説明

溶出試験装置

【課題】試験液中に固形製剤を浸漬させて製剤成分の溶出程度を測定するために用いられ構成が簡易で廉価な溶出試験装置を提供する。
【解決手段】複数個の試験容器14を横方向に並列して保持する。試験容器ごとに設けられ攪拌翼18および蓋22を有する攪拌ユニットと、上下方向および試験容器の配列方向に沿って移動自在に支持された可動取付部材36に洗浄液噴射ノズル38および廃液吸引ノズル40を保持した単一の可動洗浄ユニット34と、可動洗浄ユニットを上下方向へ移動させて洗浄液噴射ノズルおよび廃液吸引ノズルを試験容器内へ進入させる昇降用駆動モータ42と、可動洗浄ユニットを水平方向へ移動させて洗浄液噴射ノズルおよび廃液吸引ノズルを各試験容器の直上位置へ順番に移動させる水平移動用駆動モータ50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤を溶媒中に浸漬させて製剤成分の溶出程度を測定する溶出試験装置に関し、特に、固形製剤を溶媒中に浸漬させて製剤成分を溶出させた溶液を試験容器から排出した後に、試験容器の内部を洗浄するための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤の溶出試験は、固形製剤を各種溶媒に浸漬させたときにその主薬の溶出率を調べるためのものであって、試験容器に所定量だけ注入され所定温度、例えば37℃の温度に保たれた溶媒中へ固形製剤を投入し、時間の経過に従って複数回、溶液の一部を採取し、その採取した各サンプル液を順次分光光度計により吸光度測定して主薬の溶出量の時間的変化を記録することにより行われる。また、製剤中の多成分について同時測定する場合には、サンプル液を分取して液体クロマトグラフ分析を行ったりする。
【0003】
このような試験を行う溶出試験装置において、固形製剤を溶媒中に浸漬させて製剤成分を溶出させる溶出装置部は、所定温度、例えば37℃に温度調節された恒温水が満たされる恒温水槽、この恒温水槽内に収容され横方向に並列して保持される複数個の丸底試験容器、各試験容器の上面開口をそれぞれ閉塞する蓋、試験容器ごとに設けられ試験容器内の試験液を攪拌する攪拌翼、この攪拌翼が下端部に一体的に固着され鉛直軸回りに回転するシャフト、試験容器ごとに設けられ下端に吸込み口を有しその吸込み口を通して試験容器内の廃液を真空ポンプで吸引し排出する吸引ノズル、試験容器ごとに設けられ試験容器の内壁面に向けて洗浄液を噴出する噴射ノズルなどを備えて構成されている。そして、吸引ノズルおよび噴射ノズルは、上下方向へ移動自在に支持され、必要なときに試験容器内へ挿入され、使用しないときは試験容器内から引き上げられるようになっている。
【0004】
上記した構成の溶出試験装置を使用して溶出試験を行う場合において、1回の溶出試験が終了するごとに、試験容器の内部を洗浄液で洗浄する必要がある。この洗浄操作は、以下のようにして行われる。
まず、噴射ノズルを試験容器内へ挿入し吸引ノズルを試験容器の上方位置に待機させた状態で、洗浄液タンクから送液配管を通して噴射ノズルへ洗浄液を供給し、噴射ノズルから試験容器の内壁面に向けて洗浄液を吹き付ける。噴射ノズルから噴射された洗浄液は、試験容器の内壁全面を濡らしながら流下して試験容器内に溜まっていく。そして、撹拌翼が完全に洗浄液中に浸かった状態になると、噴射ノズルへの洗浄液の供給を停止し、真空ポンプを駆動させるとともに、吸引ノズルを試験容器内へ挿入して、その下端吸込み口が試験容器の内底面付近に到達するまで一定速度で下降させた後に停止させる。この吸引ノズルの下降過程において、真空ポンプの真空吸引力によって吸引ノズル内にその下端吸込み口を通して洗浄液が空気と共に吸い込まれ、試験容器内から洗浄液が完全に排出される。最後に、吸引ノズルを上昇させて元の上方位置に復帰させ、1回の洗浄操作が終了する。そして、必要に応じ、以上の一連の洗浄操作を数回繰り返す(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2966065号公報(第7−8頁、第8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の溶出試験装置では、複数個設置される試験容器ごとに廃液排出用の吸引ノズルと洗浄液を噴出する噴射ノズルを設け、複数の吸引ノズルを1つの真空ポンプに流路接続し、複数の噴射ノズルをそれぞれ送液配管を介して洗浄液タンクに流路接続していた。そして、一連の洗浄操作において、試験容器ごとに噴射ノズルと吸引ノズルとを別々に上下方向へ移動させて洗浄および排液を行うようにしていた。このため、装置の構成および制御が複雑化し、製造コストも高くなるといった問題点がある。
【0007】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、構成を簡易化し、製造コストも低減させることができる溶出試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、試験容器内に注入された試験液中に固形製剤を浸漬させて、その製剤成分の溶出程度を測定する溶出試験装置において、複数個の試験容器の内部の洗浄を行うことができる単一の可動洗浄ユニットを備えたことを特徴とする。すなわち、この発明は、複数個の試験容器を横方向に並列して保持する容器保持部を有する恒温槽と、前記各試験容器ごとにそれぞれ設けられ、シャフトの下端部に一体的に固着され試験容器内の試験液を攪拌する攪拌翼、および、試験容器の上面開口を閉塞する蓋を有し、前記容器保持部に保持された複数個の試験容器に対して相対的に全体が上下方向へ移動自在に支持された複数の攪拌ユニットと、上下方向および複数個の試験容器が配列された水平方向へそれぞれ移動自在に支持された可動取付部材、この可動取付部材に保持され前記試験容器の内壁面に向けて洗浄液を噴出する洗浄液噴射ノズル、および、前記可動取付部材に保持され下端吸込み口が前記試験容器の内底面に対向する位置に配置される廃液吸引ノズルを有する単一の可動洗浄ユニットと、前記洗浄液噴射ノズルへ洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記廃液吸引ノズルの下端吸込み口を通し洗浄廃液を吸引して排出する真空吸引手段と、前記可動洗浄ユニットの可動取付部材を上下方向へ移動させて前記洗浄液噴射ノズルおよび前記廃液吸引ノズルを前記試験容器内へ進入させる上下移動手段と、前記可動洗浄ユニットの可動取付部材を水平方向へ移動させて前記洗浄液噴射ノズルおよび前記廃液吸引ノズルを前記各試験容器の直上位置へ順番に移動させる水平移動手段と、前記可動洗浄ユニットの洗浄液噴射ノズルおよび廃液吸引ノズルを前記各試験容器の直上位置へ順番に移動させるように前記水平移動手段を制御するとともに、洗浄液噴射ノズルおよび廃液吸引ノズルを各試験容器内へ順次進入させるように前記上下移動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成の溶出試験装置において、前記制御手段により、廃液吸引ノズルの下端吸込み口が試験容器内においてその内底面に対向する位置および試験液の設定量に対応する液量調整位置にそれぞれ配置されるように上下移動手段を制御するような構成とすることができる。また、前記制御手段により、洗浄液噴射ノズルが試験容器内において水平方向へ僅かに移動するように水平移動手段を制御することが好ましい。
【0010】
また、前記廃液吸引ノズルは、その下端吸込み口が試験容器の底壁面に摺接し底壁面に沿って弾発的に撓んで試験容器の中心部を指向するように下端部分を弾性材料で形成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る溶出試験装置においては、可動洗浄ユニットの可動取付部材を上下移動手段によって上下方向へ移動させるとともに、水平移動手段によって可動取付部材を水平方向へ移動させることにより、可動洗浄ユニットの洗浄液噴射ノズルおよび廃液吸引ノズルを各試験容器内へ順番に挿入していき、それぞれの試験容器において、洗浄液噴射ノズルから内壁面に向けて洗浄液を噴出するとともに、廃液吸引ノズルの下端吸込み口を通して内底部から試験容器内の洗浄廃液を吸引し排出することにより、試験容器の内部が洗浄される。
したがって、この発明に係る溶出試験装置は、単一の可動洗浄ユニットを備えているだけであるので、構成が簡易であり、製造コストも低減する。
【0012】
廃液吸引ノズルの下端吸込み口を試験容器の内底面に対向する位置および試験液の設定量に対応する液量調整位置にそれぞれ配置するように制御可能としたときは、それぞれの試験容器において、試験容器内に設定量以上の試験液を入れた後に、廃液吸引ノズルの下端吸込み口を液量調整位置に配置した状態で、下端吸込み口を通して試験容器内の余分な試験液を吸引し排出することにより、試験容器内の試験液を設定量通りに調整することができる。したがって、単一の可動洗浄ユニットを用いて、それを各試験容器へ順番に移動させていくことにより、複数個の試験容器内に設定量の試験液を入れることができる。
【0013】
洗浄液噴射ノズルを試験容器内において水平方向へ僅かに移動させるように制御可能としたときは、洗浄液噴射ノズルから噴射される洗浄液が攪拌翼のシャフトで遮蔽されて内壁面に達しない、といった死角部分を無くすことができるので、試験容器内部の洗浄効果を高めることができる。
【0014】
また、廃液吸引ノズルの下端部分を弾性材料で形成したときは、その下端吸込み口が試験容器の底壁面に沿って撓んで試験容器の中心部に配置可能となることにより、試験容器内の洗浄廃液をほぼ全て吸引し排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態の1例を示し、溶出試験装置の全体構成を、一部断面で表して示す正面図である。
【図2】図1に示した溶出試験装置の本体部分をなす溶出装置部の要部の構成を、一部を断面で表して示す正面図である。
【図3】同じく溶出装置部の概略構成を、一部を断面で表して示す正面図である。
【図4】同じく溶出装置部の構成要素である可動洗浄ユニットの廃液吸引ノズルの構成例を示し、その先端部分の拡大図である。
【図5】同じく溶出装置部の構成要素である攪拌ユニットの蓋の構成例を示す平面図である。
【図6】図1に示した溶出試験装置における試験容器の洗浄操作の1例について説明するための図であって、1つの試験容器と可動洗浄ユニットとを示す正面断面図である。
【図7−A】同じく説明図であって、1つの試験容器と可動洗浄ユニットとを示す正面断面図である。
【図7−B】同じく説明図であって、1つの試験容器と可動洗浄ユニットの洗浄液噴射ノズルおよび廃液吸引ノズルとを示す平面断面図である。
【図8】同じく説明図であって、溶出装置部の概略構成を、一部を断面で表して示す正面図である。
【図9】同じく説明図であって、溶出装置部の概略構成を、一部を断面で表して示す正面図である。
【図10】図1に示した溶出試験装置における試験容器の洗浄操作が終了した後に試験容器を乾燥させている状態を示し、溶出装置部の要部の構成を、一部を断面で表して示す正面図である。
【図11】図1に示した溶出試験装置の可動洗浄ユニットを用いて、溶出試験前における試験容器内の液量調整を行う操作を説明するための図であって、溶出装置部の概略構成を、一部を断面で表して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
この溶出試験装置は、図1に装置全体の構成を、一部断面で表した正面図を示すように、試験容器内に注入された試験液中に固形製剤を浸漬させてその製剤成分を溶出させたサンプル液を調製する溶出装置部10を備えている。なお、溶出試験装置は、溶出装置部10で調製されたサンプル液を採取して、そのサンプル液の吸光度を分光光度計により測定したりサンプル液の液体クロマトグラフ分析を行ったりする分析装置部などを備えているが、この発明は、溶出装置部の改良に係るものであるので、溶出装置部以外の装置構成については、その説明を省略する。
【0017】
溶出装置部10には、図2に要部の構成を、一部を断面で表した正面図で示すように、所定温度、例えば37℃に温度調節された恒温水が満たされる恒温水槽12が設けられており、恒温水槽12内の恒温水中にほぼ全体が浸漬されるように複数個、図示例では6個の丸底の試験容器14が横方向に並列して、容器保持部(図示せず)に着脱可能に保持されている。そして、各試験容器14ごとに攪拌ユニット16がそれぞれ設けられている。攪拌ユニット16は、試験容器14の内底付近に配置されて試験容器14内の試験液を攪拌する攪拌翼18、攪拌翼18が下端部に一体的に固着されたシャフト20、試験容器14の上面開口を閉塞する蓋22、および、蓋22の上面中央部に垂設されシャフト20の上半部を包囲し支持する筒状部24により構成される。シャフト20の上端部には従動プーリ26が固着され、6つの攪拌ユニット16の各従動プーリ26にベルト28が掛け回されている。ベルト28には、回転駆動モータ30の回転軸に固着された駆動プーリ32が掛け回されて、攪拌翼18の回転機構が構成されている。そして、回転駆動モータ30を駆動させることにより、6つの攪拌ユニット16の各攪拌翼18がそれぞれ回転させられる。6つの攪拌ユニット16とその攪拌翼18の回転機構とは、その全体が昇降機構(図示せず)により上下方向へ移動可能に支持されており、それらを上昇させることにより、攪拌翼18が試験容器14内から上方へ抜き出される構成となっている。なお、攪拌ユニット16および攪拌翼18の回転機構の高さ位置を固定し、恒温水槽12および6個の試験容器14を昇降機構により上下方向へ移動可能に支持するようにしてもよい。
【0018】
また、溶出装置部10には、単一・共通の可動洗浄ユニット34が設けられている。可動洗浄ユニット34は、可動取付部材36に洗浄液噴射ノズル38と廃液吸引ノズル40とを保持して構成されている。可動取付部材36は、図3に概略構成を、一部を断面で表した正面図で示すように、昇降用駆動モータ42の回転軸に固着された駆動プーリ44とその下方位置に設けられた従動プーリ46とに掛け回されたベルト48の一部に連接されている。そして、昇降用駆動モータ42を正・逆回転駆動させて可動洗浄ユニット34を昇降させることにより、洗浄液噴射ノズル38および廃液吸引ノズル40が試験容器14内へ進入させられ、またそれらが試験容器14内から試験容器14の上方位置へ引き上げられる。また、昇降用駆動モータ42は、水平移動用駆動モータ50の回転軸に固着された駆動プーリ52とその横方向にに設けられた従動プーリ54とに掛け回されたベルト56の一部に連接されている。ベルト56は、6個の試験容器14が配列された方向に沿って水平に配設されている。そして、可動洗浄ユニット34を上方位置へ引き上げた状態で、水平移動用駆動モータ50を回転駆動させて昇降用駆動モータ42を水平方向(試験容器14の配列方向)へ移動させることにより、洗浄液噴射ノズル38および廃液吸引ノズル40が各試験容器14の直上位置へ順番に移動させられる。また、洗浄液噴射ノズル38および廃液吸引ノズル40を試験容器14内へ挿入した状態で、水平移動用駆動モータ50を回転駆動させて昇降用駆動モータ42を水平方向へ僅かな距離だけ移動させることにより、洗浄液噴射ノズル38(および廃液吸引ノズル40)が試験容器14内において水平方向へ僅かに移動させられる。以上の可動洗浄ユニット34の上下方向への移動および水平方向への移動の各制御動作は、図示しない制御装置により昇降用駆動モータ42および水平移動用駆動モータ50をそれぞれ駆動制御することにより行われる。
【0019】
図示していないが、洗浄液噴射ノズル38は、洗浄液供給ユニット58内に設けられた洗浄液タンクに送液配管を介して流路接続されている。そして、洗浄液供給ユニット58内に設けられた送液ポンプによって洗浄液タンクから洗浄液噴射ノズル38へ洗浄液を供給することにより、洗浄液噴射ノズル38の噴出口から円錐状に洗浄液が噴射されて、試験容器14の上部内壁面に向けて洗浄液が吹き付けられる。
【0020】
また、廃液吸引ノズル40は、試験容器14内へ挿入されたときに下端吸込み口が試験容器14の内底面に対向する位置に配置されるように可動取付部材36に取り付けられる。図示していないが、廃液吸引ノズル40は、真空ポンプに吸引配管を介して流路接続されている。そして、真空ポンプを駆動させることにより、廃液吸引ノズル40内にその下端吸込み口を通して洗浄廃液が空気と共に吸い込まれ、試験容器14内から洗浄廃液が排出される。廃液吸引ノズル40は、例えばその下端部分を弾性材料で形成するとよい。すなわち、図4に示すように、廃液吸引ノズル40の本体部をなすパイプ部分60と先端部をなすパイプ部分62とを、コイルばね状の管状部材64を介して連接した構造とする。このような構造とすることにより、廃液吸引ノズル40の下端吸込み口が試験容器14の底壁面に沿って弾発的に撓んで試験容器14の中心部に配置されることとなり、丸底の試験容器14内の洗浄廃液をほぼ全て吸引し排除することが可能になる。
【0021】
攪拌ユニット16の蓋22には、図5に平面図を示すように、可動洗浄ユニット34の洗浄液噴射ノズル38および廃液吸引ノズル40を挿通させるための開孔部66が形設されている。開孔部66は、溶出試験の際にはシャッター板68によって閉塞され、試験容器14の洗浄操作時に開放される。シャッター板68は、支点部70を中心として回動自在に蓋22の上面に取着された回動板72に一体的に固設されており、また、回動板72にはレバー桿74が一体的に固設されている。そして、シャッター板68、回動板72およびレバー桿74を、シャッター板68が開孔部66を閉塞する方向へ付勢する線状ばね76が設けられている。また、詳細な機構の図示を省略しているが、レバー桿74に係合し線状ばね76の弾発力に抗してレバー桿74、回動板72およびシャッター板68を回動させて開孔部66を開放するための係合ピン78が植設された操作板80が設けられている。この操作板80を、図5中に実線で示した位置から二点鎖線で示す位置へ直線的に移動させることにより開孔部66が開放され、二点鎖線で示した位置から実線で示す位置へ操作板80を移動させることにより、線状ばね76の復元力によってシャッター板68が元の位置へ戻り、開孔部66がシャッター板68によって閉塞される。
【0022】
次に、上記した構成を備えた溶出試験装置における試験容器の洗浄操作の1例について説明する。
溶出試験が終了すると、水平移動用駆動モータ50を駆動させて可動洗浄ユニット34を1つ目の試験容器14の上方位置へ移動させる。続いて、上記したようにシャッター板68を回動させて蓋22の開孔部66を開放した状態で、昇降用駆動モータ42を駆動させて可動洗浄ユニット34を下降させ、1つ目の試験容器14内へ洗浄液噴射ノズル38および廃液吸引ノズル40を進入させる。この際に、真空ポンプを駆動させ、廃液吸引ノズル40内へ下端吸込み口を通して試験容器14内の廃液を吸い込みながら、廃液吸引ノズル40を試験容器14の内底部に向けて下降させる。
【0023】
図6に示すように、廃液吸引ノズル40の下端吸込み口が試験容器14の内底面中心部に到達して、試験容器14内から排液が全て排出されると、図7−Aに示すように、洗浄液噴射ノズル38の噴出口から円錐状に洗浄液82を噴射させ、試験容器14の内壁面に向けて洗浄液82を吹き付ける。試験容器14の内壁面に吹き付けられた洗浄液は、試験容器14の内壁全面を濡らしながら流下して試験容器14の内底部に溜まる。試験容器14の内底部に溜まる洗浄廃液は、廃液吸引ノズル40内へ下端吸込み口を通して空気と共に吸い込まれ、試験容器14内から排出されていく。この際、水平移動用駆動モータ50を回転駆動させて、図7−Bに平面図を示すように、試験容器14内において洗浄液噴射ノズル38(および廃液吸引ノズル40)を水平方向へ僅かな距離だけ往復移動させるようにすると、洗浄液噴射ノズル38から噴射される洗浄液82が攪拌翼18のシャフト20で遮蔽されて試験容器14の内壁面に達しない、といった死角部分を無くすことができ、内壁面全体に満遍なく洗浄液82が吹き付けられて洗浄効果が高まることとなる。
【0024】
上記したようにして1つ目の試験容器14の洗浄が終わると、洗浄液噴射ノズル38からの洗浄液の噴射および廃液吸引ノズル40による真空吸引を止めた後に、昇降用駆動モータ42を駆動させて可動洗浄ユニット34を上昇させ、1つ目の試験容器14内から洗浄液噴射ノズル38および廃液吸引ノズル40を上方位置へ退出させる。次に、水平移動用駆動モータ50を駆動させて、図8に示すように、可動洗浄ユニット34を1つ目の試験容器14の上方位置から2つ目の試験容器14の上方位置へ移動させる。続いて、2つ目の試験容器14の蓋22の開孔部66を開放した状態で、昇降用駆動モータ42を駆動させて可動洗浄ユニット34を下降させ、図9に示すように、2つ目の試験容器14内へ洗浄液噴射ノズル38および廃液吸引ノズル40を進入させる。この際、上記したように、真空ポンプを駆動させて廃液吸引ノズル40内へ試験容器14内の廃液を吸い込みながら、廃液吸引ノズル40を試験容器14の内底部に向けて下降させる。そして、上記したようにして2つ目の試験容器14の洗浄を行い、その洗浄が終わると、上記と同様の操作により、順番に残りの試験容器14の洗浄を行っていく。
【0025】
全ての試験容器14の洗浄が終了すると、図10に示すように、6つの攪拌ユニット16および攪拌翼18の回転機構の全体を昇降機構により上昇させる。これにより、蓋22によって覆われていた試験容器14の上面開口が開放されるとともに、攪拌翼18およびシャフト20が試験容器14内から上方へ抜き出される。この状態において、恒温水槽12内の恒温水の余熱によって試験容器14の内壁面が乾燥させられる。
【0026】
なお、この溶出試験装置では、可動洗浄ユニット34を用いて、溶出試験前における試験容器14内の液量調整を行うことができる。
すなわち、例えば人手により6個の試験容器14内にそれぞれ設定量以上の試験液を入れた後、水平移動用駆動モータ50および昇降用駆動モータ42をそれぞれ駆動制御して可動洗浄ユニット34を水平方向および上下方向へそれぞれ移動させ、図11に示すように、廃液吸引ノズル40の下端部分を1つ目の試験容器14内に挿入し、その下端吸込み口を、二点鎖線で示す液量調整位置に配置する。この状態で、真空ポンプを駆動させて、廃液吸引ノズル40内へ下端吸込み口を通して設定量を超える余分な試験液を吸引し排出する。これにより、試験容器14内には設定量分の試験液だけが残ることとなる。1つ目の試験容器14における液量調整が終わると、昇降用駆動モータ42および水平移動用駆動モータ50をそれぞれ駆動制御して可動洗浄ユニット34を上下方向および水平方向へそれぞれ移動させ、廃液吸引ノズル40の下端部分を2つ目の試験容器14内に挿入し、その下端吸込み口を、二点鎖線で示す液量調整位置に配置する。この状態で、再び真空ポンプを駆動させることにより、2つ目の試験容器14内から設定量を超える余分な試験液を排出して2つ目の試験容器14における液量調整を行う。2つ目の試験容器14における液量調整が終わると、同様の操作により、可動洗浄ユニット34を移動させながら順番に残りの試験容器14における液量調整を行っていく。このように、単一の可動洗浄ユニット34を用いて、6個の試験容器14内に設定量の試験液を残すことができる。
【0027】
この発明により、従来の装置に比べて安価な簡易装置を求める製薬会社等のユーザにとって導入しやすい溶出試験装置が提供される。
【符号の説明】
【0028】
10 溶出装置部
12 恒温水槽
14 試験容器
16 攪拌ユニット
18 攪拌翼
20 シャフト
22 蓋
30 回転駆動モータ
34 可動洗浄ユニット
36 可動取付部材
38 洗浄液噴射ノズル
40 廃液吸引ノズル
42 昇降用駆動モータ
50 水平移動用駆動モータ
58 洗浄液供給ユニット
64 コイルばね状の管状部材
66 蓋の開孔部
68 シャッター板
82 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験容器内に注入された試験液中に固形製剤を浸漬させて、その製剤成分の溶出程度を測定する溶出試験装置において、
複数個の試験容器を横方向に並列して保持する容器保持部を有する恒温槽と、
前記各試験容器ごとにそれぞれ設けられ、シャフトの下端部に一体的に固着され試験容器内の試験液を攪拌する攪拌翼、および、試験容器の上面開口を閉塞する蓋を有し、前記容器保持部に保持された複数個の試験容器に対して相対的に全体が上下方向へ移動自在に支持された複数の攪拌ユニットと、
上下方向および複数個の試験容器が配列された水平方向へそれぞれ移動自在に支持された可動取付部材、この可動取付部材に保持され前記試験容器の内壁面に向けて洗浄液を噴出する洗浄液噴射ノズル、および、前記可動取付部材に保持され下端吸込み口が前記試験容器の内底面に対向する位置に配置される廃液吸引ノズルを有する単一の可動洗浄ユニットと、
前記洗浄液噴射ノズルへ洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記廃液吸引ノズルの下端吸込み口を通し洗浄廃液を吸引して排出する真空吸引手段と、
前記可動洗浄ユニットの可動取付部材を上下方向へ移動させて前記洗浄液噴射ノズルおよび前記廃液吸引ノズルを前記試験容器内へ進入させる上下移動手段と、
前記可動洗浄ユニットの可動取付部材を水平方向へ移動させて前記洗浄液噴射ノズルおよび前記廃液吸引ノズルを前記各試験容器の直上位置へ順番に移動させる水平移動手段と、
前記可動洗浄ユニットの洗浄液噴射ノズルおよび廃液吸引ノズルを前記各試験容器の直上位置へ順番に移動させるように前記水平移動手段を制御するとともに、洗浄液噴射ノズルおよび廃液吸引ノズルを各試験容器内へ順次進入させるように前記上下移動手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする溶出試験装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記廃液吸引ノズルの下端吸込み口が前記試験容器内においてその内底面に対向する位置および試験液の設定量に対応する液量調整位置にそれぞれ配置されるように前記上下移動手段を制御する請求項1に記載の溶出試験装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記洗浄液噴射ノズルが前記試験容器内において水平方向へ僅かに移動するように前記水平移動手段を制御する請求項1または請求項2に記載の溶出試験装置。
【請求項4】
前記廃液吸引ノズルの下端部分は、その下端吸込み口が前記試験容器の底壁面に摺接し底壁面に沿って弾発的に撓んで試験容器の中心部を指向するように弾性材料で形成された請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の溶出試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−A】
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【図7−B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−230342(P2010−230342A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75450(P2009−75450)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(591017892)株式会社大日本精機 (3)
【Fターム(参考)】