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溶接方法及び溶接装置
説明

溶接方法及び溶接装置

【課題】TiAl系金属間化合物等の接合対象物について、真空または不活性の雰囲気を制御した状態で接合する接合方法及び接合装置を提供すること。
【解決手段】TiAl系金属間化合物等の常温における延性が低い金属を接合対象物Mとして一体に接合する溶接方法において、接合対象物Mを密封容器11内に収納して所望の接合温度まで加熱し、密封容器11内を真空引きした状態で、中空電極を陰極とし、接合対象物を陽極として直流電圧を印加するとともに、中空電極を通して不活性ガスを供給し、この不活性ガス中にホローカソードアークを発生させて接合対象物Mの溶接を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温における延性が低く活性なTiAl系金属間化合物等の金属を接合対象物として一体に接合する溶接方法及び溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量で高温強度に優れた特性を有する次世代の軽量耐熱材料として、TiAl系金属間化合物が注目されている。このTiAl系金属間化合物は、常温における延性が低い活性な金属であるため、これを接合する場合には、溶接対象の素材を500℃程度の高温に加熱して真空中または不活性雰囲気中で溶接する必要がある。
一方、たとえば宇宙等の真空環境下において、アルミニウム材やマグネシウム材を高能率に溶接しうるアーク溶接法が提案されている。このアーク溶接法では、タングステン電極を中空パイプ状に形成し、真空環境下において、このタングステン電極を陰極とし、これに対向させて配置したアルミニウム材を陽極として直流電圧を印加するとともに、タングステン電極を通してArガスを供給し、このガス中にアークを発生させてアルミニウム材等の溶接を高能率に行うことが可能とされる。このように、真空下でも放電の発生・維持が容易なアークはホローカソードアーク(HCA:Hollow Cathode Arc)と呼ばれており、これを利用したアーク溶接法に使用される放電トーチは「HCA放電トーチ」と呼ばれている。(たとえば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−170273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1の溶接技術は、不活性な真空中での溶接は可能になるが、常温での延性が低いTiAl系金属間化合物等の金属(素材)をそのまま溶接すると、素材の急激な温度変化により生じる熱膨張に伴い溶接割れを生じやすいため、この溶接技術をTiAl系金属間化合物に採用することは困難であった。
このような背景から、たとえばTiAl系金属間化合物等のように、常温における延性が低い活性な素材の接合対象物についても、真空または不活性の雰囲気を制御した状態で接合する接合方法及び接合装置の開発が望まれている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、TiAl系金属間化合物等の接合対象物について、真空または不活性の雰囲気に制御した状態で接合する接合方法及び接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る請求項1の溶接方法は、TiAl系金属間化合物等の常温における延性が低い金属を接合対象物として一体に接合する溶接方法において、前記接合対象物を密封容器内に収納して所望の接合温度まで加熱し、前記密封容器内を真空引きした状態で、中空電極を陰極とし、前記接合対象物を陽極として直流電圧を印加するとともに、前記中空電極を通して不活性ガスを供給し、この不活性ガス中にアークを発生させて前記接合対象物の溶接を行うことを特徴とするものである。
【0005】
このような本発明の溶接方法によれば、接合対象物を密封容器内に収納して所望の接合温度まで加熱し、この密封容器内を真空状態にした後、中空電極を陰極とし、接合対象物を陽極として直流電圧を印加するとともに、中空電極を通して不活性ガスを供給し、この不活性ガス中にアークを発生させて前記接合対象物の溶接を行うので、真空等の不活性な雰囲気とした密封容器内で接合対象物を接合温度まで加熱して延性を高め、酸化を防止した状態でアークによる溶接を行うことが可能になる。従って、常温における延性が低く活性なTiAl系金属間化合物等の金属を接合対象物としても、溶接割れを防止して一体に接合することができる。
なお、この溶接方法に好適な接合温度は、接合対象物がTiAl系金属間化合物の場合、その材料が安定して1%以上の延性を示すようになる温度域、つまり通常のアーク溶接で予熱温度として使用される温度域よりも大幅に高い500℃〜900℃程度の高温となる。また、密閉容器内で真空中もしくは不活性ガス雰囲気中で加熱することで、TiAl金属間化合物のような活性な金属の特性が酸化等により劣化することも防止できる。
【0006】
上記の発明において、前記溶接の出力制御は、接合時の電流や電圧だけでなく、前記不活性ガスの供給量を調整してなされることが好ましく、これにより、アークの形態が変化し接合部の溶け込み形状が変化するため、接合対象物の板厚に応じて最適な出力を設定した溶接が可能になる。
【0007】
本発明に係る請求項3の溶接装置は、TiAl系金属間化合物等の常温における延性が低い金属を接合対象物として一体に接合する溶接装置において、前記接合対象物を収納する密封容器と、この密封容器内を真空引きする手段と、前記接合対象物を前記密封容器内で所望の接合温度まで昇温させる加熱手段と、前記密封容器内に設置され、中空電極を陰極とし、前記接合対象物を陽極として直流電圧を印加するとともに、前記中空電極を通して不活性ガスを供給し、この不活性ガス中にアークを発生させて前記接合対象物の溶接を行う放電トーチ部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
このような本発明の溶接装置によれば、接合対象物を収納する密封容器と、この密封容器内を真空引きする手段と、接合対象物を密封容器内で所望の接合温度まで昇温させる加熱手段と、密封容器内に設置され、中空電極を陰極とし、接合対象物を陽極として直流電圧を印加するとともに、中空電極を通して不活性ガスを供給し、この不活性ガス中にアークを発生させて接合対象物の溶接を行う放電トーチ部とを備えているので、真空等の不活性な雰囲気とした密封容器内に収納した接合対象物を加熱手段で所望の接合温度まで加熱して延性を高め、この密封容器内で放電トーチ部がアークを発生させて接合対象物の酸化及び溶接割れを防止して溶接を行うことが可能になる。従って、常温における延性が低く活性なTiAl系金属間化合物等の金属を接合対象物であっても、接合中に材料の酸化等の劣化を生じない状態で、溶接割れを防止して容易に接合することができる。
【0009】
上記の発明において、前記放電トーチ部に供給される不活性ガスの供給量調整手段を備えていることが好ましく、これにより、不活性ガスの供給量を調整することで溶接の出力制御を実施できる。この場合の不活性ガスとしてはArが好適であり、ガス供給量を減少させれば高出力となって板厚の大きな接合対象物の溶接が可能になる。
また、上記の発明において、前記放電トーチ部が前記接合対象物に対して横向きのアークを発生させて溶接を行うことが好ましく、これにより、微量の不活性ガスで熱伝達を抑制して遮熱することができる。
さらに、接合対象物の加熱に伴う熱がトーチ部に伝わり、トーチ部が加熱され損傷するのを防止するため、トーチと接合物との間に断熱材を設置することが有効である。
また、アーク発生時の雰囲気が真空中で微量なガスを流している状況であるため、熱の伝達は輻射になるため、金属製の薄板を重ねた多層板状の断熱材の適用が有効で、ブラケット状の断熱材とは異なり、断熱材からのアウトガスが少なく、接合雰囲気の改善もはかれる。
【0010】
また、上記の発明において、前記放電トーチ部が溶接ワイヤ供給手段を備えていることが好ましく、これにより、溶接箇所の素材成分量を調整することで、接合部の特性改善を図ることができる。
また、上記の発明において、前記放電トーチ部を保持して前記密封容器内の所望の位置に移動させるトーチ移動手段を備えていることが好ましく、これにより、放電トーチ部が密封容器内を自由に移動可能となり、曲線など種々の溶接箇所を溶接することができる。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明の溶接方法及び溶接装置によれば、たとえばTiAl系金属間化合物のように、常温における延性が低い活性な金属を素材とする接合対象物を真空状態または不活性ガスの不活性な雰囲気にした密封容器内で所望の接合温度まで加熱し、かつ、容器内の不活性な雰囲気を制御した状態で放電トーチ部がアークを発生させて溶接を行うので、素材の延性を増して溶接割れを防止した効率のよい溶接による接合が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る溶接方法及び溶接装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す溶接装置10は、たとえばTiAl系金属間化合物等のように、常温における延性が低く活性な金属の素材を接合対象物Mとして一体に接合するための装置である。この溶接装置10は、接合対象物Mを収納する密封容器11と、接合対象物Mを密封容器11内で所望の接合温度まで昇温させる加熱手段のヒータ12と、密封容器11内でホローカソードアーク(HCA)を発生させて接合対象物Mの溶接を行うHCA放電トーチ部20とを具備して構成される。
【0013】
密封容器11は、図示しない真空ポンプ等の真空引きする手段を用いることで、容器内部を所望の真空状態とし、この不活性な雰囲気を維持して溶接を行うための空間を形成するものである。この密封容器11内には、ヒータ12及びこのヒータ12から加熱を受ける接合対象物Mが上下方向に立てて設置され、接合対象物Mの溶接箇所は側面に向けられている。
ヒータ12は、常温で延性の低い接合対象物Mを加熱することにより、所望の延性を有する接合温度まで昇温させるものである。ここで使用可能なヒータ12としては、電気抵抗ヒータ、赤外線ランプ及び高周波加熱等がある。
【0014】
ヒータ12により加熱する好適な接合温度は、接合対象物MがTiAl系金属間化合物である場合、500℃〜900℃程度となる。すなわち、図3に示すように、TiAl系金属間化合物の延性(縦軸の伸び)は、常温から500℃付近までの温度領域では低い状態を継続してほとんど変化がなく、500℃付近より高温の温度領域になると温度上昇とともに変化して高くなるためである。このような接合温度に加熱して溶接を行うと、延性が高くなるため、溶接による急激な温度変化を受けても、熱膨張等による溶接割れを生じにくくなる。
【0015】
HCA放電トーチ部20は、トーチ移動手段として密封容器11内に設けたロボット30のアーム31に支持されたことにより、密封容器11の外側から操作することが可能になり、たとえば曲面等の複雑な形状の溶接部についても、溶接時に横向きのHCAを発生させて溶接可能となっている。
このHCA放電トーチ部20は、内部を中空状とした溶接トーチ21の先端に、コレットボディ22を介してタングステン電極23が設けられている。また、コレットボディ22における下部側の外周には、さらにこれを囲うようにして円筒状のノズル24が取り付けられている。
【0016】
上述したタングステン電極23は、中空パイプ状に形成された中空電極である。溶接時には、図中に実線矢印で示すように、溶接トーチ21内を通して外部から供給される不活性ガスが、中空のタングステン電極23を通って下方の接合対象物Mに向けて吹き出されるようになっている。ここで使用する不活性ガスとしては、たとえばArガス等が好適である。
また、Arガス等の不活性ガス供給源または供給系統の適所には、HAC放電トーチ部20に供給される不活性ガスの供給量を調整して溶接の出力制御を行うため、図示しない供給量調整手段を備えている。この供給量調整手段としては、たとえば流量調整弁等を採用することができ、不活性ガスの供給量が少ないほど高出力となる。
【0017】
このように、タングステン電極23として中空パイプ状のものを用い、このタングステン電極23を通して不活性ガスを微量噴出させながら、タングステン電極23と接合対象物Mとの間に電圧を印加すると、たとえば10Torr(≒1×10
Pa)よりも高真空側となる真空環境下においても、不活性ガスの雰囲気中にアークを発生させてこれを維持することが可能である。
すなわち、HCA放電トーチ部20は、中空パイプ状としたタングステン電極23を用い、これを陰極とし接合対象物Mを陽極として直流電圧を印加するとともに、タングステン電極23を通して不活性ガスを供給し、この不活性ガス中にHCAを発生させて接合対象物Mの溶接を行うものである。
【0018】
以下、上述した構成の溶接装置10を用い、常温における延性が低く活性なTiAl系金属間化合物等の金属である接合対象物Mを溶接する溶接方法について説明する。
接合対象物Mは、密封容器11内に立設されたヒータ12に沿わせて設置される。この後、密封容器11の内部を所望の真空状態または不活性ガス雰囲気にするとともに、接合対象物Mをヒータ12により加熱する。この結果、密閉容器11内が所望の不活性な雰囲気となり、かつ、接合対象物Mが所望の接合温度に上昇すると、不活性ガス雰囲気の場合は真空引きを行った後、ロボット30のアーム31を密封容器11の外側から操作し、HCA放電トーチ部20を溶接対象箇所に移動させて溶接を開始する。このとき、接合対象物Mの溶接箇所は側面を向いており、この溶接箇所に対しHCA放電トーチ部20から横向きのHCAを発生させて溶接する。
【0019】
こうして真空下の不活性な雰囲気で溶接を行うと、活性な接合対象物Mの金属元素が大気中の酸素や窒素と反応して脆い酸化物や窒化物を形成することを防止でき、従って、良好な品質で信頼性の高い溶接部を得ることができる。
また、溶接対象物Mを所望の接合温度まで加熱して溶接するので、延性が高い状態での溶接となるため、素材に溶接割れが発生するのを防止することができる。
また、HCA放電トーチ部20から横向きのHCAを発生させて溶接するので、タングステン電極23を通して噴出させる不活性ガス量を微量にしても、トーチへの熱伝達を抑制して遮熱することができる。
また、必要に応じて接合対象物Mから熱を遮断するために、HAC放電トーチ部20と接合対象物Mとの間に断熱材(不図示)を設置することで、HAC放電トーチ20の損傷を防止できる。
また、断熱材として薄板積層型のものを採用することで、雰囲気を悪化させず効率よく断熱できる。
【0020】
ところで、上述した不活性ガスの供給量を調整すると、溶接対象物Mの板厚に応じた溶接の出力調整が可能になる。具体的に説明すると、タングステン電極23を通して噴出させる不活性ガスの供給量を調整して減少させると、溶接の出力を高くして板厚の大きな溶接対象物Mの溶接が可能になる。従って、供給量調整手段により不活性ガスの供給量を適宜調整すれば、異なる板厚の溶接対象物Mに応じた最適の溶接出力得ることができる。
【0021】
また、上述したHCA放電トーチ部20は、適所に図示しない溶接ワイヤ供給手段を備えていることが好ましい。この溶接ワイヤ供給手段は、溶接箇所に溶接ワイヤを順次供給するものである。溶接箇所に供給された溶接ワイヤは、HCAにより溶融して溶接箇所の素材成分量を調整するので、溶接対象物Mの成分に応じて最適なものを選択すれば良好な溶接部を得ることができる。
【0022】
従って、上述した本発明によれば、たとえばTiAl系金属間化合物のように、常温における延性が低い活性な金属を素材とする接合対象物Mを密封容器11内で所望の接合温度まで加熱し、かつ、密封容器11内を真空にして不活性な雰囲気を制御した状態でHCA放電トーチ部20がHCAを発生させて溶接を行うので、素材の延性を増して溶接割れを防止した効率のよい溶接が可能になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る溶接装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示したHCA放電トーチ部の断面図である。
【図3】TiAl系金属間化合物の延性(伸び)について、温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0024】
10 溶接装置
11 密封容器
12 ヒータ(加熱手段)
20 HCA放電トーチ部
30 ロボット(トーチ移動手段)
M 接合対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiAl系金属間化合物等の常温における延性が低い金属を接合対象物として一体に接合する溶接方法において、
前記接合対象物を密封容器内に収納して所望の接合温度まで加熱し、
前記密封容器内を真空引きした状態で、中空電極を陰極とし、前記接合対象物を陽極として直流電圧を印加するとともに、前記中空電極を通して不活性ガスを供給し、この不活性ガス中にアークを発生させて前記接合対象物の溶接を行うことを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
前記溶接の出力制御は、前記不活性ガスの供給量を調整してなされることを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
TiAl系金属間化合物等の常温における延性が低い金属を接合対象物として一体に接合する溶接装置において、
前記接合対象物を収納する密封容器と、
この密封容器内を真空引きする手段と、
前記接合対象物を前記密封容器内で所望の接合温度まで昇温させる加熱手段と、
前記密封容器内に設置され、中空電極を陰極とし、前記接合対象物を陽極として直流電圧を印加するとともに、前記中空電極を通して不活性ガスを供給し、この不活性ガス中にアークを発生させて前記接合対象物の溶接を行う放電トーチ部と、を備えていることを特徴とする溶接装置。
【請求項4】
前記放電トーチ部に供給される不活性ガスの供給量調整手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載の溶接装置。
【請求項5】
前記放電トーチ部が前記接合対象物に対して横向きのアークを発生させて溶接を行うことを特徴とする請求項3または4に記載の溶接装置。
【請求項6】
前記放電トーチ部が前記接合対象物から放出される熱を保護するための断熱機構を有していることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の溶接装置。
【請求項7】
前記断熱機構として、薄肉の板を多層に重ねた断熱構造を用いたことを特徴とする請求項6に記載の溶接装置。
【請求項8】
前記放電トーチ部が溶接ワイヤ供給手段を備えていることを特徴とする請求項3から7のいずれかに記載の溶接装置。
【請求項9】
前記放電トーチ部を保持して前記密封容器内の所望の位置に移動させるトーチ移動手段を備えていることを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載の溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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