説明

溶媒和を容易にするための単層カーボンナノチューブの化学的誘導体化及び誘導体化ナノチューブの使用

【課題】カーボンナノチューブ、特に単層カーボンナノチューブの側壁を誘導体化する方法を提供する。
【解決手段】単層カーボンナノチューブをフッ素ガスと反応させ、フッ素誘導体化カーボンナノチューブを回収し、次いでフッ素誘導体化カーボンナノチューブを求核試薬と反応させることにより該ナノチューブに付着した置換基を有する単層カーボンナノチューブを調製する。好ましい求核試薬としてはメチルリチウム等のアルキルリチウム種が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、カーボンナノチューブの化学的誘導体の製造及び炭素繊維の合成の基礎としての配列の製造を含む誘導体化ナノチューブの使用に向けられている。
関連技術
フラーレン類は、六角形及び五角形で配置されたsp2混成炭素のみからなる閉じたかご形分子である。フラーレン類(例えば、C60)は、蒸気化した炭素から凝縮により産出された閉じた回転楕円体のかご形として最初に同定された。
【0002】
フラーレンチューブ類は、蒸気化した炭素から回転楕円体のフラーレン類を産出する炭素アーク法において陽極上の炭素析出物中に産出される。 Ebbesenら(Ebbesen I),“カーボンナノチューブの大規模合成(Large-Scale Synthesis Of Carbon Nanotubes)”, Nature, 第358巻、第220頁(1992年7月16日)及びEbbesenら(Ebbesen II), “カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes)”, Annual Review of Materials Science、第24巻、第235頁(1994年)。 このようなチューブは、本明細書においてカーボンナノチューブとして言及される。これらの方法で製造したカーボンナノチューブの多くは、多層ナノチューブであった。 即ち、カーボンナノチューブは共中心円筒に類似していた。7層迄を有するカーボンナノチューブが先行技術、Ebessen II;飯島ら, “グラファイト炭素の螺旋マクロ細管(Helical Microtubuless of Graphitic Carbon)”, Nature、第354巻、第56頁(1991年11月7日)に記載されている。
カーボンナノチューブの産出
単層カーボンナノチューブは、フラーレンの製造に使用される種類の直流アーク放電装置中で、炭素と少量パーセントのVIII族遷移金属を同時にアーク放電装置の陽極から蒸発させて製造された。 飯島ら, “1ナノメートル直径の単殻カーボンナノチューブ”(Shingle-Shell Carbon Nanotubes of 1nm Diameter)、Nature、第363巻、第603頁(1993年);Bethuneら, “単一原子層壁を有するカーボンナノチューブのコバルト触媒による成長(Cobalt Catalyzed Growth of Carbon Nanotubes with Single Atomic Layer Walls)”, Nature、第63巻、第605頁(1993年);Ajayan等, “コバルト触媒による単殻カーボンナノチューブの合成中の成長形態(Growth Morphologies During Cobalt Catalyzed Single-Shell Carbon Nanotube Synthesis)”、Chem. Phys. Lett.、第215巻、第509頁(1993年);Zhouら, “YC2粒子からラジカルにより成長する単壁カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nanotubes Growing Radically From YC2Particles)”, Appl. Phys. Lett.、第65巻、第1593頁(1994年);Seraphinら, “単壁チューブ及びナノ結晶の炭素クラスターへの封入(Single-Walled Tubes and Encapsulation of Nanocrystals Into Carbon Clusters)、Electrochem. Soc.、第142巻、第290頁(1995年);斉藤ら, “金属及び炭化物を閉じ込めるカーボンナノカプセル(Carbon Nanocapsules Encaging Metals and Carbides)”、J. Phys. Chem. Solids 、第54巻、第1849頁(1993年);及び斉藤ら, “蒸発源近くで凝縮した小粒子の形成を経る単層カーボンナノチューブの押出し(Extrusion of Single-Wall Carbon Nanotubes Via Formation of Small Particles Condensed Near an Evaporation Source)”、Chem. Phys. Lett.、第236巻、第419頁(1995年)を参照。 このような遷移金属の混合物を使用するアーク放電装置での単層カーボンナノチューブの収率を有意に高めることができることも知られている。 Lambertら,“単殻カーボンナノチューブ単離方向への改良条件(Improving Conditions Towards Isolating Single-Shell Carbon Nanotubes)、Chem. Phys. Lett., 第226巻、第364頁(1994年)参照。このアーク放電方法は単層ナノチューブを産出することができるが、ナノチューブの収率は低く、また該チューブは、混合物中の個々のチューブ間で構造及び大きさの注目に値する変動を示す。個々のカーボンナノチューブは他の反応生成物から分離し精製することが困難である。
【0003】
単層ナノチューブの改良製造法は、本明細書に参照としてそのまま包含される米国特許出願第08/687,665号, 名称“単層カーボンナノチューブよりなるロープ(Ropes of Single-Walled Carbon Nanotubes)”に記載されている。 この方法は、とりわけ遷移金属、好ましくはニッケル、コバルト又はその混合でドープしたグラファイト支持体のレーザー蒸気化を使用して凝縮した炭素の少なくとも50%の収率で単層カーボンナノチューブを産出するものである。 この方法に産出された単層ナノチューブは、平行に配列しファンデルワールス力で結合して三角格子中に緊密に充填された10乃至1,000本の単層カーボンナノチューブから形成された“ロープ」と名づけられるクラスターに形成される傾向がある。この方法により産出されたナノチューブは、一つの構造が優勢となる傾向はあるが構造が変動する。
【0004】
単層カーボンナノチューブからカーボン繊維を産出する方法は、本明細書に参照としてそのまま包含されるPCT特許出願第PCT/US98/04513号に記載されている。 ガーボン繊維は、個々のナノチューブの配列に対して実質的に垂直な方向に伸びる単層を形成すべく、実質的に平行に配列して(例えば、ファンデルワールス力により)凝集した単層カーボンナノチューブからなる実質的に二次元の配列で単層カーボンナノチューブを用いて産出される。 この方法において、種配列チューブはその頂上(自由)端が開いており、 触媒クラスターがこの自由端に析出する。 次いでガス状の炭素源が該ナノチューブ集合体を繊維へ成長させるために提供される。 金属クラスター触媒を含む種々の方法において、単層カーボンナノチューブの形成のための最適寸法のクラスターを与えるための適切な数の金属原子を提供することが重要である。
単層カーボンナノチューブの誘導体化
1993年(S. 飯島およびT. 市橋, Nature、第363巻、第603乃至605頁)における単層カーボンナノチューブの発見以来、研究者はその化学的操作方法を探しつづけている。 カーボンナノチューブの製造及び物理的物性に関する報告書及び検討論文は多く存在するが、カーボンナノチューブの化学的操作に関する報告書は徐々に出現している。 ナノチューブ末端をカルボン酸基で機能化する報告(Raoら、Chem. Commum., 1996, 1525-1526; Wongら、Nature, 1998, 349:52- 55)と次いでチオール結合を介してナノチューブを金粒子に繋ぐ操作の報告(Liuら, Science,1998, 280: 1253-1256)がある。 Haddon及び共同研究者ら(Chenら, Science, 1998, 282: 95-98) は該チューブの両端にオクタデシルアミン基を附加し、次いでジクロロカルベン類をナノチューブ側壁へ附加し、比較的少量(略2%)ではあるが単層カーボンナノチューブを溶媒和させることを報告している。 理論上の結果はナノチューブ側壁の機能化が可能であること[Cahill, Tetrahedron, 1996, 52(14):5247-5256]を示唆したが、この理論を確認する実験的証拠は得られていない。
発明の要約
従って、本発明の目的は、カーボンナノチューブ、特に単層カーボンナノチューブの側壁を誘導体化する方法を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、安価な炭素原料を使用して中程度の温度で単層カーボンナノチューブから多量の連続した巨視的炭素繊維を製造する高収率の一段方法を提供することである。
【0006】
本発明の更に別の目的は、このような方法により製造した巨視的炭素繊維を提供することである。 本発明のこれら及び他の目的は下記の一以上の態様により満たされる。
【0007】
本発明は、ナノチューブ分子の側壁の炭素原子に共有結合した置換基で誘導体化した単層カーボンナノチューブ及び/または管状炭素分子を提供する。 該置換基は、原則として該ナノチューブ側壁の内部及び/または外部に付着させうるが、該付着は外壁には優勢的とはならないであろう。 特に、単層カーボンナノチューブはその外壁に付着したフッ素、アルキル及びフェニルから選択される置換基を有することが出来る。 このような単層ナノチューブの側壁に共有結合したフッ素を有する該ナノチューブは、高い電気抵抗を示す。
【0008】
本発明はまた、カーボンナノチューブをフッ素ガス、好ましくはF2を含まないフッ素ガスと反応させることを含むカーボンナノチューブを誘導体化する方法を提供する。 該カーボンナノチューブが単層ナノチューブであって温度が少なくとも500℃である場合は、生成物はフッ素で誘導体化された複層カーボンナノチューブであり得る。 該カーボンナノチューブが単層ナノチューブであって温度が250℃ 乃至500℃である場合は、生成物は該ナノチューブの側壁の炭素原子に共有結合したフッ素を有する単層カーボンナノチューブである。
【0009】
一態様において、本発明はまた、単層カーボンナノチューブをフッ素ガスと反応させフッ素誘導体化カーボンナノチューブを回収し、次いでフッ素誘導体化カーボンナノチューブを求核試薬と反応させることにより単層カーボンナノチューブの側壁に付着した置換基を有する該ナノチューブの調製方法を提供する。 該フッ素置換基のいくつかは求核置換により置換される。望むならば、残りのフッ素を完全にまたは部分的に除去して単層カーボンナノチューブの側壁に付着した置換基を有する該カーボンナノチューブを製造することが出来る。該置換基は無論求核試薬に依存するであろうし、好ましい求核試薬はメチルリチウム等のアルキルリチウム種を含む。 代わりに、該フッ素誘導体化カーボンナノチューブを種々の量のヒドラジン、置換ヒドラジンまたはアルキルアミンと反応させることによりフッ素誘導体化カーボンナノチューブからフッ素を完全に、或いは部分的に取り除くことができる。
【0010】
本発明はまた、そこから個々の単層カーボンナノチューブが単離される種々の溶媒の単層カーボンナノチューブ懸濁液または溶液の調製方法であって、ファンデルワールス力により緊密に会合して保持された繊維の束を含む単層カーボンナノチューブ塊を提供し、前記単層カーボンナノチューブの側壁を前記単層カーボンナノチューブの長さに沿って実質的に均一に分布している複数の化学的部分であって、ファンデルワールス力により結合した束の再集成を防ぐに十分な化学的及び立体特性を有する化学的部分で誘導体化し、真の溶液を産出し、前記溶液または懸濁液から個々の誘導体化単層カーボンナノチューブを回収有することを含む方法を提供する。 好ましくは、該付着化学部分が、種々のアルコール類、好ましくはイソプロピルアルコール中の溶液を提供するためにはフッ素であり、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等を含む他の溶剤に溶解性を与えるために適している種々のR-基である。
【0011】
別の態様において、管状炭素分子の巨視的分子配列を形成する方法が開示される。 この方法は、50乃至500 nm(ナノメートル)の範囲の実質的に類似した長さの少なくとも約106個の管状炭素分子を提供し、該管状炭素分子の少なくとも一端上に結合部分を導入し、該結合部分が付着するであろう物質で被覆された支持体を提供し、そして結合部分を含有する該管状炭素分子を該支持体と接触させる工程を含む。
【0012】
本発明はまた、金属部分をチューブ先端へ移行させる結果となる条件下での最適金属クラスターの大きさを提供するための、側壁外表面上に共有結合した、或いは物理吸着した触媒前駆体部分を有する複数の単層カーボンナノチューブまたは短い管状分子を含む単層カーボンナノチューブの成長用の種物質を提供する。
【0013】
本発明はまた、一般的に平行な配置で集成し、金属原子の創生と該金属原子の単層カーボンナノチューブの自由端への移行を促進する条件下で該単層カーボンナノチューブを成長させるに適した大きさの活性触媒金属原子クラスターを提供するために十分な量の物理吸着した、或いは共有結合した遷移金属触媒前駆体部分を各単層カーボンナノチューブの側壁に配置した複数の相対的に短い各単層カーボンナノチューブを含む単層カーボンナノチューブの集成体の接触産出のための種配列を提供する。
【0014】
別の態様において、一般的に平行に配列した少なくとも約106本の単層カーボンナノチューブのを含む巨視的炭素繊維を連続的に成長させる方法が開示される。 この方法において、一般的に平行に配列した少なくとも約106本の管状炭素分子の巨視的分子配列が提供される。 この配列は、該配列中の平行なチューブの軸に対して一般的に垂直な角度で単一平面の開口末端ナノチューブを提供するために加工される。 次いで、配列中の該管状炭素分子の開口末端を側壁に付着した触媒前駆体基から放出される金属原子の移行を起こさせることにより触媒金属と接触させる。 該末端を約500℃乃至約1,300℃の範囲の温度に加熱するために、局在化エネルギーを配列の該末端へ供給しながら、炭素ガス源を該配列の該末端へ供給する。 成長しつつある炭素繊維を連続的に回収する。
【0015】
別の態様において、上記と類似の、単層カーボンナノチューブの開放末端に析出した触媒金属を有する少なくとも約106本の単層カーボンナノチューブ含む巨視的分子鋳型配列から、連続した巨視的炭素繊維を形成する装置が開示される。
【0016】
この装置は、成長過程にある該鋳型配列中のナノチューブの該開放端のみを局部的に加熱する手段と約500℃乃至約1,300℃の範囲の温度へアニールする帯域を含む。 その装置はまた、繊維の成長開口末端を該成長兼アニール帯に維持しつつ、該成長兼アニール帯から成長しつつある炭素繊維を連続的に取り出す手段を含む。
上述の諸目的及び当業者に明らかな他の目的は、本明細書及び本明細書中に全て含まれる1998年11月 3日に出願された米国特許仮出願第60/106,918号の本文に記載され請求されている本発明に従って達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、精製した未反応の単層カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡像である。
【図1B】図1Bは、325℃でフッ素化した後の単層カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡像である。
【図1C】図1Cは、500℃でフッ素化した後の単層カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡像である。
【図1D】図1Dは、多層カーボンナノチューブの形成を示す500℃でフッ素化した単層カーボンナノチューブの別の透過電子顕微鏡像である。
【図2】図2は、純粋な未反応の単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
【図3】図3は、Aは250℃で、Bは325℃で、Cは400℃で、最初にフッ素化した単層カーボンナノチューブのマンスペクトルである。
【図4】図4は、Aは250℃で、Bは325℃で、Cは 400℃で、最初にフッ素化したナノチューブの脱フッ素化を示すラマンスペクトルである。
【図5A】図5Aは、精製した未反応の単層カーボンナノチューブの走査電子顕微鏡である。
【図5B】図5Bは、325℃で5時間フッ素化した後の単層カーボンナノチューブの走査電子顕微鏡像である。
【図5C】図5Cは、325℃でフッ素化し、次いでヒドラジン中で脱フッ素化した単層カーボンナノチューブの走査電子顕微鏡像である。
【図6A】図6Aは、フッ素化し、次いでメチル化した単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
【図6B】図6Bは、未処理単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルと全く同じに見える熱分解メチル化単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
【図7】図7は、メチル化単層カーボンナノチューブの熱分解中に発生した生成物の電子衝撃イオン化質量スペクトルある。 このスペクトルは、略400℃のプローブ温度に対応する。
【図8】図8は、A は3時間、Bは12時間メチル化反応を行った生成物の赤外スペクトルである。
【図9】図9は、精製単層カーボンナノチューブの走査電子顕微鏡像を表わす。
【図10A】図10Aは、2-ブタノール中に溶解させ、雲母上に分散させたフルオロチューブの原子間力顕微鏡像である。
【図10B】図10Bは、図2Aにおける走査の典型的な高さ分析を示し、チューブ直径が透過電子顕微鏡及びX線回折を使用してこの生成物について前以って測定していた直径のオーダーの値である1.2乃至1.4 nm程度であることを示している。
【図11】図11は、Aは10分間、Bは40分間、Cは130分間超音波分散した後2-ブタノール中で溶媒和させたフルオロチューブの紫外スペクトルを表わす。
【図12A】図12Aは、ヒドラジンで脱フッ素化し、濾過し、ジメチルホルムアルデヒドに再懸濁し、雲母上に分散した後のフルオロチューブの原子間力顕微鏡像を示す。
【図12B】図12Bは、雲母上に分散した未処理の単層カーボンナノチューブの原子間力顕微鏡像を示す。
【図13A】図13Aは、純粋な未処理の単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
【図13B】図13Bは、フルオロチューブのラマンスペクトルである。
【図13C】図13Cは、ヒドラジンで脱フッ素化した後のフルオロチューブのラマンスペクトルである。 図中*は、アルゴンプラズマ線を意味する。
【図14】図14は、本発明の均質な単層カーボンナノチューブ分子配列の一部を模式的に表現したものである。
【図15】図15は、本発明の不均質な単層カーボンナノチューブ分子配列を模式的に表現したものである。
【図16】図16は、本発明の繊維装置の成長室を模式的に表現したものである。
【図17】図17は、本発明の繊維装置の圧力均等化兼補集帯を模式的に表現したものである。
【図18】図18は、本発明の複合配列である。
【図19】図19は、本発明の複合配列である。好ましい態様の詳細な説明炭素は、正にその本質により、高温蒸気から自己集合して完全な回転楕円体の閉鎖かご体(そのC60が原型となるが)を形成する傾向を有するのみならず(遷移金属の助けにより)集合して両端部を半フラーレンドームで完全に封鎖し得る完全な単層円筒状のチューブとなる傾向を有する。 炭素の一次的単結晶と考えられうるこれらのチューブは真のフラーレン分子である。
【0018】
単層カーボンナノチューブの欠陥は、多層カーボンナノチューブが隣接チューブ壁での不飽和炭素原子価間の橋かけにより容易に形成された欠陥部位を償うため隣接層を有しているために、多層カーボンナノチューブよりはるかに少ないものであるらしい。単層カーボンナノチューブは欠陥が殆どないため、より強力で、より導電性であり、従って類似の直径を有する多層カーボンナノチューブより一層有用である。
【0019】
カーボンナノチューブ、特に単層カーボンナノチューブは、該カーボンナノチューブの導電性及び小さな寸法のため集積回路のごときマイクロデバイス、或いはコンピューターに使用される半導体チップの電気コネクターの製造に有用である。該カーボンチューブは光周波数でアンテナとして、走査型トンネル顕微鏡(STM)及び原子間力顕微鏡(AFM)に使用されている走査型プローブ顕微鏡法のプローブとして有用である。 該カーボンナノチューブは、自動車用タイヤのカーボンブラックの代わりに、或いはそれとともに使用してもよい。 該カーボンナノチューブはまた、水素添加、改質及び分解触媒のごとき工業及び化学プロセスで使用される触媒の担体としても有用である。
【0020】
単層カーボンナノチューブのロープは比較的低抵抗で電荷を伝導する。 ロープは、例えば、導電性塗料また重合体塗料の添加剤として、或いは走査型トンネル顕微鏡のプローブ先端としての導電体を必要とする用途に有用である。
【0021】
カーボンナノチューブを定義する場合、認められている命名法系を使用することが助けとなる。 本願において、M. S. Dresselhaus, G. Dresselhaus及びP. C. Eklund共著、“フラーレン類及びカーボンナノチューブ類の科学(Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes)”、第19章、特に第756頁乃至第760頁(1996)、Academic Press、525Bストリート、シュート1900、サンディエゴ、カリフォルニア92101米国またはシーハーバードライブ、オルランド、フロリダ32877(ISBN O-12-221820-5)に記載され、参照として本明細書に包含されるカーボンナノチューブ命名法を使用する。 単層円筒状フラーレン類は、二重指数(double index)(n, m)により互いに区別される。 このn及びmは、六方“亀甲型”グラファイトの単一ストリップを円筒表面に巻き付け両端部を封鎖したとき完全な円筒となるような切断方法を記載する整数である。この二つの指数が同一(m = n)であるとき、得られるチューブは、チューブ軸に対して垂直にチューブを切断すると、六角形に側辺のみが露出してチューブ端部の周囲をかこむ型がn回繰り返したアームチェアのアームと座席に類似しているため、“アームチェア”(またはn,m)型を呈していると言われている。アームチェアチューブ単層カーボンナノチューブが金属性であるため、単層カーボンナノチューブの好ましい形態であり、また非常に高い電気及び熱伝導性を有する。更に単層カーボンナノチューブは全て非常に高い引張り強度を有する。
【0022】
カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブに関しては約0.6 nm乃至3 nm、5 nm、10 nm、30 nm、60 nm迄の、また単層又は多層カーボンナノチューブに関しては100 nm迄の範囲の直径を有する。該カーボンナノチューブは、長さが50 nm乃至1 mm、1 cm、3cm、5cm以上の範囲にある。 本発明により調製した生成物中の単層カーボンナノチューブの収率は非常に高い。
カーボンナノチューブの接触形成
更に記載されるごとく、1種以上の第VIB族クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)または第VIIIB族の遷移金属、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及びプラチナ(Pt)は、一酸化炭素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、またはそれらの混合物等の芳香族炭化水素、例えば、メエタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレンまたはそれらの混合物等の非芳香族炭化水素、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メタノール、エタノールまたはそれらの混合物等の酸素含有炭化水素等の炭素含有ガスと接触させると、カーボンナノチューブ及び/またはロープの成長を触媒する。 1種以上の第VIB族または第VIIIB族の遷移金属混合物もまた単層カーボンナノチューブ及び単層カーボンナノチューブのロープを高収率で選択的に産出する。カーボンナノチューブ及び/またはロープの成長が達成される機構は完全には理解されていない。しかし、該1種以上の第VIB族または第VIIIB族の遷移金属がカーボンナノチューブの末端に存在すると、炭素蒸気からの炭素がカーボンナノチューブを形成する固相構造へ付加するのを容易なものとするらしい。 発明者らは、この機構が生成物中におけるカーボンナノチューブ及び/又はロープの高収率で高選択性の主因であると信じており、単に本発明の結果の説明の道具としてこの機構を用いて本発明を記載する。 たとえこの機構が部分的に、或いは全体として正しくないことが証明されたとしても、これらの結果を達成する本発明は本明細書に充分に記載しされている。
【0023】
本発明の一面は、触媒として役立つナノメートル尺度の遷移金属粒子と接触するナノチューブの“活性末端”の存在する接触法により成長する1以上のナノチューブの活性末端へ炭素蒸気を供給することを含むカーボンナノチューブ及び/またはカーボンナノチューブのロープを調製する方法を含有する。 ナノチューブの活性末端は、高められた温度のアニール帯で炭素含有原料ガスと接触状態が保たれる。 この種の一方法において、加熱帯に維持されている炭素を含むターゲットにレーザービームが当る装置により本発明に従って蒸発状の炭素を供給することができる。 類似の装置は文献、例えば、参照として本明細書に包含される米国合衆国特許第5,300,203号またはPCT/US96/14188及びChaiらの “金属を内部に有するフラーレン類”(Fullerenes with Metals Inside), J. Phys. Chem., 第95巻, 第20号, 第7564頁(1991)に記載されている。 代わりに、一酸化炭素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、またはそれらの混合物等の芳香族炭化水素、例えば、メエタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレンまたはそれらの混合物等の非芳香族炭化水素、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メタノール、エタノールまたはそれらの混合物等の酸素含有炭化水素等の炭素含有原料ガスを用いてアニール帯中の触媒粒子の直接作用により炭素を活性末端へ附加することができる。
【0024】
本発明によると、“活性末端”はまた、ターゲットが第VIB族または第VIIIB族の金属を結合する化学的部分で誘導体化されているカーボンナノチューブ上に産出することができる。 この形態は以下においてより詳しく検討される。 次いで追加の炭素蒸気を適切な条件下でカーボンナノチューブの“活性末端”へ供給してカーボンナノチューブの長さを増加させる。
【0025】
形成されるカーボンナノチューブは、必ずしも単層カーボンナノチューブとは限らず、2層、5層、10層或いはいくらでも大きな数の層を有する多層カーボンナノチューブ(共中心形カーボンナノチューブ)であり得る。しかし、好ましくはカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブであり、本発明は多層カーボンナノチューブよりも更に豊富に、時には遥かに豊富に単層カーボンナノチューブを選択的に産出する方法を提供する。
単層カーボンナノチューブの延長 本発明により意図されるように、単層カーボンナノチューブの成長乃至延長には、何らかの形態の炭素がアニール帯において成長しつつあるナノチューブの活性末端に供給される必要がある。 本願において、用語カーボンナノチューブの“活性末端(live end)”は、触媒量の1種以上の第VIB族または第VIIIB族の遷移金属が位置するカーボンナノチューブの末端を意味する。 該触媒は、(単層カーボンナノチューブ分子の直径によるが)約10 乃至約200の金属原子を含有する金属クラスターとして単層カーボンナノチューブの開口末端に存在すべきである。
【0026】
チューブ直径(即ち、約0.7乃至1.5 nm)の約0.5乃至約1.0倍に等しい断面を有する金属クラスターがより好ましい。
活性末端を有するカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの活性末端がアニール帯に置かれるならば蒸気からの炭素をその活性末端へ接触附加させ、次いで追加の炭素含有蒸気を該カーボンナノチューブの活性末端へ供給することにより長さが成長する。 カーボンナノチューブの活性末端が最初に形成されるアニール帯は、500℃乃至1,500℃、より好ましくは1,000℃乃至1,400℃、最も好ましくは1,100℃乃至1,300℃に維持されるべきである。 活性末端を有するカーボンナノチューブがアニール帯で捕捉維持され、(第VIB族または第VIIIB族の遷移金属蒸気を更に加える必要はなく)更に炭素を付加させることにより長さを成長させる本発明の態様に於いて、該アニール帯は、より低い温度、即ち400℃乃至1,500℃、好ましくは400℃乃至1,200℃、最も好ましくは、500℃乃至700℃であり得る。該アニール帯の圧力は、用いられる触媒/原料系に適切な圧力範囲、すなわち、炭素または炭化水素の場合は、50乃至2,000 Torr、より好ましくは100乃至800 Torr、最も好ましくは300乃至600 Torrに、しかし一酸化炭素の場合は、100気圧までに維持されるべきである。該アニール帯の雰囲気は何らかの形態の炭素を含有する。 通常、該アニール帯の雰囲気はまた、炭素蒸気をアニール帯から清掃して収集帯へ送るガスを含有する。 カーボンナノチューブの形成を妨げないガスであるならばいかなるガスであっても清掃ガスとして働くが、好ましくは清掃ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ランドン、或いはこれらのガスの2種以上の混合物のごとき不活性ガスである。 ヘリウムとアルゴンが最も好ましい。 流動不活性ガスを使用すると、温度制御が可能で、そして更に重要なことであるが、炭素をカーボンナノチューブの活性末端へ輸送することができる。 本発明のいくつかの態様に於いて、他の物質、例えば、1種以上の第VIB族または第VIIIB族の遷移金属を炭素とともに蒸発させているとき、これらの化合物及びそれらの蒸気もアニール帯の雰囲気中に存在する。
【0027】
純料な金属を使用する場合、得られる蒸気はその金属を含有する。金属酸化物を使用する場合、得られる蒸気はその金属及びイオン、或いは酸素の分子を含有する。
【0028】
カーボンナノチューブの活性末端での該1種以上の第VIB族または第VIIIB族の遷移金属の触媒活性を殺す或いは著しく減少させる物質をあまり多く存在させることを避けるのが重要である。 水(H2O)及び/又は酸素(O2)があまり多く存在すると、該1種以上の第VIB族または第VIIB族の遷移金属の触媒活性が殺されるか、或いは著しく減少することが知られている。 従って、好ましくは水及び酸素はアニール帯の雰囲気から排除される。 普通5重量%未満、より好ましくは1重量%未満の水及び酸素を有する清掃ガスを使用すれば十分である。 最も好ましくは、水及び酸素は0.1重量%未満である。
【0029】
アニール帯で活性末端へ供給される炭素含有蒸気は、本明細書に記載されている如く、電気アークまたはレーザーにより供給されるエネルギーを使用して固体炭素ターゲットの蒸発により供給することができる。 しかし、活性末端を有する単層カーボンナノチューブが一度形成されると、該活性末端はより低い温度で且つ他の炭素源を使用して単層カーボンナノチューブの成長を触媒する。 単層カーボンナノチューブ成長用の代わりの炭素源はフラーレン類でもよく、これらは流動清掃ガスにより該活性端へ輸送することができる。 この炭素源は流動清掃ガスにより該活性端へ運ばれるグラファイト粒子であってもよい。 炭素源は流動清掃ガスにより該活性端へ運ばれる炭化水素或いはアニール帯へ導入される炭化水素ガスまたは炭化水素ガス類の混合物であってもよい。 有用な炭化水素類にはメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、他の任意のパラフィン系、オレフィン系、環状、或いは芳香族炭化水素または他の任意の炭化水素が含まれる。 炭素含有蒸気源として使用される他の代わりのものとして、一酸化炭素、テトラフルオロエチレン、エチレン等の不均化により元素状炭素を形成することができる他のガス状化合物がある。
化学修飾したカーボンナノチューブ
本発明は、化学的に誘導体化した単層側壁を有するカーボンナノチューブを提供する。好ましい態様のおいて、誘導体化は、カーボンナノチューブのより複雑な機能的化合物の形成を容易にする。 誘導体化はまた、ナノチューブ上での第VIB族及び第VIIIB族金属を錯化させることができる。 特に好ましい態様は、誘導体化ナノチューブを次の構造及び機能を有し得る本発明の誘導体化成長分子状前駆体である。
【0030】
【化1】

【0031】
この構造において、
【0032】
【化2】

【0033】
は、約102乃至約106の炭素原子を有し、また約5乃至1,000 nm、好ましくは約5乃至500 nmの長さを有する(任意的に非炭素原子によりドープされていてもよい)実質的に非欠陥円筒状グラフェンシートあり、
【0034】
【化3】

【0035】
は、該円筒状グラフェンシートに完全に嵌合し、少なくとも5個の五角形と残部の六角形を有し、典型的には少なくとも約30個の炭素原子を有し、Mは第VIB族または第 VIIIB族の金属であり、nは10乃至100,000、好ましくは50乃至20,000であり、
Rはアルキル、アシル、アリール、アラルキル、ハロゲン;置換または未置換のチオール;置換または未置換のアミノ;ヒドロキシル及びOR'(Rは水素、アルキル、アシル、アリール、アラルキル、置換または未置換のアミノ;置換または未置換のチオール;ハロゲン;及び任意に一つ以上のヘテロ原子により中断されているか或いは任意に一つ以上の=Oまたは=S、ヒドロキシル、アミノアルキル基、アミノ酸または2乃至8個のアミノ酸のペプチドで置換されている線状または環状炭素鎖からなる群より選択される)からなる群より選択される。
【0036】
本発明の誘導体化ナノチューブの他の態様は、前記構造で、金属が存在せずR基は錯体形成に必ずしも役立つとは限らないものを除く構造を有する。 下記の定義を本明細書において使用する。
【0037】
本明細書において使用される“アルキル”なる用語は、線状及び分岐した鎖状基の双方を含み、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4-ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4-トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル及びそれらの種々の分岐した鎖状異性体を含む。 該鎖は線状または環状、飽和または、例えば二重結合及び三重結合を含む不飽和であってもよい。 該アルキル鎖は、例えば一つ以上のハロゲン、酸素、ヒドロキシル、シリル、アミノまたは他の受け入れられる置換基で中断または置換されていてもよい。
【0038】
本明細書において使用される“アシル”なる用語は、式-COR(式中Rは任意の置換基で、例えば、アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン;置換または未置換のチオール;置換または未置換のアミノ、置換または未置換の酸素、ヒドロキシルまたは水素)で表されるカルボニル基を指す。
【0039】
本明細書において使用される“アリール”なる用語は、環の部分に6乃至14個の炭素を含む単環状、2環状或いは3環状芳香族基を指し、例えば、フェニル、ナフチル、置換フェニルまたは置換ナフチルがあり、フェニルまたはナフチルの置換基は、例えば、炭素1乃至4のアルキル基、ハロゲン、炭素数1乃至4のアルコキシ、ヒドロキシルまたはニトロである。
【0040】
本明細書において使用される“アラルキル”なる用語は、アリール置換基、例えば、ベンジル、パラニトロベンジル、フェニルエチル、ジフェニルメチル及びトリフェニルメチルを有する上記アルキル基を指す。
【0041】
本明細書において使用される“芳香環または非芳香環”なる用語は、 1種以上のヘテロ原子、例えば、O、S、SO2及びNで中断または非中断された5乃至8員環の芳香または非芳香環を含み、更に該環は、例えば、ハロゲン、アルキル、アシル、ヒドロキシル、アリール及びアミノで置換されていてもよく、また前記へテロ原子及び置換基もまた、例えば、アルキル、アシル、アリールまたはアラルキルで置換されていてもよい。
【0042】
本明細書において使用される“線状または環状”なる用語は、例えば、芳香または非芳香環により任意に中断されていてもより線状鎖を含む。環状鎖は、例えば、環に先行または後行する炭素鎖に結合してもよい芳香または非芳香環を含む。
【0043】
本明細書において使用される“置換アミノ”なる用語は、1種以上の置換基、例えば、アルキル、アシル、アリール、アラルキル、ヒドロキシル及び水素で置換されていてもよいアミノ基を指す。
【0044】
本明細書において使用する“置換チオール”なる用語は、1種以上の置換基、例えば、アルキル、アシル、アリール、アラルキル、ヒドロキシ及び水素で置換されていてもよいチオールを指す。
【0045】
典型的には、開口末端は約20までの置換基を含むことができ、閉鎖末端は約30までの置換基を含むことができる。立体障害のため、1末端当り約12までの置換基を使用することが好ましい。
【0046】
上記外部誘導体化に加えて、本発明の単層カーボンナノチューブ分子は内包的に、即ち、内包フラーレン技術分野で知られているごとく、構造体内に1種以上の金属原子を含有させることにより改質することができる。
【0047】
内包的な管状カーボンナノチューブを産出するためには、内部種(例えば、金属原子)を単層カーボンナノチューブ形成プロセス中に、或いは該チューブの調製後に導入することができる。
【0048】
次いで、内包的に積み込まれた管状カーボン分子は、チューブ及び任意の残存積込み物質から、積込められた円筒状分子に導入された新しい物性、例えば、金属原子が磁性又は常磁性をチューブに付与する場合、或いはバッキーボールが過剰の質量をチューブに付与する場合、その物性を利用して分離することができる。これらの物性及び他の物性に基づく分離及び精製は当業者には容易に明らかである。
単層カーボンナノチューブ側壁のフッ素を使用する誘導体化 飯島ら(1993)の単層カーボンナノチューブ(SWNT)の発見以来、その物理的性質の理解 [Issiら, (1995), Carbon, 33:941-948]、その成長機構の解明[Cromwelら, (1997), Chem. Phy. Lett., 278:262-266]及びそのための新規な用途の開発[Dillonら, (1997), Nature, 386:377-389]を目的として一陣の研究活動が存在した。 単層カーボンナノチューブに関与する化学はいまだに幼児期にある。
【0049】
これは主に、適度な量の高度に精製された単層カーボンナノチューブが前以って入手することが困難なことによる。
単層カーボンナノチューブの多量合成と精製(Rinzlerら, 1998, App. Phys.A, 67:29-37 )の発展により現在では高品質の試料を十分な量で入手出来るようになり、この魅力的な範疇の材料の化学的改質の探求が開始されている。 最近、超音波化学を採用して長い絡み合ったチューブを切断して(50乃至300 nm長の)独立した高分子尺度の開口チューブ断片とした(Liuら, 1998)。 この研究では、開口チューブ末端での懸垂炭素結合の高度の反応性を利用し、該チューブをチオール結合を介して金に繋いだ。
【0050】
開口チューブ末端とは対照的に、単層カーボンナノチューブの側壁はその芳香族的性質のためにグラファイトの基面の化学的安定性に似た化学的安定性を所有している(相原, 1994, J. Phys. Chem., 98:9773-9776)。 このため、チューブ構造を破裂させないでナノチューブ側壁の改質に利用できる化学は著しくより制限的である。 しかし、本発明者らはグラファイトのフッ素化(例えば, Lagowら, 1974, J. Chem. Soc., Dalton Trans., 12:1268-1273を参照)で開発された技術を高純度単層カーボンナノチューブをフッ素化し、次いで脱フッ素化することによる単層カーボンナノチューブ側壁の化学的操作へ適用した。 一度フッ素化した単層カーボンナノチューブは、フッ素化フラーレン類(本明細書に参照として含まれるTaylor ら, 1992, J. Chem. Soc., Chem. Comm.,9:665-667を参照)に見られた方法と似た方法で多種の側壁の化学的機能化のための段階点として役立ちうる。
【0051】
本発明により、単層カーボンナノチューブは、フッ素化剤、それはフッ素ガスまたは他の任意の公知の、XeF2, XeF4, ClF3, BrF3または IF3のごときフッ素化剤であってもよいが、それに暴露することにより誘導体化される。 XeF2及びXeF4はフッ化水素不含であるので有利である。 代わりに、AgF2 またはMnF3のごとき固体フッ素化剤はスラリー状で単層カーボンナノチューブと反応させることができる。
【0052】
精製単層カーボンナノチューブは、ヘリウム及びアルゴンを含む希ガスとの一気圧混合物中約0.5%F2混合物を用い、数種の温度及び濃度でF2を使用する処理により本発明者等により行われた。 反応器温度は150℃乃至400℃であった。 赤外分光法により共有C-F結合の存在を証明した。 生成物の化学量論量を決定し、透過電子顕微鏡法を使用して該フッ素化がチューブを破壊したか否かを証明した。 3種の異なる温度でフッ素化した単層カーボンナノチューブを次にヒドラジンを用いて脱フッ素化した。 ラマン分光法を使用してフッ素化生成物が実際単層カーボンナノチューブであるか否かを証明した。 多量の単層カーボンナノチューブが325℃迄の温度でのフッ素化工程で存続すること、及び該フッ素は有効にヒドラジンでチューブから除去され未フッ素化出発物質を再生することができること、を走査顕微鏡法及び2点抵抗測定により判定した。
【0053】
予期されなかったことではないが、フッ素化チューブの電子的物性はその未フッ素化対応物のそれとは劇的に異なる。 未処理単層カーボンナノチューブは良電導体(略10 ( 3mm ( 30 (mのバッキーペーパー試料の長さにわたる2プローブ抵抗が10乃至15()であるが、250℃以上の温度でフッ素化したチューブは絶縁体(2プローブ抵抗(20M()である。
【0054】
質量及び電子マイクロプローブ分析により、多量のフッ素が単層カーボンナノチューブへ附加され得ることを示した。 振動分光法(ラマン及び赤外)とともに抵抗測定により、ナノチューブ超構造(superstructure)への新規な化学結合の形成が確認された。 吸収された分子状フッ素の全体的なフッ素取り込みへの寄与はこれらの温度では除外される(渡辺ら,1988)。 従って、フッ素は単層カーボンナノチューブの側壁に共有的に付着しているもと結論づけられる。
【0055】
透過電子顕微鏡法の研究は、325℃という高温のフッ素化温度で、フッ素化生成物の大半はチューブ様構造体を維持していることを示した。 これらの研究は、500℃において単層チューブ状構造体はフッ素化過程では生き残れずいくらかの多層カーボンナノチューブ様構造体が形成されていることもまた示している。
【0056】
生成物化学量論量、抵抗測定及び赤外スペクトルから、150℃を超える反応温度では有意な量のフッ素をチューブ壁へ共有的に附加させ得ることは明らかである。 150℃のフッ素化反応による生成物中に現れる少量のフッ素は、吸収されたフッ素と単層カーボンナノチューブの末端キャップのフッ素化との組み合わせに帰せられよう。
【0057】
フッ素はまた、無水ヒドラジンを使用して単層カーボンナノチューブから効果的に除去することができ、該回復された生成物は実際に単層カーボンナノチューブである。 本発明者らは、一度フッ素化した単層カーボンナノチューブを次の反応、即ち、CFn + (n/4)N2H4 ( C + nHF + (n/4)N2を経由して無水ヒドラジンで脱フッ素化させることが可能であることを見出した。 これらの脱フッ素化実験とそれに関連するラマン及び走査顕微鏡法の結果から、ほんの僅かな量のチューブ破壊は250℃で起るように見えるが、該チューブの大半は400℃を超えるフッ素化温度で破壊される。 チューブの外側のみがフッ素化されている(この研究に使用された単層カーボンナノチューブ末端が閉鎖されていた)反応に対しては、該フッ素化チューブが未だその(皺が寄ってはいるが)チューブ様構造を維持し得るもであるC2Fの限界的化学量論が存在する。 このことは、元素分析により得られた生成物の化学量論量と325℃を超えるフッ素化温度における有意なチューブ破壊の証拠とにより支持される。 次いで更にフッ素を添加すると炭素炭素間結合の破壊に導かれ、このためチューブの破壊へ到達するであろう。 従って、本発明は、単層カーボンナノチューブをF2で誘導体化してその側壁の外側へフッ素置換基を、更にフッ素を希釈することにより、或いは反応温度を下げることにより、より少ない量のフッ素を附加することもできるが、C2F迄の化学量論量を附加する方法を提供する。
フッ素置換による単層カーボンナノチューブの誘導体化の変更 単層カーボンナノチューブの側壁の不活性はグラファイトの基礎平面のそれに近似するため、単層カーボンナノチューブの側壁に掛かり合う化学は非常に限定され得る。 しかし、本発明はフッ素がナノチューブの側壁に共有結合して化学反応が起る部位を提供する単層カーボンナノチューブのフッ素化方法を提供する。 フッ素化前駆体を経由する機能化は広範囲の側壁誘導体化への魅力的な道を提供することができる。
【0058】
特に好ましい態様において、高度に精製した単層カーボンナノチューブをフッ素化して“フルオロチューブ(fluorotubes)”を形成し、次いで個々のナノチューブとして溶媒和化させることができる。 例えば、フルオロチューブを超音波分散により種々の溶媒に溶媒和させることができる。 個々のフルオロチューブの溶媒和は溶媒和チューブを雲母支持体上に分散し、それを原子間力顕微鏡法で調べるすることにより実証されている。 元素分析によりアルコール溶媒中への軽い超音波分散は有意な量のフッ素を除去しないことを明らかにしている。 これらの溶液は、溶液相化学を該フルオロチューブ上で行わせるに十分長く(一週間に亙って)存続するであろる。例えば、溶媒和フルオロチューブをフッ素を除去するためにヒドラジンで処理することができ、正常な未フッ素化単層カーボンナノチューブ溶液から沈殿へと導くことができる。 代わりに、フルオロチューブをナトリウムメトキシドと反応させメトキシ化単層カーボンナノチューブを産出することができる。 これらの反応生成物はまた、元素分析および種々の分光法及び顕微鏡法により特性決定がなされている。
【0059】
本発明者らは最初に単層カーボンナノチューブの側壁を元素フッ素と反応させそれを機能化した。 本発明者らは、フッ素をカーボンナノチューブの側壁へ添加して該チューブ様構造体を破壊することなく化学量論量から近似的にC2Fまでを産出できることを発見した。 本発明者らはまた、フッ素化単層カーボンナノチューブをメタノール、エタノール及びイソプロパノール等の種々のアルコール中へ超音波分散させることにより高度の溶媒和が達成できることを発見した。 本明細書において説明されるように、これらのナノチューブに対して、それらを脱フッ素化剤として働くヒドラジンと反応させることにより溶液中ではあるが反応を行うことができる。 これらの“フルオロチューブ”を溶液中ではあるがナトリウムメトキシド(強力な求核試薬)と反応させメトキシ化単層カーボンナノチューブを形成することができることも示されている。
【0060】
本発明者らは単層カーボンナノチューブをフッ素化し、次いでアルコール中へ超音波分散して安定なフルオロチューブ溶液を形成することができることを示した。 この溶媒和により、かっては入手できなかった種々の方法でフルオロチューブの操作が可能となり、フルオロチューブの物理的化学的物性の探求に関して幅広い可能性への扉が開かれる。 フルオロチューブを先ず不均質にフッ素化し、アルコール中へ超音波分散し、次いでサブ化学量論量(substoichiometric)のヒドラジンで脱フッ素化することにより、フルオロチューブのフッ素含量を整調(tuning)することが、結果的には異なるフッ素含量で、時には全く異なる物性の幅広い種類のフルオロチューブの製作法が入手可能である。
【0061】
本発明者等は更に、一度溶媒和化したこれらのフルオロチューブを次いで溶液中ではあるが種と反応させ脱フッ素化または更に機能化することができることを示した。これらのフルオロチューブで可能な化学は多くの異なる有用な物性を有する幅広い種類の機能化ナノチューブの合成へ通じる重要な道を提供する。
【0062】
典型的な誘導体化は単層カーボンナノチューブのメチル化である。 メチル化単層カーボンナノチューブは、(単層カーボンナノチューブの側壁に付着した)フッ素をメチルリチウムのメチル基で求核置換した生成物である。 この種の求核置換はフッ素化C60とアルキルリチウム種との反応に対して以前報告されている(Taylorら,1992)。 フラーレンかご及びそのチューブのC-F結合は、 重なり歪み効果(eclipsing strain effect)によりアルキルフッ化物のC-F結合に対して弱まっている(Taylor, 1998, Russian Chem. Bull., 47:823-832)。 これは該結合を求核攻撃により晒され易くしている。 通常のSN2プロセスは幾何学的に不可能であり、またSNIプロセスは極めて起こりそうもないので新規な前面置換または多分付加削除プロセスが求核置換の原因となっている (Taylor, 1995,“フラーレン類の化学(The Chemistry of Fullerenes)”, R. Taylor 編、World Scientific Publishing, ロンドン、第208頁乃至第209頁を参照)。
【実施例】
【0063】
実施例 11.1 単層カーボンナノチューブのフッ素化
単層カーボンナノチューブを、コバルト/ニッケルでド−プしたグラファイト棒の二重パルスレーザー蒸発法により産出し、前記の技法 (Rinzlerら, 1998)により精製した。 精製生成物は、単層カーボンナノチューブ“ロープ”(数本から200本の範囲の単層カーボンナノチューブの六角形状に緊密充填された束、参照Thessら, 1996を参照)の界面活性剤Triton X-100の0.2%水溶液中の準安定コロイド懸濁液である。 該溶液をポリテトラフルオロエチレン濾過膜で濾過しメタノールで洗浄して残留界面活性剤を除去すると表面に黒い膜が残る。 もしこの層が十分厚ければ(10乃至75 (m)、それを剥がすと自立膜、即ち単層カーボンナノチューブの“バッキーペーパー”を形成する。 この形状は感知される程の機械的集結性を有し、取り扱いに便利であり、また導電性及びラマン散乱測定に便利である。 本明細書に記載されるのは、この“バッキーペーパー”のフッ素化である。
【0064】
単層カーボンナノチューブのフッ素化を行う場合、元素状のフッ素(Air Products製, 98%)をフッ素化剤として使用した。 該フッ素中の主要な不純物であるフッ化水素(HF)はフッ化ナトリウムペレットを含むフッ化水素トッラプ(Matheson Gas Products製)を通して除去した。 次いで、ヘリウム(Trigas製, 99.995%)で希釈した該フッ素を単層カーボンナノチューブ試料を含有する温度制御されたモネル流動反応器中を通した。
【0065】
フッ素化に先立ち、精製した“バッキーペーパー”を残留表面汚染物を脱着するために数時間1,100℃(2×10-6 Torr)で真空ベークした。 各反応に対して、前以って秤量した一片の“バッキーペーパー”(150乃至200 (gの重さ) を使用した。 各反応のフッ素(F2)及びヘリウムの流量はそれぞれ2 sccm 及び20 sccmであった。 いずれの場合も、反応時間は5時間であった。 唯一の変数は反応温度であった。 無機炭素+フッ素の反応の速度論が高度に温度依存性であるので[渡辺ら、1988,“(グラファイトフッ素化物(Graphite Fluorides)”, Elsevier,アムステルダム]、いくつかの反応を以下の温度、即ち150℃, 250℃, 325℃, 400℃, 500℃及び600℃で行った。 325℃及び400℃の反応温度に対しては、フッ素化は250℃で開始し1時間後に該フッ素 (F2)流を止め反応器温度を更に4時間その適切な高さへ上げた。 400℃及び 500℃ の反応温度に対しては、250℃で1時間、400℃で1時間、次いでその特定の反応温度で3時間試料をフッ素化をした。 この段階的温度操作の背後にある論理的根拠は、グラファイト(Kamarchikら, 1978, Acc. Chem. Res., 11:196-300)及びフラーレン類(Seligら, 1991, J. Chem. Soc., 113:5475-5476)のフッ素化において良く証拠付けられているCF4, C2F4, C2F6 等の分解をできる限り最小限に留めることであった。
【0066】
反応温度の関数としての生成物の化学量論量を重量法的に(TA Instruments製 TAG-DTA 2960 微量天秤)及び電子微小部分析(Cameca製 SX 50)の双方により得た。 共有結合フッ素の存在を確認するために赤外分光法(Perkin-Elmer製 Paragon 1000 FT-IR)を使用した。 フッ素化によりチューブが破壊されていく[即ち開裂していく(unzipped)]か否か、またどの温度で破壊されていくか否かを測定するために透過電子顕微鏡(JEOL製で、100keV電子線エネルギーを使用する 2010型透過電子顕微鏡)法を使用した。 未処理の、フッ素化した、及び脱フッ素化した単層カーボンナノチューブ試料を分析するために、ラマン分光法(Jobin Yvon-Spex製のISA Spectrum ONE series CCD 検出器と連結した532 nm Nd:YAG レーザー励起源を使用するHR460型モノクロメーター)、走査電子顕微鏡法(JEOL製 で、5 keV電子線エネルギーを使用するJSM-6320F型電界放射走査電子顕微鏡)および2点抵抗率測定を使用した。
【0067】
赤外分光法(KBrペレット法)で、250℃以上の温度でフッ素化した試料中の共有結合フッ素(1220乃至12.50 cm-1領域にピーク)の存在を確認した。 150℃でフッ素化した試料にはC-F伸縮周波数は見られず、その(5 mm 離れた)2点抵抗率は100以下であったので、多量のフッ素が単層カーボンナノチューブの側壁に共有結合していることは除外される。 該フッ素化反応の生成物の化学量論量を表1に示す。 重量法よる分析及び微小部分析間の不一致は上記のごとき、特に前記の該より高い温度での生成物の分解に帰することができる。
【0068】
図1Aは、精製した未反応の単層カーボンナノチューブ物質の透過電子顕微鏡像を示す。 図1Bは、325℃でフッ素化した単層カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡像である。 この像から分かるようにチューブはこれらの条件下での処理後は多くは元のままである。 図1Cは、500℃でフッ素化した単層カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡像である。 ここではチューブは本質的に全て破壊されているように見える。 高温反応の結果、多層カーボンナノチューブ(MWNT)の名残のかなりの数の嵌まり込んだ(nested)チューブ様グラファイト構造体が創生されたようである。 これらの構造体が図1Dに示される。
【0069】
多層カーボンナノチューブのフッ素化は以前に報告されている(Hamwiら, 1997, Carbon, 35:723-728)。 これは二つの温度、即ち25℃及び500℃で行われた。 室温反応はF2,HF及びIF5の混合物を用いて行われ、内位添加型化合物を産出した。 500℃で行われた反応はF2を用いて行われたもので、チューブ構造を破壊して化学量論量のCFのグラファイトフッ化物を産出していることが測定された。 これに照らすと、単層カーボンナノチューブの破壊が500℃で観察されたことはさほど驚くべきことではないが、多層カーボンナノチューブ様の構造体類が形成されていることはいくらかは驚くべきことである。 これらの構造体類の創生は試料中に存在する残留金属触媒の結果であり得る。
【0070】
【表1】

【0071】
1.2 単層カーボンナノチューブの脱フッ素化
一度フッ素化した単層カーボンナノチューブを無水ヒドラジン(Aldrich製, 98%)で脱フッ素化した。 250℃, 325℃及び400℃でフッ素化した“バッキーペーパー”断片に5 mlのヒドラジンを不活性雰囲気下室温で添加した。 単層カーボンナノチューブを濾過水洗前に1時間該ヒドラジン中に着座させた。
【0072】
単層カーボンナノチューブのラマン分光法が理論的(Richterら, 1997,Phy,Rev. Lett.,79:2738-2741)にも実験的(Raoら、1998, Science , 275:187-191)にも良く開発されているので、単層カーボンナノチューブのフッ素化及びそれに続く脱フッ素化の結果を検討するためにそれを使用した。 図2は純粋な混じり気のない単層カーボンナノチューブ物質のラマンスペクトルである。 186 cm-1のより小さいピークは単層カーボンナノチューブの特徴的なブリージングモードによるものである。 250℃, 325℃及び400℃の反応温度で5時間フッ素化した単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルを図3に示す。 250℃の反応に対応するトレースAは1340 cm-1及び1580 cm-1前後を中心とする二つの幅広いピークと一つの幅広いバンド蛍光のみを示している。 該ラマンピークはそれぞれsp3及びsp2炭素の伸縮モードに対応する。 高いF/C比を産出するより高い反応温度では、これらのピークは消え、該蛍光は減衰する。 C-F結合があまり極性化性ではないので、ここに提示されているラマンスペクトルにはそれらが見られないことは理解できる。
【0073】
最初に250℃, 325℃及び400℃でフッ素化した単層カーボンナノチューブの脱フッ素化生成物のラマンスペクトルを図4に示す。 トレースA, B及び Cはそれぞれ最初に250℃, 325℃及び400℃でフッ素化した物質に対応する。 トレースA及びBに見られるように、特徴的な186cm-1のブリージングモードは脱フッ素化で復帰する。 これはトレースCでは存在せず、チューブが400℃で多く破壊されたことを示している。更に、特徴的な単層カーボンナノチューブのピークに対して、1340cm-1のピークがフッ素化温度が高くなるに連れて成長する。 これは次の要因、即ち第一は、チューブがより高い温度で遥かに容易に開裂(unzipped)しつつあること、及び第二は、より高い反応温度でより多くの量のCF4, C2F4, C2F6等の分解が起りつつあること、の一方或いは双方に帰すことができる。
【0074】
走査電子顕微鏡像及び2点抵抗率測定を、次の各々の段階、即ち精製、325℃でのフッ素化及びヒドラジン中室温1時間の脱フッ素化を経た後の“バッキーペーパー”の一断片について得た。 図5Aはその精製した出発物質を示す。 図5Bは325℃で5時間フッ素化した後の同一断片を示す。 この像は絶縁的性質による過剰の帯電を示しているがチューブの“ロープ様”構造体がまだ明らかである。 最後に、図5Cはヒドラジン中で脱フッ素化した後の“バッキーペーパー”の同一断片を示す。 該精製した出発物質の2点抵抗は、“バッキーペーパー”表面上5 mm間での測定では15乃至16(である。 フッ素化し、また脱フッ素化した“バッキーペーパー”についての同一の測定ではそれぞれ(20M(及び125乃至130(の抵抗であった。 脱フッ素化物質が元の導電率の全てではないが殆どを回復していることは特記するに興味がある。
実施例 2
2.1 フッ素化単層カーボンナノチューブの調製
単層カーボンナノチューブをコバルト/ニッケルでド−プしたグラファイト棒の二重パルスレーザー蒸発法により産出し、前記のごとく精製した(Rinzlerら, 1998)。 高度に精製した生成物は、単層カーボンナノチューブのコロイド状懸濁束、即ち“ロープ”(Liuら,1998)からなる。 0.2ミクロンのポリテトラフルオロエチレン濾過膜上で濾過しメタノールで濯ぐと黒い膜を産出し、剥がすことができ自立“バッキーペーパー”を与える。 次いで、残留溶媒を除去するためにこのペーパー を150℃で数時間炉でベークした。 次いでこのベークした“バッキーペーパー”を、ヘリウム流の下で250℃で略1時間パージしいた温度制御モネル流動反応器に装填した。ヘリウム中10%F2の混合物を、先ず存在するフッ化水素は除去するためにフッ化ナトリウム上に流し、次いで該試料上に流した。 これにより、反応時間(8時間乃至 12時間)及びフッ素化されたる量に依存する(電子微小部分析により測定された)C3FからC2Fの範囲の化学量論量を有する物質を産出した。
2.2 メチル化単層カーボンナノチューブ
ナノチューブを一度フッ素化した後窒素パージ下の反応フラスコへ入れた。 次いで、メチルリチウム(ジエチルエーテル中1.4M,Aldrich製)を有意にモル過剰で、ゴムセプタムを通して注射器を介して該反応フラスコ中へ添加した。 反応混合物を3時間還流した後、該メチルリチウムを水/エーテル混合物で中和した。 得られた物質は濾過し、(フッ化リチウム及び水酸化リチウムを除去するために)3M 塩化水素で洗浄し、次いでメタノールで洗浄し130℃で炉乾燥を行った。 電子微小部分析により、この物質のフッ素含有量が(30%前後から少なくなって)3.7原子パーセントであることが明らかとなった。 走査電子顕微鏡法及び透過電子顕微鏡法分析により、ロープ及びチューブ構造体がフッ素化及びメチル化工程の双方で復活したことを確認した。
【0075】
単層カーボンナノチューブのラマン分光法は現在良く知られている(Raoら, 1998)。 該メチル化ナノチューブ生成物のラマン分光を、CCD検知器を備えた514.5 nmのアルゴンレーザー励起源を使用するSpex Triplemate 分光器で得た。 このスペクトルは有意な改変が起ったことを明らかにしている(図6)。 この物質をアルゴン中700℃で熱分解すると、そのラマンスペクトルで証明されるように元の単層カーボンナノチューブを再生する。 熱分解過程の熱質量分析(TGA)は、700℃への加熱時に25%の質量損失を明らかにしている。 熱分解生成物の電子衝撃イオン化(EI)質量分析法により、メチル基が熱分解中に発生した主要な種であって(図7)、残りの質量ピークは熱分解中のメチル基再結合過程のものと一致していることを明らかにしている。
【0076】
単層カーボンナノチューブの電気的物性は機能化すると劇的に変化する。 未処理の単層カーボンナノチューブは本質的には金属的であり、“バッキーペーパー”の表面上5 mmにわたる測定でのその2点抵抗(本質的には接触抵抗、Bozhkoら, 1998, Appl. Phys. A, 67:75-77)は10乃至15Ωである。 フッ素化すると、該チューブは絶縁性になり、該2点抵抗は20MΩを超える。 メチル化後の該チューブは略20MΩの2点抵抗を所有する。 メチル化生成物の熱分解は該抵抗を略100(迄下げる。 熱分解による電気導電性の不完全な回帰は、一連の反応工程従ってロープ格子中に誘発された不規則性から来る増加した接触抵抗によるものでありうる。
【0077】
該メチル化単層カーボンナノチューブはクロロフルム中に超音波分散することにより極めて簡単に懸濁させることができた。 この懸濁物をシリコンウェファー上に分散し、原子間力顕微鏡分析を行うと、該超音波分散工程が非破壊的であることが確認された。 更に多数の単層チューブが見られた。 このことは、同様に暴露した未処理の単層カーボンナノチューブについてはそうではなかった。
【0078】
該生成物の赤外スペクトルを得るために、乾燥メチル化物質を重水素化クロロホルム(CDCl3)中に懸濁させ KBr粉末上に分散し、次いで乾燥させ圧縮してペッレトにした。 重水素化クロロホルムを使用することにより、残留溶媒の存在によるC-H 伸縮モードを見る可能性を取り除いた。 該ペッレトの赤外分析により図8に示されるようにそのスペクトルの略2950cm-1の領域に有意な量のC-H伸縮が存在することが明らとなった。 しかし、フッ素の全ては置換されなかったということを示す有意な伸縮バンドもまた存在する。 これは、多分フッ素が元のフッ素化で可能であった程度には、嵩高なメチルリチウムがロープ格子に侵入し得ないためであるのかもしれない。 代わりに、 該かごは電気陰性度が減少するらしく、そのため続くフッ素が置換されるとき求核攻撃により晒され難くなる(Boltalinaら, 1996, J. Chem. Soc., Perkin Trans., 2:2275-2278を参照)。
【0079】
該メチル化チューブは、試みられた非極性炭化水素溶媒のいづれにも懸濁可能ではなっかた。しかし、該メチル化チューブのクロロフォルム中への懸濁性はその未処理チューブのものよりも優れているという事実は興味がある。 個々に操作され得る個々のチューブとして該メチル化単層カーボンナノチューブを懸濁させるための好ましい溶剤を使用することは、有意な利益をもたらすであろう。 代わりに、他の求核剤、例えば、ブチルも単層カーボンナノチューブを好ましい溶剤により懸濁可能とするためのフッ素置換用になりうるし、このことも等しく意義のあることである。
【0080】
要するに、単層カーボンナノチューブは先ずそれをフッ素化し、次いでフッ素化生成物をメチルリチウムと反応させることによりメチル化した。 フッ素化単層カーボンナノチューブ先駆体のこのメチル化は、広範囲の置換単層カーボンナノチューブ生成物を生み出すことができる新規な求核置換過程路を経由して進む。
実施例 3
3.1 高度に精製した単層カーボンナノチューブの調製
単層カーボンナノチューブをコバルト/ニッケルでドープしたグラファイト棒の二重パルスレーザー蒸発法で産出し、前に論じた方法(Rinzlerら、Appl. Phys. A, 1998, 67;9-3)により精製した。 このようにして産出した単層カーボンナノチューブは主に(10,10)のカーボンナノチューブである。 該精製物はTritonTM X-100界面活性剤0.2%水溶液中の単層カーボンナノチューブの“ロープ”(数本乃至200本の範囲の単層カーボンナノチューブのチューブ束、Thessら、Science 1996, 273, 483-487を参照)の準安定コロイド懸濁液である。 次いでこれを(Sartorius製で, 0.2(mの孔寸法を有する)ポリテトラフルオロエチレン濾過膜で濾過しメタノールで濯いだ。 これを濾過しメタノールで濯ぐと、略10(mの厚さの単層カーボンナノチューブの自立性“マット”または“バッキーペーパー”である最終製品に至る。 該単層カーボンナノチューブの純度は走査電子顕微鏡 (JOEL製 6320F 走査電子顕微鏡)法により監視した。 図9は典型的な純度の試料を示す。 この生成物を次いでジメチルホルムアミド(DMF, Fisher製,高速液体クロマトグラフィーグレード)中で超音波分散により再懸濁した。 この処理は、該チューブをその欠陥部位で“切断する”と信じられ、また該ロープを幾分解きほぐすように見え、より少ない単層カーボンナノチューブを含む束へと至る。 次いで、この生成物を濾過し、濯ぎ、フウ素化前に150℃で2時間オーブン中で加熱した。 ジメチルホルムアミド中での超音波分散はより小さな単層カーボンナノチューブロープをもたらすことが出来、最終的にはより効率的なフッ素化へ至る。
3.2 フッ素化単層カーボンナノチューブの調製
精製ナノチューブ(5乃至10mgのバッキーペーパー型)をモネル(MonelTM)及びニッケル製の温度制御したフッ素化反応器に入れた。 ヘリウム(Trigas製、 99.995%)中250℃で十分にパージした後、フッ素(Air Products製、 98%,フッ素はフッ化ナトリウムペレット上を流すことによりフッ化水素を除去した)を導入した。フッ素流量は徐々に増加させて20 sccmのヘリウム流量中に希釈して2 sccmの流量とした。 フッ素化は、略10時間進行させてその時点で反応器を室温に戻し、該フッ素流量を徐々に下げた。 フッ素流を完全に止めた後で、フッ素化生成物を除去する前に、反応器を室温で略30分パージした。 フッ素化単層カーボンナノチューブは、電子探針微小部分析(EMPA, Cameca製, SX-50)により測定したところ略70原子パーセントの炭素と30原子パーセントのフッ素からなっていた。 このフッ素化生成物は、ラマン、赤外、 走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、抵抗測定及びX線光電子分光法[Physical Electronics製、 軟単色Al K((1,486.7eV)X線を使用するPHI 5700 XPS]により良く特性決定された。
3.3 アルコール中での溶媒和
フッ素化チューブをパーフルオロ化溶媒中で超音波分散し加熱する“同類は同類を溶解する(like dissolves like)”という手法でフッ素化チューブを溶解させる試みは殆ど成功しなかった。 アルキルフッ化物の水素結合可能性についての最近の研究は、このような種におけるフッ素は、貧水素結合受容体であることを示唆している(Dunitzら, R. Eur. J. Chem., 1997, 3(1):89-98; Howardら, Tetrahydron, 1996, 52(38): 12613-12622). しかし、このF-イオンは入手可能な最良の水素結合受容体の一つである。 HF と F-との間に形成された水素結合の強さは共有結合の強さに接近している(Harrelら, JACS 1964,86:4497)。 本発明者らのフッ素化単層カーボンナノチューブのX線光電子分光分析は687 eVの結合エネルギーに一つのF 1sピークの存在を明らかにしている。 ポリテトラフルオロエチレンは691.5 eVの一つのF 1s結合エネルギーを有する。 これは、フルオロチューブに結合したフッ素が、アルキルフッ化物中に存在するフッ素よりかなりよりイオン的であることを示唆している[参照 渡辺ら、グラファイトフッ化物(Graphite Fluorides),Elsevier:アムステルダム, 1988;第246頁を参照]。 このようにフルオロチューブ中のC-F結合のより増加したイオン性の性質はフルオロチューブ上でフッ素をより良い水素結合受容体にするこができる。
【0081】
フッ素化単層カーボンナノチューブ物質のアルコール類中での超音波分散は、略10 mLのアルコール溶媒を含む管壜に略1 mgの材料を入れ略10分間超音波分散させることにより行われた。 超音波分散は、55kHzで操作する(水を含む)コール-パーマー(Cole-Parmer)超音波洗浄器中に蓋をした管壜を浸漬することにより行った。 溶媒和フルオロチューブを次いで3,000rpmの回転スピナー(Headway Research,Inc.製)により清浄な雲母表面上に分散し電子間力顕微鏡法(Digital Instruments製、 Multimode SPM)で検査した。 該溶媒和フルオロチューブをまた石英分光セルを使用する島津1601 PC型紫外線可視分光計で分析した。
【0082】
フルオロチューブを、メタノール、エタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2-プロパノール、2-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール及びn-ヘプタノールを含むアルコール溶媒中で超音波分散することにより溶媒和させた。 アルコール溶媒中でフルオロチューブを超音波分散すると準安定溶液が産出された。 これらの溶液は、使用濃度及び溶媒によって数日から1週間に亙って安定であった。 典型的な超音波処理時間は10分前後であるが、該チューブを完全に懸濁させるためには(ペンタノール以上の)より重い溶媒は僅かに長い時間の超音波分散を要した。 使用した溶媒中で2-プロパノール及び2-ブタノールがフルオロチューブを最も良く溶媒和させるように見え、その溶液は一週間よりも長く安定であった。 2-プロパノール中での溶媒和“フルオロチューブ”の溶解度限界は少なくとも0.1 mg/mLである。 この溶液は、1週間よりわずかに短い期間は安定であって、数日後には粒状物のようなものが沈殿した。
【0083】
該溶解度限界を広げることが溶液の安定性をいくらか減少させること、或いは過飽和溶液が僅かの時間存在し得ることを示唆している。 その他の溶液の全ては沈殿を始める前は少なくとも2,3日安定であった。 このような溶媒和に対する起こり得る筋書きは、該アルコールの水酸基の水素と該ナノチューブのフッ素との間の水素結合であろう(図式1)。 アルコキシ置換(またはフッ化水素の発生)の証拠は観察されなかった。
【0084】
【化4】

【0085】
水、ジエチルアミン、酢酸及びクロロホルムのごとき他の強水素結合溶媒中でフルオロチューブを溶媒和させる努力が払われた。 水はフルオロチューブ自身を“湿潤”させないであろうが、少量のアセトンを添加すると湿潤させるであろう。 この水/アセトン混合物中で長時間超音波分散を行ってみてもフルオロチューブの溶媒和化は成功しなかった。 同様に、ジエチルアミンや酢酸もフルオロチューブを溶媒和させないであろう。 クロロホルムは該チューブを溶媒和させたが、その溶液はアルコール溶媒中の溶液より遥かに安定性に欠け、1時間以内にフルオロチューブは溶液から沈降した。
【0086】
溶媒和フルオロチューブを0.2ミクロンのポリテトラフルオロエチレンフィルター上で濾過した。 一度乾燥させると、該フルオロチューブはペーパー状に剥がすことができ自立性の膜を形成した。 次いでこの膜を、ラマン分光法(Jobin Yvon-Spex製のISA Spectrum ONE series CCD 検出器と連結したLiconixアルゴンレーザーからの514.5 nmの励起を使用するHR460型モノクロメーター)及び電子探針微小部分析により、生成物の組成に基づき反応が何か起ったか否かを測定した。 (シクロヘキサノール、n-ヘキサノール及びn-ヘプタノール中の溶液を除き) 全ての溶液から得られるフルオロチューブを原子間力顕微鏡法で調べた。 図10は、n-ブタノールに溶解させ次いで清浄な雲母上に分散させたフルオロチューブの原子間力顕微鏡走査を示す。 この結果は、原子間力顕微鏡法で調べた全てのフルオロチューブ/アルコール溶液に関してかなり典型的なものである。 僅かに“ロープ(チューブの束)”は存在するが、殆ど全てのチューブは溶媒和されると信じられる。
【0087】
これらの溶液のいくつかは19F-NMRで調べたがこれはあまり有益な手段ではないことが証明された。 これは略175ppmを中心とする幅広いピークを産出した。 このピークはフッ素の存在を表すものであるが、この広がりは、種々のF環境(C60 の不均質フッ素化に見られるもの(Kniazら, J. Am. Chem. Soc., 1993, 11:6060-6064)によるか、或いは溶液中に存在する間の不十分な“タンブリング(tumbling)”かによるものである。 この方法では可能な水素結合の環境に関する情報は何も得られなかった。
【0088】
イソプロパノール中のフルオロチューブ溶液をポリテトラフルオロエチレンフィルター上で濾過し該チューブを電子探針微小部分析で調べると、酸素は存在せず、フッ素の量は僅かに減少したこと(出発物質のC/F原子パーセント比=70/30に比較してこの生成物のC/F原子パーセント比=72/28)が明らかとなった。 このことは、溶媒和プロセスが化学反応の結果ではなく、該アルコールとナノチューブ表面上のフッ素との水素結合の結果であることを示唆するものであろう。 更に長い時間(2時間)超音波分散を行ったナノチューブの分析は、フッ素の量は減少した(原子パーセント比=76/24)がまだ溶媒和状態を保っていたことを示した。 超音波分散は、もし十分長く進行させることができれば、いくらかのフッ素の除去を可能とすることは明らかである。 該チューブを連続的にイソプロパノール中に超音波分散し、超音波分散時間t=10及びその後30毎に紫外線可視分光計で監視した。 40分間超音波分散を行った後の溶液は、204 nmに吸収バンドを示した。 このバンドは超音波分散が進行するに連れて成長しつづけ、より低エネルギーへとレッドシフトへ成長し、フッ素は恐らくは除去されつつあったのである。 130分間超音波分散を行なうと、該ピークは強度を増し237 nmへとシフトした(図11)。
3.4 溶液中での反応
本発明者らはヒドラジンが有効な脱フッ素化剤であることを示した。 無水ヒドラジン(Aldrich製,98%)を溶媒和フルオロチューブへ添加した。 反応混合物をガラス攪拌棒で約1時間絶えず攪拌した。 次いでこの生成物を電子探針微小部分析及びラマン分光で調べた。 また、それをジメチルホルムアミドに懸濁させ、雲母表面上に分散し、原子間力顕微鏡で調べた。 その装置及び手順は上記のものと同様であった。
【0089】
イソプロパノール中のフルオロチューブの溶液に無水ヒドラジンを添加すると、フルオロチュウーブは直ちに溶液から沈殿した。 1時間着座させた後溶液を濾過すると、電子探針微小部分析により測定されるように、極めて少量のフッ素含有量の生成物(C/F原子パーセント比=93/7)を産出した。 未反応の単層カーボンナノチューブがジメチルホルムアミド中にかなり良く懸濁することがわかり、それを雲母上に分散し、次いで原子間力顕微鏡分析を行うと、出発物質そのものを暗示するチューブが産出された(図12A及び図12B)。
【0090】
単層カーボンナノチューブのラマン分光法は良く確立されており(Richter, E., ら, Phys. Rev. Lett., 1997, 79(14):2738-2741; Raoら, Science, 1997, 275:187-191; Fangら, J. Mat. Res., 1998, 13:2405-2411)、フッ素化、超音波分散及び脱フッ素化を経由する出発物質を追従するプローブとして使用した。 ヒドラジンで脱フッ素化生成物のラマン分光は、該出発物質に類似しているがフッ素化単層カーボンナノチューブとは非常に異なるスペクトル(図13A,図13B及び図13C)を産出する。
【0091】
フルオロチューブはまた0.5Mナトリウムメトキシドのメタノール溶液中(Aldrich製、A. C. S.試薬)で10分間超音波分散させた。 このチューブは壊れ、そして懸濁するように見えたが、静置すると速やかに溶液から落下した。 これもまた濾過し、濯ぎ、そして電子探針微小部分析及び電子衝撃質量分光法(Finnegan製, MAT95)で調べた。
【0092】
メタノール中ナトリウムメトキシド中でフルオロチューブの超音波分散を2時間行った結果、該チューブは溶液から沈澱した。 濾過した生成物を(フッ化ナトリウムを除去するために)水及びメタノールで濯ぎ、次いで炉中140℃で半時間乾燥した後、電子探針微小部分析に付した。 C対 F対Oの相対原子パーセントが79対17対4であることが明らかとなった。この値は、C対 F対Oの相対原子パーセントが66対33.7対0.3を有する出発物質からかなり変動しており、生成物の化学量論量のC4.4F(OCH3)0.25 を示唆している。 質量分光計中の高温プローブでこの物質を熱分解し、次いで電子衝撃イオン化すると、残余イオン電流トレースにより測定されるように、主として650 乃至700℃で有意な量のメトキシイオン(m/z=31)が脱落した。 この高温発生は、観察さてたメトキシ基は元はナノチューブへ強力に結合していたことをを示している。 もし電子探針微小部分析により観察され酸素比が該ナノチューブに存在するメトキシ基の数に反映しているのであれば、ナノチューブの末端炭素の数は側壁炭素数に対して非常に少ないという事実に基づいて、これらの大半はナノチューブの側壁に結合していたにちがいないと結論づけることができるであろう。
【0093】
メトキシ陰イオンによるフッ素化ナノチューブに対する求核攻撃はもっともらしい筋書きであって、この種の求核攻撃はフッ素化フラーレン類の場合は文献により良く立証されているためである[Mickelson ら、 J. Fluorine Chem. 1998, 92(1):59-62;Taylorら、 J. Chem. Soc., Chem. Comm.,1992, 665-667]。 フッ素化フラーレン(及びカーボンナノチューブ)上のC-F結合は、アルキルフッ化物類におけるC-F結合に対して“重なり歪み効果”によるために弱められている[Taylor R.ら、Russian Chemical Bullettin, Engl. Ed. 1998,47(5):823-832]。 この種の求核攻撃は、スキーム2に示すように、陽性ベータ炭素に対する攻撃を経由してフッ素が付着したカーボンに起りそうである。 これは、SN1型置換はエネルギー的に不利であって、SN2型における機構と同じように背面攻撃は不可能であるという事実により合理的に説明される [Taylor, R The Chemistry of the Fullerenes(Edited by R. Taylor), World Scientific Publishing, London, 1995, 第208頁乃至第209頁 ]。
【0094】
【化5】

【0095】
単層ナノチューブ分子の均質集団に対する特に興味ある一つの応用は、個々のナノチューブ配列に対し実質的に垂直な方向に伸びる単層を形成するための、実質的に平衡に配列して(例えば、ファンデルワールス力により)凝集する単層ナノチューブからなる実質的に二次元的な配列を産出する。 このような配列の形成は、以下に示されるようにナノチューブ末端および側壁の両方を誘導体化することにより実質的に可能となる。このような単層配列は、“自己集成単層[self-assembled monolayers (SAM)”またはラングミュアーブロジェット膜(Hirch、第75頁乃至第76頁を参照)を用いる従来技法により形成することができる。このような単層配列を模式的に図14に示す。この図において、誘導化ナノチューブ1は、該ナノチューブに付着した結合または錯化部分の相互作用により反応性被覆3(例えば、金)を有する支持体2に結合している。 この応用における側壁の誘導体化は、配列が集成するときチューブをより効率的に一緒に移動させることを可能とすることにより該配列の集成を容易にすることができる。
【0096】
典型的に、自己集成単層は[金、水銀またはITO(インジュム−錫−酸化物)のような]金属でありうる支持体上に創出される。 興味ある分子は、ここでは単層ナノチューブ分子であるが、−S−, −S−(CH2)n−NH−, −SiO3(CH2)3NH−等のリンカー(linker)部分を介して(通常は共有的に)該支持体に結合している。このリンカー部分は、最初に支持体層に、或いは最初に単層ナノチューブ分子(の開いた或いはは閉じた端部)に結合させて反応性自己集成を提供することができる。 ラングミュアーブロジェット膜は2相、例えば、炭化水素(例えば、ベンゼンまたはトルエン)と水との界面に形成される。膜の配列は親水部分と親油部分を反対の端部に有する分子またはリンカーを用いることにより達成される。 単層ナノチューブ分子の配列の配置は、その供される用途により均質又は不均質であり得る。同種及び同構造の単層ナノチューブ分子を使用すれば、図14に示す種類の均質配列が得られる。異なる単層ナノチューブ分子を使用すれば、ランダムまたは規則不均質構造が産出される。規則不均質配列の一例を図15に示す。ここではチューブ4は(n, n)型、即ち金属構造であり、チューブ5は(m, n)型、即ち絶縁性である。この配置は、前以って遮蔽しておいた反応性支持体の面域を除去した後、逐次反応を用いることにより達成することができる。
【0097】
実質的に平行関係にある103乃至1010またはそれ以上の単層カーボンナノチューブ分子を含む配列は、それ自体ナノ多孔性(nanoporous)の導電性分子膜として、例えば、燃料電池及びリチウムイオン電池等の電池に使用することができる。この膜はまた、(シス-[ビスチアシアネートビス(4,4'-ジカルボキシ-2,2'-ビピリジンRu(II))]のごとき光活性分子を付着させ、或いは付着させずして)米国特許第5,084,365号に示される種類の高度に効率的な電光セルの製造に使用することができる。
【0098】
本発明の単層ナノチューブ分子配列の一つの好ましい用途は、以下に記載するように単層カーボンナノチューブの巨視的炭素繊維の成長用“種(seed)”または鋳型を提供することである。この鋳型における巨視的断面の使用は、繊維の成長中、ナノチューブの活性(開口)末端を原料に暴露させ続けるために特に有用である。本発明の鋳型配列は、最初の支持体上に形成され、その最初の支持体から切り離して使用することができるし、また(ファンデルワールス力が一つにしている)支持体なしで使用することができ、また繊維形成条件のより好ましい第二の支持体へ移動させることもできる。
【0099】
単層ナノチューブ配列が下記のごとく巨視的炭素繊維を成長させる種または鋳型として使用される場合、配列は実質的に二次元的配列として形成される必要はない。 “種”配列は、例えば、切断されたファンデルワールス接触の平行ナノチューブ繊維の先端、或いは該繊維から切断されたような繊維の短い断片であり得る。 このような支持体は、繊維末端を含むその表面を露出したナノチューブ端の清浄で高度に平坦な表面とするためには研磨及び/または電気化学的エッチングにより清浄で平坦に調製されなければならない。 その上部の表面で二次元的配列を呈する任意の形態の配列が使用できる。 その好ましい態様において、鋳型分子配列は、以下で産出される操作可能な長さの巨視的炭素繊維である。
【0100】
大きな配列(即ち、106を超えるチューブ)もまた、より小さな配列を組み合わせるることにより、或いはチューブ及び/またはロープの線状の集まりを折り畳むことにより(即ち、n本のチューブの集まりを一回折り畳むと2n本のチューブの束となる)ナノチューブを用いて集成することができる。
【0101】
種”からのナノチューブの成長 本発明は単層カーボンナノチューブ分子配列から連続した炭素繊維を任意の所望の長さへ成長させる方法を提供する。 本発明に従って実質的に平行なナノチューブの集合体を含む炭素繊維は、好ましい種分子配列の成長(延長)により製造することができる。本明細書に用いられる“巨視的炭素繊維”なる用語は、物理的に操作されるに十分大きい、典型的には約1ミクロンを超え、好ましくは約10ミクロンを超える直径を有する繊維を指す。
【0102】
単層カーボンナノチューブの形成は、第VIB族または第VIIB族の遷移金属(個々に、或いは混合物として)含む触媒粒子が“成長する単層カーボンナノチューブ”の末端に存在して500ないし2,000℃の温度で起こることが知られている。 該触媒粒子が炭素含有原料と相互作用して炭素が単層カーボンナノチューブとして知られる構造体の組織化された炭素へ変換されることによる化学的プロセスを促進する。 一度特定の形状寸法(geometry)(キラリティー及び直径)を有する単層カーボンナノチューブが成長し始めると、チューブの形状寸法は固定する。 接触的チューブ成長プロセスは適切な寸法範囲と化学組成を有する触媒粒子により最も効果的に促進される。 該最も効果的な触媒粒子は成長するナノチューブの直径に略等しい直径を有し、単一金属または金属混合物を含むものであるということを当該技術の諸例が示している。 本発明の目的は、適切な触媒粒子が存在する単層カーボンナノチューブの末端で形成され、該チューブ/触媒粒子集成体を適切な環境へ導入すると、該チューブの成長を開始させることができる方法を提供することである。
【0103】
この目的を達成させるために、本発明は、単層カーボンナノチューブの更なる成長を支持するように個々のフラーレン単層ナノチューブ(SWNT)の末端に触媒粒子を集成する方法を提供する。 このような“種”チューブからの単層ナノチューブの成長を故意に開始することは以下において有用である。
(1) この方法は、“種”チューブと同一の形状寸法を有するナノチューブを製造するように働くことができる。 [フラーレン単層ナノチューブ(SWNT)は異なる形状寸法(チューブ軸に対して異なる直径および炭素原子配列)で形成されうること及びこれらのチューブの物理的性質(例えば、導電性)が一般にこれらの形状寸法に依存することはよく知られている。] このチューブの形状寸法を制御することにより、特定の物性を要求する応用のための単層カーボンナノチューブを成長させることができる。
(2) この方法は、ナノチューブの量産出を可能とする方法として役立つことが出来る。
(3) この方法は、他の手段により収集した単層カーボンナノチューブ及び規則構造の成長を可能とすることができる[例えば、好ましい配列は“自己集成単層”またはラングミュアーブロジェット膜(SAM)(Hirch、第75頁乃至第76頁を参照)を用いる従来技法により形成することができる]。
(4) この方法は、全てがファンデルワールス力接触の平行ナノチューブを含む単層カーボンナノチューブ物質の構造的形状物を成長させるために使用することができる。 これらの物質は、その種を求める構造の物体の断面の形状に適切に配置することによりシート、Iビーム、溝等の形状を有することができる。
【0104】
これらの目的を達成し“種”からの成長の利益を提供するために、本発明は以下のものを提供する。
(1) 測定量の遷移金属含有種が個々の単層カーボンナノチューブ断片の側壁または単層カーボンナノチューブ断片群の側壁に化学的に(共有結合、化学吸着、物理吸着、或いはそれらの組み合わせにより)付着する。 好ましい態様は、湿気や空気への暴露に対して安定な化合物として該金属か含まれているものである。 該単層カーボンナノチューブ断片に付着した金属量は、誘導体化度により決定され、これは本明細書おいてチューブ長のナノメートル当たりの誘導体部位数として定義されものである。 本発明において好ましい誘導体化度は、ナノメートル当たり略1であり、その好ましい誘導体化方法は金属原子を含む種の共有結合である。 代わりに、該遷移金属を“種”の開口チューブ端部へ導入された金属蒸気から直接その表面に析出させることができる。
(2) 金属原子がチューブ断片の先端またはその付近で集合するようにさせ、その結果該チューブ/触媒集成体が適切な環境へ導入されるときに、その集合体がチューブの成長を可能とする好ましい触媒であるように、該金属または金属含有種を化学的に、或いは物理的に加工すること。
(3) “種”チューブの直径及びキラリティーを選択することによる特定の形状寸法(キラリティー及び直径)を有するナノチューブの成長。
(4) 単層カーボンナノチューブの組織化された構造体(例えば、個々のチューブ、緊密に充填された多数の平行チューブを含むチューブ膜、平行軸を有するチューブ棒または繊維等の特定な相対的な間隔または配列を有するチューブ配列)で、その初期の構造体が該構造体を形成する単層カーボンナノチューブの側壁へ付着した分子代行物(molecular agencies)の操作を含む他の手段により集成されたものの成長及びそのようにして産出された新規な組成物。
(5) 単層カーボンナノチューブが全て同一の形状寸法(キラリティー及び直径)を有する[上記(4)のごとき]単層カーボンナノチューブの組織化された構造体の成長及びそのようにして産出された組成物。
(6) 単層カーボンナノチューブが全て特定の機能(例えば、小さな“絶縁されたワイヤー”が奏する大きな間隙の半導体配置のチューブにより取り囲まれた導電配置のチューブ心材)を果たすように選択された形状寸法の範囲を有する[上記(4)のごとき]単層カーボンナノチューブの組織化された構造体の成長及びそのようにして産出された構造体。
(7) 全てのチューブが公知の技法により切断され単一チューブの断片から成長したために全てが正確に同一の形状寸法を有する一団の“単クローン”(monoclonal)チューブの産出及びそのようにして産出された組成物。
【0105】
本発明は下記により更に例示される。
(a) 例えば、ジメチルホルムアミド中に単層カーボンナノチューブを超音波分散させることにより0.1乃至1ミクロン長の単層カーボンナノチューブの断片を切断し、特定の範囲の長さのチューブ断片を選択し、エチレン等のキレート化剤を該チューブの壁へ共有的に結合させる方法。 これらの結合部位は互いに十分離れており、キレート剤の分子数は該チューブ断片の末端で活性触媒クラスターを形成するに必要な金属数と略等しい。 フッ素化チューブ上の誘導体化部位の小さな断片上での置換反応を経る色々な種の共有結合が、本明細書中に記載されている。 キレート剤は、該ナノチューブ上のフッ素を置換するようにフッ素化単層カーボンナノチューブと反応させ、次いで誘導体化されたナノチューブを金属イオン(例えば、Fe3+)の弱水溶液で洗浄する。 該Fe及び水と該キレート化剤との相互作用で空気及び水に暴露下で安定な錯体を該チューブ表面上に形成する。 該チューブ物質は(H2のごとき)還元雰囲気中で加熱することができる。 この加熱はガス状生成物へ変換せることにより該キレート化剤を反応させチューブ壁へフッ素を吸着させ、そして適切な温度で該フッ素はチューブ壁に沿って移行する。 該チューブの末端は、該フッ素が移行する表面の不規則性を呈し、該フッ素はチューブの成長用の触媒粒子として機能するに適した集合体として優先的にそこに集まる。
(b) 上記(a)と同様ではあるが、共有結合により単層カーボンナノチューブの側壁に繋がれたエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはビピリジン等のより複雑な多座配位子、或いはカルボン酸基または水酸基等のより簡単な種を含む手法。
(c) 単層カーボンナノチューブ断片の末端へ触媒粒子を集成するための別の手段は、キレート化剤、他のリガンドまたは金属含有種自体が(開口及び閉鎖した)チューブ末端へ化学的に付着する反応プロセス含む。 上記の如くチューブ末端はより活性な部位であり、チューブ側壁よりより広範囲な化学的プロセスを支持する。 金属含有蛋白(例えば、メタロチオネイン)または金属含有錯体のイオン交換及び共有付着のいずれもが可能な例である。 例えば、チューブ末端に存在することが知られているカルボン酸基用の金属原子、直接付着した金属含有蛋白、或いは他の金属含有種をチューブ末端と交換することができる。 もし必要ならば、更なるプロセスでチューブ断片の末端に付加的に金属を析出させることが可能である。 金属の量は、試薬の濃度、温度及び反応時間を制御する通常の方法により簡単に決定される。 ここで再び適切な寸法の金属原子の集成体が選択された単層カーボンナノチューブ断片の末端で形成され、適切な条件下でのチューブ成長用触媒として役立つことができる。
(d) チューブ側壁に付着した種により配列形成が可能とされ且つ制御される単層配列の形成。 配列形成を可能とするこの種を共有結合、化学吸着、物理吸着またはそれらの組み合わせによりチューブへ付着させることができる。 本発明のこの側面は、(i) 組織化された構造体への単層カーボンナノチューブ断片の組織化を可能とし且つ制御すること及び (ii) 適切な化学的プロセスの下で、金属粒子がチューブ先端へ移行し更なる単層カーボンナノチューブの成長のための触媒を形成するように金属含有種、金属原子、或いはイオンをチューブ側壁へ導入させることである。
【0106】
成長プロセスの第一工程は、単層カーボンナノチューブの分子配列の成長末端分子配列において開くことである。 これは、上記の如く酸化的及び/または電気化学的処理により達成される。 次に、遷移金属触媒を該開口端の種配列へ添加する。 該遷移金属触媒は下記の炭素含有原料を成長しつつある末端でその好ましい六角形構造体へ再配置する高度に移動性の炭素ラジカルへ変換させる任意の遷移金属であり得る。 好ましい物質は遷移金属であり、特に第VIB族または第VIIIB族の遷移金属、即ちクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及びプラチナ(Pt)である。 ランタノイド及びアクチノイド系列からの金属もまた使用できる。 鉄、ニッケル、コバルト及びそれらの混合物が好ましい。 ニッケルとコバルトの50対50(重量比)の混合物が最も好ましい。
【0107】
触媒は(単層カーボンナノチューブ分子直径により)約10金属原子から約200金属原子までを含む金属クラスターとして開口単層カーボンナノチューブ末端に存在すべきである。 典型的には、該触媒金属クラスターが開口チューブの頂上に着座し、近接チューブへ橋架けしないならば反応は最も効率的に進行する。 チューブ直径(例えば、約0.7乃至1.5 nm)の約0.5乃至約1.0倍に等しい断面を有する金属クラスターが好ましい。
【0108】
好ましい方法において、触媒は真空蒸着法により分子配列の開口チューブ末端にその場で形成される。 任意の好ましい装置、例えば、分子線エピタキシー(MBE)蒸着で使用される装置を用いることができる。 そのような装置の一つがKudsen噴散源蒸発器(Effusion Source Evaporator)である。 チューブ末端付近で線材(例えば、ニッケル/コバルト線材または別々のニッケル及びコバルトの線材)を十分な原子が一本の線材表面から蒸発する融点より低い温度(例えば、約900乃至約1,300℃)へ単に加熱するだけで金属の十分な析出を行うことも可能である。
【0109】
該析出は好ましくは前以ってガス放出をした真空中て行われる。 約10-6 Torr乃至10-8 Torrの真空が適している。蒸発温度は該金属触媒を蒸発させるために十分高くすべきである。典型的には、好ましい態様であるニッケル/コバルト触媒に対しては1,500℃乃至2,000℃の範囲の温度が適している。蒸発方法において、金属は典型的には金属原子の単層として析出される。約1乃至10の単層が一般的には触媒の必要な量を与える。開口チューブ頂点への遷移金属クラスターの析出は、触媒析出帯の金属ターゲットのレーザー蒸発によっても行うことができる。
【0110】
開口チューブ末端での実際の触媒クラスター形成は、該チューブ末端を、金属原子が開口末端を探し出し集合してクラスターとなることができるような十分な種の移動を提供するに十分高い温度であるが、チューブの末端を閉鎖させる程度には高くない温度へ加熱することにより行う。典型的には、約500℃までの温度が適している。一つの好ましい態様であるニッケル/コバルト触媒系に対しては約400℃乃至500℃の範囲の温度が好ましい。
【0111】
好ましい態様において、該触媒金属クラスターは、次に続く成長反応の最良の場所を確保する結合プロセス(docking process)により開口ナノチューブ末端上に析出させる。このプロセスにおいて、金属原子は上記のごとく供給されるがその条件は還元条件、例えば、800℃、水素10ミリトールで1乃至10分へ改変する。これらの条件は、金属原子クラスターが反応部位を求めて系中を移動させるものである。還元加熱中、触媒物質は最終的には開口末端を見出しそこへ定着し、チューブを溶蝕(etch back)し始める。還元時間は、触媒粒子がナノチューブを見出し溶蝕し始めるには十分長くすべきであるが、チューブを実質的に溶蝕してしまう程には長くすべきではない。前記成長条件へ切り換えることにより、溶蝕工程は反転する。この時点において、触媒粒子は、チューブの末端で(逆方向工程ではあったが)触媒的に既に活性であったので、該チューブ末端に関しては最適な位置を占めている。
【0112】
触媒はまた、成長条件で活性な形に転換する触媒前駆体の形態、例えば、酸化物、他の塩またはリガンド安定化金属錯体の形態で供給することもできる。例として、(第1級、第2級または第3級)アルキルアミン類と遷移金属との錯体を使用することができる。同様の、遷移金属酸化物のアルキルアミン錯体も使用することができる。 触媒はまた、上記の如く付加された側壁懸垂基由来の金属原子を移行させることにより自由末端へ付加することもできる。
【0113】
本発明の方法の次の工程に於いて、開口チューブ末端に析出した触媒を有する単層カーボンナノチューブ分子配列をチューブ成長(伸長)条件に晒す。これは、触媒を析出した同じ装置で行っても、或いはそれと異なる装置で行ってもよい。このプロセスを行う装置は、最低限、炭素含有原料源及び連続糸の成長末端が成長するように維持し、且つ蒸気からの炭素が該遷移金属触媒の指令下で個々のナノチューブの成長しつつある末端へ付加させ得るアニール温度を維持する手段を必要とする。 典型的には、該装置はまた、連続的に炭素繊維を収集するための手段を有する。このプロセスは、例示の目的でのみ図16及び図17に示される装置を参照して記載される。
【0114】
単層カーボンナノチューブ分子配列を成長させ連続糸とするために必要な炭素供給は、ガス状で入口11より反応器10へ行われる。 該ガス流は成長しつつある配列12の全面の方へ向けられるべきである。 ガス状炭素含有原料は、上に定義したごとく、アルキル類、アシル類、アリール類、アラルキル類等を含む任意の炭化水素または炭化水素の混合物でありうる。約1乃至7個の炭素原子を有する炭化水素が好ましい。 特に好ましいものは、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、アセトン、プロパン、プロピレン等である。最も好ましいものはエチレンである。一酸化炭素も使用することができ、いくつかの反応では好ましい。遷移金属触媒を一酸化炭素原料とともに使用すると、他の殆どの原料ガスに対して提案され反応機構とは違なる反応機構に従うと信じられている。 Dai, 1996参照。
【0115】
原料濃度は、好ましくは反応速度を最大にするように選択され、炭化水素の濃度が高ければ高い程成長速度を速くする。 一般に、原料物質(例えば、エチレン)の分圧は0.001乃至1,000.0 Torrの範囲、好ましくは約1.0乃至10 Torrの範囲にありうる。 成長速度は、以下に記載するごとく、成長配列の先端の温度の凾数であり、結果として成長温度と原料濃度は釣合い、所望の成長速度を提供する。 多くの場合、好ましい原料は一酸化炭素であり、その場合の最適圧力は10乃至100気圧である。
【0116】
反応器壁での好ましくない熱分解を最小化することができるので、炭素原料ガスを加熱することが必要ではないが好ましい。 成長反応のために供給される唯一の熱は繊維の成長先端12へ集中されるべきである。 繊維の残部及び反応装置は室温に保つことができる。熱は任意の好ましい手段により局在化して供給することができる。小さい繊維(直径1 nm未満)に対しては成長末端に集束したレーザー13(例えば、514 nmのアルゴンイオンレーザーのごときC-Wレーザー)が好ましい。 より大きい繊維に対しては、熱はまた成長しつつある繊維先端に局在化したマイクロ波エネルギーまたは高周波エネルギーにより供給されうる。成長しつつある先端に集束させることができる他の任意の形態の濃縮電磁エネルギー(例えば、太陽エネルギー)が使用されうる。しかし、原料ガスにより感知され、ある程度吸収される電磁放射は避けるよう注意が払われるべきである。
【0117】
単層カーボンナノチューブ配列の先端は、成長及成長しつつある繊維の欠陥を効率的にアニールし、そのため成長兼アニール帯を該先端で形成するに十分な温度に加熱すべきである。 一般に、この温度の上限は、原料の熱分解及び反応器の汚れまたは析出した金属触媒の蒸発を避ける必要性により支配される。大抵の原料および触媒に対しては、この温度は約1,300℃未満である。 受け入れられる温度範囲の下限は原料及び触媒効率によって典型的には約500℃であり、約500℃乃至約1,200℃の範囲の温度が好ましい。 約700℃乃至1,200℃の範囲の温度がより好ましい。 約900℃乃至1,100℃の範囲の温度が最も好ましい。何故なら、これらの温度で欠陥の最良のアニーリンが起こるからである。ケーブルの成長末端での温度は、好ましくは産出された白熱を測定する光高温計14により監視され、それに応答して制御される。可能な汚れの問題のために好ましくはないが、ある環境下ではアルゴンまたはヘリウムのごとき不活性清掃ガスの使用が可能である。
【0118】
一般的に、成長室の圧力は1ミリトール乃至約1気圧の範囲にある。 全圧は炭素原料の分圧の1乃至2倍に維持すべきである。 真空ポンプ15は図示されているごとく備えることができる。 原料混合物は成長室へ再循環するのが望ましい。 繊維が成長するに従って、駆動ロール17及び遊びロール18のごとき適当な輸送機構により成長室16から取り出すことができる。 成長室16は真空水平送り帯(vacuum feed lock zone)19と直接通じている。
【0119】
成長室の圧力は、一連の室20を使用することにより、もし必要ならば該真空水平送りは大気圧へもっていくこともできる。 これらの室の各々は、移動する繊維を囲むゆるいテフロン(登録商標)のOリングシール21により分離されている。 ポンプ22は差圧の均圧化を行う。 巻き取りロール23は連続的に室温の炭素繊維ケーブルを収集する。 この方法の生成物産出量は毎分10-3乃至101フィート以上の範囲にあり得る。 この方法により、単層カーボンナノチューブ分子からなる連続炭素繊維を1日当たりトンの量で産出することができる。
【0120】
繊維の成長は、任意の段階で(特定の長さの繊維の製造を容易にするためか、或いはあまりに多くの欠陥が発生したとき)停止することができる。 成長を再開させるためには、末端を(化学的または電気化学的)酸化溶蝕により清浄する(再開口する)ことができる。 次いで触媒粒子は開口チューブ末端で再び形成され、成長が続けられる。
【0121】
分子配列(鋳型)は,成長前または成長後の繊維から巨視的物理的分離手段、例えば、所望の長さに繊維をはさみで切断することにより、繊維から取り除くことができる。 繊維の任意の断面は、同種の繊維の産出を開始するために、鋳型として使用することができる。
【0122】
本発明の連続炭素繊維はまた、一種以上の別々に調製された分子配列または鋳型から成長させることもできる。 多配列は、配列中の単層カーボンナノチューブの種類または幾何学的配置に関して同一であっても、或いは異なってもよい。引張り特性を増加させた大きなケーブル様構造体は、図18に示す多数のより小さな分離した配列から成長させることができる。 前記した遮蔽及び被覆技法に加えて、例えば図19に示すごとく、心配列の回りを環状に配置した金属性単層カーボンナノチューブの中央心配列を一連のより小さな円形非金属性単層カーボンナノチューブ配列で囲むことにより複合構造体を調整することも可能である。
【0123】
本発明により考慮される全ての構造体は必ずしも二次的断面は円いか、或いは対称的でさえある必要はない。多分子配列種鋳型は、複合繊維のいくつかの部分で単層カーボンナノチューブの非平行成長を誘発させ、その結果例えば、捻じれた螺旋状のロープを産出するように整列させることさえ可能である。 鋳型配列の形成との関連で上記したごとく、繊維中の単層カーボンナノチューブの整列を助けるために、電場の存在下で巨視的炭素繊維を接触的に成長させることも可能である。
単層カーボンナノチューブからの炭素繊維の不規則成長 上記した単層カーボンナノチューブの規則束の連続的な成長は多くの用途に望ましいが、個々のチューブ、ロープ及び/またはケーブルを含む単層カーボンナノチューブの不規則配列素材を含有する有用な組成物を産出することも可能である。 不規則成長方法は多量の、即ちトン/日の単層カーボンナノチューブ材料を産出する能力を有する。
【0124】
一般に不規則成長方法は、上記のごとく、適切な遷移金属触媒とともに供給される複数の単層カーボンナノチューブ種分子を用意すること、側壁の誘導体化を使用して触媒を供給すること及び該種分子を単層カーボンナノチューブ成長条件に晒し、その結果該種分子を数次数の大きさ、例えば、その元の長さの102乃至1010以上の次数で伸長させることを含有する。
【0125】
種単層カーボンナノチューブは、例えば連続繊維または精製したバッキーペーパーを切断することにより、好ましくは比較的短い長さで上記のごとく産出する。好ましい態様において、種分子は(例えば、切断による)この不規則成長方法により産出した単層カーボンナノチューブフェルトから最初の一走行後に得ることができる。長さは均一である必要はなく一般的には約5 nm長乃至10 (m長の範囲にある。
【0126】
これらの単層カーボンナノチューブ分子は、成長反応に参加しない巨視的尺度(macroscale)またはナノ尺度の支持体上に形成される。 別の態様において、単層カーボンナノチューブまたは単層カーボンナノチューブ構造体は支持体物質/種として用いることができる。 例えば、以下に記載する自己集合技法を使用して三次元単層ナノチューブナノ構造体(nanostructure)を形成することができる。 これらの技法により産出されるナノ尺度の粉体は、支持体物質が不規則成長方法に参加する利点を有する。
【0127】
支持または不支持の単層カーボンナノチューブ種物質は、単層カーボンナノチューブ分子末端を開口し金属原子クラスターを析出させることにより前記のごとく適切な成長触媒と合体させることができる。 代わりに、成長触媒を可溶性の、或いは懸濁した触媒前駆体を含む好ましい液体中の種の懸濁液を蒸発させることにより種分子の一方又は両方の開口末端に供給することができる。例えば、該液体が水である場合、硝酸第二鉄、硝酸ニッケル、硝酸コバルト等の可溶性金属塩が触媒前駆体として用いることができる。 触媒物質が単層カーボンナノチューブ種分子の開口末端上に正しく位置するのを確実にするために、該単層カーボンナノチューブ末端を、触媒ナノ粒子、或いはより好ましくはリガンド安定化触媒粒子を結合する部位で以って誘導体化することがいくつかの環境下では必要となりうる。
【0128】
不規則成長プロセスの第一の工程において、結合した触媒を含む、或いは溶解した触媒前駆体と会合した種粒子の懸濁液を混合物が清掃ガス流と接触する蒸発帯中へ注入し、250℃乃至500℃の範囲の温度へ加熱して該液をフラッシュ蒸発させ連行反応性ナノ粒(即ち、種/触媒)を提供する。 任意的にこの連行粒の流れを還元工程に晒し、更に触媒を(例えば、水素中300℃乃至500℃で加熱して)活性化する。 次いで、前記連続成長法で用いた種類の炭素質原料ガスを清掃ガス/活性ナノ粒の流れの中へ導入し、混合物は清掃ガスにより成長帯へ運ばれ更に成長帯を通過させる。
【0129】
該成長帯の反応条件は前記したものであり、即ち、500℃乃至1,000℃で約1気圧の全圧である。 原料ガス(例えば、エチレン及び一酸化炭素)の分圧は、エチレンに関しては約1乃至100 Torrの範囲、一酸化炭素に関しては約1乃至100気圧の範囲にある。 純粋な炭素または炭化水素を使用する反応は、好ましくは管状反応器で実施し、その中を清掃ガス(例えば、アルゴン)が流れる。
【0130】
成長帯は、(1) 原料ガスを予備加熱し、(2) 清掃ガスを予備加熱し、(3) 成長帯を外部より加熱し、(4) 例えば、レーザーまたは誘導コイル、或いはそれらの組合わせにより成長帯中で局在した加熱を与えることにより、適切な成長温度に保つことができる。
【0131】
このプロセスで産出した生成物の下流での回収は、濾過、遠心分離等の公知の手段で行うことができる。精製も上記のごとくして達成することができる。この不規則成長プロセスにより作製したフェルトは複合体類、例えば、重合体、エポキシ、金属、炭素(即ち、炭素/炭素物質)及び磁束ピン止め用の高いTζ超伝導体を製造するために使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノチューブの側壁の炭素原子へ共有結合した置換基で誘導体化した単層カーボンナノチューブ。
【請求項2】
該置換基がフッ素、アルキル及びフェニルから選択される、請求項1に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項3】
フッ素がナノチューブの側壁へ共有結合し、前記ナノチューブが高電気抵抗を有する、請求項1に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項4】
カーボンナノチューブをフッ素ガスと反応させることを含むカーボンナノチューブの誘導体化方法。
【請求項5】
該フッ素ガスがフッ化水素を含有しない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応温度が500℃未満、好ましくは400℃未満である,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
フッ素を単層カーボンナノチューブと反応させ、その生成物が共有的に付着したフッ素を有する多層カーボンナノチューブである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
該反応の温度が少なくとも500(Cである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該反応の生成物が単層カーボンナノチューブの側壁へ共有的に付着したフッ素を有する該ナノチューブである、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
(a) 単層カーボンナノチューブをフッ素ガスと反応させ、 (b) フッ素誘導体化カーボンナノチューブを回収し、(c) フッ素誘導体化カーボンナノチューブを求核試薬と反応させ、(d) 単層カーボンナノチューブの側壁の炭素原子へ共有結合した置換基を有する該ナノチューブを回収することを含む単層ナノチューブの側壁へ付着した置換基を有する該ナノチューブの調製方法。
【請求項11】
(a) 複数の単層カーボンナノチューブ(SWNT)をフッ素化し、 (b) 該複数のフッ素化単層カーボンナノチューブを溶媒中に超音波分散させることを含む単層カーボンナノチューブを溶媒和させる方法。
【請求項12】
前記溶媒がアルコールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a) 単層カーボンナノチューブをフッ素化し、 (b) フッ素化単層カーボンナノチューブを溶媒中に分散し、(c) 該分散単層カーボンナノチューブを求核試薬と反応させることを含む単層ナノチューブの側壁を誘導体化する方法。
【請求項14】
該求核試薬が有機金属化合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有機金属化合物がアルカリ金属の置換または未置換アルキルまたはアリール化合物であって、該化合物が1乃至20の炭素原子を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該アルカリ金属がナトリウムまたはリチウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該求核試薬との反応に続き、残存フッ素及び他のアルカリまたはアルカリ土類金属を該単層カーボンナノチューブから除去することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
一般的に平行な配置で集成した複数の単層カーボンナノチューブ含み、単層カーボンナノチューブの集成体の接触産出用の単層ナノチューブの配列であって、該ナノチューブは略等しい長さであり、各ナノチューブは少なくとも一つの自由端を有し、前記各単層カーボンナノチューブの側壁に、金属原子の創生と該金属原子を前記単層カーボンナノチューブの該自由端への移動を促進する条件下で単層カーボンナノチューブを成長させるための活性触媒金属原子クラスターを提供するに十分な量の物理吸着した、或いは共有結合した遷移金属触媒前駆体成分が配置するカーボンナノチューブ集成体の接触産出用の単層カーボンナノチューブの配列。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図10B】
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【図11】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図9】
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【図10A】
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【図12A】
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【図12B】
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【公開番号】特開2011−168483(P2011−168483A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−61240(P2011−61240)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【分割の表示】特願2000−574020(P2000−574020)の分割
【原出願日】平成11年9月17日(1999.9.17)
【出願人】(501105635)ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ (26)
【Fターム(参考)】