説明

溶剤組成物

【課題】安全性、低臭気で、溶解性に優れ、種々の基材に対する親和性にも優れ、更に高沸点でありながら低粘度であり、大面積化に対応可能な溶剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)下記一般式(I)で表される炭素縮合環二環化合物、及び(b)下記一般式(II)で表されるジフェニルメタン化合物を含有してなり、好ましくは(a)炭素縮合環二環化合物の含有量が、(a)炭素縮合環二環化合物及び(b)ジフェニルメタン化合物の合計含有量に対して30質量%以上70質量%以下であることを特徴とする溶剤組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤組成物に関し、詳しくは、特定の炭素縮合環二環化合物及び特定のジフェニルメタン化合物を組み合わせて得られ、安全性に優れ、低臭気で、種々の有機材料に対する溶解性に優れ、種々の基材に対する親和性にも優れた溶剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料、接着剤、印刷インキ等の分野においては、溶剤が重要な役割を果たしてきた。溶剤には、大きな溶質溶解性を有することが当然として要求される。また、これらの分野において、溶剤は、塗布面へのヌレ性、乾燥性等の性能に対して大きな影響を与える。
【0003】
従来、塗料、接着剤、印刷インキ等の分野で常用されているセルロース樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等と併用する溶剤としては、グリコールエーテル系のセルソルブ類、特に酢酸セルソルブが、その優れた性能から賞用されてきた。しかしながら、最近では公害問題等から化学物質の安全性に対する要求が極めて強くなり、酢酸セルソルブも毒性問題から使用制限が強化され、労働安全衛生法により作業環境管理濃度基準が設定されている。
【0004】
このため、酢酸セルソルブに代わり得る溶解性を持ち、しかも安全性に懸念のない代替溶剤の開発が活発に行われている。例えば、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシプロパノール、β−エポキシプロピオン酸エチル等が有力な代替溶媒候補として検討されているが、溶解力、安全性、臭気、操作性等の点で必ずしも満足できるものではない。尚、これらの中では、安全性の観点からは、食品添加物としても認可されている乳酸エチルが最も好ましいと考えられるが、高分子化合物及び各種添加剤の溶解性の点では十分満足できるとはいえない。
また、溶解性の観点からは、β−メトキシプロピオン酸メチルやβ−エトキシプロピオン酸エチル等のβ−アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類が最も好ましいと考えられているが、これらも高分子化合物或いは各種添加剤の溶解性が未だ満足できるものではなく、更に塗布後の揮発性の点でも未だ満足できるものではない。
【0005】
また、溶剤は前述のような用途のほか、切削油、加工油、プレス油、防錆油、潤滑油、グリース或いはピッチ等として用いられる油類の洗浄用、或いはハンダフラックス、インキ、液晶等の洗浄用等にも用いられている。これらの洗浄用の溶剤としては、フロン113(1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリクロロエタン)、メチルクロロホルム(1,1,1−トリクロロエタン)及びトリクロロエチレン等のハロゲン系溶剤を主体にしたものが広く用いられている。特に、フロン113は、不燃性で毒性も低く、安全性に優れており、しかも金属、プラスチック、エラストマー等を侵さず、各種の汚れを選択的に溶解する性質があるため、幅広く用いられていた。しかし、フロン113及びメチルクロロホルムは、成層圏のオゾン層を破壊し、ひいては皮膚がんの発生を引き起こす原因となることから、その使用が急速に制限されつつある。また、トリクロロエチレンは、発がん性の疑いが持たれる等の問題があり、これも安全性の面から使用が制限されつつある。
【0006】
このためフロン113等に代わり得る洗浄性を持ち、しかもオゾン層破壊の懸念の無い代替フロン系洗浄剤の開発が活発に行われている、例えば、特許文献1には、ジフェニルメタン化合物とポリエーテル化合物との混合物が提案されており、特許文献2には、テトラリン化合物とポリエーテル化合物との混合物が提案されているが、これらの溶剤は、沸点が低く、また粘度が高いため、有機EL、有機半導体、薄膜太陽電池等の用途においてインクとして用いた場合均質に製膜することができず大面積化に対応することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−130403号公報
【特許文献2】特開2006−342255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、このような現状を鑑み、安全性に優れ、低臭気で、種々の有機材料の溶解性に優れ、種々の基材に対する親和性にも優れ、更に高沸点でありながら低粘度であり、大面積化に対応可能な溶剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の炭素縮合環二環化合物及びジフェニルメタン化合物を組み合わせて得られる溶剤組成物が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、(a)下記一般式(I)で表される炭素縮合環二環化合物、及び(b)下記一般式(II)で表されるジフェニルメタン化合物を含有してなる溶剤組成物を提供するものである。
【0011】
【化1】

(式中、環Aはベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、分岐を有してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基である置換基を表し、置換基の位置は任意であり、pは0〜4の整数であり、qは、環Aがベンゼン環のとき0〜4の整数であり、環Aがシクロヘキサン環のとき0〜8の整数である。)
【0012】
【化2】

(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、分岐を有してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基である置換基を表し、置換基の位置は任意であり、m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の溶剤組成物は、安全性に優れ、臭気がほとんど無く、種々の有機材料の溶解性に優れ、種々の基材に対する親和性にも優れており、高沸点で揮発しにくいので均一な膜を作製することができる。更に、本発明の溶剤組成物は、低粘度であり、経時的に変化することなく高濃度で使用することができるので、各種塗料、各種接着剤、各種コーティング材、各種洗浄剤等の種々の用途において好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の溶剤組成物について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の溶剤組成物は、(a)上記一般式(I)で表される炭素縮合環二環化合物、及び(b)上記一般式(II)で表されるジフェニルメタン化合物を含有してなるものである。
【0015】
(a)成分である炭素縮合環二環化合物を表す上記一般式(I)中、R1及びR2で表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等の基が挙げられ、これらの基の中でも、R1及びR2は、メチル基であることが好ましい。
【0016】
上記一般式(I)で表される炭素縮合環二環化合物の中でも、p及びqが0であるもの、すなわち置換基を有さないもの;R1及びR2がメチル基であり、p及びqが1であるもの;R2がメチル基であり、pが0であり、qが1又は2であるもの;R1がメチル基であり、pが1又は2であり、qが0であるものが、溶解性に優れ低粘度であるため好ましい。
【0017】
本発明に使用される(a)成分である炭素縮合環二環化合物の具体例としては、下記に示す化合物No.1〜No.12が挙げられる。尚、これらの炭素縮合環二環化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
【化3】

【0019】
これらの炭素縮合環二環化合物の中でも、化合物No.1〜化合物No.9が、溶解性に優れ、低粘度であるため好ましい。これらの化合物の中でも、化合物No.1、化合物No.2、化合物No.3及び化合物No.9が、溶解性に特に優れ臭気もほとんどないため更に好ましく、化合物No.1及び化合物No.2が最も好ましい。
【0020】
(b)成分であるジフェニルメタン化合物を表す上記一般式(II)中、R3及びR4で表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基としては、上記一般式(I)で例示したものが挙げられ、これらの基の中でも、R3がメチル基であることが好ましい。
【0021】
上記一般式(II)で表されるジフェニルメタン化合物の中でも、R3がメチル基であり、mが0〜2であり、nが0であるものが、溶解性に優れ低粘度であるため好ましい。
【0022】
本発明に使用される(b)成分であるジフェニルメタン化合物の具体例としては、下記の化合物A〜Lが挙げられる。尚、これらのジフェニルメタン化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
【化4】

【0024】
これらのジフェニルメタン化合物の中でも、化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dが、溶解性及び高沸点を維持しつつ粘度を下げる効果が特に優れているため好ましい。
【0025】
本発明の溶剤組成物は、(a)成分である炭素縮合環二環化合物及び(b)成分であるジフェニルメタン化合物を含有してなるものであるが、それぞれの使用量は、(a)成分が0.1〜99.9質量%、特に30〜95質量%、(b)成分が0.1〜99.9質量%、特に5〜95質量%であることが好ましい。(a)成分及び(b)成分が0.1質量%未満では、溶解性が不十分となりやすい。
また、本発明の溶剤組成物においては、(a)成分である炭素縮合環二環化合物及び(b)成分であるジフェニルメタン化合物の合計含有量が、本発明の溶剤組成物中、50〜100質量%であることが好ましく、75〜100質量%であることが更に好ましく、(a)炭素縮合環二環化合物の含有量が、(a)炭素縮合環二環化合物及び(b)ジフェニルメタン化合物の合計含有量に対して20質量%以上であるのが好ましく、30質量%以上70質量%以下であるのが更に好ましい。
【0026】
また、本発明の溶剤組成物は、溶質が溶剤に溶解しやすく膜面が均質になるので、20〜30℃における粘度が4mPa・s以下であることが好ましく、3〜4mPa・sであることがより好ましい。尚、上記粘度は、E型粘度計を用いて測定する。
【0027】
また、本発明の溶剤組成物は、溶剤が揮発しにくく膜面がムラになりにくいので、1気圧における沸点が250℃以上であることが好ましく、250〜265℃であることがより好ましい。
【0028】
本発明の溶剤組成物は、水及び/又は他の有機溶剤を混合して使用することができる。
他の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、3−メチルブタノール、メチルイソブチルカルビノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、ノナノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ナフチルアルコール、フッ素化アルコール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセルソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セルソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセルソルブ)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;ピロリドン、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、ベンゾフラン、ジオキサン等のヘテロ複素環式化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;ジベンジルエーテル、アニソール等のエーテル類;ニトロエタン、ニトロメタン等のニトロ化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等 のエーテルエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン、ジヘキシルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、メシチレン、ベンジルトルエン等の芳香族炭化水素;デカリン、アルキルデカリン、テトラリン等の縮合環炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、アルキルシクロヘキサン、アルキルシクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
本発明における水及び/又は他の有機溶剤の使用量は、0〜10質量%、特に0〜5質量%であることが好ましい。
【0029】
以上説明した本発明の溶剤組成物は、各種塗料、各種接着剤、オフセットインク、平版インク、凸版インク、特殊インク、グラビア印刷インク、ボールペンインク、インクジェット印刷インク等の各種インク、各種コーティング材料等の用途に使用することができる。
【0030】
本発明の溶剤組成物を塗料、接着剤、インク、コーティング材料等に使用する際には、バインダーとなる種々の高分子材料を併用することができる。該高分子材料としては、例えば、ロジン、セラック、コーパル、ダンマル、ギルソナイト、ゼイン、セルロース等の天然樹脂及びその誘導体;天然ゴム;各種油脂類;アクリル樹脂(ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ノボラック樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、キシレン樹脂、ケトン樹脂、クロマン・インデン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール、塩素化ポリプロピレン、スチレン樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、塩化ゴム、環化ゴム等の合成ゴム等が挙げられる。
【0031】
また、本発明の溶剤組成物を塗料、接着剤、インク、コーティング材料等に使用する際には、各種の充填剤及び/又は顔料を併用することができる。該充填剤及び該顔料としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース、ケイ砂、セメント、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、ベントナイト、タルク、シリカ、微粉末シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、瀝青物質、有機顔料等が挙げられる。
【0032】
また、本発明の溶剤組成物を塗料、接着剤、インク、コーティング材料等に使用する際には、各種界面活性剤と組み合わせて使用することができる。該界面活性剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性、高分子系或いは反応性界面活性剤の何れも使用することができる。
【0033】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂 肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。
【0034】
また、上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンポリプロピレン共重合体、ラウリルエーテルエチレンオキサイド付加物、セチルエーテルエチレンオキサイド付加物、ステアリルエーテルエチレンオキサイド付加物、オレイルエーテルエチレンオキサイド付加物、オクチルフェニルエーテルエチレンオキサイド付加物、ノニルフェニルエーテルエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノラウレートエチレンオキサイド付加物、ソルビタンモノパルミテートエチレンオキサイド付加物、ソルビタンモノステアレートエチレンオキサイド付加物、ソルビタントリステアレートエチレンオキサイド付加物、ソルビタンモノオレートエチレンオキサイド付加物、 ソルビタントリオレートエチレンオキサイド付加物、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレン アルキルアミン、ひまし油エチレンオキサイド付加物、硬化ひまし油エチレンオキサイド付加物或いはこれらをポリイソシアネート化合物で縮合した縮合物等 が挙げられる。
【0035】
また、上記カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1〜3級アミン塩;ピリジニウム塩;第四級アンモニム塩等が挙げられる。
【0036】
また、上記両イオン性界面活性剤としては、ベタイン型、硫酸エステル型、スルホン酸型等の両イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
また、上記高分子系界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコール;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;これらの重合体の構成単位である重合性単量体の二種以上の共重合体又は他の単量体との共重合体等が挙げられる。また、クラウンエーテル類等の相間移動触媒と称されるものも界面活性を示すものとして有用である。
【0038】
また、上記反応性界面活性剤としては、分子内に不飽和単量体と共重合し得る不飽和結合を有するものであれば、ノニオン系、アニオン系或いはカチオン系を問わず使用することができる。
【0039】
また、本発明の溶剤組成物を塗料、接着剤、インク、コーティング材料等に使用する際には、可塑剤を併用することができる。該可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸ジオクチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、セバチン酸ジブチル、セバチン酸ジオクチル、エポキシ化動植物油、エポキシ化脂肪酸エステル、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。
【0040】
また、本発明の溶剤組成物を塗料、接着剤、インク、コーティング材料等に使用する際には、更に必要に応じて、防錆剤、防腐剤、消泡剤、安定剤、酸化防止剤、増粘剤等の添加剤を配合することもできる。
【0041】
また、本発明の溶剤組成物を使用した塗料、接着剤、インク、コーティング材料等は、種々の基材に適用することができる。該基材としては、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニル、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、シクロオレフィンポリマー、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂等の高分子材料;ガラス、セラミック等の無機材料等が挙げられる。
【0042】
本発明の溶剤組成物は、更に、従来の印刷技術を応用した光学記録材料、有機EL素子、電界効果トランジスタ、薄膜太陽電池等の電子デバイスの製造においても、各種有機化合物を溶解させる溶剤として活用することができる。
【0043】
上記光学記録材料は、光メモリー色素含む色素層、PC基盤、反射膜等から構成されるものである。該光メモリー色素としては、例えば、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、ピコリン系色素、アゾ系色素、フェノチアジン系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、スクアリリウム系色素、アズレニウム系色素、インドフェノール系色素、インドアニリン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノン系色素、アントラキノン系色素、アミニウム系色素、ジインモニウム系色素、金属錯塩系色素等が挙げられる。
【0044】
上記有機EL素子は、発光材料を含む発光層、基板、ITO陽極、正孔注入層、正孔導電層、電子輸送層、AI陰極等から構成されるものである。該発光材料としては、例えば、フルオレン系誘導体、パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、ピラン系色素、アンスロン系色素、ポルフィレン系色素、キナクドリン系色素、N,N'−ジアルキル置換キナクドリン系色素、ナフタルイミド系色素、N,N'−ジアリール置換ピロロピロール系色素等が挙げられる。
【0045】
上記電界効果トランジスタは、有機半導体材料を含む半導体層、絶縁層、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極等から構成されるものである。該有機半導体材料としては、例えば、N,N'−ジアルキルペリレン−3,4,9−10−テトラカルボン酸ジイミド等のペリレン系顔料、ナフタレン−1,4,5,8−テト ラカルボン酸ジイミド類、各種金属フタロシアニン類、ニトロフルオレノン類、置換フルオレン・マロンニトリル付加物、ハロゲン化アントアントロン類、トリ(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム、並びにこれらを含有するオリゴマー及びポリマー等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の溶剤組成物は、プリント基板や液晶セル等に用いられるロジン系ハンダフラックスの除去や、電子部品や精密機械の固体表面、例えば、精密部品の金属部分及び精密部品の組立工程に使用される冶工具等の電子部品の金属部分や腐蝕加工部品(例えば、プリント配線、集積回路、シャドーマスク)等の固体表面に存在する油等の有機物を主体とする汚れの除去等に使用する洗浄剤としても使用することができる。
【0047】
本発明の溶剤組成物を洗浄剤として使用する場合には、界面活性剤を組み合わせて使用することができる。該界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、両イオン系、ノニオン系の何れも使用することができるが、洗浄面への影響からノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0048】
また、洗浄剤として使用する場合には、更に必要に応じて、クエン酸、酒石酸、フタル酸等の有機酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン;防錆剤、防腐剤、消泡剤、安定剤、酸化防止剤等を配合することもできる。
【0049】
また、洗浄方法は、浸漬法、超音波洗浄法、揺動法、スプレー法、蒸気洗浄法、手拭法、水置換乾燥法等の種々の洗浄方法を適用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例等を示して本発明の溶剤組成物を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。
【0051】
〔実施例1〜14〕
〔表1〕に示した配合にて溶剤組成物S1〜S14をそれぞれ作製した。ただし、化合物の含有量は質量%を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
〔比較例1〜16〕
〔表2〕に示した配合にて溶剤組成物HS14〜HS29をそれぞれ作製した。ただし、化合物の含有量は質量%を示す。
【0054】
【表2】

【0055】
【化5】

【0056】
〔評価例〕
上記の実施例及び比較例により得られた溶剤組成物について、以下の評価及び測定を実施した。
【0057】
(臭気評価)
被験者10名による官能試験で、○:ほとんど臭気なし、△:臭気あり、×:強い臭気あり、の3段階にて評価した。
【0058】
(溶解性評価)
上記溶剤組成物98質量部に、〔表3〕及び〔表4〕に示した溶質(表3の注釈に記載の有機化合物)を2質量部加えて室温で1時間撹拌した後、溶解性を観察し、○:完全に溶解した、△:50℃で1時間撹拌した後完全に溶解した、×:不溶物が認められた、の3段階にて評価した。尚、○→×は、溶液を室温で3日間放置した時に溶解性の評価が○から×に経時変化したことを表す。
【0059】
(塗膜性評価)
上記溶解性評価において調製した溶液のうち溶質として6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンを含有するものを、厚さ0.7mmの透明ガラス基板上にスクリーン印刷機(ミノグループ製;WHT刷台3号)で印刷後、減圧下135℃で乾燥を行った。室温まで冷却後、膜面が均質であれば○、一部ムラがあれば△、全面的にムラ或いは結晶があれば×の3段階にて評価した。
【0060】
(粘度及び沸点測定)
上記溶剤組成物について、E型粘度計で20℃における粘度及び1気圧における沸点を測定した。
【0061】
(接触角測定)
中性洗剤で洗浄した後、超純水ですすいで乾燥したガラス(松浪硝子工業(株)製;MICRO SLIDE GLASS S 1226)上に、上記溶剤組成物を10μL滴下し、協和界面科学(株)製CONTACT−ANGLE METER CA−Dを用いて接触角を測定した。測定時の気温は22〜25℃、湿度は50〜70%であった。接触角は、6回測定し、最大値及び最小値を除いた値の平均値とした(単位;°)。
尚、接触角が20°を超える場合には塗付が困難となり、15°以下である場合にはとりわけ塗布が良好となる。
【0062】
これらの評価結果及び測定結果を〔表3〕〜〔表5〕に示した。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
〔表3〕及び〔表4〕より明らかなように、比較化合物No.13及びNo.14、比較化合物J〜N並びにクロロベンゼンを用いた場合、或いは溶剤として炭素縮合環二環化合物単独で用いた場合は、溶解性が低いか、或いは均一に製膜できず塗膜性に劣るものである(比較例1〜16)。これに対し、特定の炭素縮合環二環化合物及び特定のジフェニルメタン化合物を含有してなる本発明の溶剤組成物は、各種有機化合物の溶解性に優れ、均一に製膜できるため塗膜性にも優れたものである(実施例1〜14)。
【0067】
また、〔表5〕より明らかなように、溶剤として炭素縮合環二環化合物単独で用いた場合或いは比較化合物No.13を用いた場合は、接触角は小さいものの沸点が低いため溶剤が揮発しやすく、膜面がムラになりやすいので塗膜性、基板に対するヌレ性に劣る(比較例1及び12)。逆に、比較化合物J或いはMを用いた場合、沸点は高いものの接触角が高く、均質な膜ができず製膜性に劣る(比較例5及び8)。
これに対し、特定の炭素縮合環二環化合物及び特定のジフェニルメタン化合物を含有してなる本発明の溶剤組成物は、接触角が小さく、粘度が低く沸点が高いため溶剤が揮発しにくく、膜面が均質になるので塗膜性及び製膜性に優れたものである(実施例1、9〜12及び14)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(I)で表される炭素縮合環二環化合物、及び(b)下記一般式(II)で表されるジフェニルメタン化合物を含有してなることを特徴とする溶剤組成物。
【化1】

(式中、環Aはベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、分岐を有してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基である置換基を表し、置換基の位置は任意であり、pは0〜4の整数であり、qは、環Aがベンゼン環のとき0〜4の整数であり、環Aがシクロヘキサン環のとき0〜8の整数である。)
【化2】

(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、分岐を有してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基である置換基を表し、置換基の位置は任意であり、m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数である。)
【請求項2】
(a)炭素縮合環二環化合物の含有量が、(a)炭素縮合環二環化合物及び(b)ジフェニルメタン化合物の合計含有量に対して20質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の溶剤組成物。
【請求項3】
(a)炭素縮合環二環化合物の含有量が、(a)炭素縮合環二環化合物及び(b)ジフェニルメタン化合物の合計含有量に対して30質量%以上70質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の溶剤組成物。
【請求項4】
20℃における粘度が4mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の溶剤組成物。
【請求項5】
1気圧における沸点が250℃以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の溶剤組成物。

【公開番号】特開2010−265395(P2010−265395A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118415(P2009−118415)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】