溶媒に安定なチント処理された真珠光沢をもつフィルム
本発明によれば、実質的に平行な層の芯を含んで成り、交互に存在する該層の一つは第1の重合体を含んで成り、他の層は第2の重合体を含んで成り、該層の少なくとも一つは有機顔料を含んでいることを特徴とする着色した真珠光沢をもつフィルムが提供される。本発明の着色した真珠光沢をもつフィルムは光沢材のような装飾の用途に有利に使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
屈折率が異なった少なくとも2種の重合体の層を交互に含む多層重合体フィルムは、個々の層が特許文献1および2に記載されているように適切な厚さをもっている場合には、真珠光沢を呈する(イリデッセント(iridescent))。真珠光沢をもった色は光の干渉現象によって生じる。光学的な芯は交互に存在する重合体の層を含んで成っている。芯の外側にある層は表皮層として知られており、芯の層と同じかまたは異なった重合体からつくられていることができる。
【0002】
真珠光沢をもったフィルムの層にチント(tint)を混入してその反射光および透過光を変化または増強させる方法は特許文献1に記載されており、この場合チント効果を得るために有機染料だけを使用できることが示唆されている。チント処理(チントを加えて薄い色合いを付ける処理)された真珠光沢をもつフィルムに対する一つの望ましい用途は、ネイルラッカーの中に混入するためのチント処理された真珠光沢をもつ光沢材(glitter)としての用途であった。ネイルラッカーは酢酸ブチルのような溶媒を含んでいるから、チント処理を行った真珠光沢をもつ光沢材、従ってそれをつくるのに使用されるフィルムは、溶媒の中で不安定であってフィルムまたは光沢材から浸出する染料を含むことはできない。不幸にして、市販品の一つであるポリブチレンテレフタレート(以後「PBT」と言う)およびポリエチレンビニルアセテート(以後「EVA」という)の226枚の交互の層から成るチント処理された真珠光沢をもつフィルムの中のC.I.Solvent Red 135染料は、酢酸ブチルに露出させるとフィルムから溶媒の中へ浸出し、フィルムはもはや色をもたなくなる。下記の対照例A参照。さらに、市販品の一つであるポリエチレンテレフタレート(以後「PET」と言う)およびポリメチルメタクリレート(以後「PMMA」という)の115枚の交互の層から成るチント処理された真珠光沢をもつフィルムの中の染料も、酢酸ブチルに露出させるとフィルムから溶媒の中へと浸出し、フィルムはもはや色をもたなくなる。また、この重合体層は膨潤し、従ってフィルムは真珠光沢を失う。下記対照例B参照。同様に、市販品のPETおよびPMMAの226枚の交互の層から成るチント処理された真珠光沢をもつフィルム中の染料は、酢酸ブチルに露出させるとフィルムから溶媒の中へ浸出し、フィルムはもはや色をもたなくなる。またこの重合体層は膨潤し、従ってフィルムは真珠光沢を失う。下記対照例C参照。同様に市販品のPETおよびPMMAの226枚の交互の層から成るチント処理された真珠光沢をもつフィルム中の染料は、酢酸ブチルに露出させるとフィルムから溶媒の中へと浸出し、フィルムはもはや色をもたなくなる。下記対照例D参照。このようにチント処理された真珠光沢をもつフィルムに対する用途は限られている。
【0003】
一般に、顔料は大きな分子構造をもち、光学的な芯を破壊する可能性があるため微小な層から成る光学フィルムには使用できないと考えられていた。特許文献1の背景技術の部分には、顔料を真珠光沢をもったフィルムの中に混入する試みが論じられている。一次的な色に対しては光学的な芯の層は0.03〜0.2μである。これらの厚さは、通常の顔料粒子の大きさである0.3μまたはそれ以上よりも小さい。これらの大きな顔料粒子をフィルムの内側の層の中に混入した場合、これらの粒子は層の物理的構造を乱し、その結果真珠光沢が失われる。しかし、大きさが小さい顔料粒子を使用した場合、これらの粒子は凝集して大きな粒子をつくり、同様な色の消失を生じる。凝集が起こらなかった場合、顔料の寄与は不適切であり、真珠光沢が圧倒的に強くなり、フィルムはあたかも顔料が加えられていないように見えるであろう。この濃度を越えると、充填量が多すぎ、注型してフィルムにするために樹脂をのばす(draw down)ことができなくなることが見出だされた。これらの問題を克服する試みの中で、厚さ3〜7μの表皮層の中に顔料が混入されたが、同じ問題が見られ、色が失われ、或いはフィルムの押出しが不安定になった
。
【0004】
このような市販のチント処理された真珠光沢をもつフィルムの限界のために、ネイルラッカーの製造業者、販売業者、および使用者は、着色した真珠光沢をもつ光沢材を含むネイルラッカーを望んでおり、従ってそれをつくるための着色した真珠光沢をもつフィルムが必要とされている。
【特許文献1】共通の譲渡人に対する米国特許第5,451,449号明細書。
【特許文献2】共通の譲渡人に対する米国特許第5,837,359号明細書。
【0005】
本発明の概要
工業界の必要に応じ、本発明によれば実質的に平行な層から成る構造を具備した着色した真珠光沢をもつフィルムであって、交互に存在する一つの層は第1の重合体を含んで成り、他の層は第2の重合体を含んで成り、該層の少なくとも一つは顔料を含んでいるフィルムが提供される。本発明においては、或る種の有機顔料は、特定の重合体の中に混入した後、重合体の加工性を損なうことなく押出しを行い得ることが見出だされた。これらの顔料は、標準的な着色剤に比べて強い色をもち且つ有機溶媒に露出した際の安定性が著しく改善された真珠光沢をもつフィルムを生成した。
【0006】
また本発明によれば、実質的に平行な層の構造を具備した着色した真珠光沢をもつフィルムであって、交互に存在する該層の一つは第1の重合体を含んで成り、他の層は第2の重合体を含んで成り、これらの層の少なくとも一つは顔料を含んでいるフィルムから構成された光沢材が提供される。
【0007】
また本発明によれば、実質的に平行な層の構造を具備した着色した真珠光沢をもつフィルムであって、交互に存在する該層の一つは第1の重合体を含んで成り、他の層は第2の重合体を含んで成り、これらの層の少なくとも一つは顔料を含んでいるフィルムから構成された光沢材を含んだナイルラッカーが提供される。
【0008】
本発明の詳細な説明
本明細書において使用される「着色した真珠光沢をもつフィルム(colored iridescent film)」と言う言葉は酢酸ブチルに露出した際、フィルムが着色し且つ真珠光沢をもったままであることを意味する。
【0009】
顔料:
好適な顔料には、カーボンブラック、無機塩、および錯体の有機分子、例えばフタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、およびアゾ化合物、例えば共通の譲渡人に対する米国特許第5,669,967号明細書;同第5,746,821号明細書;同第5,677,435号明細書;および同第5,747,571号明細書記載の化合物が含まれる。これらの特許は必要に応じ引用により本明細書に包含される。
【0010】
一具体化例においては、好適なアゾ顔料は下記式Iで特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成っている。
【0011】
【化1】
【0012】
ここでXはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基;Yはヒドロカルビル、ハロゲン、またはヒドロカルビルオキシ基であり;Arは下記式II
【0013】
【化2】
【0014】
によって特徴付けられる基であり、ここでAはハロゲンであり;各Zは独立に−COOHまたは−SO3H基、またはこのような基の塩であり;mは1または2;各Rは独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル基、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;nは0、1、または2である。
【0015】
これらのアゾ染料は、最初少なくとも1種の酸基またはそれらのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を含む本発明に使用するのに適した1種またはそれ以上の芳香族アミンをジアゾ化してジアゾニウム成分をつくり、その後このジアゾニウム成分を本発明に使用するのに適したピラゾロン・カップリング剤を含んで成るカップリング成分とカップリングさせて所望の染料をつくることによって製造される。
【0016】
本発明の目的に適した芳香族アミンは下記式IIIによって特徴付けられる化合物である。
【0017】
【化3】
【0018】
ここでAはハロゲン基であり;各Rは独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸エステル、またはニトロ基であり;nは0、1、または2に等しく、各Zは独立に−COOHまたは−SO3H基であるかまたはこのような基の塩であり;mは1または2に等しい。
【0019】
本明細書に使用される「ヒドロカルビル」という言葉は、これらの基の炭化水素特性に実質的に影響を与えない置換基、例えばエーテル、エステル、ニトロ、またはハロゲンを含むことができる炭化水素基を含むものとする。
【0020】
本発明に使用するのに適した芳香族アミンはパラ置換ハロゲン基をもち、それぞれ独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸エステル、またはニトロ基である基Rを0、1または2個含んでいることができる。ハロゲン基は任意のハロゲンであることができるが、塩素または臭素が一般的に使用され、塩素が最も好適なハロゲン置換基の例である。ヒドロカルビル基は独立にアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルカリール基であることができる。例えばRが置換基をもたないアリール基である場合、芳香族アミンはビフェニルアミンである。Rがアルキルの場合、アルキル基は一般に1〜4個の炭素原子を含んでいるであろう。本明細で使用される「低級アルキル」という言葉は炭素数1〜4のアルキル基を意味する。Rがヒドロカルビルオキシ基である場合、ヒドロカルビル部分は上記に説明した任意のヒドロカルビル基であることができるが、ヒドロカルビルオキシ基は一般に炭素数1〜4個またはそれ以上のアルコキシ基である。好適な基Rはメチル、エチル、およびクロロ基である。
【0021】
適切な芳香族アミンはまた1個または2個の酸基−COOHおよび−SO3H、またはその塩を含んでいる。一好適具体化例においては芳香族アミンは−SO3H基またはその塩を含んでいる。好ましくはこれらの酸基はアミン基に隣接している(オルト位にある)。
【0022】
Zがスルフォン酸基でありmが1の芳香族アミンの例には、2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼン−1−スルフォン酸;2−アミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼン−1−スルフォン酸;2−アミノ−5−クロロベンゼン−1−スルフォン酸;2−アミノ−4,5−ジクロロベンゼン−1−スルフォン酸;2−アミノ−5−ブロモ−4−エチルベンゼン−1−スルフォン酸等が含まれる。
【0023】
Zがカルボン酸酸基でありmが1の芳香族アミンの例には、2−アミノ−5−クロロ−4−メトキシ安息香酸;2−アミノ−5−クロロ−4−メチル安息香酸等が含まれる。スルフォン酸およびカルボン酸を置換した芳香族アミンはそれ自身として或いはその塩として使用することができる。好適な塩の例にはアルカリ金属塩、例えばナトリウムおよびカリウム塩が含まれる。任意の芳香族アミンの2種またはそれ以上の混合物も使用することができる。
【0024】
芳香族アミンのジアゾ化は、アルカリ金属のニトリルまたは低級アルキルのニトリルを適切な強酸、例えば鉱酸と一緒に用いて当業界の専門家に公知の方法で行うことができる。有用な鉱酸の例には塩酸および硫酸が含まれる。硫酸ニトロシルも使用することができる。ジアゾ化反応は約−20〜+30℃、好ましくは0〜20℃の範囲の温度で行うことができる。必要なことではないが、いくつかのジアゾ化反応(およびそれに続くカップリング反応)には表面活性剤、例えば非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性の表面活性剤、並びに随時適当な有機溶媒、例えば氷酢酸、低級アルカノール、ジオキサン、フォルムアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ピリジンまたはN−メチルピロリドンを含ませることが有利である。
【0025】
本発明の目的に有用なピラゾロン・カップリング剤は下記式IVによって表される。
【0026】
【化4】
【0027】
ここで、Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基であり;Yはヒドロカルビル、ハロゲン、またはヒドロカルビルオキシ基である。ヒドロカルビルオキシ基は一般に1〜最大約4個の炭素原子を含んでいる。典型的にはXは炭素数1〜2の低級アルキル基であり、好ましくはエチル基である。有用なX基はまた炭素数1〜2のアルコールのカルボン酸エステル、好ましくはエチルエステル基である。他の有用なX基はアリール基、好ましくはフェニル基である。
【0028】
典型的にはYは低級アルキルまたはハロゲン基である。ハロゲン基は任意のハロゲンであることができるが、一般に塩素および臭素が好適であり、塩素が最も好適なハロゲン置換基の例である。通常低級アルキル基は1個または2個の炭素原子を含み、メチル基が好適な置換基である。Yがメチル基の場合が特に有用な具体化例である。
【0029】
本発明に有用なピラゾロン・カップリング剤の例には1−(2’−メチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’−クロロフェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’−メトキシフェニル)−3−メトキシ−5−ピラゾロン、1−(2’−メチルフェニル)−3−カルボエトキシ−5−ピラゾロン等が含まれる。
【0030】
有用なカップリング反応は、カップリング成分にジアゾニウム成分を加えることによって行うことができるが、ジアゾニウム成分にカップリング成分を加えることもできる。カップリングは一般に約−20℃〜約80℃、好ましくは約20〜約65℃の温度で行われる。ジアゾ化反応の場合と同様に、カップリングは適当な表面活性剤または有機溶媒、例えばジアゾ化反応の所で説明したすべての表面活性剤または溶媒を存在させて行うことができる。
【0031】
カップリング成分は塩基性の溶液、例えばアルカリ金属の水酸化物の水溶液に溶解し、酢酸のような希酸を使用して再沈澱させることができる。
【0032】
一般にジアゾニウム成分は化学量論的に僅かに過剰なカップリング成分とカップリングさせる。即ちジアゾニウム成分1当量を1当量より僅かに多い量のカップリング成分とカップリングさせる。
【0033】
カップリングが完了する前、その途中、または後において、或いは下記に説明する金属化の反応を行った後に、アルカリに可溶な樹脂状の生成物を加えることにより本発明の顔料の分散性を改善することができる。この目的に種々の樹脂状の材料を加えることができ、その中には例えばロジン樹脂、重合したロジン、樹脂石鹸、化学的に変性されたロジン樹脂、例えばロジン−マレイネート樹脂、アルキッド樹脂、および高い酸価をもった他の合成炭化水素樹脂、或いはこれらの樹脂の組合せが含まれる。これらの樹脂は、塩をつくり得る遊離のカルボキシル基をもった生成物の中に存在するか、或いは部分的にまたは完全に例えばアルカリ金属イオンとの塩の形で存在することができる。また、微粉末の不溶性材料、例えばアルカリ土類金属の硫酸塩または炭酸塩、二酸化チタン、または粘土材料、或いは微粉末の有機プラスティックス材料の存在下においてカップリング反応を行うことも有利である。
【0034】
上記カップリング反応でつくられたアゾ染料組成物を、スルフォン酸塩またはカルボン酸酸塩を生じる2価の金属塩によって金属化することができる。これはまたレーキング(laking)として知られ、アゾ顔料を生じる。この金属塩はアルカリ土類金属、マンガン、ニッケルまたは亜鉛、或いはこれらの金属の2種以上の混合物の塩でることができる。アルカリ土類金属の塩が好適である。この目的にはSrCl2およびCaCl2のようなアルカリ土類金属の塩が特に有用である。金属化は、存在するすべてのジアゾニウム成分のカップリングが完了した後に染料に金属塩を加えるか、或いはジアゾニウム成分の中に金属塩を含ませ染料が生じる際に金属化を起こさせるようにして行うことが好ましい。
【0035】
大部分の用途においては、十分な明度と着色強度(tincotorial strength)を得るためにアゾ顔料を加熱することが望ましい。例えば上記の樹脂石鹸または他の可溶性の樹脂を存在させ、圧力をかけて100℃より高い温度において約1〜3時間の間金属化の生成物を還流温度に加熱することができる。
【0036】
金属化完了後、濾過によって水をベースにした反応スラリからアゾ顔料を回収して顔料のプレスケーキをつくり、これを高温(例えば40〜60℃)の水で洗滌してカップリング反応で生じた過剰の酸、塩基、および塩を除去する。典型的にはプレスケーキを約10〜20倍の容積の高温水で洗滌する。一般に濾液が塩素イオンの試験に対して僅かに陽性を示すようになるまでフィルターケーキを洗滌する。洗滌したプレスケーキを乾燥し、粉砕し、粗いまたは細かい粉末の形で使用する。別法として、本発明のアゾ顔料を含油性の媒体の中に分散させてフラッシュ基質(flushed base)をつくるか、或いは水性の媒質に分散させて水性の分散物にすることができる。
【0037】
他の具体化例においては、好適なアゾ顔料は下記式Vで特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成っている。
【0038】
【化5】
【0039】
ここでArは酸またはその塩である少なくとも1個の置換基をもった芳香族部分;Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基であり;各Yは独立にヒドロカルビル、ハロゲン、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;aは1、2または3である。
【0040】
これらのアゾ染料は、少なくとも1個の酸基またはそのアルカリ塩またはアンモニウム塩を含む1種またはそれ以上の芳香族アミンを先ずジアゾ化してジアゾニウム成分をつくり、次いでこのジアゾニウム成分をピラゾロン・カップリング剤とカップリングさせて所望の染料をつくることにより製造される。
【0041】
多様な種類の適当な芳香族アミンを使用することができる。1級芳香族アミンの芳香族部分(Ar)が少なくとも1個の置換した酸基、またはそのアルカリ塩またはアンモニウム塩を含んでいる場合、このような殆どの芳香族アミンを用いることができる。芳香族アミンは1分子当たり最大4個またはそれ以上のアミン基を含むモノアミンまたはポリアミンであることができる。従ってこのようなアミンから誘導されるジアゾニウム成分は1個のジアゾニウム基(モノ−ジアゾニウム)、2個のジアゾニウム基(ビス−ジアゾニウム)、3個のジアゾニウム基(トリス−ジアゾニウム)などを含んでいることができる。芳香族アミンは単環式のアミン、例えばアニリンおよびその誘導体、または二環式アミン、例えばナフチルアミンであることができる。芳香族アミンはまたビフェニルアミン、またはアミノビフェニルのようなポリアミン、ベンジジン、および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラミンであることができる。
【0042】
好ましくは、芳香族アミンは下記式VIで特徴付けられる1級芳香族アミンである。
【0043】
【化6】
【0044】
ここで、各Rは独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、またはスルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;nは0、1または2であり;各Zは独立に−COOHまたは−SO3H基、またはこれらの基の塩であり;mは1または2である。ここでイミダゾロン基は式−NH−C−NH−で表され、芳香環と一緒になった場合、窒素原子は隣接した炭素と結合して5員環をつくるものと了解されたい。本明細書および特許請求の範囲に使用される「ヒドロカルビル」と言う言葉は、これらの基の炭化水素特性に実質的に影響を与えない例えばエーテル、エステル、ニトロまたはハロゲンのような置換基を含み得る炭化水素を含むものとする。
【0045】
上記式VIで特徴付けられる芳香族アミンは0、1、または2個のR基を含んでいることができる、ここで基Rは互いに独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基である。ハロゲン基は任意のハロゲンであることができるが、一般に塩素および臭素が好適であり、塩素が最も好適なハロゲン置換基の例である。ヒドロカルビル基は独立にアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルカリール基であることができる。例えば、もしRが置換基をもたないアリール基である場合、芳香族アミンはビフェニルアミンである。Rがアルキル基である場合、アルキル基は一般に1〜4個の炭素原子を含んでいるであろう。本明細書においては「低級アルキル」は1個ないし最大4個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。Rがヒドロカルビルオキシ基である場合、ヒドロカルビル部分は上記に説明したヒドロカルビル基であるが、ヒドロカルビルオキシ基は一般に1〜約4個またはそれ以上の炭素原子を含むアルコキシ基である。好ましくは基Rはメチル、エチルおよびクロロ基である。
【0046】
上記式VIで特徴付けられる芳香族アミンはまた−COOHおよび−SO3Hの酸基またはそれらの塩を1個または2個を含んでいる。一好適具体化例においては、上記式VIの芳香族アミンは1個の−SO3H基を含んでいる。
【0047】
Zがスルフォン酸基でありmが1の式VIで特徴付けられる芳香族アミンの例には、
2−アミノベンゼン−1−スルフォン酸、4−アミノベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−5−メトキシベンゼン−1−スルフォン酸、3−アミノ−6−メチルベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−4−クロロ−5−メチルベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼン−1−スルフォン酸等が含まれる。
【0048】
Zがカルボン酸基でありmが1の式VIで特徴付けられる芳香族アミンの例には、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−アミノ−5−メチル安息香酸、2−アミノ−6−メチル安息香酸、3−アミノ−2−メチル安息香酸、2−アミノ−3−メトキシ安息香酸、4−アミノ−3−メトキシ安息香酸、4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシ安息香酸、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、3−アミノ−4−クロロ安息香酸等が含まれる。ベンゼンスルフォン酸および安息香酸化合物はそれ自身で、またはそれらの塩として使用することができる。好適な塩の例にはナトリウムおよびカリウム塩のようなアルカリ金属塩が含まれる。
【0049】
ジアゾニウム成分をつくる芳香族アミンは融合環式芳香族アミン化合物、例えば2−アミノナフタレン−1−スルフォン酸、4−アミノナフタレン−1−スルフォン酸等を含む種々のナフタレンから誘導される化合物であることができる。ビフェニルアミンおよびポリアミンである芳香族アミンの例には4−アミノビフェニル−3’−スルフォン酸、および4,4’−ジアミノビフェニル−2,2’−ジスルフォン酸が含まれる。任意の芳香族アミンの2種以上の混合物も本発明の範囲内に入る。
【0050】
この芳香族アミンのジアゾ化は、アルカリ金属のニトリルまたはアルキルニトリルを鉱酸のような適切な強酸と一緒に使用して、当業界の専門家に公知の方法で行うことができる。有用な鉱酸の例には、塩酸および硫酸が含まれる。ニトロシル硫酸も使用することができる。ジアゾ化反応は約−20〜+30℃、好ましくは0〜20℃の範囲の温度で行うことができる。必要なことではないが、いくつかのジアゾ化反応(およびそれに続くカップリング反応)には表面活性剤、例えば非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性の表面活性剤、並びに随時適当な有機溶媒、例えば氷酢酸、低級アルカノール、ジオキサン、フォルムアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ピリジンまたはN−メチルピロリドンを含ませることが有利である。
【0051】
本発明の目的に有用なピラゾロン・カップリング剤は下記式VIIによって表される。
【0052】
【化7】
【0053】
ここで、Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基であり;各Yは独立にヒドロカルビル、ハロゲン、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;aは1、2または3である。アルコキシ基は一般に1ないし最大約4個の炭素原子を含んでいる。典型的にはXは炭素数1個または2個の炭素原子を含むアルコールのカルボン酸エステルであり、好ましくはエチルエステル基である。
【0054】
典型的には各Yは互いに独立に低級アルキルまたはハロゲン基であることができる。ハロゲン基は任意のハロゲンであることができるが、一般に塩素および臭素が好適であり、塩素が最も好適なハロゲン置換基の例である。通常低級アルキル基は1個または2個の炭素原子を含み、メチル基が好適な置換基である。aは好ましくは1または2である。aが1でありYが4位にあるメチルの場合が特に有用な具体化例である。
【0055】
有用なピラゾロン・カップリング剤には1−(4’−メチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(4’−クロロフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(4’−メチルフェニル)−3−カルベトキシ−5−ピラゾロン等が含まれる。これらのピラゾロンの任意の2種以上の混合物も本発明の範囲内に入る。
【0056】
カップリング反応は、好ましくはカップリング成分にジアゾニウム成分を加えることによって行うことができるが、ジアゾニウム成分にカップリング成分を加えることもできる。カップリングは一般に約−20℃〜約80℃、好ましくは約20〜約65℃の温度で行われる。ジアゾ化反応の場合と同様に、カップリングは適当な表面活性剤または有機溶媒、例えばジアゾ化反応の所で説明したすべての表面活性剤または溶媒を存在させて行うことができる。
【0057】
カップリング成分は塩基性の溶液、例えばアルカリ金属の水酸化物の水溶液に溶解し、酢酸のような希酸を使用して再沈澱させることができる。
【0058】
一般にジアゾニウム成分は化学量論的に僅かに過剰なカップリング成分とカップリングさせる。即ちジアゾニウム成分1当量を1当量より僅かに多い量のカップリング成分とカップリングさせる。
【0059】
カップリングが完了する前、その途中、または後において、或いは下記に説明する金属化の反応を行った後に、アルカリに可溶な樹脂状の生成物を加えることにより、本発明の顔料の分散性を改善することができる。この目的に種々の樹脂状の材料を加えることができ、その中には例えばロジン樹脂、重合したロジン、樹脂石鹸、化学的に変性されたロジン樹脂、例えばロジン−マレイネート樹脂、アルキッド樹脂、および高い酸価をもった他の合成炭化水素樹脂、或いはこれらの樹脂の組合せが含まれる。これらの樹脂は、塩をつくり得る有利なカルボキシル基をもった生成物の中に存在するか、或いは部分的にまたは完全に例えばアルカリ金属イオンとの塩の形で存在することができる。また、微粉末の不溶性材料、例えばアルカリ土類金属の硫酸塩または炭酸塩、二酸化チタン、または粘土材料、或いは微粉末の有機プラスティックス材料の存在下においてカップリング反応を行うことも有利である。
【0060】
上記カップリング反応でつくられた組成物を、スルフォン酸塩またはカルボン酸塩を生じる2価の金属塩によって金属化することができる。これはまたレーキングとして知られ、アゾ顔料を生じる。この金属塩はアルカリ土類金属、マンガン、ニッケルまたは亜鉛、或いはこれらの金属の2種以上の混合物の塩でることができる。アルカリ土類金属の塩が好適である。この目的にはSrCl2およびCaCl2のようなアルカリ土類金属の塩が特に有用である。金属化は、存在するすべてのジアゾニウム成分のカップリングが完了した後に染料に金属塩に加えるか、或いはジアゾニウム塩の中に金属塩を含ませ染料が生じる際に金属化を起こさせるようにして行うことが好ましい。
【0061】
大部分の用途においては、十分な明度と着色強度を得るためにアゾ顔料を加熱することが望ましい。例えば上記の樹脂石鹸または他の可溶性の樹脂を存在させ、圧力をかけて100℃より高い温度において約1〜3時間の間金属化の生成物を還流温度に加熱することができる。
【0062】
金属化完了後、濾過によって水をベースにした反応スラリからアゾ顔料を回収して顔料のプレスケーキをつくり、これを高温(例えば40〜60℃)の水で洗滌してカップリング反応で生じた過剰の酸、塩基、および塩を除去する。典型的にはプレスケーキを約10〜20倍の容積の高温水で洗滌する。一般に濾液が塩素イオンの試験に対して僅かに陽性を示すようになるまでフィルターケーキを洗滌する。洗滌したプレスケーキを乾燥し、粉砕し、粗いまたは細かい粉末の形で使用する。別法として、本発明のアゾ顔料を含油性の媒体の中に分散させてフラッシュ基質をつくるか、或いは水性の媒質に分散させて水性の分散物にすることができる。
【0063】
第3の具体化例においては、他の好適なアゾ顔料は下記式VIIIによって特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成っている。
【0064】
【化8】
【0065】
ここでRおよびR1は独立に水素、クロロ、メチルまたはエチル基である。
【0066】
これらのアゾ顔料は最初1種またはそれ以上の芳香族アミンをジアゾ化し、その後でこのジアゾニウム成分をカップリング成分とカップリングさせて所望の顔料をつくることによって製造される。
【0067】
これらの好適な顔料の目的に適した芳香族アミンは下記式IXによって特徴付けられる。
【0068】
【化9】
【0069】
好適なアゾ顔料は最初本発明に使用するのに適した1種またはそれ以上の芳香族アミンをジアゾ化し、その後でこのジアゾニウム成分を本発明に使用するのに適したカップリング成分とカップリングさせ所望の顔料をつくることによって製造される。
【0070】
好適な顔料の目的に適した芳香族アミンは下記式によって特徴付けられる。
【0071】
【化10】
【0072】
ここでRおよびR1は独立に水素、クロロ、メチルまたはエチル基である。
【0073】
芳香族アミンの例は2−アミノ−4−クロロ−5−メチルベンゼンスルフォン酸、2−アミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼンスルフォン酸、2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼンスルフォン酸、および2−アミノ−5−メチルベンゼンスルフォン酸である。これらの芳香族アミンの2種以上の混合物も使用することができる。
【0074】
この芳香族アミンのジアゾ化は、アルカリ金属のニトリルまたはアルキルニトリルを鉱酸のような適切な強酸と一緒に使用して、当業界の専門家に公知の方法で行うことができる。有用な鉱酸の例には、塩酸および硫酸が含まれる。ニトロシル硫酸も使用することができる。ジアゾ化反応は約−20〜+30℃、好ましくは0〜15℃の範囲の温度で行うことができる。必要なことではないが、いくつかのジアゾ化反応(およびそれに続くカップリング反応)には表面活性剤、例えば非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性の表面活性剤、並びに随時適当な有機溶媒、例えば氷酢酸、低級アルカノール、ジオキサン、フォルムアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ピリジンまたはN−メチルピロリドンを含ませることが有利である。
【0075】
本発明のこの目的に有用なヒドロキシナフタレンスルフォン酸カップリング剤は下記式によって表される。
【0076】
【化11】
【0077】
本発明の目的に有用なヒドロキシナフタレンスルフォン酸・カップリング剤の例には、1−ナフトール−4−スルフォン酸、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルフォン酸、1−ヒドロキシナフタレン−5−スルフォン酸、1−ヒドロキシナフタレン−8−スルフォン酸、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルフォン酸等が含まれる。これらのヒドロキシナフタレンスルフォン酸・カップリング剤の任意の2種以上の混合物も使用することができる。
【0078】
本発明の目的に有用なカップリング反応は、好ましくはカップリング成分にジアゾニウム成分を加えることによって行うことができるが、ジアゾニウム成分にカップリング成分を加えることもできる。カップリングは一般に約−20℃〜約80℃、好ましくは約0〜約60℃の温度で、pH4〜12、好ましくは約5〜11において行われる。ジアゾ化反応の場合と同様に、カップリングは適当な表面活性剤または有機溶媒、例えばジアゾ化反応の所で説明したすべての表面活性剤または溶媒を存在させて行うことができる。
【0079】
一般にカップリング成分は塩基性の溶液、例えばアルカリ金属の水酸化物の水溶液に溶解し、酢酸のような希酸を使用して再沈澱させることができる。
【0080】
一般にジアゾニウム成分は化学量論的に僅かに過剰なカップリング成分とカップリングさせる。即ちジアゾニウム成分1当量を1当量より僅かに多い量のカップリング成分とカップリングさせる。
【0081】
カップリングが完了する前、その途中、または後において、或いは下記に説明する金属化の反応を行った後に、アルカリに可溶な樹脂状の生成物を加えることにより、本発明の顔料の分散性を改善することができる。この目的に種々の樹脂状の材料を加えることができ、その中には例えばロジン樹脂、重合したロジン、樹脂石鹸、化学的に変性されたロジン樹脂、例えばロジン−マレイネート樹脂、アルキッド樹脂、および高い酸価をもった他の合成炭化水素樹脂、或いはこれらの樹脂の組合せが含まれる。これらの樹脂は、塩をつくり得る有利のカルボキシル基をもった生成物の中に存在するか、或いは部分的にまたは完全に例えばアルカリ金属イオンとの塩の形で存在することができる。また、微粉末の不溶性材料、例えばアルカリ土類金属の硫酸塩または炭酸塩、二酸化チタン、または粘土材料、或いは微粉末の有機プラスティックス材料の存在下においてカップリング反応を行うことも有利である。
【0082】
上記カップリング反応でつくられた組成物を、スルフォン酸塩を生じる1種またはそれ以上のストロンチウム塩によって金属化することができる。これはまたレーキングとして知られ、アゾ顔料を生じる。この目的にはSrCl2およびSrNO3が特に有用である。金属化は、存在するすべてのジアゾニウム成分のカップリングが完了した後に染料にストロンチウム塩を加えるか、或いはジアゾニウム成分の中に金属塩を含ませ染料を生成させる際に金属化を起こさせるようにして行うことが好ましい。
【0083】
十分な明度と着色強度を得るためにアゾ顔料を加熱することが望ましい。例えば上記の樹脂石鹸または他の可溶性の樹脂を存在させ、圧力をかけて100℃より高い温度において1〜3時間の間金属化の生成物を還流温度に加熱することができる。
【0084】
金属化完了後、濾過によって水をベースにした反応スラリからアゾ顔料を回収して顔料のプレスケーキをつくり、これを水で洗滌してカップリング反応で生じた過剰の酸、塩基、および塩を除去する。典型的にはプレスケーキを約10〜20倍の容積の水で洗滌する。一般に濾液が塩素イオンの試験に対して僅かに陽性になるまでプレスケーキの洗滌を行う。洗滌したプレスケーキを乾燥し、粉砕し、粗いまたは細かい粉末の形で使用する。別法として、本発明のアゾ顔料を含油性の媒体の中に分散させてフラッシュ基質をつくるか、或いは水性の媒質に分散させて水性の分散物にすることができる。
【0085】
米国特許第5,669,967号明細書;同第5,746,821号明細書;同第5,677,435号明細書;および同第5,747,571号明細書には、その中に記載された顔料がラッカーおよび例えばポリエステルのような熱可塑性材料中の着色剤として有用であると記載されているが、重合体フィルムおよびその中に着色剤を混入することに関連した困難性、並びに溶媒安定性の必要なことについては何も述べられていない。もっと好適な顔料にはPigment Blue 29および有機顔料、例えばPigment
Violet 19、 Pigment Red 178、C.I.Pigment Red 276、C.I.Pigment Red 277、C.I.Pigment Yellow 205、C.I.Pigment Yellow 206、C.I.Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 29、Pigment Black 7、およびPigment Green 7が含まれる。最も好適な顔料は上記式I、V、およびVIIIによって特徴付けられる。Engelhard社の製品カタログ「Organic Pigments for Plastics」(2002年版)にはプラスティックスに対して有用な有機顔料が記載されているが、重合体フィルムおよびその中に着色剤を混入することに関連した困難性、並びに溶媒安定性の必要なこと
については何も述べられていない。この場合微小層が破壊されると色に衝撃を与え、従って隣接した微小層が平行に配置された性質および真珠光沢の品質を変化させる。好ましくは真珠光沢をもったフィルムの中に顔料を約0.1〜約5重量%の量で使用する。
【0086】
重合体:
「実質的に平行な層」と言う言葉は、隣接した層が一般にx−y面内に留まり、z方向への移動が最小であるか全くないことを意味する。
【0087】
本発明の第1および第2の重合体の屈折率の差は少なくとも約0.03、好ましくは少なくとも0.06であることが好適である。これらのフィルムは好ましくは少なくとも約10枚、さらに好ましくは少なくとも約35枚、最も好ましくは少なくとも約70枚の層を含んでいる。フィルムの個々の層は非常に薄く、通常は好ましくは約15〜約500ナノメーター(nm)、さらに好ましくは約50〜約400nmである。好ましくは内側の層の厚さは約15〜約200nm、外側の層の厚さは約1〜約2μの範囲である。好適な重合体にはポリエステル、ポリアクリレート、ポリエチレンビニルアセテート、およびポリスチレンが含まれる。好適なポリエステルの中にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、グリコールで変性されたポリエチレンテレフタレート、および共通の譲渡人に対する米国特許第6,475,608号に記載されたポリエチレンナフタレートが含まれる。この特許は引用により本明細書に包含される。好適なポリアクリレートにはポリメチルメタクリレートが含まれる。一つの好適なフィルムは交互に存在するポリブチレンテレフタレートとポリメチルメタクリレートの層をもっている。他の好適なフィルムはPBTとEVAの交互の層をもっている。他の好適なフィルムはポリエチレンテレフタレートとポリメチルメタクリレートまたはポリオレフィンの交互の層をもっている。他の好適なフィルムはポリスチレンとエチレンビニルアセテートの交互の層をもっている。他の好適なフィルムはポリエチレンナフタレートとポリメチルメタクリレートまたはPETの交互の層をもっている。
【0088】
多層フィルムは通常低温ロール注型法によってつくられるが、この方法では2種またはそれ以上の押出し物から得られる熱可塑性樹脂の材料の熔融物を供給ブロックによって集め、これを配置して所望の層状になったパターンにする。非常に狭い多相流を単一の多岐管の平らなダイス型に通し、同時にダイス型の幅まで層を広げ、薄くしてダイス型から出る最終的な厚さにする。層の数および層の厚さの分布は異なった供給ブロックのモジュールを用いることにより変えることができる。通常、最も外側の層、即ちシートの各側の上にある層は他の層よりも厚く、比較的厚い表皮層をつくっている。表皮をつくるのに使用される樹脂材料は光学的な芯をつくっている成分の一つであるか、或いは所望の機械的性質、熱封性または他の性質を賦与するのに用いられる異なった重合体、或いはこれらの組合せであることができる。好ましくは、本発明のフィルムは米国特許第3,801,429号記載の方法によってつくることができる。この特許は本明細書を完璧なものにするのに必要な程度において引用により本明細書に包含される。
【0089】
本発明に従えば、顔料が存在しない場合に得られる同じ特性に比べ、フィルムの少なくとも一つの反射光またはフィルムの少なくとも一つの透過光、または両方を増強または変化させるのに十分な量の顔料を一つまたはそれ以上の樹脂材料に加える。顔料は全部または全部よりも少ない光学的な芯、および/または全部または全部よりも少ない表皮層に混入することができる。従って芯の層または表皮層の少なくとも一つに混入することができる。顔料を混入する層の数および個々の層の中における顔料の濃度は所望の色効果の関数である。
【0090】
用途:
本発明は装飾用の用途に有用である。例えば本発明は何らかの方法で光沢材の粒子の大
きさを減少させることができる。これらの粒子は用途に応じ種々の大きさおよび形をもっている。粒子の大きさは非常に小さい約0.004インチからシークイン(sequin)のような大きな粒子の範囲に亙っている。形は六角形のような幾何学的な形からハート模様のような装飾的な形に亙っていることができる。本発明のフィルムを所望の大きさおよび形に切断したら、切断片をフィルターにかけて標準的な材料を取り出し、流動性を改善する処理を行なう。現存の光沢材のフィルムに伴う問題は、使用される着色剤がネイルラッカー組成物に使用されるような有機溶媒に対して安定ではなかったという点である。本発明の新規組成物に使用される有機顔料は有機溶媒に対して安定であり、得られる光沢材は有機溶媒と共に組成物に使用することができる。
【0091】
また本発明は織物に対して有用である。本発明のフィルムを先ずポリエステルフィルムに対して積層化してフィルムの引張り強さを増加させる。次に得られた積層構造物を細く縦切りして糸にする。次いでこの糸をそのまま使用するか、または繊維布に変える前に他の糸と撚り合わせる。既存の着色剤は二つの主要な側面でうまく動作しない。第1の側面はドライクリーニング用の液剤または洗剤を含む水のような溶媒に対する安定性である。既存の着色剤はフィルムから浸出し、同じ溶液の中にある他の繊維を汚す。問題となる第2の側面は光に対する露出である。既存の着色剤は模擬太陽光に露出した場合に褪色する。本発明の新規組成物に使用された有機顔料は既存の着色剤で見られるような安定性の問題を生じない。この改善により織物業界において広い範囲の着色剤が市販できるようになるであろう。
【対照例A】
【0092】
PBTおよびEVAの層を交互に同時押出しすることにより226層から成る真珠光沢をもったフィルムをつくった。フィルムをつくる前にC.I.Solvent Red 13.5染料をPBTの中に混入した。このフィルムは良好な真珠光沢および色を示した。
【0093】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、LigtninTM型の推進式混合機を備えた適当な大きさの容器の中で下記表1の成分を一緒にすることによりネイルラッカーをつくった。バッチが均一になるまで混合を続けた。
【0094】
【表1】
【0095】
ネイルラッカーの中の光沢材はその真珠光沢を保持した。しかし染料は光沢材から溶媒
の中に浸出し、従って光沢材の色はなくなった。
【対照例B】
【0096】
PETおよびPMMAの層を交互に同時押出しすることにより115層から成る真珠光沢をもったフィルムをつくった。フィルムをつくる前に染料をPETの中に混入した。このフィルムは良好な真珠光沢および色を示した。
【0097】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記対照例Aと同様にしてネイルラッカーをつくった。染料は光沢材から溶媒の中に浸出し、従って光沢材の色はなくなるか真珠光沢をなくした。光沢材中のフィルムは膨潤し、光沢材はもはや真珠光沢を示さなかった。
【対照例C】
【0098】
226層のフィルムをつくったこと以外対照例Bを繰り返した。このフィルムは良好な真珠光沢および色を示した。
【0099】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記と同様にしてネイルラッカーをつくった。染料は光沢材から溶媒の中に浸出し、従って光沢材は色がなくなるか真珠光沢をなくした。
【対照例D】
【0100】
PBTおよびPMMAの層を交互に同時押出しすることにより115層から成る真珠光沢をもったフィルムをつくった。フィルムをつくる前に染料をPBTの中に混入した。このフィルムは良好な真珠光沢および色を示した。
【0101】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記対照例Aと同様にしてネイルラッカーをつくった。染料は光沢材から溶媒の中に浸出し、従って光沢材は色がなくなるか真珠光沢をなくした。
【実施例】
【0102】
下記の製造法および実施例は本発明の組成物およびその製造法を示す。下記実施例および本明細書および特許請求の範囲において特記しない限りすべての割合は重量により、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧または大気圧に近い圧力である。
【0103】
顔料Iの製造
23.7部の2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼン−1−スルフォン酸(Ethyl C Amine)を、4部の水酸化ナトリウムを含む370部の高温(約60℃)の水に溶解し、26.0部の20°ボーメ塩酸を用いて再沈澱させ、氷を加えて0℃のスラリにし、21部の水に溶解した7.0部のナトリウムニトリルを加え、このスラリを0〜10℃で60分間撹拌することによりジアゾ化合物のスラリをつくる。
【0104】
23.0部の1−(2’−クロロフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン(OCPMP)、2.3部のスルフォン化されたひまし油のナトリウム塩、および9.6部の酢酸ナトリウムを用いてカップリング剤のスラリをつくり、このスラリを65℃に加熱する。
【0105】
ジアゾ化合物のスラリを20分間に亙りカップリング剤のスラリとカップリングさせ、この間10%の水酸化ナトリウムを加えてpHを6.0〜6.5に保ち、また温度を60〜65℃に保つ。このスラリを1時間撹拌し、分割して4つの同量のスラリIにする。
【0106】
スラリIの一つの部分(525部)に対し65℃において12.3部の無水塩化カルシ
ウム30%溶液を加える。次いでこのスラリを加熱し、30分間沸騰させ、氷で40℃より低い温度に冷却し、濾過する。フィルターケーキを洗滌し、一晩70℃で乾燥し、Osterizerの中で粉末にし、微粉末の顔料Iを得た。
【0107】
顔料IIの製造
22.2部の2−アミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼン−1−スルフォン酸(C Amine)を、4部の水酸化ナトリウムを含む390部の水に溶解し、26.0部の20°ボーメ塩酸を用いて再沈澱させ、氷を加えて0℃のスラリにし、14部の水に溶解した7.0部のナトリウムニトリルを加え、このスラリを0〜5℃で60分間撹拌するすることによりジアゾ化合物のスラリをつくる。
【0108】
4.5部の水酸化ナトリウムを含む水205部に20.7部の1−(4’−メチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン(PTMP)を約40℃で溶解し、67.5部の10%酢酸を用いてPTMPを再沈澱させ、pHを6.5に調節してカップリング剤のスラリをつくり、このスラリを60〜65℃において加熱する。
【0109】
ジアゾ化合物のスラリを20分間に亙りカップリング剤のスラリとカップリングさせ、この間10%の水酸化ナトリウムを加えてpHを6.0〜6.5に保つ。このスラリを1時間撹拌して加熱し、分割して4つの同量のスラリIIにする。
【0110】
スラリIIの一つの部分に対し40〜45℃において12.3部の無水塩化カルシウム30%溶液を加える。次いでこのスラリを加熱し、30分間沸騰させ、氷で50 ℃より低い温度に冷却し、濾過する。フィルターケーキを洗滌し、一晩70℃で乾燥し、Osterizerの中で粉末にし、微粉末の顔料IIを得た。
【0111】
顔料IIIの製造
250部の水および3.3部の水酸化ナトリウム50%溶液に、4.05部の2−アミノ−4−クロロ−5−メチルベンゼンスルフォン酸および4.3部の2−アミノ−5−クロロ−エチルベンゼンスルフォン酸の混合物を溶解する。氷を加えてこの溶液を0℃に冷却し、10.5部のナトリウムニトリル25%溶液および11部の20°ボーメ塩酸を加え、0〜1℃で30分間このスラリを撹拌することによりてジアゾ化する。スルファミン酸を用いて過剰のニトリルの反応を停止させる。少量の発泡防止剤を用いて発泡を抑制する。
【0112】
2−ヒドロキシ−ナフタレン−6−スルフォン酸のカリウム塩(Schaefferの塩)10部を200部の水および3部の50%水酸化ナトリウムの中に加熱して溶解し、氷を用いて20℃に冷却してカップリング剤のスラリをつくる。
【0113】
ジアゾ化合物のスラリをカップリング剤のスラリの中に加え、10〜15分間に亙りカップリングさせる。水酸化ナトリウム10%溶液を加えてスラリのpHを9.8〜10に上昇させる。この混合物を40分間撹拌し、約1℃/分の割合で加熱する。40部の硝酸ナトリウム30%溶液を約30分間に亙って加え、この間バッチの温度を45〜50℃に保つ。次にスラリを加熱して25分間沸騰させる。次に氷でスラリを45℃より低い温度に冷却し、濾過する。フィルターケーキを水で洗滌し、一晩70℃で乾燥させ、粉砕して粉末の顔料IIIを得る。
【0114】
顔料IVの製造
上記顔料IIIの製造法を繰り返したが、4.05部の2−アミノ−4−クロロ−5−メチルベンゼンスルフォン酸および4.3部の2−アミノ−5−クロロ−エチルベンゼンスルフォン酸の混合物の代わりに2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼンスルフォ
ン酸(7.6部)および2−アミノナフタレン−1−スルフォン酸(1部)の混合物を用いた。
【本発明の実施例1】
【0115】
PBTおよびEVAの層を交互に同時押出しして226層の真珠光沢をもったフィルムをつくった。フィルムをつくる前に上記顔料IをPBTに混入した。最終的なフィルムは厚さが0.014インチであった。それぞれの内側のPBT層はほぼ同じ厚さをもち、それぞれの内部のEVA層もほぼ同じ厚さをもっていた。図1にこの226層から成る真珠光沢をもったフィルムの7枚の内部層の断面を示す。このフィルムは良好な真珠光沢(赤黄色)および色(薄く着色した黄色)を示した。
【0116】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、LigtninTM型の推進式混合機を備えた適当な大きさの容器の中で下記表2の成分を組合せることによってネイルラッカー組成物をつくった。バッチが均一になるまで混合を続けた。
【0117】
【表2】
【0118】
上記対照例Aとは対照的に、顔料Iは光沢材から溶媒の中へと浸出せず、従ってこの光沢材は着色しまた真珠光沢をもったままであった。従って溶媒に対して安定に着色(薄い色合いをもった黄色)した真珠光沢(赤黄色)をもつフィルムおよび光沢材が得られた。
【本発明の実施例2】
【0119】
上記実施例1を繰り返したが、使用した顔料は上記顔料IIであった。この得られた226層のフィルムの7枚の内側の層の断面を図2に示す。このフィルムは良好な真珠光沢(赤黄色)および色(赤みを帯びた黄色)を示した。
【0120】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記の本発明の実施例1記載の方法でネイルラッカー組成物をつくった。上記対照例Aとは対照的に、顔料IIは光沢材から溶媒の中へと浸出せず、従ってこの光沢材は着色しまた真珠光沢をもったままであった。従って溶媒に対して安定な着色(赤みを帯びた黄色)した真珠光沢(赤黄色)をもつフィルムおよび光沢材が得られた。
【本発明の実施例3】
【0121】
実施例1を繰り返したが、使用した顔料は上記顔料IIIであった。この得られた226層のフィルムの7枚の内側の層の断面を図3に示す。このフィルムは良好な真珠光沢(赤黄色)および色(赤みを帯びた黄色)を示した。
【0122】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記の本発明の実施例1記載の方法でネイルラッカー組成物をつくった。上記対照例Aとは対照的に、顔料IIIは光沢材から溶媒の中へと浸出せず、従ってこの光沢材は着色しまた真珠光沢をもったままであった。従って溶媒に対して安定な着色(黄色を帯びた赤色)した真珠光沢(赤黄色)をもつフィルムおよび光沢材が生じた。
【本発明の実施例4】
【0123】
実施例1を繰り返したが、使用した顔料は上記顔料IVであった。この得られた226層のフィルムの7枚の内側の層の断面を図4に示す。このフィルムは良好な真珠光沢(青紫)および色(薄く着色した赤)を示した。
【0124】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記の本発明の実施例1記載の方法でネイルラッカー組成物をつくった。対照例Aとは対照的に、顔料IVは光沢材から溶媒の中へと浸出せず、従ってこの光沢材は着色しまた真珠光沢をもったままであった。従って溶媒に対して安定な着色(薄く着色した赤色)した真珠光沢(青紫)をもつフィルムおよび光沢材が生じた。
【本発明の実施例5】
【0125】
PBTおよびPMMAの交互の層から成る115層の真珠光沢をもつフィルムをつくる。フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料Iを混入する。図5にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例6】
【0126】
本発明の実施例5を繰り返したが、フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料IIを混入する。図6にはこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例7】
【0127】
本発明の実施例5を繰り返したが、フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料IIIを混入する。図7にはこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例8】
【0128】
本発明の実施例5を繰り返したが、フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料IVを混入する。図8にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例9】
【0129】
PETおよびPPMAの交互の層から成る115層の真珠光沢をもつフィルムをつくる。フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料Iを混入する。図9にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例10】
【0130】
本発明の実施例9を繰り返したが、フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料IIを混入する。図10にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例11】
【0131】
本発明の実施例9を繰り返したが、フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料IIIを混入する。図11にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を
示す。
【本発明の実施例12】
【0132】
本発明の実施例9を繰り返したが、フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料IVを混入する。図12にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例13〜16】
【0133】
本発明の実施例9〜12を繰り返したが、226層のフィルムをつくった。
【本発明の実施例17】
【0134】
PETおよびポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンの交互の層から成る115層の真珠光沢をもつフィルムをつくる。フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料Iを混入する。図13にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例18】
【0135】
本発明の実施例17を繰り返したが、上記顔料IIを使用する。図14にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例19】
【0136】
本発明の実施例17を繰り返したが、上記顔料IIIを使用する。図15にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例20】
【0137】
本発明の実施例17を繰り返したが、上記顔料IVを使用する。図16にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例21】
【0138】
PBTおよびポリエチレンナフタレート(以後「PEN」と呼ぶ)の交互の層から成る115層の真珠光沢をもつフィルムをつくる。フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料Iを混入する。図17にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例22】
【0139】
本発明の実施例21を繰り返したが、上記顔料IIを使用する。図18にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例23】
【0140】
本発明の実施例21を繰り返したが、上記顔料IIIを使用する。図19にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例24】
【0141】
本発明の実施例21を繰り返したが、上記顔料IVを使用する。図20にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例25〜28】
【0142】
本発明の実施例21〜24を繰り返したが、226層のフィルムをつくった。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の実施例1のフィルムの断面を示す図。
【図2】本発明の実施例2のフィルムの断面を示す図。
【図3】本発明の実施例3のフィルムの断面を示す図。
【図4】本発明の実施例4のフィルムの断面を示す図。
【図5】本発明の実施例5のフィルムの断面を示す図。
【図6】本発明の実施例6のフィルムの断面を示す図。
【図7】本発明の実施例7のフィルムの断面を示す図。
【図8】本発明の実施例8のフィルムの断面を示す図。
【図9】本発明の実施例9のフィルムの断面を示す図。
【図10】本発明の実施例10のフィルムの断面を示す図。
【図11】本発明の実施例11のフィルムの断面を示す図。
【図12】本発明の実施例12のフィルムの断面を示す図。
【図13】本発明の実施例17のフィルムの断面を示す図。
【図14】本発明の実施例18のフィルムの断面を示す図。
【図15】本発明の実施例19のフィルムの断面を示す図。
【図16】本発明の実施例20のフィルムの断面を示す図。
【図17】本発明の実施例21のフィルムの断面を示す図。
【図18】本発明の実施例22のフィルムの断面を示す図。
【図19】本発明の実施例23のフィルムの断面を示す図。
【図20】本発明の実施例24のフィルムの断面を示す図。
【背景技術】
【0001】
屈折率が異なった少なくとも2種の重合体の層を交互に含む多層重合体フィルムは、個々の層が特許文献1および2に記載されているように適切な厚さをもっている場合には、真珠光沢を呈する(イリデッセント(iridescent))。真珠光沢をもった色は光の干渉現象によって生じる。光学的な芯は交互に存在する重合体の層を含んで成っている。芯の外側にある層は表皮層として知られており、芯の層と同じかまたは異なった重合体からつくられていることができる。
【0002】
真珠光沢をもったフィルムの層にチント(tint)を混入してその反射光および透過光を変化または増強させる方法は特許文献1に記載されており、この場合チント効果を得るために有機染料だけを使用できることが示唆されている。チント処理(チントを加えて薄い色合いを付ける処理)された真珠光沢をもつフィルムに対する一つの望ましい用途は、ネイルラッカーの中に混入するためのチント処理された真珠光沢をもつ光沢材(glitter)としての用途であった。ネイルラッカーは酢酸ブチルのような溶媒を含んでいるから、チント処理を行った真珠光沢をもつ光沢材、従ってそれをつくるのに使用されるフィルムは、溶媒の中で不安定であってフィルムまたは光沢材から浸出する染料を含むことはできない。不幸にして、市販品の一つであるポリブチレンテレフタレート(以後「PBT」と言う)およびポリエチレンビニルアセテート(以後「EVA」という)の226枚の交互の層から成るチント処理された真珠光沢をもつフィルムの中のC.I.Solvent Red 135染料は、酢酸ブチルに露出させるとフィルムから溶媒の中へ浸出し、フィルムはもはや色をもたなくなる。下記の対照例A参照。さらに、市販品の一つであるポリエチレンテレフタレート(以後「PET」と言う)およびポリメチルメタクリレート(以後「PMMA」という)の115枚の交互の層から成るチント処理された真珠光沢をもつフィルムの中の染料も、酢酸ブチルに露出させるとフィルムから溶媒の中へと浸出し、フィルムはもはや色をもたなくなる。また、この重合体層は膨潤し、従ってフィルムは真珠光沢を失う。下記対照例B参照。同様に、市販品のPETおよびPMMAの226枚の交互の層から成るチント処理された真珠光沢をもつフィルム中の染料は、酢酸ブチルに露出させるとフィルムから溶媒の中へ浸出し、フィルムはもはや色をもたなくなる。またこの重合体層は膨潤し、従ってフィルムは真珠光沢を失う。下記対照例C参照。同様に市販品のPETおよびPMMAの226枚の交互の層から成るチント処理された真珠光沢をもつフィルム中の染料は、酢酸ブチルに露出させるとフィルムから溶媒の中へと浸出し、フィルムはもはや色をもたなくなる。下記対照例D参照。このようにチント処理された真珠光沢をもつフィルムに対する用途は限られている。
【0003】
一般に、顔料は大きな分子構造をもち、光学的な芯を破壊する可能性があるため微小な層から成る光学フィルムには使用できないと考えられていた。特許文献1の背景技術の部分には、顔料を真珠光沢をもったフィルムの中に混入する試みが論じられている。一次的な色に対しては光学的な芯の層は0.03〜0.2μである。これらの厚さは、通常の顔料粒子の大きさである0.3μまたはそれ以上よりも小さい。これらの大きな顔料粒子をフィルムの内側の層の中に混入した場合、これらの粒子は層の物理的構造を乱し、その結果真珠光沢が失われる。しかし、大きさが小さい顔料粒子を使用した場合、これらの粒子は凝集して大きな粒子をつくり、同様な色の消失を生じる。凝集が起こらなかった場合、顔料の寄与は不適切であり、真珠光沢が圧倒的に強くなり、フィルムはあたかも顔料が加えられていないように見えるであろう。この濃度を越えると、充填量が多すぎ、注型してフィルムにするために樹脂をのばす(draw down)ことができなくなることが見出だされた。これらの問題を克服する試みの中で、厚さ3〜7μの表皮層の中に顔料が混入されたが、同じ問題が見られ、色が失われ、或いはフィルムの押出しが不安定になった
。
【0004】
このような市販のチント処理された真珠光沢をもつフィルムの限界のために、ネイルラッカーの製造業者、販売業者、および使用者は、着色した真珠光沢をもつ光沢材を含むネイルラッカーを望んでおり、従ってそれをつくるための着色した真珠光沢をもつフィルムが必要とされている。
【特許文献1】共通の譲渡人に対する米国特許第5,451,449号明細書。
【特許文献2】共通の譲渡人に対する米国特許第5,837,359号明細書。
【0005】
本発明の概要
工業界の必要に応じ、本発明によれば実質的に平行な層から成る構造を具備した着色した真珠光沢をもつフィルムであって、交互に存在する一つの層は第1の重合体を含んで成り、他の層は第2の重合体を含んで成り、該層の少なくとも一つは顔料を含んでいるフィルムが提供される。本発明においては、或る種の有機顔料は、特定の重合体の中に混入した後、重合体の加工性を損なうことなく押出しを行い得ることが見出だされた。これらの顔料は、標準的な着色剤に比べて強い色をもち且つ有機溶媒に露出した際の安定性が著しく改善された真珠光沢をもつフィルムを生成した。
【0006】
また本発明によれば、実質的に平行な層の構造を具備した着色した真珠光沢をもつフィルムであって、交互に存在する該層の一つは第1の重合体を含んで成り、他の層は第2の重合体を含んで成り、これらの層の少なくとも一つは顔料を含んでいるフィルムから構成された光沢材が提供される。
【0007】
また本発明によれば、実質的に平行な層の構造を具備した着色した真珠光沢をもつフィルムであって、交互に存在する該層の一つは第1の重合体を含んで成り、他の層は第2の重合体を含んで成り、これらの層の少なくとも一つは顔料を含んでいるフィルムから構成された光沢材を含んだナイルラッカーが提供される。
【0008】
本発明の詳細な説明
本明細書において使用される「着色した真珠光沢をもつフィルム(colored iridescent film)」と言う言葉は酢酸ブチルに露出した際、フィルムが着色し且つ真珠光沢をもったままであることを意味する。
【0009】
顔料:
好適な顔料には、カーボンブラック、無機塩、および錯体の有機分子、例えばフタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、およびアゾ化合物、例えば共通の譲渡人に対する米国特許第5,669,967号明細書;同第5,746,821号明細書;同第5,677,435号明細書;および同第5,747,571号明細書記載の化合物が含まれる。これらの特許は必要に応じ引用により本明細書に包含される。
【0010】
一具体化例においては、好適なアゾ顔料は下記式Iで特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成っている。
【0011】
【化1】
【0012】
ここでXはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基;Yはヒドロカルビル、ハロゲン、またはヒドロカルビルオキシ基であり;Arは下記式II
【0013】
【化2】
【0014】
によって特徴付けられる基であり、ここでAはハロゲンであり;各Zは独立に−COOHまたは−SO3H基、またはこのような基の塩であり;mは1または2;各Rは独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル基、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;nは0、1、または2である。
【0015】
これらのアゾ染料は、最初少なくとも1種の酸基またはそれらのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を含む本発明に使用するのに適した1種またはそれ以上の芳香族アミンをジアゾ化してジアゾニウム成分をつくり、その後このジアゾニウム成分を本発明に使用するのに適したピラゾロン・カップリング剤を含んで成るカップリング成分とカップリングさせて所望の染料をつくることによって製造される。
【0016】
本発明の目的に適した芳香族アミンは下記式IIIによって特徴付けられる化合物である。
【0017】
【化3】
【0018】
ここでAはハロゲン基であり;各Rは独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸エステル、またはニトロ基であり;nは0、1、または2に等しく、各Zは独立に−COOHまたは−SO3H基であるかまたはこのような基の塩であり;mは1または2に等しい。
【0019】
本明細書に使用される「ヒドロカルビル」という言葉は、これらの基の炭化水素特性に実質的に影響を与えない置換基、例えばエーテル、エステル、ニトロ、またはハロゲンを含むことができる炭化水素基を含むものとする。
【0020】
本発明に使用するのに適した芳香族アミンはパラ置換ハロゲン基をもち、それぞれ独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸エステル、またはニトロ基である基Rを0、1または2個含んでいることができる。ハロゲン基は任意のハロゲンであることができるが、塩素または臭素が一般的に使用され、塩素が最も好適なハロゲン置換基の例である。ヒドロカルビル基は独立にアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルカリール基であることができる。例えばRが置換基をもたないアリール基である場合、芳香族アミンはビフェニルアミンである。Rがアルキルの場合、アルキル基は一般に1〜4個の炭素原子を含んでいるであろう。本明細で使用される「低級アルキル」という言葉は炭素数1〜4のアルキル基を意味する。Rがヒドロカルビルオキシ基である場合、ヒドロカルビル部分は上記に説明した任意のヒドロカルビル基であることができるが、ヒドロカルビルオキシ基は一般に炭素数1〜4個またはそれ以上のアルコキシ基である。好適な基Rはメチル、エチル、およびクロロ基である。
【0021】
適切な芳香族アミンはまた1個または2個の酸基−COOHおよび−SO3H、またはその塩を含んでいる。一好適具体化例においては芳香族アミンは−SO3H基またはその塩を含んでいる。好ましくはこれらの酸基はアミン基に隣接している(オルト位にある)。
【0022】
Zがスルフォン酸基でありmが1の芳香族アミンの例には、2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼン−1−スルフォン酸;2−アミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼン−1−スルフォン酸;2−アミノ−5−クロロベンゼン−1−スルフォン酸;2−アミノ−4,5−ジクロロベンゼン−1−スルフォン酸;2−アミノ−5−ブロモ−4−エチルベンゼン−1−スルフォン酸等が含まれる。
【0023】
Zがカルボン酸酸基でありmが1の芳香族アミンの例には、2−アミノ−5−クロロ−4−メトキシ安息香酸;2−アミノ−5−クロロ−4−メチル安息香酸等が含まれる。スルフォン酸およびカルボン酸を置換した芳香族アミンはそれ自身として或いはその塩として使用することができる。好適な塩の例にはアルカリ金属塩、例えばナトリウムおよびカリウム塩が含まれる。任意の芳香族アミンの2種またはそれ以上の混合物も使用することができる。
【0024】
芳香族アミンのジアゾ化は、アルカリ金属のニトリルまたは低級アルキルのニトリルを適切な強酸、例えば鉱酸と一緒に用いて当業界の専門家に公知の方法で行うことができる。有用な鉱酸の例には塩酸および硫酸が含まれる。硫酸ニトロシルも使用することができる。ジアゾ化反応は約−20〜+30℃、好ましくは0〜20℃の範囲の温度で行うことができる。必要なことではないが、いくつかのジアゾ化反応(およびそれに続くカップリング反応)には表面活性剤、例えば非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性の表面活性剤、並びに随時適当な有機溶媒、例えば氷酢酸、低級アルカノール、ジオキサン、フォルムアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ピリジンまたはN−メチルピロリドンを含ませることが有利である。
【0025】
本発明の目的に有用なピラゾロン・カップリング剤は下記式IVによって表される。
【0026】
【化4】
【0027】
ここで、Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基であり;Yはヒドロカルビル、ハロゲン、またはヒドロカルビルオキシ基である。ヒドロカルビルオキシ基は一般に1〜最大約4個の炭素原子を含んでいる。典型的にはXは炭素数1〜2の低級アルキル基であり、好ましくはエチル基である。有用なX基はまた炭素数1〜2のアルコールのカルボン酸エステル、好ましくはエチルエステル基である。他の有用なX基はアリール基、好ましくはフェニル基である。
【0028】
典型的にはYは低級アルキルまたはハロゲン基である。ハロゲン基は任意のハロゲンであることができるが、一般に塩素および臭素が好適であり、塩素が最も好適なハロゲン置換基の例である。通常低級アルキル基は1個または2個の炭素原子を含み、メチル基が好適な置換基である。Yがメチル基の場合が特に有用な具体化例である。
【0029】
本発明に有用なピラゾロン・カップリング剤の例には1−(2’−メチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’−クロロフェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’−メトキシフェニル)−3−メトキシ−5−ピラゾロン、1−(2’−メチルフェニル)−3−カルボエトキシ−5−ピラゾロン等が含まれる。
【0030】
有用なカップリング反応は、カップリング成分にジアゾニウム成分を加えることによって行うことができるが、ジアゾニウム成分にカップリング成分を加えることもできる。カップリングは一般に約−20℃〜約80℃、好ましくは約20〜約65℃の温度で行われる。ジアゾ化反応の場合と同様に、カップリングは適当な表面活性剤または有機溶媒、例えばジアゾ化反応の所で説明したすべての表面活性剤または溶媒を存在させて行うことができる。
【0031】
カップリング成分は塩基性の溶液、例えばアルカリ金属の水酸化物の水溶液に溶解し、酢酸のような希酸を使用して再沈澱させることができる。
【0032】
一般にジアゾニウム成分は化学量論的に僅かに過剰なカップリング成分とカップリングさせる。即ちジアゾニウム成分1当量を1当量より僅かに多い量のカップリング成分とカップリングさせる。
【0033】
カップリングが完了する前、その途中、または後において、或いは下記に説明する金属化の反応を行った後に、アルカリに可溶な樹脂状の生成物を加えることにより本発明の顔料の分散性を改善することができる。この目的に種々の樹脂状の材料を加えることができ、その中には例えばロジン樹脂、重合したロジン、樹脂石鹸、化学的に変性されたロジン樹脂、例えばロジン−マレイネート樹脂、アルキッド樹脂、および高い酸価をもった他の合成炭化水素樹脂、或いはこれらの樹脂の組合せが含まれる。これらの樹脂は、塩をつくり得る遊離のカルボキシル基をもった生成物の中に存在するか、或いは部分的にまたは完全に例えばアルカリ金属イオンとの塩の形で存在することができる。また、微粉末の不溶性材料、例えばアルカリ土類金属の硫酸塩または炭酸塩、二酸化チタン、または粘土材料、或いは微粉末の有機プラスティックス材料の存在下においてカップリング反応を行うことも有利である。
【0034】
上記カップリング反応でつくられたアゾ染料組成物を、スルフォン酸塩またはカルボン酸酸塩を生じる2価の金属塩によって金属化することができる。これはまたレーキング(laking)として知られ、アゾ顔料を生じる。この金属塩はアルカリ土類金属、マンガン、ニッケルまたは亜鉛、或いはこれらの金属の2種以上の混合物の塩でることができる。アルカリ土類金属の塩が好適である。この目的にはSrCl2およびCaCl2のようなアルカリ土類金属の塩が特に有用である。金属化は、存在するすべてのジアゾニウム成分のカップリングが完了した後に染料に金属塩を加えるか、或いはジアゾニウム成分の中に金属塩を含ませ染料が生じる際に金属化を起こさせるようにして行うことが好ましい。
【0035】
大部分の用途においては、十分な明度と着色強度(tincotorial strength)を得るためにアゾ顔料を加熱することが望ましい。例えば上記の樹脂石鹸または他の可溶性の樹脂を存在させ、圧力をかけて100℃より高い温度において約1〜3時間の間金属化の生成物を還流温度に加熱することができる。
【0036】
金属化完了後、濾過によって水をベースにした反応スラリからアゾ顔料を回収して顔料のプレスケーキをつくり、これを高温(例えば40〜60℃)の水で洗滌してカップリング反応で生じた過剰の酸、塩基、および塩を除去する。典型的にはプレスケーキを約10〜20倍の容積の高温水で洗滌する。一般に濾液が塩素イオンの試験に対して僅かに陽性を示すようになるまでフィルターケーキを洗滌する。洗滌したプレスケーキを乾燥し、粉砕し、粗いまたは細かい粉末の形で使用する。別法として、本発明のアゾ顔料を含油性の媒体の中に分散させてフラッシュ基質(flushed base)をつくるか、或いは水性の媒質に分散させて水性の分散物にすることができる。
【0037】
他の具体化例においては、好適なアゾ顔料は下記式Vで特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成っている。
【0038】
【化5】
【0039】
ここでArは酸またはその塩である少なくとも1個の置換基をもった芳香族部分;Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基であり;各Yは独立にヒドロカルビル、ハロゲン、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;aは1、2または3である。
【0040】
これらのアゾ染料は、少なくとも1個の酸基またはそのアルカリ塩またはアンモニウム塩を含む1種またはそれ以上の芳香族アミンを先ずジアゾ化してジアゾニウム成分をつくり、次いでこのジアゾニウム成分をピラゾロン・カップリング剤とカップリングさせて所望の染料をつくることにより製造される。
【0041】
多様な種類の適当な芳香族アミンを使用することができる。1級芳香族アミンの芳香族部分(Ar)が少なくとも1個の置換した酸基、またはそのアルカリ塩またはアンモニウム塩を含んでいる場合、このような殆どの芳香族アミンを用いることができる。芳香族アミンは1分子当たり最大4個またはそれ以上のアミン基を含むモノアミンまたはポリアミンであることができる。従ってこのようなアミンから誘導されるジアゾニウム成分は1個のジアゾニウム基(モノ−ジアゾニウム)、2個のジアゾニウム基(ビス−ジアゾニウム)、3個のジアゾニウム基(トリス−ジアゾニウム)などを含んでいることができる。芳香族アミンは単環式のアミン、例えばアニリンおよびその誘導体、または二環式アミン、例えばナフチルアミンであることができる。芳香族アミンはまたビフェニルアミン、またはアミノビフェニルのようなポリアミン、ベンジジン、および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラミンであることができる。
【0042】
好ましくは、芳香族アミンは下記式VIで特徴付けられる1級芳香族アミンである。
【0043】
【化6】
【0044】
ここで、各Rは独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、またはスルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;nは0、1または2であり;各Zは独立に−COOHまたは−SO3H基、またはこれらの基の塩であり;mは1または2である。ここでイミダゾロン基は式−NH−C−NH−で表され、芳香環と一緒になった場合、窒素原子は隣接した炭素と結合して5員環をつくるものと了解されたい。本明細書および特許請求の範囲に使用される「ヒドロカルビル」と言う言葉は、これらの基の炭化水素特性に実質的に影響を与えない例えばエーテル、エステル、ニトロまたはハロゲンのような置換基を含み得る炭化水素を含むものとする。
【0045】
上記式VIで特徴付けられる芳香族アミンは0、1、または2個のR基を含んでいることができる、ここで基Rは互いに独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基である。ハロゲン基は任意のハロゲンであることができるが、一般に塩素および臭素が好適であり、塩素が最も好適なハロゲン置換基の例である。ヒドロカルビル基は独立にアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルカリール基であることができる。例えば、もしRが置換基をもたないアリール基である場合、芳香族アミンはビフェニルアミンである。Rがアルキル基である場合、アルキル基は一般に1〜4個の炭素原子を含んでいるであろう。本明細書においては「低級アルキル」は1個ないし最大4個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。Rがヒドロカルビルオキシ基である場合、ヒドロカルビル部分は上記に説明したヒドロカルビル基であるが、ヒドロカルビルオキシ基は一般に1〜約4個またはそれ以上の炭素原子を含むアルコキシ基である。好ましくは基Rはメチル、エチルおよびクロロ基である。
【0046】
上記式VIで特徴付けられる芳香族アミンはまた−COOHおよび−SO3Hの酸基またはそれらの塩を1個または2個を含んでいる。一好適具体化例においては、上記式VIの芳香族アミンは1個の−SO3H基を含んでいる。
【0047】
Zがスルフォン酸基でありmが1の式VIで特徴付けられる芳香族アミンの例には、
2−アミノベンゼン−1−スルフォン酸、4−アミノベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−5−メトキシベンゼン−1−スルフォン酸、3−アミノ−6−メチルベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−4−クロロ−5−メチルベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼン−1−スルフォン酸、2−アミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼン−1−スルフォン酸等が含まれる。
【0048】
Zがカルボン酸基でありmが1の式VIで特徴付けられる芳香族アミンの例には、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−アミノ−5−メチル安息香酸、2−アミノ−6−メチル安息香酸、3−アミノ−2−メチル安息香酸、2−アミノ−3−メトキシ安息香酸、4−アミノ−3−メトキシ安息香酸、4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシ安息香酸、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、3−アミノ−4−クロロ安息香酸等が含まれる。ベンゼンスルフォン酸および安息香酸化合物はそれ自身で、またはそれらの塩として使用することができる。好適な塩の例にはナトリウムおよびカリウム塩のようなアルカリ金属塩が含まれる。
【0049】
ジアゾニウム成分をつくる芳香族アミンは融合環式芳香族アミン化合物、例えば2−アミノナフタレン−1−スルフォン酸、4−アミノナフタレン−1−スルフォン酸等を含む種々のナフタレンから誘導される化合物であることができる。ビフェニルアミンおよびポリアミンである芳香族アミンの例には4−アミノビフェニル−3’−スルフォン酸、および4,4’−ジアミノビフェニル−2,2’−ジスルフォン酸が含まれる。任意の芳香族アミンの2種以上の混合物も本発明の範囲内に入る。
【0050】
この芳香族アミンのジアゾ化は、アルカリ金属のニトリルまたはアルキルニトリルを鉱酸のような適切な強酸と一緒に使用して、当業界の専門家に公知の方法で行うことができる。有用な鉱酸の例には、塩酸および硫酸が含まれる。ニトロシル硫酸も使用することができる。ジアゾ化反応は約−20〜+30℃、好ましくは0〜20℃の範囲の温度で行うことができる。必要なことではないが、いくつかのジアゾ化反応(およびそれに続くカップリング反応)には表面活性剤、例えば非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性の表面活性剤、並びに随時適当な有機溶媒、例えば氷酢酸、低級アルカノール、ジオキサン、フォルムアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ピリジンまたはN−メチルピロリドンを含ませることが有利である。
【0051】
本発明の目的に有用なピラゾロン・カップリング剤は下記式VIIによって表される。
【0052】
【化7】
【0053】
ここで、Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基であり;各Yは独立にヒドロカルビル、ハロゲン、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;aは1、2または3である。アルコキシ基は一般に1ないし最大約4個の炭素原子を含んでいる。典型的にはXは炭素数1個または2個の炭素原子を含むアルコールのカルボン酸エステルであり、好ましくはエチルエステル基である。
【0054】
典型的には各Yは互いに独立に低級アルキルまたはハロゲン基であることができる。ハロゲン基は任意のハロゲンであることができるが、一般に塩素および臭素が好適であり、塩素が最も好適なハロゲン置換基の例である。通常低級アルキル基は1個または2個の炭素原子を含み、メチル基が好適な置換基である。aは好ましくは1または2である。aが1でありYが4位にあるメチルの場合が特に有用な具体化例である。
【0055】
有用なピラゾロン・カップリング剤には1−(4’−メチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(4’−クロロフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(4’−メチルフェニル)−3−カルベトキシ−5−ピラゾロン等が含まれる。これらのピラゾロンの任意の2種以上の混合物も本発明の範囲内に入る。
【0056】
カップリング反応は、好ましくはカップリング成分にジアゾニウム成分を加えることによって行うことができるが、ジアゾニウム成分にカップリング成分を加えることもできる。カップリングは一般に約−20℃〜約80℃、好ましくは約20〜約65℃の温度で行われる。ジアゾ化反応の場合と同様に、カップリングは適当な表面活性剤または有機溶媒、例えばジアゾ化反応の所で説明したすべての表面活性剤または溶媒を存在させて行うことができる。
【0057】
カップリング成分は塩基性の溶液、例えばアルカリ金属の水酸化物の水溶液に溶解し、酢酸のような希酸を使用して再沈澱させることができる。
【0058】
一般にジアゾニウム成分は化学量論的に僅かに過剰なカップリング成分とカップリングさせる。即ちジアゾニウム成分1当量を1当量より僅かに多い量のカップリング成分とカップリングさせる。
【0059】
カップリングが完了する前、その途中、または後において、或いは下記に説明する金属化の反応を行った後に、アルカリに可溶な樹脂状の生成物を加えることにより、本発明の顔料の分散性を改善することができる。この目的に種々の樹脂状の材料を加えることができ、その中には例えばロジン樹脂、重合したロジン、樹脂石鹸、化学的に変性されたロジン樹脂、例えばロジン−マレイネート樹脂、アルキッド樹脂、および高い酸価をもった他の合成炭化水素樹脂、或いはこれらの樹脂の組合せが含まれる。これらの樹脂は、塩をつくり得る有利なカルボキシル基をもった生成物の中に存在するか、或いは部分的にまたは完全に例えばアルカリ金属イオンとの塩の形で存在することができる。また、微粉末の不溶性材料、例えばアルカリ土類金属の硫酸塩または炭酸塩、二酸化チタン、または粘土材料、或いは微粉末の有機プラスティックス材料の存在下においてカップリング反応を行うことも有利である。
【0060】
上記カップリング反応でつくられた組成物を、スルフォン酸塩またはカルボン酸塩を生じる2価の金属塩によって金属化することができる。これはまたレーキングとして知られ、アゾ顔料を生じる。この金属塩はアルカリ土類金属、マンガン、ニッケルまたは亜鉛、或いはこれらの金属の2種以上の混合物の塩でることができる。アルカリ土類金属の塩が好適である。この目的にはSrCl2およびCaCl2のようなアルカリ土類金属の塩が特に有用である。金属化は、存在するすべてのジアゾニウム成分のカップリングが完了した後に染料に金属塩に加えるか、或いはジアゾニウム塩の中に金属塩を含ませ染料が生じる際に金属化を起こさせるようにして行うことが好ましい。
【0061】
大部分の用途においては、十分な明度と着色強度を得るためにアゾ顔料を加熱することが望ましい。例えば上記の樹脂石鹸または他の可溶性の樹脂を存在させ、圧力をかけて100℃より高い温度において約1〜3時間の間金属化の生成物を還流温度に加熱することができる。
【0062】
金属化完了後、濾過によって水をベースにした反応スラリからアゾ顔料を回収して顔料のプレスケーキをつくり、これを高温(例えば40〜60℃)の水で洗滌してカップリング反応で生じた過剰の酸、塩基、および塩を除去する。典型的にはプレスケーキを約10〜20倍の容積の高温水で洗滌する。一般に濾液が塩素イオンの試験に対して僅かに陽性を示すようになるまでフィルターケーキを洗滌する。洗滌したプレスケーキを乾燥し、粉砕し、粗いまたは細かい粉末の形で使用する。別法として、本発明のアゾ顔料を含油性の媒体の中に分散させてフラッシュ基質をつくるか、或いは水性の媒質に分散させて水性の分散物にすることができる。
【0063】
第3の具体化例においては、他の好適なアゾ顔料は下記式VIIIによって特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成っている。
【0064】
【化8】
【0065】
ここでRおよびR1は独立に水素、クロロ、メチルまたはエチル基である。
【0066】
これらのアゾ顔料は最初1種またはそれ以上の芳香族アミンをジアゾ化し、その後でこのジアゾニウム成分をカップリング成分とカップリングさせて所望の顔料をつくることによって製造される。
【0067】
これらの好適な顔料の目的に適した芳香族アミンは下記式IXによって特徴付けられる。
【0068】
【化9】
【0069】
好適なアゾ顔料は最初本発明に使用するのに適した1種またはそれ以上の芳香族アミンをジアゾ化し、その後でこのジアゾニウム成分を本発明に使用するのに適したカップリング成分とカップリングさせ所望の顔料をつくることによって製造される。
【0070】
好適な顔料の目的に適した芳香族アミンは下記式によって特徴付けられる。
【0071】
【化10】
【0072】
ここでRおよびR1は独立に水素、クロロ、メチルまたはエチル基である。
【0073】
芳香族アミンの例は2−アミノ−4−クロロ−5−メチルベンゼンスルフォン酸、2−アミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼンスルフォン酸、2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼンスルフォン酸、および2−アミノ−5−メチルベンゼンスルフォン酸である。これらの芳香族アミンの2種以上の混合物も使用することができる。
【0074】
この芳香族アミンのジアゾ化は、アルカリ金属のニトリルまたはアルキルニトリルを鉱酸のような適切な強酸と一緒に使用して、当業界の専門家に公知の方法で行うことができる。有用な鉱酸の例には、塩酸および硫酸が含まれる。ニトロシル硫酸も使用することができる。ジアゾ化反応は約−20〜+30℃、好ましくは0〜15℃の範囲の温度で行うことができる。必要なことではないが、いくつかのジアゾ化反応(およびそれに続くカップリング反応)には表面活性剤、例えば非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性の表面活性剤、並びに随時適当な有機溶媒、例えば氷酢酸、低級アルカノール、ジオキサン、フォルムアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ピリジンまたはN−メチルピロリドンを含ませることが有利である。
【0075】
本発明のこの目的に有用なヒドロキシナフタレンスルフォン酸カップリング剤は下記式によって表される。
【0076】
【化11】
【0077】
本発明の目的に有用なヒドロキシナフタレンスルフォン酸・カップリング剤の例には、1−ナフトール−4−スルフォン酸、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルフォン酸、1−ヒドロキシナフタレン−5−スルフォン酸、1−ヒドロキシナフタレン−8−スルフォン酸、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルフォン酸等が含まれる。これらのヒドロキシナフタレンスルフォン酸・カップリング剤の任意の2種以上の混合物も使用することができる。
【0078】
本発明の目的に有用なカップリング反応は、好ましくはカップリング成分にジアゾニウム成分を加えることによって行うことができるが、ジアゾニウム成分にカップリング成分を加えることもできる。カップリングは一般に約−20℃〜約80℃、好ましくは約0〜約60℃の温度で、pH4〜12、好ましくは約5〜11において行われる。ジアゾ化反応の場合と同様に、カップリングは適当な表面活性剤または有機溶媒、例えばジアゾ化反応の所で説明したすべての表面活性剤または溶媒を存在させて行うことができる。
【0079】
一般にカップリング成分は塩基性の溶液、例えばアルカリ金属の水酸化物の水溶液に溶解し、酢酸のような希酸を使用して再沈澱させることができる。
【0080】
一般にジアゾニウム成分は化学量論的に僅かに過剰なカップリング成分とカップリングさせる。即ちジアゾニウム成分1当量を1当量より僅かに多い量のカップリング成分とカップリングさせる。
【0081】
カップリングが完了する前、その途中、または後において、或いは下記に説明する金属化の反応を行った後に、アルカリに可溶な樹脂状の生成物を加えることにより、本発明の顔料の分散性を改善することができる。この目的に種々の樹脂状の材料を加えることができ、その中には例えばロジン樹脂、重合したロジン、樹脂石鹸、化学的に変性されたロジン樹脂、例えばロジン−マレイネート樹脂、アルキッド樹脂、および高い酸価をもった他の合成炭化水素樹脂、或いはこれらの樹脂の組合せが含まれる。これらの樹脂は、塩をつくり得る有利のカルボキシル基をもった生成物の中に存在するか、或いは部分的にまたは完全に例えばアルカリ金属イオンとの塩の形で存在することができる。また、微粉末の不溶性材料、例えばアルカリ土類金属の硫酸塩または炭酸塩、二酸化チタン、または粘土材料、或いは微粉末の有機プラスティックス材料の存在下においてカップリング反応を行うことも有利である。
【0082】
上記カップリング反応でつくられた組成物を、スルフォン酸塩を生じる1種またはそれ以上のストロンチウム塩によって金属化することができる。これはまたレーキングとして知られ、アゾ顔料を生じる。この目的にはSrCl2およびSrNO3が特に有用である。金属化は、存在するすべてのジアゾニウム成分のカップリングが完了した後に染料にストロンチウム塩を加えるか、或いはジアゾニウム成分の中に金属塩を含ませ染料を生成させる際に金属化を起こさせるようにして行うことが好ましい。
【0083】
十分な明度と着色強度を得るためにアゾ顔料を加熱することが望ましい。例えば上記の樹脂石鹸または他の可溶性の樹脂を存在させ、圧力をかけて100℃より高い温度において1〜3時間の間金属化の生成物を還流温度に加熱することができる。
【0084】
金属化完了後、濾過によって水をベースにした反応スラリからアゾ顔料を回収して顔料のプレスケーキをつくり、これを水で洗滌してカップリング反応で生じた過剰の酸、塩基、および塩を除去する。典型的にはプレスケーキを約10〜20倍の容積の水で洗滌する。一般に濾液が塩素イオンの試験に対して僅かに陽性になるまでプレスケーキの洗滌を行う。洗滌したプレスケーキを乾燥し、粉砕し、粗いまたは細かい粉末の形で使用する。別法として、本発明のアゾ顔料を含油性の媒体の中に分散させてフラッシュ基質をつくるか、或いは水性の媒質に分散させて水性の分散物にすることができる。
【0085】
米国特許第5,669,967号明細書;同第5,746,821号明細書;同第5,677,435号明細書;および同第5,747,571号明細書には、その中に記載された顔料がラッカーおよび例えばポリエステルのような熱可塑性材料中の着色剤として有用であると記載されているが、重合体フィルムおよびその中に着色剤を混入することに関連した困難性、並びに溶媒安定性の必要なことについては何も述べられていない。もっと好適な顔料にはPigment Blue 29および有機顔料、例えばPigment
Violet 19、 Pigment Red 178、C.I.Pigment Red 276、C.I.Pigment Red 277、C.I.Pigment Yellow 205、C.I.Pigment Yellow 206、C.I.Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 29、Pigment Black 7、およびPigment Green 7が含まれる。最も好適な顔料は上記式I、V、およびVIIIによって特徴付けられる。Engelhard社の製品カタログ「Organic Pigments for Plastics」(2002年版)にはプラスティックスに対して有用な有機顔料が記載されているが、重合体フィルムおよびその中に着色剤を混入することに関連した困難性、並びに溶媒安定性の必要なこと
については何も述べられていない。この場合微小層が破壊されると色に衝撃を与え、従って隣接した微小層が平行に配置された性質および真珠光沢の品質を変化させる。好ましくは真珠光沢をもったフィルムの中に顔料を約0.1〜約5重量%の量で使用する。
【0086】
重合体:
「実質的に平行な層」と言う言葉は、隣接した層が一般にx−y面内に留まり、z方向への移動が最小であるか全くないことを意味する。
【0087】
本発明の第1および第2の重合体の屈折率の差は少なくとも約0.03、好ましくは少なくとも0.06であることが好適である。これらのフィルムは好ましくは少なくとも約10枚、さらに好ましくは少なくとも約35枚、最も好ましくは少なくとも約70枚の層を含んでいる。フィルムの個々の層は非常に薄く、通常は好ましくは約15〜約500ナノメーター(nm)、さらに好ましくは約50〜約400nmである。好ましくは内側の層の厚さは約15〜約200nm、外側の層の厚さは約1〜約2μの範囲である。好適な重合体にはポリエステル、ポリアクリレート、ポリエチレンビニルアセテート、およびポリスチレンが含まれる。好適なポリエステルの中にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、グリコールで変性されたポリエチレンテレフタレート、および共通の譲渡人に対する米国特許第6,475,608号に記載されたポリエチレンナフタレートが含まれる。この特許は引用により本明細書に包含される。好適なポリアクリレートにはポリメチルメタクリレートが含まれる。一つの好適なフィルムは交互に存在するポリブチレンテレフタレートとポリメチルメタクリレートの層をもっている。他の好適なフィルムはPBTとEVAの交互の層をもっている。他の好適なフィルムはポリエチレンテレフタレートとポリメチルメタクリレートまたはポリオレフィンの交互の層をもっている。他の好適なフィルムはポリスチレンとエチレンビニルアセテートの交互の層をもっている。他の好適なフィルムはポリエチレンナフタレートとポリメチルメタクリレートまたはPETの交互の層をもっている。
【0088】
多層フィルムは通常低温ロール注型法によってつくられるが、この方法では2種またはそれ以上の押出し物から得られる熱可塑性樹脂の材料の熔融物を供給ブロックによって集め、これを配置して所望の層状になったパターンにする。非常に狭い多相流を単一の多岐管の平らなダイス型に通し、同時にダイス型の幅まで層を広げ、薄くしてダイス型から出る最終的な厚さにする。層の数および層の厚さの分布は異なった供給ブロックのモジュールを用いることにより変えることができる。通常、最も外側の層、即ちシートの各側の上にある層は他の層よりも厚く、比較的厚い表皮層をつくっている。表皮をつくるのに使用される樹脂材料は光学的な芯をつくっている成分の一つであるか、或いは所望の機械的性質、熱封性または他の性質を賦与するのに用いられる異なった重合体、或いはこれらの組合せであることができる。好ましくは、本発明のフィルムは米国特許第3,801,429号記載の方法によってつくることができる。この特許は本明細書を完璧なものにするのに必要な程度において引用により本明細書に包含される。
【0089】
本発明に従えば、顔料が存在しない場合に得られる同じ特性に比べ、フィルムの少なくとも一つの反射光またはフィルムの少なくとも一つの透過光、または両方を増強または変化させるのに十分な量の顔料を一つまたはそれ以上の樹脂材料に加える。顔料は全部または全部よりも少ない光学的な芯、および/または全部または全部よりも少ない表皮層に混入することができる。従って芯の層または表皮層の少なくとも一つに混入することができる。顔料を混入する層の数および個々の層の中における顔料の濃度は所望の色効果の関数である。
【0090】
用途:
本発明は装飾用の用途に有用である。例えば本発明は何らかの方法で光沢材の粒子の大
きさを減少させることができる。これらの粒子は用途に応じ種々の大きさおよび形をもっている。粒子の大きさは非常に小さい約0.004インチからシークイン(sequin)のような大きな粒子の範囲に亙っている。形は六角形のような幾何学的な形からハート模様のような装飾的な形に亙っていることができる。本発明のフィルムを所望の大きさおよび形に切断したら、切断片をフィルターにかけて標準的な材料を取り出し、流動性を改善する処理を行なう。現存の光沢材のフィルムに伴う問題は、使用される着色剤がネイルラッカー組成物に使用されるような有機溶媒に対して安定ではなかったという点である。本発明の新規組成物に使用される有機顔料は有機溶媒に対して安定であり、得られる光沢材は有機溶媒と共に組成物に使用することができる。
【0091】
また本発明は織物に対して有用である。本発明のフィルムを先ずポリエステルフィルムに対して積層化してフィルムの引張り強さを増加させる。次に得られた積層構造物を細く縦切りして糸にする。次いでこの糸をそのまま使用するか、または繊維布に変える前に他の糸と撚り合わせる。既存の着色剤は二つの主要な側面でうまく動作しない。第1の側面はドライクリーニング用の液剤または洗剤を含む水のような溶媒に対する安定性である。既存の着色剤はフィルムから浸出し、同じ溶液の中にある他の繊維を汚す。問題となる第2の側面は光に対する露出である。既存の着色剤は模擬太陽光に露出した場合に褪色する。本発明の新規組成物に使用された有機顔料は既存の着色剤で見られるような安定性の問題を生じない。この改善により織物業界において広い範囲の着色剤が市販できるようになるであろう。
【対照例A】
【0092】
PBTおよびEVAの層を交互に同時押出しすることにより226層から成る真珠光沢をもったフィルムをつくった。フィルムをつくる前にC.I.Solvent Red 13.5染料をPBTの中に混入した。このフィルムは良好な真珠光沢および色を示した。
【0093】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、LigtninTM型の推進式混合機を備えた適当な大きさの容器の中で下記表1の成分を一緒にすることによりネイルラッカーをつくった。バッチが均一になるまで混合を続けた。
【0094】
【表1】
【0095】
ネイルラッカーの中の光沢材はその真珠光沢を保持した。しかし染料は光沢材から溶媒
の中に浸出し、従って光沢材の色はなくなった。
【対照例B】
【0096】
PETおよびPMMAの層を交互に同時押出しすることにより115層から成る真珠光沢をもったフィルムをつくった。フィルムをつくる前に染料をPETの中に混入した。このフィルムは良好な真珠光沢および色を示した。
【0097】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記対照例Aと同様にしてネイルラッカーをつくった。染料は光沢材から溶媒の中に浸出し、従って光沢材の色はなくなるか真珠光沢をなくした。光沢材中のフィルムは膨潤し、光沢材はもはや真珠光沢を示さなかった。
【対照例C】
【0098】
226層のフィルムをつくったこと以外対照例Bを繰り返した。このフィルムは良好な真珠光沢および色を示した。
【0099】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記と同様にしてネイルラッカーをつくった。染料は光沢材から溶媒の中に浸出し、従って光沢材は色がなくなるか真珠光沢をなくした。
【対照例D】
【0100】
PBTおよびPMMAの層を交互に同時押出しすることにより115層から成る真珠光沢をもったフィルムをつくった。フィルムをつくる前に染料をPBTの中に混入した。このフィルムは良好な真珠光沢および色を示した。
【0101】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記対照例Aと同様にしてネイルラッカーをつくった。染料は光沢材から溶媒の中に浸出し、従って光沢材は色がなくなるか真珠光沢をなくした。
【実施例】
【0102】
下記の製造法および実施例は本発明の組成物およびその製造法を示す。下記実施例および本明細書および特許請求の範囲において特記しない限りすべての割合は重量により、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧または大気圧に近い圧力である。
【0103】
顔料Iの製造
23.7部の2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼン−1−スルフォン酸(Ethyl C Amine)を、4部の水酸化ナトリウムを含む370部の高温(約60℃)の水に溶解し、26.0部の20°ボーメ塩酸を用いて再沈澱させ、氷を加えて0℃のスラリにし、21部の水に溶解した7.0部のナトリウムニトリルを加え、このスラリを0〜10℃で60分間撹拌することによりジアゾ化合物のスラリをつくる。
【0104】
23.0部の1−(2’−クロロフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン(OCPMP)、2.3部のスルフォン化されたひまし油のナトリウム塩、および9.6部の酢酸ナトリウムを用いてカップリング剤のスラリをつくり、このスラリを65℃に加熱する。
【0105】
ジアゾ化合物のスラリを20分間に亙りカップリング剤のスラリとカップリングさせ、この間10%の水酸化ナトリウムを加えてpHを6.0〜6.5に保ち、また温度を60〜65℃に保つ。このスラリを1時間撹拌し、分割して4つの同量のスラリIにする。
【0106】
スラリIの一つの部分(525部)に対し65℃において12.3部の無水塩化カルシ
ウム30%溶液を加える。次いでこのスラリを加熱し、30分間沸騰させ、氷で40℃より低い温度に冷却し、濾過する。フィルターケーキを洗滌し、一晩70℃で乾燥し、Osterizerの中で粉末にし、微粉末の顔料Iを得た。
【0107】
顔料IIの製造
22.2部の2−アミノ−5−クロロ−4−メチルベンゼン−1−スルフォン酸(C Amine)を、4部の水酸化ナトリウムを含む390部の水に溶解し、26.0部の20°ボーメ塩酸を用いて再沈澱させ、氷を加えて0℃のスラリにし、14部の水に溶解した7.0部のナトリウムニトリルを加え、このスラリを0〜5℃で60分間撹拌するすることによりジアゾ化合物のスラリをつくる。
【0108】
4.5部の水酸化ナトリウムを含む水205部に20.7部の1−(4’−メチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン(PTMP)を約40℃で溶解し、67.5部の10%酢酸を用いてPTMPを再沈澱させ、pHを6.5に調節してカップリング剤のスラリをつくり、このスラリを60〜65℃において加熱する。
【0109】
ジアゾ化合物のスラリを20分間に亙りカップリング剤のスラリとカップリングさせ、この間10%の水酸化ナトリウムを加えてpHを6.0〜6.5に保つ。このスラリを1時間撹拌して加熱し、分割して4つの同量のスラリIIにする。
【0110】
スラリIIの一つの部分に対し40〜45℃において12.3部の無水塩化カルシウム30%溶液を加える。次いでこのスラリを加熱し、30分間沸騰させ、氷で50 ℃より低い温度に冷却し、濾過する。フィルターケーキを洗滌し、一晩70℃で乾燥し、Osterizerの中で粉末にし、微粉末の顔料IIを得た。
【0111】
顔料IIIの製造
250部の水および3.3部の水酸化ナトリウム50%溶液に、4.05部の2−アミノ−4−クロロ−5−メチルベンゼンスルフォン酸および4.3部の2−アミノ−5−クロロ−エチルベンゼンスルフォン酸の混合物を溶解する。氷を加えてこの溶液を0℃に冷却し、10.5部のナトリウムニトリル25%溶液および11部の20°ボーメ塩酸を加え、0〜1℃で30分間このスラリを撹拌することによりてジアゾ化する。スルファミン酸を用いて過剰のニトリルの反応を停止させる。少量の発泡防止剤を用いて発泡を抑制する。
【0112】
2−ヒドロキシ−ナフタレン−6−スルフォン酸のカリウム塩(Schaefferの塩)10部を200部の水および3部の50%水酸化ナトリウムの中に加熱して溶解し、氷を用いて20℃に冷却してカップリング剤のスラリをつくる。
【0113】
ジアゾ化合物のスラリをカップリング剤のスラリの中に加え、10〜15分間に亙りカップリングさせる。水酸化ナトリウム10%溶液を加えてスラリのpHを9.8〜10に上昇させる。この混合物を40分間撹拌し、約1℃/分の割合で加熱する。40部の硝酸ナトリウム30%溶液を約30分間に亙って加え、この間バッチの温度を45〜50℃に保つ。次にスラリを加熱して25分間沸騰させる。次に氷でスラリを45℃より低い温度に冷却し、濾過する。フィルターケーキを水で洗滌し、一晩70℃で乾燥させ、粉砕して粉末の顔料IIIを得る。
【0114】
顔料IVの製造
上記顔料IIIの製造法を繰り返したが、4.05部の2−アミノ−4−クロロ−5−メチルベンゼンスルフォン酸および4.3部の2−アミノ−5−クロロ−エチルベンゼンスルフォン酸の混合物の代わりに2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼンスルフォ
ン酸(7.6部)および2−アミノナフタレン−1−スルフォン酸(1部)の混合物を用いた。
【本発明の実施例1】
【0115】
PBTおよびEVAの層を交互に同時押出しして226層の真珠光沢をもったフィルムをつくった。フィルムをつくる前に上記顔料IをPBTに混入した。最終的なフィルムは厚さが0.014インチであった。それぞれの内側のPBT層はほぼ同じ厚さをもち、それぞれの内部のEVA層もほぼ同じ厚さをもっていた。図1にこの226層から成る真珠光沢をもったフィルムの7枚の内部層の断面を示す。このフィルムは良好な真珠光沢(赤黄色)および色(薄く着色した黄色)を示した。
【0116】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、LigtninTM型の推進式混合機を備えた適当な大きさの容器の中で下記表2の成分を組合せることによってネイルラッカー組成物をつくった。バッチが均一になるまで混合を続けた。
【0117】
【表2】
【0118】
上記対照例Aとは対照的に、顔料Iは光沢材から溶媒の中へと浸出せず、従ってこの光沢材は着色しまた真珠光沢をもったままであった。従って溶媒に対して安定に着色(薄い色合いをもった黄色)した真珠光沢(赤黄色)をもつフィルムおよび光沢材が得られた。
【本発明の実施例2】
【0119】
上記実施例1を繰り返したが、使用した顔料は上記顔料IIであった。この得られた226層のフィルムの7枚の内側の層の断面を図2に示す。このフィルムは良好な真珠光沢(赤黄色)および色(赤みを帯びた黄色)を示した。
【0120】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記の本発明の実施例1記載の方法でネイルラッカー組成物をつくった。上記対照例Aとは対照的に、顔料IIは光沢材から溶媒の中へと浸出せず、従ってこの光沢材は着色しまた真珠光沢をもったままであった。従って溶媒に対して安定な着色(赤みを帯びた黄色)した真珠光沢(赤黄色)をもつフィルムおよび光沢材が得られた。
【本発明の実施例3】
【0121】
実施例1を繰り返したが、使用した顔料は上記顔料IIIであった。この得られた226層のフィルムの7枚の内側の層の断面を図3に示す。このフィルムは良好な真珠光沢(赤黄色)および色(赤みを帯びた黄色)を示した。
【0122】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記の本発明の実施例1記載の方法でネイルラッカー組成物をつくった。上記対照例Aとは対照的に、顔料IIIは光沢材から溶媒の中へと浸出せず、従ってこの光沢材は着色しまた真珠光沢をもったままであった。従って溶媒に対して安定な着色(黄色を帯びた赤色)した真珠光沢(赤黄色)をもつフィルムおよび光沢材が生じた。
【本発明の実施例4】
【0123】
実施例1を繰り返したが、使用した顔料は上記顔料IVであった。この得られた226層のフィルムの7枚の内側の層の断面を図4に示す。このフィルムは良好な真珠光沢(青紫)および色(薄く着色した赤)を示した。
【0124】
次にこのフィルムからつくられた光沢材を用い、上記の本発明の実施例1記載の方法でネイルラッカー組成物をつくった。対照例Aとは対照的に、顔料IVは光沢材から溶媒の中へと浸出せず、従ってこの光沢材は着色しまた真珠光沢をもったままであった。従って溶媒に対して安定な着色(薄く着色した赤色)した真珠光沢(青紫)をもつフィルムおよび光沢材が生じた。
【本発明の実施例5】
【0125】
PBTおよびPMMAの交互の層から成る115層の真珠光沢をもつフィルムをつくる。フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料Iを混入する。図5にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例6】
【0126】
本発明の実施例5を繰り返したが、フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料IIを混入する。図6にはこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例7】
【0127】
本発明の実施例5を繰り返したが、フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料IIIを混入する。図7にはこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例8】
【0128】
本発明の実施例5を繰り返したが、フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料IVを混入する。図8にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例9】
【0129】
PETおよびPPMAの交互の層から成る115層の真珠光沢をもつフィルムをつくる。フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料Iを混入する。図9にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例10】
【0130】
本発明の実施例9を繰り返したが、フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料IIを混入する。図10にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例11】
【0131】
本発明の実施例9を繰り返したが、フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料IIIを混入する。図11にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を
示す。
【本発明の実施例12】
【0132】
本発明の実施例9を繰り返したが、フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料IVを混入する。図12にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例13〜16】
【0133】
本発明の実施例9〜12を繰り返したが、226層のフィルムをつくった。
【本発明の実施例17】
【0134】
PETおよびポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンの交互の層から成る115層の真珠光沢をもつフィルムをつくる。フィルムをつくる前にPETの中に上記顔料Iを混入する。図13にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例18】
【0135】
本発明の実施例17を繰り返したが、上記顔料IIを使用する。図14にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例19】
【0136】
本発明の実施例17を繰り返したが、上記顔料IIIを使用する。図15にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例20】
【0137】
本発明の実施例17を繰り返したが、上記顔料IVを使用する。図16にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例21】
【0138】
PBTおよびポリエチレンナフタレート(以後「PEN」と呼ぶ)の交互の層から成る115層の真珠光沢をもつフィルムをつくる。フィルムをつくる前にPBTの中に上記顔料Iを混入する。図17にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例22】
【0139】
本発明の実施例21を繰り返したが、上記顔料IIを使用する。図18にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例23】
【0140】
本発明の実施例21を繰り返したが、上記顔料IIIを使用する。図19にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例24】
【0141】
本発明の実施例21を繰り返したが、上記顔料IVを使用する。図20にこの115層の真珠光沢をもつフィルムの7枚の内側の層の断面を示す。
【本発明の実施例25〜28】
【0142】
本発明の実施例21〜24を繰り返したが、226層のフィルムをつくった。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の実施例1のフィルムの断面を示す図。
【図2】本発明の実施例2のフィルムの断面を示す図。
【図3】本発明の実施例3のフィルムの断面を示す図。
【図4】本発明の実施例4のフィルムの断面を示す図。
【図5】本発明の実施例5のフィルムの断面を示す図。
【図6】本発明の実施例6のフィルムの断面を示す図。
【図7】本発明の実施例7のフィルムの断面を示す図。
【図8】本発明の実施例8のフィルムの断面を示す図。
【図9】本発明の実施例9のフィルムの断面を示す図。
【図10】本発明の実施例10のフィルムの断面を示す図。
【図11】本発明の実施例11のフィルムの断面を示す図。
【図12】本発明の実施例12のフィルムの断面を示す図。
【図13】本発明の実施例17のフィルムの断面を示す図。
【図14】本発明の実施例18のフィルムの断面を示す図。
【図15】本発明の実施例19のフィルムの断面を示す図。
【図16】本発明の実施例20のフィルムの断面を示す図。
【図17】本発明の実施例21のフィルムの断面を示す図。
【図18】本発明の実施例22のフィルムの断面を示す図。
【図19】本発明の実施例23のフィルムの断面を示す図。
【図20】本発明の実施例24のフィルムの断面を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に平行な層の芯を含んで成り、交互に存在する該層の一つは第1の重合体を含んで成り、他の層は第2の重合体を含んで成り、該層の少なくとも一つは有機顔料を含んでいることを特徴とする着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項2】
該有機顔料はフタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、およびアゾ化合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項3】
該アゾ化合物は下記式I
【化1】
但し式中Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基;Yはヒドロカルビル、ハロゲン、またはヒドロカルビルオキシ基であり;Arは下記式II
【化2】
によって特徴付けられる芳香族部分であり、ここでAはハロゲン基;Zは独立に−COOHまたは−SO3H基、またはこのような基の塩であり;mは1または2;各Rは独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;nは0、1、または2である、
により特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項4】
該アゾ化合物は下記式V
【化3】
但し式中Arは酸基またはその塩である少なくとも1個の置換基をもった芳香族部分;Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基であり;各Yは独立にヒドロカルビル、ハロゲン、ヒドロカ
ルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;aは1、2または3である、
により特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項5】
該アゾ化合物は下記式VIII
【化4】
但し式中RおよびR1は独立に水素、クロロ、メチルまたはエチル基である、
により特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項6】
該有機顔料は少なくとも一つの外側の層の中に存在していることを特徴とする請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項7】
該有機顔料は少なくとも一つの内側の層の中に存在していることを特徴とする請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項8】
該芯の外側の層の少なくとも一つの厚さは該芯の内側の層の少なくとも一つの厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項9】
請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルムからつくられた光沢材。
【請求項10】
請求項9記載の該光沢材を含むネイルラッカー。
【請求項1】
実質的に平行な層の芯を含んで成り、交互に存在する該層の一つは第1の重合体を含んで成り、他の層は第2の重合体を含んで成り、該層の少なくとも一つは有機顔料を含んでいることを特徴とする着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項2】
該有機顔料はフタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、およびアゾ化合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項3】
該アゾ化合物は下記式I
【化1】
但し式中Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基;Yはヒドロカルビル、ハロゲン、またはヒドロカルビルオキシ基であり;Arは下記式II
【化2】
によって特徴付けられる芳香族部分であり、ここでAはハロゲン基;Zは独立に−COOHまたは−SO3H基、またはこのような基の塩であり;mは1または2;各Rは独立にハロゲン、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;nは0、1、または2である、
により特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項4】
該アゾ化合物は下記式V
【化3】
但し式中Arは酸基またはその塩である少なくとも1個の置換基をもった芳香族部分;Xはヒドロカルビル、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、またはスルフォン酸アミド基であり;各Yは独立にヒドロカルビル、ハロゲン、ヒドロカ
ルビルオキシ、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、カルボン酸アミド、イミダゾロン、スルフォン酸アミド、またはニトロ基であり;aは1、2または3である、
により特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項5】
該アゾ化合物は下記式VIII
【化4】
但し式中RおよびR1は独立に水素、クロロ、メチルまたはエチル基である、
により特徴付けられる1種またはそれ以上の化合物を含んで成ることを特徴とする請求項2記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項6】
該有機顔料は少なくとも一つの外側の層の中に存在していることを特徴とする請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項7】
該有機顔料は少なくとも一つの内側の層の中に存在していることを特徴とする請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項8】
該芯の外側の層の少なくとも一つの厚さは該芯の内側の層の少なくとも一つの厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルム。
【請求項9】
請求項1記載の着色した真珠光沢をもつフィルムからつくられた光沢材。
【請求項10】
請求項9記載の該光沢材を含むネイルラッカー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2007−502727(P2007−502727A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523893(P2006−523893)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/025436
【国際公開番号】WO2005/018931
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591044371)エンゲルハード・コーポレーシヨン (43)
【氏名又は名称原語表記】ENGELHARD CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/025436
【国際公開番号】WO2005/018931
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591044371)エンゲルハード・コーポレーシヨン (43)
【氏名又は名称原語表記】ENGELHARD CORPORATION
【Fターム(参考)】
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