説明

溶出試験装置および試験方法

【課題】溶出試験装置および試験方法を提供する。
【解決手段】本発明は溶出試験装置を提供し、該装置は、少なくとも第2のチャンバ10と直列に接続された第1のチャンバ2を含み、第1のチャンバ2は固体試験サンプルを第2のチャンバ10へと移送可能であり、かつ第2のチャンバ10は固体試験サンプルを保持可能である。さらに、この装置は、1以上の媒体を第1のチャンバ2および第2のチャンバ10内へとそれぞれ連続的に供給するための第1のリザーバ21および少なくとも第2のリザーバ22を備え、チャンバは固体試験サンプルおよび媒体を一緒に混合するための攪拌器4、11を有する。加えて、第1のチャンバ2は、第1のチャンバ2への媒体の連続的な供給の間に試験サンプルを導入するためのサンプルホルダ38を有する。チャンバからの流出物を分析するためのプロセッサ5、16、20も設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医薬活性化合物が胃腸液中で溶解する速度は、経口薬の設計および使用において極めて重要である。活性化合物は人体により吸収可能となる前に溶解されなければならない。活性物質が溶液中に入る速度は溶出速度として当技術分野で知られており、in vitroでの溶出速度の決定が溶出試験として知られている。
【背景技術】
【0002】
溶出試験により、様々な時点での特定の吸収部位で利用可能な製薬活性化合物の量について理解を深めることができる。加えて、ある吸収部位での製薬活性化合物の投与形態および利用可能性の間の関係の確立、ならびにこのような活性化合物の全身血中濃度が特殊な投与手法の開発に役立つ。
【0003】
in vitroデータを用いてin vivo挙動を予測またはモデリングする概念は、in vitro−in vivo相関またはIVIVCと呼ばれるが、製薬分野において大変興味深いものである。良好なIVIVCを用いた試験方法は、既存の処方および新たな処方の開発における問題を検出するのに向いている。投与形態の開発ならびに生産、スケールアップ、ロット間変動の決定、新たな投与強度の試験、軽微な処方変更の試験、製造現場の変更後の試験および生物学的等価性の決定に、in vivoで得られた溶出および吸収データと密接に相関するシステムを用いることも可能である。
【0004】
Smolenへの米国特許第4,335,438号では、フロースルーセル(循環)および数学モデルの組み合わせを利用する溶出試験方法について説明している。in vitroデータから最適化したin vivo血漿曲線を得るために、数学モデルが変動する試験パラメータと共に用いられる。Smolenでは、変数の可能な組み合わせの数が増加するように、必然的に経時変化する4個の基底変数、流量、循環量、pH、および攪拌速度がある。
【0005】
残念ながら、Smolenのセルを用いて得られた結果は、USFDAガイドラインに基づいて、独立変数の数が多すぎるためIVIVC確立には許容できない。言い換えれば、Smolenの溶出試験方法は生理学的に適切でない場合がある。加えて、Smolenのフロースルーシステムは1つの試験についてセルを1個しか使用せず、さらにIVIVCに妥協が生じる。
【特許文献1】米国特許第4,335,438号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
故に、特により進歩した投与形態、例えば化合物の遅延放出をもたらす処方の開発とともに、製薬処方のin vitro溶出およびこのような処方のからの活性化合物の吸収の総合評価が必要である。また、人体による活性物質の吸収および溶出中に溶解した活性物質の存在を考慮に入れたin vitro溶出試験が必要である。さらに、in vitroデータを変換する数学モデルの必要なしに、Level A IVIVC を実証可能なin vitro溶出試験も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様では、溶出試験装置が提供され、該溶出試験装置は:少なくとも第2のチャンバと直列に接続された第1のチャンバ、(ここで第1のチャンバは固体試験サンプルを第2のチャンバへと移送可能であり、かつ第2のチャンバは固体試験サンプルを保持可能である);1以上の媒体を第1のチャンバおよび第2のチャンバ内へとそれぞれ連続的に供給するための第1のリザーバおよび少なくとも第2のリザーバ、(ここでチャンバは固体試験サンプルおよび媒体を一緒に混合するための攪拌器を有する;ここで、第1のチャンバは、第1のチャンバへの媒体の連続的な供給の間に試験サンプルを導入するためのサンプルホルダを有する);および、チャンバからの流出物を分析するためのプロセッサ:を含む。
【0008】
本発明の別の態様では、溶出試験装置が提供され、該溶出試験装置は:少なくとも第2のチャンバと直列に接続された第1のチャンバ、(ここで第1のチャンバは固体試験サンプルを第2のチャンバへと移送可能であり、かつ第2のチャンバが固体試験サンプルを保持可能である);1以上の媒体を第1のチャンバおよび第2のチャンバ内へとそれぞれ連続的に供給するための第1のリザーバおよび少なくとも第2のリザーバ;第1のチャンバへの媒体の連続的な供給の間に試験サンプルを導入するための、第1のチャンバ内のサンプルホルダ、(ここで第1のチャンバは固定サンプルタワーに取り付けられる止めナットをさらに含み、かつサンプルホルダは第1のチャンバ内で一定の距離まで内外にスライド可能なプランジャをさらに含む);およびチャンバからの流出物を分析するためのプロセッサ:を含む。
【0009】
本発明の別の態様では、固体試験サンプルを少なくとも第2のチャンバと直列に接続された第1のチャンバから移送すること、ここで第2のチャンバは固体試験サンプルを保持可能である;1以上の媒体を、第1のリザーバおよび少なくとも第2のリザーバから、第1のチャンバおよび第2のチャンバ内へとそれぞれ連続的に供給すること;第1のチャンバ内への媒体の連続的な供給の間に、第1のチャンバ内のサンプルホルダから試験サンプルを導入すること;固体試験サンプルおよび媒体を一緒に混合すること;およびチャンバからの流出物を分析すること:を含む、溶出試験方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、崩壊、固体移送、溶出、液体のpH/組成変化、吸収およびクリアランスを組み込んだ新たな溶出試験装置および試験方法を提供する。本発明は、優れたLevel A IVIVCを提供し、同じ薬剤の異なる投与形態にわたって予測的である。加えて、数学モデルを必要としない。また、本発明は、システムの平衡化による中断なしに、サンプルの導入および試験を可能とする。重要なことに、この新規な装置は、リザーバタンクから媒体の連続供給中に固体試験サンプルの導入を可能とする。言い換えれば、装置の各種セルおよびリザーバにおいて媒体の流れを妨害または停止することなく、ろ過セル内に固体試験サンプルが導入され、時間と経費を省くことになる。
【0011】
図面を参照すると、図1は、本発明の溶出装置の一実施形態を示している。リザーバ21、ポンプ1、およびろ過セル2が接続され、リザーバ21の液体内容物(媒体)がポンプ1を介してろ過セル2に移送されるようになっている。ろ過セル2は、ぴったり閉まる蓋24、ろ過膜3、攪拌器4、入口28、ろ過後の液体を除去可能であるように配置された出口27、サンプルホルダ38、並びに浸漬管およびティーアセンブリ7を備えている。加えて、固定サンプルタワー41および止めナット42がろ過セル2に設けられている(図3および4についてさらに論じる)。出口27はフロースルーUVセル5およびポンプ6に接続されており、ろ過液がUVセル5を通してポンプ移送され、ろ過セル2の入口28に戻される。浸漬管およびティーアセンブリ7の一分岐が、ろ過セル2から液体および小粒子サイズの固体の除去を可能にする浸漬管を備えている。浸漬管およびティーアセンブリの第2分岐がポンプ9の出口に接続されている。浸漬管およびティーアセンブリ7の第3分岐が第2のろ過セル10の入口29に接続されている。
【0012】
リザーバ22がポンプ9に接続されて、リザーバ22からの液体媒体が浸漬管およびティーアセンブリ7の第2分岐内に送り込まれる。ろ過セル10は、ぴったり閉まる蓋25、pHセンサ13、攪拌器11、ろ過膜12、2個の入口29および30、ろ過後の液体32を除去可能であるように配置された出口を備えている。リザーバ23がポンプ15およびろ過セル10の一方の入口30に接続されており、リザーバ23からの液体がろ過セル10に移送される。出口32はフロースルーUVセル16に接続されている。UVセル16の出口がセル17の入口31に接続されている。pHセンサ13は、pHコントローラ14に電気的に接続されている。ポンプ15への電源がpHコントローラ14の出力リレーに接続され、pHセンサ13で測定したpHが目標値を下回るとポンプ15がオンにされ、pHが目標値を上回るとオフにされるようになっている。
【0013】
セル17は、ぴったり閉まる蓋26、攪拌器18、浸漬管19、および出口33を備えている。この出口はフロースルーUVセル20の入口に接続されている。UVセル20からの出口は廃棄または任意の適当なリザーバ34に向けられている。本実施形態では、ろ過セル2および直接関連付けられた装置が胃チャンバを表し、ろ過セル10および直接関連付けられた装置が腸チャンバを表し、セル17および直接関連付けられた装置が循環チャンバを表している。フロースルーUVセル5、16、および20のそれぞれが、所望の波長でセルの内容物の吸光度を測定可能な適当なUV分光光度計内に配置されている。
【0014】
図2は、本明細書で浸漬管およびティーアセンブリと呼ばれる混合装置の一実施形態を概略的に示している。浸漬管およびティーアセンブリ7は、Y型コネクタ35、管36の長さ、および封止剤37を備えている。管36が、封止剤とともにコネクタ35の分岐の1つに挿入され、動作中に液体媒体の漏れを防ぎ、適所に管を保持する。管の長さは、装置の動作時に液体の表面より下に下端が来るように調整される。この配置が、管を詰まらせることなく、胃チャンバ(第1のチャンバ)および腸チャンバ(第2のチャンバ)間の小粒子の移送を可能にする。大粒子は、大きすぎて浸漬管に入らないため、または浸漬管内の媒体の流速が大粒子を浸漬管まで運び上げるには不充分なため、この構成では移送されない。
【0015】
温度の制御が必要な場合、3個のセルのいずれかまたは全てを適当な加熱槽または再循環熱風オーブン内に入れることができる。一実施形態では、リザーバ21が疑似胃液で満たされ、リザーバ22が疑似腸液で満たされ、リザーバ23が0.8M水酸化ナトリウム水溶液で満たされている。試験を開始するには、ポンプが動作されてチャンバのそれぞれを所望の体積まで満たし、次に、各ポンプからの流量が所望どおりになり、セル10のpHが目標範囲内で維持されることを確立するのに十分な時間運転する。UVセルは、それらが気泡を含んでいないことを確認するために点検される。一実施形態では、サンプルホルダ38中のサンプルがろ過セル2内へとセル2内の一定の距離まで降下される(図3および4を参照して以下でさらに説明する)。ポンプを停止/始動せずにサンプルがセル2内に導入されることに留意されたい。胃チャンバ内で液体に暴露することにより、サンプルが部分的または完全に崩壊されるか、もしくは分散または溶出される。溶出部分は、非溶出薬剤および/または賦形剤の小粒子とともに管36を介して胃チャンバを出る。溶出薬剤および/または溶出賦形剤は出口27を通っても胃チャンバを出る。ろ過膜3は、非溶出粒子が出口27を通って出て行くのを防止する。出口27を通って出て行く液体がUVセル5を通過し、ここで任意の所望の波長でそのUV吸光度が継続的にモニタされる。液体は入口28を介して胃チャンバへと連続的に戻る。管36を介して出て行く物質はティー35に入り、そこでポンプ9からの疑似腸液と混合する。次に、この混合物が入口29を介して疑似腸チャンバに入る。
【0016】
図3は、本発明の装置で用いられるサンプルホルダ38を示している。ホルダ38は、試験サンプルを保持または支持するためのバスケット40および両端にストッパー39a、39bを有するプランジャ43を備えている。バスケット40がプランジャ43に取り付けられており、プランジャはろ過セル2の内外にスライド可能となっている。すなわち、システムが平衡化する(すなわち各ポンプからの流量が所望の通りとなりセルのpHが目標範囲内に位置される)と、サンプルが「上」位置となって媒体により影響されなくなる。言い換えれば、プランジャ43がストッパー39bに至るまで、止めナット42の方へ、延ばされるかまたは引き出される。このように、試験サンプルはシステム内で平衡化するように循環されるので媒体により影響されない。同様に、システムが平衡化した後、サンプルが「下」位置となって媒体に影響される(以下の図4でさらに論ずる)。言い換えれば、プランジャ43がストッパー39aに至るまで止めナット42へと押し下げられる。また、プランジャ43の距離が固定されているので、バスケット40がろ過セル2内で常に同じ場所に位置することになり、溶出試験および結果の正確な再現が可能である。バスケット40はワイアメッシュタイプのバスケットであるのが好ましい。
【0017】
図4は、「下」位置にある本発明の新規なサンプルホルダ38を示している。すなわち、ストッパー39aが止めリング42と同じ高さになるまでプランジャ43が全ての長さで押し込まれる。このように、バスケット40はろ過セル2内の固定された所定位置に置かれ、固体試験サンプルがリザーバタンク21から提供された媒体に暴露される。重要なことに、このサンプルホルダ38は、サンプルタワー41および止めリング42とともに、リザーバタンク21から媒体を連続的に供給する間、固体試験サンプルの導入を可能にする。言い換えれば、装置の各種セルおよびリザーバ内の媒体の流れを妨害または停止することなく、固体試験サンプルがろ過セル2内に導入され、時間と経費を省くことになる。
【0018】
腸チャンバでは、入ってくる混合物がチャンバの内容物とポンプ15から入る水酸化ナトリウム溶液とともに混合される。水酸化ナトリウム流がセル10の内容物のpHにより制御されているので、入ってくる混合物の胃液部分に存在する酸が中和される結果となる。腸チャンバでは、入ってくる混合物の非溶出部分がさらなる溶出の機会を有している。溶出薬剤および/または溶出賦形剤が出口32を通って腸チャンバを出て行く。ろ過膜12は、非溶出薬剤および/または非溶出賦形剤がチャンバを出て行くのを防ぐ。出口32を通って出る液体がUVセル16を通過し、そこで任意の所望の波長でのそのUV吸光度が継続的にモニタされる。UVセル16を出た液体は、次に入口31を介して循環チャンバに入る。
【0019】
循環チャンバでは、入ってくる媒体が既にチャンバ内にある媒体と混合される。得られた混合物は、浸漬管19および出口33を介して連続的にチャンバを出て行く。出口33を通って出る液体はUVセル20を通過するが、そこで任意の所望の波長でのそのUV吸光度が継続的にモニタされる。活性物質の瞬間濃度を算出するのに、分光計から収集されたデータを使用可能である。このデータは、放出速度および放出される活性物質の全量を特徴付けるのに使用可能である。回収リザーバ34で回収された流出物中の活性物質の濃度を測定することにより、放出された活性物質の全量の算出が可能である。
【0020】
上述した本発明の実施形態は一定の組成の放出液を用いるが、体内の変化する条件をシミュレートするために、組成を時間ともに変更することができる。試験方法の変数は、例えば、放出媒体の組成、3個のチャンバのそれぞれでの滞留時間、被検サンプルの量、および温度である。これら変数を調整することにより、in vivoで観察されるプラズマ濃度プロファイルに整合する放出速度プロファイルを得ることができる。製薬産業で実施される場合、好適な温度は37℃であり、放出媒体の好適な組成が疑似胃液および疑似腸液である。
【0021】
また、酵素、胆汁酸、界面活性剤等の他の添加剤を所望の通りに含めることが可能である。加えて、USFDAは溶出条件が生理学的に適切であることを推奨しているが、本発明は生理学的に適切でない条件に適合可能である。動作速度、異常な溶解度または従来のではない投与形態等の考慮がなされる場合には、このような条件が望まれうる。例えば、出願人は、比例的滞留時間を短縮することによって有用な情報を失うことなく試験の時間スケールを大幅に短縮可能であるいくつかのケースを決定した。加えて、本発明は、多くのことなる種類の処方を試験するのに使用可能である。これらは、タブレット、粉末、ピル、シロップ、速溶性タブレット、硬質カプセルおよび軟質カプセルを含み得るがこれに限定されない。
【0022】
媒体分析装置は、医薬または活性試験剤の物理的および/または化学的データを生成する当技術分野で既知の任意の検出器、例えば分析の方法としてのUV分光計の使用を含むがこれに限定されない。好適な実施形態では、検出器が、紫外線、赤外線、核磁気共鳴、ラマン分光、電気化学、バイオセンサ、屈折率測定、光学活性、およびそれらの組み合わせを含む任意の方法により特定の薬剤のデータ特性を取得することができる。また、活性物質および放出媒体に適用可能な当技術分野で既知の任意のインライン検出器を使用可能である。媒体溶出分析装置は、それに通信可能に取り付けられたセンサを有する検出器であるのが好ましい。好適な実施形態では、溶出チャンバあたり少なくとも1個の媒体溶出分析装置が存在する。例えば、分析される各サンプルに対応して、分析される薬剤の物理的および/または化学的データ特性を、連続的に生成可能な媒体溶出分析装置が存在する。
【0023】
媒体分析装置は、投与形態が、治療的に活性な薬剤の最大の放出可能量を放出するのに少なくとも必要な時間について、溶出媒体と動作可能に関連付けられた検出器と、およびその投与形態の溶出プロファイルを得るために、投与形態が、治療的に活性な薬剤の最大の放出可能量を放出するのに少なくとも必要な時間について、生成されたデータを連続的に処理するためのデータプロセッサとを含むことが好ましい。データプロセッサは検出器により生成されるデータを連続的に処理することが可能であれば、どのような装置でもよい。好ましい態様では、データプロセッサはコンピュータである。検出器により生成されたデータは、コンピュータにより保存および/または分析されるのが好ましい。特に好適な実施形態では、データ収集器がデータ処理ソフトウエアを有するコンピュータである。データはこのソフトウエアによって検出器から受信しながら連続的に処理されるのが好ましい。
【0024】
本発明の好適な実施形態では、検出器が疑似胃液または腸液等の投与形態を取り囲む媒体中で治療的に活性な薬剤の濃度を測定する。周囲の媒体中で薬剤の濃度を測定することにより、投与形態から放出される薬剤の量を算出可能である。本発明は、インライン分析の代わりにまたはこれに加えて、サンプルをチャンバから直接またはチャンバの流出排出物から取出すことによっても使用可能である。このような実施形態では、分析方法は、当技術分野で既知の任意の方法とすることが可能であり、ガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)、比色分析、紫外分光法、赤外分光法、ラマン分光法、近赤外分光法、バイオセンサ法、電気化学法、質量分析法、および核磁気分析法を含むがこれに限定されない。最も好適な実施形態では、媒体分析がUV分光法を用いてインラインで行われる。
【0025】
本発明では、必要なデータに応じて適切に媒体分析装置の任意の組み合わせを使用可能である。別の実施形態では、第2の出口から胃チャンバを出る媒体の全てまたは一部を胃チャンバに戻すことなく、胃での活性物質の吸収がシミュレートされうる。除去速度がin vivoの胃吸収に対応するように、媒体の流量を調整可能である。
【0026】
ろ過セル2および10は、攪拌、所望の体積、ろ過速度、ろ過効率、および活性物質と放出媒体との適合性の要件を提供する任意の設計とすることができる。好適なろ過セルは連続および攪拌式のろ過セル(例えば、Millipore Corporationから入手可能なAmicon 攪拌限外ろ過セルモデル8003、8010、8050、8200、および8400)である。
【0027】
第3のセル17は、攪拌、所望の体積、および活性物質と放出媒体との適合性の要件を提供する任意の設計とすることができる。本発明の実施で有用なポンプは、所望の流量を達成可能かつ試験を通して流量を一定に維持可能であれば、任意のポンプとすることができる。これらは、汎用容積式ポンプ、蠕動ポンプ、ダイアフラム式ポンプ、HPLC品質容積式ポンプ、シリンジ式ポンプおよび遠心ポンプを含むがこれに限定されない。本発明で有用な好適なポンプは、蠕動ポンプ、ダイアフラム式ポンプ、およびHPLC品質容積式ポンプである。最も好適なのは蠕動ポンプおよびHPLC品質容積式ポンプである。
【0028】
本発明の実施で有用な加熱装置は、十分に均一かつ正確な温度制御を与える当技術分野で既知のもののいずれでもよい。好適な加熱装置は、所望の温度の+/−2℃以内に温度を制御することが可能である。より好適な加熱装置は、所望の温度の+/−1℃以内に温度を制御することが可能である。最も好適な加熱装置は、米国薬局方および同様のソースにおける最新の推奨品に準拠して温度を制御することが可能である。
【0029】
浸漬管およびティーアセンブリで用いられる管は、放出媒体および試験サンプルと適合する任意の管でありうる。下端がろ過セル2内の液体の表面より下にあるように、管の長さが調節される。小粒子が放出媒体の流れにより管に運び上げられるように、ならびに粒子が管を詰まらせないように、管の断面径が選択される。実施において、発明者等は、0.5〜3.0mmの内径を持った管が、0.5〜2.5m/minの範囲のセル2への流量についてのこれらの要件を満たすことを究明した。他の流量については、他の内径が必要とされうる。
【0030】
腸チャンバとともに用いられる媒体分析センサおよびコントローラは、例えば、特定のpH、浸透圧、伝導率、および特定のイオンの濃度等を含むがこれに限定されない物理的特性を測定し、かつ制御を可能とする、センサおよびコントローラの任意の組み合わせとしてよい。好適な媒体分析センサおよびコントローラは、腸チャンバ内のpHを目標範囲内に制御できる当技術分野で利用可能な、任意のpHセンサおよびpHコントローラである。最も好適な媒体分析センサおよびコントローラは、+/−0.02pH単位の精度を有する当技術分野で利用可能な、任意のpHセンサおよびpHコントローラである。
【0031】
好適な実施形態では、第2のセル10内のpHが疑似腸液のpHと同じ値に制御される。また、セル内のpHは、リザーバ23、ポンプ15、および入口30によって画定される送達システムを通して、酸または塩基のいずれかの添加により達成可能な任意の値であることができ、リザーバ22内の液体のpHに限定されない。第2のセル10のpH調節に用いられる溶液は、酸性でも塩基性でもよい。好適な溶液中の酸または塩基の濃度は、他の放出媒体の全流量の10%以下である溶液の流量を必要とするものである。最も好適な溶液中の酸または塩基の濃度は、他の放出媒体の全流量の2%以下である溶液の流量を必要とするものである。
【0032】
装置内で用いられるセルの数は、必要とされる情報に応じて変更可能である。上記一実施形態で説明した3個のセルは、血漿濃度データとの相関が必要な場合に好ましい数である。薬剤吸収速度データが必要とされる場合は、胃チャンバおよび腸チャンバの組み合わせを動作することのみが必要である。さらなる可能性は、胃チャンバの前に口腔溶出セルを追加して口腔溶出チャンバからの流出物が胃チャンバの入口に入るようにすることである。ただし、サンプルホルダは胃チャンバではなく口腔溶出チャンバ上にある。この追加は、薬剤吸収または血漿濃度データのいずれにも使用可能である。
【0033】
加えて、本発明の実施で有用なろ過膜は、放出媒体と適合する市販のろ過膜のいずれでもよい。好適なろ過膜は、10ミクロン以下の公称粒子サイズカットオフを有する。より好適なろ過膜は、0.25〜5ミクロンの公称粒子サイズカットオフを有する。最も好適なろ過膜は、1〜3ミクロンの公称粒子サイズカットオフを有する。
【0034】
本発明の実施で有用なチャンバのそれぞれでの滞留時間は、LEVEL A IVIVCを与えるのに必要な任意の値とすることができる。好適な滞留時間は、生理学的関連性を有するものである。出願人は、実験によって以下の範囲の滞留時間が有用であることを究明した:胃チャンバ 5〜60分;腸チャンバ 1〜90分;循環チャンバ 30分超である。加えて、各種その他の機械的、電気的および電子的装置を本発明に組み込んでもよい。例えば、この装置には、圧力解放弁、逆止弁、圧力解放配管、圧力制御システム、サージサプレッサー、サージタンク、脱気器、電子流量制御システム、比例制御システム、圧力計、(予熱媒体に対する)熱交換器および流量計が含まれるがこれに限定されない。
【0035】
したがって、本発明は、崩壊、固体移送、溶出、流体のpH/組成変化、吸収およびクリアランスを組み込んだ試験をするための新たな溶出試験装置および方法を提供する。本発明は、優れたLevel A IVIVCを提供し、かつ同じ薬剤の異なる投与形態にわたって予測可能であると思われる。加えて、数学モデルを必要としない。また、本発明は、システムの平衡化による中断なしにサンプルの導入および試験を可能とする。試験装置からのデータは、血漿濃度−時間プロファイルに直接匹敵する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の溶出試験装置を示す図である。
【図2】図2は、本発明の装置で使用される浸漬管およびティーアセンブリを示す図である。
【図3】図3は、本発明の装置で使用されるサンプルホルダの透視図である。
【図4】図4は、本発明の装置で使用されるサンプルホルダの別の透視図である。
【符号の説明】
【0037】
1、6、9、15 ポンプ
2、10 ろ過セル
3、12 ろ過膜
4、11、18 攪拌器
5、16、20 UVセル
7 浸漬管およびティーアセンブリ
13 pHセンサ
14 pHコントローラ
17 セル
19 浸漬管
21、22、23、34 リザーバ
26 蓋
27、32、33 出口
28、29、30、31 入口
35 Y型コネクタ
36 管
37 封止剤
38 サンプルホルダ
39a、39b ストッパー
40 バスケット
41 サンプルタワー
42 止めナット
43 プランジャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第2のチャンバと直列に接続された第1のチャンバ、ここで第1のチャンバは固体試験サンプルを第2のチャンバへと移送可能であり、かつ第2のチャンバは固体試験サンプルを保持可能である;
1以上の媒体を第1のチャンバおよび第2のチャンバ内へとそれぞれ連続的に供給するための第1のリザーバおよび少なくとも第2のリザーバ、ここで該チャンバは固体試験サンプルおよび媒体を一緒に混合するための攪拌器を有する;第1のチャンバは、第1のチャンバ内への媒体の連続的な供給の間に、試験サンプルを導入するためのサンプルホルダを有する;および
チャンバからの流出物を分析するためのプロセッサ:
を含む、溶出試験装置。
【請求項2】
第1のチャンバが固定サンプルタワーに取り付けられた止めナットをさらに含み、かつサンプルホルダが両端にストッパーを有する可動プランジャをさらに含み、該プランジャはストッパーの間で止めナット内をスライド可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
プランジャに取り付けられた、固体試験サンプルを保持するためのバスケットをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1のチャンバが疑似胃液を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
第2のチャンバが疑似腸液を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第1および第2のチャンバが浸漬管およびティーアセンブリと直列に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
第2のチャンバと直列に接続された、第2のチャンバからの流出物を受け取るための第3のチャンバをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
第2のチャンバと接続された、第2のチャンバ内の媒体のpHを調節するための溶液を供給する第3のリザーバをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも第2のチャンバと直列に接続された第1のチャンバ、ここで第1のチャンバは固体試験サンプルを第2のチャンバへと移送可能であり、かつ第2のチャンバは固体試験サンプルを保持可能である;
1以上の媒体を第1のチャンバおよび第2のチャンバ内へとそれぞれ連続的に供給するための第1のリザーバおよび少なくとも第2のリザーバ;
第1のチャンバ内への媒体の連続的な供給の間に試験サンプルを導入するための、第1のチャンバ内のサンプルホルダ、ここで第1のチャンバは固定サンプルタワーに取り付けられた止めナットをさらに含み、かつサンプルホルダは第1のチャンバ内で一定の距離に、止めナットの内外にスライド可能なプランジャをさらに含む;および
チャンバからの流出物を分析するためのプロセッサ:
を含む、溶出試験装置。
【請求項10】
固体試験サンプルを、少なくとも第2のチャンバと直列に接続された第1のチャンバから移送すること、ここで第2のチャンバは固体試験サンプルを保持可能である;
1以上の媒体を第1のリザーバおよび少なくとも第2のリザーバから、第1のチャンバおよび第2のチャンバ内へとそれぞれ連続的に供給すること;
第1のチャンバ内への媒体の連続的な供給の間に、第1のチャンバ内のサンプルホルダから試験サンプルを導入すること;
固体試験サンプルおよび媒体を一緒に混合すること;および
チャンバからの流出物を分析すること:
を含む、溶出試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−114201(P2007−114201A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−285904(P2006−285904)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】