説明

湿紙の脱水装置及び古紙再生処理装置

【課題】湿紙を脱水するための吸水ベルトを傷めにくく、吸水ベルトの耐久性を高めることの可能な湿紙の脱水装置、及び前記湿紙の脱水装置を備えた古紙再生処理装置の提供を目的とする。
【解決手段】張力調整装置34は、吸水ベルト31を掛け渡す複数のローラ32a,32b,32cのうちの少なくとも1つのローラ32cを、移動手段36により移動可能に構成するとともに、移動手段36が、移動可能なローラ32cの回転軸66を回転自在に軸支する可動ローラ軸支部材47と、可動ローラ軸支部材47に一端側が係止された引張バネ46と、引張バネ46の他端側を係止する係止部材44と、係止部材44を所定位置に移動させる張力調整用駆動部42とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿紙の脱水装置及び古紙再生処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙原料としてのパルプ懸濁液を抄紙し得られた湿紙を脱水する湿紙の脱水装置が知られており、下記特許文献1には、湿紙を搬送するため循環走行する吸水ベルトを備えた脱水装置について、吸水ベルトを巻きかけた複数のローラの少なくとも1つが、張力調整ローラとして形成されており、該張力調整ローラが、作動駆動装置によって調節可能に保持された技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−360166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の湿紙の脱水装置は、作動駆動装置を用いて張力調整ローラの設置位置を強制的に移動させ、吸水ベルトの張力を調整しているので、吸水ベルトを傷めやすい。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、湿紙を脱水するための吸水ベルトを傷めにくく、吸水ベルトの耐久性を高めることの可能な湿紙の脱水装置、及び前記湿紙の脱水装置を備えた古紙再生処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の湿紙の脱水装置は、湿潤状態にある湿紙を搬送する無端状の吸水ベルトと、吸水ベルトと他のベルトを挟持し、吸水ベルトと他のベルトを介して両ベルト間の湿紙を押圧して脱水する脱水ローラ対と、吸水ベルトの張力を調整する張力調整装置とを備えた湿紙の脱水装置であって、張力調整装置は、吸水ベルトを掛け渡す複数のローラのうちの少なくとも1つのローラを、移動手段により移動可能に構成するとともに、移動手段が、移動可能なローラの回転軸を回転自在に軸支する可動ローラ軸支部材と、可動ローラ軸支部材に一端側が係止された引張バネと、引張バネの他端側を係止する係止部材と、係止部材を所定位置に移動させる張力調整用駆動部とを備えたものである。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の湿紙の脱水装置において、張力調整用駆動部は、張力調整用モータと、張力調整用モータの駆動により回動されるねじ軸とを備え、係止部材に、ねじ軸が螺合するナット部を設けてなるものである。
【0008】
そして、請求項3に記載の発明は、湿潤状態にある湿紙を搬送する無端状の吸水ベルトと、吸水ベルトと他のベルトを挟持し、吸水ベルトと他のベルトを介して両ベルト間の湿紙を押圧して脱水する脱水ローラ対と、吸水ベルトの蛇行を補正する蛇行補正装置を備えた湿紙の脱水装置であって、蛇行補正装置は、吸水ベルトに外周面が転接する蛇行補正ローラと、蛇行補正ローラを、吸水ベルトの走行方向に直交する幅方向に対し傾斜させるローラ角度調整部とを備えた湿紙の脱水装置である。
【0009】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の湿紙の脱水装置において、ローラ角度調整部は、蛇行補正ローラを回転自在に軸支する左右一対の蛇行補正ローラ軸支部材と、左右の蛇行補正ローラ軸支部材のうちいずれか一方の蛇行補正ローラ軸支部材を他方の蛇行補正ローラ軸支部材に対し、吸水ベルトの走行方向に沿って移動させる蛇行補正用駆動部とを備えてなるものである。
【0010】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の張力調整装置と、請求項3または請求項4に記載の蛇行補正装置とを備えた湿紙の脱水装置である。
【0011】
更に、請求項6に記載の発明は、古紙を離解してパルプ懸濁液を製造する再生パルプ製造部と、再生パルプ製造部で製造されたパルプ懸濁液を抄紙し湿紙を形成する湿紙形成部と、
湿紙形成部で形成された湿紙を脱水する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の脱水装置と、湿紙の脱水装置で脱水された湿紙を乾燥し、再生紙を製造する乾燥部とを備えた古紙再生処理装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の湿紙の脱水装置によれば、張力調整装置は、吸水ベルトを掛け渡す複数のローラのうちの少なくとも1つのローラを、移動手段により移動可能に構成するとともに、移動手段が、移動可能なローラの回転軸を回転自在に軸支する可動ローラ軸支部材と、可動ローラ軸支部材に一端側が係止された引張バネと、引張バネの他端側を係止する係止部材と、係止部材を所定位置に移動させる張力調整用駆動部とを備えたので、張力調整用駆動部を駆動し、係止部材及び引張バネを介して可動ローラ軸支部材を移動させることで移動可能なローラを移動し、吸水ベルトの張力を調整することができる。よって、張力調整用駆動部の駆動力を吸水ベルトに直接付与することなく、引張バネの付勢力を介して付与するので、吸水ベルトを傷めにくい。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、張力調整用駆動部は、張力調整用モータと、張力調整用モータの駆動により回動されるねじ軸とを備え、係止部材に、ねじ軸が螺合するナット部を設けてなるので、簡単な構造により容易に吸水ベルトの張力を調整可能である。
【0014】
そして、請求項3に記載の発明によれば、蛇行補正装置は、吸水ベルトに外周面が転接する蛇行補正ローラと、蛇行補正ローラを、吸水ベルトの走行方向に直交する幅方向に対し傾斜させるローラ角度調整部とを備えたので、ローラ角度調整部により蛇行補正ローラの角度を調整することで容易に吸水ベルトの蛇行を補正することができる。
【0015】
更に、請求項4に記載の発明によれば、ローラ角度調整部は、蛇行補正ローラを回転自在に軸支する左右一対の蛇行補正ローラ軸支部材と、左右の蛇行補正ローラ軸支部材のうちいずれか一方の蛇行補正ローラ軸支部材を他方の蛇行補正ローラ軸支部材に対し、吸水ベルトの走行方向に沿って移動させる蛇行補正用駆動部とを備えてなるので、吸水ベルトを傷めることなく容易に吸水ベルトの蛇行を補正することができる。
【0016】
更に、請求項5に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の張力調整装置と、請求項3または請求項4に記載の蛇行補正装置とを備えたので、張力調整装置により吸水ベルトの張力を調整しつつ、蛇行補正装置により吸水ベルトの蛇行を補正することができ、吸水ベルトに過大な力をかけることなく適正に走行させ、湿紙を脱水することができる。
【0017】
更に、請求項6に記載の発明によれば、古紙を離解してパルプ懸濁液を製造する再生パルプ製造部と、再生パルプ製造部で製造されたパルプ懸濁液を抄紙し湿紙を形成する湿紙形成部と、湿紙形成部で形成された湿紙を脱水する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の脱水装置と、湿紙の脱水装置で脱水された湿紙を乾燥し、再生紙を製造する乾燥部とを備えたので、湿紙形成部で形成された湿紙を湿紙の脱水装置により効率よく適正に脱水し、良質な再生紙を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る古紙再生処理装置の構成概略図である。
【図2】前記古紙再生処理装置の抄紙部の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】前記抄紙部の張力調整装置の構成を示す縦断面図である。
【図4】前記張力調整装置を右側方から見た図である。
【図5】前記張力調整装置の平面図である。
【図6】前記張力調整装置を前方から見た図である。
【図7】前記抄紙部の蛇行検出手段の斜視図である。
【図8】前記抄紙部の蛇行補正手段を左側から見た図である。
【図9】前記蛇行補正手段の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明にかかる古紙再生処理装置の概略構成図である。図1において、古紙再生処理装置100は、再生パルプ製造部1、脱墨部2、抄紙部3、仕上部4及び各部を制御する制御部8をケーシング(図示省略)内に備えてなる。
【0020】
尚、以下では、本発明の湿紙の脱水装置Dを、古紙6を原料として再生紙7を製造する古紙再生処理装置100の抄紙部3に用いた場合について記載するが、必ずしもこれに限定されず、木材等の他のパルプ原料を用いた製紙装置の抄紙部に用いても構わない。
【0021】
再生パルプ製造部1は、古紙10を離解してパルプ懸濁液を製造するものであり、脱墨部2は、再生パルプ製造部1において製造されたパルプ懸濁液を脱墨するものであり、抄紙部3は、脱墨部2において得られた脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙して湿紙を形成し、得られた湿紙を脱水し、乾燥するものであり、仕上部4は、抄紙部3において得られた仕上げ前の再生紙7を裁断等することにより仕上げを行って定型サイズの再生紙7を得るものである。制御部8は古紙再生処理装置100全体の動作を制御する。再生パルプ製造部1及び脱墨部2は、それぞれ公知の再生パルプ製造装置及び脱墨装置を利用可能である。
【0022】
図2は、抄紙部3を構成する抄紙装置Sの縦断面図である。尚、以下では、図2に示す抄紙装置Sの右側を「前側」、左側を「後側」、図2の紙面の手前を「右側」、紙面の奥側を「左側」として説明することとする。抄紙部3は、湿紙形成部11、脱水部14及び乾燥部15がケーシング41内に収容されてなる。湿紙形成部11は、ヘッドボックス12とワイヤー部13とを有する。ケーシング41内には、左右一対の側板37,38が配設されており、この側板37,38が各部を構成するほとんどのローラを、回動自在に軸支している。
【0023】
ヘッドボックス12は、脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に均一に供給するためのものであり、パルプ懸濁液を貯留する貯留部18と、貯留部18に貯留するパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に流出させる流出部19と、貯留部18の底部に形成されたパルプ懸濁液の流入部20とを有する。
【0024】
ワイヤー部13は、複数のローラ24に掛け渡され、展張された無端状の抄紙ワイヤー23を備えている。抄紙ワイヤー23の上側の往路軌道の下方には、パルプ懸濁液を水切りする複数の縦板26が、抄紙ワイヤー23の走行方向に所定間隔で配置されており、各縦板26は抄紙ワイヤー23の走行方向と交差する方向に向けて、且つ、抄紙ワイヤー23の下面に摺動接触させて配置されている。これにより、縦板26が抄紙ワイヤー23の網目から流下する白水を下方へと導くようになっている。
【0025】
また、縦板26の下方には、該縦板26より、または抄紙ワイヤー23の網目から直接流下する白水を受ける受水部27を設けている。受水部27は、下方に設置された白水タンク29に接続されている。白水タンク29は、内部に収容する白水を再生パルプ製造部1及び脱墨部2に送るための図示しない配管及びポンプを備え、受水部27において回収した白水を再利用可能に構成している。
【0026】
脱水部14は、湿紙の脱水装置Dにより構成され、該湿紙の脱水装置Dは、吸水ベルト31と、複数のローラ32a,32b,32cと、張力調整装置34と、蛇行補正装置35と、脱水ローラ対120と、給水部40とを備えている。吸水ベルト31は、湿潤状態にある湿紙を搬送するものであり、フェルト、毛布等の吸水性の素材により無端状に形成され、複数のローラ32a,32b,32cの間に掛け渡されてなる。吸水ベルト31は下方に配設された抄紙ワイヤー23及び上方に配設された乾燥部15の乾燥用ベルト16に所定箇所でそれぞれ当接しており、この当接部分において、順次湿紙を転移するようになっている。
【0027】
吸水ベルト31が掛け渡されたローラ32a,32b,32cのうち、前側に位置する上下2個のローラ32a、32bは左右の側板37,38に回転自在に軸支された固定式となっているが、後側に位置するローラ32cは、左右の側板37,38に形成された長孔39に案内され水平方向に移動可能な可動ローラ33となっている。可動ローラ33は、左右の側板37,38の外側にそれぞれ設けた張力調整装置34の移動手段36により、吸水ベルト31の張力の調整のため、設置位置が移動される。
【0028】
図3は右側の側板38の外側に設けた張力調整装置34の構成を示す縦断面図であり、図4は張力調整装置34を右側方から見た図、図5は張力調整装置34の平面図、図6は張力調整装置34を前方から見た図である。左側の側板37の外側に設けた張力調整装置34についても右側の側板38の外側に設けたものと同じ構成を有する。張力調整装置34は、可動ローラ33の移動手段36として構成され、移動手段36は、張力調整用駆動部42と、ねじ軸45と、係止部材44と、引張バネ46と、可動ローラ軸支部材47とを備えている。
【0029】
張力調整用駆動部42は、張力調整モータ49と、張力調整モータ49の駆動軸50に固設された駆動ギア51と、駆動ギア51に噛合する従動ギア52とを有する。ねじ軸45は、本実施形態では、台形ねじ43のねじ軸45として構成しているが、台形ねじ43に替えてボールねじとしても構わない。ねじ軸45は一端部が従動ギア52の回転中心に固設され、他端部がねじ軸軸支部材56に設けた軸受57によって回動自在に軸支されている。ねじ軸軸支部材56は、右側の側板38に固設されてなる。更に、ねじ軸45は、支持部材59に摺接支持されており、この支持部材58は、従動ギア52jの前方位置で該従動ギア52に対向配置され、右側の側板38に固設されてなる。これにより、ねじ軸54は、従動ギア52の正逆双方向の回動に伴って回動する。
【0030】
係止部材44は、可動ローラ33と張力調整モータ49との間に位置し、前後方向に貫通してねじ軸45が螺合するナット部60を設けており、ねじ軸45の回動に伴って係止部材44は前後方向に水平移動する。図5、6に示すように、係止部材44の下部外側に案内孔61が貫通して形成され、ガイドロッド62が挿通されている。
【0031】
図3,4に示すように、引張バネ46は、上下に2個並設され、各引張バネ46は、一端側が可動ローラ軸支部材47に、他端側が係止部材44にそれぞれ係止され、前後方向に水平配置されている。そして、引張バネ46はねじ軸軸支部材56の軸受57の上下に形成された貫通孔64に挿通されている。
【0032】
可動ローラ軸支部材47は、可動ローラ33の回転軸66を回転自在に軸支している。この可動ローラ33の回転軸66は長孔39に挿通され、左右の側板37,38の外方に突出している。可動ローラ軸支部材47は、係止部材44の進退に伴い、引張バネ46に引っ張られ水平方向に移動する。
【0033】
更に、張力調整装置34は、最大張力検出センサ68、弛み検出センサ69、張力解除センサ70の3個のセンサを有している。いずれのセンサもコ字状のフォトインタラプタを用いている。
【0034】
最大張力検出センサ68は、最大張力規制用のリミッターであり、係止部材44の上方位置で、側板38に固設されている。最大張力検出センサ68は、吸水ベルト31に最大の張力が掛かり、可動ローラ33及び係止部材44が最も後方位置となった時点において、係止部材44の真上に位置合わせされている。一方、係止部材44の上面に、第1遮光板72が立設されている。第1遮光板72は、係止部材44が最も後方位置に達した際、最大張力検出センサ68を遮光するようになっている。
【0035】
弛み検出センサ69は、係止部材44の外方に設けられ、係止部材44の上面に一端部が固定された支持板74の垂下部74a(図4,6参照)の内側に設置されている。一方、係止部材44及び可動ローラ軸支部材47の側面には、両者の間にスライド自在に架設された架設部材75を設けている。この架設部材75の後端部近傍に、弛み検出センサ69の検出用の第2遮光板76が設置されている。該第2遮光板76は、弛み検出センサ69側に向けて突出して設置され、第2遮光板76が弛み検出センサ69を遮光することで、吸水ベルト31の張力が弛んでいることを検出する。
【0036】
図4に示すように、架設部材75は、前端部が可動ローラ軸支部材47に螺子77により固定され、後端部が係止部材44にピン79により接合されている。ピン79は、架設部材75の後端部に形成された水平方向に長い長孔78に挿通されており、係止部材44と可動ローラ軸支部材47との間の距離が変動した際、長孔78内をピン79が移動するようになっている。
【0037】
張力解除センサ70は、最大張力検出センサ68の略真下位置となる右側の側板38に固設されている。また、第3遮光板81が、係止部材44の下部に垂設されている。第3遮光板81は、前後方向に長く形成され、第3遮光板81が張力解除センサ70を遮光している間は、吸水ベルト31に張力が付与されている状態であり、一方、第3遮光板81の後端81aが張力解除センサ70を外れ、張力解除センサ70が通光となることで、吸水ベルト31に掛かっていた張力を解除したことを検出する。
【0038】
図2に示す蛇行補正装置35は、吸水ベルト31の蛇行を補正するためのものであり、蛇行検出手段84と、蛇行補正手段85とを備えている。蛇行検出手段84は、吸水ベルト31の右方への位置ずれ、及び左方への位置ずれをそれぞれ検知するため、左右の側板37,38に設けられている。
【0039】
図7は右側の側板38に設けられた蛇行検出手段84の斜視図である。図7に示す右側の蛇行検出手段84は、吸水ベルト31の右方への位置ずれを検出する。吸水ベルト31の左方への位置ずれを検出するため左側の側板37に設けられた蛇行検出手段84についても右側の蛇行検出手段84と同様の構成を有する。図2に示すように、蛇行検出手段84は、周回走行する吸水ベルト31の内方に設置されている。
【0040】
図7に示すように、蛇行検出手段84は、揺動軸87cを軸心に揺動する揺動部材87を備えている。揺動部材87は鉛直方向に伸びる当接部87aと、水平方向に延び、右側の側板38に形成された窓部88より外方に突出する突出部87bとにより、後側から見てL字状に形成され、当接部87aと突出部87bの連結部に揺動軸87cが形成される。
【0041】
下側を走行する吸水ベルト31の右端縁が右方へ位置ずれした際、まず、この吸水ベルト31の右端縁が当接部87aの下部に当接し、次に、当接部87aの下部を更に右方へと押し出そうとする。この結果、図7において矢印で示すように、当接部87aが揺動軸87cを軸心に上方に揺動し、水平姿勢であった突出部87bが上方へ揺動し、突出部87bの先端が上向きに移動する。
【0042】
右側の側板38には、外方に向けて支持板86が突設されており、該支持板86に、上下一対のセンサが固設されている。上下のセンサは、突出部87bの先端の上下の揺動範囲に位置あわせして設けられている。下側のセンサは、位置ずれを検知する蛇行検出センサ89であり、上側のセンサが緊急停止用センサ90となっている。吸水ベルト31の位置が正常位置にあり、ずれておらず当接部87aに吸水ベルト31の端縁が接触していない場合には、突出部87bの先端により下側の蛇行検出センサ89は遮光となる。そして、吸水ベルト31の位置が右側にずれた場合、突出部87bの先端部が上向きに移動して下側の蛇行検出センサ89は通光となる。上側の緊急停止用センサ90は、大幅な位置ずれが合った場合にのみ突出部87bの先端により遮光となるが、通常は通光となっている。
【0043】
図8は、蛇行補正手段85を左側から見た図、図9は蛇行補正手段85の斜視図である。蛇行補正手段85は、蛇行補正ローラ92と、ローラ角度調整部96とを備える。蛇行補正ローラ92は、図2に示すように、周回する吸水ベルト31の内方に設置され、上側を走行する吸水ベルト31の下面に蛇行補正ローラ92の外周面が転接するようになっている。
【0044】
図9に示すローラ角度調整部96は、吸水ベルト31の走行方向に直交する幅方向に対し蛇行補正ローラ92を傾斜させるためのものであり、左右一対の蛇行補正ローラ軸支部材103a,103bと、左側の蛇行補正ローラ軸支部材103aを右側の蛇行補正ローラ軸支部材103bに対し、吸水ベルトの走行方向に沿って移動させる蛇行補正用駆動部95とを有する。
【0045】
蛇行補正ローラ軸支部材103a,103bは、蛇行補正ローラ92を回転自在に軸支するものであり、本実施形態では蛇行補正ローラ92を搭載するローラ支持台車93の左右一対の側板部材97a,97bとして形成している。ローラ支持台車93は、側板部材97a,99bと、底板部材98と、回転輪99と、カバー101とからなる。側板部材97は、抄紙装置Sの左右の側板37,38の窓部91形成位置で蛇行補正ローラ92の回転軸92aを軸支する。底板部材98は、両側板部材97a,97bの下部を連結する。回転輪99は、底板部材98の左右端縁にそれぞれ2個ずつ設けてある。カバー101は回転輪99を案内する。
【0046】
蛇行補正用駆動部95は、基台94と、蛇行補正モータ107と、駆動ギア109と、従動ギア110と、クランクアーム114とを備えている。基台94は、左右の側板37,38の間に架設され、基台94の左右端縁がそれぞれ左右の側板37,38に固定されている。基台94上を、ローラ支持台車93の回転輪99がカバー101に案内されつつ回転して移動する。図9に示すように、基台94とローラ支持台車93の底板部材98とは、幅方向中央部において中央ピン102により接合されている。底板部材98には、中央ピン102による接合位置と、底板部材98の左右端縁との中間位置に吸水ベルト31の走行方向に長い長孔104が形成されており、この長孔104に、側方ピン106が挿通されている。
【0047】
これにより、ローラ支持台車93は、中央ピン102の接合位置を回転中心として基台94に対して回動可能となっており、このローラ支持台車93の回動可能な範囲は、長孔104内を側方ピン106が移動できる範囲に相当する。このローラ支持台車93の回動により、蛇行補正ローラ92は、幅方向中央部を回転中心として回動することとなる。このようにして、蛇行補正ローラ92を、吸水ベルト31の走行方向に直交する幅方向に対し傾斜させる。
【0048】
蛇行補正モータ107、駆動ギア109、従動ギア110及びクランクアーム114は、いずれも左側の側板37の外方に設けられている。蛇行補正モータ107の回転軸107aには、駆動ギア109が固設されており、駆動ギア109には従動ギア110が噛合している。また、従動ギア110の円盤面110aの外周部近傍の一箇所には、クランクアーム114の後端部がクランクピン113によりピン接合されている。そして、クランクアーム114の前端部は、ローラ支持台車93の左側の側板部材97aの上部にピン115により接合されている。
【0049】
また、蛇行補正装置35には、従動ギア110の前方で上下に所定量離間して左側の側板37に固設された後端位置検出センサ116及び前端位置検出センサ117を設けている。両センサ116、117は、ローラ支持台車93が基台94上を、中央ピン102を回転中心として回動し、左側の側板部材97aが前後に移動した際の最前位置及び最後位置を検出するためのものであり、いずれのセンサ116,117も発光素子と受光素子からなるコ字状のフォトイタンラプタにより構成される。
【0050】
一方、従動ギア110には、左側の側板37との間に第4遮光板119が固設され、従動ギア110の回動とともに回動するようになっている。第4遮光板119は、外周部に二箇所の切欠き119a、119bが形成されている。
【0051】
左側の側板部材97aが最前位置にあるとき、下側の前端位置検出センサ117の設置位置に切欠き119aが位置するため、前端位置検出センサ117は通光となり、上側の後端位置検出センサ116は第4遮光板119の円盤面により遮光となる。この左側の側板部材97aが最前位置にある状態より、蛇行補正モータ107が駆動して従動ギア110が時計回りWに回転すると、第4遮光板119も同じく時計回りWに回転し、双方のセンサ116、117が円盤面に遮光されることとなる。
【0052】
左側の側板部材97aが前後移動可能範囲の中央位置にくると、図8に示す状態となり、後端位置検出センサ116に切欠き119aが、前端位置検出センサ117に切欠き119bがそれぞれ位置し、両センサ116,117とも通光となる。更に、蛇行補正モータ107を駆動し従動ギア110を更に時計回りWに回転し、従動ギア110を同じく時計回りWに回転すると、第4遮光板119が時計回りWに回転すると、双方のセンサ116、117がともに遮光となった後、左側の側板部材97aが最後位置に来たところで、後端位置検出センサ116に切欠き119bが位置し通光となり、前端位置検出センサ117は第4遮光板119の円盤面により遮光となる。
【0053】
図2に示すように、脱水ローラ対120は、吸水ベルト31と乾燥用ベルト16との当接箇所に設置されている。脱水ローラ対120は吸水ベルト31と乾燥用ベルト16を表裏方向に挟持し、両ベルト間の湿紙を押圧して脱水しつつ、湿紙を吸水ベルト31から乾燥用ベルト16に転移させるものである。脱水ローラ対120は吸水ベルト31の内方に設置された第1脱水ローラ121と、乾燥用ベルト16の内方であって、第1脱水ローラ121の対向位置に設置された第2脱水ローラ122とからなる。
【0054】
第2脱水ローラ122は図示しない駆動部に連結され、駆動部の駆動により、第2脱水ローラ122が回転駆動される。第2脱水ローラ122の回転によって、吸水ベルト31及び乾燥用ベルト16を走行させるとともに、第2脱水ローラ122に両ベルト31、16を介して所定圧力で転接する第1脱水ローラ121を従動回転させる。
【0055】
給水部40は、吸水ベルト31に水道水等の水分を供給するためのものである。吸水ベルト31が乾燥した状態にあるとき、この給水部40より吸水ベルト31に水分を供給して吸水ベルト31を膨張させ、更に、吸水ベルト31の張力を調整しておくため設けてある。
【0056】
乾燥部15は、乾燥用ベルト16と、挟持用ベルト127と、乾燥用ローラ125と、複数のローラ124とを備えている。乾燥用ベルト16は、乾燥用ローラ125及び複数のローラ124の間に掛け渡されている。挟持用ベルト127は、乾燥用ローラ125に巻回されてなる範囲を含む所定箇所で、乾燥用ベルト16との間で湿紙を挟持して走行する。乾燥用ベルト16及び挟持用ベルトの材質は特に限定されず、例えば、布、耐熱樹脂または金属等とする。
【0057】
また、乾燥部15は、乾燥用ベルト16の蛇行を補正する乾燥ベルト用蛇行補正装置17、及び挟持用ベルト127の蛇行を補正するための挟持ベルト用蛇行補正装置128を備えている。乾燥ベルト用蛇行補正装置17と挟持ベルト用蛇行補正装置128とはいずれも脱水部14に設けた蛇行補正装置35と同様の構成を有し、各々乾燥ベルト用蛇行検出手段17a及び乾燥ベルト用蛇行補正手段17b、挟持ベルト用蛇行検出手段128a及び挟持ベルト用蛇行補正手段128bを設けている。
【0058】
乾燥用ローラ125は、内部にヒータ(図示省略)を備えるとともに、乾燥用ローラ125の表面の温度を測定する温度センサ(図示省略)を有している。
【0059】
(仕上部)
図1に示す仕上部4は、紙の平坦度を上げるための複数のプレスローラ(図示省略)と、紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)とを備えている。
【0060】
(作用)
本実施形態にかかる製紙装置100の作用につき以下に説明する。まず、再生パルプ製造部1において所定量の古紙10を所定量の水とともに所定時間攪拌することで、パルプ懸濁液を製造する。次に、得られたパルプ懸濁液を脱墨部2へ送り、脱墨処理を行って、脱墨後のパルプ懸濁液を得る。脱墨後のパルプ懸濁液に対し、脱墨部2においてまたは脱墨部2から抄紙部3への流通経路の途中位置で加水し、抄紙に適する所定のパルプ濃度に調製し、抄紙部3のヘッドボックス12へ送る。
【0061】
この再生パルプ製造部1でのパルプ懸濁液の製造及び脱墨部2での脱墨処理を行っている間に、同時進行で、抄紙部3の湿紙の脱水装置Dでは、給水部40より、乾燥状態の吸水ベルト31に水分を供給し、吸水ベルト31に水分を吸収させ、膨張させておく。このように、パルプ懸濁液の製造及び脱墨の処理を行っている間に、予め吸水ベルト31を、水分を含んだ状態としておくのは、脱墨処理後の湿紙形成工程において形成された湿紙を、抄紙ワイヤー23から吸水ベルト31に転移させる際、吸水ベルト31が水分を十分に含んだ状態となっていることが必要だからである。吸水ベルト31が乾燥した状態のままで、抄紙ワイヤー23から吸水ベルト31へ湿紙を転移させることは非常に困難であるが、吸水ベルト31が水分を含んだ状態であれば、容易に湿紙を転移させることができる。
【0062】
また、吸水ベルト31が乾燥した状態のままであっても、吸引装置等の大掛かりな設備を設けることで、湿紙を転移させることができるとも考えられる。しかし、本実施形態では、上記のように予め吸水ベルト31に水分を含ませておくことで、吸引装置等を設けなくても湿紙の転移が可能となる。よって、製造コストを大幅に低減でき、占有面積を小さくすることが可能である。
【0063】
給水部40から給水を行うに当たり、制御部8は、まず、張力調整用駆動部28を駆動し、張力が解除された状態にある吸水ベルト31に張力を付与する。即ち、図3に示す張力調整モータ49を駆動し、駆動ギア51、従動ギア52を介してねじ軸45を回転させ、係止部材44を後方へ移動させ、引張バネ46が可動ローラ軸支部材47を後方へ付勢する。これにより、可動ローラ33が所定の力で後方へ引寄せられ、吸水ベルト31に張力が付与される。
【0064】
吸水ベルト31の張力が解除された状態では、第3遮光板81が張力解除センサ70の前方に位置しており、張力解除センサ70が通光となっている。この状態で、吸水ベルト31に張力を付与することで、係止部材44の移動に伴って第3遮光板81が後方へ移動し、第3遮光板81の後端81aが張力解除センサ70の設置位置に至ることで、張力解除センサ70は遮光となる。これにより張力解除センサ70は、吸水ベルト31に張力が付与されたことを検出し、制御部8へ送信する
【0065】
張力調整モータ49の駆動によって吸水ベルト31に付与された張力が、所定量に達すると、弛み検出センサ69は、吸水ベルト31に所定量の張力が付与されたことを検出し、これに対応して制御部8は、張力調整モータ49の駆動を停止する。弛み検出センサ69は、張力調整モータ49の駆動によって係止部材44が後退しているにも関わらず、吸水ベルト31の張力が大きいために、可動ローラ軸支部材47が引張バネ46の付勢力に攻して所定位置に留まり、係止部材44と可動ローラ軸支部材47との間の距離がだんだん長くなり、この結果、第2遮光板76の後端が弛み検出センサ69から外れ、弛み検出センサ69が通光となることで検出される。
【0066】
このように、所定量の張力が吸水ベルト31に付与された状態で、給水部40から乾燥した状態の該吸水ベルト31に水分を供給する。また、第2脱水ローラ122の駆動部を駆動して、吸水ベルト31を周回走行させる。これにより、給水部40から供給される水分が、順次吸水ベルト31の異なる箇所に吸収される。そして、吸水ベルト31は水分を吸収して膨張して周長が徐々に長くなり、吸水ベルト31の張力が段々と低下してくる。
【0067】
吸水ベルト31の張力の低下によって、可動ローラ33を所定位置に引き止めておこうとする力が弱まり、可動ローラ軸支部材47が引張バネ46の付勢力により後方へ引寄せられ、可動ローラ軸支部材47と係止部材44との距離が短くなる。すると、架設部材75が、係止部材75に対し相対的に後方へ移動し、通光となっていた弛み検出センサ69を、第2遮光板76により遮光とする。これにより、吸水ベルト31の張力が低下したことを弛み検出センサ70が検出する。これに対応して制御部8は、吸水ベルト31に所定量の張力を付与するため、張力調整モータ49を作動する。
【0068】
弛み検出センサ69の検出に応じた張力調整モータ49の作動と停止を繰り返し行って、吸水ベルト31に所定量の張力を付与しつつ、吸水ベルト31に十分に水分を含ませた状態とする。そして、最大張力検出センサ68が第1遮光板により遮光となったことを検出した時点で、制御部8は吸水ベルト31に最大の張力が付与されたと判断し、張力調整モータ49を停止して張力の調整を終了する。
【0069】
このように、吸水ベルト31に十分に水分を含ませた上で、図2に示すヘッドボックス12に、脱墨部2よりパルプ懸濁液を送り、流入部20から貯留部18に流入させ、流出部19から抄紙ワイヤー23上に流出させる。抄紙ワイヤー23上に供給されたパルプ懸濁液のうち液体分が抄紙ワイヤー23の網目を通り抜け、縦板26により下方の受水部27へと導かれ、受水部27で受水された後、白水タンク29内に収容される。白水タンク29内の白水は、再生パルプ製造部1や脱墨部2等へ送られ、再利用される。抄紙ワイヤー23上に残存した再生パルプにより、水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙を形成する。
【0070】
抄紙ワイヤー23上の湿紙が吸水ベルト31との当接部30に至ると、抄紙ワイヤー23から吸水ベルト31へと転移される。吸水ベルト31は、湿潤状態にある湿紙を担持しつつ走行することで、湿紙に含まれる水分を吸水ベルト31側に吸収させ、脱水する。更に、脱水ローラ対120の設置位置で、脱水ローラ対120により湿紙を挟持押圧し、脱水するとともに、乾燥用ベルト16に転移する。
【0071】
吸水ベルト31による湿紙の搬送の際に蛇行検出手段84が吸水ベルト31の蛇行を検出した場合、制御部8は蛇行補正手段85により吸水ベルト31の蛇行補正を行う。その際、右側の蛇行検出手段84が吸水ベルト31の右側への位置ずれを検出すると、制御部8は蛇行補正モータ107を図8において、反時計回りに回転する。これにより、駆動ギア109は反時計回りに回転し、従動ギア110は時計回りWに回転する。そして、クランクアーム114の後端部が、従動ギア110の上半円の中央位置から外周に沿って円弧状の軌跡を描きつつ時計回りWに移動し、クランクアーム114の前端部が接合された左側の側板部材97aは、基台94上を中央の基準位置から後方へ移動する。
【0072】
左側の側板部材97aの後方への移動によりローラ支持台車93は中央ピン102を回転中心にして平面視反時計回りに回転し、吸水ベルト31の走行方向に直交する幅方向に対し、蛇行補正ローラ92の右端が前方へ左端が後方へ傾斜した状態で吸水ベルト31に当接することで、ローラ32a,32b,32cに対する吸水ベルト31の右方への位置ずれが補正し、ローラ32a,32b,32cの中央部を適正に走行するようにする。
【0073】
また逆に、左側の蛇行検出手段84が吸水ベルト31の左側への位置ずれを検出すると、制御部8は蛇行補正モータ107を図8において、時計回りに回転し、駆動ギア109を時計回りに回転し、従動ギア110を反時計回りUに回転する。そして、クランクアーム114の後端部を、従動ギア110の上半円の中央位置から外周に沿って円弧状の軌跡を描きつつ反時計回りUに移動し、クランクアーム114を前方へ押し出し、左側の側板部材97aを中央の基準位置から前方へ移動する。このようにして、ローラ支持台車93を中央ピン102を回転中心として平面視時計回りに回転する。
【0074】
ローラ支持台車93の回転によって、吸水ベルト31の走行方向に直交する幅方向より、蛇行補正ローラ92は、右端が後方へ左端が前方へ傾斜して当接した状態で吸水ベルト31を走行させることで、吸水ベルト31のローラ32a,32b,32cに対する左方への位置ずれを補正し、ローラ32a,32b,32cの中央部を適正に走行するようにする。
【0075】
このように蛇行補正装置35は、吸水ベルト31に外周面が転接する蛇行補正ローラ92と、蛇行補正ローラ92を、吸水ベルト31の走行方向に直交する幅方向に対し傾斜させるローラ角度調整部96とを備えたので、ローラ角度調整部96により蛇行補正ローラ92の角度を調整することで容易に吸水ベル31トの蛇行を補正することができる。
【0076】
また、ローラ角度調整部96は、蛇行補正ローラ92を回転自在に軸支する左右一対の蛇行補正ローラ軸支部材103a,103bとしての側板部材97a,97bと、左右の側板部材97a,97bのうち一方の側板部材97aを他方の側板部材97bに対し、吸水ベルト31の走行方向に沿って移動させる蛇行補正用駆動部95とを備えてなるので、吸水ベルト31を傷めることなく容易に吸水ベルト31の蛇行を補正することができる。
【0077】
湿紙の脱水途中においては、基本的には張力調整モータ49を駆動させた張力の調整を行わず、係止部材44の位置を、吸水ベルト31に最大張力を付与する最後位置のままとして移動させない。湿紙の脱水途中における吸水ベルト31の僅かな伸縮については、引張バネ46の付勢力によって可動ローラ33の位置を移動することで、吸水ベルト31を弛ませることなく所定の張力を維持することができる。
【0078】
吸水ベルト31から乾燥用ベルト16に転移した湿紙は、挟持用ベルト127との間に挟持され、ヒータにより加熱され所定温度に維持された乾燥用ローラ125に、乾燥用ベルト16を介して当接されることで乾燥が行われ、仕上げ前の再生紙7が得られる。
【0079】
乾燥用ベルト16の走行中に乾燥用ベルト16が蛇行したことを乾燥ベルト用蛇行検出手段17aが検出すると、制御部8は上記した吸水ベルト31の蛇行補正と同様に、乾燥ベルト用蛇行補正手段17bにより乾燥用ベルト16の蛇行補正を行う。また、挟持用ベルト128が蛇行したことを挟持ベルト用蛇行検出手段128aが検出すると、制御部8は同様に、挟持ベルト用蛇行補正手段128bにより挟持用ベルト16の蛇行補正を行う。
【0080】
乾燥部15で得られた仕上げ前の再生紙7を仕上部4に送り、複数のプレスローラでプレスして紙の平坦度を高めた後、裁断刃で所定のシートサイズに裁断して再生紙7が完成する。
【0081】
裁断刃により裁断された再生紙7の端材を、図1に示すように再生パルプ製造部1に戻し、再度再生紙7の製造に利用する。
【0082】
古紙再生処理装置100の運転終了後は、吸水ベルト31に付与された張力を解除する。吸水ベルト31が水分を含んでいるときに付与された張力をそのままとして長時間放置した場合には、吸水ベルト31の乾燥によって該吸水ベルト31が収縮し、可動ローラ33や他の部材に過剰な負荷がかかり、例えば、可動ローラ33の回転軸66を曲げてしまう等装置を破壊する恐れがある。また、次回運転開始時の吸水ベルト31の周長が変動し、張力の調整が困難となる場合がある。
【0083】
吸水ベルト31の張力を解除するには、図3に示す張力調整モータ49を、張力を付与した際と逆方向に回転し、ねじ軸45を逆回転して係止部材44及び可動ローラ軸支部材47を前進させることで、可動ローラ33を前進させる。そして、引張バネ46の付勢力が掛からなくなる位置まで可動ローラ軸支部材47を移動し、第3遮光板81の後端81aが張力解除センサ70を外れ、通光となったところで、制御部8は、吸水ベルト31に付与されていた張力が解除されたと判断し、張力調整モータ49を停止する。
【0084】
以上より、張力調整装置34は、張力調整用駆動部42を駆動し、係止部材44及び引張バネ46を介して可動ローラ軸支部材47を移動させることで、可動ローラ33を後方へ移動し、吸水ベルト31に一定の張力を付与することができる。よって、張力調整用駆動部42の駆動力を吸水ベルト31に直接付与することなく、引張バネの付勢力を介して付与するので、吸水ベルト31を傷めにくく、耐久性を高めることが可能である。また、吸水ベルト31の張力が変動した場合に、可動ローラ33が引張バネ46に付勢されつつ移動するので、張力調整用駆動部42を停止している間においても、ローラ32a,23b,32cの周りを走行する吸水ベルト31の走行長さを、吸水ベルト31の伸縮に応じて変動させることができ、吸水ベルト31の張力の増減を緩和することができる。よって、制御部8による張力調整のための制御を簡略化できる。
【0085】
この結果、吸水ベルト31が弛んだまま走行したために、脱水ローラ対120に挟持された際に吸水ベルト31に皺を発生させ、湿紙の脱水工程で湿紙に皺を形成し、得られる再生紙7の地合を低下させるといった不具合を生じさせない。
【0086】
また、張力調整用駆動部42は、張力調整用モータ49と、張力調整用モータ49の駆動により回動されるねじ軸45とを備え、係止部材44に、ねじ軸45が螺合するナット部60を設けてなるので、簡単な構造により容易に吸水ベルト31にある一定の張力を付与することが可能である。
【0087】
そして、湿紙の脱水装置Dは、引張バネ46を用いて吸水ベルト31の張力を調整する張力調整装置34と、吸水ベルト31に当接する蛇行補正ローラ92が幅方向から傾斜することで蛇行を補正する蛇行補正装置35とを備えたので、張力調整装置34により吸水ベルト31の張力を一定に保ちつつ、蛇行補正装置35により吸水ベルト31を傷めることなく蛇行を補正することができ、吸水ベルト31に皺等発生させる過大な力をかけることなく適正に走行させ、湿紙を脱水することができる。
【0088】
更に、古紙再生処理装置100は、古紙を離解してパルプ懸濁液を製造する再生パルプ製造部1と、再生パルプ製造部1で製造されたパルプ懸濁液を抄紙し湿紙を形成する湿紙形成部11と、湿紙形成部11で形成された湿紙を脱水する湿紙の脱水装置Dと、湿紙の脱水装置Dで脱水された湿紙を乾燥し、再生紙を製造する乾燥部15とを備えたので、湿紙形成部11で形成された湿紙を湿紙の脱水装置Dにより効率よく適正に脱水し、良質な再生紙を得ることが可能である。
【0089】
尚、上記実施形態では、古紙再生処理装置100に脱墨部2を設けたが、脱墨部2を省略しても構わない。また、張力調整用駆動部42は、張力調整用モータ49と、ねじ軸とを備えたが、本発明に係る張力調整用駆動部42はこれに限定されず、クランク機構、又はラックとピニオンにより構成してもよい。また、ローラ角度調整部96は、左右一対の蛇行補正ローラ軸支部材103と、クランク機構の蛇行補正用駆動部95とを備えたが、これに限定されず、クランク機構に替えてボールねじや台形ねじを用いてもよく、ラックとピニオンとしてもよい。
【0090】
また、蛇行補正用駆動部95は、左側の蛇行補正ローラ軸支部材103aを右側の蛇行補正ローラ軸支部材103bに対し、吸水ベルトの走行方向に沿って移動させたが、これとは逆に右側の蛇行補正ローラ軸支部材を左側の蛇行補正ローラ軸支部材に対し、吸水ベルトの走行方向に沿って移動させることとしてもよい。この場合、蛇行補正用駆動部95の蛇行補正モータ、駆動ギア、従動ギア及びクランクアームを右側の側板の外方に設けることとし、クランクアームの前端部を右側の蛇行補正ローラ軸支部材にピン接合する。更に、左右双方の側板に蛇行補正用駆動部95を設け、両者による蛇行補正ローラ軸支部材の移動方向を前後逆方向とすることで補正ローラを傾斜させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
D 湿紙の脱水装置
1 再生パルプ製造部
11 湿紙形成部
15 乾燥部
31 吸水ベルト
32a,32b,32c ローラ
34 張力調整装置
35 蛇行補正装置
36 移動手段
42 張力調整用駆動部
45 棒状螺子
44 係止部材
46 引張バネ
47 可動ローラ軸支部材
49 張力調整用モータ
60 ナット部
66 回転軸
92 蛇行補正ローラ
95 蛇行補正用駆動部
96 ローラ角度調整部
100 古紙再生処理装置
103,103a,103b 蛇行補正ローラ軸支部材
120 脱水ローラ対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤状態にある湿紙を搬送する無端状の吸水ベルトと、
吸水ベルトと他のベルトを挟持し、吸水ベルトと他のベルトを介して両ベルト間の湿紙を押圧して脱水する脱水ローラ対と、
吸水ベルトの張力を調整する張力調整装置とを備えた湿紙の脱水装置であって、
張力調整装置は、吸水ベルトを掛け渡す複数のローラのうちの少なくとも1つのローラを、移動手段により移動可能に構成するとともに、
移動手段が、移動可能なローラの回転軸を回転自在に軸支する可動ローラ軸支部材と、可動ローラ軸支部材に一端側が係止された引張バネと、引張バネの他端側を係止する係止部材と、係止部材を所定位置に移動させる張力調整用駆動部とを備えた湿紙の脱水装置。
【請求項2】
張力調整用駆動部は、張力調整用モータと、張力調整用モータの駆動により回動するねじ軸とを備え、
係止部材に、ねじ軸が螺合するナット部を設けてなる請求項1に記載の湿紙の脱水装置。
【請求項3】
湿潤状態にある湿紙を搬送する無端状の吸水ベルトと、
吸水ベルトと他のベルトを挟持し、吸水ベルトと他のベルトを介して両ベルト間の湿紙を押圧して脱水する脱水ローラ対と、
吸水ベルトの蛇行を補正する蛇行補正装置を備えた湿紙の脱水装置であって、
蛇行補正装置は、吸水ベルトに外周面が転接する蛇行補正ローラと、
蛇行補正ローラを、吸水ベルトの走行方向に直交する幅方向に対し傾斜させるローラ角度調整部とを備えた湿紙の脱水装置。
【請求項4】
ローラ角度調整部は、蛇行補正ローラを回転自在に軸支する左右一対の蛇行補正ローラ軸支部材と、
左右の蛇行補正ローラ軸支部材のうちいずれか一方の蛇行補正ローラ軸支部材を他方の蛇行補正ローラ軸支部材に対し、吸水ベルトの走行方向に沿って移動させる蛇行補正用駆動部とを備えてなる請求項3に記載の湿紙の脱水装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の張力調整装置と、請求項3または請求項4に記載の蛇行補正装置とを備えた湿紙の脱水装置。
【請求項6】
古紙を離解してパルプ懸濁液を製造する再生パルプ製造部と、
再生パルプ製造部で製造されたパルプ懸濁液を抄紙し湿紙を形成する湿紙形成部と、
湿紙形成部で形成された湿紙を脱水する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の脱水装置と、
湿紙の脱水装置で脱水された湿紙を乾燥し、再生紙を製造する乾燥部とを備えた古紙再生処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−102442(P2012−102442A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254017(P2010−254017)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】