説明

満腹誘発組成物

本発明は、体重管理の分野に関する。本発明は、特に満腹を誘発する方法に関する。その実施形態の1つでは、本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、体重管理の分野に関する。本発明は、特に満腹を誘発する方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
世界保健機関(WHO)は、過体重を世界的な十大リスク疾患の一つ、そして先進国(WHO)における五大リスク疾患の一つであると認定している。ほとんどの人口集団で、過体重および肥満症の罹患率は過去20年間にわたって着実に増加してきている(Vasan RSら、2005年)。したがって人口集団内の相対体重の増加傾向は、ヘルスケア提供者の間で大きな懸念を引き起こしている(Hill JOら、2003年)。過体重とそれに関連した健康上の影響の蔓延を考えると、低価格かつ効果的な体重管理戦略に対する大きな必要性がある。
【0003】
過体重および肥満症に対する非侵襲的な一次治療法としては、低カロリーダイエット(食欲抑制)が広く推奨されているアプローチである。全国調査からのデータを使用して、エネルギー収支に1日当たり100キロカロリー(例えば毎日のエネルギー摂取の約4%)の影響を及ぼすことにより、米国人口のほとんどで体重増加を予防し得ると推定された(Hillら、2003年)。この文脈で、満腹を調節する機序に影響を与えるようにデザインされた成分が、特にそれらが毎日の食物に組み込まれるのであれば、役立つかもしれない。
【0004】
胃腸のシグナルは、食物摂取、満腹、および飽食の調節にとって極めて重要である。毎食毎の満腹感は、大体において、摂取した食物の機械的および化学的特性に応えて消化管から生じる、協調的な一連の神経性および体液性シグナルによって決まる(Woods SCら、2004年)。
【0005】
満腹感を延長させて食物摂取量を低下させるオプションは、胃内容排出および/または小腸通過時間を遅らせることによる(Geliebter Aら、1988年)(Jones KLら、1997年)(Hveem Kら、1996年)。これは回腸ブレーキの活性化によって達成されてもよい(Van Citters GWら、1999年)。回腸ブレーキは、胃腸管を通じて食餌の通過を調節する一次抑制性遠位近位フィードバック機序であり、栄養素の消化および吸収を調節して最適化すると考えられる(Van Citters GWら、1999年)。
【0006】
回腸に少量の脂肪を食後注入することで、空腹感が軽減し満腹感が増大することが実証されている。小腸内の脂肪の存在は、胃内容排出の調節(Heddle Rら、1989年)、小腸近位からのCCK(Buffa Rら、1976)、および小腸遠位からのペプチドYY(PYY)(Adrian TEら、1985年)をはじめとする胃腸のホルモン分泌(Macintosh CGら、1999年)と関係がある。小腸(遠位部)内の脂肪にはまた、食欲およびエネルギー摂取量を抑制する能力もある(Chapman IMら、1999年)。
【0007】
いくつかの研究は、回腸内への脂質の直接送達が胃内容排出を遅延させ(Welch IMら、1988年)、小腸通過時間を延長し(Read NWら、1984年)、満腹を誘発する(Welch Iら、1985年)ことを示している。
【0008】
長鎖脂肪酸は回腸ブレーキの強力な誘因であり(Van Citters GWら、1999年)(Read NWら、1984年)、少量の脂肪または遊離脂肪酸によって、回腸ブレーキが既に活性化されることをいくつかの研究が実証している(Keller Jら、2006年)(Pironi Lら、1993年)(Dobson CLら、1999年)。運動性、ホルモン放出、およびエネルギー摂取(をはじめとする胃腸の機能に対する遊離脂肪酸の効果Feltrin KLら、2004年)(Hunt JNら、1968年)(Matzinger Dら、2000年)(McLaughlin Jら、1999年)は、それらのアシル鎖長にもまた左右される。HuntおよびKnox(Hunt JNら、1968年)は、炭素原子12個以上の鎖長の脂肪酸が、炭素原子10個以下を含有する脂肪酸よりもはるかに遅く胃から出て行くことを初めて実証した。
【0009】
長鎖脂肪酸(>C12)が引き続くエネルギー摂取を抑制する機序は、不明である。長鎖脂肪酸の効果がCCKの放出に左右されるといういくつかの証拠があり(Lal Sら、2004年)、例えば胃内容排出および胃内容積認知に対するC12の抑制効果は、CCK1受容体拮抗薬ロキシグルミドによって弱まる(Lal Sら、2004年)。脂肪酸の効果はまた、直接にまたはCCKを通じてのどちらかで、求心性迷走神経の活性化を伴うようである(Cox JEら、2004年)(Lal Sら、2001年)。エネルギー摂取量に対するC12の効果はまた、GLP−1の作用(Feltrin KLら、2004)、そして多分その他のペプチドの作用を通じて、そして胃腸の運動性の変化、恐らく特に幽門運動性の刺激(XuXら、2005)によって仲介されるかもしれない。
【0010】
[脂肪代謝]
ほとんどの食餌性脂質は、空腸の近位3分の2で吸収される。常態では94%を超える食餌性脂肪が吸収される。大部分がトリグリセリドからなる食餌性脂質は、乳化されて大きな表面積が脂肪分解酵素に暴露されなくてはならない。乳化は咀嚼および胃での混合を通じて胃腸管上部に始まる。これらの機序的手段によって放出された脂肪小滴は、リン脂質で被覆されて安定したエマルジョンを形成する。摂取したリン脂質(大部分はホスファチジルコリン)は、トリグリセリドに対しておよそ1:30の比率で存在し、それはコーティングのために適切である。エマルジョンが十二指腸に達したら、胆汁からの追加的リン脂質が添加される。
【0011】
脂肪加水分解は、舌リパーゼおよび胃リパーゼの作用によって胃内で始まる。胃の脂肪分解によって放出された遊離脂肪酸は、脂質加水分解の大部分に関与する膵臓のリパーゼおよびコリパーゼの刺激に寄与する。
【0012】
次に十二指腸中の脂質エマルジョンは、膵臓のリパーゼに曝露されてモノグリセリドと脂肪酸に分解する。この形態で脂質は可溶化されて、混合ミセルとしてもまた知られている、リン脂質および胆汁からなる小型の脂質粒子になる。これらの混合ミセルは遊離脂肪酸およびモノグリセリドを腸管壁に輸送し、そこで脂質は腸管壁を超えて吸収される。
【0013】
満腹を制御する中枢シグナルの同定における大きな進歩、および食欲調節薬の開発におけるかなりの投資にもかかわらず、改善が必要である。
【0014】
[発明の概要]
発明者らは、満腹を誘発し得る新規方法を同定した。前記脂質の一部である特定の脂質を投与すると(場合により胃腸脂肪分解後に)、胃腸管内で結晶形態を取ることが示されている。理論により拘束されることなく、これらの結晶脂質は空腸内で吸収不良であるだけでなく、より低部でより遠位の小腸に輸送されると考えられる。脂質が結晶形態にあると、身体による脂質吸収速度は低下すると考えられる。小腸のより低部(すなわち回腸)では、結晶は緩慢に再溶解して混合ミセルになり、それを通じて脂質は回腸壁に輸送され身体に吸収され得る。結果として身体は、脂質が依然としてより遠位部の小腸内に存在することに気付くと考えられる。次に身体は満腹状態にあると脳にシグナルし、胃内容排出を減少させるよう胃にシグナルする(回腸ブレーキ機序)。換言すれば、胃腸管内の脂質吸収の調節を使用して、満腹がもたらされる。したがって本発明はまた、ヒトまたは動物において満腹を増大させるための、特に胃腸管内の、およびより特には回腸内の、脂肪酸結晶の使用にも関する。
【0015】
[発明の詳細な説明]
本明細書全体および添付の特許請求の範囲を通じて、「含んでなる(comprise)」および「含む(include)」という語、そして「含んでなる(comprises)」、「含んでなる(comprising)」,「含む(includes)」および「含む(including)」などのバリエーションは、包括的に解釈されるものとする。すなわちこれらの語は、文脈が許せば、具体的に列挙されないその他の要素または整数の可能な包含を伝達することが意図される。結晶および結晶性は、本明細書で同義的に使用される。
【0016】
特に断りのない限り脂質%は、脂質の総重量を基準として重量百分率で記載される(すなわちw/w%)。
【0017】
「a」および「an」と言う冠詞は、本明細書では、冠詞の1つまたは1つを超える(すなわち1つまたは少なくとも1つの)文法的目的語を指すために使用される。一例として「要素(an element)」は、1つの要素または1つを超える要素を意味してもよい。
【0018】
その実施形態の1つで、本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供する。
【0019】
好ましくはこのような方法は、美容法または非治療的方法である。本発明はまた、後でより詳細に考察する治療目的のために対象(すなわち動物またはヒト)を処置する方法も提供する。
【0020】
したがって本発明は、治療的理由で(例えば過体重に分類される個人において)、予防的理由で、または美容またはその他の非治療的理由で(例えば過体重であると分類されない個人において)使用し得る方法を提供する。
【0021】
本発明は、満腹感を誘発する方法、すなわち摂食に対する必要性を低下させて次の食事までの間隔に影響を及ぼし、それによって食事の頻度または食事のサイズを調節し、ならびに食間の摂食または間食を低下させる、食後事象を誘発する方法を提供する。これはまた、食欲抑制効果を提供する方法と称されてもよい。
【0022】
代案としては、本発明は、有効量の脂質をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物の胃腸管内、特に小腸内で、脂質結晶形成を提供する方法を提供する。さらに本発明は、有効量の脂質結晶をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物の胃腸管内、特に小腸内で脂質結晶を提供する方法を提供する。本発明に従った方法を使用して、ヒトまたは(非ヒト)動物などの対象において満腹感を誘発し得る。好ましくは、本発明に従った方法を使用して、ヒトにおいて満腹感を誘発する。
【0023】
満腹感を誘発するのに使用される脂質は、腸内でまたは好ましくは経口的に提供される。後でより詳細に考察されるように、提供された脂質の一部は胃腸管を通過する間に結晶構造を取ることができ、あるいは前記脂質の少なくとも一部が投与前に結晶構造を有するように脂質の少なくとも一部が処理されている。さらに前記脂質はまた、脂肪分解の結果として形成されて、引き続いて結晶構造を取り得る。選択される経路とは関係なく、前記脂質の一部は結晶構造をしている。結晶(または結晶性固体)は、その構成原子、分子またはイオンが、3つの空間次元全てにおいて広がる規則正しく繰り返すパターンに配列する固形物である。結晶は、異なる形状または構造を有し得る。好ましい実施形態では、本発明に従った方法で使用される脂質の一部は、針状構造または形状を取ることができる。このような針の平均長さは5〜50μmであり得て、光学顕微鏡検査での観察による平均サイズはおよそ20μmである。典型的に、言及される結晶サイズは単結晶に言及し、複数の別々の単結晶の凝集体はより大きくてもよい。結晶は針状であり得て、典型的な縦横比(長さ対幅)は少なくとも5であり得る。
【0024】
本明細書の実験部分で開示されるように、結晶は、特定の脂質を摂取した人々からの空腸サンプルに見られた。その側面の1つでは、使用された脂質は、小腸内で、より好ましくは空腸内で、または脂質が空腸に入る前に、結晶構造を取ることができなくてはならない。したがって本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記脂質の少なくとも一部は空腸内で結晶形態にある。
【0025】
比較できる結晶構造はまた、例えば胃、十二指腸内および/または回腸(すなわち遠位でより低部の小腸の一部)内に存在し得る。
【0026】
ヒトまたは非ヒト動物から採取されたサンプルを分析すると、結晶を形成する調合物の脂質組成と、このような結晶を形成せずまたはほとんど形成しないその他の調合物(例えば乳性脂肪を含んでなるミルクの摂取を許されたヒトまたは動物体から採取されたサンプルなど)の脂質組成とに見られる違いに基づいて、このようなサンプル中の脂質の少なくとも20%(w/w)は典型的に結晶形態にある。
【0027】
したがって「その少なくとも一部が結晶形態にある脂質」という用語は、本明細書での用法では、典型的に「脂質総重量を基準にしてその少なくとも20重量%が(小腸内、好ましくは空腸内で)結晶形態にある脂質」を指す。
【0028】
より好ましくは、これは少なくとも60w/w%、70w/w%、80w/w%、90w/w%など、少なくとも25w/w%、30w/w%、35w/w%、40w/w%、45w/w%、50w/w%、またはそれ以上を指す。
【0029】
使用される脂質は、典型的に固体または液体組成物の一部である。このような組成物のその他の構成要素は、(後により詳細に考察するように)乳化剤または香料構成要素または保存料であり得る。好ましくは前記組成物は、脂質ならびに乳化剤を含んでなる。別の態様では、脂質は組成物の唯一の(活性、すなわち満腹誘発)成分であり、好ましくは脂質は分散しており、その中では脂質が水相中に(100μm未満の)小型粒子として分散する。好ましくは、前記水相は、例えばタンパク質、炭水化物、香料、保存料、人工甘味料または繊維から選択される、少なくとも1つの追加的構成要素を含んでなる。さらに別の態様では、脂質は(恐らく乳化剤と共に)、組成物の唯一の(活性、すなわち満腹誘発)成分であり、好ましくは分散しており、その中では脂質が固体キャリア中に(100μm未満の)小型粒子として存在する。好ましくは、前記固体キャリアは、例えばマルトデキストリンまたはグルコースシロップを含んでなり、タンパク質、炭水化物、香料、保存料、人工甘味料または繊維から選択される、少なくとも1つの追加的構成要素もまた含有してもよい。
【0030】
脂質のタイプは多様であり得て、例えばトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドまたは遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩である。したがって本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記脂質は、好ましくはトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドまたは遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩を含んでなる。好ましくは前記脂質は、モノグリセリドまたは遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩またはその組み合わせである。より好ましくは前記脂質は、遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩である。さらに「脂質」という用語は、脂肪分解に起因する脂質構成要素を指すために使用される。したがって「脂質」という用語は、胃腸管内の脂肪分解に起因する脂質構成要素を含む。
【0031】
「トリグリセリド」という用語は、本明細書での用法では、3つの脂肪酸鎖がグリセロールエステル化されたトリアシルグリセロール(またはトリアシルグリセリド)を指す。
【0032】
「ジグリセリド」またはジアシルグリセロールという用語は、エステル結合を通じてグリセロール分子に共有結合する2本の脂肪酸鎖からなるグリセリドを指すために使用される。ジグリセリドは、1,2−ジグリセリドまたは1,3−ジグリセリドであり得る。
【0033】
「モノグリセリド」(または代案としてはモノアシルグリセロール)という用語は、典型的に、エステル結合を通じてグリセロール分子に共有結合する1本の脂肪酸鎖からなるグリセリドを指すために使用される。モノグリセリドは、1−モノグリセリドまたは2−モノグリセリドであり得る。
【0034】
「脂肪酸」という用語は、動物または植物性脂肪、油またはワックス中のエステル化形態から誘導された、またはエステル化形態で含有される、脂肪族モノカルボン酸を指すために使用される。天然脂肪酸は、一般に飽和または不飽和(cisまたはtrans、一価または多価不飽和)であってもよい、4〜28個の炭素の鎖(通常分枝なしで偶数)を有する。「遊離脂肪酸」という用語は、非グリセロールエステル化脂肪族モノカルボン酸を指すために使用される。
【0035】
「遊離脂肪酸の塩」という用語は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはカルシウム(Ca)などであるが、これに限定されるものではない、塩との結合を形成した遊離脂肪酸を指すために使用される。
【0036】
これらの脂質のいずれかの商業的供給源は動物または植物のどちらかであり得て、それらはまた、合成的に作られてもよい。合成または半合成という用語は、完全には天然でなく、かつ/または化学合成によって得られる物質を指す。
【0037】
トリグリセリド油は、好ましくはパーム油、シアバター、アランブラキア油、カカオバターまたはその他の製菓用脂肪である。このような油の別の例は完全水素化または部分的水素化ダイズ油、ナタネ油、コーンオイル、綿油、およびヒマワリ油など、またはその画分である。代案としてはトリグリセリド組成物は、前述の油の配合物のエステル交換を通じて得られる。
【0038】
本発明は、特にトリグリセリド油が、パーム油の画分などの油または脂肪の画分を含んでなる方法に言及する。すなわち本発明で使用されるトリグリセリド油は、分留されたパーム油から得られてもよい。このパーム油画分は市販のパーム油から得られてもよく、それはグリセロールの主にパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、およびステアリン酸の各エステルの組み合わせをベースとする、適切なトリグリセリドの特定の混合物に分留されてもよく、または上述のようにその他の起源からの(部分的に)水素化され場合によりエステル交換された油から得られてもよい。パーム油画分は、例えばパームステアリンとして知られている。
【0039】
したがって本発明で使用するための好ましい脂肪酸は、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、およびステアリン酸からなる群から選択される。なおもより好ましい組成物は、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、およびステアリン酸からなる群から選択される少なくとも2種の脂肪酸を含んでなる。
【0040】
パルミチン酸およびステアリン酸からなる群から選択された20〜80w/w%など、または30〜70w/w%などの20〜95w/w%の脂肪酸、およびオレイン酸およびリノール酸からなる群から選択された80〜20w/w%など、または70〜30w/w%などの5〜95w/w%の脂肪酸を使用した際に、特に良好な結果が得られた。これらの量は合計が必ずしも100w/w%にならず、すなわちそれらはラウリン酸、ミリスチン酸、およびリノレン酸などの追加的脂肪酸の存在を必ずしも排除しないことに留意すべきである。
【0041】
本発明の別の態様では、使用される脂肪酸の少なくとも80w/w%、好ましくは少なくとも90w/w%は、パルミチン酸およびステアリン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0042】
脂肪酸組成は、米国油化学会(American Oil Chemists’ Society)のAOCS法Ce 1−62(www.aocs.org参照)に記載される、脂肪酸メチルエステル(FAME)法を使用したガス液体クロマトグラフィー(GLC)によって測定される。
【0043】
トリグリセリド油は、95重量%を超えるなど、少なくとも90重量%のトリグリセリドを含有してもよい。またパーム油画分中のトリグリセリド含量は、99重量%以上であってもよい。純度は、薄層クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーなどの従来のクロマトグラフィー法によって検査し得る。トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、および遊離脂肪酸の脂質組成は、クロマトグラフィーによって測定し得る。標準法は、米国油化学会(AOCS)のAOCS法Cd 11 c−93に記載される(www.aocs.org参照)。
【0044】
工業規模の脂質生産については良く知られ、日常業務に組み込まれており、例えばThe Lipid Handbook:D.Gunstone,John L.Harwood,Fred B.Padley編;第2版,Chapman and Hall,CRC Press,1994年などの公の文献にも広範に記載されている。モノ−およびジグリセリドは、一般にトリグリセリド/グリセロール混合物を例えば水酸化ナトリウムなどの微量の触媒と共に加熱して、親トリグリセリドおよびグリセロールから作られる。得られる混合物は、モノ−およびジグリセリドを含有する。次にモノグリセリドを例えば蒸留を通じて得る。遊離脂肪酸は、水および触媒存在下における化学加水分解によって、同様の過程を通じて得られる。
【0045】
さらに別の態様では、本発明に従った方法の脂質は、遊離脂肪酸、すなわちグリセロールのない脂肪酸、またはグリセロールから遊離された脂肪酸である。さらに別の態様では、本発明に従った方法の脂質は遊離脂肪酸の塩である。
【0046】
脂質による結晶形成は、モノグリセリド、特に少なくとも16個のC原子を含んでなる飽和脂肪酸ベースのモノグリセリドで、そして遊離飽和脂肪酸または遊離飽和脂肪酸の塩形態で、特に認められた。したがって本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記脂質はモノグリセリドまたは遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩である。
【0047】
モノグリセリドの脂肪酸または遊離脂肪酸は、好ましくは16、18、20、22または24個の炭素原子などの少なくとも16個の炭素原子を含んでなり、すなわち好ましくは、前記脂肪酸は、C16、C18、C20、C22またはC24脂肪酸である。その態様の1つで本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記脂質は、少なくとも1つのC16またはより高級の脂肪酸(すなわち少なくとも16個の炭素原子がある脂肪酸)を含んでなる。トリグリセリドまたはジグリセリドの場合、脂肪酸鎖の少なくとも1つは、C16またはより高級である。
【0048】
さらに好ましいのは飽和脂肪酸、すなわち脂肪酸鎖の炭素原子間に二重結合を有さない脂質であり、結果として炭素原子は水素原子で完全に飽和する。
【0049】
さらに別の態様では、本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記脂質は少なくとも1つの飽和脂肪酸を含んでなる。トリグリセリドまたはジグリセリドの場合、脂肪酸の少なくとも1つは飽和している。
【0050】
なおもより好ましい実施形態では、トリグリセリド、ジグリセリドおよび/またはモノグリセリド中に存在する遊離脂肪酸または脂肪酸は、C16またはより高級であって飽和しており、すなわちC16またはより高級の飽和脂肪酸である。
【0051】
なおもより好ましくは、使用される脂質は、16個の炭素原子がある少なくとも1つの脂肪酸鎖を含んでなり、飽和している。適切な例は、少なくとも1つの(16個の炭素原子がある)パルミチン酸または(18個の炭素原子がある)ステアリン酸を含んでなる、トリグリセリドおよびジグリセリドである。好ましいモノグリセリドは、脂肪酸鎖としてパルミチン酸またはステアリン酸を含んでなる。好ましい遊離脂肪酸は、飽和C16:0、C18:0、C20:0、C22:0またはC24:0脂肪酸である。本明細書で「:0」という表示はゼロ不飽和が存在することを意味し、すなわち16:0は飽和パルミチン酸を示し、C18:0は飽和ステアリン酸を示す。「:1」と言う表示は、(遊離)脂肪酸中に1つの不飽和炭素−炭素結合が存在することを意味し、「:2」は、(遊離)脂肪酸中に2つの不飽和炭素−炭素C−C結合が存在することを意味する。
【0052】
さらなる好ましい実施形態は、sn1またはsn3位置、すなわちグリセロール部分の外側炭素位置の1つに、16個以上の長さの炭素原子の飽和脂肪酸を有するトリグリセリドの使用を含んでなる。sn2位置、すなわちグリセロール部分の中央の炭素位置では、好ましくは不飽和脂肪酸、またはより短い脂肪酸(14個以下の炭素原子)が付着する。好ましくは使用される脂質は植物性脂質、すなわち植物起源の脂質である。
【0053】
なおもさらなる好ましい態様では、使用される脂質は環境温度から体温にかけて固体である。「環境温度から体温にかけて固体脂質含量を有する」と言う語句は、環境温度と体温の間の区間全体で固形脂肪含量があるべきことを意味する。「固形脂肪含量」の意味は当業者に知られており、例えばwww.minispec.com/applications/solid_fat_content.htmlで提供されるような標準法を使用して測定されてもよい。別の言い方をすれば、用語は、少なくとも体温において残留する検出可能な固形脂肪含量があるべきことを意味する。残留する検出可能な固形脂肪含量は、0.5w/w%、1w/w%、2w/w%、3w/w%、5w/w%、10w/w%以上などのほぼ0.1w/w%を超える程度であってもよい。固形脂肪含量は、ISO 8292またはIUPAC 2.150方法を使用して、Brucker Minispecなどの卓上NMRによって測定してもよい。これらの方法からは融解曲線が得られ、所与の脂質組成物が環境温度から体温の範囲で固形脂肪含量を有するかどうかは、それから容易に判定し得る。固形脂肪含量を測定する追加的方法としては、AOCS法:AOCS Cd 16b−93、2000年改定;直接法;およびAOCS Cd 16−81 2000年改定;間接法が挙げられ、www.aocs.orgを参照されたい。
【0054】
環境温度はおよその室温を示すのに使用され、その中で本発明に従った組成物が使用される温度である。通常これは、18、19、20、21または22℃など、およそ20℃である。
【0055】
体温は種毎にわずかに異なり、本明細書ではこの用語は、処置される個人または動物の体温を示すのに使用される。通常これは36、36.5、37、37.5、38、38.5または39℃など、およそ37℃である。
【0056】
さらに別の実施形態では、本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなり、乳化剤を投与するステップをさらに含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供する。使用される脂質および乳化剤は、例えば互いに10分以内など、互いに短時間以内に別々に投与され得る。より好ましくは前記脂質および前記乳化剤を含んでなる組成物は、互いに9、8、7、6、5、4、3、2、1または0.5分以内に投与される。前記脂質および前記乳化剤は、好ましくは同時に投与される。前記脂質および前記乳化剤から水中油型エマルジョンなどの組成物を調製して、組成物(すなわちエマルジョン)をヒトまたは動物に投与することがさらに可能である。代案としては前記脂質および前記乳化剤から分散体を調製してもよく、この分散体をヒトまたは動物に投与してもよい。
【0057】
良好な乳化剤は、エマルジョン小滴からの脂質構成要素の結晶形成を促進できることが文献から知られている(BoodeおよびWalstra、1993年)。タンパク質はエマルジョンの良好な安定剤として機能し得るが、これらは結晶形成を促進できない。したがって脂質組成物が胃腸脂肪分解を被ると良好な乳化剤の存在下にあることは、本発明の一部である。本発明の文脈で良好な乳化剤は、エマルジョンが胃腸脂肪分解を被ると、乳化剤がエマルジョンからの脂質の結晶形成を刺激してもよいことを含む。結晶は脂質小滴から水相中へ成長してもよい。
【0058】
あらゆる乳化剤を本発明に従った方法で使用してもよいが、食品乳化剤が好ましい。食品乳化剤は食品用途で一般に使用される乳化剤であり、一般に親水性および親油性部分から構成されるエステルである。一般に親油性部分は、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、またはリノレン酸または前記脂肪酸の組み合わせを含んでなる。親水性部分は、一般にヒドロキシル、カルボキシル、オキシエチレン基、糖、炭水化物、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンを含んでなる。
【0059】
食物等級乳化剤ファミリーの例は、レシチン、モノ−およびジグリセリド、プロピレングリコールモノエステル、モノ−およびジグリセリドの酢酸エステル、モノ−およびジグリセリドの乳酸エステル、モノ−およびジグリセリドのクエン酸エステル、モノ−およびジグリセリドの酒石酸エステル、モノ−およびジグリセリドのモノ−およびジアセチル酒石酸エステル、ポリグリセロールエステル、ステアロイルラクチル酸ナトリウムまたはステアロイルラクチル酸カルシウム、ソルビタンエステル、エトキシル化エステル、ポリソルベート、コハク酸化エステル、フルーツ酸エステル、リン酸塩含有モノ−およびジグリセリド、およびスクロースエステルである。脂質のエマルジョンはまた、その食物または食品内の前記食物または食品または構成要素の固有の乳化特性を活用して、脂質を適切な食物または食品と混合することで得られる。本発明の方法で使用される食品乳化剤は、脂質総重量を基準にして20重量%を超え、好ましくは40w/w%を超える脂質を乳化できてもよく、分散体、好ましくはエマルジョンを与え、それは食品の加工を容易にするために依然として液体であり、食品中に分散体、好ましくはエマルジョンが組み込まれてもよい。
【0060】
本発明の好ましい乳化剤は、例えば卵黄、ミルク、ダイズ油、ヒマワリ油またはナタネ油から製造されるレシチンであり、それは主にホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、およびホスファチジン酸、およびそれらのリゾリン脂質同等物などのリン脂質の混合物からなる。レシチンは、この文脈で、粗製植物油を脱ガムして得られ、食品乳化剤として市販される前記リン脂質の粗製混合物を指す。本発明の別の好ましい乳化剤は、ポリソルベート類(ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えばドイツ国のロシュ(Roche、Germany)によるTween 80など商品名Tweenで知られている)、ならびに乳酸、クエン酸、酒石酸、またはジアセチル酒石酸などの食品等級酸で誘導体化されたモノ−およびジグリセリド類によって形成される。
【0061】
特に好ましい乳化剤は、ガラクト脂質ベースの乳化剤またはその誘導体である。したがって本発明に従った方法で使用するための乳化剤は、1つ以上のガラクト脂質を含んでなってもよい。ガラクト脂質は、植物細胞膜の良く知られている構成物である糖脂質群に属する。これらの最も重要な種類は、ジアシルグリセロールまたはモノアシルグリセロールに結合する、1〜4つの糖グリコシドを含有する。2つの最も豊富な種類は、それぞれ1つおよび2つのガラクトース単位を含有し、これらの一般に使用される命名法および略語は、モノ−およびジガラクトシルジグリセリド(MGDGおよびDGDG)またはモノ−およびジガラクトシルモノグリセリド(MGMGおよびDGMG)であり、時折ガラクト脂質とも称される。主としてDGDGおよびDGDG材料に富むガラクト脂質は研究されて、食品、化粧品、および医薬品などの産業上の利用において興味深い表面活性物質であることが分かっている。ガラクト脂質乳化剤については、国際公開第95/20943号パンフレットおよび国際公開第97/11141号パンフレットに記載される。ガラクト脂質乳化剤の好ましい原料は、穀物および穀類、特にエンバクである。好ましくは、ガラクト脂質乳化剤の原料は、分留されたエンバク油である。
【0062】
本発明の一態様では、本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなり、レシチン、ガラクト脂質ベースの乳化剤またはその誘導体またはそれらの混合物から選択される乳化剤を投与するステップをさらに含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供する。
【0063】
本発明の好ましい態様は、本発明に従った方法で使用されるガラクト脂質が、パーム油、分留パーム油および/または上述の全てのその他の油の組み合わせと併用される、組成物の使用である。例えば本発明の方法で使用するのに適した組成物は、パーム油または分留パーム油と共に、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩(またそれらのいずれかの組み合わせ)を含んでなり得る。
【0064】
さらにガラクト脂質ベースの乳化剤として分留エンバク油を使用すると、特に良好な結果が得られた。したがって本発明は、ガラクト脂質ベースの乳化剤が分留エンバク油である組成物の使用にも関する。
【0065】
脂質および乳化剤の水中油型エマルジョンは、乳化剤を単独で、または共界面活性剤などのその他の両親媒性化合物と併用してのどちらかで使用して、調製してもよい。水中油型エマルジョンはまた、着香剤、甘味料、着色剤、増粘剤、保存料、抗酸化剤など、組成物の異なる側面を改善することが当該技術分野で知られている、任意の添加剤を含んでなってもよい。
【0066】
水中油型エマルジョンは、従来の方法によって調製されてもよい。例えば乳化剤を前記脂質に添加することで、30重量%の水中脂質エマルジョンが調製される。連続相は純水、または等張剤、甘味料、香料、および保存料などの水溶性添加剤を含有する水溶液であってもよい。次に、必要ならば水相のpHを調節する。油相ならびに水相を予熱して、次に高剪断混合の下で油相を水相に添加する。次にプレエマルジョンに高圧均質化を施してもよい。代案としては乳化剤を水相中に分散し得て、その後高剪断下で油相を添加し、場合により高圧均質化がそれに続く。
【0067】
乳化剤の乳化力は、乳化剤の性質または特性に左右されることを重視すべきである。上述の分留エンバク油は、5〜60重量%のトリグリセリドの水中油型エマルジョンを調製するために、さらなる精製なしに総組成物の1〜20重量%の量で乳化剤として使用し得る。国際公開第95/20943号パンフレットのガラクト脂質乳化剤は、5〜80重量%のトリグリセリドの水中油型エマルジョンを調製するために、総組成物の0.1〜5.0重量%で使用されるべきである。
【0068】
本発明に従った方法で使用される脂質組成物中の少なくとも16個の飽和炭素原子がある脂肪酸の量は、変動し得る。好ましくは少なくとも16個の飽和炭素原子がある脂肪酸の量は、前記組成物中に存在する脂肪酸総量を基準にして少なくとも45w/w%であり、すなわち本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記C16またはより高級の飽和脂肪酸は、前記組成物の脂肪酸総量を基準にして少なくとも45w/w%の量で存在する。より好ましくは、量は、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100w/w%でさえある。当業者は、このような脂質組成物をどのようにして入手するかを十分承知している。例えば食品等級パルミチン酸またはステアリン酸が入手できる。
【0069】
本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、脂質はパルミチン酸(すなわちC16:0)またはステアリン酸(すなわちC18:0)またはその組み合わせを含んでなる。本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、脂質は少なくとも45w/w%のパルミチン酸および/またはステアリン酸を含んでなる。
【0070】
脂質がパルミチン酸とステアリン酸の双方を含んでなる場合、これらの2つの脂肪酸の重量比は変動してもよい。例えば10:90、20:80、40:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20または90:10の比率のパルミチン酸:ステアリン酸を使用してもよい。
【0071】
本発明に従った方法で使用される脂質は、その脂肪酸の特定量を既に結晶形態で含んでなり得る。例えば好ましくは食品等級パルミチン酸をその融点を超えて加熱して、好ましくは高剪断混合下で水または水性物質中に分散させることでパルミチン酸の結晶が得られる。分散体には、引き続いて均質化を施し得る。最後に、パルミチン酸分散体を放冷する。得られる生成物はパルミチン酸結晶を含んでなる。別の好ましい実施形態では、前述の方法において、パルミチン酸をガラクト脂質に富む脂質画分のような良好な乳化剤と組み合わせて分散させ、結晶を形成する。
【0072】
別の例では、好ましくは食品等級ステアリン酸をその融点を超えて加熱して、好ましくは高剪断混合下で水または水性物質中に分散させることで、ステアリン酸の結晶が得られる。分散体には、引き続いて均質化を施し得る。最後に、ステアリン酸分散体を放冷する。得られる生成物はステアリン酸結晶を含んでなる。別の好ましい実施形態では、前述の方法において、ステアリン酸をガラクト脂質に富む脂質画分のような良好な乳化剤と組み合わせて分散させ、結晶を形成する。
【0073】
同様の方法によって、例えば食品等級パルミチン酸および食品等級ステアリン酸の組み合わせを出発原料として使用することで、パルミチン酸およびステアリン酸の結晶の組み合わせが得られる。好ましい実施形態では、本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、投与される脂質の少なくとも一部は投与前に結晶形態にある。さらに別の態様では、投与される脂質は、胃腸管内で存在するその最終結晶形態にはない。胃腸管を通過する間に、脂質は(部分的)脂肪分解を被ってもよく、その結果、摂取した脂質組成物とは異なる脂質構成物が形成される。新たに形成された脂質は、小腸内で、腸管壁への輸送を促進する混合ミセル中で難溶性の結晶を形成する傾向がある。このような場合、乳化剤の存在が胃腸管内での脂質結晶形成を促進するかもしれないので、乳化剤もまた好ましくは添加される。
【0074】
なおもさらなる態様では、食物、飼料または飲料がヒトまたは動物に提供される前、それと同時またはその後に、場合により乳化剤と組み合わされた、脂質を含んでなる組成物を前記ヒトまたは動物に提供する。「前」および「後」という用語は、前記食物、飼料または飲料と比べた、およそ0.1〜180分間の時間範囲を指す。換言すれば、脂質、および場合により乳化剤は、前記ヒトまたは動物に飼料、飼料または飲料が提供される0.1〜180分前、または0.1〜180分後に提供される。より好ましくは時差は0.1〜60分、0.1〜30分、0.1〜15分、0.1〜10分または0.1〜5分である。
【0075】
本発明の一態様では、本発明は、その少なくとも一部が結晶である有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記脂質は、少なくともパルミチン酸またはステアリン酸またはその組み合わせを含んでなる。
【0076】
したがって本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記組成物は、食物、飼料または飲料製品の前、それ同時またはそれに引き続いて投与される。この実施形態では、脂質は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある脂質を含んでなる栄養補給剤として提供される。このような栄養補給剤は、液体または固体組成物であり得る。液体栄養補給剤の適切な例は、例えばカップ、ミニカップまたは小袋に包装された、少容量の水中の脂質エマルジョンまたは分散体である。固体栄養補給剤の適切な例は、錠剤または噴霧乾燥粉末である。ヒトまたは動物消費に適した栄養補給剤はまた、本明細書で栄養補助食品または飼料栄養補給剤とも称される。
【0077】
適切な食物、飼料または飲料の一例は、ヨーグルト、ミルク、チーズ、サワークリーム、粉乳、バターをはじめとするがこれに限定されるものではない乳製品、乳製品代替え物、アイスクリーム、マーガリン、スプレッド、ディップ、ドレッシングまたはソース、加工肉製品、糖菓、詰め物、スープ、果実飲料、茶またはコーヒーベースの飲料、清涼飲料、ニアウォーター、最大35容積%の乳製品および/または乳酸製品含量を含んでなる飲料、コーヒークリーマー、デザート、チョコレート、キャンディまたはその他の糖菓、ベイクド製品、栄養バー、シリアルバー、タンパク質ベースのバー、パスタ製品およびその他の穀物製品、朝食用シリアルまたはミューズリー、カスタード、食事代替品製品である。場合により、適切な食物は、特定繊維などの満腹を誘発するその他の方法と組み合わせられる。
【0078】
上述のように、場合により乳化剤と組み合わされた脂質を含んでなる組成物は、食物、飼料または飲料と共に提供され得る。これは前記食物、飼料または飲料と、前記脂質とを2つの別々のアイテムとして提供し、それらを同時に投与することで、または前記脂質を食物、飼料または飲料中に組み込むことで、実施し得る。
【0079】
したがって本発明はまた、場合により乳化剤と組み合わされた、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記組成物は食物、飼料、飲料または栄養補給剤の一部である。
【0080】
本明細書に記載される方法は、体重減少期間中またはその後に使用してもよい。このような体重減少は、治療介入によって、または個人の自助努力によって達成されてもよい。典型的に「体重減少」という用語は、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約7%、少なくとも約10%、または少なくとも約15%でさえある、初期またはベースライン体重の少なくとも約2%の体重減少を達成することを指す。このような体重減少は、例えば1、2または3から5、6、10、18週間以上の期間にかけて達成されてもよい。代案としては、体重減少は、体型指数(BMI)の2以上の減少と表現されてもよい。本明細書に記載される満腹を誘発する方法は、典型的に、減量または体重維持プログラムと共に、またはそれに引き続いて使用される。本発明に従った方法を使用する個人は、負のエネルギー収支をもたらす食餌療法の対象であってもよい。すなわち本発明に従った方法は、個人が負のエネルギー収支を課される場合に行ってもよい。エネルギー収支は、エネルギー摂取量からエネルギー出力を差し引いたものと定義される。エネルギー摂取量が保全と生産要件を満たすのに不十分である場合、個人は負のエネルギー収支にあると述べられる。したがって負のエネルギー収支にある個人は、(食物および飲料からの)カロリー摂取量が、(代謝および日常活動において消費されるエネルギーを通じた)カロリー消費量を下回る個人である。
【0081】
エネルギー摂取量がエネルギー出力にほぼ等しい場合、個人は中立エネルギー収支にある。本発明の目的では、負のエネルギー収支を課される個人は、あらゆる程度の負のエネルギー収支にあってもよい。典型的に、個人は日毎の判定で負のエネルギー収支にあるが、本発明の目的では、個人は、例えば約12時間にわたる、または約1週間、約2週間、約6週間以上にわたるなど、1週間より長い、またはより短い期間にわたる、好ましくは本明細書に記載される混合物が摂取される期間全体にわたる判定で、負のエネルギー収支にあってもよい。
【0082】
負のエネルギー収支を課される個人は、エネルギー摂取量が中性エネルギー収支を達成するのに必要とされるエネルギー摂取量の約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下または約50%以下の個人であってもよい。
【0083】
中立エネルギー収支を保つのに要するカロリー摂取量は、広範な数の変数により変動する。しかし典型的な中程度に活動的な生活を送る女性の推奨カロリー摂取量は、1日当たり約2000〜約2200キロカロリーの範囲である。中程度に活動的な男性の数値は約2500〜約2800キロカロリーである。だがこれらの数値は年齢によって調節する必要があるかもしれず、例えば高齢(約70歳を超える)または若年(約10歳未満)の個人は、中立エネルギー収支を達成するのに、一般により低いエネルギー摂取量を必要とする。また非常に活動的な個人は、中立エネルギー収支を達成するのにより高いエネルギー摂取量を要する可能性がある。栄養士は、中立エネルギー収支を達成するのに要するおよそのエネルギー摂取量(ひいては特定の所望の負のエネルギー収支の程度を達成するのに要するエネルギー摂取量)について助言できるであろう。
【0084】
したがって本発明の目的では、(女性では)1日当たり約2000〜約2200キロカロリー未満、または(男性では)1日当たり約2500〜2800キロカロリー未満を摂取すれば、個人は一般に負のエネルギー収支にあると見なされてもよい。しかしこれらのエネルギー量を超えて摂取する個人は、それでもなお特定の状況次第で負のエネルギー収支にあるかもしれない。
【0085】
個人が負のエネルギー収支または減量プログラムにある食餌療法は、低カロリー食(LCD)と称されてもよい。800kcal以下のエネルギー摂取量を達成するダイエットは、超低カロリー食(VLCD)と定義される。本発明に従った混合物を使用する個人は、LCDまたはVLCDを課されていてもよい。
【0086】
スウェーデン国立食品庁(Swedish Food Administration)は、中立エネルギー収支を達成するために、毎日1〜3回のスナックと共に3食取ることを勧告する。エネルギーの配分は、次のようであることが推奨される。朝食−約20%〜約25%;昼食−約25%〜約35%;および夕食−約25%〜約35%。これは昼食時のエネルギー摂取量が、約500kcal〜約770kcal(女性)および約625kcal〜約890kcal(男性)であってもよいことを示唆する。したがって負のエネルギー収支は、残りの食事では通常の(中立)エネルギー摂取量を維持しながら、例えば(上で述べたエネルギー量を参照して)昼食および/または夕食および/または朝食などの1回以上の食事におけるエネルギー摂取量を減らすことで達成されてもよい。
【0087】
本発明に従った方法を課される個人は、食事代替療法の対象であってもよい。すなわち本発明に従った方法は、個人(すなわちヒトまたは動物)が食事代替療法の対象であり、すなわち食事代替品製品を使用中である場合に実施されてもよい。これは負のエネルギー収支を達成する、都合のよい方法かもしれない。このような療法では、例えば液体製品または固形バーの形態の食事代替品が、1回、2回、またはそれ以上普通の毎日の食事の代わりに、個人によって摂取される。さらに食餌療養者は、1回、2回、またはそれ以上の本物の食物の食事(例えば1日当たり約400kcal〜約600kcalを提供するようにカロリー制限されていてもよい)を摂取してもよい。いくつかの流動食プログラムは、これらの「本物の」食事のためにあらかじめ包装された食事のオプションを提供する。食事代替品製品は、例えば約150〜約250kcalなど、典型的に約100〜約400kcalを含有していてもよい。それらは少なくとも約25%のタンパク質と少なくとも約3のビタミンおよびミネラルを含有していてもよい。商業的に入手できる製品のほとんどは、約2〜10gの繊維を含有する。
【0088】
このような規定食は、典型的に例えば1日当たり約1200kcal〜約1400kcalなど、1日当たり約1000kcal〜約1500kcalの総エネルギー摂取量を提供してもよい。
【0089】
本発明の方法を課される個人は、VLCDを課されてもよい。これは1日当たり800kcal以下の食餌と医学的に定義される。VLCDは、配合された栄養的に完全な液体または固形食である。VLCDはまた、ビタミン、ミネラル、微量元素、脂肪酸、およびタンパク質の1日当たり推奨所用量も含有する。VLCD製品は、通常、水、ジュース、またはその他の低カロリー液体と混合される粉末である。このような食餌は、典型的に医療管理の下に試みられる。
【0090】
本発明の方法は、食事代替療法、LCDまたはVLCDの服薬遵守を助けるために使用してもよい。これは本発明に従った方法で使用された脂質が、引き続く食事代替品、LCDまたはVLCD製品に満腹感を誘発させまたは強化させるため、個人は、食事代替品製品、LCDまたはVLCDによって送達されるより低レベルのエネルギーに、より容易く耐えられるかもしれないためである。服薬遵守を助けるとは、食事代替療法、LCDまたはVLCDの文脈で混合物を摂取する個人が、(食事代替療法、LCDまたはVLCDとの併用で混合物を摂取しない個人の場合よりも)その療法をより長期間にわたり維持するかもしれないことを意味する。
【0091】
したがって本発明は、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法を提供し、前記ヒトまたは動物は負のエネルギー収支を課せられ、および/または前記ヒトまたは動物は、食事代替療法、減量プログラムまたは体重維持プログラムを課せられる。
【0092】
本発明に従った方法で使用される脂質は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間以上の期間にわたり毎日服用されてもよい。本発明の目的は、例えば中立エネルギー収支の食餌など混合物を服用しない食餌期間を間に挟んだ、単一期間または複数期間にわたり脂質を服用した際に達成されてもよい。
【0093】
さらに別の実施形態では、本発明は、その少なくとも一部が結晶形態であり、または結晶を形成できる、脂質を含んでなる組成物を提供する。例えば、脂質の量は、(場合により適切な乳化剤と組み合わされた)C16:0およびより高級の飽和遊離脂肪酸から構成される、少なくとも0.5グラムの結晶性脂質であり、それはこの状態で胃を通って小腸内に入りそれを通過する。さらに別の例では、量は、(場合により適切な乳化剤と組み合わされた)トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドまたは遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩などのあらゆる種類の脂質成分の少なくとも1グラムのC16:0またはより高級の飽和脂肪酸であり、それは胃腸管に入る前に結晶形態にあり、または胃腸管内を移行する間に結晶形態に変換される。
【0094】
上述のように、脂質のタイプは多様であり得て、例えばトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドまたは遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩である。したがって本発明は、その少なくとも一部が結晶形態にある脂質を含んでなる組成物を提供し、前記脂質はトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドまたは遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩である。使用される脂質の上述の特徴は、本発明のこの部分に同等に良くあてはまる。
【0095】
このような組成物は、それ自体が(すなわち栄養補給剤として)提供され得て、または食物、飼料または飲料に組み込まれ、または添加されて提供され得る。使用される脂質は、好ましくは少なくとも16個の炭素原子がある飽和脂肪酸を含んでなる(または飽和脂肪酸である)。好ましい実施形態では、C16またはより高級の飽和脂肪酸は、パーム油またはパームステアリンから得られる。パーム油はおよそ45w/w%のC16:0+C18:0を含有し、パームステアリンはおよそ60w/w%のC16:0およびより高級の脂肪酸を含有する。
【0096】
より好ましくはこのような組成物は、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95w/w%以上でさえある百分率のC16:0またはより高級の飽和脂肪酸を含んでなる。
【0097】
本発明は、その脂肪酸の少なくとも45w/w%がC16またはより高級の飽和脂肪酸である、脂質を含んでなる組成物をさらに提供する。
【0098】
本発明は、その脂肪酸の少なくとも45w/w%がC16またはより高級の飽和脂肪酸である、脂質を含んでなる組成物をさらに提供し、前記脂質は、少なくともパルミチン酸またはステアリン酸またはその組み合わせを含んでなる。
【0099】
本発明の別の態様は、その脂肪酸の少なくとも45w/w%がC16またはより高級の飽和脂肪酸である脂質を含んでなる組成物を提供し、前記脂質は場合により分留、パーム油、パームステアリンまたはシアバターから得られる。
【0100】
本発明は、少なくとも45w/w%のC16またはより高級の飽和脂肪酸を含んでなる、少なくとも1グラムの追加的脂質を含んでなる、食物、飼料、飲料または栄養補助食品をさらに提供する。好ましくは、食物には少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8または1.9グラムの追加的脂質が提供され、少なくとも45w/w%の前記脂質はC16またはより高級の飽和脂肪酸であり、またはそれを含んでなる。本発明はまた、少なくとも45w/w%のC16またはより高級の飽和脂肪酸を含んでなる、少なくとも2グラムの追加的脂質を含んでなる、食物、飼料、飲料または栄養補助食品も提供する。
【0101】
本明細書の追加的脂質とは、本来食物、飼料または飲料成分中に存在しないが、追加的成分として追加された脂質である。
【0102】
上で概説したように、本発明に従った方法は、好ましくは美容法または非治療的方法である。しかし発明者らの現行の知識はまた、治療法中でも使用し得る。したがって本発明は、肥満症、過体重、心血管疾患および/または糖尿病を治療または予防する薬剤の調製における、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある脂質の使用もまた提供する。または代案としては、本発明はまた、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を前記ヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、肥満症、過体重、心血管疾患および/または糖尿病を患っているヒトまたは動物を治療する方法も提供する。
【0103】
さらに別の実施形態では、本発明は、好ましくは乳化剤との併用で、上述のような組成物を前記食物、飼料または飲料に添加し、またはその中に組み込むステップを含んでなる、食物、飼料、飲料または栄養補助食品製品を調製する方法を提供する。原則としてこのような組成物は、本明細書に記載されるような脂質を含んでなり、大量の食物、飼料、飲料または栄養補給剤、典型的に栄養補助食品に添加し、またはその中に組み込み得る。好ましい態様では、前記食物、飼料または飲料は、乳製品、乳製品代替え物、アイスクリーム、マーガリン、スプレッド、ディップ、ドレッシングまたはソース、加工肉製品、糖菓、詰め物、スープ、果実飲料、茶またはコーヒーベースの飲料、清涼飲料、ニアウォーター、最大35容積%の乳製品および/または乳酸製品含量を含んでなる飲料、コーヒークリーマー、デザート、チョコレート、キャンディまたはその他の糖菓、ベイクド製品、栄養バー、シリアルバー、タンパク質ベースのバー、パスタ製品およびその他の穀物製品、朝食用シリアルまたはミューズリー、カスタード、食事代替品製品である。場合により適切な食物は、特定の繊維などの満腹を誘発するその他の方法と組み合わせられる。
【0104】
ニアウォーターは、例えば20kcal/100ml未満、好ましくは10kcal/100ml以下の低カロリー含量の軽く風味付けした飲料である。ニアウォーターの一例は、10%果汁からできた無糖ニアウォーター飲料であってもよい。それはまた添加されたレモンを含んでなる、茶の水蒸気蒸留抽出物などの茶ベースのニアウォーター飲料であってもよい。
【0105】
本発明は、前記食物、飼料または飲料に上述のような組成物を添加し、またはその中に組み込むステップを含んでなる、食物、飼料、飲料または栄養補給剤製品を調製する方法をさらに提供し、前記食物、飼料または飲料は、満腹促進食物、飼料、飲料または栄養補給剤製品である。
【0106】
好ましい実施形態では、前記食物、飼料または飲料製品は、1食あたり50〜250kcalの範囲のカロリー含量を有する。
【0107】
さらに別の実施形態では、本発明は、上述のような組成物を前記食物、飼料、飲料または栄養補助食品に添加し、またはその中に組み込むステップを含んでなる、食物、飼料、飲料または栄養補助食品製品を調製する方法によって得られる、食物、飼料または飲料製品を提供する。
【0108】
上述のように、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、前記ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法は、食事代替品、減量プログラムまたは体重維持プログラムと併用し得る。
【0109】
本発明はまた、食事代替品製品と、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある脂質を含んでなる組成物とを含んでなる、満腹を誘発しまたは食欲を抑制するキットも提供する。
【0110】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるような組成物、または本明細書に記載されるような食物、飼料、飲料または栄養補助食品製品を提供するステップを含んでなる、減量または体重維持プログラムを提供する。
【0111】
本発明を以下の実施例によって例証する。
【0112】
[実施例]
分留パーム油はパーム油の分留によって得られ、例えばAkofrite(カルルスハムン(Karlshamn、Sweden)からのパーム油の商品名)を使用してもよい。パーム油は、主にグリセロールのパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、およびステアリン酸エステルのそれぞれの組み合わせをベースとする、適切なトリグリセリドの特定の混合物に分留された。好ましくはパーム油画分中のトリグリセリドの含量は、99重量%以上であるべきである。分留パーム油は20℃および35℃で、それぞれ31および6%の固形脂肪含量を有した(N20およびN35)。使用された分留エンバク油は約20%のDGDGを含んでなり、国際公開第97/11141号パンフレットに従ってエンバクから調製された。
【0113】
[実施例1]
生体内における、C16:0含量の高い脂肪と乳化剤とを合わせたエマルジョンの結晶形成効果を示すために、以下の実験を実施した。
【0114】
LOC−I−GUT技法(Knutsonら(1989年)およびLennemaesら(1992年)によって詳しく記述される)を使用して、スウェーデン国ウプサラ(Uppsala、Sweden)のClinical Research Department、University Hospitalで、単回通過空腸灌流実験を実施した。16人の健康なボランティアが実験に参加し、ボランティアの年齢は23〜36歳であり(男性平均28.0歳、女性平均27.9歳)、体重は66〜86kg(男性)および50〜70kg(女性)で、平均BMIは23.1(男性)および22.2(女性)であった。実験は研究者に対して盲験で実施され、そのやり方では2回の異なる調査時に、どちらの化合物が投与されるのか実験室職員または被験者のどちらにも知らされなかった。実験はまた、治験来院間に少なくとも5日間の洗い出し期間をおいて、無作為化交差試験様式で実施された。この無作為化された処置順序は、適切な統計を確実にする。
【0115】
全被験者は実験前日に基準食を食べ、彼らは摂取する全食品を研究所から受け取った。スウェーデン栄養勧告(Swedish Nutrition Recommendations)(SNR)に従って、それぞれ20〜50歳で通常の身体活動をする男女について、エネルギーおよび多量栄養素レベルを設定した(男性2900Kcal、女性2200Kcal;En%C/F/P 55/30/15)。
【0116】
一晩10時間の絶食後、LOC−I−GUT(登録商標)灌流管(Synectics Medical(Stockholm、Sweden)製)を蛍光透視誘導(Philips BV 21−S)下で、口から挿入して小腸近位部に配置させた。
【0117】
16人の被験者の内11人では、全期間からの、胃腸の双方の試料採取部位からのサンプルが得られた。5人の被験者では、これらの実験は180分間継続しなかったため、またはサンプルが得られなかったため、いくつかの胃腸サンプルが欠落していた。反復測定のための分散分析(ANOVA)を用いて(一変量混合効果モデルアプローチ)、2つの処置群内の複数回の測定データの研究を実施した。
【0118】
LOC−I−GUT(登録商標)灌流技法の設定は、次のとおりであった。複数溝管を試験対象(ボランティア)に挿入する。管(Synectics Medical(Stockholm、Sweden)製)は長さが175cmで、外径5.3mmのポリ塩化ビニルからできている。それは6本の溝を含有し、それぞれ別々により小さい溝の1つにつながっている、10cm間隔の2個の長さ40mmの細長いラテックスバルーンが遠位に備わっている。この実験では、遠位バルーンのみを膨張させて、流体が胃腸管をさらに下り続けるのを妨げる。
【0119】
管の中央の2つのより広い溝は、灌流液の注入および吸引用である。残る2本のより小さい外周の溝は、マーカー物質投与および/または排液のために使用される。管の遠位端にはタングステン錘が付着して、管の空腸への通過を容易にする。別個の管からは、胃内吸引を得る。
【0120】
蛍光透視誘導(Philips BV 21−S)下で、LOC−I−GUT(登録商標)灌流管を被験者の小腸近位部に配置させた。リドカインスプレー(キシロカイン10mg/用量(アストラゼネカ(AstraZeneca、Soedertaelje、Sweden)製)を用いて喉に局所麻酔をかけ、LOC−I−GUT(登録商標)管を、口を通じて挿入した。挿入中、装置内部のテフロン(Teflon)被覆ガイドワイヤー(アンプラッツ・エクストラ・スティッフ・ワイヤー・ガード(William Cook Europe A/S、Bjaeverskov、Denmark))を使用して、小腸への管の通過を容易にした。この実験中、腸管のセグメントおよび閉塞バルーンを空腸近位部に配置させた。
【0121】
実施された蛍光透視からの異なるフレームを含む、自動200ミリ秒シャットオフディスクメモリー(Image Store,Inc、Manassas、VA、USA)を使用した測定と較正により、全被験者において管を腸内のほぼ同じ位置に配置させた。このディスクメモリーの助けを借りて、近位空腸内の管の配置を検査する蛍光透視総所要時間は常に15秒未満であった。各実験終了後、被験者を再度蛍光透視室に入れて、各実験の終わりの管の位置を判定した。この2回目の調査は、実験中に管が腸を通ってさらに下ったかどうかを判定するために実施した。異なる試験物質を注入するため、ならびに異なる分析用に胃からサンプルを得るために、LOC−I−GUT(登録商標)灌流管と共に別の管(Salem Sump Tube、Sherwood Medical、U.K.)を胃内に配置させた。
【0122】
灌流管が定位置に置かれたら、およそ26〜30mlの空気でバルーンを膨張させた。異なる食材を注入する胃管の先端から、異なるミルク配合材料と混合した腸液を収集する空腸近位の閉塞バルーンまでの距離は、各実験開始時におよそ35cmであった。
【0123】
胃管を通じたヨーグルトの注入前に、全胃液を収集して20mlの食塩溶液で置換した。注入後、一定時間間隔でサンプルを採取した。30分後、約10mlの胃のサンプルを採取して、10mlの食塩溶液で置き換えた。180分後、実験の終わりに、胃の全内容物を回収した。3時間にわたり30分毎に、腸管サンプルを37℃に保たれるバイアル内に収集した。得られた全サンプルを正確に秤量し、そのまま1グラムのサンプル当たり0.1gの1M HCl溶液でpH3未満にして、液体窒素を使用して即座に凍結し、凍結乾燥するまで−80℃で保存した。その後、乾燥サンプルもまた−80℃で保存した。pHをHClで低下させる前に、1滴のサンプルを顕微鏡分析のために保存した。
【0124】
この実験のために、1つは乳脂肪を含有し(以後、参照組成物と称される)、もう1つは精製パーム油のエマルジョンおよび乳化剤として分留エンバク油を含有する(以後、活性組成物と称される)、2種のヨーグルト製品を調査した。この後者の組成物は、以下のようにして作成した。
【0125】
精製パーム油および分留パーム油を用いた42.5重量%エマルジョンの調製(活性組成物脂肪)
成分 重量%
水 57.5
分留パーム油 40.0
分留エンバク油 2.5
分留パーム油および分留エンバク油は、上述のようにして得た。
【0126】
パーム油をシリカカラムに流して精製し、エンバク油はエタノールを使用した粗製エンバク油の抽出後に得られた。パーム油を50℃で溶解して、分留エンバク油と混合した。油相および水を65〜70℃で予熱し、次に4分間にわたる15,000rpmの高剪断混合の下で油相を水に添加した。プレエマルジョンは6サイクルにわたり1000バール60℃で均質化した(Rannieホモジナイザー、Mini−Lab 8.30H型;APVラニー(APV Rannie、Denmark)製)。
エマルジョンは、Fabuless(商標)としてオランダ国のDSMから市販される。
【0127】
より初期の研究では(国際公開第99/02041号パンフレット)、このような精製パーム油と分留パーム油のエマルジョンは、ヒトにおいて満腹誘発効果を有する組成物であることが示されている。
【0128】
[A)乳脂肪使用ヨーグルト(参照組成物)]
市販の(Albert Heijn銘柄)全脂乳および脱脂乳(6:1)の混合物を83.5℃で35分間低温殺菌した。それを15℃に冷却して一晩保存した。温度を43℃に設定して、176μl/LのスターターCY222を添加した。約4.5時間後にpHは4.6未満であり、ラニー実験室ホモジナイザー(APV Homogenizers、AS(Albertslund、Denmark))を使用して、ヨーグルトを150バールで均質化した。クリーム香料(540040H;Givaudan)をヨーグルト(0.1g/L)に混ぜ入れた。ヨーグルトを150gジャー内で4℃で保存した。ヨーグルトのカロリー含有量を表1に示す。実験で使用するために、このようにして2つのバッチを製造した。ヨーグルトをpH12でEDTA溶液を用いて処理し(1部のヨーグルトに対して10部のEDTA溶液)タンパク質を溶解した後、2つのバッチの平均粒度は、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)製のLS 13 320レーザー回折粒度分析器による測定で、それぞれ621/572nmであり、21.6/16.2%>1μmであった。
【0129】
[B)活性組成物脂肪(活性組成物)使用ヨーグルト]
マイクロ波を使用して、1120gのスキムミルクを約45℃に加熱した。活性組成物(KLB06027)を約35℃に加熱して、80gを注意深くミルクに添加した。シルバーソン(Silverson Machines Inc.(East Longmeadow、MA、USA))製の実験室ミキサーL4RT型によって、この混合物を900rpmで10分間均質化した。低温殺菌および残りの工程は、乳脂肪使用ヨーグルトと同一であった。実験で使用するために、このようにして2つのバッチを製造した。2つのバッチの平均粒度はそれぞれ589/520nmであり、13.8/11.7%>1μmであった。
【0130】
【表1】



【0131】
全てのサンプルから、脂質をそれらの組成について分析した:グリセリド類:トリ−、ジ−、およびモノグリセリド;および遊離脂肪酸(「MDT法」)中の全脂質組成、および脂肪酸組成(全脂質組成の遊離脂肪酸含量および脂肪酸含量(「FAME」)の双方)。
【0132】
総脂質組成(「MDT」)は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した。最初に凍結乾燥サンプルを抽出し、20mgの均質化サンプルを1mlの溶剤混合物(3:1のヘプタン:クロロホルム)で抽出した。
【0133】
次に0.2μmのPVDF膜を使用した濾過によって固形物を除去し、極性(シアノ)カラムと蒸発光散乱検出(ELSD;Sedex 75(ポリマー・ラボラトリーズ(Polymer Laboratories Ltd.(Shropshire、UK))製))を装着した、順相HPLC(Agilient)1100液体クロマトグラフ(アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)製)に10μlを注入した。移動相溶媒として、ヘプタン−t−ブチルメチルエーテル勾配を使用した。検量線とChromeleon Chromatography Management Systemプログラム(Dionex Corporation(Sunnyvale、CA))を使用して、構成要素を測定した。試験品の脂肪酸組成に従って計算される平均分子量を使用して、値をモルに変換した。脂質は、順相クロマトグラフィー系を用いて、有機溶媒の勾配を使用して分離した。既知の組成の市販のサンプルを用いて、滞留時間を測定した。
【0134】
全脂質組成物の脂肪酸プロフィールは、FAME(脂肪酸メチルエステル)法によって判定した。サンプル量の粗製サンプルを鹸化しエステル化してメチルエステルにし、ペンタデカン酸メチルエステル内部基準との対比で定量化した。およそ30mgのサンプルと20mgのペンタデカン酸エステルをヘッドスペースバイアル内で正確に秤量した。各管に磁気撹拌機、1mlのトルエン/BHT−溶液、および4mlの0.5N NaOH溶液を添加した。バイアルをクリンプキャップで閉じて、加熱モジュール内で穏やかに撹拌して100℃で5分間加熱した。冷却後、5mlのBF3溶液(三フッ化ホウ素−メタノール複合体:メルク(Merck);80 1663)を添加してバイアルを再閉鎖して、再度100℃で30分間加熱した。冷却後、4mlのヘプタンと5mlの飽和NaCl溶液を添加した。完全に混合した後、バイアルを3000rpmで10分間遠心分離した。水素炎イオン化検出器、溶融石英カラム(CP−Sil−88)を装着したヒューレット・パッカード(Hewlett Packard) 5890シリーズ2GCを使用して、キャリアガスとして1μLの窒素の注入量で、ガスクロマトグラフィー分析を実施した。
【0135】
脂質組成の遊離脂肪酸部分のプロフィールを既述のFFA法(de Jong C,Badings HT.Determination of free fatty acids in milk and cheese、J High Res Chrom 1990年;13:94〜8頁)によって判定した。
【0136】
顕微鏡観察のためのサンプルは、30分後(胃)そして60および180分後(空腸)に採取した。サンプルは、MV 1500上の画像処理プログラムLucia GFを用いてニコン(Nikon)Eclipse E800光学顕微鏡で観察した。1滴のサンプルを顕微鏡スライドに載せて覆った。これを光学顕微鏡検査によって、位相差モードを使用して大抵は40倍の対物レンズで、即座に観察した。各試験対象の各サンプルからの各4分の1区から1枚ずつ、少なくとも4枚の画像をすみやかに撮影した。
【0137】
ヨーグルト注入の60分および180分(MDT分析のみ)後に採取した空腸サンプルについて、脂質組成(MDT分析を使用したトリ−、ジ−、およびモノグリセリド、および遊離脂肪酸の全脂質)および脂肪酸組成を下の表に示す。
【0138】
表2から、遊離脂肪酸が、全ての空腸サンプルの主要な脂質構成要素であることを認めることができる。双方の処置で同一レベルの脂質が投与されたにもかかわらず、活性組成物処置における総脂質レベルは、全期間にわたって乳脂肪処置よりも顕著に高い(P<0.05)。これは活性組成物処置からの脂質が、乳脂肪処置よりも人体により少なく吸収されたことを例証する。これはまた、相対FFA含量に言及する表3においても例証される。
【0139】
【表2】



【0140】
【表3】



【0141】
表3では、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、および遊離脂肪酸の相対レベルが示される。表から、双方の処置において、60および180分時の空腸内の脂質の大部分が遊離脂肪酸からなることを認めることができる。
【0142】
表4から、出発組成物と比較して、活性組成物処置がC16:0とC18:0にかなり富み、C18:1は枯渇していることを認め得る一方、乳脂肪を用いた参考製品は増大せず(最も豊富な化合物C16:0 FFAの出発組成物との比較、表3参照)、またはいくらか増大し(C18:0 FFA)、C18:1はいくらか減少する。活性組成物処置におけるより高い脂質レベルは、特により高いパルミチン酸レベルとして示される。
【0143】
【表4】



【0144】
顕微鏡観察から、最も意外な特性は、活性組成物使用ヨーグルトの摂取後に得られた空腸サンプル(60および180分)では、針状結晶がほぼ全てのサンプルで見られたのに対し、乳脂肪使用対照では、結晶ははるかにより少ない例で見られたことである。これはまた、処置(個人)毎に光学顕微鏡画像で見られた結晶量スコアを示す、下の表5にも要約されている。
【0145】
【表5】



【0146】
空腸からの数個のサンプル(60分時採取、凍結乾燥後)にX線回析を施し、観察された結晶の特性を判定した。典型的な回析パターンが見られ、それはパルミチン酸(2Θでの屈折=21.5および24°;2Θでのより小さなピーク=7、10、および12.5°)と、NaClおよびKCl(2Θでの主要屈折=28°)からできた結晶物質によって説明し得る。さらに具体的には以下の屈折が割り当てられた。NaCl 2Θ=27.3、31.7、45.4、53.8、56.4°、およびKCl 2Θ=28.2、40.4、50.1°。しかしNaClまたはKClの結晶は空腸の水性主相に溶解するので、光学顕微鏡検査によって観察された結晶はこれらではない。1組の乾燥サンプルにもまた、以下の設定でDSC(示差走査熱量測定;Mettler Toledo DSC 821)を施した。温度範囲:−15〜200℃;速度:5℃/分;基準:空のAl−40パン;サンプル:Al−40パン内の約10mg。活性組成物の摂取後に空腸から得られたサンプルは、58℃の融解温度(ピーク値)を示し、参照(乳脂肪)組成物による処置からの乾燥空腸サンプルは、52℃前後の融解温度を示した。活性組成物サンプルの58℃の融解温度が純粋パルミチン酸の値63℃に近いのに対し、パルミチン酸ナトリウムは270℃で融解する。結晶特性のある対象はまた、ラマン顕微鏡検査によっても分析した。ラマン顕微鏡検査は、ジョバンイボン(Jobin Yvon)LabRAM HR800システム(600本の溝/mm格子およびλ=514.5nmレーザー)を使用して、凍結乾燥材料上で実施した。100μm共焦点ピンホールと連動する、オリンパス(Olympus)LM PlanFL対物レンズ(100倍)を使用した。
結晶性対象が光学顕微鏡検査によって同定されたスポットから得たラマンスペクトルは、パルミチン酸、パルミチン酸ナトリウム、およびパルミチン酸カルシウムの参照スペクトル記録と比較された。結晶性対象のシグナルは、パルミチン酸によるとされた。
【0147】
概して、活性組成物を使用した活性組成物処置は胃腸管内に多数の結晶を生じさせ、参考製品は比較的少量の結晶のみを発生させると結論し得る。
【0148】
比較的高レベルの(遊離)パルミチン酸(C16:0)とステアリン酸(C18:0)、および物理的特性を合わせ考えると、結晶はパルミチン酸およびステアリン酸から構成されると結論される。
【0149】
[実施例2]
以下の試験では、一般にTNO Intestinal Model(TIM)と称される、TNO(Zeist、The Netherlands)が開発したモデル胃腸構成を使用して、乳化剤と組み合わされたC16:0を多く含むトリグリセリド使用ヨーグルトに体外処置を施した。この体外胃腸モデルは胃、小腸、および大腸内の連続動的プロセスをシミュレートする。このモデルは胃腸管内における栄養素、化学物質、生理活性化合物、および医薬品の安定性、放出、溶解、吸収、および生物変換を研究するためのユニークなツールである。これについては、例えばMinekus(Minekus,M.(1998年);およびMinekus,M.;Marteau,P;Havenaar,R.;Huis in’t Veld,J.H.J.,ATLA Antern.Lab.Anim.1995年、23、197〜209頁)によってさらに考察されている。
【0150】
TIMは、体温、pH曲線、電解質濃度、胃と小腸内の酵素活性、腸内の異なる部分の胆汁酸塩濃度、胃と小腸を通る糜粥の通過動態、および低分子量分子と水の吸収などの胃−小腸−腸管内の連続動的状態をシミュレートする。素材(食物)は、連続して胃、十二指腸、空腸、および回腸を通る移行効果を模倣するモジュールの配列を通過する。2箇所で、中空繊維半透膜が、腸管壁を超える消化素材の通過を模倣する。特定の点で胃腸液が添加され、胃の区画では胃液(リパーゼおよびペプシン)が、十二指腸の区画では炭酸水素ナトリウム溶液およびパンクレアチンおよび胆汁が添加される。
【0151】
2種類のヨーグルト製品が製造され、ヨーグルト製造手順は実施例1に記載されるのと同じ方法であった。ヨーグルト(A)は、総脂質の2.5重量%に相当する、実施例1に記載されるような5.88重量%の42重量%脂質含有エマルジョン(Fabuless(商標))を含んでなる。ヨーグルトBは、微細分散エンバク油使用ヨーグルトと、微細分散パーム油使用ヨーグルトの2種のヨーグルトの混合物であった。混合物の全体組成がヨーグルトAと同じになるような比率で、パーム油使用ヨーグルトとエンバク油使用ヨーグルトを混合した。しかしヨーグルトAおよびヨーグルトBの微細構造は、異なった。ヨーグルトAではパーム油表面がエンバク油で覆われるのに対し、ヨーグルトBではヨーグルト中のパーム油はエンバク油からの極性脂質で覆われず、パーム油とエンバク油は別れて分散する。胃および小腸を通る試験品の移行中に、小サイズのサンプル(およそ1ml)を採取した。胃区画の管腔から(胃内へのヨーグルト挿入の60、120、および180分後に)、空腸および回腸区画から(胃内へのヨーグルト挿入の60、120、180、240、および300分後に)サンプルを採取した。管腔サンプルを顕微鏡下で視覚的に分析した(位相差または明視野400倍)。管腔サンプルを分析し、それらのトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、および遊離脂肪酸の脂質組成を測定した。管腔サンプルに加えて、空腸および回腸区画に位置する半透膜から、濾液サンプルを採取した。KOH/エタノールによる70℃で1時間の抽出後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、濾液サンプルから脂肪酸組成を測定した。
【0152】
光学顕微鏡検査から、空腸および回腸区画から得られたサンプルは、意外にもほぼ全てが、通常いくつかの結晶の集合体である結晶を含有した。結晶は全て、それらが由来する油小滴よりも大きい。これはヨーグルトAで、ならびにパーム油および極性エンバク油が最初は物理的に隔てられているヨーグルトBでも見いだされた。
【0153】
全管腔サンプル(双方のヨーグルト)の脂質は、大部分が遊離脂肪酸からなった。空腸サンプルには、いくらかのモノグリセリドおよびトリグリセリドが見られた。回腸サンプルは、遊離脂肪酸が最も豊富であり、いくらかのトリグリセリドがそれに続いた(表には示されない)。濾液サンプル中の脂質組成物の相対脂肪酸含量を表6に要約する。4種の最重要の脂肪酸を示す。これらの濾液サンプルは、(人工)腸管壁を超えて吸収された脂質を表す。第2の欄に胃の摂取量を示し、胃区画内に摂取したサンプル中の脂質の脂肪酸組成を表す。機構の十二指腸区画では少量の胆汁もまた添加され、それもまた、ほぼ等量の4つの主要構成要素に富んだ相当量の脂質を含有した。表6は、部分的にサンプルに、そして部分的に胆汁に由来する出発組成物と比較して、濾液サンプルが高度にC18:1およびC18:2に富んだことを示す。しかしこれらのサンプルはC16:0およびC18:0が実質的に枯渇しており、それはこれらの飽和脂肪酸が管腔から濾過されなかったことを意味する。したがって管腔内に残留する物質(非吸収脂質)は、これらの飽和脂肪酸が比較的豊富であった。
【0154】
【表6】



【0155】
したがって双方のヨーグルトで、空腸および回腸双方からの管腔サンプルは、相当量の結晶を含有し、全て遊離脂肪酸形態であるC16:0パルミチン酸およびC18:0ステアリン酸に富むと結論され得る。したがって観察された結晶は、これらの飽和遊離脂肪酸から蓄積された可能性が高い。さらにこの実験は、ガラクト脂質を含んでなる乳化剤などの良好な乳化剤の存在が、たとえそれらがトリグリセリドとは物理的に隔てられた状態で摂取されても、胃腸脂肪分解中にこれらの結晶形成を促進するかもしれないことを示す。
【0156】
[実施例3]
実施例2と類似した3.5%脂肪(脂質)の4種のヨーグルトをTNO腸管モデル(TIM)内の移行中に追跡した。胃小腸モデルTIMについては文献(40)に記載される。
【0157】
モデル内の消化過程を5時間にわたってモニターした。最初の3時間の間に、胃内容物は幽門弁を通じて徐々に小腸に送達された。実験の終わりには、およそ80%の小腸内容物が回盲弁を通じて徐々に大腸に送達された。
【0158】
胃の分泌物は、どちらも胃の電解質溶液(GES:3.1g/lのNaCl;1.1g/lのKCl;0.15g/lのCaCl;0.6g/lのNaHCO)に溶解された、ブタ胃粘膜からのペプシン(EC3.4.23.1;カナダ国のシグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich、Canada)製)、およびリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)からのリパーゼ(EC3.1.1.3;日本国の天野製薬(AmanoPharmaceuticals, Japan)製)からなった。実験開始時に、ブタ膵臓からのトリプシン溶液(EC3.4.21.4;カナダ国のシグマアルドリッチ)を十二指腸内に直接挿入した。またブタ胆汁抽出物(凍結した新鮮採取ブタ胆汁からの解凍胆汁を遠心分離した上清)、膵臓溶液(Pancrex V粉末;英国(UK)のPaines and Byrne製)、および腸電解質溶液(5.0g/lのNaCl;0.6g/lのKCl;0.3g/のCaCl、pH7.0)を十二指腸の区画に送達した。
【0159】
脂質(それぞれ分留パーム油、シアステアリン、パルミチン酸、および乳脂肪)3.5%の4種のヨーグルトをTIM内の移行中に追跡した。試験に先だちヨーグルト容器を穏やかに振って、内容物を均質化した。各実験の開始時に、270g量のヨーグルトをTIMの胃(すなわち胃袋)区画に挿入した。特定間隔で、胃腸管の異なる区画(胃、空腸、および回腸管腔)からサンプルを採取した。新鮮管腔の選択サンプルはまた、位相差モードがある明視野顕微鏡(ライカ(Leica)ATC2000双眼顕微鏡)によって直接、視覚的に検査した。検査後、顕微鏡サンプルを−20℃で保存した。
【0160】
全てのヨーグルトは二連で試験した。
以下の脂質(脂肪)を試験した。
a)分留パーム油
b)全脂乳からの乳脂肪
c)シアバターから得られたトリグリセリド画分であるシアステアリン
d)パルミチン酸
【0161】
シアステアリンはAarhusKarlshamn(AAK)から入手した。分留パーム油はLipid Technologies Provider(LTP)から入手した。パルミチン酸(90%)はアルドリッチから得た。乳化剤として使用した分留エンバク油は、Swedish Oat Fibre AB(SOF)から入手した粗製エンバク油の抽出から得た。
【0162】
[エマルジョンの調製(分留パーム油およびシアステアリン)]
分留パーム油および分留エンバク油を上述のようにして得た。乳化剤として分留エンバク油を使用し実施例1に記載される工程を使用して、分留パーム油およびシアステアリンからエマルジョンを製造した。以下の設定を用いた。Turraxによる2分間にわたる脂肪および乳化剤の高剪断混合と、それに続く600バールで4回通過中の均質化。分留パーム油を含んでなるエマルジョンは、オランダ国のDSMからFabuless(商標)として市販されている。
【0163】
[パルミチン酸分散体の調製]
水中のパルミチン酸および分留エンバク油混合物(92.3%/7.7%の比率)の高剪断混合(Ultra Turrax)によって、パルミチン酸結晶を含んでなる分散体を製造した。Turrax処理を80℃で15分間にわたり実施して、混合物を撹拌しながら周囲温度にゆっくりと冷却した。このようにして得られた分散体は、28重量%の脂質含量を有した。
【0164】
[ヨーグルト製造]
非エキソポリサッカライド(EPS)培養(Delvo−Yog CY222;オランダ国のDSM)を用いて、市販の0%脂肪脱脂乳;Albert Heijn銘柄)から出発してヨーグルト発酵を実施した。ヨーグルト製造中に、追加の脂肪は添加しなかった。ヨーグルトは甘み付けまたは香り付けしなかった。全てのヨーグルトの最終脂質含量は3.5%であった。この脂質含量は以下のようにして達成した。
− スキムミルクへの脂質エマルジョンの導入と、エマルジョン(脂質a)およびc)を含んでなるミルクからのヨーグルト製造;
− または市販の均質化全脂乳(脂質b)(脂肪3.5%;Albert Heijn銘柄)からの出発、追加の脂肪または乳化剤は添加しなかった;
− または穏やかな混合による、新鮮に調製されたヨーグルト(脂質d)へのパルミチン酸結晶分散体の添加。
【0165】
ヨーグルトは等カロリーであった。脂肪とタンパク質の比率は、可能な限り等しくした。
【0166】
遊離脂肪酸FFA分析により測定された、エマルジョンまたは分散体(分留パーム油と分留エンバク油、シアステアリン脂質と分留エンバク油、パルミチン酸と分留エンバク油、乳脂肪それ自体)の脂質組成を表7に示す。
【0167】
脂質組成の遊離脂肪酸部分のプロフィール(FFA分析)は、NIZOによって開発された方法で判定された(de Jong C,Badings HT.Determination of free fatty acids in milk and cheese,J High Res Chrom 1990年;13:94〜8頁)。
【0168】
【表7】



【0169】
空腸(すなわち空腸管腔)(胃区画へのヨーグルト挿入後t=60および180分)および回腸(すなわち回腸管腔)(胃区画へのヨーグルト挿入後t=120および240分)区画から採取したサンプルを光学顕微鏡検査によってサンプル採取直後に観察した。少なくとも4枚の画像を撮影した。空腸および回腸サンプルで観察された結晶量は、人による観察で定性的に推定され、以下のように区分された。
・ 0:少なくとも75%の画像中に結晶なし;
・ +:いくつかのまたはほとんどの画像中にわずかな結晶(最高10個);
・ ++:ほとんどまたは全ての画像中に多数(>10)の結晶。
【0170】
結果を表8に列挙する。
【0171】
【表8】



【0172】
回腸内の全ての脂肪酸の遊離脂肪酸レベル、ならびに回腸管腔内のC16:0およびC18:0およびより高級の飽和脂肪酸(FA)画分は、上述のようにFFA法を使用して測定した。
【0173】
【表9】



【0174】
【表10】



【0175】
パルミチン酸を含んでなるヨーグルトは、回腸管腔内で最も高いFFA量を示し、シアバターがそれに続き、分留パーム油がそれに続き、乳脂肪がそれに続く。飽和脂肪酸の経時的相対濃縮が観察され、それはパルミチン酸、シアステアリン、分留パーム油、乳脂肪の順に最も明白である。全ての差は統計的に有意である(P<0.05)。
【0176】
結晶性特徴を有する対象物を(実施例1に記載されるように)ラマン分光法によって分析した。結晶性対象のシグナルは、遊離飽和脂肪酸および/または対応する塩(すなわちパルミチン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸カルシウムなど、遊離飽和脂肪酸の塩)によるものであってもよい。
【0177】
FFAおよびラマン分析から、結晶は、主に飽和パルミチン酸と飽和ステアリン酸から、恐らくはそれらの対応する塩として、または対応する塩を含んで、構成されると考えられる。
【0178】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある、有効量の脂質を含んでなる組成物をヒトまたは動物に投与するステップを含んでなる、ヒトまたは動物において満腹を誘発する方法。
【請求項2】
前記脂質の少なくとも一部が空腸内で結晶形態にある、請求項に1記載の方法。
【請求項3】
前記脂質が、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、あるいは遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩であり、好ましくは前記脂質が、遊離脂肪酸または遊離脂肪酸の塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質が少なくとも1つのC16またはより高級の飽和脂肪酸を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
乳化剤を投与するステップをさらに含んでなり、好ましくは前記乳化剤が、レシチン、ガラクト脂質ベースの乳化剤またはその誘導体またはそれらの混合物から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記C16またはより高級の飽和脂肪酸が、前記組成物中の脂肪酸総量を基準にして少なくとも45w/w%の量で存在する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与される脂質の少なくとも一部が投与前に結晶形態にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脂質が、少なくともパルミチン酸またはステアリン酸またはその組み合わせを含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、食物、飼料または飲料製品の前、それと同時、またはそれに引き続いて投与される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、食物、飼料、飲料または栄養補助食品の一部である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒトまたは動物が、減量プログラムまたは体重維持プログラム、あるいは負のエネルギー収支または食事代替療法の対象である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
その脂肪酸の少なくとも45w/w%がC16またはより高級の飽和脂肪酸である脂質を含んでなる組成物。
【請求項13】
前記脂質が、少なくともパルミチン酸またはステアリン酸またはその組み合わせを含んでなる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記脂質が、パーム油、パームステアリンまたはシアバター、あるいは分留パーム油、パームステアリンまたはシアバターから得られる、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも45w/w%のC16またはより高級の飽和脂肪酸を含んでなる少なくとも1グラムの追加的脂質を含んでなる、食物、飼料、飲料または栄養補助食品。
【請求項16】
肥満症、過体重、心血管疾患および/または糖尿病を治療または予防するための薬剤の調製における、その少なくとも一部が小腸内で結晶形態にある脂質の使用。
【請求項17】
請求項12〜14のいずれか一項に記載の組成物を好ましくは乳化剤と組み合わせて、食物、飼料または飲料に添加しまたは組み込むステップを含んでなる、食物、飼料、飲料製品または栄養補助食品を調製する方法。
【請求項18】
前記食物が、乳製品、乳製品代替え物、アイスクリーム、マーガリン、スプレッド、ディップ、ドレッシングまたはソース、加工肉製品、糖菓、詰め物、スープ、果実飲料、茶またはコーヒーベースの飲料、清涼飲料、ニアウォーター、最大35容積%の乳製品および/または乳酸製品含量を含んでなる飲料、コーヒークリーマー、デザート、チョコレート、キャンディまたはその他の糖菓、ベイクド製品、栄養バー、シリアルバー、タンパク質ベースのバー、パスタ製品とその他の穀物製品、朝食用シリアルまたはミューズリー、カスタード、食事代替品製品である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記食物、飼料または飲料または栄養補助食品が、満腹を促進する食物、飼料、飲料または栄養補給剤製品である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記食物、飼料または飲料製品が、1食あたり50〜250kcalの範囲のカロリー含量を有する、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項17〜20に記載の方法のいずれかによって得られる、食物、飼料、飲料または栄養補助食品製品。
【請求項22】
請求項12〜14のいずれか一項に記載の組成物、または請求項15または21に記載の食物、飼料、飲料、または栄養補助食品製品を提供するステップを含んでなる、減量または体重維持プログラム。

【公表番号】特表2012−522737(P2012−522737A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502521(P2012−502521)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051574
【国際公開番号】WO2010/112256
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】