満腹感誘導組成物
【課題】満腹感を誘導して摂取エネルギー量を減少させて、メタボリックシンドロームの軽減等を図ることができ、低コストで副作用がなく、良好な風味および食感を有する満腹感誘導組成物を提供する。
【解決手段】発酵ホエイを有効成分として含む、主に飲料の形態で用いられる満腹感誘導組成物。該満腹感誘導組成物は、食事の4時間前から食事直前までの間に、発酵ホエイの固形分換算の摂取量が、食事1回に対して、ヒトの単位体重当たり、0.05g/kg以上となるように摂取することが好ましい。該満腹感誘導組成物中の発酵ホエイの固形分の割合は、好ましくは1重量%以上である。
【解決手段】発酵ホエイを有効成分として含む、主に飲料の形態で用いられる満腹感誘導組成物。該満腹感誘導組成物は、食事の4時間前から食事直前までの間に、発酵ホエイの固形分換算の摂取量が、食事1回に対して、ヒトの単位体重当たり、0.05g/kg以上となるように摂取することが好ましい。該満腹感誘導組成物中の発酵ホエイの固形分の割合は、好ましくは1重量%以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は満腹感誘導組成物に関し、特に、満腹感を誘導することによって食事の量を減らして、摂取エネルギー量を減少させ、メタボリックシンドロームによる心疾患等の成人病の予防または軽減を図るための満腹感誘導組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満の予防および治療は、健康の維持および増進のために非常に重要である。多くの疫学研究や病態生理学的研究の結果、肥満は、インスリン抵抗性という病態基盤を伴うため、耐糖能異常、高脂血症、高血圧などの様々な健康障害の原因となりうるメタボリックシンドロームを引き起こすことが明らかになっている。メタボリックシンドロームは、心筋梗塞や脳梗塞の発症のリスクの高い状態として知られている。このため、メタボリックシンドロームの予防および治療法は、近年注目を集めている。
【0003】
肥満の主な原因の一つは、過度の飲食による過剰なエネルギー量の摂取である。したがって、メタボリックシンドロームの予防または軽減のためには、摂取エネルギー量を減少させ、肥満を軽減させることが重要である。しかし、肥満の者にとって食事の量を自発的に減らすことは、節制の強い意思を要し、困難である。そのため、特定の化合物を含む医薬品や、特定の食品素材を含む食品を摂取することによって、食欲の抑制、空腹感の軽減、満腹感の誘導(増大)などを生じさせて、摂取エネルギー量を減少させることが、試みられている。
【0004】
特定の化合物を含む医薬品としては、例えば、特許文献1に、体重減少に影響を及ぼすためのブプロピオンなどを含む組成物であって、エネルギー消費の増大や、満腹感の増大や、食欲の抑制の作用を有する医薬組成物が開示されている。また、特許文献2に、3−低級アルカノイルオキシ酪酸などを有効成分とする、適度の食欲抑制効果を有する食欲抑制剤が開示されている。
特定の食品素材を含む食品としては、例えば、特許文献3に、満腹ペプチドであるコレシストキニン及びグルカゴン様ペプチドの細胞分泌を誘導することができるホエイタンパク質及び/又はホエイタンパク質加水分解物の、食用組成物中での使用が開示されている。また、特許文献4および特許文献5に、特定のトリグリセリドを食品中に含有させることによって、食欲抑制効果を与えることが開示されている。さらに、特許文献6に、特定のアミノ酸配列からなる大豆由来ペプチドである食欲抑制用ペプチドが開示されている。
【0005】
一方、チーズ等の製造時に副生するホエイは、各種の必須アミノ酸等を含み、栄養価が高いものの、風味が劣ることから、ほとんどが廃棄処分されている。このため、ホエイを食事素材として利用するための種々の技術が開発されている。
例えば、特許文献7に、固形分濃度が11〜35重量%で、かつ、pHが6.5〜8.0に調整されたホエイタンパク質水溶液を、高温殺菌した後、乳酸発酵させ、得られた発酵液を均質化することによって得られる、独特でかつスッキリとした風味と、良好な食感を有する発酵ホエイ調製物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4343948号公報
【特許文献2】特公平5−37404号公報
【特許文献3】特表2005−538704号公報
【特許文献4】特公平6−99321号公報
【特許文献5】特許第3653225号公報
【特許文献6】特許第3997114号公報
【特許文献7】WO 2008/136309 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載されている食欲抑制剤は、いずれも、有効成分として特殊な化合物を含む医薬品であるため、コスト面や入手の容易性等の点で問題がある。
上記の特許文献3〜6に開示された技術は、食品素材に関するものであるため、利用し易いという利点を有するものの、未だ実用化を阻害する問題点を含んでいる。例えば、ホエイタンパク質/ホエイタンパク質加水分解物や大豆由来ペプチドは、風味の点で継続的に摂取しづらいという問題を有する。トリグリセリドは、脂質であり、それ自体がメタボリックシンドロームのリスクファクターとなりうるため、好ましくない。
本発明の目的は、満腹感を誘導して摂取エネルギー量を減少させて、メタボリックシンドロームの軽減等を図ることができ、低コストで副作用がなく、良好な風味および食感を有する満腹感誘導組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、発酵ホエイが、摂取者の満腹感を誘導して、食事の量を減少させうること、および、その結果、メタボリックシンドロームの軽減等を期待することができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1]発酵ホエイを有効成分として含む満腹感誘導組成物。
[2]食事の4時間前から食事直前までの間に摂取するためのものである、前記[1]に記載の満腹感誘導組成物。
[3]前記発酵ホエイの固形分換算の摂取量が、食事1回に対して、ヒトの単位体重当たり、0.05g/kg以上となるように、摂取するためのものである、前記[1]又は[2]に記載の満腹感誘導組成物。
[4]前記満腹感誘導組成物中の前記発酵ホエイの固形分の割合が1重量%以上である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の満腹感誘導組成物。
[5]飲料である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の満腹感誘導組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の満腹感誘導組成物(以下、本発明の組成物ともいう。)の摂取によって、満腹感を誘導して、食事の量の減少によって摂取エネルギー量を減少させることができる。例えば、肥満者、メタボリックシンドローム患者、メタボリックシンドローム予備軍、糖尿病患者、過食症患者などの、摂取エネルギー量の減少が求められている者にとって、節制の強い意思を要さずに、自然に摂取エネルギー量を減少させることができる。その結果、メタボリックシンドロームの軽減などによって、心疾患等の成人病の発生の抑制または症状の軽減を期待することができる。
特に、本発明の組成物は、満腹感の持続時間が例えば4時間以上と長いため、本発明の組成物の摂取時から例えば3時間後に食事した場合において、本発明の組成物を摂取せずに同量の食事をした場合に比べて、食後の満腹感を高めることができる。このことは、本発明の組成物を摂取すれば、食事の量を通常より減らしても、本発明の組成物を摂取せずかつ食事の量を減らさない場合と同程度の食後の満腹感を得ることができることを意味する。
また、空腹感があるものの食事をする時間が取れない時などに、本発明の組成物を摂取することによって、手軽に小腹を満たすことができる。
また、本発明の組成物は、発酵による独特で良好な風味と、スッキリとした爽やかな風味を合わせ持ち、かつ舌触りが滑らかな食感であるため、継続的に摂取し易い。
また、本発明の組成物は、副作用の有無の確認が必要な有機合成化合物を用いたものではなく、牛乳等の乳に由来する天然の原料であるホエイを用いたものであるため、安全性に優れ、取り扱いについても制限が緩く、製造コストも低く抑えることができる。
また、本発明の組成物は、従来ほとんどが廃棄処分されていたホエイを主原料とするものであり、ホエイの利用を促進し、廃棄物の量の削減を図りうる点でも価値が高い。
さらに、本発明の組成物は、熱安定性にも優れているため、高温殺菌して飲料として摂取することが可能であり、高い実用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発酵ホエイを配合した高脂肪飼料の摂食抑制試験におけるラットの各群の摂取エネルギー量(kcal/日)を示すグラフである(平均値±標準誤差、*:p<0.05)。
【図2】図1と同じ試験におけるラットの各群の体重増加量(g/日)を示すグラフである(平均値±標準誤差、*:p<0.05)。
【図3】発酵ホエイを1回だけ経口投与した試験におけるラットの各群の飼料摂取量(g)を示すグラフである(平均値±標準誤差、*:p<0.05,実施例群vs対照群)。
【図4】図3と同じ試験における摂取エネルギー量(発酵ホエイのエネルギー量)と投与エネルギー量(飼料のエネルギー量)の合計量を示すグラフである(平均値±標準誤差、*:p<0.05,実施例群vs対照群)。
【図5】発酵ホエイ含有飲料の食事前摂取試験におけるヒトの各群の食事後の空腹感を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図6】図5と同じ試験におけるヒトの各群の食事後の満腹感を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図7】図5と同じ試験におけるヒトの各群の食事後の食欲を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図8】図5と同じ試験におけるヒトの各群の食事後の予測食事摂取量を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図9】図5と同じ試験におけるヒトの各群の食事後のアペタイト・スコアを示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図10】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後の空腹感を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図11】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後の満腹感を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図12】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後の食欲を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図13】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後の予測食事摂取量を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図14】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後のアペタイト・スコアを示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に述べる個々の実施形態には限定されない。なお、本明細書において特に明示しない場合、%は重量%を示す。
本発明に用いられる発酵ホエイは、様々な方法で調製することができる。
その中でも特に、固形分濃度が11〜35重量%で、かつ、pHが6.5〜8.0に調整されたホエイタンパク質水溶液を、高温殺菌した後、乳酸発酵させ、得られた発酵液をそのまま均質化することによって発酵ホエイを得る方法が好ましい。以下、発酵ホエイの製造方法について詳しく説明する。
【0012】
発酵ホエイに用いられるホエイ(乳清)の由来は特に限定されず、例えば、チーズやヨーグルト等の発酵させた乳や、酸味料を添加させることで人工的に酸凝固した乳などが挙げられる。ホエイの一例として、チーズの製造時に副生するものが挙げられる。ここで、乳としては、牛乳、羊乳、山羊乳などが挙げられる。
ホエイタンパク質水溶液としては、少なくともホエイタンパク質と水を含むものであればよく、例えば、ホエイの原液、ホエイの濃縮液、ホエイ粉と水の混合物、ホエイの還元溶液などが挙げられる。
本発明で使用可能なホエイタンパク質としては、ホエイタンパク濃縮物(WPC(Whey Protein Concentrate))、ホエイタンパク分離物(WPI(Whey Protein Isolate))、甘性ホエイ粉、脱塩ホエイ粉、脱脂粉乳などが挙げられる。これらのホエイタンパク質は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。ホエイタンパク質として、市販品を使用しても良い。
ホエイタンパク質の成分組成は、次のとおりである。
ホエイタンパク濃縮物(WPC)の一例では、固形分が95.5%であり、このうち、タンパク質が76.0%、乳糖が12.0%、灰分が2.5%である。ホエイタンパク分離物(WPI)の一例では、固形分が94.1%であり、このうち、タンパク質が90.0%、乳糖が1.7%、灰分が1.8%である。甘性ホエイ粉の一例では、固形分が97.0%であり、このうち、タンパク質が12.0%、乳糖75.5%、灰分8.5%である。脱塩ホエイ粉の一例では、固形分が98.1%であり、このうち、タンパク質が11.8%、乳糖が79.7%、灰分が5.6%である。脱脂粉乳の一例では、固形分が95.5%であり、このうち、タンパク質が34.0%、乳糖53.5%、灰分8.0%である。
なお、タンパク質の量(濃度)は、必要であれば、例えば、ケルダール法、ローリー法などのような慣用の方法・装置により容易に測定することができる。
【0013】
本発明に使用されるホエイタンパク質は、好ましくは、ホエイタンパク濃縮物(WPC)、甘性ホエイ粉、脱塩ホエイ粉、またはこれらの中から選ばれる二種以上の混合物であり、より好ましくは、甘性ホエイ粉とホエイタンパク濃縮物(WPC)の混合物である。甘性ホエイ粉とWPCの混合物の重量比(甘性ホエイ粉:WPC)は、好ましくは1:2〜2:1、より好ましくは1:1〜2:1である。
使用するホエイタンパク質水溶液において、固形分濃度は、好ましくは11〜35重量%、より好ましくは12〜30重量%、さらに好ましくは13〜25重量%に調整する。このとき、ホエイタンパク質の濃度は、好ましくは1.3〜4.5重量%、より好ましくは1.5〜4.0重量%、さらに好ましくは1.7〜3.0重量%である。このような範囲であることは、ホエイタンパク質を変性させて、適度な粒径の凝集物を形成させる観点から好ましい。
なお、本発明において、ホエイタンパク質水溶液中の固形分濃度は、例えば、簡易水分測定法、混砂法などのような慣用の方法・装置により容易に求めることができる。
【0014】
ホエイタンパク質水溶液の調製のためにホエイタンパク質と水を混合する際に、必要に応じて、水の温度を40〜60℃に調整することができる。また、必要に応じて、溶解機として、パワーブレンダー、ホモミキサー、高速攪拌機等を使用することができる。
ホエイタンパク質水溶液は、高温殺菌処理前に、pHを6.5〜8.0に調整することが好ましい。pH調整は、好ましくはpH調整剤を使用して行う。pH調整剤は、上記の数値範囲内にpHを調整することができ、かつ、食品用に使用可能な安全性を有するものであればよい。pH調整剤は、典型的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群より選択される。pH調整剤は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0015】
発酵ホエイの製造方法においては、まず、固形分濃度が11〜35重量%で、かつpHが6.5〜8.0に調整されたホエイタンパク質水溶液を、高温殺菌処理(高温殺菌工程)に付す。ここで、高温殺菌処理における加熱条件は、食品(特に飲料)の分野において慣用の加熱殺菌処理条件であれば特に制限なく使用することができ、例えば90℃を超えた加熱条件を使用する。この加熱条件はタンパク質の熱変性を生じさせうる条件である。加熱殺菌時の温度の上限は、好ましくは150℃である。高温殺菌すると、高温菌等の雑菌を十分に死滅させることができるため、衛生面が改善され、後工程である乳酸発酵工程における菌増殖による汚染等を抑制しやすくなる。
本発明の好ましい態様によれば、高温殺菌処理は、例えば91℃〜99℃で5〜15分間、好ましくは92〜98℃で7〜13分間、より好ましくは93〜97℃で8〜12分間、特に好ましくは95℃で10分間である。別の好ましい態様によれば、高温殺菌処理は、例えば100℃〜150℃で1〜30秒間、好ましくは110〜140℃で1〜20秒間、より好ましくは115〜135℃で1〜10秒間、さらに好ましくは120〜130℃で1〜5秒間、特に好ましくは120℃で3秒間である。高温殺菌の後、必要により、処理した水溶液を冷却する。冷却する温度は、次の発酵工程での発酵温度に基づいて設定することができ、例えば30〜50℃である。
また、この高温殺菌処理の際、水溶液に圧力をさらに負荷しても良い。通常、加熱殺菌処理を行う場合、水溶液の沸騰を防止すること等を目的として、例えば、殺菌圧力を1〜10kg/cm2とする。本発明における殺菌処理では、加熱に加えて、このような圧力を加えても良い。高温殺菌処理装置としては、例えばプレート式熱交換器、チューブ式熱交換器、スチームインジェクション式殺菌機、スチームインフュージョン式殺菌機、通電加熱式殺菌機などがある。
本発明においては、このような高温殺菌処理によって得られる水溶液は、凝集物を含む。この凝集物の粒径は巨大ではなく、直ぐには沈殿しない適度な寸法である。水溶液中の凝集物の粒径は、通常、1〜100μm、好ましくは2〜80μm、より好ましくは4〜60μm、さらに好ましくは5〜50μmである。
このように凝集物は、直ぐには沈殿しないような寸法であるため、そのまま、ここに乳酸菌もしくは酵母を加えて、次の乳酸発酵処理に付すことができる。
なお、凝集物の粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100(株式会社島津製作所製)などを利用することにより測定することができる。
【0016】
発酵ホエイの製造方法における乳酸発酵とは、ホエイタンパク質水溶液を所定の微生物を用い、後述の所定の発酵条件にて発酵させ、有機酸(乳酸、コハク酸、リンゴ酸など)、特に乳酸を生成させるものをいう。乳酸発酵に使用する微生物としては、乳酸菌または酵母のいずれかを使用することが好ましい。乳酸発酵において、有機酸、特に乳酸の生成の有無および生成量は、対象とする溶液の酸度(%)を測定することにより確認することができる。ここで、「酸度」は、例えば、牛乳関係法令集(乳業団体衛生連絡協議会(日本)、平成16年(2004年)3月)の第56頁の「5 乳及び乳製品の酸度の測定法」に従って求めることができる。
【0017】
本発明で使用可能な乳酸菌としては、ホエイ発酵に使用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属等が挙げられる。これらの属に含まれる菌株の例としては、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等が挙げられる。
【0018】
本発明で使用可能な酵母としては、ホエイ発酵に使用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、カンジダ(Candida)属、クルベロミセス(Kluveromyces)属等が挙げられる。これらの属に含まれる菌株の例としては、カンジダ・ケフィア(Candida Kefyr)、クルベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces Marxianus)等が挙げられる。酵母を使って乳酸発酵を行うことで、乳酸菌を使用する場合と異なる風味を得ることができ、良好で多様な発酵ホエイを得ることが可能となる。
本発明においては、必要に応じて、乳酸菌を使用して得られた発酵ホエイと、酵母を使用して得られた発酵ホエイを混合して使用しても良い。
【0019】
スターターとして添加する菌の量は、通常、ホエイタンパク質水溶液中の乳酸菌(もしくは酵母)の濃度が108〜1010cfu/mL(典型的には109cfu/mL程度)となるような量であり、好ましくは、殺菌後のホエイタンパク質水溶液の重量100重量部に対して0.1〜3重量部の量である。
乳酸菌による発酵の条件は、好ましくは30〜50℃で1〜40時間、より好ましくは35〜45℃で2〜20時間、特に好ましくは37〜43℃で3〜10時間である。
酵母による発酵の条件は、好ましくは20〜40℃で1〜72時間、より好ましくは25〜35℃で12〜60時間、特に好ましくは27〜33℃で24〜48時間である。
【0020】
乳酸発酵の後、得られた発酵液に対して均質化処理を行ってもよい。これにより、発酵液に含まれる凝集物を微粒化することができる。発酵液を均質化する場合、発酵液に含まれる乳酸菌(もしくは酵母)および代謝産物を含んだまま、均質化を行う。すなわち、発酵液をそのまま均質化する。そのまま均質化することは、発酵液に適度な粘度(粘性)、優れた食感および風味、安定した保存性などを付与する観点から重要である。
【0021】
均質化処理は、例えばホモジナイザーを使用する場合、例えば10〜60℃で10〜50MPa(好ましくは12〜25MPa)、100〜1000L/hの条件で行うことができる。また、必要であれば、条件を変えて複数回処理しても良い。均質化処理の具体例として、20℃にて、第一段目の処理を7〜12MPaで行い、第二段目の処理を3〜6MPaで行うことが挙げられる。ただし、均質化処理の流量については、実態に合わせて100L/h未満または1000L/hを超える流量に設定することも可能である。その時には、最終商品の設計に準拠して均質化処理の圧力を適宜調節することが可能である。
発酵ホエイは、本発明の満腹感誘導組成物の成分の一つとして用いられる。発酵ホエイの形態例としては、液体、懸濁液、ペースト、ゲル、乾燥粉末、凍結体等が挙げられる。
【0022】
本発明の満腹感誘導組成物の摂取量は、体重および肥満度と、予防もしくは改善しようとする症状の種類(例えば、メタボリックシンドローム)とを併せて考慮して、適宜定めることができる。
本発明の満腹感誘導組成物の摂取量は、特に限定されないが、満腹感の誘導の効果を十分に得る観点から、好ましくは、食事1回に対して、ヒトの単位体重当たり、発酵ホエイの量として、固形分換算で、好ましくは0.05g/kg以上、より好ましくは0.1g/kg以上、さらに好ましくは0.2g/kg以上である。該摂取量の上限は、継続的な摂取の容易性等の観点から、好ましくは5g/kg、より好ましくは3g/kg、特に好ましくは1g/kgである。
本発明の満腹感誘導組成物の摂取経路としては、経口、経管、経腸などが挙げられる。中でも、経口による摂取が好ましい。
【0023】
本発明の満腹感誘導組成物は、飲食品(特定保健用食品を含む。)、医薬品などの用途で用いることができる。
本発明の満腹感誘導組成物は、医薬品として用いる場合、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、溶液、懸濁液等の、経口摂取可能な形態を取ることが可能である。これらの各種の形態は、常法に従って、発酵ホエイと、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用されている既知の補助剤とを組み合わせることによって製造することができる。
本発明の満腹感誘導組成物は、飲食品として用いる場合であっても、医薬品と同様な形態を取ることが可能である。
【0024】
本発明の満腹感誘導組成物の成分となりうる飲食品(以下、ベース飲食品ともいう。)としては、例えば、牛乳、清涼飲料、発酵乳(ヨーグルト、ヨーグルト飲料等)、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、幼児用粉乳、授乳婦用粉乳などが挙げられる。ベース飲食品を用いる場合、本発明の満腹感誘導組成物は、発酵ホエイとベース飲食品を混合したり、あるいは、ベース飲食品に発酵ホエイを塗布することなどによって得ることができる。
本発明の満腹感誘導組成物は、飲食品として用いる場合、通常用いられる飲食品の形態、例えば、固体状(粉末、顆粒状、タブレット状等)、ゲル状(ゼリー状)、ペースト状(流動食状)、液状、懸濁液状などの形態を取ることができる。中でも、簡便に摂取しうる点、および、吸収性等の点から、飲料(液状または懸濁液状)の形態が好ましい。
【0025】
本発明の満腹感誘導組成物の成分となりうるその他の成分としては、特に限定されないが、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を使用することができる。タンパク質としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α―カゼイン、β―カゼイン、κ−カゼイン、β―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これら加水分解物;バター、乳清ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分などが挙げられる。糖質としては、一般の糖類、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられる。ミネラル類としては、例えば、カルシウム、リン、カリウム、マグネシウム、塩素、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、クロム、モリブデン、バナジウム、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。
その他の成分は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
本発明の満腹感誘導組成物中の発酵ホエイの固形分の含有率は、特に限定されないが、本発明の組成物の摂取量が多量でなくても満腹感を十分に与える観点から、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、特に好ましくは6重量%以上である。
該含有率の上限は、特に限定されない。
発酵ホエイのみによって、本発明の満腹感誘導組成物を構成することも可能である。この場合も、本明細書においては「組成物」と称することとする。
本発明の満腹感誘導組成物は、食事の4時間前から食事直前までの間に摂取することが好ましい。食事開始後に摂取した場合、その食事に関し、食事の量を減少させて、摂取エネルギー量を抑制する効果を十分に得ることができないことがある。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[発酵ホエイの調製]
甘性ホエイ粉14.0重量部と、水道水85.8重量部を混合して、40〜60℃まで温度を高めて溶解し、発酵ホエイの原料を調製し、pH調整剤である重曹(炭酸水素ナトリウム)を0.1重量部添加してpHを6.65に調整し、これを95℃、10分間加熱殺菌した後に、45℃に冷却した。次に、「明治ブルガリアヨーグルト」(商品名;明治乳業社製)より単離したラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の混合スターターを0.1重量部(以上の合計量は100重量部である。)接種し、タンク内において、45℃で発酵させ、6〜8時間後、乳酸酸度が0.73%に到達した時点で、10℃以下に冷却した。
この得られた発酵ホエイ液について、20℃の温度下で100〜150L/hの流量で一段加圧を約10MPa、二段加圧を約5MPaで均質化して、発酵ホエイ液を得た。
得られた発酵ホエイ液は、全固形分が13.72重量%、タンパク質が1.69重量%、灰分が0.91重量%の各含有率を有していた。また、得られた発酵ホエイ液のpHは4.3〜4.7であった。
得られた発酵ホエイ液を用いて、以下の「実験3」を行った。
また、得られた発酵ホエイ液を凍結乾燥して、水分を除去することによって、発酵ホエイ粉を得た。この発酵ホエイ粉を用いて、以下の「実験1」および「実験2」を行った。
【0028】
[実験1:発酵ホエイ粉を配合した高脂肪飼料を投与したラットの摂食抑制試験]
11週齢SD系雄ラット(体重:354.2±1.8g)を平均体重が均一になるように、対照群(対照飼料群、n=12;ここでnはラットの数である。)、比較群1(高脂肪食群、n=10)、比較群2(ホエイ+高脂肪食群、n=11)、及び本発明による実施例群(発酵ホエイ+高脂肪食群、n=11)の4群に分け、それぞれの試験飼料(表1参照)を13日間給与した。その時の摂取エネルギー量および体重増加量を測定した。摂取エネルギー量は、それぞれの個体が食べた飼料の量からエネルギー値(単位:cal)に換算したものである。対照飼料以外の試験飼料3種の脂質、糖質、タンパク質、カルシウム、リンの各成分の含量は、表1に示すように3種間で同等になるように調節した。
統計解析は、対照群と他の群間の平均値の有意差検定、ならびに、比較群1と比較群2、実施例群の間の平均値の有意差検定を、Dunnett多重検定法によって行った。
【0029】
【表1】
【0030】
得られた結果を、摂取エネルギー量と体重増加量に分けて、それぞれ図1及び図2に示す。
図1から明らかなように、比較群1(高脂肪食)および比較群2(ホエイ+高脂肪食)は、対照群(対照食)と比較して有意に高い摂取エネルギー量を示した。この時、比較群2(ホエイ+高脂肪食群)の摂取エネルギー量は比較群1(高脂肪食)と同等であったが、本発明の実施例群(発酵ホエイ+高脂肪食)は比較群1(高脂肪食)と比較して有意に低い摂取エネルギー量を示した。また図2に示すように、比較群1(高脂肪食)及び比較群2(ホエイ+高脂肪食)は、対照群(対照食)と比較して一日当たりの体重増加量が有意な高値を示したが、本発明の実施例群(発酵ホエイ+高脂肪食)の体重増加量は対照群(対照食)と同等であった。
以上より、発酵ホエイの摂取は、発酵ホエイを摂取しない場合に比べて、摂取エネルギー量を減少させて、高脂肪の摂取による体重の増加を抑制することが示された。
【0031】
[実験2:ラットへの発酵ホエイの1回の経口投与が摂食量に及ぼす影響]
SD系雄ラット(体重:270.4±2.3g)を飼料摂取量および体重が均等になるようにそれぞれ4群(n=8/群)に分けた。ラットは一晩の絶食を行った後、それぞれの群に、発酵ホエイ粉を0、10、30または50g/100mlとなるようにイオン交換水に懸濁した溶液を、10ml/kgBWの摂取量となるように強制経口投与した。それぞれの群を水群(対照群;発酵ホエイ粉の量が0g/100mlの群)、YW1g/kgBW群(発酵ホエイ粉の量が10g/100mlの群)、YW3g/kgBW群(発酵ホエイ粉の量が30g/100mlの群)、YW5g/kgBW群(発酵ホエイ粉の量が50g/100mlの群)の4群とした。なお、「YW1g/kgBW群」〜「YW5g/kgBW群」は、いずれも本発明の実施例群である。
強制経口投与から20分後に、全てのラットにAIN−93M飼料を十分量給与し、給与から1時間後、3時間後の各時点における飼料摂取量ならびに、投与エネルギー量(強制経口投与時の摂取エネルギー量、すなわち、発酵ホエイの摂取エネルギー量)と摂取エネルギー量(飼料の摂取量から換算したエネルギー量)の合計エネルギー量を測定した。
なお、全てのデータについて、対照群とそれぞれの実施例群間の平均値の有意差検定を、Dunnett多重検定法を用いて行った。
【0032】
以上のデータについて、各群の各時間(1時間または3時間)の飼料摂取量を図3に、各群の各時間(1時間または3時間)の摂取エネルギー量と投与エネルギー量の合計エネルギー量を図4にそれぞれ示す。
図3から明らかなように、本発明の実施例群であるYW5g/kgBW群の1時間の飼料摂取量は、対照群と比較して有意に低い値を示した。また、他の実施例群であるYW3g/kgBW群の1時間の飼料摂取量は、対照群に対して低い傾向を示した。また、本発明の実施例群であるYW1g/kgBW群、YW3g/kgBW群およびYW5g/kgBW群の3時間の飼料摂取量は、いずれも対照群と比較して有意に低い値を示した。
図4から明らかなように、投与エネルギー量(発酵ホエイのエネルギー量)と摂取エネルギー量(飼料のエネルギー量)の合計量は、1時間飼料給与の場合には、実施例群であるYW5g/kgBW群が対照群と比較して低い傾向を示した。また、3時間飼料給与の場合には、発酵ホエイを投与した全ての本発明の実施例群で、対照群と比較して有意に低い値を示した。
以上より、発酵ホエイには、本発明の組成物の投与後の摂食を抑制する作用があることが示された。
【0033】
[実験3:ヒトによる発酵ホエイ含有飲料の食前の摂取が食後の満腹感に及ぼす影響]
(1)発酵ホエイ含有飲料の調製
発酵ホエイ液59.45重量部、クリーム(乳脂肪分45%)2.98重量部、ペクチン(固形分)0.40重量部、スクラロース0.0014重量部、および水道水37.1686重量部を、10℃以下の温度を保ちつつ混合し、合計100重量部の発酵ホエイ含有飲料用ベースを調製した。混合にあたり、低温で溶解しづらいペクチンは、予め60℃以上の温水と混合して10分間以上保持して完全に溶解させた後、10℃以下に冷却して、ペクチン溶液とした。なお、ペクチン溶液中の水の量は、前記の水道水の量に含まれる。
攪拌しながら85℃5分間保持による殺菌を行い、殺菌処理後に冷却し、10℃以下とすることで、発酵ホエイ含有飲料を得た。
得られた発酵ホエイ含有飲料は、全固形分が10.1重量%、無脂乳固形分が8.2重量%、タンパク質が1.1重量%、灰分が0.56重量%、乳脂肪分が1.5%の各含有率を有していた。また、得られた発酵ホエイ含有飲料のpHは4.3〜4.6であった。
【0034】
(2)試験方法および結果
23〜48歳の健常な成人(平均年齢32歳)24名(男性9人、女性15人)を被験者とした。
以下の試験において、空腹感、満腹感、食欲、予測食事摂取量は、VAS(Visual Analog Scale)で評価した。VASとは、両端に対をなす極端な状態を表記した長さ100mmの線分上に、被験者自身に記入時の主観的な感覚を垂直な1本線で表してもらい、左端から引かれたその垂線までの長さを測定することによって、被験者の主観的な感覚を評価する方法である。
また、以下の式により、アペタイト・スコア(Appetite score)も算出した。
アペタイト・スコア=(食欲+空腹感+(100−満腹感)+予測食事摂取量)/4
被験者は、朝の8時50分に空腹感、満腹感、食欲、予測食事摂取量のVASを記入した後、9時に対照試料(緑茶)または発酵ホエイ含有試料のいずれかを180ml摂取した。さらに、被験者は、摂取から1時間後(10時)および昼食(12時〜12時55分)後の13時にも同様にVASを記入した。試験は各被験者に対して、5日以上10日未満の間隔を空けて試料を替えて計2回実施した。なお、各被験者は、昼食として、普段通りの時間に普段と同じ量をいずれの試験日においても摂取した。
統計解析は、対照群と発酵ホエイ群の平均値の有意差検定を、対応のあるt検定によって行った。
試験の結果を図5〜図14に示す。
【0035】
図5〜図9に示すように、発酵ホエイ含有試料を摂取した場合には、対照試料(緑茶)を摂取した場合に比べて、昼食後(13時)において、満腹感が有意に高い値を示し、食欲、予測食事摂取量、およびアペタイト・スコアが有意に低い値を示した。また、空腹感も低い傾向が認められた。
なお、試料摂取前において、空腹感、満腹感、食欲、予測食事摂取量、およびアペタイト・スコアについて、各群間の差は認められなかった。また、図10〜図14に示すように、試料摂取1時間後(10時)において、発酵ホエイ含有試料を摂取した場合には、対照試料(緑茶)を摂取した場合に比べて、空腹感、食欲、およびアペタイト・スコアが有意に低い値を示し、満腹感が有意に高い値を示した。また、予測食事摂取量も低い傾向が認められた。
これらの結果から、発酵ホエイには、摂取によって直ちに(例えば、1時間後に)満腹感を高める作用があること、および、食事の数時間前(例えば、3時間前)に摂取した場合であっても、食事の後の満腹感を高める作用があることがわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は満腹感誘導組成物に関し、特に、満腹感を誘導することによって食事の量を減らして、摂取エネルギー量を減少させ、メタボリックシンドロームによる心疾患等の成人病の予防または軽減を図るための満腹感誘導組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満の予防および治療は、健康の維持および増進のために非常に重要である。多くの疫学研究や病態生理学的研究の結果、肥満は、インスリン抵抗性という病態基盤を伴うため、耐糖能異常、高脂血症、高血圧などの様々な健康障害の原因となりうるメタボリックシンドロームを引き起こすことが明らかになっている。メタボリックシンドロームは、心筋梗塞や脳梗塞の発症のリスクの高い状態として知られている。このため、メタボリックシンドロームの予防および治療法は、近年注目を集めている。
【0003】
肥満の主な原因の一つは、過度の飲食による過剰なエネルギー量の摂取である。したがって、メタボリックシンドロームの予防または軽減のためには、摂取エネルギー量を減少させ、肥満を軽減させることが重要である。しかし、肥満の者にとって食事の量を自発的に減らすことは、節制の強い意思を要し、困難である。そのため、特定の化合物を含む医薬品や、特定の食品素材を含む食品を摂取することによって、食欲の抑制、空腹感の軽減、満腹感の誘導(増大)などを生じさせて、摂取エネルギー量を減少させることが、試みられている。
【0004】
特定の化合物を含む医薬品としては、例えば、特許文献1に、体重減少に影響を及ぼすためのブプロピオンなどを含む組成物であって、エネルギー消費の増大や、満腹感の増大や、食欲の抑制の作用を有する医薬組成物が開示されている。また、特許文献2に、3−低級アルカノイルオキシ酪酸などを有効成分とする、適度の食欲抑制効果を有する食欲抑制剤が開示されている。
特定の食品素材を含む食品としては、例えば、特許文献3に、満腹ペプチドであるコレシストキニン及びグルカゴン様ペプチドの細胞分泌を誘導することができるホエイタンパク質及び/又はホエイタンパク質加水分解物の、食用組成物中での使用が開示されている。また、特許文献4および特許文献5に、特定のトリグリセリドを食品中に含有させることによって、食欲抑制効果を与えることが開示されている。さらに、特許文献6に、特定のアミノ酸配列からなる大豆由来ペプチドである食欲抑制用ペプチドが開示されている。
【0005】
一方、チーズ等の製造時に副生するホエイは、各種の必須アミノ酸等を含み、栄養価が高いものの、風味が劣ることから、ほとんどが廃棄処分されている。このため、ホエイを食事素材として利用するための種々の技術が開発されている。
例えば、特許文献7に、固形分濃度が11〜35重量%で、かつ、pHが6.5〜8.0に調整されたホエイタンパク質水溶液を、高温殺菌した後、乳酸発酵させ、得られた発酵液を均質化することによって得られる、独特でかつスッキリとした風味と、良好な食感を有する発酵ホエイ調製物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4343948号公報
【特許文献2】特公平5−37404号公報
【特許文献3】特表2005−538704号公報
【特許文献4】特公平6−99321号公報
【特許文献5】特許第3653225号公報
【特許文献6】特許第3997114号公報
【特許文献7】WO 2008/136309 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載されている食欲抑制剤は、いずれも、有効成分として特殊な化合物を含む医薬品であるため、コスト面や入手の容易性等の点で問題がある。
上記の特許文献3〜6に開示された技術は、食品素材に関するものであるため、利用し易いという利点を有するものの、未だ実用化を阻害する問題点を含んでいる。例えば、ホエイタンパク質/ホエイタンパク質加水分解物や大豆由来ペプチドは、風味の点で継続的に摂取しづらいという問題を有する。トリグリセリドは、脂質であり、それ自体がメタボリックシンドロームのリスクファクターとなりうるため、好ましくない。
本発明の目的は、満腹感を誘導して摂取エネルギー量を減少させて、メタボリックシンドロームの軽減等を図ることができ、低コストで副作用がなく、良好な風味および食感を有する満腹感誘導組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、発酵ホエイが、摂取者の満腹感を誘導して、食事の量を減少させうること、および、その結果、メタボリックシンドロームの軽減等を期待することができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1]発酵ホエイを有効成分として含む満腹感誘導組成物。
[2]食事の4時間前から食事直前までの間に摂取するためのものである、前記[1]に記載の満腹感誘導組成物。
[3]前記発酵ホエイの固形分換算の摂取量が、食事1回に対して、ヒトの単位体重当たり、0.05g/kg以上となるように、摂取するためのものである、前記[1]又は[2]に記載の満腹感誘導組成物。
[4]前記満腹感誘導組成物中の前記発酵ホエイの固形分の割合が1重量%以上である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の満腹感誘導組成物。
[5]飲料である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の満腹感誘導組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の満腹感誘導組成物(以下、本発明の組成物ともいう。)の摂取によって、満腹感を誘導して、食事の量の減少によって摂取エネルギー量を減少させることができる。例えば、肥満者、メタボリックシンドローム患者、メタボリックシンドローム予備軍、糖尿病患者、過食症患者などの、摂取エネルギー量の減少が求められている者にとって、節制の強い意思を要さずに、自然に摂取エネルギー量を減少させることができる。その結果、メタボリックシンドロームの軽減などによって、心疾患等の成人病の発生の抑制または症状の軽減を期待することができる。
特に、本発明の組成物は、満腹感の持続時間が例えば4時間以上と長いため、本発明の組成物の摂取時から例えば3時間後に食事した場合において、本発明の組成物を摂取せずに同量の食事をした場合に比べて、食後の満腹感を高めることができる。このことは、本発明の組成物を摂取すれば、食事の量を通常より減らしても、本発明の組成物を摂取せずかつ食事の量を減らさない場合と同程度の食後の満腹感を得ることができることを意味する。
また、空腹感があるものの食事をする時間が取れない時などに、本発明の組成物を摂取することによって、手軽に小腹を満たすことができる。
また、本発明の組成物は、発酵による独特で良好な風味と、スッキリとした爽やかな風味を合わせ持ち、かつ舌触りが滑らかな食感であるため、継続的に摂取し易い。
また、本発明の組成物は、副作用の有無の確認が必要な有機合成化合物を用いたものではなく、牛乳等の乳に由来する天然の原料であるホエイを用いたものであるため、安全性に優れ、取り扱いについても制限が緩く、製造コストも低く抑えることができる。
また、本発明の組成物は、従来ほとんどが廃棄処分されていたホエイを主原料とするものであり、ホエイの利用を促進し、廃棄物の量の削減を図りうる点でも価値が高い。
さらに、本発明の組成物は、熱安定性にも優れているため、高温殺菌して飲料として摂取することが可能であり、高い実用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発酵ホエイを配合した高脂肪飼料の摂食抑制試験におけるラットの各群の摂取エネルギー量(kcal/日)を示すグラフである(平均値±標準誤差、*:p<0.05)。
【図2】図1と同じ試験におけるラットの各群の体重増加量(g/日)を示すグラフである(平均値±標準誤差、*:p<0.05)。
【図3】発酵ホエイを1回だけ経口投与した試験におけるラットの各群の飼料摂取量(g)を示すグラフである(平均値±標準誤差、*:p<0.05,実施例群vs対照群)。
【図4】図3と同じ試験における摂取エネルギー量(発酵ホエイのエネルギー量)と投与エネルギー量(飼料のエネルギー量)の合計量を示すグラフである(平均値±標準誤差、*:p<0.05,実施例群vs対照群)。
【図5】発酵ホエイ含有飲料の食事前摂取試験におけるヒトの各群の食事後の空腹感を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図6】図5と同じ試験におけるヒトの各群の食事後の満腹感を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図7】図5と同じ試験におけるヒトの各群の食事後の食欲を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図8】図5と同じ試験におけるヒトの各群の食事後の予測食事摂取量を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図9】図5と同じ試験におけるヒトの各群の食事後のアペタイト・スコアを示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図10】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後の空腹感を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図11】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後の満腹感を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図12】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後の食欲を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図13】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後の予測食事摂取量を示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【図14】図5と同じ試験におけるヒトの各群の発酵ホエイ含有飲料摂取1時間後のアペタイト・スコアを示すグラフである(平均値±標準誤差)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に述べる個々の実施形態には限定されない。なお、本明細書において特に明示しない場合、%は重量%を示す。
本発明に用いられる発酵ホエイは、様々な方法で調製することができる。
その中でも特に、固形分濃度が11〜35重量%で、かつ、pHが6.5〜8.0に調整されたホエイタンパク質水溶液を、高温殺菌した後、乳酸発酵させ、得られた発酵液をそのまま均質化することによって発酵ホエイを得る方法が好ましい。以下、発酵ホエイの製造方法について詳しく説明する。
【0012】
発酵ホエイに用いられるホエイ(乳清)の由来は特に限定されず、例えば、チーズやヨーグルト等の発酵させた乳や、酸味料を添加させることで人工的に酸凝固した乳などが挙げられる。ホエイの一例として、チーズの製造時に副生するものが挙げられる。ここで、乳としては、牛乳、羊乳、山羊乳などが挙げられる。
ホエイタンパク質水溶液としては、少なくともホエイタンパク質と水を含むものであればよく、例えば、ホエイの原液、ホエイの濃縮液、ホエイ粉と水の混合物、ホエイの還元溶液などが挙げられる。
本発明で使用可能なホエイタンパク質としては、ホエイタンパク濃縮物(WPC(Whey Protein Concentrate))、ホエイタンパク分離物(WPI(Whey Protein Isolate))、甘性ホエイ粉、脱塩ホエイ粉、脱脂粉乳などが挙げられる。これらのホエイタンパク質は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。ホエイタンパク質として、市販品を使用しても良い。
ホエイタンパク質の成分組成は、次のとおりである。
ホエイタンパク濃縮物(WPC)の一例では、固形分が95.5%であり、このうち、タンパク質が76.0%、乳糖が12.0%、灰分が2.5%である。ホエイタンパク分離物(WPI)の一例では、固形分が94.1%であり、このうち、タンパク質が90.0%、乳糖が1.7%、灰分が1.8%である。甘性ホエイ粉の一例では、固形分が97.0%であり、このうち、タンパク質が12.0%、乳糖75.5%、灰分8.5%である。脱塩ホエイ粉の一例では、固形分が98.1%であり、このうち、タンパク質が11.8%、乳糖が79.7%、灰分が5.6%である。脱脂粉乳の一例では、固形分が95.5%であり、このうち、タンパク質が34.0%、乳糖53.5%、灰分8.0%である。
なお、タンパク質の量(濃度)は、必要であれば、例えば、ケルダール法、ローリー法などのような慣用の方法・装置により容易に測定することができる。
【0013】
本発明に使用されるホエイタンパク質は、好ましくは、ホエイタンパク濃縮物(WPC)、甘性ホエイ粉、脱塩ホエイ粉、またはこれらの中から選ばれる二種以上の混合物であり、より好ましくは、甘性ホエイ粉とホエイタンパク濃縮物(WPC)の混合物である。甘性ホエイ粉とWPCの混合物の重量比(甘性ホエイ粉:WPC)は、好ましくは1:2〜2:1、より好ましくは1:1〜2:1である。
使用するホエイタンパク質水溶液において、固形分濃度は、好ましくは11〜35重量%、より好ましくは12〜30重量%、さらに好ましくは13〜25重量%に調整する。このとき、ホエイタンパク質の濃度は、好ましくは1.3〜4.5重量%、より好ましくは1.5〜4.0重量%、さらに好ましくは1.7〜3.0重量%である。このような範囲であることは、ホエイタンパク質を変性させて、適度な粒径の凝集物を形成させる観点から好ましい。
なお、本発明において、ホエイタンパク質水溶液中の固形分濃度は、例えば、簡易水分測定法、混砂法などのような慣用の方法・装置により容易に求めることができる。
【0014】
ホエイタンパク質水溶液の調製のためにホエイタンパク質と水を混合する際に、必要に応じて、水の温度を40〜60℃に調整することができる。また、必要に応じて、溶解機として、パワーブレンダー、ホモミキサー、高速攪拌機等を使用することができる。
ホエイタンパク質水溶液は、高温殺菌処理前に、pHを6.5〜8.0に調整することが好ましい。pH調整は、好ましくはpH調整剤を使用して行う。pH調整剤は、上記の数値範囲内にpHを調整することができ、かつ、食品用に使用可能な安全性を有するものであればよい。pH調整剤は、典型的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群より選択される。pH調整剤は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0015】
発酵ホエイの製造方法においては、まず、固形分濃度が11〜35重量%で、かつpHが6.5〜8.0に調整されたホエイタンパク質水溶液を、高温殺菌処理(高温殺菌工程)に付す。ここで、高温殺菌処理における加熱条件は、食品(特に飲料)の分野において慣用の加熱殺菌処理条件であれば特に制限なく使用することができ、例えば90℃を超えた加熱条件を使用する。この加熱条件はタンパク質の熱変性を生じさせうる条件である。加熱殺菌時の温度の上限は、好ましくは150℃である。高温殺菌すると、高温菌等の雑菌を十分に死滅させることができるため、衛生面が改善され、後工程である乳酸発酵工程における菌増殖による汚染等を抑制しやすくなる。
本発明の好ましい態様によれば、高温殺菌処理は、例えば91℃〜99℃で5〜15分間、好ましくは92〜98℃で7〜13分間、より好ましくは93〜97℃で8〜12分間、特に好ましくは95℃で10分間である。別の好ましい態様によれば、高温殺菌処理は、例えば100℃〜150℃で1〜30秒間、好ましくは110〜140℃で1〜20秒間、より好ましくは115〜135℃で1〜10秒間、さらに好ましくは120〜130℃で1〜5秒間、特に好ましくは120℃で3秒間である。高温殺菌の後、必要により、処理した水溶液を冷却する。冷却する温度は、次の発酵工程での発酵温度に基づいて設定することができ、例えば30〜50℃である。
また、この高温殺菌処理の際、水溶液に圧力をさらに負荷しても良い。通常、加熱殺菌処理を行う場合、水溶液の沸騰を防止すること等を目的として、例えば、殺菌圧力を1〜10kg/cm2とする。本発明における殺菌処理では、加熱に加えて、このような圧力を加えても良い。高温殺菌処理装置としては、例えばプレート式熱交換器、チューブ式熱交換器、スチームインジェクション式殺菌機、スチームインフュージョン式殺菌機、通電加熱式殺菌機などがある。
本発明においては、このような高温殺菌処理によって得られる水溶液は、凝集物を含む。この凝集物の粒径は巨大ではなく、直ぐには沈殿しない適度な寸法である。水溶液中の凝集物の粒径は、通常、1〜100μm、好ましくは2〜80μm、より好ましくは4〜60μm、さらに好ましくは5〜50μmである。
このように凝集物は、直ぐには沈殿しないような寸法であるため、そのまま、ここに乳酸菌もしくは酵母を加えて、次の乳酸発酵処理に付すことができる。
なお、凝集物の粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100(株式会社島津製作所製)などを利用することにより測定することができる。
【0016】
発酵ホエイの製造方法における乳酸発酵とは、ホエイタンパク質水溶液を所定の微生物を用い、後述の所定の発酵条件にて発酵させ、有機酸(乳酸、コハク酸、リンゴ酸など)、特に乳酸を生成させるものをいう。乳酸発酵に使用する微生物としては、乳酸菌または酵母のいずれかを使用することが好ましい。乳酸発酵において、有機酸、特に乳酸の生成の有無および生成量は、対象とする溶液の酸度(%)を測定することにより確認することができる。ここで、「酸度」は、例えば、牛乳関係法令集(乳業団体衛生連絡協議会(日本)、平成16年(2004年)3月)の第56頁の「5 乳及び乳製品の酸度の測定法」に従って求めることができる。
【0017】
本発明で使用可能な乳酸菌としては、ホエイ発酵に使用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属等が挙げられる。これらの属に含まれる菌株の例としては、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等が挙げられる。
【0018】
本発明で使用可能な酵母としては、ホエイ発酵に使用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、カンジダ(Candida)属、クルベロミセス(Kluveromyces)属等が挙げられる。これらの属に含まれる菌株の例としては、カンジダ・ケフィア(Candida Kefyr)、クルベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces Marxianus)等が挙げられる。酵母を使って乳酸発酵を行うことで、乳酸菌を使用する場合と異なる風味を得ることができ、良好で多様な発酵ホエイを得ることが可能となる。
本発明においては、必要に応じて、乳酸菌を使用して得られた発酵ホエイと、酵母を使用して得られた発酵ホエイを混合して使用しても良い。
【0019】
スターターとして添加する菌の量は、通常、ホエイタンパク質水溶液中の乳酸菌(もしくは酵母)の濃度が108〜1010cfu/mL(典型的には109cfu/mL程度)となるような量であり、好ましくは、殺菌後のホエイタンパク質水溶液の重量100重量部に対して0.1〜3重量部の量である。
乳酸菌による発酵の条件は、好ましくは30〜50℃で1〜40時間、より好ましくは35〜45℃で2〜20時間、特に好ましくは37〜43℃で3〜10時間である。
酵母による発酵の条件は、好ましくは20〜40℃で1〜72時間、より好ましくは25〜35℃で12〜60時間、特に好ましくは27〜33℃で24〜48時間である。
【0020】
乳酸発酵の後、得られた発酵液に対して均質化処理を行ってもよい。これにより、発酵液に含まれる凝集物を微粒化することができる。発酵液を均質化する場合、発酵液に含まれる乳酸菌(もしくは酵母)および代謝産物を含んだまま、均質化を行う。すなわち、発酵液をそのまま均質化する。そのまま均質化することは、発酵液に適度な粘度(粘性)、優れた食感および風味、安定した保存性などを付与する観点から重要である。
【0021】
均質化処理は、例えばホモジナイザーを使用する場合、例えば10〜60℃で10〜50MPa(好ましくは12〜25MPa)、100〜1000L/hの条件で行うことができる。また、必要であれば、条件を変えて複数回処理しても良い。均質化処理の具体例として、20℃にて、第一段目の処理を7〜12MPaで行い、第二段目の処理を3〜6MPaで行うことが挙げられる。ただし、均質化処理の流量については、実態に合わせて100L/h未満または1000L/hを超える流量に設定することも可能である。その時には、最終商品の設計に準拠して均質化処理の圧力を適宜調節することが可能である。
発酵ホエイは、本発明の満腹感誘導組成物の成分の一つとして用いられる。発酵ホエイの形態例としては、液体、懸濁液、ペースト、ゲル、乾燥粉末、凍結体等が挙げられる。
【0022】
本発明の満腹感誘導組成物の摂取量は、体重および肥満度と、予防もしくは改善しようとする症状の種類(例えば、メタボリックシンドローム)とを併せて考慮して、適宜定めることができる。
本発明の満腹感誘導組成物の摂取量は、特に限定されないが、満腹感の誘導の効果を十分に得る観点から、好ましくは、食事1回に対して、ヒトの単位体重当たり、発酵ホエイの量として、固形分換算で、好ましくは0.05g/kg以上、より好ましくは0.1g/kg以上、さらに好ましくは0.2g/kg以上である。該摂取量の上限は、継続的な摂取の容易性等の観点から、好ましくは5g/kg、より好ましくは3g/kg、特に好ましくは1g/kgである。
本発明の満腹感誘導組成物の摂取経路としては、経口、経管、経腸などが挙げられる。中でも、経口による摂取が好ましい。
【0023】
本発明の満腹感誘導組成物は、飲食品(特定保健用食品を含む。)、医薬品などの用途で用いることができる。
本発明の満腹感誘導組成物は、医薬品として用いる場合、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、溶液、懸濁液等の、経口摂取可能な形態を取ることが可能である。これらの各種の形態は、常法に従って、発酵ホエイと、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用されている既知の補助剤とを組み合わせることによって製造することができる。
本発明の満腹感誘導組成物は、飲食品として用いる場合であっても、医薬品と同様な形態を取ることが可能である。
【0024】
本発明の満腹感誘導組成物の成分となりうる飲食品(以下、ベース飲食品ともいう。)としては、例えば、牛乳、清涼飲料、発酵乳(ヨーグルト、ヨーグルト飲料等)、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、幼児用粉乳、授乳婦用粉乳などが挙げられる。ベース飲食品を用いる場合、本発明の満腹感誘導組成物は、発酵ホエイとベース飲食品を混合したり、あるいは、ベース飲食品に発酵ホエイを塗布することなどによって得ることができる。
本発明の満腹感誘導組成物は、飲食品として用いる場合、通常用いられる飲食品の形態、例えば、固体状(粉末、顆粒状、タブレット状等)、ゲル状(ゼリー状)、ペースト状(流動食状)、液状、懸濁液状などの形態を取ることができる。中でも、簡便に摂取しうる点、および、吸収性等の点から、飲料(液状または懸濁液状)の形態が好ましい。
【0025】
本発明の満腹感誘導組成物の成分となりうるその他の成分としては、特に限定されないが、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を使用することができる。タンパク質としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α―カゼイン、β―カゼイン、κ−カゼイン、β―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これら加水分解物;バター、乳清ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分などが挙げられる。糖質としては、一般の糖類、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられる。ミネラル類としては、例えば、カルシウム、リン、カリウム、マグネシウム、塩素、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、クロム、モリブデン、バナジウム、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。
その他の成分は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
本発明の満腹感誘導組成物中の発酵ホエイの固形分の含有率は、特に限定されないが、本発明の組成物の摂取量が多量でなくても満腹感を十分に与える観点から、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、特に好ましくは6重量%以上である。
該含有率の上限は、特に限定されない。
発酵ホエイのみによって、本発明の満腹感誘導組成物を構成することも可能である。この場合も、本明細書においては「組成物」と称することとする。
本発明の満腹感誘導組成物は、食事の4時間前から食事直前までの間に摂取することが好ましい。食事開始後に摂取した場合、その食事に関し、食事の量を減少させて、摂取エネルギー量を抑制する効果を十分に得ることができないことがある。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[発酵ホエイの調製]
甘性ホエイ粉14.0重量部と、水道水85.8重量部を混合して、40〜60℃まで温度を高めて溶解し、発酵ホエイの原料を調製し、pH調整剤である重曹(炭酸水素ナトリウム)を0.1重量部添加してpHを6.65に調整し、これを95℃、10分間加熱殺菌した後に、45℃に冷却した。次に、「明治ブルガリアヨーグルト」(商品名;明治乳業社製)より単離したラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の混合スターターを0.1重量部(以上の合計量は100重量部である。)接種し、タンク内において、45℃で発酵させ、6〜8時間後、乳酸酸度が0.73%に到達した時点で、10℃以下に冷却した。
この得られた発酵ホエイ液について、20℃の温度下で100〜150L/hの流量で一段加圧を約10MPa、二段加圧を約5MPaで均質化して、発酵ホエイ液を得た。
得られた発酵ホエイ液は、全固形分が13.72重量%、タンパク質が1.69重量%、灰分が0.91重量%の各含有率を有していた。また、得られた発酵ホエイ液のpHは4.3〜4.7であった。
得られた発酵ホエイ液を用いて、以下の「実験3」を行った。
また、得られた発酵ホエイ液を凍結乾燥して、水分を除去することによって、発酵ホエイ粉を得た。この発酵ホエイ粉を用いて、以下の「実験1」および「実験2」を行った。
【0028】
[実験1:発酵ホエイ粉を配合した高脂肪飼料を投与したラットの摂食抑制試験]
11週齢SD系雄ラット(体重:354.2±1.8g)を平均体重が均一になるように、対照群(対照飼料群、n=12;ここでnはラットの数である。)、比較群1(高脂肪食群、n=10)、比較群2(ホエイ+高脂肪食群、n=11)、及び本発明による実施例群(発酵ホエイ+高脂肪食群、n=11)の4群に分け、それぞれの試験飼料(表1参照)を13日間給与した。その時の摂取エネルギー量および体重増加量を測定した。摂取エネルギー量は、それぞれの個体が食べた飼料の量からエネルギー値(単位:cal)に換算したものである。対照飼料以外の試験飼料3種の脂質、糖質、タンパク質、カルシウム、リンの各成分の含量は、表1に示すように3種間で同等になるように調節した。
統計解析は、対照群と他の群間の平均値の有意差検定、ならびに、比較群1と比較群2、実施例群の間の平均値の有意差検定を、Dunnett多重検定法によって行った。
【0029】
【表1】
【0030】
得られた結果を、摂取エネルギー量と体重増加量に分けて、それぞれ図1及び図2に示す。
図1から明らかなように、比較群1(高脂肪食)および比較群2(ホエイ+高脂肪食)は、対照群(対照食)と比較して有意に高い摂取エネルギー量を示した。この時、比較群2(ホエイ+高脂肪食群)の摂取エネルギー量は比較群1(高脂肪食)と同等であったが、本発明の実施例群(発酵ホエイ+高脂肪食)は比較群1(高脂肪食)と比較して有意に低い摂取エネルギー量を示した。また図2に示すように、比較群1(高脂肪食)及び比較群2(ホエイ+高脂肪食)は、対照群(対照食)と比較して一日当たりの体重増加量が有意な高値を示したが、本発明の実施例群(発酵ホエイ+高脂肪食)の体重増加量は対照群(対照食)と同等であった。
以上より、発酵ホエイの摂取は、発酵ホエイを摂取しない場合に比べて、摂取エネルギー量を減少させて、高脂肪の摂取による体重の増加を抑制することが示された。
【0031】
[実験2:ラットへの発酵ホエイの1回の経口投与が摂食量に及ぼす影響]
SD系雄ラット(体重:270.4±2.3g)を飼料摂取量および体重が均等になるようにそれぞれ4群(n=8/群)に分けた。ラットは一晩の絶食を行った後、それぞれの群に、発酵ホエイ粉を0、10、30または50g/100mlとなるようにイオン交換水に懸濁した溶液を、10ml/kgBWの摂取量となるように強制経口投与した。それぞれの群を水群(対照群;発酵ホエイ粉の量が0g/100mlの群)、YW1g/kgBW群(発酵ホエイ粉の量が10g/100mlの群)、YW3g/kgBW群(発酵ホエイ粉の量が30g/100mlの群)、YW5g/kgBW群(発酵ホエイ粉の量が50g/100mlの群)の4群とした。なお、「YW1g/kgBW群」〜「YW5g/kgBW群」は、いずれも本発明の実施例群である。
強制経口投与から20分後に、全てのラットにAIN−93M飼料を十分量給与し、給与から1時間後、3時間後の各時点における飼料摂取量ならびに、投与エネルギー量(強制経口投与時の摂取エネルギー量、すなわち、発酵ホエイの摂取エネルギー量)と摂取エネルギー量(飼料の摂取量から換算したエネルギー量)の合計エネルギー量を測定した。
なお、全てのデータについて、対照群とそれぞれの実施例群間の平均値の有意差検定を、Dunnett多重検定法を用いて行った。
【0032】
以上のデータについて、各群の各時間(1時間または3時間)の飼料摂取量を図3に、各群の各時間(1時間または3時間)の摂取エネルギー量と投与エネルギー量の合計エネルギー量を図4にそれぞれ示す。
図3から明らかなように、本発明の実施例群であるYW5g/kgBW群の1時間の飼料摂取量は、対照群と比較して有意に低い値を示した。また、他の実施例群であるYW3g/kgBW群の1時間の飼料摂取量は、対照群に対して低い傾向を示した。また、本発明の実施例群であるYW1g/kgBW群、YW3g/kgBW群およびYW5g/kgBW群の3時間の飼料摂取量は、いずれも対照群と比較して有意に低い値を示した。
図4から明らかなように、投与エネルギー量(発酵ホエイのエネルギー量)と摂取エネルギー量(飼料のエネルギー量)の合計量は、1時間飼料給与の場合には、実施例群であるYW5g/kgBW群が対照群と比較して低い傾向を示した。また、3時間飼料給与の場合には、発酵ホエイを投与した全ての本発明の実施例群で、対照群と比較して有意に低い値を示した。
以上より、発酵ホエイには、本発明の組成物の投与後の摂食を抑制する作用があることが示された。
【0033】
[実験3:ヒトによる発酵ホエイ含有飲料の食前の摂取が食後の満腹感に及ぼす影響]
(1)発酵ホエイ含有飲料の調製
発酵ホエイ液59.45重量部、クリーム(乳脂肪分45%)2.98重量部、ペクチン(固形分)0.40重量部、スクラロース0.0014重量部、および水道水37.1686重量部を、10℃以下の温度を保ちつつ混合し、合計100重量部の発酵ホエイ含有飲料用ベースを調製した。混合にあたり、低温で溶解しづらいペクチンは、予め60℃以上の温水と混合して10分間以上保持して完全に溶解させた後、10℃以下に冷却して、ペクチン溶液とした。なお、ペクチン溶液中の水の量は、前記の水道水の量に含まれる。
攪拌しながら85℃5分間保持による殺菌を行い、殺菌処理後に冷却し、10℃以下とすることで、発酵ホエイ含有飲料を得た。
得られた発酵ホエイ含有飲料は、全固形分が10.1重量%、無脂乳固形分が8.2重量%、タンパク質が1.1重量%、灰分が0.56重量%、乳脂肪分が1.5%の各含有率を有していた。また、得られた発酵ホエイ含有飲料のpHは4.3〜4.6であった。
【0034】
(2)試験方法および結果
23〜48歳の健常な成人(平均年齢32歳)24名(男性9人、女性15人)を被験者とした。
以下の試験において、空腹感、満腹感、食欲、予測食事摂取量は、VAS(Visual Analog Scale)で評価した。VASとは、両端に対をなす極端な状態を表記した長さ100mmの線分上に、被験者自身に記入時の主観的な感覚を垂直な1本線で表してもらい、左端から引かれたその垂線までの長さを測定することによって、被験者の主観的な感覚を評価する方法である。
また、以下の式により、アペタイト・スコア(Appetite score)も算出した。
アペタイト・スコア=(食欲+空腹感+(100−満腹感)+予測食事摂取量)/4
被験者は、朝の8時50分に空腹感、満腹感、食欲、予測食事摂取量のVASを記入した後、9時に対照試料(緑茶)または発酵ホエイ含有試料のいずれかを180ml摂取した。さらに、被験者は、摂取から1時間後(10時)および昼食(12時〜12時55分)後の13時にも同様にVASを記入した。試験は各被験者に対して、5日以上10日未満の間隔を空けて試料を替えて計2回実施した。なお、各被験者は、昼食として、普段通りの時間に普段と同じ量をいずれの試験日においても摂取した。
統計解析は、対照群と発酵ホエイ群の平均値の有意差検定を、対応のあるt検定によって行った。
試験の結果を図5〜図14に示す。
【0035】
図5〜図9に示すように、発酵ホエイ含有試料を摂取した場合には、対照試料(緑茶)を摂取した場合に比べて、昼食後(13時)において、満腹感が有意に高い値を示し、食欲、予測食事摂取量、およびアペタイト・スコアが有意に低い値を示した。また、空腹感も低い傾向が認められた。
なお、試料摂取前において、空腹感、満腹感、食欲、予測食事摂取量、およびアペタイト・スコアについて、各群間の差は認められなかった。また、図10〜図14に示すように、試料摂取1時間後(10時)において、発酵ホエイ含有試料を摂取した場合には、対照試料(緑茶)を摂取した場合に比べて、空腹感、食欲、およびアペタイト・スコアが有意に低い値を示し、満腹感が有意に高い値を示した。また、予測食事摂取量も低い傾向が認められた。
これらの結果から、発酵ホエイには、摂取によって直ちに(例えば、1時間後に)満腹感を高める作用があること、および、食事の数時間前(例えば、3時間前)に摂取した場合であっても、食事の後の満腹感を高める作用があることがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵ホエイを有効成分として含む満腹感誘導組成物。
【請求項2】
食事の4時間前から食事直前までの間に摂取するためのものである、請求項1に記載の満腹感誘導組成物。
【請求項3】
前記発酵ホエイの固形分換算の摂取量が、食事1回に対して、ヒトの単位体重当たり、0.05g/kg以上となるように、摂取するためのものである、請求項1又は2に記載の満腹感誘導組成物。
【請求項4】
前記満腹感誘導組成物中の前記発酵ホエイの固形分の割合が1重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の満腹感誘導組成物。
【請求項5】
飲料である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の満腹感誘導組成物。
【請求項1】
発酵ホエイを有効成分として含む満腹感誘導組成物。
【請求項2】
食事の4時間前から食事直前までの間に摂取するためのものである、請求項1に記載の満腹感誘導組成物。
【請求項3】
前記発酵ホエイの固形分換算の摂取量が、食事1回に対して、ヒトの単位体重当たり、0.05g/kg以上となるように、摂取するためのものである、請求項1又は2に記載の満腹感誘導組成物。
【請求項4】
前記満腹感誘導組成物中の前記発酵ホエイの固形分の割合が1重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の満腹感誘導組成物。
【請求項5】
飲料である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の満腹感誘導組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−239774(P2011−239774A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150939(P2010−150939)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】
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