説明

湿熱処理うるち米粉を含むバッター組成物及びこれを使用したフライ食品

【課題】サクサク、カリッとした歯切れの良い食感のフライ食品の衣を得ることが出来るバッター組成物及びこれを使用したフライ食品を提供すること。
【解決手段】品温80℃以上110℃以下で10分間以上40分間以下湿り蒸気で湿熱処理したうるち米粉をバッター組成物中に1質量%以上70質量%以下含むバッター組成物である。さらに好ましい配合量は、5質量%以上50質量%以下である。このバッター組成物には、従来のフライ用バッターに使用されている副資材を併用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿熱処理うるち米粉を含むバッター組成物及びこれを使用したフライ食品に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらや唐揚げといったフライ食品は、具材に小麦粉や澱粉などの穀粉を主原料とする粉末に加水して得られるバッター液を付着させ高温の油で熱することにより得られる食品である。
これらのフライ食品は、モチモチよりもサクサク、カリッといった歯切れの良い食感が良いとされている。
例えば、油ちょう直後の食感がクリスピーでサクサク感があり、この食感の経時的変化
が少ないいフライ用衣材として、80〜115℃で焙焼又は焙煎処理した小麦粉及び115〜140℃で焙焼又は焙煎処理した小麦粉を含むことを特徴とするフライ用衣材が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、天ぷらの品質改良のため、天ぷらの衣原料に米粉を使用することが行われている。
例えば、米粉を配合した天ぷら用衣原料として、薄力小麦粉60〜80重量%、トウモロコシ澱粉10〜30重量%、米粉2〜4重量%、トウモロコシ粉2〜7重量%を少なくとも含み、該トウモロコシ澱粉中の1〜5重量%がアルファ化澱粉であることを特徴とする天ぷら用小麦粉配合物が知られている(例えば特許文献2参照)。
また、米粉を単に配合するのではなく、特定の性質を有する米粉を使用した例として、米粒又は米粉に、圧縮力、衝撃力、摩擦力及び剪断力から選ばれる少なくとも1種を加えることによって製造され、膨潤度が4.5以上で、アミログラフ糊化最高粘度が500BU以下とされた改質米粉を含有する天ぷら衣用ミックス粉が知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−65159号公報
【特許文献2】特開平6−269255号公報
【特許文献3】特開2010−104246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フライ食品の衣は、一般にモチモチした食感よりもサクサク、カリッとした歯切れの良い食感が良いとされている。
米粉を単に配合したバッター組成物を使用し衣を得た場合、一般的に、モチモチしたヒキのある食感となる傾向があり、サクサク感に乏しいことからフライ食品の衣の食感としては好ましくない。
本発明の目的は、サクサク、カリッとした歯切れの良い食感のフライ食品の衣を得ることが出来るバッター組成物及びこれを使用したフライ食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、使用する米粉を特定の条件で湿熱処理し特定量バッター組成物に配合することでカリッとした歯切れの良い食感のフライ食品の衣を得ることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、品温80℃以上110℃以下で10分間以上40分間以下湿り蒸気で湿熱処理したうるち米粉をバッター組成物中に1質量%以上70質量%以下含むバッター組成物である。
さらに好ましい配合量は、5質量%以上50質量%以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の天ぷら用バッター組成物を使用することでサクサク、カリッとした好ましい食感のフライ食品の衣が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、フライ食品とは、天ぷら、唐揚げ、コロッケ、フライドチキンなど、フライして得られる食品をいい、これらは具材にバッター生地を付着させフライすることを特徴とする。
本発明のバッター組成物は、このバッター生地を調製するための組成物であり、水などを加えてバッター生地を得ることができる。
本発明のバッター組成物には、品温80℃以上110℃以下で10分間以上40分間以下湿り蒸気で湿熱処理した、うるち米粉をバッター組成物中に1質量%以上70質量%配合する。
さらに好ましい配合量は、5質量%以上50質量%以下である。
なお、本発明のバッター組成物のうち、前記湿熱処理したうるち米粉以外の原料は小麦粉であり、強力小麦粉、中力小麦粉、薄力小麦粉などが使用できる。
サクサクとした食感を得るには薄力小麦粉(薄力粉)の使用が好ましい。
【0008】
本発明で使用する、うるち米粉は、うるち米を胴搗き製粉、ロール製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等で製粉することで得ることができ製粉方法は特に限定されない。
原料として使用できる、うるち米としてアミロース含量が18〜22%である「あきたこまち」や「コシヒカリ」などの普通品種やアミロース含量が23%以上である「越のかおり」や「モミロマン」などの高アミロース米を挙げることができる。
これらは、うるち米粉、上用粉などの銘柄で市販されている。
うるち米粉を湿熱処理する方法は、湿り蒸気を使用して高湿度雰囲気下で、例えば湿度70%以上の雰囲気で、うるち米を品温80℃以上110℃以下に加熱処理できれば特に限定はなく、蒸篭、オートクレープ、スチームオーブンなどが使用できる。
品温は80℃未満でも110℃を超えても衣がヒキのある食感となり好ましくない。
湿熱処理する時間は10分間未満でも40分間を超えても衣がヒキのある食感となり好ましくない。
湿熱処理する品温と時間は、この範囲を外れると、例えば、低温長時間でも高温短時間でも本発明の効果を得ることができないため湿熱処理する品温と加熱時間のバランスが重要である。
【0009】
バッター組成物中に配合する湿熱処理したうるち米粉の配合量は1質量%以上70質量%以下である。
好ましくは、5質量%以上50質量%以下である。
湿熱処理したうるち米粉の配合量が、1質量%といった少量配合の場合は配合量の影響が大きく、湿熱処理したうるち米粉の配合量が50質量%以上になってくると配合量の差異が食感に与える影響は小さくなる。
米粉の配合量が、1質量%未満では、本発明の効果を得ることができず、米粉の配合量が70質量%を超える場合は、衣がモチモチとしたヒキのある食感となってしまう。
【0010】
本発明のバッター組成物には、従来のフライ用バッターに使用されている副資材を併用することができ、副資材として、穀粉類(小麦粉及び湿熱処理したうるち米粉を除く)、澱粉類、デキストリン、植物性蛋白質、乳化剤、卵粉、増粘多糖類、膨張剤、食物繊維、油脂類、塩、糖類、調味料、香辛料、着色料、香料、ビタミン類、ミネラル類などを挙げることができる。
あらかじめ本発明のバッター組成物に、これらの副資材を混合しバッターミックス粉とすることもできる。
【0011】
本発明のバッター組成物の調製方法は、各資材が均一に混合できれば特に限定はなく、リボンミキサー、V型ミキサー、ロータリーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機を使用することが出来る。
本発明のバッター組成物を使用したフライ食品の製造方法は、従来公知のバッターを使用した方法と同じでよく、特別な操作は不要であり、打粉やブレッダーを使用することも出来る。
また、使用できる具材も従来公知のフライ食品に使用されている具材が使用できる。
【実施例】
【0012】
以下本発明を具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
[試験例1〜13]
加熱水蒸気がうるち米粉全体にまんべんなく当たるように、米粉をバットの上に厚さ1cmに広げ、スチームオーブン(ラショナル社製)内で、常圧下、表1に示す品温及び処理時間で湿熱処理し、試験例1〜13の湿熱処理うるち米粉を得た。
この湿熱処理米粉75質量部と薄力粉25質量部を混合し、バッター組成物を得た。
このバッター組成物100gに対し冷水を80g加え、バッターを調製した。
25gにカットした鶏モモ肉に対肉25%量のバッターを付け、170℃の大豆菜種油中で4分間フライして唐揚げを得た。
フライ直後とフライして3時間後、下記の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
結果を表1に示す。
[評価基準]
5点 非常にサクサク、カリッとした食感で非常に良い
4点 サクサク、カリッとした食感で良い
3点 普通
2点 ヒキが有りモチモチした食感で悪い
1点 非常にヒキが有りモチモチした食感で非常に悪い
【0013】
【表1】

【0014】
[試験例14〜26]
試験例1において、湿熱処理米粉70質量部と薄力粉30質量部を混合し、バッター組成物を得た以外は試験例1と同様にして評価を行った。
結果を表2に示す。
【0015】
【表2】

【0016】
[試験例27〜39]
試験例1において、湿熱処理米粉50質量部と薄力粉50質量部を混合し、バッター組成物を得た以外は試験例1と同様にして評価を行った。
結果を表3に示す。
【0017】
【表3】

【0018】
[試験例40〜52]
試験例1において、湿熱処理米粉30質量部と薄力粉70質量部を混合し、バッター組成物を得た以外は試験例1と同様にして評価を行った。
結果を表4に示す。
【0019】
【表4】

【0020】
[試験例53〜65]
試験例1において、湿熱処理米粉5質量部と薄力粉95質量部を混合し、バッター組成物を得た以外は試験例1と同様にして評価を行った。
結果を表5に示す。
【0021】
【表5】

【0022】
[試験例66〜78]
試験例1において、湿熱処理米粉4質量部と薄力粉96質量部を混合し、バッター組成物を得た以外は試験例1と同様にして評価を行った。
結果を表6に示す。
【0023】
【表6】

【0024】
[試験例79〜91]
試験例1において、湿熱処理米粉1質量部と薄力粉99質量部を混合し、バッター組成物を得た以外は試験例1と同様にして評価を行った。
結果を表7に示す。
【0025】
【表7】

【0026】
[試験例92〜104]
試験例1において、湿熱処理米粉0.9質量部と薄力粉99.1質量部を混合し、バッター組成物を得た以外は試験例1と同様にして評価を行った。
結果を表8に示す。
【0027】
【表8】

【0028】
以上の結果によれば、湿熱処理が高温短時間又は低温長時間でも本発明の品温と時間の範囲を外れた場合は十分な効果を得ることができなかった。
また、湿熱処理したうるち米粉の配合量が、1質量%未満の場合や70質量%を超えた場合には劣った食感となった。
【0029】
[実施例1]
試験例17で得られたバッター組成物に塩0.5質量部、膨張剤を1.0質量部加えよく混合してバッターミックス粉を得た。
このバッターミックス100gに対し冷水を80g加え、バッターを調製した。
25gにカットした鶏モモ肉に対肉25%量のバッターを付け、170℃の大豆菜種油中で4分間フライして唐揚げを得た。
これを試験例1と同様にして評価を行った。
フライ直後の評価は4.7点、3時間後の評価は4.5点と、いずれもサクサク、カリッとして良好な評価であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
品温80℃以上110℃以下で10分間以上40分間以下湿り蒸気で湿熱処理したうるち米粉をバッター組成物中に1質量%以上70質量%以下含むバッター組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のバッター組成物を使用したフライ食品。