説明

溶射システムおよび溶射方法

【課題】遮熱性能と耐久性に優れた熱応力緩和遮熱コーティング被覆を施す溶射システムおよび溶射方法を提供する。
【解決手段】溶射システムは,基体が配置される回転テーブル5と,前記回転テーブル5に配置され,前記基体の第1の部位を加熱する第1の加熱手段と,前記第1の加熱手段によって加熱される基体が配置される回転テーブル5を回転させるモータ2と,前記回転の軸に沿った方向に走査され,かつ前記回転される回転テーブル5上の前記基体の第2の部位をプラズマまたは炎によって加熱する第2の加熱手段と,前記第2の加熱手段により加熱された前記第2の部位に部分安定化ジルコニア層を形成するプラズマ溶射ガン1と,を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,溶射システムおよび溶射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンやジェットエンジンなどの原動機において,熱効率の向上を目的とする研究開発が進められている。熱効率の向上のための最も有力な手段の一つは運転ガス温度の高温化である。このため,熱効率の向上は一般的には構成部材をより高温の過酷な使用環境に強いる方向にある。
【0003】
動翼,静翼,燃焼器などの燃焼ガスに直接接する高温部品は,高温環境での使用に耐え得るように,2つの観点から検討されている。
【0004】
まず,第一の観点での検討は,部品材料の温度を下げるための冷却特性の向上である。冷却特性を向上するためには,原理的には冷却ガス(空気)流量を増加するのが効果的である。ところが,単に冷却用ガス流量を増大させるだけでは燃焼ガス温度が低下してしまい,逆に熱効率が低下する場合が多い。
【0005】
そこで,冷却用ガス流量を増大せずに冷却性能を上げる方法として,少ない冷却用ガス流量でより効率的に徐熱する方法が提案されている。フィルム冷却やインピンジ冷却に代表される材料/冷却ガス間の熱伝達を増大する方法や翼冷却流路のリターンフロー構造に代表される材料/冷却ガスの接触面積を増大させる方法などである。
しかし,これらの方法は,何れの場合も装置構造や部品構造の複雑化に繋がるため,装置制御の複雑化や製造コストの上昇を招くことが欠点として挙げられていた。
【0006】
また,第二の観点での検討は,材料の耐熱温度の向上である。既に,高温部品用構造材料としてNi,CoまたはFe基の超合金の開発が進められている。また,一方向凝固や単結晶にすることで,さらに高温強度を向上させている。しかし,これらの方法では,前述した超合金の融点から考えて精々1000℃が使用限界である。さらに,耐熱性を高める方法として,融点が高く,かつ耐酸化性や耐食性にも優れたセラミックス材料の適用が行われている。
【0007】
実際にSiCやSiをベースとしたセラミックスの試みもあるが,金属材料に比べると靭性に劣り,加工性も悪く欠点も多い。したがって,高温部品構造材料としての幅広い適用のためには信頼性やコストの面で課題が残されている。
【0008】
一方,靭性に優れる金属材料を強度メンバー(強度保持部材)として用いながら耐熱性を向上させる方法として,遮熱コーティングがある。この遮熱コーティングでは,基材に低熱伝導性の酸化物セラミックス層(遮熱セラミック層)を形成することで熱を遮断し,金属基材の温度上昇を防止する。数百ミクロン(μm)の遮熱セラミック層を形成することにより,金属基材の表面温度上昇を数十℃も低減させることができるとの報告がある(特許文献1参照)。
【0009】
これにより,強度メンバー(強度保持部材)となる金属基材の温度上昇を抑制でき,ガスタービンの高温化が可能となる。すなわち,遮熱コーティングでは,定性的には遮熱セラミック層が厚いほど遮熱性能に優れ,より金属基材の温度を低減できる。また,この遮熱コーティングにより,燃焼ガス側から冷却空気に向かっての熱流束が小さくなり,冷却ガス流量も低減できる。
【0010】
しかし,遮熱コーティングを幅広く適用するためには課題がある。特に,コーティングした遮熱セラミック層の割れやはく離が最大の問題である。この遮熱セラミック層のはく離は,靭性が低いというセラミックス材料自身の本質的な性質と,金属基材と遮熱セラミック材との熱膨張差より発生する熱応力や遮熱セラミック層直下の金属表面の酸化に伴う材料劣化などが原因と考えられる。
【0011】
一旦,遮熱セラミック層にはく離が生じると遮熱性能が低下するため,金属基材の温度が上昇する。これにより,金属基材の溶融,金属基材のクリープや疲労破壊など,機器の運転にも支障をきたす大きなトラブルの原因となる可能性も考えられる。
【0012】
一方,従来からこの遮熱コーティングのはく離低減を目的にした種々の検討がなされている。遮熱コーティングとしては,金属基材上にMCrAlY合金層と低熱伝導セラミックスのジルコニア系セラミックスなどの酸化物系セラミックス層を形成させた二層構造のものが代表的である。このMCrAlY合金層は,金属基材と遮熱セラミックス層との密着性の向上や金属基材の腐食や酸化の防止を考えてのものであり,溶射法により形成されることが多い。
【0013】
溶射法によれば,金属とセラミックスを問わず材料の種類が任意に選択できるという利点はあるものの,例えばMCrAlY合金を高温の熱源を有するプラズマ溶射法を用いて大気中で被覆した場合,(1)多孔質となる,(2)金属基材との密着性に乏しい,(3)耐食,耐酸化性に劣る,などの欠点があった。この点に関しては,近年実質的に空気を含まない減圧の不活性ガス雰囲気中でプラズマ溶射する方法(減圧プラズマ溶射法)によりこれらの欠点が大きく改善されている。
【0014】
また,遮熱セラミック層についても,ジルコニアの相安定化や熱サイクル特性向上のために,安定化のための添加剤の種類や量などの検討や,層の構造面からは,一部で柱状組織に特徴を持つ電子ビーム物理蒸着法(EB−PVD法)の検討がなされている。特に,起動停止時など遮熱セラミック層内に急激な温度変化が生じた場合には,遮熱セラミック層の低靭性に起因した割れやはく離が生じることがあった。このことは,厚膜の遮熱セラミックス層を形成した場合などにおいて発生し易い。
【0015】
この解決方法として,遮熱セラミックス層の気孔率を5〜60%とし,気孔率を上げることで熱伝導率を低減させ,割れやはく離を低減できる(特許文献2参照)。また,遮熱セラミックス層(部分安定化ジルコニア層)内に生じた亀裂は気孔でエネルギーを吸収できるため,靭性と強度の双方を向上させることができるとしている。
【0016】
さらに,遮熱セラミック層の最表面は気孔率が5〜60%の多孔質層とし,MCrAlY合金層との界面近傍側を気孔率が遮熱セラミックス層最表面側より緻密な部分安定化ジルコニア層とする。即ち,定常運転時の熱応力が大きいMCrAlY合金層との界面近傍では,それより緻密で気孔率が低い高強度な部分安定化ジルコニア層とし,気孔率が低い高強度な部分安定化ジルコニア層部となる。この結果,割れやはく離を低減できるとしている。
【0017】
しかしながら,遮熱セラミック層最表面の気孔率が高く,MCrAlY合金層との界面で緻密な遮熱セラミックス層では,遮熱セラミックス層最表面の気孔が多いため,燃料に含まれるスラッジや腐食生成物,配管系から流出した腐食酸化物の固体によるエロージョンを受け,粒子間結合力の弱さに起因した減肉が起こる。
【0018】
また,MCrAlY合金層界面と遮熱セラミックス層との界面近傍の部分安定化ジルコニア皮膜の気孔を緻密にすることで,密着力が高くなるとしても,熱膨張係数差による熱応力が大きく発生し易くなり,耐はく離性が低下する。
【0019】
この解決策として,特許文献3記載の技術が提案されている。この技術では,酸化物セラミックス層が,前記金属中間層側から前記酸化物セラミックス層の表面側に向かって徐々に気孔率が低下するように設けられた気孔を有し,かつ前記金属中間層との界面から前記酸化物セラミックス層の表面にわたる前記酸化物セラミックス層の厚さ方向に亀裂を有する。
【0020】
遮熱コーティング部材の製造方法としては,部分安定化ジルコニア層の気孔率を15%から5%に傾斜させる製造方法とは,金属基材上にMCrAlY合金層を形成後,部分安定化ジルコニア粉末を大気プラズマ溶射法により形成する。
【0021】
このとき,用いる大気プラズマ溶射ガンから発生するプラズマフレーム(炎)で縦き裂が発生可能な温度領域650℃以上に予熱により加熱し,部分安定化ジルコニア粉末の溶射を開始する。大気プラズマ溶射ガンから発生するプラズマフレーム(炎)で650℃以上に予熱,加熱することで,また,部分安定化ジルコニア層を形成中は650℃以下の温度に低下させないとで,溶射終了後,の圧縮エアー等を吹きつける冷却方法にて急冷してやることで部分安定化ジルコニア層中に縦き裂が発生する。
【0022】
予熱,加熱や溶射中の温度が650℃以下では,縦き裂と同時に横き裂が発生し,耐はく離寿命が低下する。この横き裂は,部分安定化ジルコニア皮膜の層状に伝播し,層間でのはく離,急激な温度差による熱応力を吸収しにくく,はく離寿命が低下する。
【0023】
溶射は熟練の作業者が基本的に操作するが,溶射中の温度管理は極めて困難であり,定量的に温度管理する必要がある。特に,縦き裂を導入するためには先の温度を維持する必要があるため,温度測定により定量的に管理が必要である。
この場合,熱電対を金属基材に取りつけて施工中の温度を測定し,温度管理することが最も重要である。赤外線放射温度計でもそれなりに効果があるが,プラズマフレームや被測定体の放射率が影響することから,熱電対の使用が効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開昭62―211387号公報
【特許文献2】特願平9−231042号公報
【特許文献3】特開2006−144061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら,これらの方法は例えば動翼の場合,大気プラズマ溶射ガンから発生するプラズマフレーム(炎)だけで予熱および溶射するため,予熱時には動翼を高温(650℃以上)に加熱することが困難であり,溶射中も動翼に大気プラズマ溶射ガンから発生するプラズマフレーム(炎)が常時あたっていないことから,溶射時の動翼温度も650℃以下に低下する。
【0026】
このことによって,予熱,加熱や溶射中の温度が650℃以下では,縦き裂と同時に横き裂が発生し,耐はく離寿命が低下する。この横き裂は,部分安定化ジルコニア皮膜の層状に伝播し,層間でのはく離,急激な温度差による熱応力を吸収しにくく,はく離寿命が低下する。
このように,いずれも大きな効果が得られず,加熱方法の改善によるはく離寿命の向上,熱応力緩和,遮熱性能向上策が今も要求されている。
【0027】
本発明はこの様な実情に鑑みてなされたもので,ガスタービンやジェットエンジンなどの高温の酸化腐食雰囲気で使用する高温部品を対象として,遮熱性能と耐久性に優れた熱応力緩和遮熱コーティング被覆を施す溶射システムおよび溶射方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の一態様に係る溶射システムは,基材が配置される回転テーブルと,前記回転テーブルに配置され,前記基材の第1の部位を加熱する第1の加熱手段と,前記第1の加熱手段によって加熱される基材が配置される回転テーブルを回転させるモータと,前記回転の軸に沿った方向に走査され,かつ前記回転される回転テーブル上の前記基材の第2の部位をプラズマまたは炎によって加熱する第2の加熱手段と,前記第2の加熱手段により加熱された前記第2の部位に部分安定化ジルコニア層を形成するプラズマ溶射ガンと,を具備する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば,遮熱性能と耐久性に優れた熱応力緩和遮熱コーティング被覆を施す溶射システムおよび溶射方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る溶射システムを表す模式図である。
【図2】静止側のヒーターコントローラ13から回転側のヒーター6までの配線経路の一例を示す図である。
【図3】被施行品(基体)である動翼8の温度およびヒーター6の温度を測定するための熱電対12までの配線経路の一例を示す図である。
【図4】溶射ガン1にて被施行品の動翼8を加熱している状態を赤外線サーモグラフィーカメラ14にて測定した測定状態を示す図である。
【図5】回転法にて動翼8を加熱する場合の溶射ガン1と動翼8の動きを示す図である。
【図6】逐次(インデックス)法にて動翼8を加熱する場合の溶射ガン1と動翼8の動きを示す図である。
【図7】回転法にて動翼8を加熱した場合の溶射ガン1と動翼8の温度状態を赤外線サーモグラフィーカメラ14により測定した測定状態を示す図である。
【図8】逐次(インデックス)法にて動翼8を加熱した場合の溶射ガン1と動翼8の温度状態を示した赤外線サーモグラフィーカメラ14により測定した測定状態を示す図である。
【図9】他の実施形態に係る溶射システムを表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は,本発明の第1の実施の形態に係る溶射システムを表す模式図である。
溶射システムは,動翼8(被施行品,金属基体)上にMCrAlY合金(M:Ni,Co,Feまたはそれらの元素を組み合わせた合金)層と,部分安定化ジルコニア層(熱応力緩和遮熱コーティング被覆)を形成する。
【0032】
溶射システムは,溶射ガン1,回転用モータ2,基礎テーブル3,回転テーブル軸4,回転テーブル5,ヒーター6,マスキング7,動翼8,保護蓋9,ヒーター用スリップリング10,温度測定用スリップリング11,熱電対12,ヒーターコントローラ13,赤外線サーモグラフィーカメラ14,溶射ロボット15,ロボット制御装置16,赤外線サーモグラフィーコントローラ17,温度測定装置18で構成される。
【0033】
溶射ガン1は,プラズマを発生するプラズマガンを有する。プラズマガンから発生されるプラズマ等に粉末材料を供給することで,この粉末材料が熔解,飛散し,動翼8への溶射(成膜)が行われる。
【0034】
溶射ガン1は,動翼8への成膜(溶射)以外に,動翼8の加熱にも利用できる。プラズマは1〜3万度のフレーム炎を得ることができ,加熱時の熱容量が大きい。後述のように,溶射ガン1およびヒーター6によって,動翼8が加熱される。
なお,溶射ガン1として,水素ガスと窒素ガスの混合ガスでプラズマを生成するプラズマ溶射ガン,大気でプラズマを生成する大気プラズマ溶射ガンを利用できる。
【0035】
溶射ガン1(プラズマガン)は,基体(例えば,動翼8)の第2の部位(例えば,上部)をプラズマまたは炎によって加熱する第2の加熱手段(プラズマ・炎加熱手段)として機能する。後述のように,溶射ガン1は,溶射ロボット15によって,回転の軸(回転テーブル軸4)に沿った方向(例えば,後述のDz方向(上下方向))に走査される。
【0036】
ここで,プラズマガンに替えて,ガスバーナ等をプラズマ・炎加熱手段として利用できる。LPG(液化石油ガス,プロパンガス),水素ガス,または酸素アセチレンガス(酸素とアセチレンの混合ガス)の燃焼炎を利用して,動翼8への成膜(溶射),動翼8の加熱を実行できる。また,高温に加熱された空気,高温に加熱された不活性ガスを用いて,動翼8への成膜(溶射),動翼8の加熱を実行しても良い。
【0037】
溶射ガン1は溶射ロボット15の先端に取付けられる。溶射ロボット15が,ロボット制御装置16のプログラム制御によって駆動されることで,溶射ガン1が動翼8上を走査され,動翼8の広範囲への加熱,溶射が可能となる。
【0038】
動翼8は,回転用モータ2によって回転される回転テーブル5上に設置される。即ち,動翼8は,回転用モータ2によって回転される。回転用モータ2は回転テーブル軸4,回転テーブル5,および回転テーブル5に設置されているもの(ヒーター6,マスキング7,動翼8,保護蓋9)を回転させる働きがあり,正回転,逆回転,逐次回転,連続回転が可能である。
溶射ガン1が動翼8を加熱あるいは溶射する場合,動翼8が回転用モータ2によって回転法あるいは,逐次法により駆動される。なお,回転法,逐次法の詳細は後述する。
【0039】
回転テーブル5に,ヒーター6を取り付けて固定し,さらに動翼8,保護蓋9を設置する。回転テーブル5は金属材料を用いることが望ましい。ここで,非鉄金属材料,特にアルミニウム合金材料を用いることで,回転時の回転用モータ2への重量負荷を軽減できる。
【0040】
回転テーブル軸4は,回転用モータ2の駆動力を伝達すると共に,ヒーター用スリップリング10,温度測定用スリップリング11を固定して,ヒーター6の電力と熱電対12の起電力を回転側から静止側あるいは静止側から回転側に供給,伝達する。
【0041】
ヒーター6は,ヒーターコントローラ13の指令により動翼8を均一に加熱する装置である。ヒーター6は,回転テーブルに配置され,基体(例えば,動翼8)の第1の部位(例えば,下部)を加熱する第1の加熱手段として機能する。
本溶射システムでは,プラズマガン(溶射ガン1)等のプラズマ・炎加熱手段により動翼8を高温に加熱し,その後,溶射により動翼8表面に熱応力緩和コーティング被覆を形成する。しかし,溶射ガン1だけでは熱応力緩和コーティング被覆を形成するための加熱能力が足りない。このため,ヒーター6により動翼8を補助的に常時加熱し,溶射ガン1による加熱時に不足する熱エネルギーを補う。
【0042】
ヒーター6として,保護蓋9付きの電気炉,帯状の巻付きヒーター,赤外線加熱ヒーター,高周波誘導加熱ヒーターのいずれか一種類または二種以上の複合を用いることができる。
電気炉は大容量での加熱可能なため動翼8の短時間加熱,均一加熱が可能である。また,動翼8を複合的に加熱すると,加熱時間の短縮を図ることができる。例えば,赤外線加熱ヒーターやガスバーナ炎により,動翼8を複合して加熱することにより,加熱効果がさらに大きくなる。
【0043】
ヒーターコントローラ13はヒーター6の温度を熱電対12にて測定した結果に基づいて,ヒーター6に供給する電力の量の制御,調整,指令を行う。ヒーターコントローラ13は,基体の前記第1の部位が650℃以上となるように,前記第1の加熱手段を制御する制御部および第4の摺動子と電気的に接続される温度測定器として機能する。
【0044】
保護蓋9は加熱した熱を外部に逃がさない働きがある。なお,保護蓋9は,溶射ガン1による加熱時,溶射により動翼8面に皮膜を形成する場合(溶射時)には,取り外される。保護蓋9は,内部に耐熱性の断熱材を内張りしたもので,動翼8の加熱された熱を外部に逃がさない構造とする。また,内部にヒーターを内臓することで被施行品の動翼8を短時間に所定の温度に加熱することができ,熱応力緩和コーティング被覆の製造時間を短縮できる。
【0045】
マスキング7は,溶射施工時の不要な部位への皮膜の付着を防ぐためのマスキング部材であり,熱応力緩和コーティング被覆の溶射施行後の動翼8の表面仕上げを簡略化する効果があり,熱応力緩和コーティング被覆の製造時間を短縮できる。
【0046】
赤外線サーモグラフィーカメラ14は,加熱時および溶射時の被施行品(基体)である動翼8の表面温度を測定し,赤外線サーモグラフィーコントローラ17へ伝達し,表示する加熱温度によって加熱の終了を判断する温度情報を提供する。
また,赤外線サーモグラフィーコントローラ17は,赤外線サーモグラフィーカメラ14で測定した被施行品である動翼8の溶射中の赤外線情報温度を連続でリアルタイムに計測し,その温度履歴を記録する。
【0047】
ヒーター用スリップリング10(第1のスリップリング)と温度測定用スリップリング11は回転側接点(端子)と静止側接点(端子)を有し,カーボンブラシまたは接点材料同士の回転接触により,電気信号または電力を伝達する。ヒーター用スリップリング10は100V〜250V等のヒーター6に必要な電力を静止側から回転側に供給し,回転テーブル軸4を介して,回転側に伝達された電力をヒーター6に供給する。また,温度測定用スリップリング11(第2のスリップリング)はヒーター6の温度を熱電対12にて測定して静止側のヒーターコントローラ13,温度測定装置18に伝達する。
【0048】
図2は,静止側のヒーターコントローラ13から回転側のヒーター6までの電源供給状態の一例を示す図である。
【0049】
回転側のヒーター6への電源は,次のようにして,回転側の回転側摺動端子10dに供給される。即ち,静止側のヒーターコントローラ13の電源出力部13aから陽極と陰極の電源ケーブル13bをヒーター用スリップリング10内部に設置された静止側摺動端子10a(第1の摺動子)に接続され,この静止側摺動子10bとヒーター用スリップリング10内部に設置され,かつ回転テーブル軸4に固定された回転側摺動子10c(第2の摺動子)が摺動接触する。
【0050】
通電された電源は回転テーブル軸4の中心孔4aを通した電源ケーブル13cで回転テーブル5に固定されたヒーター6の電源入力部13dに接続され,抵抗体13eに通電される。この抵抗体13eが通電された電源により発熱し,動翼8を加熱する。
【0051】
回転テーブル5は,例えば,260回転/分の高速で回転し,かつ100V以上の電源電圧が供給される。すなわち,回転体への電力を初めとする電気信号の伝達のためには,静止側と回転側の端子(接点)10a,10dが必要であり,従来,電気炉などのヒーター6が回転側に用いられることがほとんど無かった。しかし,100V以上の電力電圧を供給可能なヒーター用スリップリング10を用いることで,被施行品である動翼8の常時加熱が回転運動を行いながら可能となった。
【0052】
図3は,被施行品(基体)である動翼8の温度およびヒーター6の温度を測定するための熱電対12までの配線経路の一例を示す図である。
温度測定装置18に接続した熱電対12を温度測定用スリップリング11の静止側接続端子12aを介して静止側摺動子12b(第4の摺動子)に接続する。次に,動翼8の一部に取付けた熱電対12を回転テーブル5に接続された回転テーブル軸4の中心孔4aを通して温度測定用スリップリング11の回転側摺動子12c(第3の摺動子)に接続する。動翼8の温度信号は,これらの接続経路を通って静止側摺動子12bに伝達され,静止側接続端子12aを介して温度測定装置18に伝達される。伝達された温度信号は温度測定装置18にて記録される。
【0053】
また,熱電対12はヒーター6の内部にも設置し,同様に回転テーブル軸4の中心孔4aを通して温度測定用スリップリング11の回転側摺動子12cに接続される。ヒーター6の温度信号は,これらの接続経路を通って静止側摺動子12bに伝達され,静止側接続端子12aを介して温度測定装置18およびヒーターコントローラ13に伝達される。伝達されたヒーター6の温度信号はヒーターコントローラ13にて分析して,ヒーター6へのフィードバック制御を行う。
【0054】
(溶射システムによる溶射の手順)
以下,溶射システムによる熱応力緩和コーティングの手順を説明する。
(1)MCrAlY合金層の形成
動翼8上にMCrAlY合金(M:Ni,Co,Feまたはそれらの元素を組み合わせた合金)層が形成される。動翼8上へのMCrAlY合金層の形成は,減圧プラズマ溶射法,複合メッキ法,高速フレーム溶射法,超高速フレーム溶射法のいずれかを用いて行える。
【0055】
(2)予熱
部分安定化ジルコニア層の形成に先だって,MCrAlY合金層が形成された動翼8を予熱する。例えば,溶射に用いる大気プラズマ溶射ガンから発生するプラズマフレーム(炎)で,動翼8を加熱する。なお,この詳細は後述する。
【0056】
(3)部分安定化ジルコニア層の形成
動翼8上へのMCrAlY合金層の形成後,大気プラズマ溶射法等を用いて部分安定化ジルコニア層を形成することができる。大気プラズマ溶射法では,プラズマガン出力20Kwから180Kwの出力制御が可能なガンを用いることで,広範囲な機能の部分安定化ジルコニア層を形成することが可能となる。大気プラズマにより,部分安定化ジルコニア粉末を溶射することで,部分安定化ジルコニア層が形成される。
【0057】
動翼8の予熱後に,大気プラズマ溶射ガンからのプラズマフレーム(炎)内に部分安定化ジルコニア粉末が供給され,部分安定化ジルコニアの溶射が開始される。このとき,後述の理由から,動翼8の温度を800℃以下とすることが好ましい。
【0058】
ここで,部分安定化ジルコニア層の気孔率を傾斜させるために,大気プラズマ溶射に用いる部分安定化ジルコニア粉末の粒子径を時間的に切り替える。即ち,粒子径が異なる複数の部分安定化ジルコニアセラミックス粉体を用意しておき,時間と共に溶射に用いる粉体を切り替える。
【0059】
通常の部分安定化ジルコニアセラミックス粉末は,平均粒子径が決められ,何種類かの部分安定化ジルコニアセラミックス粉末を準備することが可能である。例えば,MCrAlY合金層と部分安定化ジルコニア層との界面近傍では,平均粒子径45〜75ミクロン,部分安定化ジルコニア層の表面層では20〜40ミクロンの平均粒子径の溶射粉末を用いることができる。
この場合,溶射装置の粉末供給装置のポートを2台以上準備し,目標とする各層の厚さに施工完了したら次々とポートを切り替えて異なった粒子径の部分安定化ジルコニア溶射粉末を供給し,段階的に傾斜する気孔率を有する部分安定化ジルコニア層を形成する。
【0060】
(4)冷却
溶射終了後,部分安定化ジルコニア層が形成された動翼8を冷却する。例えば,圧縮エアー等を吹きつけて,動翼8を急冷することで,部分安定化ジルコニア層中に層方向(縦方向)の亀裂が発生する。なお,冷却速度は,30〜100℃/minが好ましく,さらに好ましくは,30〜60℃/minである。なお,冷却方式は空冷に限られるものではない。
【0061】
(5)熱処理
以上のような部分安定化ジルコニア層の形成後,動翼8の溶体化処理温度あるいは時効処理温度の併用した熱処理を行う。これにより拡散により,MCrAlY合金層と動翼8間での密着性が向上する。また,この熱処理後に圧縮エアー等により急冷することで,部分安定化ジルコニア層内に縦方向の亀裂が追加される。すなわち横割れの発生を低減し,縦割れを多く導入できる。
【0062】
(予熱の詳細)
以下,予熱の詳細を説明する。
溶射中の温度が750℃以上,800℃以下の範囲とすることが好ましい。このために,予備加熱時の温度を750℃以上とすることが好ましい。溶射中の温度を750℃以下とすると,縦方向の亀裂と同時に横方向の亀裂が発生し,耐はく離寿命が低下する可能性がある。この横方向の亀裂は,部分安定化ジルコニア層の層内を伝播し,MCrAlY合金層と部分安定化ジルコニア層間でのはく離が生じやすくなる。
【0063】
既述のように,縦方向の亀裂を導入するためには,溶射中の温度を750℃以上,800℃以下の範囲することが好ましい。この場合,熱電対12を動翼8に取りつけて施工中の温度を測定し,温度管理することが重要となる。赤外線放射温度計でもそれなりに効果があるが,プラズマフレームや被測定体の放射率が影響することから,熱電対12の使用が好ましい。
【0064】
図4は,溶射ガン1にて被施行品の動翼8を加熱している状態を赤外線サーモグラフィーカメラ14にて測定した実測定状態を示す図である。
溶射ガン1にて動翼8が高温に均一に加熱されている状態が分る。ヒータ6は,動翼8の均一加熱に寄与する。
【0065】
具体的には,次の(1),(2)の手順で,動翼8を加熱する。
(1)ヒータ6のみによる動翼8の加熱
ヒータ6(例えば,電気炉)により,動翼8を加熱する。動翼8の下部が加熱される。このとき,動翼8に保護蓋9を被せ,動翼8ができるだけ均一に加熱されることが好ましい。また,保護蓋9に内蔵されたヒータによって,動翼8全体が加熱されるようにすることがより好ましい。
【0066】
(2)ヒータ6および溶射ガン1による動翼8の加熱
ヒータ6および溶射ガン1により,動翼8を加熱する。動翼8の下部がヒータ6により加熱され,動翼8の上部(ヒータ6により覆われていない部分)が溶射ガン1(プラズマガン)により加熱される。手順(1)において,動翼8に保護蓋9を被せていた場合,保護蓋9が取り除かれ,回転用モータ2により動翼8が回転される(回転法)。
【0067】
回転法では,次のa)〜d)が同時並行的になされる。
a)ヒータ6による動翼8の下部の加熱
b)溶射ガン1による動翼8の上部の加熱
c)回転用モータ2による動翼8の回転
d)溶射ロボット15による溶射ガン1の移動
【0068】
動翼8の回転および溶射ガン1の移動の併用により,溶射ガン1からのプラズマが動翼8の上部全体に均一に照射される。この結果,ヒータ6による動翼8の下部の加熱と相まって,動翼8の上部が均一な高温状態に保たれる。なお,溶射ガン1からのプラズマ出力が,例えば,500kW以上に設定される。また,動翼8の下部の温度が,例えば,650℃以上となるように,ヒータコントローラ13がヒータ6での加熱を制御する。
【0069】
図5は,回転法にて動翼8を加熱する場合の溶射ガン1と動翼8の動きを示す図である。動翼8が回転テーブル軸4(Z軸方向の回転軸Sz)で回転される。また,溶射ガン1が回転軸Szに沿う方向(例えば,Z軸に平行なDz方向(上下方向))に繰り返し移動される。即ち,上から下,下から上への移動が繰り返される(一軸方向での繰り返し移動)。
【0070】
このとき,動翼8は同一の向きに回転し続けることができる。例えば,連続的に左回転あるいは右回転することができる。また,動翼8の回転方向が変化しても良い。例えば,一定時間の連続的な左回転,一定時間の連続的な右回転を繰り返しても良い。この場合,回転方向が変化する瞬間は,動翼8の回転が停止すると観念することができるが,このような瞬間的あるいは一時的な回転の停止は許容される。
【0071】
また,図5に示すように,Dz方向の繰り返し移動に加えて,Y方向に平行なDy方向での繰り返し移動をしても良い(二軸方向での繰り返し移動)。動翼8での温度の均一性をより向上できる。この場合,Dy方向での繰り返しの周期Tyが,Dz方向での繰り返しの周期Tzより小さくすることができる。このようにすると,YZ平面上で見ると,溶射ガン1の軌跡は,Z軸方向(上下方向)にジグザグな移動を繰り返すことになる。即ち,溶射ガン1からのプラズマがY方向に幅が実質的に広がる。
【0072】
ここで,溶射ガン1の移動は直線状で無くても良い。例えば,Dz方向を回転軸として,溶射ガン1を回転させても良い。この場合,溶射ガン1の先端は円弧状に移動することになる。
【0073】
図6は,逐次(インデックス)法にて動翼8を加熱する場合の溶射ガン1と動翼8の動きを示す図である。
逐次(インデックス)法では,動翼8が逐次的に回転される。即ち,動翼8の回転(例えば,数分の一回転),停止が繰り返される。そして,回転用モータ2による動翼8の回転と,溶射ロボット15による溶射ガン1の移動とは,基本的に同時には行われない。即ち,動翼8がステップ的に回転し,その回転の停止時に,溶射ガン1が移動する。例えば,Dx,Dy,Dz方向への移動,Dz方向の回転軸での回転である。
【0074】
動翼8の回転が停止される前に,溶射ガン1の移動が開始されると,瞬間的あるいは一時的には,動翼8の回転と,溶射ガン1の移動が同時に行われることになるが,これは逐次(インデックス)法の範疇に属すると考えられる。
【0075】
このような限界的な場合を考えると,回転法と逐次法は,動翼8の回転と溶射ガン1の移動が同時に行われる時間の割合によって区分できる。例えば,溶射ガン1によって動翼8が加熱されている全時間に対して,動翼8の回転と溶射ガン1の移動が同時に行われる時間の割合Rが80%以上であれば,回転法に属し,この割合Rが20%以下であれば,逐次法に属し,この割合Rが20%より大きく,80%より小さければ,これらの中間,即ち,回転法,逐次法のいずれでもないと判定できる。但し,回転法であれば,割合Rが大きい方が好ましい。例えば,割合Rが90%以上,95%以上,99%以上として大きくする方がより好ましい。
【0076】
図5では,既述のように,例えば,動翼8を回転テーブル5にて回転させて一方向あるいは正回転,逆回転を連続で繰返し,溶射ガン1を左右方向及び上下方向に連続で移動させる。この結果,常時溶射ガン1のフレームが動翼8の全体を加熱する状態になるため,加熱温度は上昇を続け,一度加熱された動翼8の温度低下は少なく,短時間に加熱が完了する。
【0077】
一方,図6では,既述のように,動翼8は逐次停止しながら溶射ガン1のフレームは動翼8の一部分のみ加熱する。この結果,動翼8裏面や溶射ガン1のフレームがあたっていない部位の動翼8温度は低下する。このため,一度低下した動翼8の温度を再度加熱して動翼8の温度を上昇させるため,加熱時間に多大な時間を要する。
【0078】
基本的に加熱時,溶射ガン1のフレーム炎が動翼8を炙る部位としては,動翼8の表裏面いずれか一方であり,表面を溶射ガン1にて炙っている時には,裏面は溶射ガン1のフレーム炎があたっていないために温度が低下する。そのために,加熱あるいは溶射時に動翼8に対して常時全体に加熱のフレーム炎があたっていると,動翼8の温度低下はほとんど無くなることになる。
【0079】
図7は,回転法にて動翼8を加熱した場合の溶射ガン1と動翼8の温度状態を赤外線サーモグラフィーカメラ14により測定した熱画像を示す図である。
【0080】
図8は,逐次(インデックス)法にて動翼8を加熱した場合の溶射ガン1と動翼8の温度状態を示した赤外線サーモグラフィーカメラ14により測定した熱画を示す図である。
【0081】
回転法にて溶射ガン1で動翼8を加熱した場合の動翼8の温度は,逐次法にて溶射ガン1で動翼8を加熱した場合の動翼8温度より,低い。図7に示されるように,回転法では高温の領域A11が広く,低温の領域A12が狭い。一方,図8に示されるように,逐次法では高温の領域A21が狭く,低温の領域A22が広い。
このように,回転法は動翼8全体に溶射ガン1からのフレームが照射され,逐次法に比べて加熱時間の短縮,加熱温度の高温化等の効果が大きい。
【0082】
また,加熱時間が長くなることは,プラズマフレームを発生させるための燃焼ガスを多量に消費することであり,COの排出量も増加することである。
すなわち,本発明の回転法にて動翼8を加熱することは,COの排出量を削減する大きな効果がある。
【0083】
【表1】

【0084】
表1に,逐次法,回転法での加熱の結果を示す。逐次法では,被施行品である動翼8を逐次停止しながら動翼8表面を,溶射ガンを上下方向,左右方向に逐次移動しながら動翼8形状に沿って移動させた。回転法では,動翼8を回転テーブル5を回転させて一方向あるいは正回転,逆回転を連続で繰返し,溶射ガン1を左右方向及び上下方向に連続で移動させた。ここで,プラズマ出力70kw,被施行品である動翼8と溶射ガン1との距離90mm,溶射ガン1の移動ピッチ5mm,溶射ガン1の移動速度500mm/秒の条件を用いた。
表1に示すように,回転法と逐次法(インデックス)では,加熱時間が約3倍異なり,回転法が約1/3で加熱完了できる。
【0085】
(その他の実施形態)
図9は,他の実施形態に係る溶射システムを表す模式図である。ここでは,高周波誘導加熱コイル19,高周波発信装置20により,動翼8を加熱し,所定の温度で溶射ガン1にてプラズマ溶射を開始する。即ち,ヒータ6に替えて,高周波誘導加熱コイル19を用いている。
【0086】
プラズマ溶射による動翼8の加熱時間は,溶射ガン1の出力によっても異なるが,溶射ガン1の出力が80kwの場合,およそ10〜20分で750℃に加熱できる。
【0087】
一方,高周波誘導加熱によれば,5〜10分の時間で750℃に加熱できるため,加熱時間の短縮に大きな効果があると共に,COの排出削減に効果がある。
【0088】
プラズマ炎を発生する場合,プラズマ燃焼ガスに窒素ガスやアルゴンガスを用いてプラズマ燃焼フレーム炎を発生させるため,燃焼時に発生するCO2の量は莫大となる。
【0089】
一方,電気的に燃焼フレームを発生させない加熱方法は,環境低負荷な技術として優れている。今後,CO削減に寄与する。
【0090】
上記実施形態では,金属基体上にMCrAlY合金(M:Ni,Co,Feまたはそれらの元素を組み合わせた合金)層と部分安定化ジルコニア層を形成して成る熱応力緩和遮熱コーティング被覆を形成できる。
【0091】
上記実施形態では,溶射ガン1,回転用モータ2,基礎テーブル3,回転テーブル軸4,回転テーブル5,ヒーター6,マスキング7,動翼8,保護蓋9,ヒーター用スリップリング10,温度測定用スリップリング11,熱電対12,ヒーターコントローラ13,赤外線サーモグラフィーカメラ14,溶射ロボット15,ロボット制御装置16,赤外線サーモグラフィーコントローラ17,温度測定装置18のいずれかまたはその複合で加熱システム(溶射システム)が構成される。
【0092】
動翼8(被施行品,基体)を第1の加熱手段(ヒータ6等)および第2の加熱手段(プラズマガン等)で加熱できる。
【0093】
(1)第1の加熱手段としてのヒーター6として,電気炉,帯状巻き付けヒーター,赤外線加熱ヒーター,高周波誘導加熱ヒーターのいずれか1種または2種以上の複合を用いることができる。
(2)高周波誘導加熱ヒーターは,被施行品の周りを非接触でコイル状に巻きつけても良い。
【0094】
(3)第2の加熱手段として,プラズマガンとしての溶射ガン1を用い,そのプラズマ出力を50kw以上として,動翼8(被施行品,基体)を加熱できる。
(4)第2の加熱手段として,LPGガス燃焼炎,酸素とアセチレンガス混合燃焼炎,高温に加熱された空気,高温に加熱された不活性ガスのいずれか1種または2種以上の複合を用いることができる。
(5)電気炉の炉内温度を650℃以上に自動制御加熱することができる。
【0095】
(6)被施行品(動翼8)を回転させるための回転テーブル5に固定し,かつヒーター6も回転テーブルに固定し,被施行品と一緒に回転することができる。
【0096】
(7)ヒーター6への電源供給は,ヒーター用のスリップリング10を回転テーブル5に取付け,ヒーター6の電源入力部からの電源ケーブルをヒーター用スリップリング10の回転側摺動端子に取付け,この摺動側と静止側摺動端子の接触部の接点を介して静止側外部のヒータコントローラ13から電源を供給することができる。
(8)被施行品を加熱する場合,被施行品の一部に熱対電12を取付け,温度測定用スリップリング11を回転テーブル5に取付け,熱電対12のケーブル端子を温度測定用スリップリング11の回転側摺動端子に取付け,この摺動側と静止側摺動端子の接触部の接点を介して静止側の温度測定機器18に信号を送ることができる。
【0097】
この結果,被施行品の予熱時間,加熱時間を短縮し,COの排出削減に極めて大きな効果があり,環境低負荷な熱応力緩和遮熱コーティング被覆の製造方法を提供できる。
【0098】
また,被施行品の加熱温度が高く均一に加熱されかつ溶射中の温度低下が無く,予熱,加熱や溶射中の温度が650℃以下で発生する横き裂を防止し,耐はく離寿命と遮熱性能の向上を図ることができ,ガスタービンやジェットエンジンなどの高温の酸化腐食雰囲気で使用する高温部品として好適な熱応力緩和遮熱コーティング部材およびその製造方法を提供できる。
【符号の説明】
【0099】
1…溶射ガン,2…回転用モータ,3…基礎テーブル,4…回転テーブル軸,4a…中心孔,5…回転テーブル,6…ヒーター,7…マスキング,8…動翼,9…保護蓋,10…ヒーター用スリップリング,10a…静止側摺動端子,10b…静止側摺動子,10c…回転側摺動子,10d…回転側摺動端子,11…温度測定用スリップリング,12…熱電対,12a…静止側接続端子,12b…静止側摺動子,12c…回転側摺動子,13…ヒーターコントローラ,13a…電源出力部,13b…電源ケーブル,13c…電源ケーブル,13d…電源入力部,13e…抵抗体,14…赤外線サーモグラフィーカメラ,15…溶射ロボット,16…ロボット制御装置,17…赤外線サーモグラフィーコントローラ,18…温度測定装置,19…高周波誘導加熱コイル,20…高周波発信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体が配置される回転テーブルと,
前記回転テーブルに配置され,前記基体の第1の部位を加熱する第1の加熱手段と,
前記第1の加熱手段によって加熱される基体が配置される回転テーブルを回転させるモータと,
前記回転の軸に沿った方向に走査され,かつ前記回転される回転テーブル上の前記基体の第2の部位をプラズマまたは炎によって加熱する第2の加熱手段と,
前記第2の加熱手段により加熱された前記第2の部位に部分安定化ジルコニア層を形成するプラズマ溶射ガンと,
を具備する溶射システム。
【請求項2】
前記第2の加熱手段が,前記プラズマ溶射ガンである
請求項1記載の溶射システム。
【請求項3】
前記プラズマ溶射ガンが,水素ガスと窒素ガスの混合ガスによってプラズマを生成する
請求項2に記載の溶射システム。
【請求項4】
前記第1の加熱手段が,電気炉,帯状巻き付けヒーター,赤外線加熱ヒーター,高周波誘導加熱ヒーターのいずれかまたは2種以上の組み合わせである,
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶射システム。
【請求項5】
前記基体の前記第1の部位が650℃以上となるように,前記第1の加熱手段を制御する制御部をさらに具備する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶射システム。
【請求項6】
電源と電気的に接続される第1の摺動子と,この第1の摺動子と回転可能に接触し,かつ前記第1の加熱手段と電気的に接続される第2の摺動子と,を有し,前記回転テーブルに取り付けられる第1のスリップリングをさらに具備する
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の溶射システム。
【請求項7】
前記基体に取り付けられる熱電対と,
前記熱電対と電気的に接続される第3の摺動子と,この第3の摺動子と回転可能に接触する第4の摺動子と,を有し,前記回転テーブルに取り付けられる第2のスリップリングと,
前記第4の摺動子と電気的に接続される温度測定器と,
をさらに具備する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶射システム。
【請求項8】
基体の少なくとも一部にMCrAlY合金(M:Ni,Co,Feまたはそれらの元素を組み合わせた合金)層を形成する工程と,
前記基体の第1の部位を第1の加熱手段によって加熱しながら,回転させる工程と,
前記回転の軸に沿った方向に第2の加熱手段を走査しながら,前記回転される前記基体の第2の部位をプラズマまたは炎によって加熱する第2の加熱手段と,
前記基体の第2の部位に部分安定化ジルコニア層を形成する工程と,
を具備する溶射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−12622(P2012−12622A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147321(P2010−147321)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】