説明

溶出が制御された農薬製剤

【課題】 農薬活性成分の水中への溶出が制御され、農薬活性成分の効果を長期間にわたり発揮することができる農薬製剤を提供すること。
【解決手段】 (a)20℃における水溶解度が5ppm以上である農薬活性成分 0.1〜40重量%、(b)HLBが10以下で炭素数が20〜150の脂肪酸エステル 0.1〜30重量%、(c)粘結剤 0.1〜30重量%、および(d)担体 0.1〜90重量%を含有することを特徴とする農薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20℃における水溶解度が5ppm以上の農薬活性成分の溶出が制御された農薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水田に施用される農薬製剤として、農薬活性成分の水中への溶出を制限するための溶出制御剤を含有する各種の農薬製剤が知られている。例えば、粒状農薬組成物に疎水性物質を含浸させ、更にまわりを疎水性の微粉で被覆してなる徐放性農薬製剤(特許文献1)、水不溶性アルギン酸塩で被覆してなる粒状農薬組成物(特許文献2)、除草性化合物およびワックス状物質からなる粒子を内核粒とし、その表面に除草性化合物を付着させた粒剤(特許文献3)、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂被膜により農薬製剤を被覆してなる被覆農薬製剤(特許文献4)、農薬活性成分とエチレン・アクリル酸共重合体エマルションまたはパラフィンおよび石油樹脂エマルションを必須成分とする練り込み粒剤(特許文献5)等が報告されている。
【0003】
しかしながら、これらの製剤は溶出制御の機能を付与するために被覆などの多段階の造粒工程を必要とするなど通常の造粒技術に比べ多大な作業を伴う上に、大幅な製造コストの上昇が避けられない。
【0004】
また、水易容性殺虫剤原体を難水溶性の脂肪酸エステルに溶解し、担体に含浸してなる農薬粒剤(特許文献6)が報告されているが、該粒剤は水分量が少ない畑地に土壌施用するためのものであって、湛水下の水田にまたは散水されるイネ育苗箱に施用するための農薬製剤として開発されたものではない。
【0005】
【特許文献1】特開平2−286602号公報
【特許文献2】特開平7−101804号公報
【特許文献3】特開平9−110605号公報
【特許文献4】特開平11−5704号公報
【特許文献5】特開2001−55303号公報
【特許文献6】特開2000−178102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水田やイネ育苗箱に施用した際に、農薬活性成分の水中への溶出が制御され、農薬活性成分の効果を長期にわたり発揮させることができる農薬製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の如き目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、20℃における水溶解度が5ppm以上である農薬活性成分を、HLBが10以下で炭素数が20〜150の脂肪酸エステル、粘結剤および担体と組み合わせて粒剤化すると、農薬活性成分の水中への溶出が制御されて、農薬活性成分の効果を長期間にわたり発揮させることができる農薬製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明は、
(a)20℃における水溶解度が5ppm以上である農薬活性成分 0.1〜40重量%、
(b)HLBが10以下で炭素数が20〜150の脂肪酸エステル 0.1〜30重量%、
(c)粘結剤 0.1〜30重量%、および
(d)担体 0.1〜90重量%
を含有することを特徴とする溶出が制御された農薬製剤を提供するものである。
【0009】
以下、本発明の溶出が制御された農薬製剤について、さらに詳細に説明する。
【発明の実施の形態】
【0010】
農薬活性成分(a)
本発明の溶出が制御された農薬製剤における農薬活性成分(a)としては、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調節剤などの一般に農薬的に活性な成分が包含され、本発明では、このうち、20℃における水溶解度が5ppm以上、特に20ppm以上である水に易溶解性の農薬活性成分が対象となる。
【0011】
上記殺虫剤としては、例えば、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名クロチアニジン)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−[(3−テトラヒドロフリル)メチル]グアニジン(一般名ジノテフラン)、N−[3−(6−クロロピリジン−3−イルメチル)チアゾリジン−2−イリデン]シアナミド(一般名チアクロプリド)、3−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−5−メチル−1,3,5−オキサジアジナン−4−イリデン−N−(ニトロ)アミン(一般名チアメトキサム)、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン(一般名イミダクロプリド)、(E)−N−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−エチル−N’−メチル−2−ニトロビニリデンジアミン(一般名ニテンピラム)、(±)−5−アミノ−(2,6−ジクロロ−α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール−3−カルボニトリル(一般名フィプロニル)などが挙げられる。
【0012】
上記殺菌剤としては、例えば、(2E)−2−(メトキシイミノ)−2−{2−〔(3E,5E,6E)−5−(メトキシイミノ)−4,6−ジメチル−2,8−ジオキサ−3,7−ジアザノナ−3,6−ジエン−1−イル〕フェニル}−N−メチルアセタミド(一般名オリサストロビン)、5−メチル−1,2,4−トリアゾロ〔3,4−b〕ベンゾチアゾール(一般名トリシクラゾール)、1,2,5,6−テトラヒドロピロロ〔3,2,1−ij〕キノリン−4−オン(一般名ピロキロン)、(1RS,3SR)−2,2−ジクロロ−N−〔1−(4−クロロフェニル)エチル〕−1−エチル−3−メチルシクロプロパンカルボキサミド(一般名カルプロパミド)、3’−イソプロポキシ−2−メチルベンズアニリド(一般名メプロニル)、α,α,α−トリフルオロ−3’−イソプロポキシ−o−トルアニリド(一般名フルトラニル)、(RS)−5−クロロ−N−(1,3−ジヒトロ−1,1,3−トリメチルイソベンゾフラン−4−イル)−1,3−ジメチルピラゾール−4−カルボキサミド(一般名フラメトピル)、2’6’−ジブロモ−2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−4−トリフルオロメチル−1,3−チアゾール−5−カルボキスアニリド(一般名チフルザミド)、メチル=(E)−2[2−{6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ}フェニル]−3−メトキシアクリラート(一般名アゾキシストロビン)、メチル=(E)−2−メトキシイミノ〔α−(o−トリルオキシ)o−トリル〕アセタート(一般名クレソキシムメチル)、(E)−2−メトキシイミノ−N−メチル−2−(2−フェノキシフェニル)アセトアミド(一般名メトミノストロビン)、3,4,5,6−テトラクロロ−N−(2,3−ジクロロフェニル)フタルアミド酸(一般名テクロフタラム)、3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(一般名プロベナゾール)、ジイソプロピル−1,3−ジチオラン−2−イリデン−マロネート(一般名イソプロチオラン)、(Z)−2’メチルアセトフ
ェノン=4,6−ジメチルピリミジン−2−イルヒドラゾン(一般名フェリムゾン)などが挙げられる。
【0013】
上記除草剤としては、例えば、1−(3−クロロ−4,5,6,7−テトラヒドロピラゾロ〔1,5−a〕ピリジン−2−イル)−5−〔メチル(プロパ−2−イニル)アミノ〕ピラゾール−4−カルボニトリル(一般名ピラクロニル)、2−メチル−4−クロロフェノキシ酪酸エチルエステル(一般名MCPBエチルエステル)、α−(2−ナフトキシ)プロピオンアニリド(一般名ナプロアニリド)、S−(4−クロロベンジル)−N,N−ジエチルチオカーバメート(一般名チオベンカルブ)、S−ベンジル=1,2−ジメチルプロピル(エチル)チオカーバメート(一般名エスプロカルブ)、S−エチルヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−カーボチオエート(一般名モリネート)、S−1−メチル−1−フェニルエチル=ピペリジン−1−カルボチオアート(一般名ジメピペレート)、3,4−ジクロロプロピオンアニリド(一般名DCPA)、2−クロロ−2’6’−ジエチル−N−(2−プロポキシエチル)アセトアニリド(一般名プレチラクロール)、2−クロロ−2’−エチル−N−(2−メトキシ−1−メチルエチル)−6’−メチルアセトアニリド(一般名メトラクロール)、2−クロロ−N−(3−メトキシ−2−テニル)−2’6’−ジメチルアセトアニリド(一般名テニルクロール)、(RS)−2−ブロモ−N−(α,α−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチルブチルアミド(一般名ブロモブチド)、2’,4’−ジフルオロ−2−(α,α,α−トリフルオロ−m−トリルオキシ)ニコチンアニリド(一般名ジフルフェニカン)、2−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ−N−メチルアセトアニリド(一般名メフェナセット)、2−(α−ナフトキシ)−N,N−ジエチルプロピオンアミド(一般名ナプロパミド)、N,N−ジエチル−3−メシチルスルホニル−1H−1,2,4−トリアゾール−1−カルボキサミド(一般名カフェンストロール)、メチル=α−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−o−トルアート(一般名ベンスルフロンメチル)、1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−(2−エトキシフェノキシスルホニル)尿素(一般名エトキシスルフロン)、エチル=5−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−1−メチルピラゾール−4−カルボキシラート(一般名ピラゾスルフロン)、1−(2−クロロイミダゾ〔1,2−a〕ピリジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)尿素(一般名イマゾスルフロン)、メチル=2−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルオキシ)−6−(1−メトキシイミノエチル)ベンゾエート(一般名ピリミノバックメチル)、2−メチルチオ−4,6−ビス(エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン(一般名シメトリン)、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−6−(1,2−ジメチルプロピルアミノ)−s−トリアジン(一般名ジメタメトリン)、2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチルベンゾフラン−5−イル=エタンスルホネート(一般名ベンフレセート)などが挙げられる。
【0014】
上記植物成長調節剤としては、例えば、イナベンフィド、パクロブトラゾール、ウニコナゾールまたはトリアペンテノール系などが挙げられる。
【0015】
さらに、例えば、「農薬ハンドブック2005年版」(財団法人 日本植物防疫協会 2005年10月発行)、「The Pesticide Manual Fourteenth Edition」(British Crop Protection Council 2006年発行)などの文献に記載されている、20℃における水溶解度が5ppm以上である農薬も本発明の農薬活性成分(a)として使用することができる。これらの農薬活性成分はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
農薬活性成分(a)の本発明の農薬製剤中における含有量は、特に制限されず、農薬活性成分の種類などに応じて広範囲に変えることができるが、農薬製剤の重量を基準にして
、一般に0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲内であることができる。
【0017】
脂肪酸エステル(b)
本発明の溶出が制御された農薬製剤における脂肪酸エステル(b)は、下記の式で示されるHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance Value)が10以下、好ましくは6以下で炭素数が20〜150の脂肪酸エステルである。
ここで、HLBは下記のグリフィンの式により算出される値である。
【0018】
HLB=20(1−S/A)
式中、Sはエステルのけん化価を表し、Aは脂肪酸の酸価を表す。
【0019】
かかる炭素数が20〜150、好ましくは30〜100の脂肪酸エステルとしては、具体的には、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0020】
上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ポリステアリン酸エステル(HLB=1)、ショ糖ジステアリン酸エステル(HLB=6)、ショ糖ポリパルミチン酸エステル(HLB=1)、ショ糖ポリラウリル酸エステル(HLB=1)、ショ糖ポリオレイン酸エステル(HLB=1)などが挙げられる。
【0021】
上記多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタントリステアリン酸エステル(HLB=2.1)、ソルビタンジステアリン酸エステル(HLB=4.4)、ソルビタンモノステアリン酸エステル(HLB=4.7)、ソルビタントリオレイン酸エステル(HLB=1.8)、ソルビタンモノオレイン酸エステル(HLB=4.3)などが挙げられる。
【0022】
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノ・ジステアリン酸エステル(HLB=2.8)、グリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=3.8)、グリセリンモノ・ジオレイン酸エステル(HLB=2.8)、グリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=3.5)、グリセリンステアリン酸・オレイン酸エステル(HLB=3.0)などが挙げられる。
【0023】
これらの脂肪酸エステルはそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
脂肪酸エステル(b)の本発明の農薬製剤中における含有量は、特に制限されないが、農薬製剤の重量を基準にして、一般に0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲内であることができる。
【0025】
粘結剤(c)
本発明の溶出が制御された農薬製剤における粘結剤(c)としては、例えば、セルロ−ス、メチルセルロ−ス、エチルセルロ−ス、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコ−ルエステル、ポリビニルアルコ−ル、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコ−ル、エチレン・プロピレンブロックポリマ−、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸樹脂、酢酸ビニル・アクリル酸樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、メタアクリル酸樹脂、エチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂、レジン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられ、中でも、ポリビニルアルコ−ル、酢酸ビニル樹脂およびエチレン−酢酸ビニル樹脂が好適である。
【0026】
これらの粘結剤はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
本発明の農薬製剤中における粘結剤(c)の含有量は、特に制限されないが、農薬製剤の重量を基準にして、一般に0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲内であることができる。
【0028】
担体(d)
本発明の溶出が制御された農薬製剤における担体(d)としては、無機担体として、例えば、クレー、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ジークライト、セリサイト、酸性白土、珪石、珪藻土、軽石、ゼオライト、バーミキュライト、ホワイトカーボン、パーライト、アタパルジャイトなど;有機担体として、例えば、小麦粉、フスマ、米粉、米糠、木粉、セルロース、乳華などが挙げられる。
【0029】
これらの担体はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
担体(d)の本発明の農薬製剤中における含有量は、特に制限されないが、農薬製剤の重量を基準にして、一般に0.1〜90重量%、好ましくは1〜70重量%の範囲内であることができる。
【0031】
本発明の農薬製剤には、以上述べた成分以外に、任意成分として、例えば、本発明の農薬製剤中で農薬活性成分を安定に保つ目的でおよび/または造粒する際の造粒性などを向上させる目的で、必要に応じて、界面活性剤、補助剤などを含有せしめることができる。
【0032】
上記界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホサクシネ−ト、リグニンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アルキルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンサルフェート塩、脂肪酸塩、イソブチレン−マレイン酸共重合体塩、スチレン−マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩などの陰イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレンスチルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレンスチルフェニルエ−テルポリマー、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックホリマー、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0033】
上記補助剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビスなどの酸化防止剤;クエン酸、リン酸、炭酸マグネシウムなどのpH調整剤などが挙げられる。
【0034】
上記任意成分は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、本発明の農薬製剤におけるそれらの配合量は、特に制限されないが、農薬製剤の重量を基準にして、合計で、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲内であることができる。
【0035】
本発明の農薬製剤の製剤形態としては、特に、粒剤が好ましい。粒剤は、農薬の製剤化
において通常用いられる造粒法、例えば、押し出し造粒法、転動造粒法、転動流動造粒法、流動層造粒法、圧縮造粒法、攪拌混合造粒法、被覆造粒法、打錠法などにより調製することができる。
【0036】
上記押し出し造粒法は、例えば、農薬活性成分(a)、脂肪酸エステル(b)、粘結剤(c)、担体(d)および任意成分(界面活性剤、補助剤)を混合し、その混合物を加水混練し、押し出し造粒機にて造粒後、整粒、乾燥し篩い分けすることにより調製することができる。
【0037】
上記被覆造粒法は、例えば、農薬活性成分(a)、粘結剤(c)、担体(d)および任意成分(界面活性剤、補助剤)を混合し、その混合物を加水混練し、押し出し造粒機にて造粒後、整粒、乾燥し篩い分けをして得た基粒に、脂肪酸エステルを吸着させることにより調製することができる。
【0038】
本発明により提供される農薬製剤は、通常の農薬製剤と同様に水田やイネ育苗箱に施用することができ、その施用量は、特に制限されるものではなく、広範囲に変えることができ、例えば、水田に施用する場合には、粒剤を10アールあたり一般に0.1kg〜5kg、好ましくは0.5kg〜3kg、そしてイネ育苗箱に施用する場合には、粒剤を1箱あたり一般に10g〜500g、好ましくは50g〜300g投与することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
実施例1
(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン、水溶解度:327ppm/20℃)1.62重量%、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンサルフェート・リグニンスルホン酸・ナフタレンスルホン酸縮合物金属塩配合品1.0重量%、ポリビニルアルコール2.0重量%、酢酸ビニル樹脂エマルション(50%品)6.0重量%およびクレー92.38重量%を混合容器に秤り込み、万能混合機で5分間混合し、この混合物100質量%に対して水13重量%を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.0mm径のスクリーンを付けたバスケット型造粒機(畑鉄工所株式会社製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(1.68〜0.50mm)して基粒を得る。この基粒95重量%に加温溶解したショ糖ポリステアリン酸エステル5重量%を吸着させ農薬製剤を得る。
【0041】
実施例2
実施例1で得られた基粒95重量%に加温溶解したショ糖ポリステアリン酸エステル5重量%を吸着させ農薬製剤を得る。
【0042】
実施例3
実施例1で得られた基粒95重量%に加温溶解したソルビタンモノステアリン酸エステル5重量%を吸着させ農薬製剤を得る。
【0043】
実施例4
実施例1で得られた基粒95重量%に加温溶解したソルビタンモノラウリン酸エステル5重量%を吸着させ農薬製剤を得る。
【0044】
実施例5
実施例1で得られた基粒95重量%に加温溶解したグリセリンモノステアリン酸エステル5重量%を吸着させ農薬製剤を得る。
【0045】
実施例6
実施例1で得られた基粒95重量%に加温溶解したグリセリンモノラウリン酸エステル5重量%を吸着させ農薬製剤を得る。
【0046】
比較例1
(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン、水溶解度:327ppm/20℃)1.62重量%、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンサルフェート・リグニンスルホン酸・ナフタレンスルホン酸縮合物金属塩配合品1.0重量%、ポリビニルアルコール2.0重量%、酢酸ビニル樹脂エマルション(50%品)6.0重量%およびクレー92.38重量%を混合容器に秤り込み、万能混合機で5分間混合し、この混合物100質量%に対して水13重量%を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.0mm径のスクリーンを付けたバスケット型造粒機(畑鉄工所株式会社製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(1.68〜0.50mm)して農薬製剤を得る。
【0047】
次に、本発明の効果を確認するため、実施例1〜6の農薬製剤および比較例1の農薬製剤について、以下の試験例1を実施した。
【0048】
試験例1(水中溶出性試験)
500mlビーカーに20℃3度硬水250mlを入れ、実施例1〜6および比較例1で調製した農薬製剤各20mgを添加する。24時間後にビーカー中央部から1ml採水する。また、ビーカー中の農薬活性成分を含む溶液を超音波により十分分散させた後、1ml採水する。これら採水した溶液中の農薬活性成分濃度を液体クロマトグラフィーで測定した。測定後、下記の式を用いて水中溶出率を算出した。その結果を表1に示す。
【0049】
水中溶出率(%)=(Ct/Cx)×100
Ct:散布24時間後の農薬活性成分濃度、
Cx:ビーカーごと超音波で十分に分散させた農薬活性成分濃度。
【0050】
【表1】

【0051】
上記表1の結果から、本発明の農薬製剤は、比較例の農薬製剤に比べて、農薬活性成分
の水中への溶出が抑制されていることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)20℃における水溶解度が5ppm以上である農薬活性成分 0.1〜40重量%、
(b)HLBが10以下で炭素数が20〜150の脂肪酸エステル 0.1〜30重量%、
(c)粘結剤 0.1〜30重量%、および
(d)担体 0.1〜90重量%
を含有することを特徴とする溶出が制御された農薬製剤。
【請求項2】
農薬活性成分(a)がクロチアニジンである請求項1に記載の農薬製剤。
【請求項3】
脂肪酸エステル(b)がショ糖脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルおよびグリセリン脂肪酸エステルより選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の農薬製剤。
【請求項4】
脂肪酸エステル(b)がショ糖ポリステアリン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ポリパルミチン酸エステル、ショ糖ポリラウリル酸エステル、ショ糖ポリオレイン酸エステル、ソルビタントリステアリン酸エステル、ソルビタンジステアリン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタントリオレイン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル、グリセリンモノ・ジステアリン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノ・ジオレイン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステルおよびグリセリンステアリン酸・オレイン酸エステルより選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の農薬製剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の農薬製剤を水田またはイネ育苗箱に施用することを特徴とする農薬の施用方法。

【公開番号】特開2010−59108(P2010−59108A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227165(P2008−227165)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000234890)協友アグリ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】