説明

溶射用粉末及び溶射皮膜の形成方法

【課題】耐プラズマエッチング性に優れる溶射皮膜の形成に適した溶射用粉末及び溶射皮膜の形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の溶射用粉末は、イットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物とを含む造粒−焼結粒子を含有してなる。造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量はアルミナ換算で50〜10000質量ppmである。この溶射用粉末は大気圧プラズマ溶射用途で用いられることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イットリアを含む造粒−焼結粒子を含有してなる溶射用粉末及びそうした溶射用粉末を用いた溶射皮膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶の製造分野においては、プラズマを用いたドライエッチングによって、デバイスの微細加工が行われている。このプラズマプロセスの際にプラズマによるエッチング損傷を受ける虞のある半導体製造装置や液晶製造装置の部分に溶射皮膜を設け、それにより当該部分の耐プラズマエッチング性を改善する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。こうして耐プラズマエッチング性を改善することにより、パーティクルの飛散が抑制され、その結果、デバイスの歩留まりが向上する。
【0003】
このような用途で使用される溶射皮膜は、例えばイットリア造粒−焼結粒子を含有してなる溶射用粉末をプラズマ溶射することにより形成することができる。溶射皮膜の耐プラズマエッチング性の向上を目指した溶射用粉末の開発が行なわれているが、まだ要求性能を満たすことができる溶射用粉末を得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開2002−80954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐プラズマエッチング性に優れる溶射皮膜の形成に適した溶射用粉末及び溶射皮膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、請求項1に記載の発明は、イットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物とを含む造粒−焼結粒子を含有してなる溶射用粉末であって、造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量がアルミナ換算で50〜10000質量ppmである溶射用粉末を提供する。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記造粒−焼結粒子が、イットリウム系原料粒子とアルミニウム系原料粒子とを含む原料粉末を造粒及び焼結して得られるものであり、前記イットリウム系原料粒子が、原料粉末の造粒及び焼結の過程でイットリアに変換しうる物質又はイットリアを含み、前記アルミニウム系原料粒子が、前記イットリウム系原料粒子中のイットリアに変換しうる物質又はイットリアと原料粉末の造粒及び焼結の過程で反応してイットリウム−アルミニウム複酸化物を生じうる物質を含む請求項1に記載の溶射用粉末を提供する。
【0007】
請求項3に記載の発明は、原料粉末に含まれる前記アルミニウム系原料粒子の平均粒子径が1μm以下である請求項2に記載の溶射用粉末を提供する。
請求項4に記載の発明は、前記造粒−焼結粒子の平均粒子径が20〜60μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶射用粉末を提供する。
【0008】
請求項5に記載の発明は、前記造粒−焼結粒子の安息角が45度以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶射用粉末を提供する。
請求項6に記載の発明は、大気圧プラズマ溶射により溶射皮膜を形成する用途で使用される請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶射用粉末を提供する。
【0009】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶射用粉末を大気圧プラズマ溶射して溶射皮膜を形成する溶射皮膜の形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐プラズマエッチング性に優れる溶射皮膜の形成に適した溶射用粉末及び溶射皮膜の形成方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の溶射用粉末は、イットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物とからなる造粒−焼結粒子からなる。造粒−焼結粒子中のイットリウム−アルミニウム複酸化物は、イットリウムアルミニウムガーネット(略称YAG)、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(略称YAP)及びイットリウムアルミニウム単斜晶(略称YAM)のいずれであってもよいが、結晶安定性の点からYAGであることが好ましい。
【0012】
本実施形態の溶射用粉末、すなわちイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物とからなる造粒−焼結粒子は、イットリウム系原料粒子とアルミニウム系原料粒子とからなる原料粉末を造粒及び焼結することにより作製される。より具体的には、溶射用粉末は、原料粉末から造粒粉末をまず作製し、その造粒粉末を焼結してさらに解砕及び分級することにより作製される。原料粉末からの造粒粉末の作製は、適当な分散媒に原料粉末を混合し、必要に応じてバインダを添加してなるスラリーを噴霧造粒することにより行なってもよいし、原料粉末から直接に造粒粉末を作製する転動造粒又は圧縮造粒により行なってもよい。造粒粉末の焼結は、大気中、真空中及び不活性ガス雰囲気中のいずれで行なってもよいが、原料粉末中のイットリウムのイットリアへの変換のためには大気中で行なうことが好ましい。造粒粉末の焼結には電気炉又はガス炉を用いることができる。焼結温度は、好ましくは1200〜1700℃、より好ましくは1300〜1700℃である。焼結時における最高温度保持時間は、好ましくは30分〜10時間、より好ましくは1〜5時間である。
【0013】
原料粉末に含まれるイットリウム系原料粒子は、原料粉末の造粒及び焼結の過程でイットリアに変換しうる例えば金属イットリウムやフッ化イットリウムのような物質、又はイットリアからなる。ただし、材料コストの低減及び造粒−焼結粒子中のイットリアの結晶性の向上という観点からすると、イットリウム系原料粒子はイットリアからなることが好ましい。
【0014】
原料粉末に含まれるアルミニウム系原料粒子は、イットリウム系原料粒子中のイットリアに変換しうる物質又はイットリアと原料粉末の造粒及び焼結の過程で反応してイットリウム−アルミニウム複酸化物を生じうる例えば水酸化アルミニウムのような物質、又は遷移アルミナやコランダムのようなアルミナからなる。なお、遷移アルミナは、γ−アルミナ、θ−アルミナ、δ−アルミナなどのα−アルミナ(コランダム)以外のアルミナの総称であり、その中でも特にγ−アルミナが一般的である。
【0015】
イットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物とを含む造粒−焼結粒子を溶射して形成される溶射皮膜では、溶射皮膜中のイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物との間の界面でプラズマによる溶射皮膜のエッチングの進行が一時的に滞るため、耐プラズマエッチング性の向上が起こりうる。しかしながら、造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量がアルミナ換算で50質量ppm未満の場合には、溶射皮膜中のイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物との間の界面の密度が低くなるために、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性の向上はほとんど認められない。従って、耐プラズマエッチング性に優れる溶射皮膜を得るためには、造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量はアルミナ換算で50質量ppm以上であることが必須である。なお、造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量がアルミナ換算で80質量ppm未満の場合、さらに言えば100質量ppm未満の場合には、たとえ50質量ppm以上であっても溶射皮膜の耐プラズマエッチング性はあまり大きくは向上しない。従って、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性の更なる向上のためには、造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量はアルミナ換算で80質量ppm以上であることが好ましく、より好ましくはアルミナ換算で100質量ppm以上である。
【0016】
耐プラズマエッチング性に優れる溶射皮膜を得るためには、造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量がアルミナ換算で10000質量ppm以下であることも必須である。10000質量ppmを超える場合には、イットリアに比べて耐プラズマエッチング性に劣るイットリウム−アルミニウム複酸化物が溶射皮膜中に占める割合が高くなりすぎるせいで、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性がかえって低下する。なお、造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量がアルミナ換算で9000質量ppmを超える場合、さらに言えばアルミナ換算で8000質量ppmを超える場合には、たとえ10000質量ppm以下であっても、溶射皮膜中のイットリウム−アルミニウム複酸化物の割合が比較的高いせいで溶射皮膜の耐プラズマエッチング性がやや低下する虞がある。従って、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性の更なる向上のためには、溶射用粉末中のアルミナ粒子の含有量はアルミナ換算で9000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは8000質量ppm以下である。
【0017】
原料粉末に含まれるイットリウム系原料粒子の平均粒子径が10μmを超える場合、さらに言えば8μmを超える場合、もっと言えば7μmを超える場合には、溶射皮膜中のイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物の界面密度があまり高くならないので、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性はあまり大きくは向上しない。従って、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性の更なる向上のためには、原料粉末に含まれるイットリウム系原料粒子の平均粒子径は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以下、最も好ましくは7μm以下である。
【0018】
原料粉末に含まれるアルミニウム系原料粒子の平均粒子径が1μmを超える場合には、溶射皮膜中のイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物の界面密度があまり高くならないので、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性はあまり大きくは向上しない。また、溶射皮膜中のイットリウム−アルミニウム複酸化物のグレイン(粒子)サイズが比較的大きくなるせいで溶射皮膜の耐プラズマエッチング性がやや低下する虞もある。上述したとおり、イットリウム−アルミニウム複酸化物はイットリアに比べて耐プラズマエッチング性に劣るため、溶射皮膜中のイットリウム−アルミニウム複酸化物のグレインサイズが大きくになるにつれて溶射皮膜の耐プラズマエッチング性は低下する傾向がある。従って、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性の更なる向上のためには、原料粉末に含まれるアルミニウム系原料粒子の平均粒子径は1μm以下であることが好ましい。
【0019】
溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子の平均粒子径が20μm未満の場合、さらに言えば22μm未満の場合、もっと言えば25μm未満の場合、さらにもっと言えば28μm未満の場合には、造粒−焼結粒子中に比較的細かな粒子が多く含まれる虞があり、その結果、流動性の良好な溶射用粉末を得られない虞がある。従って、溶射用粉末の流動性の向上のためには、溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子の平均粒子径は20μm以上であることが好ましく、より好ましくは22μm以上、さらに好ましくは25μm以上、最も好ましくは28μm以上である。なお、溶射用粉末の流動性が低下するにつれて、溶射フレームへの溶射用粉末の供給が不安定になりやすく、その結果、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性が不均一になりやすい。プラズマによる溶射皮膜のエッチングは溶射皮膜中の耐プラズマエッチング性の低い部分から優先的に進行するため、耐プラズマエッチング性が不均一な溶射皮膜は耐プラズマエッチング性に劣る傾向がある。
【0020】
一方、溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子の平均粒子径が60μmを超える場合、さらに言えば57μmを超える場合、もっと言えば55μmを超える場合、さらにもっと言えば52μmを超える場合には、溶射フレームにより造粒−焼結粒子が十分に軟化又は溶融されにくくなる虞があり、その結果、溶射用粉末の付着効率が低下する虞がある。従って、付着効率の向上のためには、溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子の平均粒子径は60μm以下であることが好ましく、より好ましくは57μm以下、さらに好ましくは55μm以下、最も好ましくは52μm以下である。
【0021】
溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子の安息角が45度を超える場合、さらに言えば42度を超える場合、もっと言えば40度を超える場合には、流動性の良好な溶射用粉末を得られない虞がある。従って、溶射用粉末の流動性の向上のためには、溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子の安息角は45度以下であることが好ましく、より好ましくは42度以下、最も好ましくは40度以下である。なお、上述したとおり、溶射用粉末の流動性が低下するにつれて、溶射フレームへの溶射用粉末の供給が不安定になりやすく、その結果、溶射皮膜の耐プラズマエッチング性が不均一になりやすい。
【0022】
溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子の嵩比重が1未満の場合には、緻密度の高い溶射皮膜を得ることが難しい。従って、溶射皮膜の緻密度の向上のためには、溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子の嵩比重は1以上であることが好ましい。なお、緻密度の低い溶射皮膜は気孔率が高く、プラズマによる溶射皮膜のエッチングは溶射皮膜中の気孔周辺からも優先的に進行するため、気孔率の高い溶射皮膜は耐プラズマエッチング性に劣る傾向がある。
【0023】
溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子の嵩比重の上限は特に限定されないが、実用性から言えば造粒−焼結粒子の嵩比重は3.0以下であることが好ましい。
本実施形態の溶射用粉末はプラズマ溶射又はそれ以外の溶射法により溶射皮膜を形成する用途で使用される。溶射用粉末をプラズマ溶射する際の雰囲気圧力は大気圧であることが好ましい。換言すれば、溶射用粉末は大気圧プラズマ溶射用途で用いられることが好ましい。プラズマ溶射の際の雰囲気圧力が大気圧でない場合、特に減圧雰囲気の場合には、得られる溶射皮膜の耐プラズマエッチング性がやや低下する虞がある。溶射用粉末を減圧プラズマ溶射した場合には、溶射中に溶射用粉末中のイットリアの還元が起こる虞があり、その結果、溶射皮膜中に酸素欠損に起因する格子欠陥が含まれやすくなる虞がある。プラズマよる溶射皮膜のエッチングは溶射皮膜中の欠陥部分からも優先的に進行するため、減圧プラズマ溶射により形成される溶射皮膜は、大気圧プラズマ溶射により形成される溶射皮膜に比べて、耐プラズマエッチング性に劣る傾向がある。
【0024】
本実施形態によれば以下の利点が得られる。
・ 本実施形態の溶射用粉末はイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物とからなる造粒−焼結粒子からなり、造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量はアルミナ換算で50〜10000質量ppmに設定されている。そのため、溶射皮膜中のイットリウム−アルミニウム複酸化物の割合が高くなりすぎることによる溶射皮膜の耐プラズマエッチング性の低下を招くことなく、溶射皮膜中のイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物の界面密度を効果的に増大することができる。従って、本実施形態の溶射用粉末から形成される溶射皮膜は耐プラズマエッチング性に優れている。換言すれば、本実施形態の溶射用粉末は、耐プラズマエッチング性に優れる溶射皮膜の形成に適している。
【0025】
前記実施形態を次のように変更してもよい。
・ 溶射用粉末は、イットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物とからなる造粒−焼結粒子以外の成分を含有してもよい。ただし、造粒−焼結粒子以外の成分はできるだけ少ないことが好ましい。
【0026】
・ 溶射用粉末に含まれる造粒−焼結粒子はイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物以外の成分を含有してもよい。ただし、造粒−焼結粒子中のイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物の含有量の合計は好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上である。造粒−焼結粒子中のイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物以外の成分は特に制限されないが、希土類酸化物であることが好ましい。
【0027】
・ 造粒−焼結粒子の原料粉末はイットリウム系原料粒子とアルミニウム系原料粒子以外の成分を含有してもよい。ただし、イットリウム系原料粒子とアルミニウム系原料粒子以外の成分ができるだけ少ないことが好ましい。
【0028】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
イットリウム系原料粒子及びアルミニウム系原料粒子からなる原料粉末を造粒及び焼結することによりイットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物(YAG)とからなる造粒−焼結粒子よりなる実施例1〜13及び比較例1〜6の溶射用粉末を作製した。そして、各溶射用粉末をプラズマ溶射することにより溶射皮膜を形成した。溶射用粉末及び溶射皮膜の詳細は表1に示すとおりである。また、溶射皮膜を形成する際の溶射条件(大気圧プラズマ溶射条件及び減圧プラズマ溶射条件)は表2に示すとおりである。
【0029】
表1の“造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量”欄には、各溶射用粉末の造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量(アルミナ換算)を示す。
表1の“造粒−焼結粒子の平均粒子径”欄には、(株)堀場製作所のレーザー回折/散乱式粒度測定機“LA−300”を用いて測定した各溶射用粉末の造粒−焼結粒子の平均粒子径を示す。
【0030】
表1の“造粒−焼結粒子の安息角”欄には、筒井理化学器械(株)のA.B.D粉体特性測定機“A.B.D−72形”を用いて測定した各溶射用粉末の造粒−焼結粒子の安息角を示す。
【0031】
表1の“イットリウム系原料粒子の材質”欄には、各溶射用粉末の原料粉末に含まれるイットリウム系原料粒子の材質を示す。
表1の“アルミニウム系原料粒子の材質”欄には、各溶射用粉末の原料粉末に含まれるアルミニウム系原料粒子の材質を示す。
【0032】
表1の“アルミニウム系原料粒子の平均粒子径”欄には、(株)堀場製作所のレーザー回折/散乱式粒度測定機“LA−300”を用いて測定した各溶射用粉末の原料粉末に含まれるアルミニウム系原料粒子の平均粒子径を示す。
【0033】
表1の“溶射雰囲気”欄には、溶射皮膜を形成するべく各溶射用粉末をプラズマ溶射する際の雰囲気圧力を示す。
表1の“付着効率”欄には、各溶射用粉末を溶射して形成した溶射皮膜の重量の、溶射に使用した溶射用粉末の重量に対する比率である付着効率について評価した結果を示す。同欄中、◎(優)は付着効率が50%以上であったことを示し、○(良)は45%以上50%未満、×(不良)は45%未満であったことを示す。
【0034】
表1の“緻密度”欄には、各溶射用粉末を溶射して形成した溶射皮膜の緻密度について評価した結果を示す。具体的には、まず、各溶射皮膜をその上面に直交する面で切断し、平均粒子径0.06μmのコロイダルシリカを用いてその切断面を鏡面研磨した。その後、エヌサポート社の画像解析処理装置“NSFJ1−A”を用いて溶射皮膜の切断面で気孔率を測定した。“緻密度”欄中、◎(優)は気孔率が6%未満であったことを示し、○(良)は6%以上12%未満、×(不良)は12%以上であったことを示す。
【0035】
表1の“耐プラズマエッチング性”欄には、各溶射用粉末を溶射して形成した溶射皮膜の耐プラズマエッチング性について評価した結果を示す。具体的には、まず、平均粒子径0.06μmのコロイダルシリカを用いて各溶射皮膜の表面を鏡面研磨し、研磨後の溶射皮膜の表面の一部をポリイミドテープでマスキングしてから、その溶射皮膜の表面全体を表3に示す条件でプラズマエッチングした。その後、ケーエルエー・テンコール社の段差測定装置“アルファステップ”を用いて、マスキングした部分とマスキングしなかった部分の間の段差の大きさを測定した。“耐プラズマエッチング性”欄中、◎(優)は段差の大きさをエッチング時間で除することにより算出されるエッチングレートが40nm/分未満であったことを示し、○(良)は40nm/分以上50nm/分未満、×(不良)は50nm/分以上であったことを示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

表1に示すように、実施例1〜13の溶射皮膜では、耐プラズマエッチング性に関して実用上満足できる結果が得られたのに対し、比較例1〜6の溶射皮膜では耐プラズマエッチング性に関して実用上満足できる結果が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イットリアとイットリウム−アルミニウム複酸化物とを含む造粒−焼結粒子を含有してなる溶射用粉末であって、造粒−焼結粒子中のアルミニウム含有量がアルミナ換算で50〜10000質量ppmであることを特徴とする溶射用粉末。
【請求項2】
前記造粒−焼結粒子は、イットリウム系原料粒子とアルミニウム系原料粒子とを含む原料粉末を造粒及び焼結して得られるものであり、前記イットリウム系原料粒子は、原料粉末の造粒及び焼結の過程でイットリアに変換しうる物質又はイットリアを含み、前記アルミニウム系原料粒子は、前記イットリウム系原料粒子中のイットリアに変換しうる物質又はイットリアと原料粉末の造粒及び焼結の過程で反応してイットリウム−アルミニウム複酸化物を生じうる物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の溶射用粉末。
【請求項3】
原料粉末に含まれる前記アルミニウム系原料粒子の平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の溶射用粉末。
【請求項4】
前記造粒−焼結粒子の平均粒子径が20〜60μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶射用粉末。
【請求項5】
前記造粒−焼結粒子の安息角が45度以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶射用粉末。
【請求項6】
大気圧プラズマ溶射により溶射皮膜を形成する用途で使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶射用粉末。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶射用粉末を大気圧プラズマ溶射して溶射皮膜を形成することを特徴とする溶射皮膜の形成方法。

【公開番号】特開2007−126712(P2007−126712A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320118(P2005−320118)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000236702)株式会社フジミインコーポレーテッド (126)
【Fターム(参考)】