溝掘削装置
【課題】掘削用のビット付きの掘削部材を埋設することなく再利用を可能とし、不経済の問題を解消した溝掘削装置を提供する。
【解決手段】掘削機16にセットされる管状のケーシング20と、ケーシング20の下端部に着脱可能に取付けられ、下端に掘削用のビット21cが設けられた掘削部材21とを備え、掘削機16によりケーシング20を下降させつつ回転させ、掘削部材21により地盤にリング溝22を形成する。
【解決手段】掘削機16にセットされる管状のケーシング20と、ケーシング20の下端部に着脱可能に取付けられ、下端に掘削用のビット21cが設けられた掘削部材21とを備え、掘削機16によりケーシング20を下降させつつ回転させ、掘削部材21により地盤にリング溝22を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝掘削装置に関し、例えば、水中岩盤などの硬い地盤にリング溝を掘削する溝掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防波堤などの水中構造物を構築する場合、硬い水中地盤に鋼管製の杭を打設することがある。
【0003】
従来、このように、硬い水中地盤に杭を施工する杭施工方法としては、鋼管製の杭の先端にビットを取付け、この杭を回転させながら地中に降下させてリング状の溝を掘削しつつ、その杭を地盤に建て込むようにした方法がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−45276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の杭施工方法では、掘削に使用したビット付きの杭をそのまま本杭として利用するため、特殊鋼で形成される高価なビットも地中に埋設されてしまうことになり、資材の無駄遣いとなり、不経済であるという問題があった。以上のことが本発明の課題である。
【0005】
上述のような従来の杭施工方法では、掘削に使用したビット付きの杭をそのまま本杭として利用するため、特殊鋼で形成される高価なビットも地中に埋設されてしまうことになり、資材の無駄遣いとなり、不経済であるという課題があった。また、硬い地盤を掘削する際、掘削に使用する杭には大きな負荷が加わるため、長い杭では損傷や変形を生じやすく、そのため、掘削に使用する杭は比較的短いものとせざるを得ない。そのような短い杭を本杭として利用した場合、本杭は海中に設置されているため、計測装置による位置計測が困難であり、位置決め精度が得にくいという課題もあった。そこで、杭施工における資材の無駄遣いという課題及び位置決め精度の向上という課題を解消することが可能な杭施工方法が求められている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、リング溝の削孔に使用するビット付きの掘削部材を埋設することなく再利用を可能とし、不経済の問題を解消するとともに、リング溝の位置決め精度の向上を図った溝掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ケーシングに対して着脱可能のビット付きの掘削部材によりリング溝を形成した後、このケーシングにより本杭をリング溝に挿入させることにより、高価なビットを埋設することなく再利用することが可能となるとともに、ケーシングの位置計測を可能とすることにより、リング溝の位置決め精度の向上も可能となることを見出し、これに基づいて、以下のような新たな溝掘削装置を発明するに至った。
【0008】
(1) 地盤にリング溝を形成する溝掘削装置であって、削孔用の掘削機に建て込まれ、下端部に前記リング溝に挿入される本杭が着脱可能に結合される結合部を有する管状のケーシングと、下端に掘削用のビットが取付けられ、上端部の結合部が前記ケーシングの結合部に着脱可能に取付けられた管状の掘削部材とを備え、前記掘削機により前記ケーシングを回転させつつ下降させ、前記掘削部材により地盤にリング溝を形成するようにしたことを特徴とする溝掘削装置。
【0009】
(1)記載の溝掘削装置によれば、ケーシングにビット付きファーストチューブを取付けて、ケーシングを回転させつつ下降させることにより地盤にリング溝を形成することができるとともに、リング溝を形成した後、掘削部材をリング溝から抜き、掘削部材をケーシングから分離させ、掘削部材に替えて本杭をケーシングの結合部に取付け、リング溝に本杭を打設することができる。したがって、高価なビット及び掘削部材は埋設することなく再利用することができるので、資材の無駄遣いを防止することができる。また、本杭を打設するケーシングは海面上に露出しているので、露出部分を計測器により計測することが可能となり、リング溝の位置決め精度の向上を図ることができる。
【0010】
(2) 前記掘削機に設けられた発光手段と、前記ケーシングの側面に設けられたマーキングと、前記発光手段及びマーキングを追尾して、前記発光手段の位置から前記ケーシングの水平方向の位置データを、前記マーキングの位置から前記ケーシングの高さ方向の位置データを取得してそれぞれの位置データを送信するデータ送信機と、前記データ送信機からの位置データを受信し、前記掘削機に建て込まれたケーシングの水平方向の位置及び高さ方向の位置を計測することにより、掘削するリング溝の平面方向の位置及び掘削したリング溝の深さを計測する位置計測器とを備えたことを特徴とする(1)記載の溝掘削装置。
【0011】
(2)記載の溝掘削装置によれば、掘削機に設けられた発光手段とケーシングの側面に設けられたマーキング手段を追尾して、ケーシングの平面方向の位置及び高さ方向の位置を計測することにより、掘削するリング溝の平面方向の位置及び深さを計測することができ、これにより、リング溝を正確な位置及び正確な深さに掘削することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の溝掘削装置によれば、リング溝の削孔に使用するビット付きの掘削部材を埋設することなく再利用を可能とし、不経済の問題を解消するとともに、リング溝の位置決め精度の向上も図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による溝掘削装置の側面図、図2は、ファーストチューブの(掘削部材)拡大断面図である。
【0015】
図1において、10は、杭打ちを行う場所に設置される台船であって、海底地盤11上に支柱12を介して設置されている。台船10上にはクレーン14が設置されている。また、台船10の前部には、杭打設用の架台15が設けられている。台船10の高さ位置は、台船10に取付けられた昇降装置17により決定するようになっている。
【0016】
架台15上に削孔用の掘削機16が設置されている。架台15上にはXY方向のレール(図示せず)が設けられ、掘削機16を駆動装置によりこのレール上に移動可能に設置することにより、掘削機16を最適の掘削位置に設定できるようになっている。掘削機16には鋼管製のケーシング20が建て込まれている。ケーシング20の下端部にはファーストチューブ(掘削部材)21が取付けられている。
【0017】
図2に示すように、ファーストチューブ21は、鋼管等の本体21aの上端部に雌ねじ21bが形成され、本体21aの下端部には、複数のビット21cが下端縁に取付けられた掘削リング21dが固着された構成のものである。ケーシング20の下端部には肉薄部20aが形成され、この肉薄部20aの外周に形成された雄ねじ20bにファーストチューブ21の雌ねじ21bが着脱可能にねじ込まれている。
【0018】
図1に示すように、台船10には位置計測装置29が設けられている。この位置計測装置29は、ハウジング30を備え、ハウジング30内には受信機、演算装置(図示せず)等を備え、ハウジング30外に受信アンテナ31を備えたものである。
【0019】
掘削機16に上面には、光波プリズム、ターゲットミラー等の発光手段32が取付けられている。また、ケーシング20の側面には、掘削機16の上方に位置して反射シール等からなる高さ管理用のマーキング33が設けられている(図2参照)。
【0020】
陸地34には、発光手段32を光波38aにより追尾する位置計35a、及びマーキング33を光波38b追尾する位置計35bが設置されている。この位置計35a、35bには位置データを送信する送信アンテナ36a、36bが設けられ、この送信アンテナ36aから発光手段32の位置データ、送信アンテナ36bからマーキング33の位置データが、それぞれ位置計測装置29の受信アンテナ31に向けて送信されるようになっている。
【0021】
図3は、本実施形態に溝掘削装置による溝掘削の工程図である。以下、溝掘削の動作を説明する。
【0022】
図3の(1)は、掘削機16の設置工程を示す。同図において、掘削機16はクレーン14のワイヤ18に取付けられたフック19に吊り下げられ、ワイヤ18を降ろすことにより、架台15上に設置する。
【0023】
図3の(2)は、ファーストチューブ及びケーシングの建込み工程を示す。同図に示すように、長尺(継ぎ合わせて長尺にする連結式のもの)の鋼管製のケーシング20の先端に、ファーストチューブ21を取付ける(図2参照)。ファーストチューブ21を取付けたケーシング20をクレーン14のフック19に吊り下げて、掘削機16にセットする。
【0024】
図3の(3)は、掘削機16による溝堀り工程を示す。同図に示すように、掘削機16によりケーシング20を回転させながら、定位置まで下降させることにより、ファーストチューブ21のビット21cにより海底地盤11が削られ、図3の(4)に示すような所定深さのリング溝22が形成される。
【0025】
図3の(4)は、削孔完了・ファーストチューブ引き抜き工程を示す。同図に示すように、ケーシング20をフック19に掛けてクレーン14により引き上げることにより、ファーストチューブ21はリング溝22から引き抜かれる。ファーストチューブ21が掘削機16から出る位置までケーシング20を引き上げた後、ファーストチューブ21を回してケーシング20から分離する。以上でリング溝22の掘削工程が終了する。
【0026】
上記溝掘り工程においては、図1に示す位置計測手段による位置計測が行われる。すなわち、掘削機16に上面に設けられている発光手段32を位置計35aにより追尾し、位置データを位置計測装置29に送信し、位置計測装置29においてはその位置データを演算することにより、ケーシング20の平面方向の位置が計測される。この位置計測に基づいて、掘削機を架台上のレールに沿って移動させることにより、掘削するリング溝22の平面方向の位置が決定される。さらに、ケーシング20の側面に設けられているマーキング33を位置計35bにより追尾し、位置データを位置計測装置29に送信し、位置計測装置においてはその位置データを演算することにより、ケーシング20の高さ方向の位置が計測される。これにより、掘削するリング溝22の深さが計測される。予め決定された深さまでリング溝22が掘削されたとき、掘削機16の駆動を自動停止する。
【0027】
図4は、上記のようにして形成されたリング溝22に本杭を打設する杭施工工程を示している。
【0028】
図4の(1)は、本杭建込み工程を示す。ケーシング20の下端に、取り外したファーストチューブ21に代えて鋼管製の本杭23を取付ける。本杭23の先端には、回り止め用のビット24が取付けられている。回り止め用のビット24は、掘削には使用しないので、ファーストチューブ21のビット21cより、強度も小さく個数も少なくてよい。本杭23とケーシング20との取付け構造は、ファーストチューブ21と同様のねじ込み構造とすることができる。
【0029】
図4の(2)は、本杭挿入工程を示す。同図に示すように、掘削機16によりケーシング20を回転させながら下降させてリング溝22に挿入し、ビット24をリング溝22の底部の海底地盤11に突き立てる。
【0030】
図4の(3)は、ケーシング20引き抜き工程を示す。ケーシング20を下降時とは逆に回転させて、本杭23からケーシング20を離脱させた後、同図に示すように、ケーシング20をクレーン14のフック19に掛けて引き上げることにより、本杭23を海底地盤11に残したままケーシング20のみ引き上げる。このようにして、本杭23の施工を完了する。
【0031】
以上のように、本発明による溝掘削装置は、ケーシング20にビット21c付きのファーストチューブ21を取付けて、ケーシング20を回転させつつ下降させることによりリング溝22を形成することができる。ファーストチューブ21はケーシング20に着脱可能に取付けられているので、リング溝22を掘削した後はケーシング20から取り外し、ファーストチューブ21に代えて本杭23を取付け、リング溝22に本杭23を挿入させる。これにより、ファーストチューブ21及び高価なビット21cは埋設することなく再利用することができ、資材の無駄遣いを防止することができるとともに、本杭23を打設するケーシング20は海面に露出しているので、露出部分に形成したマーキング33を計測することにより、削孔したリング溝22の深さ計測が可能となり、リング溝22の位置決め精度の向上を図ることができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、図3の(4)及び図4の(3)におけるケーシング20の引き上げをクレーン14により行っているが、ケーシングの引上手段として、掘削機16を利用してもよい。また、上記実施形態では、図3の(1)〜(4)における掘削時と、図4の(1)〜(3)における本杭建て込み時とで同一のケーシング20を使用した例を示しているが、掘削時と本杭建て込み時とでは異なるケーシングを使用することも可能である。
【0033】
本発明の杭施工方法は、港湾工事や海洋工事で用いる水中構造物の構築に好適に用いることができるが、その他の杭打設にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の溝掘削装置の側面図である。
【図2】本発明の溝掘削装置におけるファーストチューブの断面図である。
【図3】本発明の溝掘削装置による溝掘削の工程図である。
【図4】溝掘削後の杭施工の工程図である。
【符号の説明】
【0035】
16 掘削機
20 ケーシング
20b 雄ねじ(結合部)
21 ファーストチューブ(掘削部材)
21a 本体
21b 雌ねじ(結合部)
21c ビット
23 本杭
30 位置計測装置
32 発光手段
33 マーキング
35a データ送信機
35b データ送信機
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝掘削装置に関し、例えば、水中岩盤などの硬い地盤にリング溝を掘削する溝掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防波堤などの水中構造物を構築する場合、硬い水中地盤に鋼管製の杭を打設することがある。
【0003】
従来、このように、硬い水中地盤に杭を施工する杭施工方法としては、鋼管製の杭の先端にビットを取付け、この杭を回転させながら地中に降下させてリング状の溝を掘削しつつ、その杭を地盤に建て込むようにした方法がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−45276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の杭施工方法では、掘削に使用したビット付きの杭をそのまま本杭として利用するため、特殊鋼で形成される高価なビットも地中に埋設されてしまうことになり、資材の無駄遣いとなり、不経済であるという問題があった。以上のことが本発明の課題である。
【0005】
上述のような従来の杭施工方法では、掘削に使用したビット付きの杭をそのまま本杭として利用するため、特殊鋼で形成される高価なビットも地中に埋設されてしまうことになり、資材の無駄遣いとなり、不経済であるという課題があった。また、硬い地盤を掘削する際、掘削に使用する杭には大きな負荷が加わるため、長い杭では損傷や変形を生じやすく、そのため、掘削に使用する杭は比較的短いものとせざるを得ない。そのような短い杭を本杭として利用した場合、本杭は海中に設置されているため、計測装置による位置計測が困難であり、位置決め精度が得にくいという課題もあった。そこで、杭施工における資材の無駄遣いという課題及び位置決め精度の向上という課題を解消することが可能な杭施工方法が求められている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、リング溝の削孔に使用するビット付きの掘削部材を埋設することなく再利用を可能とし、不経済の問題を解消するとともに、リング溝の位置決め精度の向上を図った溝掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ケーシングに対して着脱可能のビット付きの掘削部材によりリング溝を形成した後、このケーシングにより本杭をリング溝に挿入させることにより、高価なビットを埋設することなく再利用することが可能となるとともに、ケーシングの位置計測を可能とすることにより、リング溝の位置決め精度の向上も可能となることを見出し、これに基づいて、以下のような新たな溝掘削装置を発明するに至った。
【0008】
(1) 地盤にリング溝を形成する溝掘削装置であって、削孔用の掘削機に建て込まれ、下端部に前記リング溝に挿入される本杭が着脱可能に結合される結合部を有する管状のケーシングと、下端に掘削用のビットが取付けられ、上端部の結合部が前記ケーシングの結合部に着脱可能に取付けられた管状の掘削部材とを備え、前記掘削機により前記ケーシングを回転させつつ下降させ、前記掘削部材により地盤にリング溝を形成するようにしたことを特徴とする溝掘削装置。
【0009】
(1)記載の溝掘削装置によれば、ケーシングにビット付きファーストチューブを取付けて、ケーシングを回転させつつ下降させることにより地盤にリング溝を形成することができるとともに、リング溝を形成した後、掘削部材をリング溝から抜き、掘削部材をケーシングから分離させ、掘削部材に替えて本杭をケーシングの結合部に取付け、リング溝に本杭を打設することができる。したがって、高価なビット及び掘削部材は埋設することなく再利用することができるので、資材の無駄遣いを防止することができる。また、本杭を打設するケーシングは海面上に露出しているので、露出部分を計測器により計測することが可能となり、リング溝の位置決め精度の向上を図ることができる。
【0010】
(2) 前記掘削機に設けられた発光手段と、前記ケーシングの側面に設けられたマーキングと、前記発光手段及びマーキングを追尾して、前記発光手段の位置から前記ケーシングの水平方向の位置データを、前記マーキングの位置から前記ケーシングの高さ方向の位置データを取得してそれぞれの位置データを送信するデータ送信機と、前記データ送信機からの位置データを受信し、前記掘削機に建て込まれたケーシングの水平方向の位置及び高さ方向の位置を計測することにより、掘削するリング溝の平面方向の位置及び掘削したリング溝の深さを計測する位置計測器とを備えたことを特徴とする(1)記載の溝掘削装置。
【0011】
(2)記載の溝掘削装置によれば、掘削機に設けられた発光手段とケーシングの側面に設けられたマーキング手段を追尾して、ケーシングの平面方向の位置及び高さ方向の位置を計測することにより、掘削するリング溝の平面方向の位置及び深さを計測することができ、これにより、リング溝を正確な位置及び正確な深さに掘削することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の溝掘削装置によれば、リング溝の削孔に使用するビット付きの掘削部材を埋設することなく再利用を可能とし、不経済の問題を解消するとともに、リング溝の位置決め精度の向上も図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による溝掘削装置の側面図、図2は、ファーストチューブの(掘削部材)拡大断面図である。
【0015】
図1において、10は、杭打ちを行う場所に設置される台船であって、海底地盤11上に支柱12を介して設置されている。台船10上にはクレーン14が設置されている。また、台船10の前部には、杭打設用の架台15が設けられている。台船10の高さ位置は、台船10に取付けられた昇降装置17により決定するようになっている。
【0016】
架台15上に削孔用の掘削機16が設置されている。架台15上にはXY方向のレール(図示せず)が設けられ、掘削機16を駆動装置によりこのレール上に移動可能に設置することにより、掘削機16を最適の掘削位置に設定できるようになっている。掘削機16には鋼管製のケーシング20が建て込まれている。ケーシング20の下端部にはファーストチューブ(掘削部材)21が取付けられている。
【0017】
図2に示すように、ファーストチューブ21は、鋼管等の本体21aの上端部に雌ねじ21bが形成され、本体21aの下端部には、複数のビット21cが下端縁に取付けられた掘削リング21dが固着された構成のものである。ケーシング20の下端部には肉薄部20aが形成され、この肉薄部20aの外周に形成された雄ねじ20bにファーストチューブ21の雌ねじ21bが着脱可能にねじ込まれている。
【0018】
図1に示すように、台船10には位置計測装置29が設けられている。この位置計測装置29は、ハウジング30を備え、ハウジング30内には受信機、演算装置(図示せず)等を備え、ハウジング30外に受信アンテナ31を備えたものである。
【0019】
掘削機16に上面には、光波プリズム、ターゲットミラー等の発光手段32が取付けられている。また、ケーシング20の側面には、掘削機16の上方に位置して反射シール等からなる高さ管理用のマーキング33が設けられている(図2参照)。
【0020】
陸地34には、発光手段32を光波38aにより追尾する位置計35a、及びマーキング33を光波38b追尾する位置計35bが設置されている。この位置計35a、35bには位置データを送信する送信アンテナ36a、36bが設けられ、この送信アンテナ36aから発光手段32の位置データ、送信アンテナ36bからマーキング33の位置データが、それぞれ位置計測装置29の受信アンテナ31に向けて送信されるようになっている。
【0021】
図3は、本実施形態に溝掘削装置による溝掘削の工程図である。以下、溝掘削の動作を説明する。
【0022】
図3の(1)は、掘削機16の設置工程を示す。同図において、掘削機16はクレーン14のワイヤ18に取付けられたフック19に吊り下げられ、ワイヤ18を降ろすことにより、架台15上に設置する。
【0023】
図3の(2)は、ファーストチューブ及びケーシングの建込み工程を示す。同図に示すように、長尺(継ぎ合わせて長尺にする連結式のもの)の鋼管製のケーシング20の先端に、ファーストチューブ21を取付ける(図2参照)。ファーストチューブ21を取付けたケーシング20をクレーン14のフック19に吊り下げて、掘削機16にセットする。
【0024】
図3の(3)は、掘削機16による溝堀り工程を示す。同図に示すように、掘削機16によりケーシング20を回転させながら、定位置まで下降させることにより、ファーストチューブ21のビット21cにより海底地盤11が削られ、図3の(4)に示すような所定深さのリング溝22が形成される。
【0025】
図3の(4)は、削孔完了・ファーストチューブ引き抜き工程を示す。同図に示すように、ケーシング20をフック19に掛けてクレーン14により引き上げることにより、ファーストチューブ21はリング溝22から引き抜かれる。ファーストチューブ21が掘削機16から出る位置までケーシング20を引き上げた後、ファーストチューブ21を回してケーシング20から分離する。以上でリング溝22の掘削工程が終了する。
【0026】
上記溝掘り工程においては、図1に示す位置計測手段による位置計測が行われる。すなわち、掘削機16に上面に設けられている発光手段32を位置計35aにより追尾し、位置データを位置計測装置29に送信し、位置計測装置29においてはその位置データを演算することにより、ケーシング20の平面方向の位置が計測される。この位置計測に基づいて、掘削機を架台上のレールに沿って移動させることにより、掘削するリング溝22の平面方向の位置が決定される。さらに、ケーシング20の側面に設けられているマーキング33を位置計35bにより追尾し、位置データを位置計測装置29に送信し、位置計測装置においてはその位置データを演算することにより、ケーシング20の高さ方向の位置が計測される。これにより、掘削するリング溝22の深さが計測される。予め決定された深さまでリング溝22が掘削されたとき、掘削機16の駆動を自動停止する。
【0027】
図4は、上記のようにして形成されたリング溝22に本杭を打設する杭施工工程を示している。
【0028】
図4の(1)は、本杭建込み工程を示す。ケーシング20の下端に、取り外したファーストチューブ21に代えて鋼管製の本杭23を取付ける。本杭23の先端には、回り止め用のビット24が取付けられている。回り止め用のビット24は、掘削には使用しないので、ファーストチューブ21のビット21cより、強度も小さく個数も少なくてよい。本杭23とケーシング20との取付け構造は、ファーストチューブ21と同様のねじ込み構造とすることができる。
【0029】
図4の(2)は、本杭挿入工程を示す。同図に示すように、掘削機16によりケーシング20を回転させながら下降させてリング溝22に挿入し、ビット24をリング溝22の底部の海底地盤11に突き立てる。
【0030】
図4の(3)は、ケーシング20引き抜き工程を示す。ケーシング20を下降時とは逆に回転させて、本杭23からケーシング20を離脱させた後、同図に示すように、ケーシング20をクレーン14のフック19に掛けて引き上げることにより、本杭23を海底地盤11に残したままケーシング20のみ引き上げる。このようにして、本杭23の施工を完了する。
【0031】
以上のように、本発明による溝掘削装置は、ケーシング20にビット21c付きのファーストチューブ21を取付けて、ケーシング20を回転させつつ下降させることによりリング溝22を形成することができる。ファーストチューブ21はケーシング20に着脱可能に取付けられているので、リング溝22を掘削した後はケーシング20から取り外し、ファーストチューブ21に代えて本杭23を取付け、リング溝22に本杭23を挿入させる。これにより、ファーストチューブ21及び高価なビット21cは埋設することなく再利用することができ、資材の無駄遣いを防止することができるとともに、本杭23を打設するケーシング20は海面に露出しているので、露出部分に形成したマーキング33を計測することにより、削孔したリング溝22の深さ計測が可能となり、リング溝22の位置決め精度の向上を図ることができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、図3の(4)及び図4の(3)におけるケーシング20の引き上げをクレーン14により行っているが、ケーシングの引上手段として、掘削機16を利用してもよい。また、上記実施形態では、図3の(1)〜(4)における掘削時と、図4の(1)〜(3)における本杭建て込み時とで同一のケーシング20を使用した例を示しているが、掘削時と本杭建て込み時とでは異なるケーシングを使用することも可能である。
【0033】
本発明の杭施工方法は、港湾工事や海洋工事で用いる水中構造物の構築に好適に用いることができるが、その他の杭打設にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の溝掘削装置の側面図である。
【図2】本発明の溝掘削装置におけるファーストチューブの断面図である。
【図3】本発明の溝掘削装置による溝掘削の工程図である。
【図4】溝掘削後の杭施工の工程図である。
【符号の説明】
【0035】
16 掘削機
20 ケーシング
20b 雄ねじ(結合部)
21 ファーストチューブ(掘削部材)
21a 本体
21b 雌ねじ(結合部)
21c ビット
23 本杭
30 位置計測装置
32 発光手段
33 マーキング
35a データ送信機
35b データ送信機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤にリング溝を形成する溝掘削装置であって、
削孔用の掘削機に建て込まれ、下端部に前記リング溝に挿入される本杭が着脱可能に結合される結合部を有する管状のケーシングと、
下端に掘削用のビットが取付けられ、上端部の結合部が前記ケーシングの結合部に着脱可能に取付けられた管状の掘削部材とを備え、
前記掘削機により前記ケーシングを回転させつつ下降させ、前記掘削部材により地盤にリング溝を形成するようにしたことを特徴とする溝掘削装置。
【請求項2】
前記掘削機に設けられた発光手段と、
前記ケーシングの側面に設けられたマーキングと、
前記発光手段及びマーキングを追尾して、前記発光手段の位置から前記ケーシングの水平方向の位置データを、前記マーキングの位置から前記ケーシングの高さ方向の位置データを取得してそれぞれの位置データを送信するデータ送信機と、
前記データ送信機からの位置データを受信し、前記掘削機に建て込まれたケーシングの水平方向の位置及び高さ方向の位置を計測することにより、掘削するリング溝の平面方向の位置及び掘削したリング溝の深さを計測する位置計測器とを備えたことを特徴とする請求項1記載の溝掘削装置。
【請求項1】
地盤にリング溝を形成する溝掘削装置であって、
削孔用の掘削機に建て込まれ、下端部に前記リング溝に挿入される本杭が着脱可能に結合される結合部を有する管状のケーシングと、
下端に掘削用のビットが取付けられ、上端部の結合部が前記ケーシングの結合部に着脱可能に取付けられた管状の掘削部材とを備え、
前記掘削機により前記ケーシングを回転させつつ下降させ、前記掘削部材により地盤にリング溝を形成するようにしたことを特徴とする溝掘削装置。
【請求項2】
前記掘削機に設けられた発光手段と、
前記ケーシングの側面に設けられたマーキングと、
前記発光手段及びマーキングを追尾して、前記発光手段の位置から前記ケーシングの水平方向の位置データを、前記マーキングの位置から前記ケーシングの高さ方向の位置データを取得してそれぞれの位置データを送信するデータ送信機と、
前記データ送信機からの位置データを受信し、前記掘削機に建て込まれたケーシングの水平方向の位置及び高さ方向の位置を計測することにより、掘削するリング溝の平面方向の位置及び掘削したリング溝の深さを計測する位置計測器とを備えたことを特徴とする請求項1記載の溝掘削装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2009−209564(P2009−209564A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52683(P2008−52683)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]