説明

湿潤材収納用容器及びウエットティッシュ包装体

【課題】 枚葉のウエットティッシュを立てた状態で収納しておき、そのウエットティッシュを1枚ずつ取り出すことの可能な湿潤材収納用容器を提供する。
【解決手段】 容器1の側面の上部領域から天面にかけた領域に取出し口15を形成し、その取出し口の下端縁を略V字状とすると共に、そのV字の下端領域に、屈曲した狭い第一通路、第二通路、第三通路を形成し、取出し口15からウエットティッシュ51を引き出した際に、その一部がこれらの通路を通過することでウエットティッシュに抵抗を与え、後続のウエットティッシュをこれらの通路で拘束、保持させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤状態とした紙、布等の湿潤材を収納し、必要に応じてその湿潤材を取り出すことの可能な湿潤材収納用容器並びにその湿潤材収納用容器にウエットティッシュを収納した構成のウエットティッシュ包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウエットティッシュ等の、湿潤状態とした紙、布等の湿潤材を収納し、必要に応じ引き出して使用することを可能とした容器が使用されている。このような容器の代表的なものは、円筒状の容器であり、その中に巻き取った形態の湿潤材を立てた状態で収納し、容器の天面に設けた引出し口から湿潤材を引き出し、適当な位置で切り離して使用するものであった。この引出し口には容器内部の乾燥を防止するためキャップが取り付けられている。また、円筒状の容器上端の開口部周壁の上縁から切込み部を設け、その切込み部から湿潤材を引き出す構成とすると共に容器上端開口部周縁に旋回可能な蓋を設け、その蓋の前記切込み部と対応する位置に取出し口を形成し、蓋を回転させて前記切込み部を閉じたり、開いたりする構成の容器も知られている(例えば、実開平7−9735号公報参照)。
【0003】
一方、枚葉形態のウエットティッシュを、各ウエットティッシュの一部がそれに続く次のウエットティッシュの一部の中に折り込まれる形態で積み重ねた状態で収納した容器も知られている。枚葉のウエットティッシュを収納する容器は、高さが底面の長辺の寸法よりもかなり小さい寸法の箱状の容器(横型の容器)であり、その中にウエットティッシュを水平状態に収納し、容器の天面中央に形成した取出し口からウエットティッシュを引き出す構成である。そして、その取出し口を閉じるため、ヒンジによって旋回可能な蓋を設けている(例えば、特開平9−58725号公報参照)。また、この種の容器において、取出し口に、最上部にある1枚のウエットティッシュの中央部分をつまんで引き出した際に、つまんだ部分の両側の部分がそれぞれ通過可能なようにスリット状の通路を、中央をはさんだ両側に設け、ウエットティッシュがこの通路を通過する際に、その通路がウエットティッシュに抵抗を与えて後続のウエットティッシュが引き出されてしまわないよう拘束し、且つ後続のウエットティッシュの先端を保持するように構成したものも知られている。
【0004】
しかしながら、上記した円筒状の容器を用いたものは、巻き取った状態の連続した湿潤材しか使用できず、枚葉のウエットティッシュの収納には使用できないという問題があった。一方、枚葉のウエットティッシュを用いたものでは、ウエットティッシュを水平に収納しているため、円筒状の容器に比べて占有面積が大きくなり、場所を取るという問題があった。なお、占有面積を小さくするには、容器を立てた状態で使用すればよいが、その場合には、立てた容器の側面中央に取出し口が来るため、ウエットティッシュを容器から水平方向に引き出さなければならず、ウエットティッシュがきわめて取り出しにくくなり、この方法では到底使用できない。
【特許文献1】実開平7−9735号公報
【特許文献2】特開平9−58725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、縦型の容器に枚葉のウエットティッシュを立てた状態で収納し、その容器の側面の上部領域に取出し口を設けて、収納したウエットティッシュを斜め上方に引き出す構成とすることが考えられる。ところが、この場合には、積層したウエットティッシュの上端近傍をつまんで上方に引き出すこととなるため、従来のようにウエットティッシュのつまんだ部分の両側をスリット状の通路に通して抵抗を与えるという構造とすることができず、ウエットティッシュの引き出しが不安定になるという問題が生じた。すなわち、1枚のウエットティッシュを引き出した時に、後続のウエットティッシュが一緒に引き出されてしまうとか、後続のウエットティッシュの進行が阻止された場合においてそのウエットティッシュの先端が取出し口のところで保持されず、容器内に滑り落ちてしまい、次回の取り出しが面倒になるとか、後続の複数枚のウエットティッシュが固まった状態で持ち上げられ、取出し口に詰まるといった問題が生じた。
【0006】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたもので、枚葉のウエットティッシュを立てた状態で収納した場合において、そのウエットティッシュを1枚ずつ安定して取り出すことができると共に後続のウエットティッシュの先端部分を取出し口に保持させておくことの可能な湿潤材収納用容器並びにその湿潤材収納用容器にウエットティッシュを収納した構成のウエットティッシュ包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に係る発明は、上記課題を解決するため、湿潤材収納用容器を、少なくとも側面の上部領域を含む領域に形成された取出し口と、その取出し口を開閉する蓋を備えた構成とし、更にその取出し口を、該取出し口の下端縁が略V字状をなし、そのV字の下端領域に、横側から一方が他方の下側に入り込むように延びる形状に形成された2個の横舌片の間に斜めに形成された狭い第一通路と、その第一通路につながるように下側の横舌片の先端領域に形成された第二通路と、その第二通路につながるように且つ前記下側の横舌片とその下方に上向きに延びるように形成された縦舌片との間に形成された狭い第三通路を有する構成としたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記した請求項1記載の湿潤材収納用容器において、前記横舌片が、その根本部分を支点として変形しうるよう、前記根本部分に易変形部を備えた構造としたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記した請求項2記載の湿潤材収納用容器において、前記横舌片に補強用リブを設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記した請求項1から3のいずれか1項記載の湿潤材収納用容器に、枚葉タイプの複数枚のウエットティッシュを、各ウエットティッシュの一部がそれに続く次のウエットティッシュの一部の中に折り込まれる形態で積み重ね、袋内に収容したウエットティッシュ袋を、ウエットティッシュが縦方向となるように収納してなるウエットティッシュ包装体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の湿潤材収納用容器は、その中に枚葉のウエットティッシュを立てた状態で収納して使用する場合、取出し口から1枚のウエットティッシュを引き出した際にそのウエットティッシュの一部が取出し口の下端縁で案内されて第一通路、第二通路、第三通路等に入り、これらを通り抜ける際に、主として狭い第一通路と第三通路によって適度な抵抗が与えられ、このため、後続のウエットティッシュは第一通路と第三通路のところに引っ掛かり、その位置に保持される。かくして、枚葉のウエットティッシュを引き出す際に、1枚のウエットティッシュのみが引き出され、後続のウエットティッシュは取出し口15の下端領域に引っ掛かり、先端が取出し口から突出した状態で保持され、次の引き出しに備えることとなる。また、1枚のウエットティッシュを引き出した際に、後続のウエットティッシュが複数枚固まって引き出されそうになることがあるが、これらは第一通路、第三通路を形成する横舌片及び縦舌片によって進行を阻止されるため、取出し口に詰まることもない。かくして、本発明の湿潤材収納用容器は、枚葉のウエットティッシュを立てた状態で収納しておくことで、ウエットティッシュを1枚ずつ良好に引き出すことができるという効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。図1(a)、(b)は本発明の実施の形態に係る湿潤材収納用容器を、蓋を閉じた状態及び蓋を開いた状態で示す概略斜視図、図2はその湿潤材収納用容器を分解して且つその中に入れるウエットティッシュ袋と共に示す概略斜視図、図3(a)、(b)、(c)はその湿潤材収納用容器の概略正面図、概略側面図、及び概略平面図、図4はその湿潤材収納用容器の概略断面図である。全体を参照符号1で示す湿潤材収納用容器は、ウエットティッシュ等の湿潤状態の紙や布等の湿潤材を収納し、必要に応じて取り出すこの可能な縦型の容器であり、この実施の形態では、縦型の容器を縦割りした形態のフロントボディ2とリアボディ3で形成されている。ここで、縦型の容器とは、直立状態に置いて使用することが可能で、且つ水平面内での最大寸法よりも高さの高い容器を意味している。このように湿潤材収納用容器1として縦型の容器を採用したことにより、占有面積を小さくできる利点が得られる。
【0013】
フロントボディ2とリアボディ3は、樹脂の成形、例えば射出成形によって作られるもので、それぞれの周縁部分に気密性良く互いに嵌合させうる嵌合部5、6を有している。嵌合部5、6は図5(a)に拡大して示すように、一方の嵌合部5は先端開口が狭くなった溝5aを備え、他方の嵌合部6はその溝5a内に嵌合可能で先端に厚い部分を有する突出部6aを備えており、突出部6aを溝5a内に嵌合させることで気密性良く連結することができる。ここで、この嵌合部5、6はフロントボディ2とリアボディ3の全周縁に渡って形成されており、この嵌合部5、6を互いに嵌合させることでフロントボディ2とリアボディ3を気密性良く連結し、縦型の容器に組み立てることができる。なお、嵌合部5、6に形成されているアンダーカットは、フロントボディ2及びリアボディ3の全周に渡って同一としてもよいが、ほぼ長方形状の周縁を連結する場合には、各角部の嵌合をきつくすることで両者の確実な連結並びに良好な気密性が確保される。このため、角部に形成した嵌合部5、6のアンダーカットは、他の領域よりも大きくしておくことが好ましい。嵌合部5、6を相互に嵌合させる際に、その嵌合動作を容易に行うため、フロントボディ2には適当な位置にガイド7を形成している。また、リアボディ3の嵌合部6には、嵌合部5と嵌合させた時に外側の側面5b、6bがほぼ同一面となるようにふくらみ部6cが形成されている。この構成により、フロントボディ2とリアボディ3を嵌合させた時の外観がきわめて良好となる。
【0014】
フロントボディ2とリアボディ3の両側縁同士の連結は、嵌合部5、6の嵌合のみによって行ってもよいが、例えば15cmを越えるような長い側縁同士の連結の場合には、単に嵌合部5、6のみの嵌合では、落下等の衝撃を与えた時に嵌合部5、6の間に隙間が生じて気密性が悪くなるとか嵌合が外れるといったことが生じることがある。そこで、そのような嵌合部5、6の嵌合が外れることを防止するため、この実施の形態では、フロントボディ2の側縁の高さ方向の中間領域に、図5(b)に示すように、リアボディ3に係止するためのフック9をヒンジ部9aを介して連設している。一方、リアボディ3のフロントボディ9で係止される領域には、図6で示すように凹み10を形成すると共にその凹み10の一端(フロントボディ2側の端部にフック9に係止する凸部11を形成している。この構成により、フック9を凸部11に係止することでフロントボディ2とリアボディ3の連結を確実とし、落下した時の衝撃等が加わった場合でも、嵌合部5、6の嵌合が外れたり、隙間ができて気密が破れるといったことを防止できる。図5(b)において、フック9に対応するリアボディ3の領域では、フック6をリアボディ3の外面に極力密着させて見栄えを良くするよう、ふくらみ部6cは切り欠かれている。なお、フック9及び凹み10は、フロントボディ2及びリアボディ3の側縁の中央に1組設ける場合に限らず、必要に応じ、適当な間隔を開けて複数組設けても良い。
【0015】
図1〜図4において、フロントボディ2には、そのフロントボディ2とリアボディ3とを縦型の容器に組み立てた状態で該縦型の容器の前面側に位置する側面で且つ天面に近接した領域から天面領域の一部にかけて取出し口15を形成し、その取出し口15を天面領域に設定した回転中心軸線を中心として旋回可能な蓋16で開閉する構成としている。蓋16は、フロントボディ2と一体構造に、すなわちヒンジ部を介して連設された構造に作ってもよいが、この実施の形態では、フロントボディ2とは別部品として、樹脂の成形、例えば射出成形によって作られている。以下、フロントボディ2の取出し口15を形成した領域及び蓋16の構造を更に詳細に説明する。
【0016】
図7はフロントボディ2を、それに取り付けている蓋16を開いた状態で示す概略断面図、図8はフロントボディ2を蓋を取り外した状態で示す概略正面図、図9は、図8のA−A概略断面図、図10(a)、(b)、(c)、(d)は、蓋16の概略側面図、概略裏面図、概略断面図及び概略端面図である。フロントボディ2は、取出し口15を形成する領域に、該フロントボディ2とリアボディ3で縦型の容器を形成した状態における天面の最外面18と側面の最外面19よりも内側に引っ込んだ位置で、斜め上方を向くように傾斜した壁部20を有し、その壁部20に取出し口15が形成されている。なお、ここで「傾斜した」とは、直線が傾いた状態に限定されず、図面に示したように湾曲した線が斜めになった状態をも含むものである。このように傾斜した壁部20に取出し口15を設ける構成としたことで、大きい面積の取出し口15を形成できると共にその取出し口15が斜め上方を向いているので、縦型の容器内に収容した湿潤材を、上方向に取り出したり、横方向に取り出したり、斜め上方に取り出したりでき、取り出す人の好みに応じて取り出しの自由度が大きくなり、直立させた容器から湿潤材を引き出しやすいという利点が得られる。また、大面積の取出し口15を形成したことで、斜め上方から容器内に指を入れ易く、湿潤材が容器内に入り込んでいても、容易につまんで引き出すことができる。
【0017】
取出し口15を閉じるための蓋16は、天面領域で且つ最外面18よりも内側に設定した回転中心軸線O−Oを中心に旋回可能に設けられる。更に具体的には、フロントボディ2の傾斜した壁部20の両端から最外面19に向かって延びる垂直壁22の上端近傍に、互いに向かい合って突出するように支持ピン23が形成され、その支持ピン23に、蓋16の両端に形成されている軸受孔25を嵌合することで、蓋16はフロントボディ2に対して回転中心軸線O−Oを中心に旋回可能に保持される。ここで、フロントボディ2側に支持ピン23を形成し、蓋16側には軸受孔25を形成する構成としたことで、フロントボディ2側に軸受孔を形成する必要がなく、フロントボディ2に空気漏れの恐れのある貫通孔を形成する必要がなくなる。また、フロントボディ2側に軸受孔として貫通孔に代えて底を閉じた孔を形成することも考えられるが、そのような孔は孔の底を閉じるためのボス部を必要とし、成形が難しくなる(そのボス部の型抜きができなくなる)。本実施の形態では、蓋16側に軸受孔25を形成したことでこれらの問題点を回避している。
【0018】
蓋16は、その蓋16で取出し口15を閉じた状態とした時に、その蓋16の周辺に位置する容器天面の最外面18及び容器側面の最外面19と実質的に同一面となるようにL字型の外面28、29を備えている。この構成により、図1(a)に示すように、蓋16を閉じた状態では、蓋の外面28、29が、それに隣接したフロントボディ2の外面18、19とほぼ同一面となり、きわめて良好な外観を与える。また、図4から良く分かるように、蓋16を閉じた状態において、取出し口15と蓋16との間に空間部が生じているため、後述するように取出し口15に、次に取り出すウエットティッシュの先端部分を引っかけておく際に、その先端部分が取出し口15と蓋16との間の空間部に位置することで、蓋16で押しつぶされてしまうということがなく、ウエットティッシュを取り出しやすくなる。
【0019】
この種の湿潤材収納用の容器では取出し口15を極力気密的に閉じることが必要である。そこで、この実施の形態では、特に図7〜図9に示すように、取出し口15の全周を取り囲むように、取出し口側リブ30を形成すると共にその外側には受け面31を形成している。受け面31は取出し口15の全周に渡って設けることが好ましいが、場所的な制約等があれば、一部領域では省略してもよい。例えば、この実施の形態では環状に形成している取出し口側リブ30の側方及び下方には受け面31を形成しているが上方には受け面を形成してない。一方、蓋16には、取出し口側リブ30の全周を取り囲むように、その外面に嵌合する蓋側リブ33を形成している。この蓋側リブ33は、蓋16を回転中心軸線Oを中心として旋回させて取出し口側リブ30にかぶせた時、蓋側リブ33が取出し口側リブ30に良好に嵌合するように、その形状が定められている。更に、蓋側リブ33の高さは、蓋16を閉じた時に蓋側リブ33の先端33aがフロントボディ2側の受け面31にほぼ接する位置となるように定められている。すなわち、蓋側リブ33の先端の湾曲は、受け面31の湾曲に一致するように定められている。この構成により、フロントボディ2に受け面31を一体構造で(同じ材質で)形成した場合においても、良好な気密性を確保できる利点が得られる。なお、取出し口側リブ30と蓋側リブ33との嵌合は、厳密な意味での嵌合に限らず、両者間に多少のギャップがあっても、適度な気密性は保てるので、本明細書で取出し口側リブ30と蓋側リブ33について用いる用語「嵌合」は多少のギャップがある場合も含むものとする。多少のコストアップがあっても気密性を一層向上させたい場合には、受け面31を柔らかい材質で形成するとか、受け面31の上に適当なパッキン材を配置してもよい。受け面31をフロントボディ2を形成する材料よりも柔らかい材料で形成するには、フロントボディ2の製造を異材質成形或いはインサート成形で行えばよい。
【0020】
蓋16を閉位置に保持した状態から、ワンタッチでその蓋16を開くことができるようにするため、この蓋16にはコイルばね35が取り付けられている。図11は蓋16にこのコイルばね35を保持させるためのばね収納部36を示すものである。このばね収納部36はコイルばね35を回転中心軸線O−O上に位置するように保持する保持空間36aと、コイルばね35を、そのコイルばね35の中心軸線に直角方向に押し込むことで挿入は可能であるが抜け落ちは防止するように前記コイルばねの外径よりも小サイズに作られた挿入口36bと、コイルばね35の一端の接線方向に延び出した部分35aを回転しないように拘束する係止孔36cと、コイルばね35の他端の接線方向に延び出した部分35bの旋回を許容する溝36d等を備えている。この構成により、ばね収納部36の保持空間36a内にコイルばね35をセットしておけば、コイルばね35が脱落することはなく、また、ばね収納部36にコイルばね35をセットした状態でその蓋16を図4、図7に示すように、フロントボディ2に取り付けることで、コイルばね35の他端の部分35bがフロントボディ2の支持面38で支持され、コイルばね35は常時、蓋16に対して開方向(図7で時計方向)の付勢力を加えることができる。
【0021】
更に、図4、図7、図8等に示すように、フロントボディ2及び蓋16には、コイルばね35で開方向に付勢されている蓋16を閉じた状態に保持する係止手段40が設けられている。この係止手段40は、図12(a)、(b)に拡大して示すように、蓋16の先端部分に形成された係止用凸部42と、フロントボディ2の、閉じた状態の蓋2の先端部分に面する領域に隆起した形状に一体に形成された押しボタン部43を備えている。この押しボタン部43は指で押すための押し面43aと、その押し面43aを支えるように押し面の全周に形成された側壁43b、43cを備えている。蓋16の先端部分に面する側に配置された側壁43bは平面状に形成されており、その表面に、蓋16の係止用凸部42に係止する凸部43dを備えている。押しボタン部43は、押し面43aを矢印Fで示すように押した時に、平面状の側壁43bが、蓋16の係止用凸部42から離れる方向に容易に傾き、係止用凸部42と凸部43dとの係止が外れるような構造に作られている。
【0022】
このような特性を備えた押しボタン部43の構造は、図示の実施の形態に限定されるものではないが、本実施の形態では、平面状の側壁43bの根本の部分に、押し面43aを押した時に側壁43bが全体として容易に傾くように、薄肉部43eを形成し、更に、他の側壁43cの根本の領域には変形を容易とするよう薄肉のU字状部分43fを形成している。この構成により、図12(a)に示すように、押しボタン部43の押し面43aを押すと、U字状部分43fが変形しやすいことから、図12(b)に示すように、押し面43aの下端領域が押し込まれ、これによって、凸部43dを形成している側壁43bが全体として、蓋16の係止用凸部42から離れる方向に傾き、蓋16を解放する。かくして、押しボタン部43の押し面43aのどこを押しても、蓋16の拘束を解除でき、ワンタッチで確実に蓋16を開くことができる。このような押しボタン部43の構造は、押しボタン部43をフロントボディ2と一体構造に(同一樹脂で)成形して実現できるので、コストダウンを図ることができる。なお、蓋16の拘束を解除するための手段としては、フロントボディ2と一体構造で形成した押しボタン部に限定されず、別部品の押しボタンを用いる構成としてもよい。
【0023】
図2において、50は、この湿潤材収納用容器1に収納するのに好適な湿潤材の1例を示すものであり、ここでは、枚葉タイプの複数枚のウエットティッシュ51を、各ウエットティッシュ51の一部がそれに続く次のウエットティッシュの一部の中に折り込まれる形態で積み重ね、袋52内に収容したウエットティッシュ袋50を示している。このウエットティッシュ袋50は、その前面の上端領域に開封用シール53を備えており、この開封用シール53を剥がすことで、この位置にウエットティッシュの取出し口を形成でき、その取出し口からウエットティッシュ51を次々と引き出すことができる。このウエットティッシュ袋50を、各ウエットティッシュ51が縦方向となり、且つ開封用シール53を配した部分がフロントボディ2の取出し口15に向かい合うように収納することでウエットティッシュ包装体を形成できる。
【0024】
フロントボディ2の取出し口15は、このような形態のウエットティッシュ袋50のウエットティッシュ51を良好に取り出すことができ且つウエットティッシュ51の一部を取出し口15の下端領域に引っかかった状態に保持できる構造のものである。具体的には、図13、図14に示すように、取出し口15の下端縁15a、15bをV字状とすると共に、そのV字の下端領域に、横側から一方が他方の下側に入り込むように延びる形状に2個の横舌片55、56を設け、その横舌片55、56の間に、前記下端縁15aと同方向に延びるよう斜めに狭い第一通路58を形成し、下側の横舌片55の先端領域に、第一通路58につながるようにやや大きいサイズの第二通路59を形成し、更に、下側の横舌片55の下方に上向きに延びるように縦舌片60を設け、その横舌片55と縦舌片60の間に、第二通路59につながる狭い第三通路61を設け、更に縦舌片60の横に、第三通路61につながる第四通路62を設けるという構成としている。
【0025】
ここで、狭い第一通路58と第三通路61を小さい角度で交差するような形態で配置したことにより、この取出し口15からウエットティッシュ51(図2参照)を引き出した際に、そのウエットティッシュ51の一部が下端縁15a、15bで案内されて第一通路58、第二通路59、第三通路61、第四通路62等に入り、これらを通り抜ける際に、主として狭い第一通路58と第三通路61によって適度な抵抗が与えられる。このため、最初に引き出されたウエットティッシュ51によって次のウエットティッシュ51が引き出された際に、次のウエットティッシュ51は第一通路58と第三通路61のところに引っ掛かり、その位置に保持される。かくして、枚葉のウエットティッシュ51を引き出す際に、1枚のウエットティッシュのみが引き出され、後続のウエットティッシュは取出し口15の下端領域に引っ掛かり、先端が取出し口15から突出した状態で保持され、次の引き出しに備えることとなる。また、1枚のウエットティッシュを引き出した際に、後続のウエットティッシュが複数枚固まって引き出されそうになることがあるが、これらも第一通路58、第三通路61を形成する横舌片55、56及び縦舌片60によって拘束され、複数枚のウエットティッシュが一緒に引き出されることもない。また、1枚(1枚目)のウエットティッシュ51の後端部分に引っ張られ、取出し口15に溜まった後続のウエットティッシュ51の先端部分は、図4から分かるように、閉じた状態の蓋16と取出し口15との間の空間に潰されることなく保持される。このため、次回の使用時に、そのウエットティッシュ先端部分を容易につまんで引き出すことができる。
【0026】
図13、図14において、第一通路58と第三通路61を形成する横舌片55、56及び縦舌片60の変形しやすさ及び第一通路58と第三通路61のギャップ寸法は、ウエットティッシュの引き抜き特性に影響する。すなわち、横舌片55、56及び縦舌片60があまり変形せず、且つ、第一通路58と第三通路61の間隔が狭い場合には、ウエットティッシュを引き出す際の抵抗が大きくなって好ましくないとか、後続のウエットティッシュが第一通路58と第三通路61内に入ることができず、容器内に落ちてしまうといった問題が生じる。一方、横舌片55、56及び縦舌片60が変形し易す過ぎる場合とか、第一通路58と第三通路61の間隔が広過ぎる場合、複数枚のウエットティッシュが一緒に引き出されてしまう。そこで、これらの問題が生じないように、横舌片55、56及び縦舌片60の変形しやすさ及び第一通路58と第三通路61のギャップ寸法を定めればよい。この横舌片55、56及び縦舌片60を適度に変形しやすくしておくと、ウエットティッシュを引き出す際に横舌片55、56や縦舌片60が変形して第一通路58及び第三通路61のギャップが広がり、第一通路58と第三通路61のギャップ寸法の影響を小さくできる利点が得られる。第一通路58と第三通路61のギャップ寸法は、使用対象のウエットティッシュに応じて適宜設定すればよいが、目安として、1〜3mm程度を例示できる。
【0027】
本発明者らが種々テストした結果、横舌片55、56を変形しやすくする場合、その根本部分を支点として全体的に傾くように変形させることがウエットティッシュの引き出し特性向上に好ましいことが判明した。そこで、この実施の形態では、横舌片55、56の根本部分に湾曲した易変形部55a、56aを形成し、且つその易変形部55a、56aよりも先端側の領域には補強用のリブ55b、56bを設けている。
【0028】
次に、上記構成の湿潤材収納用容器1の使用方法を説明する。この湿潤材収納用容器1は、図2に示すウエットティッシュ袋50を収納したウエットティッシュ包装体として、市販等の流通に供される。これを入手した人は、フロントボディ2前面の押しボタン部43の押し面43aを押して蓋16を開き、取出し口15から指を入れてウエットティッシュ袋50の前面の開封用シール53を剥がし、最初のウエットティッシュ51を引き出し、取出し口15の下端領域の第一通路58や第三通路61に引っかけておく。なお、ウエットティッシュ袋50の開封は、フロントボディ2とリアボディ3を分解してウエットティッシュ袋50を取り出して行っても良い。最初のウエットティッシュ51を引き出して取出し口15の下端領域に引っかけた後は、蓋16を閉じる。これにより、使用準備が終了し、その湿潤材収納用容器1は立てた状態で適当な場所に置かれて使用される。
【0029】
ウエットティッシュを取り出すには、単に指で押しボタン部43の押し面43aを押す。これにより、蓋16の係止が解除され、蓋16はコイルばね35の付勢力によって自動的に開くので、取出し口15に引っかかっているウエットティッシュ先端をつまんで引き出せばよい。1枚のウエットティッシュを取出し口15から引き出した際に、後続のウエットティッシュの先端が一緒に引き出され、取出し口15の下端領域の第一通路58や第三通路61に引っかかった状態で保持される。その後、蓋16を閉じる方向に旋回させ且つ押し込むことで、蓋16を閉じた状態とすることができる。以上のように、単に、指で押しボタン部43の押し面43aを押し、蓋16が開いた後はウエットティッシュを引き出し、次いで蓋16を閉じる方向旋回させ押し込むという簡単な操作を行うことで、1枚のウエットティッシュを引き出すことができ、且つ湿潤材収納用容器1を元の状態に戻すことができる。収納していたウエットティッシュを使い終わった後は、新たなウエットティッシュ袋50を入手し、フロントボディ2とリアボディ3を分解してウエットティッシュ袋50を入れ替え、上記した動作を繰り返せば良い。
【0030】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、フロントボディ2に、フロントボディ2とリアボディ3で形成する縦型の容器の天面及び側面の最外面よりも内側に引っ込んだ位置に傾斜した壁部20を設け、その壁部20に取出し口15を形成しているが、このような内側に引っ込んだ壁部を省略し、縦型の容器の天面及び側面に直接開口するように取出し口を設ける構成としてもよい。更には、縦型の容器を、縦割りした形態の2個の部品、すなわちフロントボディ2とリアボディ3を組み立てて形成する代わりに、一体構造とするとか、或いは、縦型の容器を3分割以上した形態の部品を組み立てて形成する等の変更を加えても良い。また、本発明の湿潤材収納用容器は、枚葉のウエットティッシュの収納に最も適しているが、この用途に限らず、巻き取った形態の連続したウエットティッシュ或いは布状の湿潤材の収納に用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)、(b)は本発明の実施の形態に係る湿潤材収納用容器を、蓋を閉じた状態及び蓋を開いた状態で示す概略斜視図
【図2】図1に示す湿潤材収納用容器を分解して且つその中に入れるウエットティッシュ袋と共に示す概略斜視図
【図3】(a)、(b)、(c)は図1に示す湿潤材収納用容器の概略正面図、概略側面図、及び概略平面図
【図4】図1に示す湿潤材収納用容器の概略断面図
【図5】(a)は嵌合部5、6の概略断面図、(b)は嵌合部5、6及びフック9を示す概略断面図
【図6】フック9を係止した部分を示す概略断面図
【図7】フロントボディを、それに取り付けている蓋を開いた状態で示す概略断面図
【図8】フロントボディを、蓋を取り外した状態で示す概略正面図
【図9】図8のA−A概略断面図
【図10】(a)、(b)、(c)、(d)は、蓋の概略側面図、概略裏面図、概略断面図及び概略端面図
【図11】(a)は蓋のコイルばね収納部分を示す概略斜視図、(b)、(c)はそれぞれ、蓋を(a)のB−B方向、C−C方向に見た概略断面図
【図12】(a)、(b)は蓋を閉じた状態に保持する係止手段を示す概略断面図
【図13】取出し口の概略正面図
【図14】図13のD−D概略断面図
【符号の説明】
【0032】
1 湿潤材収納用容器
2 フロントボディ
3 リアボディ
5、6 嵌合部
9 フック
10 凹み
11 凸部
15 取出し口
15a、15b 下端縁
16 蓋
18 天面の最外面
19 側面の最外面
20 壁部
22 垂直壁
23 支持ピン
25 軸受孔
28、29 外面
30 取出し口側リブ
31 受け面
33 蓋側リブ
35 コイルばね
36 ばね収納部
40 係止手段
42 係止用凸部
43 押しボタン部
43a 押し面
43b、43c 側壁
43d 凸部
43e 薄肉部
43f U字状部分
50 ウエットティッシュ袋
51 ウエットティッシュ
52 袋
53 開封用シール
55、56 横舌片
55a、56a 易変形部
55b、56b リブ
58 第一通路
59 第二通路
60 縦舌片
61 第三通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤材を収納する容器であって、該容器の、少なくとも側面の上部領域を含む領域に形成された取出し口と、その取出し口を開閉する蓋を備え、前記取出し口が、該取出し口の下端縁を略V字状とすると共に、そのV字の下端領域に、横側から一方が他方の下側に入り込むように延びる形状に形成された2個の横舌片の間に斜めに形成された狭い第一通路と、その第一通路につながるように下側の横舌片の先端領域に形成された第二通路と、その第二通路につながるように且つ前記下側の横舌片とその下方に上向きに延びるように形成された縦舌片との間に形成された狭い第三通路を有していることを特徴とする湿潤材収納用容器。
【請求項2】
前記横舌片が、その根本部分を支点として変形しうるよう、前記根本部分に易変形部を形成していることを特徴とする請求項1記載の湿潤材収納用容器。
【請求項3】
前記横舌片が補強用リブを有することを特徴とする請求項2記載の湿潤材収納用容器。
【請求項4】
枚葉タイプの複数枚のウエットティッシュを、各ウエットティッシュの一部がそれに続く次のウエットティッシュの一部の中に折り込まれる形態で積み重ね、袋内に収容したウエットティッシュ袋と、そのウエットティッシュ包装袋を、ウエットティッシュが縦方向となるように収納した請求項1から3のいずれか1項記載の湿潤材収納用容器を備えたウエットティッシュ包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−282244(P2006−282244A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105638(P2005−105638)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】