説明

湿紙搬送用ベルト

【課題】湿紙搬送用ベルトの機械側層の摩擦が少なく摩耗の少ない湿紙搬送用ベルトを提供する。
【解決手段】湿紙搬送用ベルト10は、親水性繊維41を含む湿紙側層20と、機械側層23とを有している。機械側層23は、高融点のナイロンからなる芯成分と該芯成分よりも低融点のナイロンからなる鞘成分とから構成される芯鞘複合繊維を含むバット層であり、機械側層23の表面は鞘成分の溶着層を形成していることを特徴とする湿紙搬送用ベルトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿紙搬送用ベルト(以下、単に「ベルト」と記す場合がある。)、特に、高速で湿紙を搬送するための湿紙搬送用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抄紙機においては、更なるスピードアップを図るため、オープンドローを有さない、クローズドドロー抄紙機が開発されている。
典型的なクローズドドロー抄紙機を、図5に基づき説明する。
同図において、破線で示される湿紙WWは、プレスフェルトPF1、PF2、湿紙搬送用ベルトTB、ドライヤファブリックDFに支持され、右から左に向かって搬送される。これらのプレスフェルトPF1、PF2、湿紙搬送用ベルトTB、ドライヤファブリックDFは、周知のように無端状に構成された帯状体であり、ガイドローラGRで支持されている。シューPSは、プレスロールPRに対応した凹状となっている。このシューPSは、シュープレスベルトSBを介して、プレスロールPRとともにプレス部PPを構成している。
【0003】
湿紙WWは、図示しないワイヤーパート、第一プレスパートを順次通過し、プレスフェルトPF1からプレスフェルトPF2へ受け渡される。そして、プレスフェルトPF2により、プレス部PPに搬送される。プレス部PPにおいて、湿紙WWは、プレスフェルトPF2と湿紙搬送用ベルトTBとにより挟持された状態で、シュープレスベルトSBを介したシューPSと、プレスロールPRとにより加圧される。
【0004】
プレスフェルトPF2は透水性が高く、湿紙搬送用ベルトTBは透水性が非常に低く構成されている。よって、プレス部PPにおいて、湿紙WWからの水分は、プレスフェルトPF2に移行する。プレス部PPを脱した直後においては、急激に圧力から解放されるため、プレスフェルトPF2、湿紙WW、湿紙搬送用ベルトTBの体積が膨張する。この膨張と、湿紙WWを構成するパルプ繊維の毛細管現象とにより、プレスフェルトPF2内の一部の水分が、湿紙WWへと移行してしまう、いわゆる再湿現象が生じるが、湿紙搬送用ベルトTBは透水性が非常に低く構成されているので、その内部に水分を保持することはない。よって、湿紙搬送用ベルトTBから再湿現象は殆ど発生せず、湿紙搬送用ベルトTBは湿紙の搾水効率向上に寄与する。なお、プレス部PPを脱した湿紙WWは、湿紙搬送用ベルトTBにより搬送される。そして、湿紙WWは、サクションロールSRにより吸着され、ドライヤファブリックDFによりドライヤ工程へと搬送される。
【0005】
湿紙搬送用ベルトTBには、次工程へ湿紙WWを受け渡す際に、湿紙をスムーズに離脱(紙離れ)させる機能が要求される。
この機能を具えた湿紙搬送用ベルトの一例として、湿紙搬送用ベルトの湿紙側層を、高分子弾性部と繊維体とにより構成し、この高分子弾性部と繊維体のどちらか一方を疎水性の素材で構成したものが特許文献1に開示されている。この湿紙搬送用ベルトは、疎水性の素材の作用により、プレス部を脱した後に、湿紙と湿紙搬送用ベルトとの間に形成される薄い水膜を破壊することができるため、次工程への湿紙の受渡をスムーズに行うことができる。
【0006】
一方、プレス部を脱出した直後の湿紙を積極的にその表面に貼付ける機能の重要性も、認識されるようになってきた。
特許文献1の湿紙搬送用ベルトは、湿紙をベルトからスムーズに離脱させる機能を有するが、プレス部を脱した直後に、湿紙とベルト間の水膜を破壊するため、プレス脱出直後の湿紙がベルト表面に良好に貼付かず、次工程へ移動される最中や、次工程への受渡の際に、湿紙が破断されることがあった。
この問題を解決するために、本発明者は、特許文献2において、湿紙搬送用ベルトの湿紙側層を、高分子弾性部と繊維体とにより構成し、繊維体の一部を表面に露出させた湿紙搬送用ベルトを提案した。特許文献2の湿紙搬送用ベルトによれば、湿紙側層の表面から露出した親水性の繊維体により、湿紙からの水が保持されるため、ベルトに湿紙を貼付けて搬送する機能と、次工程へ湿紙を受け渡す際に湿紙をスムーズに離脱させる機能を両立させることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2001−89990号公報
【特許文献2】特開2004−277971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の湿紙搬送用ベルトの機械側層は、ステープルファイバーによるバット層で構成されている。しかし、このような機械側層では、摩擦抵抗が大きいから、湿紙搬送用ベルトが抄紙機のプレス部およびガイドロールを周回するときに、機械側層表面のバット繊維が摩擦により摩耗が早まることが知られていた。
湿紙搬送用ベルトの機械側層は、湿紙搬送用ベルトにクッション性を付与し、またベルトの基体を保護するからベルトの寸法安定性を維持する機能があるため、機械側層には耐摩耗性が求められていた。
【0009】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、機械側層の摩擦が少なく、従って摩耗の少ない湿紙搬送用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クローズドドロー抄紙機のプレスパートで使用され、基体と湿紙側層と機械側層とを具えた湿紙搬送用ベルトにおいて、
前記湿紙側層が、親水性繊維を含む湿紙接触側バット層と、基体側バット層からなり、
高分子弾性体が少なくとも前記湿紙接触側バット層に含浸され、
前記親水性繊維の少なくとも一部が前記湿紙接触側バット層の表面に露出しており、前記機械側層が、高融点のナイロンからなる芯成分と該芯成分よりも低融点のナイロ
ンからなる鞘成分とから構成される芯鞘複合繊維を含むバット層であり、かつ前記機械
側層が、前記鞘成分の溶着層を表面に形成していることを特徴とする湿紙搬送用ベルト
によって、前記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の湿紙搬送用ベルトは、機械側層の表面に溶着層を形成しているから、機械側層の摩擦摩耗を少なくすることができるため、ベルトのクッション性や寸法安定性を維持する効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の湿紙搬送用ベルトについて詳しく説明する。
図1は本発明の第1実施形態の湿紙搬送用ベルトのCMD方向断面図、図2はベルトの湿紙側層の平面図であり、図4はベルトの機械側層の平面図である。
図1に示すように、湿紙搬送用ベルト10は、基体30と、湿紙側層20と機械側層23とを具え、湿紙側層20は、湿紙接触側バット層21と、この湿紙接触側バット層21の内側に配された基体側バット層22の2層からなる。
【0013】
湿紙接触側バット層21は親水性繊維41を含み、基体側バット層22は親水性繊維41を含んでいても含んでいなくてもよい。そして、機械側層23は、高融点のナイロンからなる芯成分と、該芯成分よりも低融点のナイロンからなる鞘成分とから構成される芯鞘複合繊維42を含む機械側バット層23であり、その表面には芯鞘複合繊維の鞘成分が熱溶融して形成された溶着層60が構成されている。
【0014】
図1では湿紙接触側バット層21及び基体側バット層22には高分子弾性体50が含浸され、図2に示すように、親水性繊維41の一部が湿紙接触側バット層21の表面に露出している。なお、「露出」とは、湿紙接触側バット層21の表面に現れている状態を指すものであり、親水性繊維41が湿紙接触側バット層21の表面から突出しているか否かを問わない。また、図2は、湿紙接触側バット層21の表面に親水性繊維41が露出した状態の1例を示したものであり、この状態に限定されない。
以下、便宜上、湿紙接触側バット層21を「第1バット層」、基体側バット層22を「第2バット層」、機械側層23を「第3バット層」という。
【0015】
第1バット層21、第2バット層22、第3バット層23は、ステープルファイバーから構成される。これらのうち、第1バット層21は親水性繊維41のステープルファイバーを含むバット層である。第1バット層21には湿紙搬送用ベルトの機能、すなわちベルトに湿紙を貼り付けて搬送する機能と、次工程へ湿紙を受け渡す際に湿紙をスムーズに離脱させる機能を阻害しない範囲で、他の繊維(ステープルファイバー)を混合することができる。具体的には、強度や耐久性の高いナイロン繊維やポリエステル繊維を用いることができる。
第2バット層22及び第3バット層23は、ニードルパンチングにより、それぞれ基体30の湿紙側及び機械側に絡合一体化され、第1バット層21は、第2バット層22に絡合一体化されている。なお、バット層を一体化させる手段としては、ニードルパンチングの他、静電気植毛等でも行うことができる。
【0016】
第1バット層21に含まれる親水性繊維41における「親水性」とは、水分を引き寄せる性質及び/又は水分を保持する性質を指し、本発明では、「親水性」の特性を、JIS L0105(繊維製品の物理試験方法通則)に記載された「公定水分率」で表す。
親水性繊維41は、公定水分率が8%以上のものが好ましく用いられ、具体的には、レーヨン(同11.0%)、ポリノジック(同11.0%)、キュプラ(同11.0%)、綿(同8.5%)、麻(同12.0%)、絹(同12.0%)、羊毛(同15.0%)等の親水性繊維のグループから選ばれる。ここで、括弧内の数値は公定水分率である。公定水分率が4%未満の繊維を用いた場合、湿紙からの水分が十分に保持されないため、ベルトに湿紙を貼付けて搬送する機能を十分に発揮することができない。
【0017】
また、親水性繊維41として、繊維の表面に化学的な親水処理を施したものも使用することができる。具体的には、当業者に周知である、マーセライズ加工、樹脂加工、電離放射線照射によるスパッタリング、グロー放電加工等を行ったものがある。なお、親水処理をする場合、この処理を施されたモノフィラメント又は紡績糸の水分が30〜50%になるように調湿した条件下で、水との接触角が30°以下であると、良好な結果を得ることができる。なお、上記モノフィラメント又は紡績糸の水分のパーセンテージは、(水/全体重量)×100の式で算出される。
【0018】
第1バット層21の表面に親水性繊維41を露出させることは、第1バット層21及び第2バット層22に高分子弾性体50を含浸・硬化させた後、第1バット層21の表面を、サンドペーパーや砥石等で研磨することにより行なわれる。この際、研磨により親水性繊維41が切断されるのを防ぐために、親水性繊維41は、0.8g/dtex以上の強度があることが望ましい。
【0019】
第2バット層22は、湿紙搬送用ベルトとして適度なクッション性(弾性持続性)と強度持続性を与えるため、基体30の湿紙側に配される。従って、第2バット層22には親水性繊維41を含んでいてもよいが、含まずに他の繊維(ステープルファイバー)で構成してもよい。具体的には、強度や耐久性の高いナイロン繊維やポリエステル繊維が好ましく用いられる。
【0020】
第3バット層23は、芯鞘複合繊維42を含むバット層である。第3バット層23には、湿紙搬送用ベルトの機械側層の機能、すなわち湿紙搬送用ベルトが抄紙機のプレス部及びガイドロールを周回するときに、ベルトにクッション性と耐摩耗性が維持される範囲で、他の繊維(ステープルファイバー)を混合することができる。具体的には強度や耐久性の高いナイロン繊維やポリエステル繊維を用いることができる。
【0021】
第3バット層23に用いられる芯鞘複合繊維42は、芯成分として用いられる高融点のナイロンとして、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などが好ましい。
また、鞘成分として用いられる低融点のナイロンとして、ナイロン6/12、ナイロン6/610、ナイロン66/6、ナイロン66/12、ナイロン66/610などの二元共重合ナイロンや、ナイロン6/66/12、ナイロン6/66/610などの三元共重合ナイロンが好ましい。
本発明で使用できるこれらの低融点のナイロンは、その融点が180℃以下のものが更に好ましい。
【0022】
第3バット層23の溶着層60は、湿紙搬送用ベルトの製造工程の熱プレスの際に、鞘成分が溶融し溶着することにより形成される。この溶着層60の表面は緻密で平滑性のある面である。この平滑面は図4のように繊維が相互に溶着し、繊維の一部はその形態を残しているような溶着した平滑な面である。この溶着層60の表面の粗さは、十点平均粗さ(Rz)で10μm〜100μmの範囲が好ましく、それによって本発明の湿紙搬送用ベルトが抄紙機のプレス部やガイドロールを周回するとき、摩擦抵抗が少なく、従って摩擦摩耗が少ないものとなっている。
【0023】
また、湿紙側層20を構成する第1バット層21の坪量は50〜600g/mの範囲、第2バット層22の坪量は100〜600g/mの範囲、及び第3バット層23の坪量は50〜600g/mの範囲で適宜設定することが好ましい。
【0024】
図3は本発明の第2実施形態の湿紙搬送用ベルトのCMD方向断面図である。第2実施形態の湿紙搬送用ベルト10は、第1バット層21のみに高分子弾性体50を含浸させている。
そして第1バット層、第2バット層及び第3バット層の構成は、第1実施形態と同様である。
【0025】
また、図示しないが、第1、第2実施形態の他に、高分子弾性体50を、基体30及び第3バット層23まで含浸させた構成としてもよい。すなわち、湿紙搬送用ベルト10全体に高分子弾性体50を含浸させた構成とすることもできる。
【0026】
高分子弾性体50としては、ウレタン、エポキシ、アクリル等の熱硬化性樹脂、又はポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を適宜使用することができる。
【0027】
基体30は、図1及び図3に示すように、MD方向糸材と、CMD方向糸材を織成することにより得られた織布が好ましく用いられるが、これに限定されず、MD方向糸材とCMD方向糸材を織成せずに重ねた構成、フィルム、編物、細い帯状体をスパイラルに巻回して幅広の帯状体を得た構成等、種々の構成を適宜採用することができる。
【0028】
なお、湿紙搬送用ベルト10は、基本的に通気性はゼロであるのが好ましいが、使用される抄紙機によっては、多少の通気性が要求されることも考えられる。この場合は、高分子弾性体50の含浸量を少なくしたり、研磨量を多くしたり、連続気泡入りの高分子弾性体を使用することにより、所望の構成が得られる。
しかし、この場合であっても、湿紙搬送用ベルトの目的に鑑みて、通気度は2cc/cm/sec以下であることが好ましい。なお、この通気度は、JIS L 1096(一般織物試験方法)に規格されているA法(フラジール形試験機)によって測定されるものである。
【実施例】
【0029】
本発明の湿紙搬送用ベルトを、以下の実施例によって具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
工程1:基体としてナイロン撚糸(500dtex単糸を3本撚ったもの)からなる一重織りの織布(坪量400g/m)を用い、この無端状の織布の湿紙側面にナイロン6繊維(20dtexのステープルファイバー、公定水分率4.5%)、機械側面に芯鞘複合繊維(芯成分がナイロン6で鞘成分が共重合ナイロン6/12の、20dtexのステープルファイバー)とナイロン6繊維(20dtexのステープルファイバー)とを4:1で混綿した混合繊維をニードルパンチして、基体(織布)の表裏に第2バット層と第3バット層(坪量は共に300g/m)を絡合一体化して設けた。
さらに、第2バット層の表面に親水性繊維のレーヨン(6dtexのステープルファイバー、公定水分率11%)とナイロン6繊維(20dtexのステープルファイバー)とを4:1で混綿した混合繊維をニードルパンチして、第1バット層(坪量200g/m)を形成してニードルフェルトを得た。
工程2:ニードルフェルトに、ヒートプレスを行うことにより、第3バット層の芯鞘複合繊維を溶融し溶着して、その表面に緻密で平滑な溶着層を形成した。なお、ヒートプレスは鞘成分である共重合ナイロン6/12のみを溶融することのできる200℃の温度条件に設定した。
工程3:ニードルフェルトの湿紙側面より、高分子弾性体のウレタン樹脂を含浸させた。この際、ウレタン樹脂は、織布の中心位置から湿紙側面を覆うまで、すなわち、第1バット層及び第2バット層全体に含浸させた(含浸量1000g/m)。
工程4:ウレタン樹脂を硬化させた。
工程5:ウレタン樹脂の外周面をサンドペーパーで研磨した。
以上の工程により、湿紙側層表面にレーヨン繊維が露出している実施例1のベルトを得た。
【0031】
(実施例2)
前記実施例1の工程3において、コーターバーを用いて、ウレタン樹脂がニードルフェルトの第1バット層のみを含浸するように調整した(含浸量400g/m)。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2のベルトを得た。
【0032】
(比較例1)
前記実施例1の工程1において、織布の機械側面にナイロン6繊維(20dtexのステープルファイバー、公定水分率4.5%)を用いて第3バット層を設けた。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1のベルトを得た。
【0033】
(比較例2)
前記実施例1の工程2において、軽度のヒートプレス(鞘成分の融点を超えない温度として140℃の温度条件)を行い、第3バット層の表面に溶着層を形成しないように調整した。それ以外は実施例1と同様にして、比較例2のベルトを得た。なお、ヒートプレスを行わない場合でも溶着層は形成されないから同様の構成を具備する。
【0034】
これらの湿紙搬送用ベルトについて、以下の実験を行って湿紙搬送用ベルトの性能の評価を行った。
(1)湿紙搬送用ベルトの第3バット層表面の粗さ;JIS−B0601に基づく十点平均粗さ(Rz)を計測した。
(2)湿湿紙搬送用ベルトの第3バット層表面の耐摩耗性試験;JIS1023−1992に基づくテーバー研磨試験機により、第3バット層から脱落した繊維量を測り耐摩耗性を評価した。この試験機は、回転するターンテーブルの上に円盤状の試験片を置載し、更に試験片の上に抵抗の大きいゴム製ロールを当接し回転させて、繊維の脱落量を測る。この試験では、ターンテーブルを5000回回転させた後の脱落繊維量を計測した。実験の結果を、表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1より、実施例1〜2では、第3バット層表面の粗さが平滑であるから、耐摩耗性すなわち耐摩耗性試験における繊維の脱落量は少なくなっている。
本発明の湿紙搬送用ベルトは、第3バット層表面に平滑な溶着層を形成しているから、機械側層の摩擦摩耗を少なくすることができる。その結果、ベルトが抄紙機のプレス部およびガイドロールを周回するときに、機械側層表面が摩擦による摩耗を少なくすることが出来るので好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態の湿紙搬送用ベルトの概要を示すCMD方向断面図。
【図2】本発明の湿紙搬送用ベルトの湿紙側層表面の概要を示す平面図。
【図3】本発明の湿紙搬送用ベルトの機械側表面の概要を示す平面図。
【図4】本発明の第2実施形態の湿紙搬送用ベルトの概要を示すCMD方向断面図。
【図5】典型的なクローズドドロー抄紙機の概要図。
【符号の説明】
【0038】
10:湿紙搬送用ベルト
20:湿紙側層
21:湿紙接触側バット層(第1バット層)
22:基体側バット層(第2バット層)
23:機械側層(第3バット層)
30:基体
41:親水性繊維
42:芯鞘複合繊維
50:高分子弾性体
60:溶着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローズドドロー抄紙機のプレスパートで使用され、基体と湿紙側層と機械側層とを具えた湿紙搬送用ベルトにおいて、
前記湿紙側層が、親水性繊維を含む湿紙接触側バット層と、基体側バット層からなり、
高分子弾性体が少なくとも前記湿紙接触側バット層に含浸され、
前記親水性繊維の少なくとも一部が前記湿紙接触側バット層の表面に露出しており、前記機械側層が、高融点のナイロンからなる芯成分と該芯成分よりも低融点のナイロ
ンからなる鞘成分とから構成される芯鞘複合繊維を含むバット層であり、かつ前記機械
側層が、前記鞘成分の溶着層を表面に形成していることを特徴とする、湿紙搬送用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−127134(P2009−127134A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300169(P2007−300169)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】