説明

湿潤原料の乾燥装置及び乾燥方法

【課題】熱源兼流動化ガスとして流動層乾燥機に供給する高温ガスであるコークス炉排ガスの供給が停止、減少又は増加すること、あるいは該ガスの温度が変化することに伴い、流動層乾燥機からガスとともに排出され回収される微粉量が増減したとしても、粉塵飛散、コークス炉壁へのカーボン付着を確実に防止すること。
【解決手段】湿潤原料を乾燥する流動層乾燥機8と、コークス炉排ガスを熱源兼流動化ガスとして流動層乾燥機8に供給するためのガス供給配管5と、流動層乾燥機8からガスとともに排出される微粉を回収する集塵機11とを有する湿潤原料の乾燥装置において、供給されるコークス炉排ガスの温度もしくは流量の変動に伴う湿潤原料の乾燥度の変動により集塵機11の回収量も変動する微粉に対して、バインダー添加量が微粉に対して一定比率となるように、自動もしくは手動で調整できる機構を備えたバインダー添加装置18によりバインダーを添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉に装入する石炭等の湿潤原料を流動層乾燥機によって乾燥する湿潤原料の乾燥装置及び乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス生産に際し、コークスの品質向上及びコークス炉での生産性向上を目的として、コークス炉装入前に装入石炭を乾燥することが行われている。コークス炉用石炭の含有水分は乾燥前で通常9〜13%程度であるが、この石炭を石炭乾燥機で水分5〜6%に乾燥する。なお、一般的に石炭中の水分が低下する程、石炭中から分離される微粉量は増加することが知られている。
【0003】
この石炭の乾燥に流動層乾燥機を用いることは従来より知られており、特許文献1には、コークス炉の煙道排ガスを熱源兼流動化気体として流動層乾燥機に導入して石炭を乾燥する方法が開示されている。この流動層乾燥機に装入された石炭粉の多くは流動層に連通する排出シュートから排出され、コークス炉に搬送される。また、石炭粉の乾燥によって微粉が発生し、この微粉は流動層上方の排ガス出口から排ガスとともに排出され、排ガス配管に設けた集塵機によって回収される。
【0004】
ここで、流動層乾燥機の熱源兼流動化気体として使われるコークス炉の排ガス温度は、コークス炉の操業負荷状況、燃料性状、燃焼制御状況によって変化する。例えば、コークス炉の生産が一時的に削減される場合、乾燥機設計時の温度条件よりも大幅に高温となった排ガスが流入してくることもある。これにより、石炭中の水分が設計時よりも余分に乾燥されることで石炭中から発生する微粉量が増大し、集塵機で回収される微粉量も増大する。また、コークス炉燃料の発熱量が一時的に低減した場合、乾燥機設計時の温度条件よりも大幅に低温となった排ガスが流入してくることもある。これにより、石炭中から発生する微粉の量は減少し、集塵機で回収される微粉量も減少する。このように、コークス炉の排ガスを流動層乾燥機の熱源兼流動化気体として利用する場合、ガスの温度は変動する可能性がある。これにより、流動層乾燥機内の湿潤原料の乾燥度合の変動に伴い石炭中から発生する微粉量も変動し、集塵機で回収され、排出される微粉の量も変動する。
【0005】
また、コークス炉は、通常、各炉団毎に燃焼ガス系統を2系統有しており、一方の系統での使用時間が所定時間に達すると他方の系統に切り替えるようにしている。系統の切り替えは通常15分〜30分に1回の頻度で行われる。燃焼ガス系統の切り替え時においては、図4に示すように、今まで使用していた系統(系統A)の燃焼ガス流量を逐次減少し、流量がゼロになったら次に使用する系統(系統B)の燃焼ガス流量を逐次増大する。そのため、燃焼ガス系統の切り替え時においては、コークス炉の排ガス量が減少し、ゼロになり、再度増大することとなる。燃焼ガス系統の切り替えに伴う、ガス流量の変動がおこる時間は一般に0.5〜3分である。
【0006】
このように、コークス炉の排ガスを流動層乾燥機の熱源兼流動化気体として利用する場合、コークス炉の燃焼ガス系統の切り替え時に、コークス炉の排ガス量が低下することから、上記特許文献1の技術では、コークス炉の排ガスの供給が停止又は減少するときには、流動層乾燥機から排出したガスを循環して流動層乾燥機の流動化気体として再度利用することで、流動層の流動状態を維持するようにしている。しかし、流動層乾燥機から排出したガスは、石炭粉の乾燥に用いた後のガスであるから、当然ながらガスの温度はコークス炉の排ガスの温度よりかなり低いため、コークス炉の燃焼ガス系統の切り替え時には、図4に示すように、流動層乾燥機の流動層に流入するガス温度が低下してしまう。その結果、湿潤原料の乾燥度が低下し、乾燥によって発生し集塵機によって回収される微粉の量が減少する。これに対して、別途、熱風発生炉等を設けて、燃焼ガス系統の切り替え時に燃焼させることで不足分の熱量を補い、回収される微粉量を一定にすることも考えられるが、コークス炉の燃焼ガス系統の切り替えは、上述のとおり、通常15分〜30分に1回であり、しかもその切り替えに伴う、ガス流量の変動がおこる時間は0.5〜3分程度と短いため、その都度、熱風発生炉を稼働して湿潤原料の乾燥に必要な熱量を補うのは現実的ではない。
【0007】
一方、コークス炉に装入する石炭を乾燥するための流動層石炭乾燥機の集塵機から排出される微粉による粉塵飛散、コークス炉壁へのカーボン付着を防止する目的で、集塵した微粉に重質油を添加して造粒する方法が特許文献2として考案されているが、該特許においては、コークス炉の排ガスの如き熱風のガス流量やガス温度の変動を考慮しておらず、実施態様に説明されているとおりその重質油の添加量は、約95t/hrの微粉量に対して約250kg/hr、と一定である。
【特許文献1】特開2001−55582号公報
【特許文献2】特公昭49−28241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、熱源兼流動化ガスとして流動層乾燥機に供給する高温ガスであるコークス炉排ガスの供給が停止、減少又は増加すること、あるいは該ガスの温度が変化することに伴い、流動層乾燥機からガスとともに排出され回収される微粉量が増減したとしても、微粉の混練・造粒に必要なバインダーとの定比率混練をすることで、粉塵飛散、コークス炉壁へのカーボン付着を確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、湿潤原料を乾燥する流動層乾燥機と、コークス炉からの排ガスを熱源兼流動化ガスとして流動層乾燥機に供給するためのガス供給配管(ダクト及びブロワ)と、流動層乾燥機からガスとともに排出される微粉を回収する集塵機とを有する湿潤原料の乾燥装置において、供給されるコークス炉排ガスの温度もしくは流量の変動に伴う湿潤原料の乾燥度の変動により集塵機の回収量も変動する微粉に対して、バインダー添加量が微粉に対して一定比率となるように、自動もしくは手動で調整できる機構を備えたバインダー添加装置を有することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記乾燥装置において、コークス炉からの排ガスの供給量の変動、又は排ガスの温度の変動を検知し、その検知信号に対応してバインダー添加量を調整するバインダー添加量制御装置を設けたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記乾燥装置において、コークス炉における生産量の変動に伴う排ガス温度・流量の変動を検知し、その変動量に応じて集塵した微粉へのバインダー添加量を自動もしくは手動で調整できる機構を備えたバインダー添加制御装置を設けたことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記乾燥装置において、コークス炉燃料の発熱量の変動に伴う排ガス温度・流量の変動を検知し、その変動量に応じて集塵した微粉へのバインダー添加量を自動もしくは手動で調整できる機構を備えたバインダー添加制御装置を設けたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記乾燥装置において、コークス炉からの排ガスの供給が停止又は減少することを検知し、その検知信号に対応して集塵した微粉へのバインダー添加量を自動もしくは手動で調整できる機構を備えたバインダー添加制御装置を設けたことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上記乾燥装置による湿潤原料の乾燥方法において、供給されるコークス炉排ガスの温度もしくは流量の変動に伴う湿潤原料の乾燥度の変動により集塵機の回収量も変動する微粉に対して、バインダー添加量が微粉に対して一定比率となるように、自動もしくは手動で調整できる機構を備えたバインダー添加装置にてバインダーの添加量を調整することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上記乾燥装置による湿潤原料の乾燥方法において、コークス炉における生産量の変動に伴う排ガス温度・流量の変動を検知し、その変動量に応じて集塵した微粉へのバインダー添加量を調整することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、上記乾燥装置による湿潤原料の乾燥方法において、コークス炉燃料の発熱量の変動に伴う排ガス温度・流量の変動を検知し、その変動量に応じて集塵した微粉へのバインダー添加量を調整することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、上記乾燥装置による湿潤原料の乾燥方法において、コークス炉からの高温ガスの供給が停止又は減少することを検知し、その検知信号に対応して集塵した微粉へのバインダー添加量を調整する特徴とする。
【0018】
本発明においては、流動層乾燥機に供給するコークス炉の排ガスの供給が停止、減少又は増加、あるいは排ガス温度が変動することをコークス炉からの信号により検知することができる。
【0019】
また本発明においては、コークス炉からの排ガスの供給が停止又は減少するときに流動層乾燥機から排出したガスを循環して流動層乾燥機の流動化ガスとして再度使用することができる。また、コークス炉の排ガスの供給が停止又は減少することをコークス炉の燃焼系統切り替えの予知信号または開始信号により検知することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱源兼流動化ガスとして流動層乾燥機に供給するコークス炉排ガスの供給の停止、減少又は増加、あるいはコークス炉排ガスの温度変動に伴い、流動層乾燥機からガスとともに排出され回収される微粉量が変動したとしても、コークス炉排ガスの供給の停止、減少又は増加、あるいはコークス炉排ガス温度の変化を検知、もしくは予測し、集塵機で回収される微粉量の増減を見越した上でバインダー添加量を調整するので、常に微粉とバインダーとの混合比率を最適な比率に維持できる。したがって、微粉に十分な量のバインダーを添加することにより粉塵飛散やコークス炉壁へのカーボン付着が防止できると共に、バインダー過多による搬送経路の汚染やバインダーの浪費等の問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をコークス炉用石炭粉(以下単に「石炭粉」という。)の乾燥に適用した実施例に基づき、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明の乾燥装置の一実施例を示す概略構成図である。
【0023】
同図において、コークス炉1で発生したコークス炉の燃焼排ガスは、煙道2を通過してコークス炉煙突3から大気へ放散される。煙道2を通過する煙道排ガス(コークス炉排ガス)4の温度は150〜250℃程度である。コークス炉排ガス4は、コークス炉の煙道2から分岐したガス供給配管5を流れ、ブロワ6によって昇圧された後、熱源兼流動化ガス7として流動層乾燥機8の下部から供給される。
【0024】
流動層乾燥機8から排出された排ガス9は、排ガス配管10によって集塵機11、ブロワ12を経由し煙突13から大気中に放散される。
【0025】
さらに、排ガス配管10からはガス循環配管14を分岐し、その先端をガス供給配管5に接続することで、流動層乾燥機8の排ガス9を循環して再度流動層乾燥機8の流動化ガスとして使用することができるようにしている。
【0026】
湿潤原料である石炭粉は、装入シュート15によって流動層乾燥機8内に装入され、流動層乾燥機8下部より導入した上述の熱源兼流動化ガス7による上昇流によって流動層16を形成する。この流動層16において石炭粉の乾燥を行い、石炭粉は所定の温度及び含水率に調整されて、その多くは排出シュート17によって排出される。排出シュート17から排出された石炭粉は図示しない搬送経路によってコークス炉に搬送される。一方、流動層16における石炭粉の乾燥により微粉が発生するが、この微粉は、流動層乾燥機8の上部からガスとともに排出され、排ガス配管10に設けた集塵機11によって回収される。
【0027】
回収された微粉にはバインダー添加装置18によって重質油等のバインダーが添加され、混練造粒機19にて混練・造粒された後に図示しない搬送経路によってコークス炉に搬送される。バインダー添加装置18によるバインダーの添加量はバインダー添加制御装置20によって調整される。もちろん、バインダー添加制御装置20はバインダー添加装置18に内蔵することも可能である。なお、バインダー添加装置18の調整を手動で行う場合、バインダー添加制御装置20は不要である。
【0028】
上述したコークス炉の煙道2には排ガス流量計21を設け、ガス供給配管5には流量計23及び第1調節弁24を設け、排ガス配管10には第2調節弁25を、ガス循環配管14には第3調節弁26を設けている。排ガス流量計21は必須ではなく、コークス炉の燃焼計算によって排ガス流量を推定することもできる。第1〜第3調節弁24〜26はそれぞれ調節弁制御装置27〜29によって開度あるいは流量の調節ができる。
【0029】
本実施例においては、コークス炉の排ガス温度もしくは流量の変化に伴い、バインダー添加装置18を調整することで、集塵機11で回収された微粉とバインダーの混合比率が常に最適な割合とする。図1を参照して具体的に説明すると以下のとおりである。
【0030】
定常状態においては集塵機11から排出される微粉の量は一定であるため、バインダーの添加量は一定であり、バインダー添加装置18に調整する機構は必要ない。本発明者らが微粉とバインダーの最適な混合比率を鋭意検討した結果、その最適な比率は、微粉1に対して、バインダーが0.1〜15%の範囲であることが判明している。
【0031】
一方、コークス炉において生産量の急変、コークス炉燃料の発熱量の変動等、何らかの理由により流動層乾燥機8に導入されるコークス炉排ガス4の流量、もしくは温度が変化した場合、先に述べた理由により集塵機11で回収される微粉量も変化する。回収された微粉には、上述のとおり混練・造粒に必要なバインダーが添加されるが、コークス炉の排ガス性状が変化したときに定常運転時と同量のバインダーを添加しているとバインダー過多、もしくはバインダー不足となる。これに対して、本発明では、このコークス炉排ガスの流量もしくは温度の変化に伴い変化する、集塵機11で回収される微粉量を把握しておくことにより、コークス炉排ガスの流量もしくは温度の変化に応じて、バインダー添加装置18を手動もしくは自動で調整し、集塵機11から排出される微粉量とバインダーとの混合比率を一定に保つことができ、バインダー過多による搬送経路の汚染等の問題や、バインダー不足による搬送経路での発塵もしくはコークス炉内でのカーボン付着を防止することができる。
【0032】
上記のバインダー添加装置18の調整方法としては、コークス炉排ガスの性状変化を検知もしくは予測して手動で行うこともできるが、コークス炉から送られてくる、コークス炉排ガスの性状が変化することの信号(コークス炉生産量の増減を示す信号、コークス炉燃料の発熱量の増減を示す信号等)を、図に示すバインダー添加制御装置20で検知することにより、バインダー添加量の調整を自動にて行うことも可能である。
【0033】
図2は、本発明の乾燥装置のもう一つの実施例を示す概略構成図である。
【0034】
同図において、コークス炉1で発生したコークス炉の燃焼排ガスは、煙道2を通過してコークス炉煙突3から大気へ放散される。煙道2を通過するコークス炉排ガス4の温度は150〜250℃程度である。コークス炉排ガス4は、コークス炉の煙道2から分岐したガス供給配管5を流れ、ブロワ6によって昇圧された後、熱源兼流動化ガス7として流動層乾燥機8の下部から供給される。
【0035】
流動層乾燥機8から排出された排ガス9は、排ガス配管10によって集塵機11、ブロワ12を経由し煙突13から大気中に放散される。
【0036】
さらに、排ガス配管10からはガス循環配管14を分岐し、その先端をガス供給配管5に接続することで、流動層乾燥機8の排ガス9を循環して再度流動層乾燥機8の流動化ガスとして使用することができるようにしている。
【0037】
湿潤原料である石炭粉は、装入シュート15によって流動層乾燥機8内に装入され、流動層乾燥機8下部より導入した上述の熱源兼流動化ガス7による上昇流によって流動層16を形成する。この流動層16において石炭粉の乾燥を行い、石炭粉は所定の温度及び含水率に調整されて、その多くは排出シュート17によって排出される。排出シュート17から排出された石炭粉は図示しない搬送経路によってコークス炉に搬送される。一方、流動層16における石炭粉の乾燥により微粉が発生するが、この徹粉は、流動層乾燥機8の上部からガスとともに排出され、排ガス配管10に設けた集塵機11によって回収される。
【0038】
回収された微粉にはバインダー添加装置18によって重質油等のバインダーが添加され、混練造粒機19にて混練・造粒された後に図示しない搬送経路によってコークス炉に搬送される。バインダー添加装置18によるバインダーの添加量はバインダー添加制御装置20によって調整される。もちろん、バインダー添加制御装置20はバインダー添加装置18に内蔵することも可能である。
【0039】
上述したコークス炉の煙道2には排ガス流量計21を設け、ガス供給配管5には流量計23及び第1調節弁24を設け、排ガス配管10には第2調節弁25を、ガス循環配管14には第3調節弁26を設けている。排ガス流量計21は必須ではなく、コークス炉の燃焼計算によって排ガス流量を推定することもできる。第1〜第3調節弁24〜26はそれぞれ調節弁制御装置27〜29によって開度あるいは流量の調節ができる。さらに、ガス循環系制御装置30を設け、第1〜第3調節弁24〜26の各制御装置27〜29に制御指令を与えることによって循環ガス量の制御を行うようにしている。
【0040】
コークス炉1は、先に背景技術の欄でも説明したように、通常、各炉団毎に燃焼ガス系統を2系統有しており、一方の系統での使用時間が所定時間に達すると他方の系統に切り替えるようにしている。系統の切り替えは通常15分〜30分に1回の頻度で行われる。
【0041】
燃焼ガス系統の切り替え時においては、図4に示すように、今まで使用していた系統(系統A)の燃焼ガス流量を逐次減少し、流量がゼロになったら次に使用する系統(系統B)の燃焼ガス流量を逐次増大する。そのため、燃焼ガス系統の切り替え時においては、コークス炉の排ガス量が減少し、再度増大することとなる。燃焼ガス系統の切り替えに必要とされる時間は一般に0.5〜3分である。
【0042】
本実施例においては、コークス炉の排ガスの供給が停止又は減少するときには、流動層乾燥機8から排出した排ガスをガス循環配管14を経由して循環し、流動層乾燥機8の流動化ガスとして再度使用する。図2及び図3を参照して具体的に説明すると以下のとおりである。
【0043】
ガス循環配管14に配置した第3調節弁26は、定常運転時には全閉又は微開としておく。すなわち、定常運転時においてコークス炉の排ガス温度が高すぎる場合には、低温の循環ガスをわずかに混合してガス温度を低下させることが有効であり、また、供給する石炭粉の水分が変動したときの乾燥能力の調整にも循環ガスを用いることができる。
【0044】
コークス炉の燃焼ガス系統切り替え開始時には、第3調節弁26を全閉ないし微開状態から一定開度まで開く。その結果、ブロワ6及びブロワ12の働きにより、循環ガス31がガス循環配管14を流れてリサイクル流が生まれる。循環ガス31の流量が一定量確保されたタイミングで第1調節弁24の開度を徐々に小さくする。その結果、それまで流動層乾燥機8に供給されていたコークス炉排ガス4は徐々に減少し、逆にコークス炉煙突3への流量が増大する。第1調節弁24の開閉動作速度は必ずしも一定ではなく、コークス炉1の操業度やコークス炉1の燃焼状態により燃焼排ガス量(煙道排ガス量)が変動するので、コークス炉1の操業実態に基づいて個々に決定する必要がある。
【0045】
第1〜第3調節弁24〜26の制御は、ガス循環系制御装置30からの指令に基づき、各調節弁制御装置27〜29が各調節弁を制御することによって行う。もちろん、ガス循環系制御装置30と各調節弁制御装置27〜29の一部あるいは全部を単一の制御機器内に統合することも可能である。また、各調節弁制御装置は、それぞれの調節弁に内蔵することも可能である。
【0046】
コークス炉の燃焼ガス系統切り替え時に流動層乾燥機8への供給ガスを変更する制御の開始は、コークス炉1から燃焼ガス系統切り替えの開始信号を受け取って開始する方法、煙道2の排ガス流量計21の流量変化に基づいて開始する方法等を用いることができる。また、図3に示すように、コークス炉1から燃焼ガス系統切り替えを開始する一定時間前に予知信号を受け取り、この予知信号に基づいて流動層乾燥機8への供給ガス変更制御を開始することもできる。例えば予知信号を排ガス流量がゼ口になる1分前に受け取り、ガス循環配管14を経由するカスリサイクルを開始する。これにより、カスリサイクルが間に合わずに流動層乾燥機8への供給ガス量(熱源兼流動化ガス量)が不足する事態を回避することができる。
【0047】
コークス炉の燃焼ガス系統切り替え時に使用する循環ガス31は、流動層乾燥機8における石炭粉の乾燥に用いた後のガスであるから、当然ながらガスの温度はコークス炉排ガス4より低い。したがって、コークス炉の燃焼ガス系統の切り替え時には、図3に示すように、流動層乾燥機の流動層に流入するガス温度が低下する。その結果、湿潤原料の乾燥度が低下し、乾燥によって発生し集塵機によって回収される微粉の量が減少する。
【0048】
回収された微粉には、上述のとおり混練・造粒に必要なバインダーが添加されるが、コークス炉の燃焼ガス系統の切り替え時に微粉量が減少したときに、定常運転時と同量のバインダーを添加するとバインダー過多になる。これに対して、本発明では、コークス炉の燃焼ガス系統の切り替えを検知し、微粉量の減少を見越した上で、バインダー添加量を減少する(図3最下段参照)。燃焼ガス系統の切り替えの検知は、図3に示すようにコークス炉から燃焼ガス系統切り替えを開始する一定時間前に予知信号を受け取ることによって行うことができる。バインダー添加制御装置20は、この予知信号を受け取ると、t秒度に微粉量が減少することを予測し、微粉とバインダーとの比率が定常運転時と同じになるようにバインダー添加装置18によるバインダー添加量を減少する。これによって、常に微粉とバインダーとの定率混合ができ、バインダー過多による搬送経路の汚染等の問題が発生することはない。
【0049】
燃焼ガス系統の切り替えの検知は、コークス炉1から燃焼ガス系統切り替えの開始信号を受け取ることによって行うこともできる。この場合、予知信号による検知に比べてバインダー添加量の調整を開始するまでの時間が短くなるが、実操業では十分に対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、コークス炉に装入する石炭粉の乾燥のみならず、水砕スラグや石灰石など、他の湿潤原料の乾燥にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の乾燥装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の乾燥装置の他の実施例を示す概略構成図である。
【図3】本発明におけるコークス炉の燃焼排ガス系統の切り替え状況を示す図である。
【図4】従来技術におけるコークス炉の燃焼排ガス系統の切り替え状況を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 コークス炉
2 煙道
3 コークス炉煙突
4 煙道排ガス(コークス炉排ガス)
5 ガス供給配管
6 ブロワ
7 熱源兼流動化ガス
8 流動層乾燥機
9 排ガス
10 排ガス配管
11 集塵機
12 ブロワ
13 煙突
14 ガス循環配管
15 装入シュート
16 流動層
17 排出シュート
18 バインダー添加装置
19 混練造粒機
20 バインダー添加制御装置
21 排ガス流量計
23 流量計
24 第1調節弁
25 第2調節弁
26 第3調節弁
27〜29 調節弁制御装置
30 ガス循環系制御装置
31 循環ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤原料を乾燥する流動層乾燥機と、流動層乾燥機にコークス炉の排ガスを導入するダクト及びブロワと、流動層乾燥機の排ガスに同伴される微粉を回収するための集塵機とを備え、流動層乾燥機の熱源兼流動化ガスとしてコークス炉の排ガスを利用する湿潤原料の乾燥装置において、コークス炉の排ガスの温度又は流量の変化に伴う、集塵機から排出される微粉量の変動に応じて、バインダー添加量が微粉量に対して一定の比率となるように調整する機構を備えたバインダー添加装置を有することを特徴とする湿潤原料の乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の湿潤原料の乾燥装置において、コークス炉からの排ガスの供給量の変動、又は排ガスの温度の変動を検知し、その検知信号に対応してバインダー添加量を調整するバインダー添加量制御装置を設けたことを特徴とする湿潤原料の乾燥装置。
【請求項3】
請求項1に記載の湿潤原料の乾燥装置において、コークス炉生産量の増減を検知し、その増減に伴う排ガス温度及び流量の変化に応じてバインダー添加量を調整するバインダー添加量制御装置を設けたことを特微とする湿潤原料の乾燥装置。
【請求項4】
請求項1に記載の湿潤原料の乾燥装置において、コークス炉燃料の発熱量の増減を検知し、その増減に伴う排ガス温度及び流量に応じてバインダー添加量を調整するバインダー添加量制御装置を設けたことを特徴とする湿潤原料の乾燥装置。
【請求項5】
請求項1に記載の湿潤原料の乾燥装置において、コークス炉の排ガスの供給が停止又は減少することを検知し、その検知信号に対応してバインダー添加量を調整するバインダー添加量制御装置を設けたことを特徴とする湿潤原料の乾燥装置。
【請求項6】
流動層乾燥機から排出したガスを再度循環して流動層乾燥機に供給するためのガス循環配管と、コークス炉からの排ガスの供給が停止又は減少するときに流動層乾燥機から排出したガスを循環して流動層乾燥機の流動化ガスとして再度使用するように制御を行うガス循環系制御装置とをさらに設けた請求項1〜5のいずれかに記載の湿潤原料の乾燥装置。
【請求項7】
コークス炉からの排ガスの供給量が減少もしくは増加、又は排ガス温度が変動することをコークス炉から送られる信号により検知する請求項2〜4のいずれかに記載の湿潤原料の乾燥装置。
【請求項8】
コークス炉の排ガスの供給が停止又は減少することをコークス炉の燃焼系統切り替えの予知信号又は開始信号により検知する請求項5又は6に記載の湿潤原料の乾燥装置。
【請求項9】
請求項1に記載の湿潤原料の乾燥装置による湿潤原料の乾燥方法において、コークス炉からの排ガスの供給量の変動、又は排ガスの温度の変動を検知し、その検知信号に対応してバインダー添加量を調整することを特微とする湿潤原料の乾燥方法。
【請求項10】
請求項1に記載の湿潤原料の乾燥装置による湿潤原料の乾燥方法において、コークス炉生産量の増減を検知し、その増減に伴う排ガス温度及び流量の変化に応じてバインダー添加量を調整することを特徴とする湿潤原料の乾燥方法。
【請求項11】
請求項1に記載の湿潤原料の乾燥装置による湿潤原料の乾燥方法において、コークス炉燃料の発熱量の増減を検知し、その増減に伴う排ガス温度及び流量に応じてバインダー添加量を調整することを特徴とする湿澗原料の乾燥方法。
【請求項12】
コークス炉からの排ガスの供給量が減少もしくは増加、又は排ガス温度が変動することをコークス炉から送られる信号により検知する請求項9〜11のいずれかに記載の湿潤原料の乾燥方法。
【請求項13】
請求項1に記載の湿潤原料の乾燥装置による湿潤原料の乾燥方法において、コークス炉からの排ガスの供給が停止又は減少することを検知し、その検知信号に対応してバインダー添加量を調整することを特徴とする湿潤原料の乾燥方法。
【請求項14】
コークス炉からの排ガスの供給が停止又は減少するときに、流動層乾燥機から排出したガスを循環して流動層乾燥機の流動化ガスとして再度使用する請求項9〜13のいずれかに記載の湿潤原料の乾燥方法。
【請求項15】
コークス炉の排ガスの供給が停止又は減少することをコークス炉の燃焼系統切り替えの予知信号又は開始信号により検知する請求項13又は14に記載の湿潤原料の乾燥方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−291010(P2006−291010A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112596(P2005−112596)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】