説明

湿潤粉体移送脱水装置

【課題】湿式分級後の砂等の湿潤粉体の含水率を大幅に減少させることができ、脱水後の乾燥工程を省略することができて製品の出荷サイクルを早めることが可能となるとともに、1台の装置で湿潤粉体を移送しながら同時に脱水することができ、広い設置スペースを必要とせず、高い処理効率を得ることが可能となる湿潤粉体移送脱水装置を提供すること。
【解決手段】湿潤粉体を移送する移送手段と、移送手段により移送されている湿潤粉体の水分を除去する脱水手段とを備えており、移送手段は、網状の無端ベルトを始端側回転体及び終端側回転体に掛け渡して形成されたコンベアからなり、脱水手段は、無端ベルトの上方ベルトと下方ベルトとの間に配設されて上方ベルトの網目を通過して落下した水を収容する水受け容器と、水受け容器内を減圧する吸引手段とを備えている湿潤粉体移送脱水装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式分級後の砂等の湿潤粉体を移送しながら脱水することができるとともに、移送中に湿潤粉体の含水率を大幅に減少させることができ、脱水後の乾燥工程を省略することが可能である湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、湿式分級後の砂には多量の水分が含まれており、例えば粒径10mm以下の砂には約50%の水分が含まれている。
このような多量の水分を含む砂はそのまま製品として出荷することができないため、通常は湿式分級後の砂を所定の場所で自然乾燥させることにより含水率を約15%以下に低下させた後に出荷している。
しかしながら、このような従来の方法では乾燥のために数日間要することから、短期間で出荷することができず、出荷のサイクルが長くなるという問題があった。
【0003】
一方、下記特許文献1には、かかる問題点を解決するための技術が開示されている。
特許文献1の開示技術は、所定場所に搬送する砂のベルトコンベアの反転部下方に設置した凹形溝から成る集水体に濾過材及び砕石材を上下段に配置し、前記砕石材で包囲した透水性吸引管を連管を介してジェットポンプに連通し、このジェットポンプから泥水処理槽に配管するとともにこの中間部に逆洗弁を設け、前記泥水処理槽から浄水槽に配管し、この浄水槽から前記ジェットポンプに配管して連通するように成る水洗砂の強制脱水装置である。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された装置は、砂を移送するためのベルトコンベアとは別に、濾過材、集水体、透水性吸引管等を配置しなければならないため、装置全体が大型化して広い設置スペースを必要とするという問題がある。
また、ベルトコンベアにて砂を移送した後に、濾過材、集水体、透水性吸引管、ジェットポンプ等により脱水作業を行うことから、移送工程と脱水工程の二段階の処理工程を必要とし、処理効率が悪いという問題もある。
【0005】
また、下記特許文献2には、シーブメント、メッシュコンベア、振動篩、遠心脱水機からなる脱水装置を備えた湿式造粒後の脱水装置が開示されている。
しかしながら、この特許文献2に開示された装置も、砂を移送するためのメッシュコンベアとは別に、シーブメント、振動篩、遠心脱水機を配置しなければならないため、装置全体が大型化して広い設置スペースを必要とするという問題がある。
また、メッシュコンベアによる砂の移送工程とは別に、シーブメント、振動篩、遠心脱水機による脱水工程を必要とすることから、処理効率が悪いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−192198号公報
【特許文献2】特開2001−54728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、湿式分級後の砂等の湿潤粉体の含水率を大幅に減少させることができ、脱水後の乾燥工程を省略することができて製品の出荷サイクルを早めることが可能となるとともに、1台の装置で湿潤粉体を移送しながら同時に脱水することができ、広い設置スペースを必要とせず、高い処理効率を得ることが可能となる湿潤粉体移送脱水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、湿潤粉体を移送する移送手段と、前記移送手段により移送されている湿潤粉体の水分を除去する脱水手段とを備えており、前記移送手段は、網状の無端ベルトを始端側回転体及び終端側回転体に掛け渡して形成されたコンベアからなり、前記脱水手段は、前記無端ベルトの上方ベルトと下方ベルトとの間に配設されて前記上方ベルトの網目を通過して落下した水を収容する水受け容器と、前記水受け容器内を減圧する吸引手段とを備えていることを特徴とする湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記コンベアは、前記無端ベルトの上方ベルトの下面を支持する支持部材を備えており、前記支持部材は、前記無端ベルトの幅方向に延びるとともに前記無端ベルトの長さ方向に所定間隔をあけて配置された複数本の軸体からなり、前記軸体は長さ方向に大径部と小径部とを交互に有しており、前記大径部の表面が前記上方ベルトの下面に対して回転可能に当接していることを特徴とする請求項1記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記無端ベルトの長さ方向において、一の軸体の大径部が隣り合う他の軸体の小径部と並んで配置されていることを特徴とする請求項2記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記大径部がベアリングローラからなり、前記ベアリングローラは、表面が弾性素材からなることを特徴とする請求項2又は3記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記無端ベルトが金網からなり、前記始端側回転体及び前記終端側回転体の両端部にはスプロケットが取り付けられており、前記スプロケットにはチェーンが掛け渡されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記始端側回転体及び前記終端側回転体は、表面に弾性素材がライニングされていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記水受け容器は、前記無端ベルトの長さ方向に複数個並べて配置されており、前記複数個の水受け容器の夫々に前記吸引手段と接続される吸引口が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記無端ベルトに対して洗浄水を噴射する第1ノズルを備えていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0016】
請求項9に係る発明は、前記無端ベルトの下方ベルトが、長さ方向の一部において下方に下がっている下方延出部を有しており、前記第1ノズルが、前記下方延出部において、前記下方ベルトの上方から洗浄水を噴射することを特徴とする請求項8記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【0017】
請求項10に係る発明は、前記水受け容器は、底面が前記無端ベルトの幅方向の一方側から他方側に向けて下がるように傾斜しており、前記吸引口が前記他方側に設けられていることを特徴とする請求項7乃至9いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0018】
請求項11に係る発明は、前記水受け容器は、底面の幅が前記一方側から前記他方側に向けて狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項10記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0019】
請求項12に係る発明は、前記水受け容器の前記一方側の側面に、前記水受け容器の前記一方側から前記他方側に向けて且つ前記底面の方向に傾斜して水を噴射する第2ノズルを備えていることを特徴とする請求項10又は11記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0020】
請求項13に係る発明は、前記無端ベルトに対してエアを噴射するエアノズルを備えていることを特徴とする請求項8又は9記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0021】
請求項14に係る発明は、前記無端ベルトの幅方向両側に立設され且つ長さ方向に沿って延び、前記無端ベルトと共に回転するゴムフランジを備えていることを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【0022】
請求項15に係る発明は、前記ゴムフランジは、横断面形状が波形に形成されていることを特徴とする請求項14記載の湿潤粉体移送脱水装置に関する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によれば、湿潤粉体を移送する移送手段と、前記移送手段により移送されている湿潤粉体の水分を除去する脱水手段とを備えていることから、1台の装置で湿潤粉体を移送しながら同時に脱水することができる。そのため、装置の設置スペースを小さくすることができるとともに、工程数を減らして処理効率を高めることができる。
また、移送手段は、網状の無端ベルトを始端側回転体及び終端側回転体に掛け渡して形成されたコンベアからなり、脱水手段は、無端ベルトの上方ベルトと下方ベルトとの間に配設されて上方ベルトの網目を通過して落下した水を収容する水受け容器と、水受け容器内を減圧する吸引手段とを備えていることから、吸引手段により水受け容器内を減圧することで移送中の湿潤粉体の水分を上方ベルトの網目から水受け容器内へと吸い出すことができる。そのため、湿潤粉体の含水率を大幅に減少させることができ、脱水後の乾燥工程を省略することが可能となり、製品の出荷サイクルを早めることができる。
【0024】
請求項2に係る発明によれば、コンベアが無端ベルトの上方ベルトの下面を支持する支持部材を備えていることから、湿潤粉体の重量によって無端ベルトが撓むことを防ぐことができ、重量物の或いは多量の湿潤粉体であってもコンベアで円滑に移送することが可能である。
また、支持部材は、無端ベルトの幅方向に延びるとともに無端ベルトの長さ方向に所定間隔をあけて配置された複数本の軸体からなり、軸体は長さ方向に大径部と小径部とを交互に有しているため、隣り合う軸体の間に形成される隙間を通して水を落下させることができる。そのため、支持部材により脱水が妨げられることがなく、支持部材が吸引手段による水の吸い出し作用を妨げることもない。
更に、大径部の表面が上方ベルトの下面に対して回転可能に当接していることから、無端ベルトの回転による上方ベルトの移動に伴って大径部が当接しながら回転することになる。そのため、上方ベルトと支持部材との摩擦が殆ど生じなくなり、上方ベルトの摩耗を防ぐことができる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、無端ベルトの長さ方向において、一の軸体の大径部が隣り合う他の軸体の小径部と並んで配置されていることから、隣り合う軸体の隙間を小さくして無端ベルトの支持力を高めることができ、脱水機能を維持しながら無端ベルトの撓み防止効果を高めることができる。
【0026】
請求項4に係る発明によれば、大径部がベアリングローラからなり、前記ベアリングローラは表面が弾性素材からなることから、大径部の表面が上方ベルトの下面に対して滑ることが防止されるとともに、大径部を非常に円滑に回転させることができ、無端ベルトに傷が付くことも防止できる。
【0027】
請求項5に係る発明によれば、無端ベルトが金網からなるため、引っ張り強度等の強度が高くなり、多量の或いは重量物の湿潤粉体を載せて移送することが可能となる。
また、始端側回転体及び終端側回転体の両端部にはスプロケットが取り付けられており、前記スプロケットにはチェーンが掛け渡されていることから、無端ベルトを蛇行させることなく確実に円滑に回転させることができ、無端ベルトの摩耗を防ぐことができる。
【0028】
請求項6に係る発明によれば、始端側回転体及び終端側回転体は、表面に弾性素材がライニングされていることから、始端側回転体及び終端側回転体の回転時において、表面に当接する無端ベルトの伸びを抑制することができる。
【0029】
請求項7に係る発明によれば、水受け容器が無端ベルトの長さ方向に複数個並べて配置されており、複数個の水受け容器の夫々に吸引手段と接続される吸引口が設けられていることから、個々の水受け容器の容量を小さくすることができ、吸引手段により夫々の水受け容器を充分に減圧状態とすることが可能となり、無端ベルトの長さ方向の略全長に亘って脱水を確実に行わせることができ、高い脱水能力が得られる。
【0030】
請求項8に係る発明によれば、無端ベルトに対して洗浄水を噴射する第1ノズルを備えていることから、無端ベルトの網目に詰まった異物を洗浄水により除去することができ、優れた脱水機能を長期間に亘って維持することが可能となる。
【0031】
請求項9に係る発明によれば、無端ベルトの下方ベルトが、長さ方向の一部において下方に下がっている下方延出部を有しており、第1ノズルが下方延出部において下方ベルトの上方から洗浄水を噴射することから、第1ノズルから下方ベルトまでの距離を確保することができ、少数の第1ノズルで広範囲に亘って洗浄することが可能となる。
【0032】
請求項10に係る発明によれば、水受け容器は、底面が無端ベルトの幅方向の一方側から他方側に向けて下がるように傾斜しており、吸引口が他方側に設けられていることから、水受け容器に溜まった水を傾斜に沿わせて吸引口へと導くことができる。そのため、吸引口から水を効率良く回収することができ、洗浄水のリサイクルが容易となる。
【0033】
請求項11に係る発明によれば、水受け容器は、底面の幅が一方側から他方側に向けて狭くなるように形成されているため、他方側に設けられた吸引口を大きくすることなく、水受け容器に溜まった水を吸引口へと効率良く導くことができる。
【0034】
請求項12に係る発明によれば、水受け容器の一方側の側面に、水受け容器の一方側から他方側に向けて且つ底面の方向に傾斜して水を噴射する第2ノズルを備えていることから、上方ベルトを通過して水受け容器の底部に溜まった泥等の異物を水と一緒に傾斜に沿って流して吸引口から外部へと排出することができる。
【0035】
請求項13に係る発明によれば、無端ベルトに対してエアを噴射するエアノズルを備えていることから、第1ノズルからの洗浄水の噴射とエアノズルからのエアの噴射を併用することができ、無端ベルトの網目に詰まった異物をより確実に除去することが可能となる。
【0036】
請求項14に係る発明によれば、無端ベルトの幅方向両側に立設され且つ長さ方向に沿って延び、無端ベルトと共に回転するゴムフランジを備えていることから、無端ベルトの側方(幅方向)からの水分の漏れを防止でき、水分が流れ出し易い湿潤固形物であっても移送することができる。
【0037】
請求項15に係る発明によれば、ゴムフランジは横断面形状が波形に形成されていることから、ゴムフランジの剛性を高めることができるとともに、側方から強い力が加わった時には波形の変形により吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置の平面図である。
【図2】本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置の正面断面図である。
【図3】本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置の左側面断面図である。
【図4】(a)は図2のA部断面図、(b)は図2のB部断面図である。
【図5】図4(b)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置の平面図、図2は本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置の正面断面図、図3は本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置の左側面断面図、図4(a)は図2のA部断面図、図4(b)は図2のB部断面図、図5は図4(b)の要部拡大図である。
【0040】
本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置は、湿潤粉体を移送する移送手段(1)と、移送手段(1)により移送されている湿潤粉体の水分を除去する脱水手段(2)とを備えている。
移送手段(1)は、網状の無端ベルト(3)を、始端側回転体(4)及び終端側回転体(5)に掛け渡して形成されたベルトコンベアから形成されている。
脱水手段(2)は、無端ベルト(3)の上方ベルト(31)と下方ベルト(32)との間に配設されて上方ベルト(31)の網目を通過して落下した水を収容する水受け容器(6)と、水受け容器(6)内を減圧する吸引手段(図示略)とを備えている。
【0041】
無端ベルト(3)は、上方ベルト(31)の表面に湿潤粉体を載せて移送する網目状のベルトであって、網目の大きさは、水は通過できるが所定粒径以上の粉体は通過できない大きさに設定される。例えば、粉体として粒径0.15mm以上の砂を移送したい場合、網目の大きさは0.15mm以上のものは通過できない大きさに設定される。
尚、図1では、無端ベルト(3)の網目は始端部付近と終端部付近のみに描いており、他の部分は上方ベルト(31)の下方に配置された部材(支持部材及び水受け容器)を破線で表すために省略している。
無端ベルト(3)は、湿潤粉体の種類(重量等)に応じて適当なものを選択すればよいが、金網からなるベルトが好ましく用いられる。無端ベルト(3)として金網からなるベルトを使用すると、引っ張り強度等の強度が高くなるため、湿潤粉体が重量物であっても移送することができ、また一度に多量の湿潤粉体を載せて移送することが可能となる。
無端ベルト(3)の好適な一例として、網目の目開きが0.4mmのSUS製金網(線径0.35mm)からなるベルトを使用することができる。
【0042】
始端側回転体(4)及び終端側回転体(5)は円筒状のプーリであって、これらの両端部には夫々スプロケット(41)(51)が取り付けられており、スプロケット(41)とスプロケット(51)の間にはチェーン(7)が掛け渡されている。
始端側回転体(4)の回転軸には、スプロケット(41)と同軸に第2スプロケット(42)が取り付けられている。
第2スプロケット(42)と、無端ベルト(3)の上方に設置されたモータ(8)の回転軸に取り付けられたスプロケット(81)の間にはチェーン(9)が掛け渡されている。これにより、モータ(8)を駆動して回転軸を回転させると、その回転がスプロケット(81)及びチェーン(9)を介して第2スプロケット(42)に伝達され、始端側回転体(4)が回転し、これに伴って無端ベルト(3)が回転する。
このように、動力伝達機構としてチェーンとスプロケットを用いて無端ベルト(3)を回転駆動させることにより、無端ベルト(3)を蛇行させることなく確実に円滑に回転させることができ、無端ベルト(3)の摩耗を防ぐことが可能となる。
【0043】
始端側回転体(4)及び終端側回転体(5)は、表面にゴム等の弾性素材がライニングされている。
始端側回転体(4)及び終端側回転体(5)の表面に弾性素材がライニングされていることにより、始端側回転体(4)及び終端側回転体(5)の回転時において、これら回転体の表面に当接する無端ベルト(3)の伸びを抑えることができる。即ち、始端側回転体(4)及び終端側回転体(5)の回転時には、無端ベルト(3)に引っ張り力が加わって伸びようとするが、弾性素材が当接することにより伸びを抑制することができる。
【0044】
移送手段(1)を構成するコンベアは、無端ベルト(3)の上方ベルト(31)の下面を支持する支持部材(10)を備えている。
支持部材(10)は、長さ方向に大径部(10a)と小径部(10b)とを交互に有する軸体からなる。
大径部(10a)は、表面がポリウレタン等の弾性素材からなるベアリングローラから形成されている。ベアリングローラは、円筒状の軸体の長さ方向に所定間隔をあけて外嵌固定されており、ベアリングローラが外嵌された部分が大径部(10a)となり、ベアリングローラが外嵌されていない部分が小径部(10b)となっている。
支持部材(10)の長さ方向において、大径部(10a)の長さは小径部(10b)の長さより短く形成されている。
【0045】
支持部材(10)は、無端ベルト(3)の幅方向に延びており、且つ無端ベルト(3)の長さ方向に所定間隔をあけて複数本(図示例では46本)が配設されている。
支持部材(10)は、大径部(10a)の表面が上方ベルト(31)の下面に対して当接している。ここで、大径部(10a)はベアリングローラからなるため、上方ベルト(31)の移動に伴って回転する。
これにより、大径部(10a)の表面と上方ベルト(31)の下面との間の摩擦を非常に小さくすることができ、上方ベルト(31)が摩耗したり傷付いたりすることが防がれる。
また、大径部(ベアリングローラ)(10a)の表面がポリウレタン等の弾性素材からなるため、大径部(10a)の表面が上方ベルト(31)の下面に対して滑ることが防止されるとともに、大径部(10a)を非常に円滑に回転させることができ、上方ベルト(31)に傷が付くことも防止できる。
【0046】
上記したような複数本の支持部材(10)によって無端ベルト(3)の上方ベルト(31)の下面を支持していることにより、移送される湿潤粉体の重量によって上方ベルト(31)が撓むことを防ぐことができ、大量の湿潤粉体をコンベアで円滑に移送することが可能となる。
また、支持部材(10)が無端ベルト(3)の長さ方向に所定間隔をあけて配置された複数本の軸体からなり、軸体は長さ方向に大径部(10a)と小径部(10b)とを交互に有しているため、上方ベルト(31)の網目を通過した水(湿潤粉体に含まれる水)を隣り合う軸体の隙間を通して落下させることができる。そのため、支持部材(10)により脱水が妨げられることがなく、後述する吸引手段による水の吸い出し作用も支持部材により妨げられない。
【0047】
支持部材(10)は、図1に示すように、無端ベルト(3)の長さ方向において、一の軸体の大径部(10a)が隣り合う他の軸体の小径部(10b)と並んで配置されている。
これにより、隣り合う軸体の隙間を小さくして無端ベルト(3)の支持力を高めることができ、脱水機能を維持しながら無端ベルト(3)の撓み防止効果を高めることができる。
【0048】
水受け容器(6)は、無端ベルト(3)の長さ方向に複数個(図示例では3個)が隙間無く並べられて配置されている。これら複数個の水受け容器(6)は、別体に形成されていても一体に形成されていてもよい。
水受け容器(6)は、夫々側面(後述する他方側の側面)に、吸引手段が接続される吸引口(61)を備えている。
このように、水受け容器(6)が複数個並べて配置されて、複数個の水受け容器(6)の夫々に吸引手段と接続される吸引口(61)が設けられていることから、個々の水受け容器(6)の容量を小さくすることができ、吸引手段により夫々の水受け容器(6)を充分に減圧状態とすることが可能となる。これにより、無端ベルト(3)の長さ方向の略全長に亘って脱水を確実に行わせることができ、高い脱水能力が得られる。
水受け容器(6)の数は、無端ベルト(3)の長さや吸引手段の能力に応じて適宜変更することができる。
【0049】
吸引手段としては真空ポンプ等の公知の吸引装置を使用することができ、吸引装置と吸引口(61)は吸引ホースによりフィルタ等を介して接続される。
吸引装置を駆動することにより、水受け容器(6)内を真空引きして減圧する。これにより、上方ベルト(31)上に載って移送されている湿潤粉体の水分は上方ベルトの網目から水受け容器(6)内へと吸い出される。その結果、湿潤粉体の含水率が大幅に減少し(10%以下に減少)、脱水後の乾燥工程を省略することが可能となる。また、水受け容器(6)内に溜まった水は空気と一緒に吸引口(61)から吸い出されて、後述する洗浄水等として再利用に供される。
【0050】
更に、本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置は、無端ベルト(3)に対して洗浄水(W1)を噴射する第1ノズル(11)を備えている。
第1ノズル(11)は、図4(b)に示すように、無端ベルト(3)の幅方向に沿って複数個(図示例では3個)設けられており、下方ベルト(32)に対して上方から洗浄水を噴射する。これにより、無端ベルト(3)の網目に詰まった異物を洗浄水により除去することができ、優れた脱水機能を長期間に亘って維持することが可能となる。
【0051】
下方ベルト(32)は、図2に示すように、長さ方向の一部において下方に下がっている下方延出部(32a)を有している。この下方延出部(32a)は、スプロケット(41)及びスプロケット(51)より下方に配置されたスプロケット(44)の下方にチェーン(7)を掛け渡すことにより形成されている。また、スプロケット(44)より始端側に配置されたスプロケット(43)は、下方延出部(32a)の始端側が下方に弛まないように押さえる役割を果たしている。
第1ノズル(11)は、下方延出部(32a)において下方ベルト(32)の上方から洗浄水(W1)を噴射する。(図2及び図4(b)参照)
これにより、第1ノズル(11)から下方ベルト(32)までの距離を確保することができ、少数の第1ノズル(11)で広範囲に亘って洗浄することが可能となる。
【0052】
第1ノズル(11)の後方且つやや下方位置には、図4(b)に示すように、無端ベルト(2)に対してエア(A)を噴射するエアノズル(12)が備えられている。尚、図2,4(b)において、第1ノズル(11)への洗浄水供給管に符号(11a)を付し、エアノズル(12)へのエア供給管に符号(12a)を付している。
エアノズル(12)は、図4(b)に示すように、無端ベルト(3)の幅方向に沿って複数個(図示例では11個)設けられており、下方延出部(32a)の下方ベルト(32)に対して上方からエア(A)を噴射する。
これにより、第1ノズル(11)からの洗浄水(W1)の噴射とエアノズル(12)からのエア(A)の噴射を併用することができ、無端ベルト(3)の網目に詰まった異物をより確実に除去することが可能となる。
【0053】
水受け容器(6)は、図4(a)に示すように、底面が無端ベルト(3)の幅方向の一方側(図4(a)左側)から他方側(図4(a)右側)に向けて下がるように傾斜しており、吸引口(61)は他方側の側面に設けられている。
これにより、水受け容器(6)に溜まった水を傾斜に沿わせて吸引口(61)へと導くことができる。そのため、吸引口(61)から水を効率良く回収することができ、洗浄水のリサイクルが容易となる。
【0054】
水受け容器(6)の一方側の側面には、図4(a)に示すように、水受け容器(6)の一方側から他方側に向けて且つ底面の方向に傾斜して水(W2)を噴射する第2ノズル(13)が設けられている。尚、図4(a)において、第2ノズル(13)への洗浄水供給管に符号(13a)を付している。
これにより、上方ベルト(31)を通過して水受け容器(6)の底部に溜まった泥等の異物を水と一緒に傾斜に沿って流下させて吸引口(61)から外部へと排出することができる。
【0055】
水受け容器(6)は、底面の幅が一方側から他方側に向けて狭くなるように形成されている(図1の無端ベルト(3)を幅方向に横切る破線参照)。
これにより、他方側に設けられた吸引口(61)を大きくすることなく、水受け容器(6)に溜まった水を吸引口(61)へと効率良く導くことができる。
【0056】
無端ベルト(3)の幅方向両側の上方には、無端ベルト(3)の長さ方向に沿って延びる側壁プレート(14)が設けられている。
側壁プレート(14)は金属板からなり、上方ベルト(31)に沿って設けられている。側壁プレート(14)は装置本体に固定されており、無端ベルト(3)と一緒に回転することはない。
側壁プレート(14)は、下方部が上方ベルト(31)の上面との間に僅かに隙間をあけて且つ当該上面に対して略垂直に設けられ、上方部は上に向かうにつれて外側に拡がるように形成されている。
このような側壁プレート(14)を設けることにより、上方ベルト(31)上から湿潤粉体がオーバーフローすることが防がれる。また、上方ベルト(31)の上面との間に隙間があることで、上方ベルト(31)に傷が付くことも防がれる。
【0057】
無端ベルト(3)の幅方向両側であって側壁プレート(14)の外側には、無端ベルト(3)の長さ方向に沿って延びるゴムフランジ(15)が設けられている。
ゴムフランジ(15)はネオプレンゴム等の合成ゴム又は天然ゴムからなり、上方ベルト(31)及び下方ベルト(32)に沿って設けられている。ゴムフランジ(15)は、無端ベルト(3)の幅方向両端部に沿って一周するように設けられた帯状カバー(16)の上部に立設固定され、無端ベルト(3)と一緒に回転する。
ゴムフランジ(15)は、側壁プレート(14)と上方ベルト(31)上面の間に形成された高さ方向の隙間を幅方向外側からカバーしている。
これにより、湿潤粉体に含まれる水分が、側壁プレート(14)と上方ベルト(31)上面の間に形成された隙間を通過したとしても、無端ベルト(3)の側方に漏れ出すことを防ぐことができる。
【0058】
ゴムフランジ(15)は、図1に示すように、平面視形状(横断面形状)が波形に形成されている。
これにより、ゴムフランジ(15)の剛性を向上させることができるとともに、側方から強い圧力が加わった場合には波形の変形により吸収することができる。
【0059】
チェーン(7)には、図5に示すように、アタッチメント(17)を任意のチェーンピッチ毎(図5では1ピッチおき)に取り付けることができる。尚、図5において、説明の理解を容易にするために、上方にチェーン(7)の平面図を示している。
アタッチメント(17)は縦断面L字状の部材であって、垂直部分がチェーン(7)の側面(内側面)に固定され、水平部分がスペーサ(18)を介して帯状カバー(16)の下面に固定されている。
スペーサ(18)は、チェーン中心(7a)と無端ベルト(3)(図5では上方ベルト(31)のみ示されている)の高さ位置を合致させるために設けられている。
【実施例】
【0060】
図1〜図5に示した本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置を使用して、粒径0〜10mmの砂(含水率50%)を処理した。
無端ベルト(3)としては、幅1085.2mm、長さ3000mm、網目の目開きが0.4mmのSUS製金網(線径0.35mm)を使用し、搬送速度は20m/minとした。
処理後の砂について含水率を測定した結果、含水率は10%であった。これは、更なる乾燥工程を経ることなく出荷することが可能なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る湿潤粉体移送脱水装置は、湿式分級後や洗浄後の砂を移送・脱水するために好適に利用されるが、処理対象物は砂には限定されず、廃棄物(汚泥、生ごみ等)や食品(米、野菜、加工食品等)などの様々な種類の湿潤粉体に対して幅広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 移送手段
2 脱水手段
3 無端ベルト
31 上方ベルト
32 下方ベルト
32a 下方延出部
4 始端側回転体
41 スプロケット
5 終端側回転体
51 スプロケット
6 水受け容器
61 吸引口
7 チェーン
10 支持部材
10a 大径部
10b 小径部
11 第1ノズル
12 エアノズル
13 第2ノズル
14 側壁プレート
15 ゴムフランジ
A エア
W1 洗浄水(第1ノズル)
W2 洗浄水(第2ノズル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤粉体を移送する移送手段と、前記移送手段により移送されている湿潤粉体の水分を除去する脱水手段とを備えており、
前記移送手段は、網状の無端ベルトを始端側回転体及び終端側回転体に掛け渡して形成されたコンベアからなり、
前記脱水手段は、前記無端ベルトの上方ベルトと下方ベルトとの間に配設されて前記上方ベルトの網目を通過して落下した水を収容する水受け容器と、前記水受け容器内を減圧する吸引手段とを備えている
ことを特徴とする湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項2】
前記コンベアは、前記無端ベルトの上方ベルトの下面を支持する支持部材を備えており、
前記支持部材は、前記無端ベルトの幅方向に延びるとともに前記無端ベルトの長さ方向に所定間隔をあけて配置された複数本の軸体からなり、
前記軸体は長さ方向に大径部と小径部とを交互に有しており、前記大径部の表面が前記上方ベルトの下面に対して回転可能に当接している
ことを特徴とする請求項1記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項3】
前記無端ベルトの長さ方向において、一の軸体の大径部が隣り合う他の軸体の小径部と並んで配置されていることを特徴とする請求項2記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項4】
前記大径部がベアリングローラからなり、
前記ベアリングローラは、表面が弾性素材からなることを特徴とする請求項2又は3記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項5】
前記無端ベルトが金網からなり、
前記始端側回転体及び前記終端側回転体の両端部にはスプロケットが取り付けられており、前記スプロケットにはチェーンが掛け渡されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項6】
前記始端側回転体及び前記終端側回転体は、表面に弾性素材がライニングされていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項7】
前記水受け容器は、前記無端ベルトの長さ方向に複数個並べて配置されており、
前記複数個の水受け容器の夫々に前記吸引手段と接続される吸引口が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項8】
前記無端ベルトに対して洗浄水を噴射する第1ノズルを備えていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項9】
前記無端ベルトの下方ベルトが、長さ方向の一部において下方に下がっている下方延出部を有しており、
前記第1ノズルが、前記下方延出部において、前記下方ベルトの上方から洗浄水を噴射することを特徴とする請求項8記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項10】
前記水受け容器は、底面が前記無端ベルトの幅方向の一方側から他方側に向けて下がるように傾斜しており、前記吸引口が前記他方側に設けられていることを特徴とする請求項7乃至9いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項11】
前記水受け容器は、底面の幅が前記一方側から前記他方側に向けて狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項10記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項12】
前記水受け容器の前記一方側の側面に、前記水受け容器の前記一方側から前記他方側に向けて且つ前記底面の方向に傾斜して水を噴射する第2ノズルを備えていることを特徴とする請求項10又は11記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項13】
前記無端ベルトに対してエアを噴射するエアノズルを備えていることを特徴とする請求項8又は9記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項14】
前記無端ベルトの幅方向両側に立設され且つ長さ方向に沿って延び、前記無端ベルトと共に回転するゴムフランジを備えていることを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の湿潤粉体移送脱水装置。
【請求項15】
前記ゴムプレートは、横断面形状が波形に形成されていることを特徴とする請求項14記載の湿潤粉体移送脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−177633(P2011−177633A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43439(P2010−43439)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【特許番号】特許第4646338号(P4646338)
【特許公報発行日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(591079650)有限会社大東土木 (12)
【Fターム(参考)】