説明

湿潤分散剤

本発明は、少なくとも一つのエチレン性不飽和、フェニル基含有モノマーと少なくとも一つのα,β−不飽和モノカルボン酸および/または少なくとも一つのα,β−不飽和ジカルボン酸との少なくとも部分的に塩化されたコポリマーの、少なくとも一つの水溶性ポリエーテルの、少なくとも一つの水溶性ポリエーテルおよび脂肪族ジカルボン酸のエステル化生成物、ならびに少なくとも3個のカルボキシル基を含有するカルボン酸を少なくとも一つの水溶性ポリエーテルでエステル化することによって得ることができるスターポリマーの、低VOC混合物に関し、ならびに本発明の低VOC混合物の、湿潤分散剤としての使用、好ましくは低VOC顔料ペーストまたは低VOCペイント系を製造するための使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(volatile organic compounds=VOC)含有量が低い混合物であって、少なくとも一つのエチレン性不飽和、フェニル基含有モノマーと少なくとも一つのα,β−不飽和モノカルボン酸および/または少なくとも一つのα,β−不飽和ジカルボン酸との少なくとも部分的に塩化されたコポリマーから、少なくとも一つの水溶性ポリエーテルから、少なくとも一つの水溶性ポリエーテルおよび脂肪族カルボン酸のエステル化生成物、ならびに少なくとも3個のカルボキシル基を含有するカルボン酸を少なくとも一つの水溶性ポリエーテルでエステル化することによって得ることができるスターポリマーから、成る混合物に関する。ならびに本発明は、本発明の混合物の湿潤分散剤としての、好ましくは低VOC顔料または低VOC塗料(低VOCペイント)系を製造するための使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
それ相応のより厳しい環境ガイドラインに従って、より低VOCのペイントが、現在益々開発され続けている。従って、揮発性有機溶剤(VOC)の留分が ISO 11890−2またはDIN 55649に従って規定される制限を超えてはならない、装飾用ペイントの中でも、建築用ペイントの中でも、および自動車用ペイントに関しても、コーティング、すなわち塗装に使用されるのは、主として、低VOC系のみである。
【0003】
揮発性有機溶剤のレベルが、前述のISOおよびDIN基準で規定されるこれらの制限より低いときにのみ、そのような系を低VOCとして分類することができる。従って、顔料ペーストにおいても、対応するペイント系においても、それらから生成される水性、低VOC顔料濃縮物によって必要な貯蔵安定性および必要なレオロジー特性が確保されるような非常に多種多様な顔料のいずれの分散にも適する湿潤分散剤に対する差し迫った必要は継続している。有機顔料と無機顔料両方の使用に関して、この要求は存在する。
【0004】
しかし、公知となっている湿潤分散剤の多くは、特定の種類の顔料の水性分散液のみを確実に調製するものであるので、あらゆる場合に有用であるものではない。
【0005】
例えば、米国特許第4,243,430号には、エチレン性不飽和モノマーから調製され、アンモニウムおよび亜鉛塩の形態で存在する、カルボキシル基を含有するコポリマーと、非イオン性またはアニオン性、ポリエーテル含有湿潤剤、例えばエトキシル化脂肪酸などとの組み合わせの、湿潤分散剤としての使用が記載されている。湿潤分散剤における亜鉛イオンおよび亜鉛錯体の使用は、環境的理由で望ましくない。
【0006】
米国特許第6,242,499号には、化粧用製剤におけるナノスケール固体のための湿潤分散剤としての、多官能性カルボン酸とポリグリシドールの部分エステルの使用が開示されている。
【0007】
インク用の湿潤分散剤として、米国特許第6,683,121号は、エチレン性不飽和モノマーから合成されるカルボキシル含有コポリマーと、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから合成され、16と32の間のHLBを有するブロックコポリマーとの組み合わせを推奨している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この先行技術に鑑みて、本発明の目的は、卓越した貯蔵安定性および非常に良好なレオロジー特性を示し、水性塗料材料または万能着色顔料系に関するさらなる処理に容易に適するものになる有機顔料と無機顔料両方の水性濃縮物の調製を可能にする、低VOC湿潤分散剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的は、本発明の湿潤分散剤の提供によって達成され、この湿潤分散剤は、
I 少なくとも一つのエチレン性不飽和、フェニル基含有モノマーと少なくとも一つの好ましくは脂肪族のα,β−不飽和モノカルボン酸および/または少なくとも一つの好ましくは脂肪族のα,β−不飽和ジカルボン酸の、および場合によってはそれらの誘導体の重合単位を含む、少なくとも50%塩化されたコポリマー10重量%から80重量%と、
II 末端OH末端基を含有し、少なくとも25重量%まではエチレンオキシド単位から合成される少なくとも一つの水溶性、線状、好ましくは脂肪族のポリエーテル1重量%から30重量%と、
III 400g/molから1000g/molの数平均分子量を好ましくは有する脂肪族ジカルボン酸の、および≦2000g/molの数平均分子量を好ましくは有する成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルの、または≦2000g/molの数平均分子量を好ましくは有する成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物の、少なくとも一つのエステル化生成物5重量%から80重量%と、
IV ≦2000g/molの数平均分子量を好ましくは有する成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルで、または≦2000g/molの数平均分子量を好ましくは有する成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含有するポリエーテルの混合物で、3個から5個のカルボキシル基を含有し、500g/molから1500g/molの分子量を好ましくは有する少なくとも一つの脂肪族カルボン酸をエステル化することによって得ることができる、少なくとも一つのスターポリマー3重量%から80重量%とから構成される低VOC混合物を含み、成分I−IVの重量%は、それぞれの場合、成分I−IVの総重量に基づき、ならびに、成分IからIVの重量%の合計は、常に100重量%である必要がある。
【0010】
本発明の低VOC混合物は、好ましくは、30重量%から70重量%の成分Iと、2重量%か10重量%の成分IIと、10重量%から50重量%の成分IIIと、5重量%から20重量%の成分IVと、を含み、成分IからIVの重量%の合計は、常に100重量%である必要があり、ならびに成分I−IVの重量%は、それぞれの場合、成分I−IVの総重量に基づく。
【0011】
その混合物の成分Iは、少なくとも一つのフェニル基によって置換されている、8〜20個のC原子を好ましくは有する少なくとも一つのエチレン性不飽和モノマーと、3〜8個のC原子を好ましくは有するα,β−不飽和、好ましくは脂肪族の、モノカルボン酸との重合によって、および/または4〜10個のC原子を好ましくは有する少なくとも一つのα,β−不飽和、好ましくは脂肪族の、ジカルボン酸および/またはその環式無水物、ならびに場合によってはそれらのそれぞれの誘導体、例えばエステルおよびアミドから調製された少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%塩化された線状コポリマーを含む。これらのコポリマーの数平均分子量は、1000g/molから20000g/mol、好ましくは1500g/molから10000g/molである。
【0012】
好ましくは脂肪族の、α,β−不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸として、3から8個の炭素原子を有するモノカルボン酸、さらに好ましくはアクリル酸および/またはメタクリル酸、および/または4から10個の炭素原子を有するα,β−不飽和ジカルボン酸および/またはその環式無水物、さらに好ましくはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸および/または無水マレイン酸、ならびに場合によっては、それらのそれぞれの誘導体、さらに好ましくはそれらのエステル、アミド、非常に好ましくは、CからCアルキルアクリラートおよび/またはCからCアルキルメタクリラートを使用することが好ましい。
【0013】
フェニル基含有、エチレン性不飽和モノマーとして、8から20個のC原子を有するモノエチレン性不飽和モノマー、さらに好ましくはスチレン、アリール(メタ)アクリラート、例えばベンジル(メタ)アクリラート、フェニルアクリラートを使用することが好ましく、そのフェニルラジカル、例えば4−メチルフェニル(メタ)アクリラートなどは、場合によっては1から4回置換されている可能性がある。場合によっては置換されているスチレンを使用することが、特に好ましい。
【0014】
成分Iのコポリマーは、好ましくは、10重量%から90重量%のフェニル基含有、エチレン性不飽和モノマー、ならびに90重量%から10重量%のα,β−不飽和モノカルボン酸および/またはジカルボン酸から合成することができる。
【0015】
成分Iのコポリマーは、ランダム、交互、グラジエントまたはブロック構造を有し得る。勾配構造を有するコポリマーは、例えば、欧州特許第1416019号に、および国際公開第01/44389号にも記載されている。成分Iのコポリマーは、例えばAB、ABCまたはABAブロック構造などのブロック構造を、国際公開第00/40630号、国際公開第03/046020号、米国特許第5,085,698号、米国特許第5,160,372号、米国特許第5,519,085号、米国特許第6,849,679号または米国特許公開第2007/0185272号における開示に従って得ることができる。
【0016】
成分Iの特に好ましいコポリマーは、1:1から8:1のスチレン対無水マレイン酸比を有するスチレン/無水マレイン酸コポリマー(SMA樹脂)である。1:1から2:1が、特に好ましい。それらの数平均分子量は、上述の数値に対応する。
【0017】
成分Iのコポリマーは、例えばアゾまたはペルオキシド開始剤などでのフリー・ラジカル開始型重合によって調製することができる。望ましい分子量を設定するために、例えばチオール、2級アルコールまたはハロゲン化アルキル、例えば四塩化炭素などの連鎖調節剤を重合中に添加することができる。そのコポリマー、好ましくはSMA樹脂のために用いることができる他の調製プロセスとしては、例えば以下のものなどの、制御されたフリー・ラジカル重合プロセスが挙げられる。
そのプロセスとは、例えばPolym.Int.2000,49.993.Aust.J.Chem.2005,58,379、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.2005,43,5347、米国特許第6,291,620号、国際公開第98/01478号、国際公開第98/58974号、および国際公開第99/31144号に記載されているような、可逆的付加フラグメント化連鎖移動プロセス(RAFT)(このプロセスは、一定の重合調節剤が使用されるとき、MADIXおよび付加フラグメント化連鎖移動と呼ばれることもあり、この状況ではRAFTとして特定される)である。
また、例えばChem.Rev.2001,101,3661に開示されているような、重合調節剤(NMP)としてニトロキシル化合物を用いる制御された重合も、挙げられる。
【0018】
前述の参考文献におけるこれらの開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【発明を実施するための形態】
【0019】
成分Iのコポリマーは、このコポリマーが水溶性を獲得するために、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも75%塩化されている。そのコポリマーの低VOC塩化のために、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、好ましくは、対応する水酸化物、炭酸水素塩または炭酸塩を使用することが好ましい。アルカリ金属化合物、例えば、対応する水酸化物、炭酸水素塩または炭酸塩の使用が、特に好ましい。水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウムもしくは炭酸水素カリウムまたは炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムの使用は、塩化において特に好ましい。
【0020】
さらに、このコポリマー、とりわけ無水マレイン酸部分を有するコポリマーの塩化を、低VOCのN,N−二置換ジアミンでのそのマレイン酸のアミド化、それに伴うマレイン酸単位のアミドの形成およびそのアミド化の過程で形成されるカルボキシル基の内部塩化の結果としての両性イオン構造の形成によって、達成することもできる。
【0021】
一般式RN−R’−NHのN,N−置換ジアミンは、この種の塩化に特に適し、この場合のRは、脂肪族、環状脂肪族、芳香族または脂肪族−芳香族炭化水素ラジカル、好ましくは、CからC10を有するアルキルラジカル、CからCを有するシクロアルキルラジカル、CからC10を有するアリールアルキレンラジカルまたはCからC12を有するアリールラジカルである。ラジカルRは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ベンジルまたはフェニルラジカルであり、メチルおよびエチルラジカルが特に好ましい。上の一般式において、ラジカルR’は、2から20個の炭素原子を有する脂肪族、環状脂肪族、芳香族または脂肪族−芳香族炭化水素ラジカルである。使用される特に好ましいN,N−置換ジアミンは、N,N−ジアルキルアミノアルキルアミン、より好ましくは、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミンまたはN,N−ジエチルアミノプロピルアミンである。
【0022】
成分Iのコポリマーのカルボキシル基を塩化するために、3級の低VOCアミンを使用することもできる。そのような3級アミンの例は、例えば米国特許公開第2006/0089426号に記載されている種類の、アルコキシル化アミンであり、それらの中でも、ビス(ω−ヒドロポリ−(オキシエチレン)オレイルアミン)を代表化合物として特記することができる。
【0023】
本発明の混合物の成分IIとして、少なくとも25mol%までエチレンオキシドから、好ましくは少なくとも50mol%のエチレンオキシド単位から合成された公知の化合物を使用することが好ましい。
【0024】
この種のポリエーテルは、好ましくはCからCモノアルコールを用いて出発して調製され、末端基としてヒドロキシル基を含有する。
【0025】
成分IIは、少なくとも25mol%、好ましくは少なくとも50mol%の程度までエチレンオキシド単位の合成された水溶性ポリエーテルを少なくとも一つ含む。
【0026】
本発明において用いられるポリエーテルのエチレンオキシド単位、および場合によっては他のアルキレンオキシド単位に加えて、それらのポリエーテルは、スチレンオキシド単位およびグリシジルエーテル単位に基づくこともある。
【0027】
エチレンオキシド単位に加えて、成分IIとして使用される水溶性ポリエーテルは、3から10個のC原子を有する他のアルキレンオキシド単位、好ましくはプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシド単位を有することがある。さらにもっと言えば、エチレンオキシド単位に加えて、スチレンオキシドの単位、ならびにまた、3から20個のC原子を有する脂肪族または芳香族グリシジルエーテル、好ましくはイソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルおよび/または2−エチルヘキシルグリシジルエーテルが、用いられるポリエーテルの単位として存在することもある。
【0028】
加えて、ポリエーテルは、さらに特に、3から10個のC原子を有する脂肪族ラクトンから、好ましくはプロピオラクトン、バレロラクトンおよび/またはε−カプロラクトンから誘導されるエステル単位で連鎖延長されていることもある。
【0029】
本発明に従って用いられるポリエーテルの数平均分子量は、好ましくは100g/molから2000g/molである。
【0030】
好ましくは、成分IIIは、水溶性ポリエーテルでの脂肪族ジカルボン酸の、または少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物の、エステル化によって得られた、少なくとも一つのトリブロックコポリマーである。その水溶性ポリエーテル、またはポリエーテルの混合物の少なくとも一つの水溶性ポリエーテルは、好ましくは成分(II)に対応する。
【0031】
脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは400g/molから1000g/molの分子量を有する。
【0032】
脂肪族、飽和または不飽和ジカルボン酸として、好ましくは以下のものを使用することができる。
場合によっては水素化されていることがある、二量体化脂肪酸。これは、当業者にはダイマー酸としても公知である。これらのダイマー酸は、好ましくは、12から22個のC原子を有する不飽和脂肪酸のオリゴマー化によって、好ましくは、オレイン酸、リノレイン酸および/またはエルカ酸のオリゴマー化によって、得ることができる。36個以下のC原子の炭素鎖を有する二量体化脂肪酸、すなわちダイマー酸が好ましい。
環式、脂肪族、場合によっては不飽和の無水ジカルボン酸と脂肪族ジオールまたはジアミンとの、好ましくは2:1の比率での、反応生成物。これに関連して、好ましくは、環式無水ジカルボン酸、例えば無水マレイン酸または無水コハク酸を使用することができる。
【0033】
このために用いられるジオールは、好ましくは、2から20個のC原子を有する脂肪族、直鎖、環式または分岐ジオールである。そのようなジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールである。
【0034】
さらに、このジオールは、脂肪族ラクトンとの反応の結果としてオリゴエステルまたはポリエステルの形成により連鎖延長されることもある。末端にジヒドロキシを有するこれらのポリエステルは、欧州特許出願公開第154678号(米国特許第4,647,647号)における詳細に従って、上記のジオールを出発成分として使用して、3から10個のC原子を有する一つ以上の場合によってはアルキル置換されているラクトン、例えばプロピオラクトン、バレロラクトンまたはカプロラクトンなどを重合させることによって好ましくは得ることができる。
【0035】
反応させるジアミンは、好ましくは、2から20個のC原子および二個の1級アミノ基を有する脂肪族、線状、環式または分岐ジアミンであり得る。そのようなジアミンの例は、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、および3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンである。
【0036】
成分(IV)は、水溶性ポリエーテルでの、または少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物での、3個から5個までのCOOH基を有する少なくとも一つの脂肪族多価カルボン酸のエステル化によって得られたスターポリマーである。水溶性ポリエーテル、またはポリエーテルの混合物の少なくとも一つの水溶性ポリエーテルは、好ましくは成分(II)に対応する。
【0037】
用いられるこの種の脂肪族多価カルボン酸は、好ましくは、500g/molから1500g/molの分子量を有する。多価カルボン酸の混合物が使用される場合、その数平均分子量は、同じく500g/molから1500g/molである。
【0038】
三から五個のカルボキシル基を有する脂肪族、多価カルボン酸として、以下のものを使用することが好ましい。
場合によっては水素化されていることがある、三量体化脂肪酸。これは、当業者にはトリマー酸としても公知である。54個以下のC原子の炭素鎖を有する三量体化脂肪酸が好ましい。
環式、脂肪族、場合によっては不飽和の無水ジカルボン酸と、合計3から5個のOH基を有する脂肪族ポリオールまたは3から5個の1級および2級アミノ基を有するポリアミンとの、一個の無水物官能基に対して一個のアミノ基という化学量論比での反応生成物。これに関連して使用することができる環式無水カルボン酸としては、好ましくは、無水マレイン酸または無水コハク酸が挙げられる。
【0039】
ポリオールとして、3から20個のC原子および3から5個のOH基を有する脂肪族、線状、環式または分岐ポリオール、例えばグリセロールなどを使用することができる。
【0040】
さらに、そのポリオールは、ラクトンとの反応の結果としてオリゴエステルまたはポリエステルの形成により連鎖延長されることもある。3から5個のOH基を末端に有するこの種のポリエステルは、上記ポリオールを出発成分として使用して、および欧州特許出願公開第154678号(米国特許出願公開第4,647,647号)における詳細に従って、3から10個のC原子を有する一つ以上の、場合によってはアルキル置換されているラクトン、例えばプロピオラクトン、バレロラクトンまたはカプロラクトンなどの重合によって得ることができる。
【0041】
この反応に用いられるポリアミンは、好ましくは、3から20個のC原子を有し且つ合計3から5個の第一および第二アミノ基、例えばジプロピレントリアミンなどを有する脂肪族、線状、環式または分岐ポリアミンであり得る。
【0042】
成分(III)および(IV)を調製するためのエステル化反応では、それぞれの場合、別々に、ジカルボン酸および多価カルボン酸をエステル化することができる。あるいは、それらを混合物としてエステル化に使用することができる。
【0043】
エステル化のために、ジカルボン酸および多価カルボン酸として、製造業者および純度に従って、異なる特性を有する単量体脂肪酸とダイマー酸とトリマー酸の混合物の形態で購入することができる、ダイマー酸およびトリマー酸を使用することが好ましい。詳細には、そのトリマー酸は、三個より多くのカルボン酸官能基を有するオリゴマーの小さな画分も含み得る。下に列挙するダイマー酸は、概して、<8重量%の単量体脂肪酸および25重量%以下のトリマー酸を含有する。
【0044】
市販のダイマー酸製品は、Empol(登録商標)1008、Empol(登録商標)1061、Empol(登録商標)1062、Pripol(登録商標)1006、Pripol(登録商標)1007、およびPripol(登録商標)1022である。
【0045】
市販のトリマー酸製品は、Empol(登録商標)1041およびPripol(登録商標)1040である。
【0046】
成分(III)および(IV)を調製するために、ジカルボン酸および/または多価カルボン酸として、列挙したダイマー酸およびトリマー酸を使用することが特に好ましい。
【0047】
ポリエーテルでのジカルボン酸および多価カルボン酸の、好ましくは成分(II)のエステル化は、当業者に公知の方法によって行われる。従って、この混合物の反応は、例えばスルホン酸、ジブチル錫ジラウラートまたは3級アミンであるエステル化触媒の存在下、300℃以下、好ましくは200℃以下の反応温度で行うことができる。エステル化の過程で遊離される水は、例えばキシレン、ベンゼンもしくは四塩化炭素などの適する共留剤を用いる共沸により、または真空の適用により、除去することができる。
【0048】
エステル化により、好ましくは、ジカルボン酸および多価カルボン酸の酸官能基の少なくとも90%の転化率が得られる。
【0049】
エステル化の過程で、本発明の混合物中の成分(II)を形成するポリエーテルを過剰に使用できることも好ましい。
【0050】
しかし、本発明の混合物中には、エステル化において使用されるポリエーテルとは異なるさらなるポリエーテルも、成分IIとして存在し得る。
【0051】
成分(III)のトリブロックコポリマーおよび成分(IV)のスターポリマーは、成分(III)については400g/molから1000g/molの、および成分(IV)については500g/molから1500g/molの数平均分子量を有する水不溶性セグメントを有し、それによって顔料を水性分散液中でより有効に安定化させる。そのセグメントが、短すぎるまたは水不溶性でありすぎると、顔料分散液は、もはや十分に安定ではなく、顔料は凝集する。その水不溶性セグメントが長すぎると、成分(III)および成分(IV)は、水中でミセルを形成する。一般的に言うと、ミセルは、対応するユニマーより劣った分散挙動を示し、そのためミセルの形成は、望ましくない。
【0052】
本発明の混合物は、先行技術から公知の多くの水性用途のための湿潤分散剤として適する。例えば、それらは、例えば、ペイント、印刷インク、インクジェットプロセス用の、例えばインクジェットプリンター用のインク、紙用塗料、革製品着色剤および織物着色剤、ペースト、顔料濃縮物、セラミック、化粧用製剤の製造または加工に関連して、好ましくは、顔料および/または充填剤などの固体が存在するいかなるときも、使用することができる。例として、本発明の混合物は、工業用塗料、木材および家具用塗料、車両用塗料、船舶用ペイント、錆止めペイント、缶用塗料およびコイル用塗料、装飾用ペイント、および建築用ペイントの製造に関連して使用することができ、ならびにこれらのために、所望される場合には、従来の公知結合剤および/または低VOC溶剤、顔料、および場合によっては充填剤、本発明のポリマー混合物、および従来の助剤を混合する。
【0053】
従来の結合剤の例は、ポリウレタン、ニトロセルロース、セルロースアセトブチラート、アルキド、メラミン、ポリエステル、塩化ゴム、エポキシド、およびアクリラートに基づく樹脂である。
【0054】
湿潤分散剤として、本発明の低VOC混合物は、例えば自動車車体用の水性塗料、例えば陰極または陽極電着塗料の製造にも適する。分散剤の実用性の他の例は、下塗りの際の、シリケートペイント、エマルジョンペイント、水希釈可能アルキドに基づく水性ペイント、アルキドエマルジョン、ハイブリッド系、2−成分系、ポリウレタン分散液、およびアクリラート分散液である。
【0055】
本発明の混合物は、さらに特に、固体の濃縮物、好ましくは顔料濃縮物の製造にも適する。このために、それらを水に、または水と低VOC、有機、水混和性溶剤もしくは可塑剤との混合物に導入し、分散させる固体を、撹拌しながら添加する。これらの濃縮物は、結合剤および/または他の助剤をさらに含むことがある。
【0056】
顔料濃縮物に添加することができる助剤は、例えば、鉱物油系脱泡剤およびシリコーン系脱泡剤といった脱泡剤や、ポリウレタン系増粘剤、ヒュームドシリカ、ポリアミド化合物、およびオリゴウレア化合物といったレオロジー調整剤の他、流動性調節剤、酸化防止剤、殺生剤、表面湿潤用の有機変性オリゴシロキサンおよびポリシロキサンである。
【0057】
本発明の混合物を用いて、安定な、結合剤を含まない顔料濃縮物を有利に調製することもできる。同様に、本発明の混合物を使用して、顔料フィルターケークから液体顔料濃縮物を製造することができる。この場合、まだ水を含有していることがあるフィルターケークを本発明の混合物と混合し、得られた混合物を分散させる。その後、この種の固体の濃縮物、好ましくは顔料濃縮物をさまざまな支持体、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル酸樹脂、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂などに組み込むことができる。溶剤を用いずに本発明の混合物に直接分散される顔料は、熱可塑性および熱硬化性プラスチック配合物の着色に特に適する。
【0058】
本発明のポリマー混合物は、非衝撃式印刷プロセス、例えばサーマル・インクジェットおよびバブルジェット(登録商標)・プロセス用のインクの生産に有利に使用することができる。例えば、これらのインクは、水性インク配合物であり得る。
【0059】
本発明の混合物は、化粧用製剤の製造の際に、例えば、メークアップ用品、パウダー、口紅、毛染め剤、クリーム、マニキュア液、およびサンプロテクション製品の製造のために利用することもできる。これらの製剤は、典型的な配合物で、例えば、W/OもしくはO/Wエマルジョン、溶液、ゲル、クリーム、ローションまたはスプレー剤の形態で存在し得る。この場合、本発明の混合物を、これらの製剤を製造するために使用する分散液に分散剤として使用することさえできる。
【0060】
さらに、本発明は、本発明の混合物の湿潤分散剤としての使用に関するものである。これらの湿潤分散剤は、好ましくは、上で説明した用途に用いられる。
【0061】
さらに、さらなる用途は、基材上の着色コーティングの製造であり、この場合、着色ペイントを基材に塗布し、塗布された着色ペイントをベーキングまたは硬化、または架橋する。
【0062】
本発明の混合物の適用のために、所望される場合には、それらを、先行技術に従って通常の結合剤と共に使用することができる。
【0063】
本発明による使用の一つは、粉末粒子および/または繊維粒子形態の分散性固体の製造におけるものであり、より詳細には、分散性顔料の製造におけるものでもあり、この場合、それらの粒子を本発明の混合物でコーティングすることができる。有機固体または無機固体へのこの種のコーティング操作は、公知の方法で、例えば欧州特許出願公開第0270126号に記載されているように、行われる。この場合、低VOC溶液またはエマルジョン媒質は、ペーストを形成するために、除去されることもあり、またはその混合物中に残存することもある。この種のペーストは、一般的な商品であり、所望される場合には、結合剤、ならびにまた他の助剤および補助剤を含むことがある。
【0064】
具体的には、顔料の場合、それらの顔料の合成中または合成後に本発明の混合物を添加することによって、すなわち、顔料懸濁液に、または顔料仕上げ中もしくは顔料仕上げ後のそれらの添加によって、改質、すなわち顔料表面のコーティングを果たすことができる。
【0065】
このように前処理された顔料は、表面処理されていない顔料と比較して、とりこみ性のはるかな容易さおよび高い色彩強度が注目に値する。
【0066】
本発明の混合物は、多数の顔料、例えば、モノアゾ、ジアゾ、トリアゾおよびポリアゾ顔料、オキサジン、ジオキサジンおよびチアジン顔料、ジケトピロロピロール、フタロシアニン、ウルトラマリンおよび他の金属錯体顔料、インジゴ顔料、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、キナクリドンおよびメチン顔料、アントラキノン、ピラントロン、ペリーレンおよび他の多環式カルボニル顔料のための湿潤分散剤として適する。本発明に従って分散させることができる有機顔料のさらなる例は、W.Herbst,K.Hunger,「Industrial Organic Pigments」,1997(出版者:Wiley−VCH,ISBN:3−527−28836−8)で見つけられる。本発明に従って分散させることができる無機顔料の例は、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸バリウム、リトポン、酸化鉄、ウルトラマリン、リン酸マンガン、アルミン酸コバルト、錫酸コバルト、亜鉛酸コバルト、酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化クロム、クロム酸亜鉛に基づく顔料、ニッケル、ビスマス、バナジウム、モリブデン、カドミウム、チタン、亜鉛、マンガン、コバルト、鉄、クロム、アンチモン、マグネシウム、アルミニウムに基づく混合金属酸化物に基づく顔料(例えば、ニッケル・チタン・イエロー、バナジン酸モリブテン酸ビスマスイエローまたはクロム・チタン・イエロー)である。他の例は、G.Buxbaum,「Industrial Inorganic Pigments」,1998(出版者:Wiley−VCH,ISBN:3−527−28878−3)に列挙されている。無機顔料は、純粋な鉄、酸化鉄、および酸化クロムまたは混合酸化物に基づく磁性顔料、アルミニウム、亜鉛、銅または真鍮を含むメタリック効果顔料、ならびにまた真珠光沢顔料、ならびに蛍光および発光顔料である場合もある。
【0067】
本発明のポリマー混合物は、100nm未満の粒径を有するナノスケールの有機固体または無機固体、例えば、一定のタイプのカーボンブラック、または金属酸化物もしくは半金属酸化物もしくは水酸化物から成る粒子、ならびにまた混合金属酸化物および/または半金属酸化物または水酸化物から成る粒子を分散させるために使用することもできる。このために適する酸化物は、そのような超微粉固体を調製するために使用することができる、アルミニウムの、ケイ素の、亜鉛の、チタンの酸化物および/または水酸化物である。これらの酸化物および/または水酸化物および/または酸化物−水酸化物粒子を製造する操作は、さまざまな方法によって進めることができ、例は、イオン交換操作、プラズマ操作、ゾル−ゲルプロセス、沈殿、微粉砕(例えば摩砕による)、または火炎加水分解などである。これらのナノスケール固体は、無機コアと有機外皮層から成る、または有機コアと無機外皮層から成る、ハイブリッド粒子と呼ばれるものである場合もある。
【0068】
本発明に従って分散させることができる粉末または繊維形態の充填剤としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、多孔質珪藻土、珪藻土、石英、シリカゲル、タルク、カオリン、マイカ、パーライト、長石、微粉砕スレート、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、方解石、ドロマイト、ガラスまたは炭素の、粉末形態または繊維形態の、粒子から成るものが挙げられる。分散性顔料または充填剤の他の例は、欧州特許出願公開第0270126号においても見つけられる。例えばシリカなどの艶消し剤も、同じく、本発明の混合物で顕著に分散および安定させることができる。
【0069】
従って、本発明は、本発明の少なくとも一つの混合物と、少なくとも一つの顔料、水および、所望される場合には低VOC、有機ビヒクル、ならびにまた、所望される場合には、結合剤および典型的な助剤とを含むペイントおよびペーストをさらに提供する。
【0070】
従って、本発明は、本発明の少なくとも一つの混合物でコーティングされた上述の顔料も、さらに提供するものである。
【実施例】
【0071】
[I カルボキシル基を有するコポリマーの調製]
(ポリマー1: 2:1のスチレン対MAn比を有する交互SMA樹脂)
27.3gの酢酸メトキシプロピル、4.2gの2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、および3.3gのスチレンを140℃に加熱する。反応温度に達したとき、21.7gの酢酸メトキシプロピルに部分的に溶解した14.4gの無水マレイン酸および2.3gのAMBNを100分より長い間計量し、ならびに26.8gのスチレンを85分より長い間計量する。
【0072】
1時間の後続反応時間の後、そのポリマー溶液を室温に冷却する。
残留2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン含量:0.1%
:2775g/mol
【0073】
(ポリマー2: 1:1のスチレン対MAn比を有する交互SMA樹脂)
11.3gの酢酸メトキシプロピル、5.8gの2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを140℃に加熱する。反応温度に達したら、38.1gの酢酸メトキシプロピルに部分的に溶解した20.4gの無水マレイン酸および2.8gのAMBNを100分より長い間計量し、ならびに21.6gのスチレンを100分より長い間計量する。
【0074】
1時間の後続反応時間の後、そのポリマー溶液を室温に冷却する。
残留2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン含量:0.1%
:1886g/mol
【0075】
(ポリマー3: ジブロックコポリマー)
27.3gの酢酸メトキシプロピルおよび4.2gの2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを140℃に加熱する。反応温度に達したら、21.7gの酢酸メトキシプロピルに部分的に溶解した14.4gの無水マレイン酸および2.3gのAMBNを100分より長い間計量し、ならびに26.8gのスチレンを85分より長い間計量する。15分の後続反応時間の後、10gの酢酸メトキシプロピルに部分的に溶解した1gのAMBN、および10gのスチレンを100分より長い間計量する。
【0076】
1時間の後続反応時間の後、そのポリマー溶液を室温に冷却する。
残留2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン含量:0.08%
:3156g/mol
【0077】
(ポリマー4: ジブロックコポリマー)
22.8gの酢酸メトキシプロピル、13.8gのBlocBuilder、および31.2gのスチレンを120℃に加熱する。反応温度に達したら、7.6gの酢酸メトキシプロピルに部分的に溶解した24.7gのアクリル酸を100分より長い間計量する。2時間の後続反応時間の後、そのポリマー溶液を室温に冷却する。
:2835g/mol
【0078】
溶離剤としてTHFを、および標準物質としてポリスチレンを使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって分子量を測定した。
【0079】
[II 塩化コポリマー]
(ポリマー溶液1)
酢酸メトキシプロピル中のポリマー1の溶液100gを10.7gのNaOHおよび91.05gの水と混合し、100℃に加熱して、その酢酸メトキシプロピルを共沸物として蒸留除去する。
【0080】
その混合物を水で希釈して40重量%の固形分にする。
【0081】
(ポリマー溶液2)
酢酸メトキシプロピル中のポリマー2の溶液100gを23.6gのKOHおよび110.4gの水と混合し、100℃に加熱して、その酢酸メトキシプロピルを共沸物として蒸留除去する。
【0082】
その混合物を水で希釈して40重量%の固形分にする。
【0083】
(ポリマー溶液3)
酢酸メトキシプロピル中のポリマー2の溶液100gを21.4gのジメチルアミノプロピルアミンおよび107.1gの水と混合し、100℃に加熱して、その酢酸メトキシプロピルを共沸物として蒸留除去する。
【0084】
その混合物を水で希釈して40重量%の固形分にする。
【0085】
(ポリマー溶液4)
12.2gのKOHを60gの水に溶解し、その後、27.78gのSMA 1000樹脂を80℃で溶解する。
【0086】
(ポリマー溶液5)
酢酸メトキシプロピル中のポリマー4の溶液100gを21.5gのKOHおよび122.3gの水と混合し、100℃に加熱して、その酢酸メトキシプロピルを共沸物として蒸留除去する。
【0087】
その混合物を水で希釈して40重量%の固形分にする。
【0088】
(ポリマー溶液6)
16gのKOHを250gの水に溶解し、その後、50gのSMA 1000樹脂を80℃で溶解する。その後、150gのアルコキシル化3級アミン(米国特許第2006/0089426号からの実施例9)を添加する。
【0089】
その混合物を水で希釈して40重量%の固形分にする。
【0090】
[III エステル化生成物]
(エステル1)
10.04gのPripol 1022に29.92gのPluriol A 750 Eおよび0.1gのp−トルエンスルホン酸を導入し、この初期混合物を210℃で反応させ、形成された水を分離除去する。カルボキシル基の90%がエステル化されたとき、反応を終了する。その後、水で固形分を40重量%に調整する。
【0091】
(エステル2)
24.35gのPripol 1022に202.7gのPluriol A2300PEおよび0.15gのp−トルエンスルホン酸を導入し、この初期混合物を210℃で反応させ、形成された水を分離除去する。カルボキシル基の90%がエステル化されたとき、反応を終了する。その後、水で固形分を40重量%に調整する。
【0092】
(エステル3)(比較例)
10.04gのPripol 1022に14.96gのPluriol A 750 Eおよび0.06gのp−トルエンスルホン酸を導入し、この初期混合物を210℃で反応させ、形成された水を分離除去する。カルボキシル基の50%だけがエステル化されたとき、反応を終了する。その後、水で固形分を40重量%に調整する。
【0093】
(エステル4)(比較例)
8.72gのタル油脂肪酸に26.1gのPluriol A 750 Eおよび0.06gのp−トルエンスルホン酸を導入し、この初期混合物を210℃で反応させ、形成された水を分離除去する。カルボキシル基の90%がエステル化されたとき、反応を終了する。その後、水で固形分を40重量%に調整する。
【0094】
[IV 塩化コポリマー(生成物II)およびエステル化生成物(生成物III)の混合物]
(湿潤分散剤1(本発明のもの)(W&D1))
50gのポリマー溶液4を50gのエステル1と混合し、均質化する。
【0095】
(湿潤分散剤2(比較例)(W&D2))
50gのポリマー溶液4を50gのエステル3と混合し、均質化する。
【0096】
(湿潤分散剤3(比較例)(W&D3))
50gのポリマー溶液4を50gのエステル4と混合し、均質化する。
【0097】
【表1】

【0098】
[V 適用化試験]
5.1 配合物
5.1.1 水性顔料濃縮物
【表2】

【0099】
Tronox顔料を含む顔料濃縮物を、10m/秒の撹拌速度で溶解機を用いて、29分の分散時間で調製する。
【0100】
他の二つの顔料は、Skandexシェーカーおよびガラスビーズを使用して、120分間分散させる。
【0101】
5.1.2 着色ペイント
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
顔料濃縮物をワニスとともに5分間振盪させる。
【0104】
【表5】

【0105】
5.2 試験結果
5.2.1 水性顔料濃縮物
【表6】

【0106】
これらの水性顔料濃縮物は、湿潤不良のためグラインドメーターに連続皮膜として塗布できないので、湿潤ペイント中で100μmのグラインドメーターを用いて粒径を測定した。
【0107】
5.2.2 レットダウン
【表7】

【0108】
BYK−Gardner製のカラーガイド球を用いて光沢測定を行った。
【0109】
これらの結果は、一方では、混合物の個々の成分、すなわち無機、ポリエーテル含有成分(エステル1)、他方では、塩化コポリマー(SMA溶液4)を用いて、すべての選択顔料が顔料濃縮物およびレットダウンを十分な量で生じさせるとは限らないことを示している。顔料濃縮物はエステル1および無機顔料Tronoxで製造され得ない。
【0110】
この塩化酸性コポリマーは、無機顔料Tronoxに適するが、二つの有機顔料を使用すると短所(高粘性または泡沫状顔料濃縮物となってしまい、それら2つの有機顔料が、ある程度、凝集物の形態およびレットダウン含有ビットの形態で依然として存在する。)を示す。
【0111】
本発明の混合物(湿潤分散剤1)を用いて、無機顔料と二つの有機顔料の両方から、ビットを含まないペイントの形成に適する、流動性で保管安定性の良好な顔料濃縮物を調製することができる。
【0112】
比較例、湿潤分散剤2および湿潤分散剤3を含むTronox顔料濃縮物は、本発明の混合物より劣った貯蔵安定性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物(VOC)含有量が低い混合物であって、
I 少なくとも一つのエチレン性不飽和、フェニル基含有モノマーと少なくとも一つのα,β−不飽和モノカルボン酸および/または少なくとも一つのα,β−不飽和ジカルボン酸の、および場合によってはそれらの誘導体の、少なくとも50%塩化されたコポリマー10重量%から80重量%と、
II 末端OH末端基を含有し、少なくとも25モル%まではエチレンオキシドから合成される少なくとも一つの水溶性の線状ポリエーテル1重量%から30重量%と、
III 脂肪族ジカルボン酸の、および≦2000g/molの数平均分子量を好ましくは有する成分IIの水溶性ポリエーテルの少なくとも一つの、または≦2000g/molの数平均分子量を好ましくは有する成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物の、少なくとも一つのエステル化生成物5重量%から80重量%と、
IV ≦2000g/molの数平均分子量を好ましくは有する成分IIの水溶性ポリエーテルの少なくとも一つで、または≦2000g/molの数平均分子量を好ましくは有する成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含有するポリエーテルの混合物で、3個から5個のカルボキシル基を含有する少なくとも一つの脂肪族カルボン酸をエステル化することによって得ることができる、少なくとも一つのスターポリマー3重量%から80重量%と
から構成され、成分IからIVの前記重量%の合計が、常に100重量%である必要があり、ならびに成分I−IVの前記重量%が、それぞれの場合、成分I−IVの前記総重量に基づく混合物。
【請求項2】
30重量%から70重量%の成分Iと、
2重量%か10重量%の成分IIと、
10重量%から50重量%の成分IIIと、
5重量%から20重量%の成分IVと
を含み、成分IからIVの前記重量%の合計が、常に100重量%である必要があり、ならびに成分IからIVの前記重量%が、それぞれの場合、成分IからIVの前記総重量に基づくことを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
成分Iが、少なくとも75%塩化されることを特徴とする、請求項1または2に記載の混合物。
【請求項4】
成分Iが、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウム塩の形態、好ましくはナトリウムまたはカリウム塩の形態であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の混合物。
【請求項5】
前記成分Iの塩化コポリマーが、8から20個のC原子を好ましくは有する、少なくとも一つのエチレン性不飽和、フェニル基含有モノマー(該フェニルラジカルは、場合によっては少なくとも一回、置換されている可能性がある)と、3から8個の炭素原子を好ましくは有する少なくとも一つのα,β−不飽和モノカルボン酸および/または4から10個の炭素原子を好ましくは有するα,β−不飽和ジカルボン酸および/またはその環式無水物を、ならびに場合によってはそれらのそれぞれの誘導体、好ましくはエステルおよびアミドを重合させることによって調製されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の混合物。
【請求項6】
スチレン、ベンジル(メタ)アクリラート、およびフェニルアクリラート(該フェニルラジカルは、場合によっては1回から4回、置換されている可能性がある)を含む群から選択された少なくとも一つのモノマー、好ましくは場合によっては置換されているスチレンが、前記エチレン性不飽和、フェニル基含有モノマーとして使用されたことを特徴とする、請求項5に記載の混合物。
【請求項7】
アクリル酸またはメタクリル酸が、α,β−不飽和モノカルボン酸、および少なくとも一つのジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸および/または無水マレイン酸を含む群から選択される)として、ならびに場合によっては、それらのそれぞれの誘導体、好ましくはエステルまたはアミドとして使用され、少なくとも一つのC−Cアルキルアクリラートおよび/またはC−Cアルキルメタクリラートが、α,β−不飽和ジカルボン酸および/またはその環式無水物として使用されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の混合物。
【請求項8】
成分Iが、1:1から8:1の、好ましくは1:1から2:1のスチレン対無水マレイン酸比を有する塩化されたスチレン/無水マレイン酸コポリマーであることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の混合物。
【請求項9】
成分IIが、少なくとも50mol%までエチレンオキシドから合成された少なくとも一つの水溶性ポリエーテルであることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の混合物。
【請求項10】
成分IIが、エチレンオキシドの単位から、ならびに少なくとも一つの他のアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドの単位から合成された少なくとも一つの水溶性ポリエーテルであることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の混合物。
【請求項11】
成分IIが、エチレンオキシド単位から、ならびに3から20個のC原子を有する少なくとも一つの脂肪族もしくは芳香族グリシジルエーテル、好ましくはイソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルもしくは2−エチルヘキシルポリグリシジルエーテルの単位から、および/または3から10個のC原子を有する少なくとも一つの脂肪族ラクトン、好ましくはプロピオラクトン、バレロラクトンおよび/またはε−カプロラクトンの単位から合成された少なくとも一つの水溶性ポリエーテルであることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の混合物。
【請求項12】
成分IIIが、成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルの、または成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物の、および12から22個のC原子を有する不飽和脂肪酸をオリゴマー化することによって得ることができる脂肪族の場合によっては飽和されているダイマー酸の、エステル化生成物であることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の混合物。
【請求項13】
成分IIIが、成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルの、または成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物の、および場合によっては不飽和の脂肪族ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸もしくは無水コハク酸とCからC20を有する少なくとも一つの脂肪族ジオールとを反応させることによって得ることができる、場合によっては部分的にエステル化されている脂肪族ジカルボン酸であって、3から10個のC原子を有する少なくとも一つの脂肪族ラクトンに基づく、末端にジヒドロキシを有する脂肪族ポリエステルとの反応の結果として場合によっては連鎖延長されていることがある該ジカルボン酸の、エステル化生成物であることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の混合物。
【請求項14】
成分IIIが、成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルの、または成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物の、および場合によっては不飽和の脂肪族ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸もしくは無水コハク酸と二個の第一アミノ基を含有し且つ2から20個のC原子を有する少なくとも一つの直鎖状または分岐、脂肪族または環状脂肪族ジアミンとを反応させることによって得ることができる、場合によっては部分的にアミド化されている脂肪族ジカルボン酸の、エステル化生成物であることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の混合物。
【請求項15】
成分IVが、成分IIの水溶性ポリエーテルの少なくとも一つの、または成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物の、および12から22個のC原子を有する不飽和脂肪酸をオリゴマー化することによって得ることができる、場合によっては飽和されているトリマー酸の、エステル化生成物であることを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の混合物。
【請求項16】
成分IVが、成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルの、または成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物の、および3から5個のカルボキシル基を含有する少なくとも一つの場合によっては部分的にエステル化されている脂肪族多価カルボン酸であって、場合によっては不飽和の脂肪族ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸もしくは無水コハク酸と3から5個のOH基を有する少なくとも一つの脂肪族ポリオールとを反応させることによって得ることができ、場合によっては、3から10個のC原子を有する脂肪族ラクトンに基づくポリエステルとの1:1の前記無水物官能基対前記ヒドロキシル官能基の化学量論比での反応の結果として連鎖延長されていることがある前記多価カルボン酸の、エステル化生成物であることを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の混合物。
【請求項17】
成分IVが、成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルの、または成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物の、および3から5個のカルボキシル基を含有する少なくとも一つの場合によってはアミド化されている脂肪族多価カルボン酸であって、場合によっては不飽和の脂肪族ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸もしくは無水コハク酸と合計3から5個の第一および/または第二アミノ基を有する脂肪族ポリアミンとを、1:1の前記無水物官能基対前記アミノ官能基の化学量論比で反応させることによって得ることができる前記多価カルボン酸の、エステル化生成物であることを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の混合物。
【請求項18】
成分IIIおよびIVが、12から22個のC原子を有する不飽和脂肪酸を成分IIの水溶性ポリエーテルの少なくとも一つでまたは成分IIの少なくとも一つの水溶性ポリエーテルを含むポリエーテルの混合物でオリゴマー化することによって得ることができる、ダイマー酸とトリマー酸の混合物のエステル化生成物であることを特徴とする、請求項1から15のいずれかに記載の混合物。
【請求項19】
使用されるダイマー酸とトリマー酸との混合物における前記ダイマー酸のトリマー酸に対する比率が、10:90から90:10であることを特徴とする、請求項18に記載の混合物。
【請求項20】
前記ダイマー酸が、36個以下のC原子を有し、および前記トリマー酸が、54個以下のC原子を有することを特徴とする、請求項19に記載の混合物。
【請求項21】
低VOC湿潤分散剤としての、請求項1から20のいずれかに記載の混合物の使用。
【請求項22】
固体を分散させるための、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
顔料を分散させるための、請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
低VOC、水性顔料濃縮物を調製するための、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
コーティング材料、好ましくは塗料を製造するための、請求項24に記載の顔料濃縮物としての使用。
【請求項26】
請求項1から20のいずれかに記載の混合物を湿潤分散剤として含む、水性、低VOC顔料濃縮物。
【請求項27】
少なくとも一つの顔料と、請求項1から20のいずれかに記載の混合物と、水性分散媒と、場合によっては低VOC、有機ビヒクルと、場合によっては他の助剤とを含むペイントまたはペースト。
【請求項28】
請求項1から20のいずれかに記載の混合物でコーティングされた、分散性、多粒子状および/または繊維状固体。
【請求項29】
顔料であることを特徴とする、請求項28に記載の分散性、多粒子状固体。
【請求項30】
インク、好ましくは非衝撃式印刷プロセス用の水性インクを製造するための、請求項1から20のいずれかに記載の混合物の使用。
【請求項31】
化粧用製剤、好ましくはW/OエマルジョンもしくはO/Wエマルジョン、溶液、ゲル、クリーム、ローションまたはスプレー剤における湿潤分散剤としての、請求項1から20のいずれかに記載の混合物の使用。

【公表番号】特表2011−511142(P2011−511142A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545394(P2010−545394)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000699
【国際公開番号】WO2009/098025
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(596089399)ビック−ケミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【Fターム(参考)】