説明

溶剤浄化装置および溶剤濾過装置

【課題】スピンディスクフィルタを再生する場合にスピンディスクフィルタの回転中心部分の汚れを良好に除去することができる溶剤浄化装置、および、溶剤濾過装置を提供すること。
【解決手段】第1フィルタ装置8では、容器30内に溶剤が所定量溜まった状態において、スピンディスクフィルタ36が間欠的に回転させられる。これにより、容器30内の溶剤が遠心力によってスピンディスクフィルタ36の回転中心部分から離れてこの部分に常に空間50が形成されることが防止される。そのため、スピンディスクフィルタ36を再生する場合に、スピンディスクフィルタ36の回転中心部分を必ず容器30内の溶剤の液面51に叩きつけることができるので、スピンディスクフィルタ36の回転中心部分の汚れを良好に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばドライクリーナ等の洗浄装置で使用される溶剤を浄化するために用いられる溶剤浄化装置および溶剤濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばクリーニング施設等で用いられるドライクリーナには、洗濯物を洗浄することで汚れた溶剤を繰り返し使用するために、汚れた溶剤を濾過して浄化する溶剤浄化装置が併設されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1の溶剤浄化装置では、スピンディスクフィルタが用いられている。
スピンディスクフィルタは、汚れた溶剤が受入れられる容器内において回転自在に設けられた中空軸と、この中空軸に外嵌される複数の円盤形状のフィルタ部とで構成されている。容器内に受け入れられた汚れた溶剤は、フィルタ部を通過することで濾過された後に、中空軸内を通って容器の外へ流出する。これにより、フィルタ部に溶剤の汚れが付着するのだが、スピンディスクフィルタ全体を中空軸周りに回転させることによって、フィルタ部に遠心力が作用され、さらに、フィルタ部が容器内の溶剤の液面に叩きつけられるので、汚れがフィルタ部から除去され、これにより、スピンディスクフィルタを再生させることができる。
【特許文献1】特開平7−289788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スピンディスクフィルタの再生において、フィルタ部を容器内の溶剤の液面に叩きつけるためには、液面が形成されるように、容器内に所定の空間を確保して溶剤を目一杯溜めないようにする必要がある。
しかし、この場合において、たとえば再生時におけるスピンディスクフィルタの回転速度が上昇すると、遠心力が強まることによって溶剤がスピンディスクフィルタ(フィルタ部)の回転中心から離れてドーナツ状になり、代わりに上記空間がフィルタ部の回転中心に偏ってきてしまう。これにより、フィルタ部の回転中心部分を溶剤の液面に叩きつけることができなくなり、この部分での汚れの除去が不十分になる。
【0004】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、スピンディスクフィルタを再生する場合にスピンディスクフィルタの回転中心部分の汚れを良好に除去することができる溶剤浄化装置、および、溶剤濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、所定の溶剤を用いて洗浄運転を行う洗浄装置に接続され、前記溶剤の浄化を行うための溶剤浄化装置であって、前記洗浄装置から流出する溶剤を流通させ、前記洗浄装置へ戻すための循環路と、前記循環路に備えられ、流通する溶剤を濾過するための濾過装置とを有し、前記濾過装置は、溶剤の流入口および流出口を有する容器と、前記容器内に設けられ、回転軸を中心に所定速度で回転されうるスピンディスクフィルタとを備える再生可能な濾過装置を含み、前記再生可能な濾過装置を再生させるための再生手段として、前記容器内の溶剤量を所定量に調整する調整手段と、前記容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、前記スピンディスクフィルタを間欠的に回転させる駆動手段と、を含むことを特徴とする、溶剤浄化装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記調整手段の調整する溶剤の量は、前記容器内において、前記スピンディスクフィルタがほぼ半分溶剤に漬かる量であることを特徴とする、請求項1記載の溶剤浄化装置である。
請求項3記載の発明は、前記駆動手段は、前記容器内の溶剤が溜まっていない空間が前記容器上部にある前記スピンディスクフィルタの停止状態と、前記スピンディスクフィルタの回転により溶剤が前記容器の内周壁に沿って分布し、前記スピンディスクフィルタの回転軸側に空間が形成される前記スピンディスクフィルタの回転状態とを繰り返させることを特徴とする、請求項1または2記載の溶剤浄化装置である。
【0007】
請求項4記載の発明は、所定の溶剤を用いて洗浄運転を行う洗浄装置に接続され、前記溶剤の浄化を行うための溶剤浄化装置であって、前記洗浄装置から流出する溶剤を流通させ、前記洗浄装置へ戻すための循環路と、前記循環路に備えられ、流通する溶剤を濾過するための濾過装置とを有し、前記濾過装置は、溶剤の流入口および流出口を有する容器と、前記容器内に設けられ、回転軸を中心に所定速度で回転されうるスピンディスクフィルタとを備える再生可能な濾過装置を含み、前記再生可能な濾過装置を再生させるための再生手段として、前記容器内の溶剤量を所定量に調整する調整手段と、前記容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、前記容器内の溶剤が溜まっていない空間が前記容器上部にある状態と、前記スピンディスクフィルタの回転により溶剤が前記容器の内周壁に沿って分布し、前記スピンディスクフィルタの回転軸側に空間が形成される状態とを繰り返させる駆動手段と、を含むことを特徴とする、溶剤浄化装置である。
【0008】
請求項5記載の発明は、溶剤の流入口および流出口を有する容器と、前記容器内に設けられ、回転軸を中心に所定速度で回転されうるスピンディスクフィルタとを含む再生可能な溶剤濾過装置であって、前記再生可能な溶剤濾過装置を再生させるための再生手段として、前記容器内の溶剤量を所定量に調整する調整手段と、前記容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、前記スピンディスクフィルタを間欠的に回転させる駆動手段とを設けたことを特徴とする、溶剤濾過装置である。
【0009】
請求項6記載の発明は、溶剤の流入口および流出口を有する容器と、前記容器内に設けられ、回転軸を中心に所定速度で回転されうるスピンディスクフィルタとを含む再生可能な溶剤濾過装置であって、前記再生可能な溶剤濾過装置を再生させるための再生手段として、前記容器内の溶剤量を所定量に調整する調整手段と、前記容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、前記容器内の溶剤が溜まっていない空間が前記容器上部にある状態と、前記スピンディスクフィルタの回転により溶剤が前記容器の内周壁に沿って分布し、前記スピンディスクフィルタの回転軸側に空間が形成される状態とを繰り返させる駆動手段とを設けたことを特徴とする、溶剤濾過装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1および5記載の発明によれば、溶剤は、濾過装置において、流入口から容器内に流入し、スピンディスクフィルタで濾過されてから流出口を経て容器の外へ流出する。
スピンディスクフィルタは、溶剤を濾過することによって汚れるのだが、所定速度で回転されることにより、遠心力が作用され、かつ、容器内の溶剤の液面に叩きつけられるので、再生可能である。具体的には、調整手段が調整することで容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、スピンディスクフィルタが駆動手段によって間欠的に回転させられる。
【0011】
スピンディスクフィルタが間欠的に回転するので、容器内の溶剤が遠心力によってスピンディスクフィルタの回転中心部分から離れてこの部分に常に空間が形成されることが防止される。そのため、スピンディスクフィルタを再生する場合に、スピンディスクフィルタの回転中心部分を必ず容器内の溶剤の液面に叩きつけることができるので、スピンディスクフィルタの回転中心部分の汚れを良好に除去することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、スピンディスクフィルタを再生する場合に、調整手段が調整することで容器内に溜められる溶剤の量は、容器内において、スピンディスクフィルタがほぼ半分溶剤に漬かる量である。
これにより、容器内の溶剤の液面をスピンディスクフィルタの回転中心部分近傍に位置させてこの回転中心部分を必ず液面に叩きつけることができるので、スピンディスクフィルタの回転中心部分の汚れを良好に除去することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、駆動手段は、容器内の溶剤が溜まっていない空間が容器上部にあるスピンディスクフィルタの停止状態と、スピンディスクフィルタの回転により溶剤が容器の内周壁に沿って分布し、スピンディスクフィルタの回転軸側に空間が形成されるスピンディスクフィルタの回転状態とを繰り返させる。
これにより、スピンディスクフィルタの回転状態ばかりが続いてスピンディスクフィルタの回転中心部分(回転軸側)に常に空間が形成されることが防止される。そのため、スピンディスクフィルタを再生する場合に、スピンディスクフィルタの回転中心部分を必ず容器内の溶剤の液面に叩きつけることができるので、スピンディスクフィルタの回転中心部分の汚れを良好に除去することができる。
【0014】
請求項4および6記載の発明によれば、溶剤は、濾過装置において、流入口から容器内に流入し、スピンディスクフィルタで濾過されてから流出口を経て容器の外へ流出する。
スピンディスクフィルタは、溶剤を濾過することによって汚れるのだが、所定速度で回転されることにより、遠心力が作用され、かつ、容器内の溶剤の液面に叩きつけられるので、再生可能である。具体的には、調整手段が調整することで容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、駆動手段が、容器内の溶剤が溜まっていない空間が容器上部にある状態と、スピンディスクフィルタの回転により溶剤が容器の内周壁に沿って分布し、スピンディスクフィルタの回転軸側に空間が形成される状態とを繰り返させる。
【0015】
これにより、スピンディスクフィルタの回転が続くことによってスピンディスクフィルタの回転中心部分(回転軸側)に常に空間が形成されることが防止される。そのため、スピンディスクフィルタを再生する場合に、スピンディスクフィルタの回転中心部分を必ず容器内の溶剤の液面に叩きつけることができるので、スピンディスクフィルタの回転中心部分の汚れを良好に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
<ドライクリーニングシステムの全体構成>
図1は、この発明の一実施形態に係るドライクリーニングシステム1の構成図である。
このドライクリーニングシステム1は、洗浄装置としてのドライクリーナ2(1点鎖線で囲まれた部分参照)と、溶剤浄化装置3(2点鎖線で囲まれた部分参照)とがシステム化されたものである。つまり、ドライクリーナ2と溶剤浄化装置3とは互いに別個の存在であり、溶剤浄化装置3は、ドライクリーナ2に接続されて使用される。後述するように、ドライクリーナ2は、所定の溶剤(石油系溶剤またはシリコーン系溶剤などの洗浄液)を用いて洗濯物の洗浄運転を行い、溶剤浄化装置3は、溶剤の浄化を行う。
【0017】
ドライクリーナ2は、周囲に多数の通液孔を有する円筒形状のドラム4と、このドラム4を回転自在に収容する外槽5と、溶剤を貯留する溶剤タンク6と、溶剤タンク6内に貯留されている溶剤を吸引して吐出するポンプ7とを主に備えている。洗濯物は、ドラム4内に収容される。
溶剤浄化装置3は、溶剤に混入しているゴミや粒子状の汚れ等を除去する濾過装置としての第1フィルタ装置8(第1濾過装置)および第2フィルタ装置9(第2濾過装置)と、溶剤を蒸留して溶剤中の汚れを除去するとともに溶剤から水を分離する蒸留器10と、後述する循環路45とを主に備えている。
【0018】
図2は、第1フィルタ装置8の概略的な断面図である。
第1フィルタ装置8は、図2に示すように、容器30と、回転軸31と、フィルタ部32とを含んでいる。容器30は、たとえば水平方向に延びる円筒状である。容器30の水平方向における一端面には、容器30内に連通する流入口33が形成されている。回転軸31は、中空であり、容器30の円中心を通って容器30内まで水平に延びている。回転軸31において、容器30内に配置される部分には、回転軸31の内外を連通させる多数の貫通穴34が形成されており、容器30外に配置される部分(容器30の一部としてもよい)には、回転軸31内部に連通する流出口35が形成されている。このような回転軸31は、容器30によって、容器30の円中心周りに回転自在に支持されている(図示した太い実線矢印参照)。フィルタ部32は、メッシュ状をなす布等で形成されたドーナツ状の円盤形状であり、容器30内に複数配置されている。フィルタ部32の外径は、たとえば30〜40cmである。これらのフィルタ部32は、回転軸31の軸方向に沿って隣り合うように、回転軸31に外嵌されており、回転軸31の貫通穴34を外から覆っている。この状態において回転軸31とフィルタ部32とは一体化されており、スピンディスクフィルタ36として、容器30内(第1フィルタ装置8内)において回転軸31を中心に回転自在である。スピンディスクフィルタ36は、後述するように、再生可能である。
【0019】
図1に示す第2フィルタ装置9は、いわゆるカートリッジフィルタであって、内部に、活性炭やアルミナが充填されている。そして、これらの充填材がある程度汚れると、第2フィルタ装置9は、新しいものと交換される。つまり、第2フィルタ装置9は、使い捨てのフィルタである。
蒸留器10は、溶剤を加熱・気化させる蒸留釜21と、気化した溶剤を冷却して凝縮・液化させる冷却部22と、液化した溶剤中の水を分離する水分離器23とを含んでいる。蒸留釜21と水分離器23とは、冷却部22を介して互いに連結されている。
【0020】
ドライクリーニングシステム1において、外槽5の底部は、排液路11を介して溶剤タンク6に接続され、ポンプ7の吸引側も、溶剤タンク6に接続されている。また、排液路11とポンプ7の吸引側とを直接つなぐ中継流路29が設けられている。そして、ポンプ7の吐出側は、三方バルブ12を介して、第1フィルタ装置8の容器30の流入口33(図2参照)と、バイパス流路14の一端とに択一的に接続されている。第1フィルタ装置8の回転軸31の流出口35(図2参照)は、連結流路28によって、第2フィルタ装置9の流入口40に接続され、バイパス流路14の他端は、第2フィルタ装置9の別の流入口41に接続されている。第2フィルタ装置9の流出口42は、給液路15を介して外槽5に接続されている。
【0021】
そして、第1フィルタ装置8の容器30の底部は、途中にフィルタ排液バルブ16(再生手段および調整手段)が設けられたフィルタ排液路17を介して、蒸留器10の蒸留釜21に接続されている。
次に、図1を参照して、このような構成のドライクリーニングシステム1における動作を説明する。ドライクリーナ2でドラム4内の洗濯物の洗浄運転を行う場合には、まず、ポンプ7が作動して溶剤タンク6内の溶剤を汲み出す。この溶剤は、第1フィルタ装置8、第2フィルタ装置9をこの順で通過することによって濾過された後に、給液路15を経て外槽5内に供給される。外槽5内に供給された溶剤は、ドラム4内の洗濯物の洗浄に寄与した後に、中継流路29を流れることによって、溶剤タンク6をパスするようにドライクリーナ2から溶剤浄化装置3へ流出する。
【0022】
すなわち、洗浄運転中では、中継流路29、ポンプ7、三方バルブ12、第1フィルタ装置8、連結流路28、第2フィルタ装置9、給液路15、外槽5および排液路11をこの順で繋ぐ閉路をなす循環路45が形成され、溶剤タンク6から汲み出された所定量の溶剤が循環路45を循環する。そのため、第1フィルタ装置8および第2フィルタ装置9は、ともに、循環路45の途中に設けられていることがわかる。ドラム4内の洗濯物の洗浄に寄与した溶剤は、ドライクリーナ2から溶剤浄化装置3へ流出して循環路45を流通することによって溶剤浄化装置3において第1フィルタ装置8および第2フィルタ装置9を通過して濾過された後に、再度、ドライクリーナ2へ戻されてドラム4での洗濯物の洗浄に用いられることとなる。
【0023】
このように溶剤タンク6が切り離された循環路45で溶剤を循環させながら、この溶剤でドライクリーナ2が洗濯物を洗浄する洗浄運転は、循環洗浄運転と呼ばれる。
また、ドライクリーナ2での洗浄運転中において、ドライクリーナ2での洗濯物の洗浄に使用された後にポンプ7から吐出されて循環路45を流れる溶剤が、図2の太い破線矢印で示すように、流入口33から容器30内に流入することで第1フィルタ装置8内に取り込まれ、スピンディスクフィルタ36のフィルタ部32を通過する。これにより、フィルタ部32によって溶剤が濾過される。詳しくは、汚れの中でも比較的大きな粒子状の汚れがフィルタ部32によって捕獲される。そして、フィルタ部32によって濾過された溶剤は、フィルタ部32から貫通穴34を介して回転軸31内に流入した後に、流出口35から、図1に示す連結流路28を介して、第2フィルタ装置9内に流入する。
【0024】
第2フィルタ装置9内に流入した溶剤では、細かな皮脂汚れが、第2フィルタ装置9における上述した充填材によって捕獲された後に、引き続き循環路45(給液路15)を介して、ドライクリーナ2側(外槽5)に戻される。これにより、溶剤浄化装置3では、溶剤を、第1フィルタ装置8および第2フィルタ装置9によって二重に濾過することができる。
【0025】
このように、循環路45を流通する溶剤の流れ方向に見て、上流側に第1フィルタ装置8が備えられる一方で、下流側に第2フィルタ装置9に備えられているので、第2フィルタ装置9に先立って第1フィルタ装置8が溶剤を濾過する。そのため、第2フィルタ装置9の目詰り(充填材の汚れ)の進行を遅らせること(第2フィルタ装置9の寿命を延ばすこと)ができる。たとえば、このドライクリーニングシステム1において、第2フィルタ装置9だけで溶剤を濾過するのであれば、洗浄運転を約400回行うと、第2フィルタ装置9の交換が必要となるが、第2フィルタ装置9に先立って第1フィルタ装置8が溶剤を濾過すれば、洗浄運転を約1200回行うまで第2フィルタ装置9を交換せずに済む。つまり、第2フィルタ装置9の寿命を3倍まで伸ばすことができる。
【0026】
逆に、汚れた溶剤が第1フィルタ装置8、第2フィルタ装置9を順に通過することから、第1フィルタ装置8は、第2フィルタ装置9よりも先に汚れ易く、目詰りが生じて溶剤が通りにくくなるので、第1フィルタ装置8を比較的高頻度で浄化する必要がある。そのため、溶剤浄化装置3では、所定の時間が経過する度、または、所定の回数(洗濯運転回数)だけ洗浄運転を行う度に、そのときを第1フィルタ装置8の浄化時期として、以下に述べる第1フィルタ装置8の再生処理が行われる。このような再生処理を行うことによって、洗浄運転を約6000回行うまでスピンディスクフィルタ36を交換せずに済む。
<第1フィルタ装置の再生処理>
図3は、溶剤浄化装置3の電気的構成を示すブロック図である。
【0027】
溶剤浄化装置3では、図3に示すように、上記構成部品の制御を行う制御部46が設けられている。制御部46は、判断手段、蒸留制御手段、切り離し手段、復帰手段、再生手段、調整手段および駆動手段として機能する。制御部46は、CPU、運転制御のプログラムを格納したROMなどを中心に構成されている。制御部46は、後述する圧力センサとしての圧力スイッチ26および圧力スイッチ37の検出信号等に基づいて、各バルブ12、16の開閉動作を制御したり、蒸留器10の作動や、第1フィルタ装置8のスピンディスクフィルタ36の回転を制御したりすることで、第1フィルタ装置8の再生処理を実行することができる。
【0028】
図4(a)は、スピンディスクフィルタ36が停止状態にあるときの第1フィルタ装置8の内部の模式的な断面図である。図4(b)は、スピンディスクフィルタ36が回転初期の状態にあるときの第1フィルタ装置8の内部の模式的な断面図である。図4(c)は、スピンディスクフィルタ36の回転がある程度継続された状態における第1フィルタ装置8の内部の模式的な断面図である。図4(d)は、スピンディスクフィルタ36の回転状態を示すタイムチャートである。
【0029】
第1フィルタ装置8の再生処理は、洗浄運転中および洗浄運転以外のいずれにおいても実施可能である。
洗浄運転(循環洗浄運転)中に第1フィルタ装置8の再生処理を行う場合には、制御部46は、まず、三方バルブ12を切り替えて、ポンプ7から送られてきた溶剤をバイパス流路14に流させる(図1参照)。つまり、制御部46によって、第1フィルタ装置8が循環路45の溶剤の流通から切り離されるので、ポンプ7からの溶剤は、バイパス流路14を通ることによって第1フィルタ装置8をパスし、第2フィルタ装置9のみで濾過されてから外槽5へと供給される。この場合、バイパス流路14が、第1フィルタ装置8および連結流路28に代わって、循環路45の一部をなしている。なお、第1フィルタ装置8を循環路45から切り離すときに洗浄運転を中断しなくてもよい。
【0030】
洗浄運転を行うことで、第1フィルタ装置8の容器30内には、溶剤が所定量(たとえば70L)溜まっている(図2参照)。そして、第1フィルタ装置8では、溶剤の汚れを濾過することによって、上述したようにスピンディスクフィルタ36のフィルタ部32の表面に汚れが付着している。そこで、制御部46は、第1フィルタ装置8の再生処理として、回転軸31を回転させることによって、容器30内において、スピンディスクフィルタ36を、たとえば60rpmの所定の回転速度で高速回転させる(図2参照)。第1フィルタ装置8には、制御部46の制御に基づいてスピンディスクフィルタ36を回転させる回転制御手段としてのモータ(図示せず)などが設けられている。
【0031】
スピンディスクフィルタ36の回転に先立って、まず、制御部46が、フィルタ排液バルブ16を開閉することによって、図4(a)に示すように、容器30内の上部に、溶剤が溜まっていない所定の空間50が確保されるように、容器30内に溜まる溶剤の量を所定量に調整する。このとき、スピンディスクフィルタ36が停止状態にあるので、容器30内には、溶剤(ドットで塗り潰した部分)によって、略水平な液面51が形成されている。
【0032】
ここで、スピンディスクフィルタ36がほぼ半分溶剤に漬かる程度の量の溶剤が容器30内に溜められるように調整されるとよい。これにより、液面51がスピンディスクフィルタ36の回転中心(つまり回転軸31)の近傍に位置するので、後述するようにスピンディスクフィルタ36を回転させる場合に、スピンディスクフィルタ36の回転中心部分を必ず液面51に叩きつけてこの部分の汚れを良好に除去することができる。
【0033】
その後、容器30内に溶剤が所定量溜まった状態において、制御部46は、スピンディスクフィルタ36を回転させる。回転初期の状態では、図4(b)に示すように、空間50が容器30内の上部に引き続き位置しており、フィルタ部32において空間50に露出された部分がスピンディスクフィルタ36の回転に伴って液面51に連続的に叩きつけられる。さらに、スピンディスクフィルタ36が回転することによって、フィルタ部32に遠心力が作用する。これらによって、フィルタ部32に付着した汚れが、フィルタ部32から剥離して容器30内の溶剤に拡散し、スピンディスクフィルタ36が効果的に再生される。
【0034】
そして、スピンディスクフィルタ36の回転状態がある程度継続されると、スピンディスクフィルタ36の回転に伴って生じた遠心力によって、溶剤が、図4(c)に示すように、スピンディスクフィルタ36の回転中心を中心とするドーナツ状になって容器30の内周壁に沿って分布する。これにより、スピンディスクフィルタ36(フィルタ部32)の回転中心(回転軸31側)に、上述した空間50が形成される。このようなスピンディスクフィルタ36の回転状態では、フィルタ部32の回転中心部分を溶剤の液面に叩きつけることができない。
【0035】
そこで、制御部46は、スピンディスクフィルタ36の回転を一端停止させる。これにより、上述した空間50は、再び容器30内の上部へ移動する(図4(a)参照)。そして、制御部46は、たとえば、スピンディスクフィルタ36を10秒間回転させた後に5秒間停止させるといった制御を、所定時間(たとえば90秒間)内において繰り返し、スピンディスクフィルタ36を間欠的に回転させる(図4(d)参照)。これにより、制御部46によって、スピンディスクフィルタ36の停止状態と回転状態とが繰返される。
【0036】
そのため、スピンディスクフィルタ36の回転状態ばかりが続いて容器30内の溶剤が遠心力によってスピンディスクフィルタ36の回転中心部分から離れてこの部分(回転軸31側)に常に空間50が形成されることが防止される。その結果、スピンディスクフィルタ36を再生する場合に、スピンディスクフィルタ36の回転中心部分を必ず容器30内の溶剤の液面51に叩きつけることができるので、スピンディスクフィルタ36の回転中心部分の汚れを良好に除去することができる。
【0037】
そして、このように停止状態(図4(a)参照)と回転状態(図4(b)および(c)参照)とが繰返されることによってフィルタ部32の汚れの剥離が何度も行われると、洗浄運転時にスピンディスクフィルタ36がフィルタ部32において溶剤から捕獲した汚れがほぼ完全に除去されて容器30内に蓄積される。
そして、このように容器30内に蓄積された汚れがある程度の量まで増加すると、スピンディスクフィルタ36を回転させても、この汚れがスピンディスクフィルタ36のフィルタ部32に再度付着することとなり、さらには、容器30内に蓄積された汚れによって、容器30内の溶剤がフィルタ部32で濾過しきれない程度まで汚れる虞がある。
【0038】
そこで、第1フィルタ装置8の再生処理の続きとして、溶剤浄化装置3では、60分程度かけて、以下の処理が行われる。つまり、容器30内にある程度の量の汚れが蓄積されてから、制御部46(図3参照)は、図1に示すフィルタ排液バルブ16を開放する。これにより、循環路45から切り離された第1フィルタ装置8の容器30内に溜まっている溶剤が取り出され、容器30内に蓄積された汚れとともに、自重によって、フィルタ排液路17を通って蒸留器10の蒸留釜21内に落下する。この溶剤は、蒸留器10において、蒸留釜21および冷却部22で蒸留されることによって、汚れが除去され、さらに、この溶剤が洗濯物等から取り込んだ水分が、水分離器23によって溶剤から分離されて除去される。このように浄化された溶剤は、たとえば図示しない戻し流路を経て溶剤タンク6に戻されて、ドライクリーナ2の洗浄運転に再使用され得る。
【0039】
このような一連の再生処理によって、第1フィルタ装置8では、溶剤が取り出される前にスピンディスクフィルタ36が高速回転されて汚れがスピンディスクフィルタ36から除去された後に、この汚れが溶剤とともに第1フィルタ装置8から取り出される。そのため、第1フィルタ装置8を効果的に再生することができる。
そして、以下では、上述した一連の第1フィルタ装置8の再生処理を、スピンディスクフィルタ36を回転させることでフィルタ部32の汚れを剥離する第1の再生処理(図4参照)と、容器30内にある程度の量の汚れが蓄積されてから容器30内の溶剤を取り出して蒸留器10によって浄化する第2の再生処理(蒸留処理)とに区別することがある。
<再生処理に係る制御>
(1)第1の実施例
第1の実施例では、第1フィルタ装置8の再生処理(詳しくは第2の再生処理)を行うのに関し、制御部46は、洗浄運転が上記所定の洗濯運転回数まで行われたこと(第1フィルタ装置8の浄化時期になったこと)を判断するために、以下の制御を行う。この制御に関連して、溶剤浄化装置3では、第1フィルタ装置8に圧力スイッチ26が付設されている(図1および図3参照)。
【0040】
圧力スイッチ26は、第1フィルタ装置8の容器30内(スピンディスクフィルタ36)へ流入する溶剤の圧力を検出し、詳しくは、容器30内の溶剤の圧力の変化量(厳密にはこの圧力変化を生じさせるポンプ7のポンプ圧)に応じてON・OFFされる。圧力スイッチ26は、予め設定された所定の圧力を閾値として、受ける圧力が閾値以上のときはON、受ける圧力が閾値未満のときにはOFFとなる検出信号を出力する。換言すれば、圧力スイッチ26は、ON(第1状態)とOFF(第2状態)とに切り換わる2値センサである。
【0041】
図5は、圧力スイッチ26のON・OFF状態を示すタイムチャートである。図6は、制御部46による制御の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、1回の洗浄運転中では、循環路45(図1参照)での溶剤の循環に伴って、圧力スイッチ26が何度かON・OFFされる。ここでは、1回の洗浄運転中において、圧力スイッチ26が第1の所定時間継続してONされてから引き続いて第2の所定時間継続してOFFされる回数(圧力スイッチ26の変化回数)が2回あることが予めわかっており(図5の凸部分A、Bを参照)、2回という情報が設定回数として制御部46のメモリ(図3参照)に記憶(設定)されているものとする。圧力スイッチ26の変化回数が、圧力スイッチ26が検出する圧力の変化量となる。
【0042】
ここで、1回の洗浄運転中において、さらに、圧力スイッチ26が細かくON・OFFされることがあり得る(図5の凸部分C、Dを参照)。
そこで、図6に示すように、制御部46は、圧力スイッチ26が第1の所定時間(たとえば5秒)継続してONされると(ステップS1でYES)、その後圧力スイッチ26がOFFされてから第2の所定時間(たとえば45秒)経過するまでに圧力スイッチ26が継続してOFFされている場合には(ステップS2でYES)、圧力スイッチ26の変化回数が1回あったものとカウントする(ステップS3)。ここで、第1の所定時間と第2の所定時間とは、異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0043】
これにより、1回の洗浄運転において、図5では、A、Bの場合のみカウントされるものの、C、Dの場合や、Eの場合(一瞬のOFF)はカウントされないので、制御部46は、圧力スイッチ26の変化回数が2回あったものとカウントする。圧力スイッチ26の変化回数が2回あると、変化回数が上述した設定回数に到達したことになるので、圧力スイッチ26の変化回数が設定回数になる毎に、制御部46は、洗浄運転が1回行われたと判断する(洗浄運転回数を1回と計測する)。そして、制御部46は、このような圧力スイッチ26の変化回数に基づいて計測した洗浄運転回数が、上記所定の洗濯運転回数に到達すると、第1フィルタ装置8の浄化時期になったと判断して、第1フィルタ装置8の再生処理(特に第2の再生処理)を実行する。溶剤浄化装置3では、このような簡易な構成によって、第1フィルタ装置8が浄化時期になったと判断できる。
【0044】
そして、圧力スイッチ26の変化回数が上述した設定回数になる毎に制御部46が洗浄運転回数を1回と計測するので、第1フィルタ装置8が浄化時期になるまでのドライクリーナ2の洗浄運転回数を正確に計測することができる。
また、1回の洗浄運転中における圧力スイッチ26の設定回数(2回)と上記所定の洗浄運転回数とを乗じた値に、カウントされた圧力スイッチ26の変化回数の積算値が到達した場合に、制御部46は、第1フィルタ装置8の浄化時期になったと判断してもよい。
【0045】
つまり、以上のように、第1フィルタ装置8の容器30内において、細かい圧力変動(圧力スイッチ26の細かいON・OFF)を無視し、大雑把な圧力変動を注目することで、洗浄運転が何回行われたのかを簡易に把握することができる。換言すれば、圧力スイッチ26が第1の所定時間ONになり、続いて第2の所定時間OFFになった変化回数に基づいて洗浄運転回数が計測されるので、たとえば圧力スイッチ26の不規則な変化等に応じて制御部46がドライクリーナ2の洗浄運転回数を誤って計測してしまうことを防止できる。
【0046】
なお、ドライクリーニングシステム1によっては、このように洗浄運転中に圧力スイッチ26がON・OFFされる場合もあれば、図1に示す循環路45で溶剤が常に循環していることから圧力スイッチ26が常にONされている場合もある。圧力スイッチ26が常にONされている場合には、制御部46(図3参照)は、圧力スイッチ26がONされている時間(つまり圧力スイッチ26の検出時間であり、第1フィルタ装置8が汚れている時間に相当する。)の積算値(積算時間)に基づいて、洗浄運転回数を計測する。ここでは、圧力スイッチ26がONされている時間の積算値が、圧力スイッチ26の検出する圧力の変化量となる。
【0047】
詳しくは、1回の洗浄運転において圧力スイッチ26がONされている積算時間が、設定時間として制御部46のメモリ(図3参照)に予め記憶(設定)されており、制御部46は、圧力スイッチ26が実際にONされている積算時間が設定時間になる毎に、洗浄運転回数を1回と計測してもよい。この場合も、第1フィルタ装置8が浄化時期になるまでのドライクリーナ2の洗浄運転回数を正確に計測することができる。
【0048】
もちろん、制御部46は、圧力スイッチ26の変化回数に基づいて計測した洗浄運転回数が上記所定の洗浄運転回数に到達した場合、および、圧力スイッチ26がONされている積算時間に基づいて計測した洗浄運転回数が上記所定の洗浄運転回数に到達した場合のうち、どちらか早い場合に、第1フィルタ装置8の浄化時期になったと判断して、第1フィルタ装置8の再生処理を実行してもよい。
【0049】
このように、図1に示すように溶剤浄化装置3に設けられた圧力スイッチ26の出力に基づいて、ドライクリーナ2による洗浄運転回数を溶剤浄化装置3側で把握することができる。そのため、溶剤浄化装置3では、制御部46が、圧力スイッチ26の出力に基づいて、第1フィルタ装置8の浄化時期を判断することができる。
その結果、ドライクリーナ2を改造せずとも、溶剤浄化装置3に圧力スイッチ26を設けるといった簡易な構成によって、ドライクリーナ2による洗浄運転回数を溶剤浄化装置3側で把握して第1フィルタ装置8の浄化を定期的に行うことができる。
【0050】
特に、圧力の単純な変化量(圧力スイッチ26の変化回数や圧力スイッチ26がONになった時間の積算値)に基づいて、制御部46は、ドライクリーナ2の洗浄運転回数を計測し、第1フィルタ装置8が浄化時期になったと判断することができる。
そして、溶剤浄化装置3が、洗浄運転が上記所定の洗浄運転回数まで行われた事に応じて、第1フィルタ装置8の再生処理を自動的に実行するので、オペレータの作業負担を低減させることができる。
(2)第2の実施例
第1フィルタ装置8の第2の再生処理(蒸留処理)に伴い、第1フィルタ装置8の容器30内の溶剤は、上述したように、取り出されて蒸留器10の蒸留釜21内に落下して容器30内からなくなるので、容器30内は空になる。そのため、第2の再生処理後において、上述した洗浄運転(循環洗浄運転)中に、第1フィルタ装置8を循環路45に戻すと、循環路45を流れる溶剤の一部は、容器30内に取り込まれることとなって、循環路45を流れる溶剤の量が低減される。これに伴って、外槽5(ドラム4)の洗濯物に供給される溶剤の量も低減するので、洗浄効率の低下が懸念される。
【0051】
そのため、循環洗浄運転中には空の第1フィルタ装置8を循環路45に戻さないようにする制御を行う必要がある。この制御に関連して、蒸留器10では、上述したように第1フィルタ装置8が循環路45から切り離されているときに循環路45の一部をなすバイパス流路14に圧力スイッチ37が付設されている(図1および図3参照)。
圧力スイッチ37は、バイパス流路14内において第2フィルタ装置9に流入する溶剤の圧力を検出し、詳しくは、バイパス流路14内の圧力変動(厳密にはこの圧力変動を生じさせるポンプ7のポンプ圧)に応じてON・OFFされる。圧力スイッチ37は、予め設定された所定の圧力を閾値として、受ける圧力が閾値以上のときはON、受ける圧力が閾値未満のときにはOFFとなる検出信号を出力する。
【0052】
また、制御部46(図3参照)は、循環洗浄運転中に第1フィルタ装置8の再生処理を実行する場合には、上述したように、三方バルブ12を切り替えて第1フィルタ装置8を循環路45から切り離してから、第1フィルタ装置8の再生処理を実行する。
そして、制御部46は、後述するように、圧力スイッチ37の出力に基づいて、循環洗浄運転中か否かを判断し、循環洗浄運転中に空の第1フィルタ装置8を循環路45に戻さず、循環洗浄運転以外に第1フィルタ装置8を循環路45に戻すようにする制御を実行する。
【0053】
図7は、圧力スイッチ37のON・OFF状態を示すタイムチャートである。図8は、制御部46による制御の一例を示すフローチャートである。
第1フィルタ装置8を循環路45から切り離した後には、バイパス流路14に溶剤が流れることになるので、図7に示すように、バイパス流路14内の圧力に応じて圧力スイッチ37がON・OFFされ得る。制御部46は、圧力スイッチ37がONされる場合には、循環洗浄運転中であるとして、第2の再生処理後の第1フィルタ装置8を循環路45に戻さない。
【0054】
そして、循環洗浄運転が始まると、バイパス流路14で溶剤が常に流れるので、圧力スイッチ37は、原則として常にONされるが、循環洗浄運転初期にドラム4内の洗濯物が溶剤を吸い込むことで溶剤の循環量が変化することによって、循環洗浄運転中であるにもかかわらず、圧力スイッチ37が細かくON・OFFされることがある(図7の凹部分Xを参照)。
【0055】
そこで、図8に示すように、制御部46は、圧力スイッチ37が所定時間(たとえば5秒)継続してONされると(ステップS11でYES)、循環洗浄運転中であると判断する(ステップS12)。その後、圧力スイッチ37がOFFされてから所定時間(たとえば45秒)経過するまでに圧力スイッチ37が継続してOFFされている場合(ステップS13でYES)には(つまり圧力スイッチ37が所定の圧力を検出しない状態が続いているときには)、制御部46は、循環洗浄運転中でないと判断する(ステップS14)。
【0056】
制御部46は、このような圧力スイッチ37の出力に基づいて、循環洗浄運転中であると判断した場合には(ステップS12)、第2の再生処理後の空の第1フィルタ装置8を循環路45に戻さない。そして、制御部46は、圧力スイッチ37の出力に基づいて、循環洗浄運転中でない(第1フィルタ装置8が切り離された循環路45内で溶剤が循環していない)と判断した場合に限り(ステップS14)、第2の再生処理後の空の第1フィルタ装置8を循環路45内へ戻す。これにより、循環洗浄運転中において、空の第1フィルタ装置8が循環路45内へ戻されて循環路45の溶剤が第1フィルタ装置8に取り込まれることがないので、循環洗浄に用いられる溶剤が不意に減少することはない(図1参照)。
【0057】
このように、図1に示すように溶剤浄化装置3に設けられた圧力スイッチ37の出力に基づいて、ドライクリーナ2が洗浄運転中であって、ドライクリーナ2から流出した溶剤が循環路45に流通しているか否かを溶剤浄化装置3側で把握することができる。そのため、溶剤浄化装置3では、制御部46が、圧力スイッチ37の出力に基づいて、溶剤が取り出されて空になった第1フィルタ装置8を適切なタイミングで循環路45内へ戻すことができる。
【0058】
つまり、ドライクリーナ2を改造せずとも、溶剤浄化装置3に圧力スイッチ37を設けるといった簡易な構成によって、ドライクリーナ2が循環洗浄運転中であって循環路45で溶剤が流通しているか否かを溶剤浄化装置3側で把握し、空になった第1フィルタ装置8を適切なタイミングで循環路45に戻すことができる。
そして、以上のように、圧力スイッチ37による検知結果に基づいて、バイパス流路14内において、細かい圧力変動(圧力スイッチ37の細かいON・OFF)を無視し、大雑把な圧力変動を注目することで、循環洗浄運転中であるか(循環路45で溶剤が循環しているか)否かを簡易に把握することができる(図7および図8参照)。換言すれば、制御部46が、圧力スイッチ37が所定の圧力を検知しない状態(圧力スイッチ37のOFF状態)が続いているときに、循環洗浄運転中でないと判断する。これにより、循環洗浄運転中であるにもかかわらず、たとえば不規則な圧力変化等(図7の凹部分X参照)に応じて制御部46が循環洗浄運転中でないと誤って判断してしまうことを防止できる。
【0059】
そして、制御部46が、循環洗浄運転中でない事に応じて、第2の再生処理後の空の第1フィルタ装置8を循環路45に自動的に戻すので、オペレータの作業負担を低減させることができる。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0060】
たとえば、圧力スイッチ37は、バイパス流路14でなく、第2フィルタ装置9内の溶剤の圧力を検出してもよく、循環路45において第2フィルタ装置9より下流側を流れる溶剤の圧力を検出してもよい。つまり、圧力スイッチ37は、第2フィルタ装置9を含む流路を流れる溶剤の圧力を検出する。
また、第1フィルタ装置8、フィルタ排液バルブ16および制御部46が一体となって、溶剤濾過装置を構成してもよい。
【0061】
また、溶剤タンク6がドライクリーナ2から独立して構成されていてもよい。
また、第1フィルタ装置8の再生処理に関し、洗浄運転が上記所定の洗浄運転回数まで行われたときに第1の再生処理と第2の再生処理とが常に一緒に実施されてもよいし、洗浄運転が上記所定の洗浄運転回数まで行われるまでの間に第1の再生処理だけが適宜実施されてもよい。
【0062】
また、第2フィルタ装置9は、ドライクリーナ2側に含まれていてもよいし、ドライクリーニングシステム1から独立した構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の一実施形態に係るドライクリーニングシステム1の構成図である。
【図2】第1フィルタ装置8の概略的な断面図である。
【図3】溶剤浄化装置3の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図4(a)は、スピンディスクフィルタ36が停止状態にあるときの第1フィルタ装置8の内部の模式的な断面図である。図4(b)は、スピンディスクフィルタ36が回転初期の状態にあるときの第1フィルタ装置8の内部の模式的な断面図である。図4(c)は、スピンディスクフィルタ36の回転がある程度継続された状態における第1フィルタ装置8の内部の模式的な断面図である。図4(d)は、スピンディスクフィルタ36の回転状態を示すタイムチャートである。
【図5】圧力スイッチ26のON・OFF状態を示すタイムチャートである。
【図6】制御部46による制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】圧力スイッチ37のON・OFF状態を示すタイムチャートである。
【図8】制御部46による制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
2 ドライクリーナ
3 溶剤浄化装置
8 第1フィルタ装置
16 フィルタ排液バルブ
30 容器
31 回転軸
33 流入口
35 流出口
36 スピンディスクフィルタ
45 循環路
46 制御部
50 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の溶剤を用いて洗浄運転を行う洗浄装置に接続され、前記溶剤の浄化を行うための溶剤浄化装置であって、
前記洗浄装置から流出する溶剤を流通させ、前記洗浄装置へ戻すための循環路と、
前記循環路に備えられ、流通する溶剤を濾過するための濾過装置とを有し、
前記濾過装置は、溶剤の流入口および流出口を有する容器と、前記容器内に設けられ、回転軸を中心に所定速度で回転されうるスピンディスクフィルタとを備える再生可能な濾過装置を含み、
前記再生可能な濾過装置を再生させるための再生手段として、前記容器内の溶剤量を所定量に調整する調整手段と、前記容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、前記スピンディスクフィルタを間欠的に回転させる駆動手段と、
を含むことを特徴とする、溶剤浄化装置。
【請求項2】
前記調整手段の調整する溶剤の量は、前記容器内において、前記スピンディスクフィルタがほぼ半分溶剤に漬かる量であることを特徴とする、請求項1記載の溶剤浄化装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記容器内の溶剤が溜まっていない空間が前記容器上部にある前記スピンディスクフィルタの停止状態と、前記スピンディスクフィルタの回転により溶剤が前記容器の内周壁に沿って分布し、前記スピンディスクフィルタの回転軸側に空間が形成される前記スピンディスクフィルタの回転状態とを繰り返させることを特徴とする、請求項1または2記載の溶剤浄化装置。
【請求項4】
所定の溶剤を用いて洗浄運転を行う洗浄装置に接続され、前記溶剤の浄化を行うための溶剤浄化装置であって、
前記洗浄装置から流出する溶剤を流通させ、前記洗浄装置へ戻すための循環路と、
前記循環路に備えられ、流通する溶剤を濾過するための濾過装置とを有し、
前記濾過装置は、溶剤の流入口および流出口を有する容器と、前記容器内に設けられ、回転軸を中心に所定速度で回転されうるスピンディスクフィルタとを備える再生可能な濾過装置を含み、
前記再生可能な濾過装置を再生させるための再生手段として、前記容器内の溶剤量を所定量に調整する調整手段と、前記容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、前記容器内の溶剤が溜まっていない空間が前記容器上部にある状態と、前記スピンディスクフィルタの回転により溶剤が前記容器の内周壁に沿って分布し、前記スピンディスクフィルタの回転軸側に空間が形成される状態とを繰り返させる駆動手段と、
を含むことを特徴とする、溶剤浄化装置。
【請求項5】
溶剤の流入口および流出口を有する容器と、前記容器内に設けられ、回転軸を中心に所定速度で回転されうるスピンディスクフィルタとを含む再生可能な溶剤濾過装置であって、
前記再生可能な溶剤濾過装置を再生させるための再生手段として、前記容器内の溶剤量を所定量に調整する調整手段と、前記容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、前記スピンディスクフィルタを間欠的に回転させる駆動手段とを設けたことを特徴とする、溶剤濾過装置。
【請求項6】
溶剤の流入口および流出口を有する容器と、前記容器内に設けられ、回転軸を中心に所定速度で回転されうるスピンディスクフィルタとを含む再生可能な溶剤濾過装置であって、
前記再生可能な溶剤濾過装置を再生させるための再生手段として、前記容器内の溶剤量を所定量に調整する調整手段と、前記容器内に溶剤が所定量溜まった状態において、前記容器内の溶剤が溜まっていない空間が前記容器上部にある状態と、前記スピンディスクフィルタの回転により溶剤が前記容器の内周壁に沿って分布し、前記スピンディスクフィルタの回転軸側に空間が形成される状態とを繰り返させる駆動手段とを設けたことを特徴とする、溶剤濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−226360(P2009−226360A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77748(P2008−77748)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(505188227)三洋電機テクノクリエイト株式会社 (68)
【Fターム(参考)】