説明

溜水自然排水装置

【課題】マンホールなどの地下に埋設する構造物内に溜る水を確実に自然排水でき、逆に地下水は全く侵入せず、しかもその構造が簡単で耐久性がありその設置も容易な溜水自然排水装置を提供すること。
【解決手段】筒状であって少なくともその内部形状が上方向に向かって円錐状にその内径が徐々に小さくなるように形成された筒体を具備し、該筒体の内径の最も小さい部分よりも下側に、最大径が該筒体の内径の最も小さい部分の内径よりも大きいフロートであって、両端に球形面を有する円筒構造のフロートを収納する。この溜水自然排水装置1は、地下に埋設するマンホール等の構造物の床111に設けた貫通する排水孔113内に収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下に埋設するマンホールなどの構造物内に溜る水を自然に排水する溜水自然排水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、通信用ケーブルの引込みや引き抜き、接続作業、中継器等の設置、管路やケーブルの点検などのために、地下に埋設した管路の途中にマンホールが設けられている。
【0003】
ところで雨が降るなどして地上からマンホールの蓋等を介してマンホール内に雨水が侵入した場合、その内部が水浸しになって内部での作業ができなくなってしまう。このため従来、マンホール内の水はポンプ・発電機等によってポンプアップして側溝に排水したり、また排水できない場合はバキューム車を現地へ持ち込んで溜水を組み上げ、所定の処理場に輸送して排水したりしていた。
【0004】
しかしながら溜水を側溝に排水した場合は、該側溝が溢れるなどの不都合があり、またバキューム車を用いた場合は人件費や燃料などの輸送コストが高くついてしまう。
【0005】
また何れの方法でも、公道上での作業が多く、交通渋滞や騒音、排水の増水など、地域住民等に迷惑をかけてしまう。
【0006】
一方マンホール内に溜った水を処理する方法として、マンホールの床に排水孔を開けて排水する方法も考えられる。
【0007】
しかしながらこの方法の場合、多量の雨が降るなどして地下水の水位が上昇した場合、逆に該排水孔から地下水が侵入してきてしまうという問題点があった。この問題点を解決するためには、該排水孔に、マンホール内部の水は排水するが、地下水は侵入できないような逆止弁機構を設ければよいが、従来、この種の逆止弁機構の構造は複雑でコストが高く、また耐久性にも問題があり、しかも設置済みのマンホールに後から取り付けるにはその工事が容易ではなかった。また一旦逆止弁機構を取り付けた後に、該逆止弁機構にゴミが詰まるなどの不都合が生じた場合、その取り替え作業も煩雑であった。
【0008】
そこで、発明者は,かかる点に鑑み種々検討を行った結果,特許文献1に示すように、マンホールなどの地下に埋設する構造物内に溜る水を自然排水でき、逆に地下水は侵入せず、しかもその構造が簡単で耐久性がありその設置も容易な溜水自然排水装置を提案した。
【0009】
【特許文献1】特開平9−4033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、マンホールなどの地下に埋設する構造物内に溜る水を自然排水でき、逆に地下水を確実に侵入させず、しかもその構造が簡単で耐久性がありその設置も容易な溜水自然排水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するため本発明にかかる溜水自然排水装置は、筒状であって少なくともその内部形状が上方向に向かって円錐状にその内径が徐々に小さくなるように形成された筒体を具備し、該筒体の内径の最も小さい部分よりも下側に、最大径が該筒体の内径の最も小さい部分の内径よりも大きいフロートであって、両端に球形面を有する円筒構造のフロートを収納して構成され、前記構造物の床に設けた貫通する排水孔内に収納されるものである。
【0012】
又、本発明にかかる溜水自然排水装置は、「前記筒体の内部には、水位に応じて前記フロートが倒れることなく上下方向に移動することができる該フロートの最大径とほぼ等しい内径を有する円筒形状のフロートガイドが設置されている」こと、「前記溜水自然排水装置の筒体の内部形状は、その下端から上方向に向かって円錐状にその内径が徐々に小さくなり、更に上方向に向かって円錐状にその内径が徐々に大きくなる形状に形成されている」こと、「前記溜水自然排水装置の高さは、構造物の床に設けられた排水孔の縦方向の深さより、長い」こと、「前記溜水自然排水装置の上部には、泥溜部が設置されている」ことを好ましい態様として含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば以下のような優れた効果を有する。
(1)マンホールなどの地下に埋設する構造物内に溜る水を何ら動力を用いずに自然に地中に排水でき、しかも逆に地下水のマンホール内への侵入を確実に防ぐことができる。
(2)構造が簡単でコストがかからず、耐久性もある。
(3)設置済みのマンホールであっても、後からその床に排水孔を開けて挿入するだけで装着できるので、その取り付け工事は容易である。また取り替えのための着脱作業も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1を図1〜3に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図3に示すようにこのマンホール100は、略矩形状であって地中に埋設されるコンクリート製のマンホール本体110と、該マンホール本体110の上部に取り付けられる筒状の首部120と、該首部120の上端開口を塞いでちょうど地面の位置にくる蓋130とによって構成されている。
【0016】
そして該マンホール本体110の側壁には、通信用ケーブル140を貫通する複数本の管路150が接続されている。
【0017】
そしてマンホール本体110内には、前記通信用ケーブル140を接続するケーブル接続部160や、図示しない中継器などが設置されている。
【0018】
そして本発明にかかる溜水自然排水装置1は、マンホール本体110の床111の4隅に設けられている。
【0019】
ここで、図1は、溜水自然排水装置1を排水孔113に設置した部分を拡大して示す断面図である。図1に示すようにこの溜水自然排水装置1は、マンホール本体の床111に設けた円形の排水孔113内に取り付けられている。
【0020】
この溜水自然排水装置1は、筒体10の上下両端面に透水性シート21、22を取り付け、またその内部には、フロート2と該フロート2をガイドするフロートガイド3を収納して構成されている。
【0021】
筒体10は樹脂製であり、その形状は、円筒の中央部をくびらせた形状であり、具体的には、円筒の下端から上方向に向かって円錐状にその内径を徐々に小さくし、最も小さい部分にくびれ部4が設けられ、次に該くびれ部4より上方向に向かって円錐状にその内径を徐々に大きくするような形状に形成されている。また筒体10の上端辺には、外側に向かって突出するフランジ15が設けられている。
【0022】
又、フロート2は、アクリル製の樹脂等で形成されており、その形状は、両端に球形面を有する円筒形状である。フロート2の内部は空洞となっている為、これによって水に浮く構造に形成されている。そして、該フロート2の最大径は筒体10のくびれ部4の内径よりも大きいため、該フロート2が前記くびれ部4より上方向に移動することはない。
【0023】
フロートガイド3は、筒体10の底部より垂直方向に伸びており、又、その内径は該フロート2の最大径とほぼ等しく、該フロート2が倒れない構造となっている。又、流出孔17は、地下水が上昇してきた場合に、フロートガイド3内の水位と筒体10内の水位を均等にさせる為の孔である。
【0024】
次にこの溜水自然排水装置1の床面111への取り付け方法を説明する。即ちまずマンホール本体の床111に円筒状の排水孔113を開ける。この排水孔113は床111を貫通するが、このときその下側の土119にも所定深さの穴115を開ける。
【0025】
次に該穴115内に砂利112を投入してこれを満たし、排水孔113内に、上側から前記溜水自然排水装置1を挿入する。このとき、溜水自然排水装置1のフランジ15と床111上面の間にはリング状のパッキン20を介在し、排水孔113と溜水自然排水装置1の間に水が侵入しないようにしている。
【0026】
なおフランジ15は図示しない金具等の固定機構によって床111に固定しても良いし、接着剤などを用いて固定しても良い。
【0027】
次にこの溜水自然排水装置1の作用を説明する。即ちまずマンホール本体の内部に蓋の隙間や、地上に引き出された管路(図示せず)等から雨水等が侵入してきた場合、該溜水は、透水性シート21を通して筒体10内に流れ込み、透水性シート22から砂利112を通して土119内に浸透していく。
【0028】
つまりマンホール本体内に侵入した溜水は、ポンプアップしたり下水に流したりする必要はなく、何ら動力を用いずに自然に地面に浸透させることで容易に排水処理ができる。
【0029】
次に地面内の地下水の水位が上昇してきた場合、該地下水は砂利112から透水性シート22を介して溜水自然排水装置1の筒体10内に侵入して来る。
【0030】
このとき、図2に示すように筒体10内のフロート2は、筒体10内に侵入してきた地下水の表面上に浮き上がり、地下水の水位上昇とともに上方向に上昇する。そして、フロートガイド3に導かれながらくびれ部4の下部分18に、フロート2が圧接する。これによって筒体10内は密閉される。従って地下水はこれ以上上昇することができず、該地下水がマンホール本体内に侵入することはない。
【0031】
又、前述したようにフロート2は円筒形状であるため、例えばフロートを球状としていた場合と比較すると、全体の体積が大きくなるため、球状のフロートより浮力が大きくなる。その結果、仮に、くびれ部4の下部分18と圧接する部分に泥等が付着した状態でフロート2が地下水と共に上昇した場合でも、フロート2とくびれ部4の下部分18との圧接力は衰えないので、地下水がマンホール内に殆ど侵入してこない。又、地下水の水位が下降してくれば、フロート2はその水位に合わせて下降し、筒体の内径の小さい部分から離れ、これによって筒体10内は開となる。従ってこの溜水自然排水装置1は再びマンホール本体内の溜水の排水作用を行なう。
【0032】
<実施例2>
次に本発明の実施例2を図4〜7に基づいて詳細に説明する。
【0033】
図4は本発明の他の実施例にかかる溜水自然排水装置1−2を排水孔に設置した状態を示す断面図である。
【0034】
図4に示すように、この実施例2において実施例1と相違する点は、(1)溜水自然排水装置1−2の上部に粉塵や微粒子が沈殿される沈殿部19を有する泥溜部5を設けた点、(2)該溜水自然排水装置1−2を設置する際に、マンホールの床111より数センチメートル嵩上げした点、(3)溜水自然排水装置1−2に外枠筒体13、中枠筒体14及び振止め16を用いる点である。
【0035】
尚、前記筒体10の素材及び前記フロート2の形状は、該筒体10にフランジが設けられていない点を除けば、実施例1と同様である。
【0036】
図5に示すように、前記溜水自然排水装置1−2は、マンホールの床111より数センチメートル嵩上げして取り付けるので、雨水又は泥水に付着している粉塵や微粒子が前記筒体10内に侵入しづらくなる。その為、従来の溜水自然排水装置より、該筒体10の内側面に粉塵や微粒子が付着しなくなり、排水機能が向上する。
【0037】
又、図6に示すように、前記溜水自然排水装置1−2の上部には、前記筒体の内部に侵入してくる粉塵や微粒子を沈殿させる沈殿部19が前記泥溜部5に設置されている。その為、従来の溜水自然排水装置より、該筒体10の内側面に粉塵や微粒子が付着しなくなり、排水機能が向上する。
【0038】
尚、その他の作用は、実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0039】
次に前記溜水自然排水装置1−2の中枠体115の交換方法を説明する。図7に示すように、外枠筒体13の上部23と外枠上蓋6の両端24はネジ加工されている為、ペットボトルの蓋を外す、又ははめる要領で、簡単に該中枠体115を抜き出す、又は挿入することができる。従って、該中枠体115を簡単に交換することができるため、該溜水自然排水装置1−2の部品の取り替え及び定期保守管理等が容易となる。
【0040】
以上のように本発明にかかる溜水自然排水装置は、構造が簡単なので壊れにくく、耐久性がある。
【0041】
以上本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、例えば以下のような変形が可能である。
【0042】
(1)上記実施例は、いずれも筒体の中央にくびれ部を設けることによってその上下がラッパ状に広がるように形成しているが、くびれ部よりも上側については必ずしもラッパ状に広がるように構成しなくても良い。またくびれ部よりも上側の部分についてはなくても良い。
【0043】
(2)フロートは上記に限定されるものではなく、要はその材質や構造から水に浮く形状であればどのような構造のものでも良い。
【0044】
(3)上記実施例においては、マンホール本体の床に設けた排水孔内に溜水自然排水装置を後から取り付ける例を示したが、該溜水自然排水装置1はマンホール本体を製造する際に同時に取り付けても良い。
【0045】
(4)上記実施例では本発明を通信設備用のマンホールに適用した例を示しているが、本発明の適用範囲はこの種のマンホールに限定されるものではなく、例えば電力送配電用ケーブルのマンホールやその他のマンホール、また地下室やその他の地中設備等に用いても良い。要は地下に埋設する構造物であって排水の必要性のあるものであれば、どのようなものにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1における排水孔内に溜水自然排水装置を設置した状態を拡大して示す断面図である。
【図2】フロートが地下水によって上昇した状態を示す溜水自然排水装置の断面図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる溜水自然排水装置を取り付ける通信設備用のマンホールの一例を示す概略斜視図である。
【図4】実施例2における排水孔内に溜水自然排水装置を設置した状態を拡大して示す断面図である。
【図5】溜水自然排水装置を嵩上げすることによって、粉塵や微粒子の浸入を防ぐ状態を示す断面図である。
【図6】溜水自然排水装置が、泥溜部によって粉塵や微粒子の浸入を防ぐ状態を示す断面図である。
【図7】溜水自然排水装置の中枠体の交換方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 溜水自然排水装置
1−2 溜水自然排水装置
2 フロート
3 フロートガイド
4 くびれ部
5 泥溜部
6 外枠上蓋
7 中枠上蓋
8 外枠下蓋
9 中枠下蓋
10 筒体
12 透水性シート
13 外枠筒体
14 中枠筒体
15 フランジ
16 振止め
17 流出孔
18 くびれ部の下部
19 沈殿部
20 パッキン
21 透水性シート
22 透水性シート
23 外枠筒体のネジ加工部
24 外枠上蓋のネジ加工部
100 マンホール(構造物)
110 マンホール本体
111 床
112 砂利
113 排水孔
114 砂利穴部
119 土
120 首部
130 マンホール本体の蓋
140 通信用ケーブル
150 管路
160 ケーブル接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設する構造物の床に設けられ、該構造物内の溜水を排水する溜水自然排水装置において、
前記溜水自然排水装置は、筒状であって少なくともその内部形状が上方向に向かって円錐状にその内径が徐々に小さくなるように形成された筒体を具備し、該筒体の内径の最も小さい部分よりも下側に、最大径が該筒体の内径の最も小さい部分の内径よりも大きいフロートであって、両端に球形面を有する円筒構造のフロートを収納して構成され、前記構造物の床に設けた貫通する排水孔内に収納されることを特徴とする溜水自然排水装置。
【請求項2】
前記筒体の内部には、水位に応じて前記フロートが倒れることなく上下方向に移動することができる該フロートの最大径とほぼ等しい内径を有する円筒形状のフロートガイドが設置されていることを特徴とする請求項1に記載の溜水自然排水装置。
【請求項3】
前記溜水自然排水装置の筒体の内部形状は、その下端から上方向に向かって円錐状にその内径が徐々に小さくなり、更に上方向に向かって円錐状にその内径が徐々に大きくなる形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溜水自然排水装置。
【請求項4】
前記溜水自然排水装置の高さは、構造物の床に設けられた排水孔の縦方向の深さより、長いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の溜水自然排水装置。
【請求項5】
前記溜水自然排水装置の上部には、泥溜部が設置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の溜水自然排水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−13955(P2008−13955A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184064(P2006−184064)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(500312609)
【Fターム(参考)】