センサー部3とを一体化して構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿温度・放射温度測定装置に関し、特に居住域に自由に設置できる湿温度・放射温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
居住者にとって快適な空調制御を行うには、その居住域に在席する人付近の温度・湿度・放射温度を正確に計測し、その計測値を空調制御に利用することが有効である。
【0003】
この場合、在席する人付近の温湿度・放射温度を計測するには、設置自由度の高い無線センサーが有効である。
【0004】
無線の温湿度センサーは既に多数ある。しかし、従来の温湿度センサーは、壁・柱などの大きな面に設置するために、居住域に在席する人付近の温湿度を正確に計測することができなかった。また、センサーも大きく意匠的にも人のいるデスク廻りに設置することが困難であった。
【0005】
また、放射温度センサーは既にあるが、窓面の放射温度など放射計側面が限られている。このため、天井・壁・床を含めた人に対する総合的な放射の影響を計測することができなかった。この課題を解決できるのはグローブ温度センサーである。
【0006】
しかし、特開2004−317015号公報(特許文献1)では、中空球体を用いており意匠的にも室内で設置できる場所が限定されている。
【0007】
一方、特許第3556192号公報(特許文献2)及び特開平10−103745号公報(特許文献3)では、半球体を用いているが全方向からの放射の影響を正確に計測することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−317015号公報
【特許文献2】特許第3556192号公報
【特許文献3】特開平10−103745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記関連技術の第1の問題点は、居住域に在席する人付近の温度・湿度・放射温度を正確に計測することができないことである。
【0010】
その理由は、上記関連技術の空気温湿度センサーは、壁・柱などの大きな面への設置用であり、室内に在席する人付近への設置は困難であり、また、センサーも大きく意匠的にも人のいるデスク廻りに設置することが困難なことにある。
【0011】
第2の問題点は、天井・壁・床を含めた人に対する総合的な放射の影響を正確に計測することができないことである。
【0012】
その理由は、窓面の放射温度など放射計測面が限られたり、また、半球を使用しグローブ温度を計測した場合、設置形態によりセンサーに放射熱源からの放射が伝わらず全方向からの放射を正確に計測できないことにある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、居住域に在席する人付近の温度・湿度を正確に計測することにある。また、本発明の他の目的は、天井・壁・床を含めた人に対する総合的な放射の影響を正確に計測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の湿温度・放射温度測定装置は、放射温度を測定する放射温度センサー部と、湿度及び温度を測定する湿温度センサー部とを有し、上記放射温度センサー部と上記湿温度センサー部とを一体化して構成した。
【0015】
また、本発明の湿温度・放射温度測定装置は、
放射温度をグローブ温度として測定する半球状の放射温度センサー部と、
上記放射温度センサー部と一体化され、かつ湿度及び温度を測定する湿温度センサー部と、
上記放射温度センサー部で測定された測定グローブ温度と上記湿温度センサー部で測定された湿度及び温度とがそれぞれ入力されるセンサー入力部と、
上記放射温度センサー部で測定した測定グローブ温度を、設置状況に応じて全方向グローブ温度に補正する放射温度補正部と、
前記補正された全方向グローブ温度、上記湿温度センサー部で測定された湿度及び温度を無線信号に変換しアンテナを介して上位装置に伝送する無線制御部とを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、居住域に在席する人付近の温度・湿度を正確に計測できる。
【0017】
また、本発明によれば、全方向からの放射を正確に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る湿温度・放射温度測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】放射温度補正の説明図であり、(a)はセンサーの正面に放射熱源がある場合であり、(b)はセンサーの側面に放射熱源がある場合である。
【図3】本発明の実施例に係る湿温度・放射温度測定装置の外観図である。
【図4】本発明の実施例に係る湿温度・放射温度測定装置の設置例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1を参照して、本発明に係る湿温度・放射温度測定装置について説明する。
【0021】
湿温度・放射温度測定装置1は、銅から成る黒色塗装を施した半球の放射温度センサー部2と、放射温度センサー部2の内部に配置された放射温度センサー4と、通風用スリットを持つ温湿度センサー部3と、温湿度センサー部3の内部に配置された温湿度センサー5と、センサー入力部6と、放射温度補正部7と、無線制御部8と、アンテナ9と、電源(電池)10とを有する。
【0022】
湿温度・放射温度測定装置1は、放射温度を測定する放射温度センサー部2と、温湿度を測定する温湿度センサー部3を一体化した構成を有する。
【0023】
そして、センサー入力部6には、放射温度センサー4で測定された放射温度と湿温度センサー5で測定された湿度及び温度とがそれぞれ入力される。
【0024】
放射温度補正部7は、半球の放射温度センサー部2の内部に配置された放射温度センサー4で測定された放射温度を設置状況により全方向のグローブ温度に補正する。無線制御部8は、アンテナ9を介して無線により測定値を伝送する。
【0025】
次に、図1を参照して、本発明に係る湿温度・放射温度測定装置1の動作について説明する。
【0026】
放射温度センサー部2の内部に配置された放射温度センサー4により、放射温度を測定する。この測定値は、センサー入力部6に入力される。ここで、上記測定値は半球で測定した放射温度であり、設置状況によっては、球体を使用したグローブ温度とは異なり、測定場所での放射温度を必ずしも正確に表していない。
【0027】
そして、通風用スリットを持つ温湿度センサー部3の内部に配置された温湿度センサー5により温湿度を測定する。この測定値は、センサー入力部6に入力される。
【0028】
半球内の放射温度センサー4で測定した放射温度と、温湿度センサー5で測定した温湿度は、センサー入力部6から、放射温度補正部7を経由し、無線制御部8に送られる。
【0029】
そして、無線制御部7で、無線信号に変換されアンテナ9から無線信号を受信する上位装置(図示せず)に送信される。また、湿温度・放射温度測定装置1内の構成要素(センサー入力部6、放射温度補正部7、無線制御部8)は、電源(電池)10から供給される電源でそれぞれ動作する。
【0030】
次に、放射温度補正部7の動作について図2を参照して説明する。
【0031】
ここでは、半球を使用して測定した放射温度を測定グローブ温度、補正後の放射温度を補正グローブ温度、球体のグローブ温度計で測定した放射温度をグローブ温度と定義する。
【0032】
図2(a)は、放射温度センサー21(図1の放射温度センサー4に対応)の正面に放射熱源23がある場合を示す。ここで、放射熱源23は、例えば、日射を受けているガラス窓などである。
【0033】
半球を使用して放射温度を測定する本発明の放射温度センサー21の正面に放射熱源23がある場合(図2(a−1)参照)、角度aの範囲は、放射熱源23の影響を受ける。角度bおよびcの範囲は、放射熱源23の影響を受けない。角度dの範囲は未検知部分である。
【0034】
また、グローブ温度計22の場合(図2(a−2)参照)、角度aの範囲は放射熱源23の影響を受ける。角度bの範囲は放射熱源23の影響を受けない。ここで、角度dの未検知部分は室温と同等な壁、床、家具等と仮定し、放射温度センサー21の測定値をグローブ温度計22と同等の値に数1で補正する。ここで、数1中の温度は、温湿度センサー5で測定したものである。
【0035】
【数1】

【0036】
例として、放射温度センサー21の正面に十分大きな放射熱源23(窓など)がある場合は、
b=0、c=0、a=dとなり、
補正グローブ温度=測定グローブ温度×0.5+温度×0.5
で求めることができる。
【0037】
図2(b)は、放射温度センサー21の側面に放射熱源23がある場合を示す。
【0038】
半球を使用してグローブ温度を測定する本発明の放射温度センサー21の側面に放射熱源23がある場合(図2(b−1)参照)、角度aの範囲は、放射熱源23の影響を受ける。角度bの範囲は、放射熱源23の影響を受けない。角度dの範囲は未検知部分である。
【0039】
また、グローブ温度計22の場合(図2(b−2)参照)、角度aの範囲は、放射熱源23の影響を受ける。角度bの範囲は放射熱源23の影響を受けない。ここで、角度dの未検知部分は検知部分(角度a、角度bの部分)と同等な温度・放射温度環境とみなすことができるので、放射温度センサー21の測定値は、グローブ温度計22と同等の値とみなすことができる。これを数2とする。
【0040】
【数2】

【0041】
放射温度補正部7では、入力された測定グローブ温度を、測定グローブ温度と、温度及びその設置方法により選択した計算式と、放射熱源の影響を受ける範囲の角度から、グローブ温度計で測定したグローブ温度と同等な値に補正する。
【0042】
(実施例)
図3は、本発明の実施例を説明するための図である。
【0043】
湿温度・放射温度測定装置1は、放射熱の影響を受けにくい白色系塗装のケース31に収納される。放射温度センサー部32(図1の放射温度センサー部2に対応)は、放射熱を効率よく吸収するように、グローブ温度計と同じように黒色塗装した銅の半球内に放射温度センサー4(図1参照)を実装する。温湿度センサー部33(図1の温湿度センサー部3に対応)は、気流を確保できるように十分なスリットを持つカバー内に温湿度センサー5(図1参照)を実装する。
【0044】
ここで、温湿度センサー5を温度センサーと湿度センサーにより別々に構成して、これらをカバー内に実装しても良い。また、温度センサーのみをカバー内に実装して、湿度センサーを親機(図示せず)に実装するようにしても良い。
【0045】
湿温度・放射温度測定装置1のケース31は、居住者の近くに設置できるように、パーテーション取り付け金具34を具備する。パーテーション取り付け金具34は、調整穴35から間隔の調整が可能であり、各種パーテーションに取り付け可能である。また、パーテーション取り付け金具34は着脱可能であり、パーテーション取り付け金具34を外して、壁面等へ直接取り付けることも可能である。
【0046】
ケース31内には、図1で示す、センサー入力部6、放射温度補正部7、無線制御部8、アンテナ9及び電源(電池)10を収納し、グローブ温度計での測定値と同等に補正した放射温度と、温度及び湿度を無線にて無線受信機能を持つ上位装置(図示せず)に伝送する。
【0047】
上位装置は、受信した温度、湿度及び放射温度を、居住者に快適な空調制御用を行うための測定値として空調制御システム(図示せず)に提供する。
【0048】
本実施例では、設置の自由度を向上させるために、湿温度・放射温度測定装置1は、内蔵する電池10(図1参照)にて動作するが、太陽電池にて動作することもできる。この際、一定期間(例えば1分)毎に温湿度、放射温度の計測、補正及び親機(上位装置)への無線伝送を行い、その他の時間は待機状態とする。このように、センサー入力部6、放射温度補正部7及び無線制御部8を電池10により一定期間毎に動作させる。この結果、電池10での動作期間が長くなる。
【0049】
ここで、図4(a)に、湿温度・放射温度測定装置1のケース31をパーテーション40の上部に取り付けた状態を示す。また、ケース31は、パーテーション40の側面に取り付けても良いし、デスク(図示せず)の端部に取り付けても良い。
【0050】
一方、図4(b)に、パーテーション取り付け金具34を取り外すことにより、ケース31を壁面に直接取り付けた状態を示す。
【0051】
このように、湿温度・放射温度測定装置1のケース31は、設置場所に左右されずに、図4(a)に示すように水平に設置したり、図4(b)に示すように鉛直に設置することが可能である。
【0052】
本発明の実施の形態及び実施例によれば、居住域に在席する人付近の温度・湿度を正確に計測できる。その理由は、半球を利用し放射温度測定部を小型化し、さらに温湿度センサーを一体化したことにより、在席者のデスク周り等に自由に設置することを可能にしたからである。
【0053】
さらに、本発明の実施の形態及び実施例によれば、全方向からの放射を正確に計測できる。その理由は、半球で測定したグローブ温度を設置状況により全方向のグローブ温度に補正する放射温度補正手段を具備したからである。
【0054】
以上、本発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 湿温度・放射温度測定装置
2 放射温度センサー部
3 温湿度センサー部
4 放射温度センサー
5 温湿度センサー
6 センサー入力部
7 放射温度補正部
8 無線制御部
9 アンテナ
10 電源(電池)
21 半球を利用した放射温度センサー
22 グローブ温度計
23 放射熱源
31 ケース
32 放射温度センサー部
33 温湿度センサー部
34 パーテーション用取付け金具
35 調整穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射温度を測定する放射温度センサー部と、
湿度及び温度を測定する湿温度センサー部とを有し、
上記放射温度センサー部と上記湿温度センサー部とを一体化して構成したことを特徴とする湿温度・放射温度測定装置。
【請求項2】
前記放射温度センサー部は、半球状を成しかつ前記放射温度をグローブ温度として測定することを特徴とする請求項1に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項3】
前記半球状の放射温度センサー部で測定した測定グローブ温度を、設置状況に応じて全方向グローブ温度に補正する放射温度補正部をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項4】
前記全方向グローブ温度は、球体のグローブ温度計で測定した場合の放射温度であることを特徴とする請求項3に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項5】
前記放射温度補正部は、前記測定グローブ温度、前記湿温度センサー部により測定された温度、前記設置状況により選択した計算式及び放射熱源の影響を受ける範囲の角度を参照して、前記測定グローブ温度を前記全方向グローブ温度に補正することを特徴とする請求項3又は4に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項6】
放射温度をグローブ温度として測定する半球状の放射温度センサー部と、
上記放射温度センサー部と一体化され、かつ湿度及び温度を測定する湿温度センサー部と、
上記放射温度センサー部で測定された測定グローブ温度と上記湿温度センサー部で測定された湿度及び温度とがそれぞれ入力されるセンサー入力部と、
上記放射温度センサー部で測定した測定グローブ温度を、設置状況に応じて全方向グローブ温度に補正する放射温度補正部と、
前記補正された全方向グローブ温度、上記湿温度センサー部で測定された湿度及び温度を無線信号に変換しアンテナを介して上位装置に伝送する無線制御部とを有することを特徴とする湿温度・放射温度測定装置。
【請求項7】
前記センサー入力部、前記放射温度補正部及び前記無線制御部を電池により一定期間毎に動作させることを特徴とする請求項6に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項8】
一部が白色系塗装ケースに収納された請求項1から7のいずれか1項に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項9】
前記放射温度センサー部は黒色塗装した銅の半球で構成されており、この半球内に放射温度センサーが実装されており、
前記温湿度センサー部はスリットを持つカバーで覆われており、このカバー内に温湿度センサーが実装されていることを特徴とする請求項8に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項10】
前記ケースには、着脱可能なパーテーション取り付け金具が設けられていることを特徴とする請求項8又は9に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項11】
前記ケースには、前記パーテーション取り付け金具の間隔の調整が可能な調整穴が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項12】
前記パーテーション取り付け金具を取り外すことにより、前記ケースを壁面に直接取り付け可能に構成したことを特徴とする請求項10に記載の湿温度・放射温度測定装置。
【請求項13】
前記温湿度センサーを温度センサーと湿度センサーにより別々に構成し、前記温度センサーのみを前記カバー内に実装したことを特徴とする請求項9に記載の湿温度・放射温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−236879(P2010−236879A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82121(P2009−82121)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】